ゲスト
(ka0000)
虫の一掃!
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/01 22:00
- 完成日
- 2015/07/10 02:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
知っているかとフマーレの東の外れの職人街で子ども達が囁き有った。
ある細い路地の先、廃れた工場に虫の化け物が出るらしい。
人よりも大きく玉虫のような格好をして、目だけは零れるほどに大きく、ぎょろぎょろと、くるくると蠢くらしい。
地面を這い、時に飛んで、人間を食うらしい。
噂が広まった頃、少年1人がその廃工場を見に行った。
少年が見たのは大きく、丈夫そうな甲殻に覆われた虫のような形の何か。
それが何かは分からなかったが、ここにいてはいけないものだということだけは、よく分かった。
逃げ出した少年の脚に緑の粘液が貼り付いた。
廃工場に棲み着いたその虫が吐いたものらしい。
手にしていたカンテラを振り回し、投げつけて、しかしそれは虫の鋭い前脚に弾かれた。
悲鳴が響き渡り、少年の身体は無残に引き裂かれた。
廃工場の前に、貼り付けられた少年の片脚だけが残されていた。
もう1つの噂が広まった。
職人街の外れを少し開いた住宅街、碁盤の目に整えられて、現在も開発中の住宅街。
その多くはこの職人街の広い通りの工場に勤める職人や見習いだ。
彼等が夜に出歩くと辻ごとに虫の化け物に出会うらしい。
月の明かりに艶々と濁った色の甲殻を照らされて、人よりも大きなその甲虫が、鋭い前足を掲げて襲いかかってくると言う。
歯車の回る音や発条の跳ねる音を立て、人間を食うらしい。
ある初老の職人が夜半に帰途を急いでいると、その虫に出会ったという。
細い通りに転がり込んで九死に一生を得たが、その虫は緑の液体を吐き、細く鋭い割りに丈夫そうな脚を振り回し、引き裂くものを探しているように見えた。
老人はその虫の立てる音を1匹ならず、2、3匹分は聞いたという。
そんな話をして、すっかり弱ったその老人は家に籠もってそれきり出てこなくなった。
歪虚と思われる巨大な甲虫の目撃に際して、この職人街の周辺を警邏中の軍人が首を傾げた。
或いは、この街の外でも遭遇するのでは無いかと。
その予想は的中し、軍人も眼前に1匹の甲虫型の歪虚が現れた。
濁った色の頑丈そうな甲殻はつやつやと、ぎょろりと大粒の目玉に見詰められ。
細い脚は固い鉄を平ゴムで繋いだ関節を持ち、地面から僅かに浮いて、鋭い刃の切っ先を揺らす。
響いた警笛が途切れ、応援が駆けつけたときには何も残っていなかった。
●
辺りの地理に明るく、ハンターを連れて何処へでも。案内人を自称するハンターオフィスの受付嬢が、職人街の寄り合いに混じっていた。
「ハンターを雇って……」
「何匹いるのかも分からないんだ……」
「どうなるんだ、この街は……」
「軍の人間もやられたのに……」
交わされる会話は暗い。
壁に貼られた地図には路地の廃工場と、住宅街の辻3つと、職人街の外に新しく出来た道に大きなばつ印が付いていた。
出動場所はこの3箇所。
死者が出てしまっている以上、悩んでいる暇はあまりない。
「皆さん、大丈夫です! ハンターさんって、すごいんです。格好良くて、強いんですよ」
だから安心して、お任せしましょう。
ぐっと手を握って、精一杯の笑顔を作る。
知っているかとフマーレの東の外れの職人街で子ども達が囁き有った。
ある細い路地の先、廃れた工場に虫の化け物が出るらしい。
人よりも大きく玉虫のような格好をして、目だけは零れるほどに大きく、ぎょろぎょろと、くるくると蠢くらしい。
地面を這い、時に飛んで、人間を食うらしい。
噂が広まった頃、少年1人がその廃工場を見に行った。
少年が見たのは大きく、丈夫そうな甲殻に覆われた虫のような形の何か。
それが何かは分からなかったが、ここにいてはいけないものだということだけは、よく分かった。
