ゲスト
(ka0000)
救出のタイミリミット
マスター:香月丈流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/30 22:00
- 完成日
- 2015/07/09 13:51
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「センセー! めずらしいムシさんがいるよ~!」
「お母さ……じゃなくて、先生! 噴水で水遊びしても良いですか!?」
「うぅ~……せんせ~、ねむい~……」
「キミ達! 先生殿を困らせるのは止めたまえ!」
広場に響く、少年少女の元気な声。歳はバラバラで、下は5歳前後、上は15歳くらいだろう。
この子供達は、歪虚が原因で親や肉親を失っている。ハンターズソサエティの設立以降、歪虚による被害は減っているが……ゼロになったワケではない。もしかしたら、今もどこかで『悲劇』が生まれているかもしれない。
そういった悲しみを少しでも減らすため、戦災孤児を引き取る施設が急増。子供達を守り、育て、未来へと導くため、大人達は日夜奮闘している。
帝国にある小さな孤児院も、その1つである。今日は院生20人を連れ、郊外の広場に遊びに来ていた。
「みんな~! あんまり遠くに行かないでね~!」
『は~い!』
『先生』の言葉に、子供達が元気良く返事をする。院生達を引率しているのは、20代後半くらいの女性職員。彼女は成人するまで、この孤児院で生活していた。つまりは、戦災孤児の1人である。
だからこそ……院生達の気持ちが、人一倍理解できるのかもしれない。子供達にとっては、良き相談相手であり、姉であり、母であり……互いに信頼し合い、絆を深めている。
だが……。
「きゃ~~~!!」
平和な時間は、長く続かなかった。子供達の悲鳴に驚きつつ、視線を向ける先生。その瞳に映ったのは、異形の姿だった。
細長い体。巨大な体躯。腐れ落ちる血肉。硬そうな鱗。太い輪状の目。
様々な情報が一気に流れこみ、腐臭が鼻に突き刺さる。広場に接する森から現れた『10m近い大蛇のゾンビ』……その狙いは分からないが、彼女は反射的に叫んだ。
「逃げて! みんな逃げて! 早く!!」
子供達に向かって、先生が大声で叫ぶ。それが合図になったかの如く、院生達は蜘蛛の子を散らすように走りだした。
大蛇はそれを追うワケでもなく、舌をチラつかせて視線を巡らせている。まるで、獲物を探すかのように。
「きゃっ!」
先生の耳に届いた、短い悲鳴。それは、14歳くらいの少女が発した声だった。何かの拍子に転んだらしく、膝が切れて鮮血が流れ落ちている。
苦痛で顔を歪ませながらも、少女は立ち上がって再び走り始めた。ほぼ同時に、大蛇が少女の背後から迫る。巨体からは想像もできない、素早い動き。少女が背後を振り向くと、巨大な口から舌が伸びてきた。
「危ない!!」
叫びと共に、先生が少女を突き飛ばす。反動で少女の体は大きく吹き飛び、大蛇から逃れる事になった。
その代わり……蛇の舌が先生に絡み付く。そのまま、彼女の体は大蛇の口内に消えていった。
いや、正確には『体内』と言うべきか。普通の蛇がネズミを喰らうように、先生は大蛇に飲み込まれた。生きたまま、丸呑みに。
「せ……せんせーーー!!」
少女の悲痛な叫びも、大蛇には届かない。歪虚や雑魔は、生命体の天敵。強大な力を持つ奴らに、一般人では抗う術は無い。
だが、絶望の中にも小さな希望は残っている。幸か不幸か、この広場はハンターズソサエティから遠くない。既に最年長の院生が駆け込み、ハンターに助けを求めていた。
「お母さ……じゃなくて、先生! 噴水で水遊びしても良いですか!?」
「うぅ~……せんせ~、ねむい~……」
「キミ達! 先生殿を困らせるのは止めたまえ!」
広場に響く、少年少女の元気な声。歳はバラバラで、下は5歳前後、上は15歳くらいだろう。
この子供達は、歪虚が原因で親や肉親を失っている。ハンターズソサエティの設立以降、歪虚による被害は減っているが……ゼロになったワケではない。もしかしたら、今もどこかで『悲劇』が生まれているかもしれない。
そういった悲しみを少しでも減らすため、戦災孤児を引き取る施設が急増。子供達を守り、育て、未来へと導くため、大人達は日夜奮闘している。
帝国にある小さな孤児院も、その1つである。今日は院生20人を連れ、郊外の広場に遊びに来ていた。
「みんな~! あんまり遠くに行かないでね~!」
『は~い!』
