ゲスト
(ka0000)
【JB】頑張ってる君へ
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/07/01 07:30
- 完成日
- 2015/07/09 06:21
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その日、辺境要塞【ノアーラ・クンタウ】にあるドワーフ工房【ド・ウェルク】に飛び込んでいた話に技師達が絶叫した。
内容はドワーフ工房の本来の管理官であるヨアキム(kz0011)のお守り役となってしまっているキュジィ・アビトゥーア(kz0078)の結婚話。
キュジィとドワーフ工房の繋がりはヨアキムの事や、彼が要塞管理官、・ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の部下である為、何かと繋がりはある。
ドワーフ達から「給仕」と呼ばれるほど気遣いがよいキュジィはドワーフ工房に赴けば何故かフォロー能力が見事に発揮され、技師達に感謝されて、女子技師達にファンがつくほどだった。
「キュジィ君、おめでとう」
「一安心だわ……」
などと、喜ぶ女子技師達が親戚のおばさんのようだと男性陣は感想を呟いたら、ものの見事に雷が落ちたという。
「あーもー、お祝いしてあげたいわーー」
工房管理官の執務室のソファに座ってジタバタするのはドワーフ工房の部署の一つであるエテルタ所属のフォニケ。
「あいつは頑張っているからな」
フォニケの言葉に同意しているクレムトのシェダルがちらりと、工房管理官であるアルフェッカへ視線を向ける。
「……悪い」
バツが悪そうに顔を背けるアルフェッカはそっとスケジュール表をカペラ達に見せた。
「なによこれ!」
批判を込めて叫ぶカペラに他の二人も覗き込む。
「おいこら」
「ひっどい!」
急な仕事が入り、中々に鬼スケジュール。
「でも、フォニケちゃんはキュジィの祝いにかこつけて肉が食べたいだけでしょ!」
「お肉に貴賎はないわ! チャンスは作るものよ!」
アルフェッカの言葉にフォニケは謎の自信に満ちたセリフを返す。
「まぁ、仕方ないわね。そういえば、今、キュジィはリゼリオの方にいるのかしら……?」
「どうかしたのか?」
思案するカペラにシェダルが振り向いた。
「もし、いるのであれば、渡してあげたいんだけど」
「この手の催しヨアキム様が見逃すとは思えないし、いるんじゃない?」
フォニケの言葉の後、一拍静まって四人がため息をつく。
新婚なんだから嫁の所にいさせてやれよ……と。
内容はドワーフ工房の本来の管理官であるヨアキム(kz0011)のお守り役となってしまっているキュジィ・アビトゥーア(kz0078)の結婚話。
キュジィとドワーフ工房の繋がりはヨアキムの事や、彼が要塞管理官、・ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)の部下である為、何かと繋がりはある。
ドワーフ達から「給仕」と呼ばれるほど気遣いがよいキュジィはドワーフ工房に赴けば何故かフォロー能力が見事に発揮され、技師達に感謝されて、女子技師達にファンがつくほどだった。
「キュジィ君、おめでとう」
「一安心だわ……」
などと、喜ぶ女子技師達が親戚のおばさんのようだと男性陣は感想を呟いたら、ものの見事に雷が落ちたという。
「あーもー、お祝いしてあげたいわーー」
工房管理官の執務室のソファに座ってジタバタするのはドワーフ工房の部署の一つであるエテルタ所属のフォニケ。
「あいつは頑張っているからな」
フォニケの言葉に同意しているクレムトのシェダルがちらりと、工房管理官であるアルフェッカへ視線を向ける。
「……悪い」
バツが悪そうに顔を背けるアルフェッカはそっとスケジュール表をカペラ達に見せた。
「なによこれ!」
批判を込めて叫ぶカペラに他の二人も覗き込む。
「おいこら」
「ひっどい!」
急な仕事が入り、中々に鬼スケジュール。
「でも、フォニケちゃんはキュジィの祝いにかこつけて肉が食べたいだけでしょ!」
「お肉に貴賎はないわ! チャンスは作るものよ!」
アルフェッカの言葉にフォニケは謎の自信に満ちたセリフを返す。