逃げ出した少年の脚に緑の粘液が貼り付いた。
廃工場に棲み着いたその虫が吐いたものらしい。
手にしていたカンテラを振り回し、投げつけて、しかしそれは虫の鋭い前脚に弾かれた。
悲鳴が響き渡り、少年の身体は無残に引き裂かれた。
廃工場の前に、貼り付けられた少年の片脚だけが残されていた。
もう1つの噂が広まった。
職人街の外れを少し開いた住宅街、碁盤の目に整えられて、現在も開発中の住宅街。
その多くはこの職人街の広い通りの工場に勤める職人や見習いだ。
彼等が夜に出歩くと辻ごとに虫の化け物に出会うらしい。
月の明かりに艶々と濁った色の甲殻を照らされて、人よりも大きなその甲虫が、鋭い前足を掲げて襲いかかってくると言う。
歯車の回る音や発条の跳ねる音を立て、人間を食うらしい。
ある初老の職人が夜半に帰途を急いでいると、その虫に出会ったという。
細い通りに転がり込んで九死に一生を得たが、その虫は緑の液体を吐き、細く鋭い割りに丈夫そうな脚を振り回し、引き裂くものを探しているように見えた。
老人はその虫の立てる音を1匹ならず、2、3匹分は聞いたという。
そんな話をして、すっかり弱ったその老人は家に籠もってそれきり出てこなくなった。
歪虚と思われる巨大な甲虫の目撃に際して、この職人街の周辺を警邏中の軍人が首を傾げた。
或いは、この街の外でも遭遇するのでは無いかと。
その予想は的中し、軍人も眼前に1匹の甲虫型の歪虚が現れた。
濁った色の頑丈そうな甲殻はつやつやと、ぎょろりと大粒の目玉に見詰められ。
細い脚は固い鉄を平ゴムで繋いだ関節を持ち、地面から僅かに浮いて、鋭い刃の切っ先を揺らす。
響いた警笛が途切れ、応援が駆けつけたときには何も残っていなかった。
●
辺りの地理に明るく、ハンターを連れて何処へでも。案内人を自称するハンターオフィスの受付嬢が、職人街の寄り合いに混じっていた。
「ハンターを雇って……」
「何匹いるのかも分からないんだ……」
「どうなるんだ、この街は……」
「軍の人間もやられたのに……」
交わされる会話は暗い。
壁に貼られた地図には路地の廃工場と、住宅街の辻3つと、職人街の外に新しく出来た道に大きなばつ印が付いていた。
出動場所はこの3箇所。
死者が出てしまっている以上、悩んでいる暇はあまりない。
「皆さん、大丈夫です! ハンターさんって、すごいんです。格好良くて、強いんですよ」
だから安心して、お任せしましょう。
ぐっと手を握って、精一杯の笑顔を作る。
リプレイ本文
●
東からの日差しが行く先を照らす頃、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)の馬が通りを駆け抜けていく。
昨晩も歪虚が出歩いたらしい痕跡を辿り、バラックの隙間や職人街へと通じる細い道を覗きながら、手綱を引いて馬を止める。
どこかに潜んでいる気配は感じるが、振り返れば無舗装の道が続くばかりだ。
端まで至ると、横腹を蹴り帰りを急ぐ。明るい内に姿を見せる様子は無い。
日が昇りきる頃には合流した。
モカ・プルーム(ka3411)が夜に向かう予定の辻の周囲の家々へ夜には外へ出ないようにと声を掛けて回り、避難が可能な住人には来未 結(ka4610)が手伝いに走った。
チマキマル(ka4372)が辻の側や退避が可能な家には退避を、その際に灯りを残すようにと伝えていく。
辻や周囲で起きた事件は知れ渡っており、概ねその了承は得られたが、家主が職人街に出ている家が多く、住人の多くが窓とドアを閉ざして閉じこもるに留めた。それでも、昼の内に住宅街は静まりかえった。
彼等に同行したユキヤは、住人に歪虚の目撃者の有無を尋ねたが、影を見たり、音を聞いた者が数人いるばかり。何れも帰宅の遅れた深夜で、今回の事件の報に沈んでいた。
「一応、皆さんにも伝えた方が良さそうですね」
夜になる前にと、廃工場の付近へ向かったルネッタ・アイリス(ka4609)へ伝話を繋ごうとして、仕舞い直した。