『先生』の言葉に、子供達が元気良く返事をする。院生達を引率しているのは、20代後半くらいの女性職員。彼女は成人するまで、この孤児院で生活していた。つまりは、戦災孤児の1人である。
だからこそ……院生達の気持ちが、人一倍理解できるのかもしれない。子供達にとっては、良き相談相手であり、姉であり、母であり……互いに信頼し合い、絆を深めている。
だが……。
「きゃ~~~!!」
平和な時間は、長く続かなかった。子供達の悲鳴に驚きつつ、視線を向ける先生。その瞳に映ったのは、異形の姿だった。
細長い体。巨大な体躯。腐れ落ちる血肉。硬そうな鱗。太い輪状の目。
様々な情報が一気に流れこみ、腐臭が鼻に突き刺さる。広場に接する森から現れた『10m近い大蛇のゾンビ』……その狙いは分からないが、彼女は反射的に叫んだ。
「逃げて! みんな逃げて! 早く!!」
子供達に向かって、先生が大声で叫ぶ。それが合図になったかの如く、院生達は蜘蛛の子を散らすように走りだした。
大蛇はそれを追うワケでもなく、舌をチラつかせて視線を巡らせている。まるで、獲物を探すかのように。
「きゃっ!」
先生の耳に届いた、短い悲鳴。それは、14歳くらいの少女が発した声だった。何かの拍子に転んだらしく、膝が切れて鮮血が流れ落ちている。
苦痛で顔を歪ませながらも、少女は立ち上がって再び走り始めた。ほぼ同時に、大蛇が少女の背後から迫る。巨体からは想像もできない、素早い動き。少女が背後を振り向くと、巨大な口から舌が伸びてきた。
「危ない!!」
叫びと共に、先生が少女を突き飛ばす。反動で少女の体は大きく吹き飛び、大蛇から逃れる事になった。
その代わり……蛇の舌が先生に絡み付く。そのまま、彼女の体は大蛇の口内に消えていった。
いや、正確には『体内』と言うべきか。普通の蛇がネズミを喰らうように、先生は大蛇に飲み込まれた。生きたまま、丸呑みに。
「せ……せんせーーー!!」
少女の悲痛な叫びも、大蛇には届かない。歪虚や雑魔は、生命体の天敵。強大な力を持つ奴らに、一般人では抗う術は無い。
だが、絶望の中にも小さな希望は残っている。幸か不幸か、この広場はハンターズソサエティから遠くない。既に最年長の院生が駆け込み、ハンターに助けを求めていた。
リプレイ本文
●
「せ……せんせーーー!!」
「ウソ、ですよね? 先生……返事してくださいっ!」
耳を貫くような、子供達の叫びと泣き声。彼ら……孤児院の院生達は、絶望の底に突き落とされていた。誰もが『先生』と慕う女性職員が、大蛇のゾンビに飲み込まれてしまったからだ。しかも……目の前で。
人を飲み込める大きさの大蛇……そんな規格外の存在は、雑魔しか居ない。だが、郊外の広場に異形が現れるなんて、誰にも想像出来なかった事である。
だからこそ……少年少女達のショックも大きい。泣き叫ぶ者も居れば、驚きと混乱で言葉を失っている者も居る。
そして……当然ながら、逆上する者も。
「返せ……先生を返せよ!」
「この、バカヘビ! ばかばかばか!」
大蛇に石を投げたり、棒で殴りかかる子供達。雑魔は『獲物』を消化中なのか、トグロを巻いたまま動かない。ある意味、不幸中の幸いだろう。
しかし……幸運は長く続かない。子供達の抵抗に反応したのか、大蛇がゆっくりと体を起こす。腹部が膨らんだまま首を上げ、周囲に視線を向けた。
「ひっ……!?」
声にならない悲鳴。雑魔に睨まれた恐怖で、子供達は完全に硬直している。これから何が起きるか……想像するのは難しくない。残酷な予測通り、大蛇は牙を剥き出しにして院生達に襲い掛かった。
ほぼ同時に、広場に銃声が響く。次いで、大蛇の横面を弾丸が貫通。その衝撃で腐肉が飛び散り、雑魔の動きが止まった。間髪入れず、4つの人影が子供達と大蛇の間に割って入る。
「死体の癖に食事しようなんぞ、都合よすぎやしねーかい?」
不敵な笑みを浮かべ、龍崎・カズマ(ka0178)は少年の頭を力強く叩いた。若干、粗暴な雰囲気が漂う青年だが、その中にも優しさを感じる。少なくとも、子供達の『敵』ではない。
むしろ、彼らは雑魔や歪虚の『敵』……覚醒者。その存在に気付いた大蛇は、威嚇するようにシャーッという音を出し、丸太のように太い尻尾を振り回した。
敵の動きを察知し、リュー・グランフェスト(ka2419)とミリア・コーネリウス(ka1287)が武器を構えて飛び出す。全ては、子供達を守るために。
防御を固めた2人に、大蛇の一撃が直撃。衝撃が全身を駆け抜けたが、2人は地面を強く踏み締めて耐える。結果として、子供達に被害は及ばなかった。