「まぁ、仕方ないわね。そういえば、今、キュジィはリゼリオの方にいるのかしら……?」
「どうかしたのか?」
思案するカペラにシェダルが振り向いた。
「もし、いるのであれば、渡してあげたいんだけど」
「この手の催しヨアキム様が見逃すとは思えないし、いるんじゃない?」
フォニケの言葉の後、一拍静まって四人がため息をつく。
新婚なんだから嫁の所にいさせてやれよ……と。
リプレイ本文
カペラの呼びかけに応えたハンターは待ち合わせのリゼリオにあるカフェへ到着した。
入り口のドアには「本日貸切」と書いてある紐付きプレートが掛けられている。
「失礼します」
ネージュ(ka0049)がそっとドアを開けて中へ入る。
窓は開けられており、店内に明るい光が入ってとても清潔感がある内装だ。
「いい感じだな」
天井を見上げる白水 燈夜(ka0236)の声を吸い込むような開放感。
店の奥にカフェの店長らしいドワーフの女性と依頼主のカペラがいた。
「来てくれてありがとう!」
笑顔で迎えるカペラは身なりも整えており、可愛らしい笑顔を見せる。
「通りすがりだが、祝うよ」
そう言ったロラン・ラコート(ka0363)にカペラは口元に指先を重ねてくすくす笑う。
「祝う気持がそこにあれば。歓迎するわ」
「よかった……」
両手を広げてカペラが宣言すると、穏やかなハイバリトンが響く。
誰が言ったの? といわんばかりにカペラがロランと燈夜の方を向くが、彼は「違う」と返すし、紫条京真(ka0777)は既知だ。
店に入った時、ネージュの声は聞いた。
「え……えと……」
消去法で消し去りつつたどり着いた二択。
「こう見えて、オトコノコ、なの☆」
若いのに艶めいた笑みを浮かべるエミリオ・ブラックウェル(ka3840)と平然としてるクリス・クロフォード(ka3628)にカペラは目を丸くする。
自分の身の回りにはいないので、この手の男子にカペラには新鮮。
「ハンターも色々いるのね」
見上げるカペラはエミリオの手やクリスの髪を見たりしている。
「姫、さっさとやるんでしょう」
ドワーフ女性に窘められたカペラは今回の説明をはじめる。
「私の父親の守り役であるキュジィ結婚したの」
その話はハンター達の耳に入っている。
「で、キュジィにも色々お世話になっているし、祝い事なので、キュジィをもてなしてあげたいし、旦那様を待っているだろう奥様にもお菓子を贈りたいなって思うの」
「それでキュジィと共にお茶会って事だね」
燈夜の言葉にカペラは頷く。
「料理に詳しい人だと、配送に対しての配慮が出来るんじゃないかなって」
「贈る時は衛生面も考えないとね。任せときなさい」
頷くクリスが自信を持ってカペラに告げる。
「ところで、その間のヨアキムさんは……」
京真の言葉に全員が言葉を噤ませた。
「さ、さ、はっじめよー」
二回手を叩いてドワーフ店長が催促すると、ハンターとカペラが動き出した。
●
京真は鍋持参で現れていた。
「その中身はなぁに? 見てもいい?」
カペラは京真にそう尋ねると、彼は快く中を見せてくれた。
鍋の中にあるのは水に浸かった赤い豆。水分を含んだ豆はぷっくりと膨らんでいる。
「リアルブルーの豆?」
「いいえ、こちらの市場で入手したものですよ。小豆に似たようなものを探していました」
これを火にかけますと言い、京真が火をつけた。
「何を作るの?」
「紅白饅頭というお菓子です、リアルブルーのとある地域で作られる結婚用の引き出物です」
ついでに引き出物の意味を伝えると、カペラはへぇええっと納得する。
湯が煮立ち、あぶく……灰汁が出てきてからが大変だ。
カペラが持ってきた蜂蜜をティースプーンに少しとって香りを確認しているのはクリスとネージュだ。
「香りは押さえつつも華やかね」
味を確かめる為に一息つくとクリスとネージュは顔を見合わせた。
「甘味がしっかりしてますね」
「鼻に抜ける香りがいいわ。そのままでも美味しいけど」
砂糖の増減を考えつつ、次に花の蜜漬けを確認。
「あ、こっちは香りがしっかりありますね」
「味が濃い目の生地にも負けないわ。ハーブっぽい?」
二人が確認しあうと、店長がひょっこりと話に加わる。
「辺境は時期によって住む場所を移動する部族もいるし、食料は基本、保存が出来る食品を作るようにしているの。出来るだけ保存できるようにするからね」