「誰も死なせない……必ず助けてやる。必ずだ!」
リューは覚悟を口にし、マテリアルを一気に解放。全身に赤い燐光を纏った姿は、燃え盛る炎を背負っているようにも見える。
「今から『開き』にしてやるからな。大人しくしてろよ?」
彼の隣で、ミリアは身の丈と変わらない大剣を構え直した。金髪碧眼の少女が使うには少々不釣合いな武器ではあるが、彼女はそれを手足のように扱っている。
「お前が『飲み込んだ』者は返して貰う。力尽くでも、な」
静かに、榊 兵庫(ka0010)は黒い瞳を巡らせた。周囲と敵の状況を素早く把握し、後ろ手で子供達に『離れろ』という指示を送る。それに従い、大蛇の周囲に居た子供達が一目散に走り出した。
彼らが逃げる先……広場の入り口には、避難誘導を担当するグエン・チ・ホア(ka5051)と霧雨 悠月(ka4130)が控えている。2人に向かって、カズマは大声で叫んだ。
「そっちは頼んだぞ! 避難だけじゃなくて、ゲストの乱入も抑えてくれよ?」
ゲスト……つまりは、無鉄砲な院生が乱入しないよう監視してくれ、という意味である。カズマの意図を理解し、2人は避難誘導を始めた。
「こちらから右回りに逃げてください! 大丈夫ですから、落ち着いて!」
逃げて来る院生達に、グエンの指示が飛ぶ。彼女の故郷では大蛇被害が少なくなかったし、こういう状況には慣れている。過去の経験から『蛇の攻撃範囲』を予測し、安全な方向へと誘導していく。
パニックで泣き叫ぶ子供や、動けなくなっている者は両脇に抱え、広場から移動。145cmで細身な外見に反して、意外とパワフルなようだ。
避難する院生達とは逆に、雑魔に突撃する少女が1人。
「人の命が掛かっていますです……急ぎましょう!」
独特の口調で仲間達に声を掛け、ターニャ=リュイセンヴェルグ(ka4979)が間合いを詰める。自身の身長よりも大きな槍にマテリアルを込めた瞬間、彼女の背後に『黒狼の幻影』が現れた。
その状態で地面を蹴り、跳躍から槍を全力で薙ぐ。強烈な殴打が蛇の頭部に命中し、全身が大きく揺れた。
着地と同時に、ターニャは槍を構え直して口を開く。
「蛇の消化は、それなりに時間が掛かる……今は安全性を考慮するべきだ」
一瞬、その場に居た全員が耳を疑った。攻撃前は明るく元気だったターニャが、今は冷たく落ち着いた口調に変わっている。赤い瞳も鋭くなり、まるで『獲物を狩る狼』のようだ。
これが、彼女の『覚醒状態』。ハンター達がその事に気付いた時、2度目の銃声が周囲に響いた。
銃撃を放ったのは、アルマ・アニムス(ka4901)。最初に蛇を狙撃したのも、彼である。今度は雑魔を牽制するため、鼻先に銃弾を撃ち込んだ。
「子供達に『二度も』あんな思いをさせません……そのために来たんですっ!」
力強く、覚悟の籠った言葉。彼と双子の妹は、ハンターだった両親を幼い頃に亡くしている。孤児院の子供達は実の親を亡くし……今度は、親代わりの先生を失おうとしている。
失う悲しみを、2度も体験させるワケにはいかない。アルマは銃を構え、雑魔に狙いを定めた。
『先生を助けたい』という気持ちは、全員同じである。飲み込まれた人質を傷付けないよう、6人は大蛇の『膨れた腹』を避け、武器を奔らせた。
●
大蛇を足止めしている間に、子供達は広場を離れて街道を走っていた。目的地は、最寄りの集会所。大人の足なら5分程度で移動できるが……院生達の年齢は、5歳から15歳とバラバラ。しかも20人前後が一度に移動しているため、時間がかかっていた。
そんな中、10歳くらいの少年が突然足を止めた。
「やっぱり僕も戦う! 先生を助ける『お手伝い』しなきゃ!」
彼の叫びに、他の院生達も足を止める。恐らく少年は、ハンター達だけ戦わせて自分達が逃げるのは申し訳ない、と思ったのだろう。その純粋な気持ちは嬉しいが……ただの子供が雑魔と戦えるワケがない。
悠月は少年の手を取り、しゃがんで視線を合わせた。その整った顔に、微笑みを浮かべて。
「大丈夫、先生は必ず助けるよ。皆、強い人ばかりだからね。今は、みんなと一緒に避難しよう?」
あくまでも優しく、語り掛けるような穏やかな口調。カズマに頼まれた事もあるが、悠月自身、大切な人を心配する気持ちは分かる。だからこそ……院生達を危険に晒したくはない。
数秒の沈黙。
悠月の言葉が通じたのか、少年は申し訳なさそうな表情で、静かに頷いた。
そっと、悠月は少年の頭を撫でる。優しい笑顔を絶やさず、少年の手を取ってゆっくりと走り始めた。
再度、避難を始める院生達。途中、転んだ少女をグエンが背負ったり、走り疲れた者を悠月が抱えたりしたが、広場を出てから数分後には集会所に到着。誰もが安堵の表情で腰を下ろした。
「ここまで来れば大丈夫ですね。全員、無事ですか? はぐれた人とか居ませんか?」
念のため、悠月は孤児院の名簿を使って点呼を取る。彼とグエンの誘導が功を奏し、全員無事に避難完了である。
院生達の安全を確保し、悠月とグエンは視線を合わせた。避難は終わったが、『依頼』は終わっていない。子供達に『迎えに来るまで集会所から出ないで』と念を押し、2人は広場に向かって全力で駆け出した。
●
広場では斬撃と銃撃が入り乱れ、覚醒者と雑魔の交錯が続いている。
「聞こえるか、先生! 待ってろ、今助けてやるからな!」
飲まれた先生に声を掛けながら、リューが大蛇の懐に潜り込む。移動した勢いを利用して高く飛び、振動刀を全力で振り下ろした。内臓されたモーターが低く唸り、超音波振動を伴った剣撃が雑魔の右目を斬り潰す。
追撃するように、カズマは巨大な剣を走らせた。斬撃の瞬間、マテリアルを全身に纏って精度の高い攻撃を繰り出す。それに伴い、黒髪がくすんだ金色に、黒眼が金眼に変化。鋭い一撃が蛇の『胴と尾の境目』辺りを斬り裂き、臓器まで到達した。
反撃とばかりに、尻尾を振り回す雑魔。誰もが回避や防御に移る中、兵庫は槍を手に突撃した。当然、尾の殴打が直撃し、衝撃が全身を駆け巡る。
「一撃でも多く穂先を叩き込めば、それだけ敵を葬る時間が短くなる。多少の怪我など問題外だ!」
先生を助けるためなら、兵庫は負傷も厭わない。痛みに耐え、槍を全力で振り下ろした。独特の穂先が尻尾を斬り裂き、腐肉が派手に崩れ落ちる。
「同感。体張って子供を守った先生は、体張ってでも助けてやらないと」
兵庫の一言に、ニヤリと笑うミリア。戦闘が始まってから、彼女はずっと『隙』を窺っていた。敵の動きを止め、勝負を一気に決めるようなチャンスを。
集中力を高めるミリアの隣を、グエンが駆け抜ける。素早い移動速度は、まるで鋭い風。左右の『湾曲した刀身の短剣』を構えた直後、素早い動きで斬撃を放つ。双剣が蛇の尾で重なり、十字の傷を刻み込んだ。
「お待たせ。さて……その腐りきったハラワタから、人質を解放して貰おうか」
グエンに続き、悠月も合流。疾走する動きに合わせ、黒い頭髪が銀色に変わっていく。小柄な体で高く跳躍し、大蛇の頭を狙って刀を薙いだ。
と同時に、『狼の遠吠え』に似た刃音が響く。悠月の斬撃が雑魔の横面を斬り裂き、骨の一部が露になった。
8人揃った開拓者を振り払うように、大蛇は威嚇音と共に尾を振り回す。その勢いは、今日一番の速度と力強さを供えている。
この一撃を、ミリアは待っていた。
どんな相手でも、全力で攻撃した直後は隙が生まれる。彼女は両腕を広げ、尻尾の殴打を全身で受け止めた。痛みを無視し、肌が赤くなっても微塵も気にしない。
命中と同時に片腕を回し、尾を抑え込む。更に大剣を突き刺し、地面に縫い止めた。
「今だ、斬れ! ボクは気にせず、やれ!」
仲間達に向かって、ミリアが叫ぶ。雑魔を倒すためなら、自分が犠牲になっても構わない……彼女は、そこまで覚悟して戦いに臨んでいた。
だが、尾を封じられた程度では大蛇の動きは止まらない。牙を剥き、体を捻ってミリアに襲い掛かった。
その牙が届くより早く、アルマが引金を引く。乾いた銃声と共に弾丸が宙を奔り、大蛇の左目を直撃。言葉にするのは簡単だが、動く小さな的を狙撃するのは難しい。射撃精度を見るだけで、アルマの技量が窺える。
銃撃で視界を奪われた雑魔は、苦悶の声を上げるように天を仰いだ。その頭部に、『白い影』と『黒い影』が舞い降りる。
「貴様の生死に興味は無いが、考える事は同じようだな」
ターニャは大蛇に馬乗りし、首を狙って槍を突き刺す。
「お手伝いします! 3人でなら、取り押さえられますよ!」
グエンは敵の頭部に全体重を乗せ、脳の辺りに短剣を突き刺した。
頭上からの強襲を喰らい、激しく暴れる大蛇。リューは舌打ちしつつ、地面を蹴って大きく踏み込んだ。
「ったく。おまえ等、無理し過ぎだ!」
厳しい口調とは裏腹に、彼は微笑んでいる。振動刀を突き出して一気に間合いを詰め、雑魔の横面に切先を突き刺した。圧倒的な威力と衝撃で、大蛇の上半身が真横に倒れていく。
ターニャとグエンは素早く跳び上がり、落下しながら武器を構えた。リューが突撃の勢いを利用して敵を地面に縫い止めると、2人もそれに加勢。下顎、横面、首元に武器が突き刺さり、上半身の動きも完全に封じた。