なるほどと、二人は頷いた。
早速お手伝いをしているのはエミリオの所。
本業もあってか、かまど番をしているカペラはてきぱき動いていた。
エミリオが作ろうとしているのはクッキーである。
レーズンを蜂蜜に浸して戻したバタークッキーとベリーと柑橘類のピールと花の蜜漬けとピールの三種類。
ドライベリーやレーズンなどを戻している間に生地を作成する。元となる生地は二種類なので、二人で手分けをして作る事にした。
「蜂蜜、いい匂いね」
エミリオに誉めてもらってカペラは上機嫌。
自身が生まれた辺境のものがほめられるのは嬉しい。
「ベリーと柑橘のピールってはじめて見るわ」
「そうなの? ベリーは一度ドライフルーツにしているから、甘味がぎゅっと増しているの。甘いだけじゃ舌が疲れるから、柑橘類で後味をさわやかにするのよ」
「へぇー。お茶会が楽しみ!」
「それよりも贈り物でしょ」
目を輝かせるカペラにエミリオがくすくす笑う。
「だって、まずは味見でしょ!」
「それはそうだけど、仕方ないわね」
更に戻していたフルーツを生地に混ぜ込み、形を形成する。カペラの生地で足りないところはエミリオがフォローをした。
後は焼くだけであり、エミリオは他の人の手伝いに行かせるように告げた。
「でも、かまど……」
「そういう事は任せて、ね?」
片目を瞑るエミリオに「任せたわ」と言ってカペラは他の人たちの所へ向かった。
蜂蜜の確認をしたクリスはカペラを呼び寄せる。
「料理って何も出来ないの?」
「言われたとおりに切ったり、網に並べたりはできるけど、皮むきは不恰好になるの。難しい味や焼加減とかはダメ。」
クリスの問いにカペラは肩をすくめて応えた。
スープなら煮込むだけなので、難しい味調整がなければまぁ、作れるだろうとクリスは認識する。
「マドレーヌやフィナンシェは簡単だから、覚えていきなさいよ」
二人で作りながらマドレーヌやフィナンシェの話をクリスがしていく。
「こういうお菓子、こっちでも見るわ」
「リアルブルーではアーモンドというナッツを使うんだけど、こっちでは似たような粉があったからその粉末を使うわね。玉子は卵白のみ使うの、マドレーヌは全卵」
手際よくフィナンシェの生地を作っていくのに対し、カペラは慎重に生地を練っている。
「マドレーヌか貝殻型の型に流すんだけど、今回は丸いので」
「フィナンシェは?」
「そっちは角型。向こうでは金を角型にして、財産貯蔵する事もあるの。重さや大きさも決まってて、それで純金か確認する事もできるの」
クリスの説明にカペラの目が輝く。
「貝殻型の型なら私にも作れそう。どういうのか教えてくれる?」
「……そっち? いや、本業だろうけど」
呆れるクリスだが、カペラの生地のフォローをしてそれぞれを型に入れてかまどへと入れた。
燈夜はパウンドケーキを作っていた。
初夏ともあり、バターは簡単に常温へと戻り、柔らかくなっている。
レモンに似た柑橘類はとても爽やかな香りをしているし、蜂蜜とよく合いそうだった。
リアルブルーにておなじみだった小麦粉とは見た目違う粉であるが、成分は同じの全粒粉なので、何度も作っている内にクセなどを掴んでいった。
もといた世界より作れるものが限られているように見えるが、作れそうだというものを探すのもまた面白い。
「カペラ、レモンを摩り下ろしてほしいんだけど」
「わかったわ」
燈夜の言葉にカペラは快く了承する。
「こういった果物はあまり、辺境では見かけないのよね」
「そうなんだ。柑橘の皮は白いのが入ると苦くなるから、気をつけて」
カペラの言葉に相槌を打ちつつ、燈夜が声をかける。
「寒天も手に入ればよかったんだけど……」
呟く燈夜にカペラが尋ねると、彼はもう一品作りたかったようだ。
形状を聞けば、カペラは店長を呼んで、燈夜に作り方を伝授するように言う。
パウンドケーキを焼いたり、覚ましている間にあるものを燈夜は作る為に、餡を練る京真の隣でピューレを煮詰める燈夜の姿があった。
「ロランさん、何か手伝う事ある?」
カペラが声をかけたのは初夏の気温と戦うロラン。
「かまどこっちの温度を少し下げれそうかい?」
「わかったわ」
彼が作っているのはシフォンケーキ。
玉子の泡立てと手際のよさが決め手ともいえるお菓子といえよう。