「『体を張る』意味が違うだろ、馬鹿が!」
叱咤の言葉を口にしながらも、カズマは煌剣を構える。
「心意気は買ってやる。が、仲間を犠牲にする気は毛頭ない……!」
裂帛の気合を込め、兵庫は全身のマテリアルを開放。相談もアイコンタクトも無く、2人はタイミングを合わせて突撃した。
金色の疾風と化したカズマは、地面を蹴って更に加速。集中力を研ぎ澄まし、一点を狙って斬撃を放った。白光の剣閃がミリアの横を通過し、雑魔の尾を両断。当然、体内の先生もミリアも、斬撃を喰らっていない。
兵庫は槍にマテリアルを込め、疾走から渾身の力で振り下ろした。宙に流星の如き軌跡が描かれ、穂先が大蛇の『首』を直撃。そのまま腐肉と骨を斬り裂き、首を寸断した。
尻尾と頭部を失い、雑魔の動きは完全に沈黙。ゾンビと化した大蛇は、二度と動く事は無かった。
●
雑魔を倒したハンター達は、死骸の中から先生を救出。気を失い、全身に軽度のヤケドを負っていたが、命に別状はナシ。悠月とアルマは準備した道具で応急処置を施し、兵庫が手配していた医師達が治療を引き継いだ。
グエンと悠月は院生達を迎えに出発し、残った6人は大蛇の死骸を森の奥に移動。そこに穴を掘って簡単に埋葬し、手を合わせて祈りを捧げた。
『センセ~~~!!』
6人が広場に戻ったのと、院生達が到着したのは、ほぼ同じタイミングだった。毛布に包まれ、顔の一部に包帯を巻かれた先生を、子供達が取り囲む。申し訳ない気持ちと安心が入り混じり、全員が涙を浮かべていた。
「大丈夫。気を失ってるけど、大した怪我もしてないよ」
子供達を安心させるように、悠月が優しく語り掛ける。彼の言葉で安心したのか、院生はようやく笑顔を浮かべた。
「先生、すごく立派な方ですね……やろうと思っても、なかなか出来る事じゃないですよ」
アルマの言う通り、自分を犠牲にして他人を救うのは難しい。それが一般人なら、尚更に。覚醒者のアルマが関心するのも、当然の事だろう。
「うん! センセーはスゴいんだよ!」
「あたし達のセンセ~だもん! ハンターさんと同じくらいスッゴイ人なの!」
まるで先生の事を自慢するように、子供達が次々に口を開く。アルマが先生を褒めてくれたのが嬉しいのだろう。目をキラキラと輝かせている。
「みんな、先生の事が大好きなんだね……」
院生達に釣られるように、悠月も笑みを浮かべた。厳しい戦いだったが、子供達の笑顔を見たら苦労も吹き飛ぶ。皆を助けられて良かったと、心の底から思った。
8人の活躍により、先生は無事に救出され、死者も居ない。一件落着に思えたが……アルマは気付いてしまった。子供達の中にも、怪我人が居る事に。
「次は、皆さんの番ですよ。怪我してる人は、遠慮なく言って下さい。痛いのはダメですっ!」
応急処置の道具を手に、優しく微笑むアルマ。大きな傷を負っている者は居ないが、小さくても傷は傷。痛いまま放置は出来ない。
彼が院生の治療を終えた頃、先生が静かに目を覚ました。
「せ……せんせーーー!!」
「ウソ、ですよね? 先生……返事してくださいっ!」
耳を貫くような、子供達の叫びと泣き声。彼ら……孤児院の院生達は、絶望の底に突き落とされていた。誰もが『先生』と慕う女性職員が、大蛇のゾンビに飲み込まれてしまったからだ。しかも……目の前で。
人を飲み込める大きさの大蛇……そんな規格外の存在は、雑魔しか居ない。だが、郊外の広場に異形が現れるなんて、誰にも想像出来なかった事である。
だからこそ……少年少女達のショックも大きい。泣き叫ぶ者も居れば、驚きと混乱で言葉を失っている者も居る。
そして……当然ながら、逆上する者も。
「返せ……先生を返せよ!」
「この、バカヘビ! ばかばかばか!」
大蛇に石を投げたり、棒で殴りかかる子供達。雑魔は『獲物』を消化中なのか、トグロを巻いたまま動かない。ある意味、不幸中の幸いだろう。
しかし……幸運は長く続かない。子供達の抵抗に反応したのか、大蛇がゆっくりと体を起こす。腹部が膨らんだまま首を上げ、周囲に視線を向けた。
「ひっ……!?」
声にならない悲鳴。雑魔に睨まれた恐怖で、子供達は完全に硬直している。これから何が起きるか……想像するのは難しくない。残酷な予測通り、大蛇は牙を剥き出しにして院生達に襲い掛かった。
ほぼ同時に、広場に銃声が響く。次いで、大蛇の横面を弾丸が貫通。その衝撃で腐肉が飛び散り、雑魔の動きが止まった。間髪入れず、4つの人影が子供達と大蛇の間に割って入る。
「死体の癖に食事しようなんぞ、都合よすぎやしねーかい?」
不敵な笑みを浮かべ、龍崎・カズマ(ka0178)は少年の頭を力強く叩いた。若干、粗暴な雰囲気が漂う青年だが、その中にも優しさを感じる。少なくとも、子供達の『敵』ではない。
むしろ、彼らは雑魔や歪虚の『敵』……覚醒者。その存在に気付いた大蛇は、威嚇するようにシャーッという音を出し、丸太のように太い尻尾を振り回した。
敵の動きを察知し、リュー・グランフェスト(ka2419)とミリア・コーネリウス(ka1287)が武器を構えて飛び出す。全ては、子供達を守るために。
防御を固めた2人に、大蛇の一撃が直撃。衝撃が全身を駆け抜けたが、2人は地面を強く踏み締めて耐える。結果として、子供達に被害は及ばなかった。
「誰も死なせない……必ず助けてやる。必ずだ!」
リューは覚悟を口にし、マテリアルを一気に解放。全身に赤い燐光を纏った姿は、燃え盛る炎を背負っているようにも見える。
「今から『開き』にしてやるからな。大人しくしてろよ?」
彼の隣で、ミリアは身の丈と変わらない大剣を構え直した。金髪碧眼の少女が使うには少々不釣合いな武器ではあるが、彼女はそれを手足のように扱っている。
「お前が『飲み込んだ』者は返して貰う。力尽くでも、な」
静かに、榊 兵庫(ka0010)は黒い瞳を巡らせた。周囲と敵の状況を素早く把握し、後ろ手で子供達に『離れろ』という指示を送る。それに従い、大蛇の周囲に居た子供達が一目散に走り出した。
彼らが逃げる先……広場の入り口には、避難誘導を担当するグエン・チ・ホア(ka5051)と霧雨 悠月(ka4130)が控えている。2人に向かって、カズマは大声で叫んだ。
「そっちは頼んだぞ! 避難だけじゃなくて、ゲストの乱入も抑えてくれよ?」
ゲスト……つまりは、無鉄砲な院生が乱入しないよう監視してくれ、という意味である。カズマの意図を理解し、2人は避難誘導を始めた。
「こちらから右回りに逃げてください! 大丈夫ですから、落ち着いて!」
逃げて来る院生達に、グエンの指示が飛ぶ。彼女の故郷では大蛇被害が少なくなかったし、こういう状況には慣れている。過去の経験から『蛇の攻撃範囲』を予測し、安全な方向へと誘導していく。
パニックで泣き叫ぶ子供や、動けなくなっている者は両脇に抱え、広場から移動。145cmで細身な外見に反して、意外とパワフルなようだ。
避難する院生達とは逆に、雑魔に突撃する少女が1人。
「人の命が掛かっていますです……急ぎましょう!」
独特の口調で仲間達に声を掛け、ターニャ=リュイセンヴェルグ(ka4979)が間合いを詰める。自身の身長よりも大きな槍にマテリアルを込めた瞬間、彼女の背後に『黒狼の幻影』が現れた。
その状態で地面を蹴り、跳躍から槍を全力で薙ぐ。強烈な殴打が蛇の頭部に命中し、全身が大きく揺れた。
着地と同時に、ターニャは槍を構え直して口を開く。
「蛇の消化は、それなりに時間が掛かる……今は安全性を考慮するべきだ」
一瞬、その場に居た全員が耳を疑った。攻撃前は明るく元気だったターニャが、今は冷たく落ち着いた口調に変わっている。赤い瞳も鋭くなり、まるで『獲物を狩る狼』のようだ。
これが、彼女の『覚醒状態』。ハンター達がその事に気付いた時、2度目の銃声が周囲に響いた。
銃撃を放ったのは、アルマ・アニムス(ka4901)。最初に蛇を狙撃したのも、彼である。今度は雑魔を牽制するため、鼻先に銃弾を撃ち込んだ。
「子供達に『二度も』あんな思いをさせません……そのために来たんですっ!」
力強く、覚悟の籠った言葉。彼と双子の妹は、ハンターだった両親を幼い頃に亡くしている。孤児院の子供達は実の親を亡くし……今度は、親代わりの先生を失おうとしている。
失う悲しみを、2度も体験させるワケにはいかない。アルマは銃を構え、雑魔に狙いを定めた。
『先生を助けたい』という気持ちは、全員同じである。飲み込まれた人質を傷付けないよう、6人は大蛇の『膨れた腹』を避け、武器を奔らせた。
●
大蛇を足止めしている間に、子供達は広場を離れて街道を走っていた。目的地は、最寄りの集会所。大人の足なら5分程度で移動できるが……院生達の年齢は、5歳から15歳とバラバラ。しかも20人前後が一度に移動しているため、時間がかかっていた。
そんな中、10歳くらいの少年が突然足を止めた。
「やっぱり僕も戦う! 先生を助ける『お手伝い』しなきゃ!」