カペラが声をかけたころにはもう、生地が出来上がっており、泡だて器で生地を掬うと、落ちた生地がひらひらとボウルの上に落ちていった。
「わ、何だかきれい」
「これを型に入れるんだ」
すばやく生地を型に入れたロランはカペラにかまどの戸を開けるように指示をした。
タイミングよく開けられたかまどの中に型を閉じ込める。
「後は焼くだけ?」
「逆さにして冷ますんだ。あと、お茶会用に蜂蜜と柑橘のエードを作るから手伝って」
「分かったわ」
ロランの言葉にカペラは頷く。
甘い香りの蜂蜜に柑橘の爽やかさと冷水の冷たさは初夏に合う飲み物だ。
「キュジィに何かメッセージを添えたらどうかな」
ぎゅっぎゅとレモンを絞るカペラにロランが言えば彼女は「いい考えね!」と笑顔で頷いた。
さてさて、熱い台所の火の中で餡を練る京真の姿は中々に壮絶に見えて、何を生み出すのだろうかと心配されるほどであった。
餡子の出来はよく、味見をしたら、餡子だと思える。ただ、小豆より色が赤いのは仕方ない。
休ませていた二色の饅頭の生地に餡を包み、蒸して完成だ。
「ピンクの色が可愛いわ」
「赤い芋の皮を煮出して色付けしてます」
蒸しあがった饅頭を見てカペラがはしゃぐ。
「私がいた地方では、赤と白が揃うのは祝いの意味となるのですよ。焼印もあれば完璧かもしれませんが」
京真の説明にカペラは真面目に聞いていた。
焼きあがったケーキを壺に入れたいと言ったのはネージュ。
そのままでもおいしそうなケーキを少しでも保存させたいという考えてケーキの蜜漬けを考えたのだ。
「煮沸終わったわよ」
店長がネージュに言えば、壺は熱で水分が引いていた。
ケーキを中に入れて、ネージュはそっと蜂蜜を入れる。
ひたひたにケーキが蜂蜜に浸かると、ふんわりと甘く華やかな香りがネージュの嗅覚を刺激する。
仕上げに花の蜜漬けで飾る。フタをして麻紐とリボンとでしっかりと封をした。
「美味しく召し上がって頂けますように」
そっと祈りを込めて完成となる。
●
リゼリオ内でヨアキムを見失ったキュジィはため息をついた。
賑やかなリゼリオは好奇心旺盛なヨアキムの気を引くものが多く、それに対して騒ぎを起こす事もあったりするので大変な模様。
歩くトラブルメーカーなヨアキムなので、いざという時に動かなければならない。
「キュジィ、いた!」
後ろから声をかけられて、キュジィが振り向けば、ヨアキムの娘であるカペラが買い物袋を抱えてハンターらしき者たちと一緒に歩いていた。
「ヨアキムさんと離れてしまったのですか?」
心配するネージュにキュジィは笑ってお茶を濁す。
「お父さんの事だし、今にトラブルを起こすから、それまで一緒にお茶でもしない?」
「え、いいんですか!」
ぱっと顔を明るくするキュジィにハンター達は「それでいいのか?」と心を一つにするが口にはしない。
「いい機会です。お話を聞きましょう」
京真が言えば、エミリオも同意。
「さ、行きましょ☆」
ハイバリトンの声にキュジィは誰かいるのかなときょろきょろしたが、カペラに背を押されてカフェへと向かった。
と留守番組のハンター達から配送業者がと痛むもの、痛みにくいものを話し合い、配送を頼んだ。
却下されたものはお茶会で食べたりする事になる。
「リアルブルーで言うところのパート・ド・フリュイね」
「まさか、お茶会用の錦玉羹を作ろうとしたら、送る事になるとは思わなかったよ」
クリスが言えば、燈夜は肩を竦めた。彼が煮詰めていたのは果物のピューレと砂糖を煮詰めて冷ましたお菓子。
「食べるのが楽しみだね」
ロランも楽しみのようであり、追加買出し組の帰りを待つ。
「キュジィちゃん、ご結婚おめでとー!」
お茶会が始まり、エミリオがキュジィに祝いの言葉を述べる。
「腕によりを掛けて作ったわ。保存できる方は奥さんへ送ったから」
クリスの言葉にキュジィは目を瞬かせる。
「どうやって……?」
「アルフェッカさんが本国に問い合わせた」
カペラの答えにキュジィは納得した。
「いつも大変だろうし、少しはゆっくりしなよ」
燈夜の言葉にキュジィは「ありがとうございます。皆さんも席について下さい、失礼します」と爽やかな笑顔でハンター達を座るように勧めてから自身も着席する。
お茶会では燈夜がお茶を淹れてくれて、ロランが進んで給仕役をしてくれた。