彼の叫びに、他の院生達も足を止める。恐らく少年は、ハンター達だけ戦わせて自分達が逃げるのは申し訳ない、と思ったのだろう。その純粋な気持ちは嬉しいが……ただの子供が雑魔と戦えるワケがない。
悠月は少年の手を取り、しゃがんで視線を合わせた。その整った顔に、微笑みを浮かべて。
「大丈夫、先生は必ず助けるよ。皆、強い人ばかりだからね。今は、みんなと一緒に避難しよう?」
あくまでも優しく、語り掛けるような穏やかな口調。カズマに頼まれた事もあるが、悠月自身、大切な人を心配する気持ちは分かる。だからこそ……院生達を危険に晒したくはない。
数秒の沈黙。
悠月の言葉が通じたのか、少年は申し訳なさそうな表情で、静かに頷いた。
そっと、悠月は少年の頭を撫でる。優しい笑顔を絶やさず、少年の手を取ってゆっくりと走り始めた。
再度、避難を始める院生達。途中、転んだ少女をグエンが背負ったり、走り疲れた者を悠月が抱えたりしたが、広場を出てから数分後には集会所に到着。誰もが安堵の表情で腰を下ろした。
「ここまで来れば大丈夫ですね。全員、無事ですか? はぐれた人とか居ませんか?」
念のため、悠月は孤児院の名簿を使って点呼を取る。彼とグエンの誘導が功を奏し、全員無事に避難完了である。
院生達の安全を確保し、悠月とグエンは視線を合わせた。避難は終わったが、『依頼』は終わっていない。子供達に『迎えに来るまで集会所から出ないで』と念を押し、2人は広場に向かって全力で駆け出した。
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広場では斬撃と銃撃が入り乱れ、覚醒者と雑魔の交錯が続いている。
「聞こえるか、先生! 待ってろ、今助けてやるからな!」
飲まれた先生に声を掛けながら、リューが大蛇の懐に潜り込む。移動した勢いを利用して高く飛び、振動刀を全力で振り下ろした。内臓されたモーターが低く唸り、超音波振動を伴った剣撃が雑魔の右目を斬り潰す。
追撃するように、カズマは巨大な剣を走らせた。斬撃の瞬間、マテリアルを全身に纏って精度の高い攻撃を繰り出す。それに伴い、黒髪がくすんだ金色に、黒眼が金眼に変化。鋭い一撃が蛇の『胴と尾の境目』辺りを斬り裂き、臓器まで到達した。
反撃とばかりに、尻尾を振り回す雑魔。誰もが回避や防御に移る中、兵庫は槍を手に突撃した。当然、尾の殴打が直撃し、衝撃が全身を駆け巡る。
「一撃でも多く穂先を叩き込めば、それだけ敵を葬る時間が短くなる。多少の怪我など問題外だ!」
先生を助けるためなら、兵庫は負傷も厭わない。痛みに耐え、槍を全力で振り下ろした。独特の穂先が尻尾を斬り裂き、腐肉が派手に崩れ落ちる。
「同感。体張って子供を守った先生は、体張ってでも助けてやらないと」
兵庫の一言に、ニヤリと笑うミリア。戦闘が始まってから、彼女はずっと『隙』を窺っていた。敵の動きを止め、勝負を一気に決めるようなチャンスを。
集中力を高めるミリアの隣を、グエンが駆け抜ける。素早い移動速度は、まるで鋭い風。左右の『湾曲した刀身の短剣』を構えた直後、素早い動きで斬撃を放つ。双剣が蛇の尾で重なり、十字の傷を刻み込んだ。
「お待たせ。さて……その腐りきったハラワタから、人質を解放して貰おうか」
グエンに続き、悠月も合流。疾走する動きに合わせ、黒い頭髪が銀色に変わっていく。小柄な体で高く跳躍し、大蛇の頭を狙って刀を薙いだ。
と同時に、『狼の遠吠え』に似た刃音が響く。悠月の斬撃が雑魔の横面を斬り裂き、骨の一部が露になった。
8人揃った開拓者を振り払うように、大蛇は威嚇音と共に尾を振り回す。その勢いは、今日一番の速度と力強さを供えている。
この一撃を、ミリアは待っていた。
どんな相手でも、全力で攻撃した直後は隙が生まれる。彼女は両腕を広げ、尻尾の殴打を全身で受け止めた。痛みを無視し、肌が赤くなっても微塵も気にしない。
命中と同時に片腕を回し、尾を抑え込む。更に大剣を突き刺し、地面に縫い止めた。
「今だ、斬れ! ボクは気にせず、やれ!」
仲間達に向かって、ミリアが叫ぶ。雑魔を倒すためなら、自分が犠牲になっても構わない……彼女は、そこまで覚悟して戦いに臨んでいた。
だが、尾を封じられた程度では大蛇の動きは止まらない。牙を剥き、体を捻ってミリアに襲い掛かった。
その牙が届くより早く、アルマが引金を引く。乾いた銃声と共に弾丸が宙を奔り、大蛇の左目を直撃。言葉にするのは簡単だが、動く小さな的を狙撃するのは難しい。射撃精度を見るだけで、アルマの技量が窺える。
銃撃で視界を奪われた雑魔は、苦悶の声を上げるように天を仰いだ。その頭部に、『白い影』と『黒い影』が舞い降りる。
「貴様の生死に興味は無いが、考える事は同じようだな」
ターニャは大蛇に馬乗りし、首を狙って槍を突き刺す。
「お手伝いします! 3人でなら、取り押さえられますよ!」
グエンは敵の頭部に全体重を乗せ、脳の辺りに短剣を突き刺した。
頭上からの強襲を喰らい、激しく暴れる大蛇。リューは舌打ちしつつ、地面を蹴って大きく踏み込んだ。
「ったく。おまえ等、無理し過ぎだ!」
厳しい口調とは裏腹に、彼は微笑んでいる。振動刀を突き出して一気に間合いを詰め、雑魔の横面に切先を突き刺した。圧倒的な威力と衝撃で、大蛇の上半身が真横に倒れていく。
ターニャとグエンは素早く跳び上がり、落下しながら武器を構えた。リューが突撃の勢いを利用して敵を地面に縫い止めると、2人もそれに加勢。下顎、横面、首元に武器が突き刺さり、上半身の動きも完全に封じた。
「『体を張る』意味が違うだろ、馬鹿が!」
叱咤の言葉を口にしながらも、カズマは煌剣を構える。
「心意気は買ってやる。が、仲間を犠牲にする気は毛頭ない……!」
裂帛の気合を込め、兵庫は全身のマテリアルを開放。相談もアイコンタクトも無く、2人はタイミングを合わせて突撃した。
金色の疾風と化したカズマは、地面を蹴って更に加速。集中力を研ぎ澄まし、一点を狙って斬撃を放った。白光の剣閃がミリアの横を通過し、雑魔の尾を両断。当然、体内の先生もミリアも、斬撃を喰らっていない。
兵庫は槍にマテリアルを込め、疾走から渾身の力で振り下ろした。宙に流星の如き軌跡が描かれ、穂先が大蛇の『首』を直撃。そのまま腐肉と骨を斬り裂き、首を寸断した。
尻尾と頭部を失い、雑魔の動きは完全に沈黙。ゾンビと化した大蛇は、二度と動く事は無かった。
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雑魔を倒したハンター達は、死骸の中から先生を救出。気を失い、全身に軽度のヤケドを負っていたが、命に別状はナシ。悠月とアルマは準備した道具で応急処置を施し、兵庫が手配していた医師達が治療を引き継いだ。
グエンと悠月は院生達を迎えに出発し、残った6人は大蛇の死骸を森の奥に移動。そこに穴を掘って簡単に埋葬し、手を合わせて祈りを捧げた。
『センセ~~~!!』
6人が広場に戻ったのと、院生達が到着したのは、ほぼ同じタイミングだった。毛布に包まれ、顔の一部に包帯を巻かれた先生を、子供達が取り囲む。申し訳ない気持ちと安心が入り混じり、全員が涙を浮かべていた。
「大丈夫。気を失ってるけど、大した怪我もしてないよ」
子供達を安心させるように、悠月が優しく語り掛ける。彼の言葉で安心したのか、院生はようやく笑顔を浮かべた。
「先生、すごく立派な方ですね……やろうと思っても、なかなか出来る事じゃないですよ」
アルマの言う通り、自分を犠牲にして他人を救うのは難しい。それが一般人なら、尚更に。覚醒者のアルマが関心するのも、当然の事だろう。
「うん! センセーはスゴいんだよ!」
「あたし達のセンセ~だもん! ハンターさんと同じくらいスッゴイ人なの!」
まるで先生の事を自慢するように、子供達が次々に口を開く。アルマが先生を褒めてくれたのが嬉しいのだろう。目をキラキラと輝かせている。
「みんな、先生の事が大好きなんだね……」
院生達に釣られるように、悠月も笑みを浮かべた。厳しい戦いだったが、子供達の笑顔を見たら苦労も吹き飛ぶ。皆を助けられて良かったと、心の底から思った。
8人の活躍により、先生は無事に救出され、死者も居ない。一件落着に思えたが……アルマは気付いてしまった。子供達の中にも、怪我人が居る事に。
「次は、皆さんの番ですよ。怪我してる人は、遠慮なく言って下さい。痛いのはダメですっ!」
応急処置の道具を手に、優しく微笑むアルマ。大きな傷を負っている者は居ないが、小さくても傷は傷。痛いまま放置は出来ない。
彼が院生の治療を終えた頃、先生が静かに目を覚ました。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/29 21:34:46 |
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救出 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/06/30 19:25:37 |