注目を受けたのは京真の紅白饅頭。数が多かったので、お茶会に出したのだ。
少し薄い皮にたっぷりの甘い餡子は甘党に喜ばれるもの。
「豆のせいか、紅茶にも合うわ」
クリスは餡子をしげしげ眺めつつ、不思議そうに呟く。
「燈夜ちゃんのお菓子、美味しいわ」
口の中いっぱいに広がる蜂蜜と柑橘果物の甘酸っぱさは口をすぼめてしまうエミリオだが、もう一つ食べたくなってしまう。
「後味の柑橘が爽やかだ」
ロランも頷きつつ、アイスティーを飲む。口の中に残るゼリーの味がアイスティーの香りがさらっていくのが小気味いい。
「クッキーも美味しいですね」
「フィナンシェとマドレーヌ、似てる材料なのに味が違うのね」
京真がクッキーの歯ざわりを楽しんでおり、カペラは二つの違いを楽しむ。
「カペラちゃん、キュジィさんに渡したらどうかしら?」
ネージュが言えば、カペラは思い出したように頷き、席を立ってキュジィの前に立つ。
「キュジィ、いつもお父さんのお世話、本当にありがとう。改めて、ご結婚おめでとう。奥さんと末永く幸せでいてね。ドワーフ工房一同、祝福してるわ」
カペラがカードをキュジィに渡すと、驚いた顔をして、笑顔で「ありがとうございます!」と言った。
喜んでくれるキュジィにカペラもとても嬉しい。
「そういえば、カペラさんの結婚観はどのようなものでしょう?」
京真が尋ねると、カペラは間髪入れずに即答する。
「パパみたいな人と結婚したい!」
パパ……すなわち、それはヨアキムのような相手と結婚したいという事だろうか。
全員が絶句していると、お茶会中は席を外すと言っていた店長が飛び込んだ。
「給仕! ヨアキム様があっちの通りで!」
「キュジィです! ようやく見つかった! 皆さん、私はこれにて失礼します。後は皆さんで楽しんで下さい!」
一礼してキュジィはその場を軽やかに走り去った。
突風のように行ってしまったキュジィを見送ったハンター達は和やかにお茶会を続ける。
カペラの結婚観はなかったことにして。
数日も経たずにして、キュジィの奥方のもとにハンター達が作ってくれたお菓子が到着した。
入り口のドアには「本日貸切」と書いてある紐付きプレートが掛けられている。
「失礼します」
ネージュ(ka0049)がそっとドアを開けて中へ入る。
窓は開けられており、店内に明るい光が入ってとても清潔感がある内装だ。
「いい感じだな」
天井を見上げる白水 燈夜(ka0236)の声を吸い込むような開放感。
店の奥にカフェの店長らしいドワーフの女性と依頼主のカペラがいた。
「来てくれてありがとう!」
笑顔で迎えるカペラは身なりも整えており、可愛らしい笑顔を見せる。
「通りすがりだが、祝うよ」
そう言ったロラン・ラコート(ka0363)にカペラは口元に指先を重ねてくすくす笑う。
「祝う気持がそこにあれば。歓迎するわ」
「よかった……」
両手を広げてカペラが宣言すると、穏やかなハイバリトンが響く。
誰が言ったの? といわんばかりにカペラがロランと燈夜の方を向くが、彼は「違う」と返すし、紫条京真(ka0777)は既知だ。
店に入った時、ネージュの声は聞いた。
「え……えと……」
消去法で消し去りつつたどり着いた二択。
「こう見えて、オトコノコ、なの☆」
若いのに艶めいた笑みを浮かべるエミリオ・ブラックウェル(ka3840)と平然としてるクリス・クロフォード(ka3628)にカペラは目を丸くする。
自分の身の回りにはいないので、この手の男子にカペラには新鮮。
「ハンターも色々いるのね」
見上げるカペラはエミリオの手やクリスの髪を見たりしている。
「姫、さっさとやるんでしょう」
ドワーフ女性に窘められたカペラは今回の説明をはじめる。
「私の父親の守り役であるキュジィ結婚したの」
その話はハンター達の耳に入っている。
「で、キュジィにも色々お世話になっているし、祝い事なので、キュジィをもてなしてあげたいし、旦那様を待っているだろう奥様にもお菓子を贈りたいなって思うの」
「それでキュジィと共にお茶会って事だね」
燈夜の言葉にカペラは頷く。
「料理に詳しい人だと、配送に対しての配慮が出来るんじゃないかなって」
「贈る時は衛生面も考えないとね。任せときなさい」
頷くクリスが自信を持ってカペラに告げる。
「ところで、その間のヨアキムさんは……」
京真の言葉に全員が言葉を噤ませた。
「さ、さ、はっじめよー」
二回手を叩いてドワーフ店長が催促すると、ハンターとカペラが動き出した。
●
京真は鍋持参で現れていた。
「その中身はなぁに? 見てもいい?」
カペラは京真にそう尋ねると、彼は快く中を見せてくれた。
鍋の中にあるのは水に浸かった赤い豆。水分を含んだ豆はぷっくりと膨らんでいる。
「リアルブルーの豆?」
「いいえ、こちらの市場で入手したものですよ。小豆に似たようなものを探していました」
これを火にかけますと言い、京真が火をつけた。
「何を作るの?」
「紅白饅頭というお菓子です、リアルブルーのとある地域で作られる結婚用の引き出物です」
ついでに引き出物の意味を伝えると、カペラはへぇええっと納得する。
湯が煮立ち、あぶく……灰汁が出てきてからが大変だ。
カペラが持ってきた蜂蜜をティースプーンに少しとって香りを確認しているのはクリスとネージュだ。
「香りは押さえつつも華やかね」
味を確かめる為に一息つくとクリスとネージュは顔を見合わせた。
「甘味がしっかりしてますね」
「鼻に抜ける香りがいいわ。そのままでも美味しいけど」
砂糖の増減を考えつつ、次に花の蜜漬けを確認。
「あ、こっちは香りがしっかりありますね」
「味が濃い目の生地にも負けないわ。ハーブっぽい?」
二人が確認しあうと、店長がひょっこりと話に加わる。
「辺境は時期によって住む場所を移動する部族もいるし、食料は基本、保存が出来る食品を作るようにしているの。出来るだけ保存できるようにするからね」
なるほどと、二人は頷いた。
早速お手伝いをしているのはエミリオの所。
本業もあってか、かまど番をしているカペラはてきぱき動いていた。
エミリオが作ろうとしているのはクッキーである。
レーズンを蜂蜜に浸して戻したバタークッキーとベリーと柑橘類のピールと花の蜜漬けとピールの三種類。
ドライベリーやレーズンなどを戻している間に生地を作成する。元となる生地は二種類なので、二人で手分けをして作る事にした。
「蜂蜜、いい匂いね」
エミリオに誉めてもらってカペラは上機嫌。
自身が生まれた辺境のものがほめられるのは嬉しい。
「ベリーと柑橘のピールってはじめて見るわ」
「そうなの? ベリーは一度ドライフルーツにしているから、甘味がぎゅっと増しているの。甘いだけじゃ舌が疲れるから、柑橘類で後味をさわやかにするのよ」
「へぇー。お茶会が楽しみ!」
「それよりも贈り物でしょ」
目を輝かせるカペラにエミリオがくすくす笑う。
「だって、まずは味見でしょ!」
「それはそうだけど、仕方ないわね」
更に戻していたフルーツを生地に混ぜ込み、形を形成する。カペラの生地で足りないところはエミリオがフォローをした。
後は焼くだけであり、エミリオは他の人の手伝いに行かせるように告げた。
「でも、かまど……」
「そういう事は任せて、ね?」
片目を瞑るエミリオに「任せたわ」と言ってカペラは他の人たちの所へ向かった。
蜂蜜の確認をしたクリスはカペラを呼び寄せる。
「料理って何も出来ないの?」
「言われたとおりに切ったり、網に並べたりはできるけど、皮むきは不恰好になるの。難しい味や焼加減とかはダメ。」
クリスの問いにカペラは肩をすくめて応えた。
スープなら煮込むだけなので、難しい味調整がなければまぁ、作れるだろうとクリスは認識する。
「マドレーヌやフィナンシェは簡単だから、覚えていきなさいよ」
二人で作りながらマドレーヌやフィナンシェの話をクリスがしていく。
「こういうお菓子、こっちでも見るわ」
「リアルブルーではアーモンドというナッツを使うんだけど、こっちでは似たような粉があったからその粉末を使うわね。玉子は卵白のみ使うの、マドレーヌは全卵」
手際よくフィナンシェの生地を作っていくのに対し、カペラは慎重に生地を練っている。
「マドレーヌか貝殻型の型に流すんだけど、今回は丸いので」
「フィナンシェは?」
「そっちは角型。向こうでは金を角型にして、財産貯蔵する事もあるの。重さや大きさも決まってて、それで純金か確認する事もできるの」
クリスの説明にカペラの目が輝く。
「貝殻型の型なら私にも作れそう。どういうのか教えてくれる?」
「……そっち? いや、本業だろうけど」
呆れるクリスだが、カペラの生地のフォローをしてそれぞれを型に入れてかまどへと入れた。
燈夜はパウンドケーキを作っていた。
初夏ともあり、バターは簡単に常温へと戻り、柔らかくなっている。
レモンに似た柑橘類はとても爽やかな香りをしているし、蜂蜜とよく合いそうだった。
リアルブルーにておなじみだった小麦粉とは見た目違う粉であるが、成分は同じの全粒粉なので、何度も作っている内にクセなどを掴んでいった。
もといた世界より作れるものが限られているように見えるが、作れそうだというものを探すのもまた面白い。
「カペラ、レモンを摩り下ろしてほしいんだけど」
「わかったわ」
燈夜の言葉にカペラは快く了承する。
「こういった果物はあまり、辺境では見かけないのよね」
「そうなんだ。柑橘の皮は白いのが入ると苦くなるから、気をつけて」
カペラの言葉に相槌を打ちつつ、燈夜が声をかける。
「寒天も手に入ればよかったんだけど……」
呟く燈夜にカペラが尋ねると、彼はもう一品作りたかったようだ。
形状を聞けば、カペラは店長を呼んで、燈夜に作り方を伝授するように言う。
パウンドケーキを焼いたり、覚ましている間にあるものを燈夜は作る為に、餡を練る京真の隣でピューレを煮詰める燈夜の姿があった。
「ロランさん、何か手伝う事ある?」
カペラが声をかけたのは初夏の気温と戦うロラン。
「かまどこっちの温度を少し下げれそうかい?」
「わかったわ」
彼が作っているのはシフォンケーキ。
玉子の泡立てと手際のよさが決め手ともいえるお菓子といえよう。
カペラが声をかけたころにはもう、生地が出来上がっており、泡だて器で生地を掬うと、落ちた生地がひらひらとボウルの上に落ちていった。
「わ、何だかきれい」
「これを型に入れるんだ」
すばやく生地を型に入れたロランはカペラにかまどの戸を開けるように指示をした。
タイミングよく開けられたかまどの中に型を閉じ込める。
「後は焼くだけ?」
「逆さにして冷ますんだ。あと、お茶会用に蜂蜜と柑橘のエードを作るから手伝って」
「分かったわ」
ロランの言葉にカペラは頷く。
甘い香りの蜂蜜に柑橘の爽やかさと冷水の冷たさは初夏に合う飲み物だ。
「キュジィに何かメッセージを添えたらどうかな」
ぎゅっぎゅとレモンを絞るカペラにロランが言えば彼女は「いい考えね!」と笑顔で頷いた。
さてさて、熱い台所の火の中で餡を練る京真の姿は中々に壮絶に見えて、何を生み出すのだろうかと心配されるほどであった。
餡子の出来はよく、味見をしたら、餡子だと思える。ただ、小豆より色が赤いのは仕方ない。
休ませていた二色の饅頭の生地に餡を包み、蒸して完成だ。
「ピンクの色が可愛いわ」
「赤い芋の皮を煮出して色付けしてます」
蒸しあがった饅頭を見てカペラがはしゃぐ。
「私がいた地方では、赤と白が揃うのは祝いの意味となるのですよ。焼印もあれば完璧かもしれませんが」
京真の説明にカペラは真面目に聞いていた。
焼きあがったケーキを壺に入れたいと言ったのはネージュ。
そのままでもおいしそうなケーキを少しでも保存させたいという考えてケーキの蜜漬けを考えたのだ。
「煮沸終わったわよ」
店長がネージュに言えば、壺は熱で水分が引いていた。
ケーキを中に入れて、ネージュはそっと蜂蜜を入れる。
ひたひたにケーキが蜂蜜に浸かると、ふんわりと甘く華やかな香りがネージュの嗅覚を刺激する。
仕上げに花の蜜漬けで飾る。フタをして麻紐とリボンとでしっかりと封をした。
「美味しく召し上がって頂けますように」
そっと祈りを込めて完成となる。
●
リゼリオ内でヨアキムを見失ったキュジィはため息をついた。
賑やかなリゼリオは好奇心旺盛なヨアキムの気を引くものが多く、それに対して騒ぎを起こす事もあったりするので大変な模様。
歩くトラブルメーカーなヨアキムなので、いざという時に動かなければならない。
「キュジィ、いた!」
後ろから声をかけられて、キュジィが振り向けば、ヨアキムの娘であるカペラが買い物袋を抱えてハンターらしき者たちと一緒に歩いていた。
「ヨアキムさんと離れてしまったのですか?」
心配するネージュにキュジィは笑ってお茶を濁す。
「お父さんの事だし、今にトラブルを起こすから、それまで一緒にお茶でもしない?」
「え、いいんですか!」
ぱっと顔を明るくするキュジィにハンター達は「それでいいのか?」と心を一つにするが口にはしない。
「いい機会です。お話を聞きましょう」
京真が言えば、エミリオも同意。
「さ、行きましょ☆」
ハイバリトンの声にキュジィは誰かいるのかなときょろきょろしたが、カペラに背を押されてカフェへと向かった。
と留守番組のハンター達から配送業者がと痛むもの、痛みにくいものを話し合い、配送を頼んだ。
却下されたものはお茶会で食べたりする事になる。
「リアルブルーで言うところのパート・ド・フリュイね」
「まさか、お茶会用の錦玉羹を作ろうとしたら、送る事になるとは思わなかったよ」
クリスが言えば、燈夜は肩を竦めた。彼が煮詰めていたのは果物のピューレと砂糖を煮詰めて冷ましたお菓子。
「食べるのが楽しみだね」
ロランも楽しみのようであり、追加買出し組の帰りを待つ。
「キュジィちゃん、ご結婚おめでとー!」
お茶会が始まり、エミリオがキュジィに祝いの言葉を述べる。
「腕によりを掛けて作ったわ。保存できる方は奥さんへ送ったから」
クリスの言葉にキュジィは目を瞬かせる。
「どうやって……?」
「アルフェッカさんが本国に問い合わせた」
カペラの答えにキュジィは納得した。
「いつも大変だろうし、少しはゆっくりしなよ」
燈夜の言葉にキュジィは「ありがとうございます。皆さんも席について下さい、失礼します」と爽やかな笑顔でハンター達を座るように勧めてから自身も着席する。
お茶会では燈夜がお茶を淹れてくれて、ロランが進んで給仕役をしてくれた。
注目を受けたのは京真の紅白饅頭。数が多かったので、お茶会に出したのだ。
少し薄い皮にたっぷりの甘い餡子は甘党に喜ばれるもの。
「豆のせいか、紅茶にも合うわ」
クリスは餡子をしげしげ眺めつつ、不思議そうに呟く。
「燈夜ちゃんのお菓子、美味しいわ」
口の中いっぱいに広がる蜂蜜と柑橘果物の甘酸っぱさは口をすぼめてしまうエミリオだが、もう一つ食べたくなってしまう。
「後味の柑橘が爽やかだ」
ロランも頷きつつ、アイスティーを飲む。口の中に残るゼリーの味がアイスティーの香りがさらっていくのが小気味いい。
「クッキーも美味しいですね」
「フィナンシェとマドレーヌ、似てる材料なのに味が違うのね」
京真がクッキーの歯ざわりを楽しんでおり、カペラは二つの違いを楽しむ。
「カペラちゃん、キュジィさんに渡したらどうかしら?」
ネージュが言えば、カペラは思い出したように頷き、席を立ってキュジィの前に立つ。
「キュジィ、いつもお父さんのお世話、本当にありがとう。改めて、ご結婚おめでとう。奥さんと末永く幸せでいてね。ドワーフ工房一同、祝福してるわ」
カペラがカードをキュジィに渡すと、驚いた顔をして、笑顔で「ありがとうございます!」と言った。
喜んでくれるキュジィにカペラもとても嬉しい。
「そういえば、カペラさんの結婚観はどのようなものでしょう?」
京真が尋ねると、カペラは間髪入れずに即答する。
「パパみたいな人と結婚したい!」
パパ……すなわち、それはヨアキムのような相手と結婚したいという事だろうか。
全員が絶句していると、お茶会中は席を外すと言っていた店長が飛び込んだ。
「給仕! ヨアキム様があっちの通りで!」
「キュジィです! ようやく見つかった! 皆さん、私はこれにて失礼します。後は皆さんで楽しんで下さい!」
一礼してキュジィはその場を軽やかに走り去った。
突風のように行ってしまったキュジィを見送ったハンター達は和やかにお茶会を続ける。
カペラの結婚観はなかったことにして。
数日も経たずにして、キュジィの奥方のもとにハンター達が作ってくれたお菓子が到着した。
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相談卓 クリス・クロフォード(ka3628) 人間(リアルブルー)|18才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/07/01 00:55:35 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/28 14:58:14 |