ここからでは少し離れすぎている。
ルネッタとヤツカ・F・リップマン(ka5180)は付近の住人へ戸締まりと避難を呼び掛けていた。八原 篝(ka3104)がハンターオフィスを通じて同様に促し、付近の数件は留守となる。
避難を手伝いながらルネッタはその住人に歪虚について尋ねた。噂話だけど、と住人は困った顔で親玉みたいなのがいるらしいと言った。
ヤツカは日も差さない工場の建物の中を覗く。中は荒れ果てて、元の形すら分からないその機械を稼働させていた物の一切が、見付からない。
恐らく繋がっていただろう歯車や、魔機導の部品らしい物の破片を、片手に握れる程度見付けるだけだった。
廃墟の奥から嫌な視線の様な気配を感じるが、それが動く気配も無かった。
日没の頃、守屋 昭二(ka5069)も合流し、一度戻って歪虚の情報の共有を終えたユキヤが、再度外の通りに向かって馬を走らせる。
休息を終えた八原は使い慣れた銃の装填を確かめてホルスターへ、ルネッタとヤツカと共に廃工場へ急いだ。
ルネッタとヤツカの話を聞く。住人への要請をしながら見た、以前この街で起きた事件の記録に似ていた。
「まさかね……今回はその親玉みたいなのには出会わないよう願いたいわね」
モカ、チマキマル、来未、守屋の4人は住宅街へ急いだ。
チマキマルの指示の通り辻の家は軒のランタンに火を残している。
ぼんやりと淡く照らされたその道に歪虚が現れる気配はまだ無いようだ。
●
真っ直ぐに指すライトの明かり、その端を目指すように戦馬は土埃を上げて駆っていく。
外の通りを端から走り、昼間に気配を感じた場所や、跡を見つけた場所を照らす。
警戒を巡らせたユキヤの目にバラックを1つ押し崩すように現れた歪虚の姿が飛び込んできた。
「3匹、ですね……」
白い光りが夜の闇を巡り、丸い甲殻に溢れる程に大粒の濁った色をした目玉、金属のように光を映す鋭く細い爪を持つ脚を照らす。人よりも大きなそれが3匹、地面を掻くようにユキヤへ迫る。
これで全部かとゆっくりと光りを左右へ揺らしながら、杖を構えてマテリアルを昂ぶらせる。杖を掲げて攻撃の狙いを定めると、先に動いた甲虫が一斉に緑の粘液を放った。
咄嗟に馬を引くが、全ては躱しきれずにズボンの上から粘液を浴びる。脚を取られて動きづらい感覚を得るが、構わずに光を放つ。
「十分、届きますね」
ユキヤを中心に放たれた目を灼く程に眩い白い光の波は、歪虚全てを押し流すように拡がっていく。目や甲殻を弾かれた歪虚が、その傷口から捻子を散らし、大型の歯車を覗かせる。
割れた背から飛び出した発条がぽよん、と地面でリズミカルに跳ねた後、黒い土塊に変わり、やがて霧のように散っていった。
歪虚が2匹飛び出して襲いかかってくる。爪を擡げ濁ったうめき声を上げ。
避けるよりも、と、盾を構えた腕で1匹をいなし、もう1匹の爪は鎧で留める。逃走を試みたもう1匹は後に回して、盾と爪を交えた至近のそれに光りを放った。
その衝撃に両目を落とされてひっくり返る歪虚が藻掻く中、もう1匹へも同様に光杖を向けて爪を支える細い脚を砕く。
動けなくなった2匹を置いてもう1匹を追う。追跡に気付き攻撃に転じる前につい先程と変わらぬ間合いを確かめる様に杖を構えた。光りの波が歪虚を灼いて消し去っていく。
3匹が全て土塊と黒い霧に変わると、ユキヤは電話を取りだして通信を試みる。
矢張り繋がる様子は無い。先を見回ってからと、馬を進める。
まだ、歪虚は残っているらしい。じっとりと重い気配が漂ってきた。
住宅街へ向かった4人は最初の辻で足を止める。辻の手前でモカはスクーターを止め、来未は馬を繋いだ。モーターの音も蹄の音も止んで、4人の息遣いだけが染み入るように聞こえた。
住人が残したらしいランタンは灯っている物の、締め切られた窓から溢れる灯りは無い。
生活音の1つも零さずに、ドアの向こうで息を潜めているようだ。
「虚歪はいつも、いつだって……」
来未は馬の背を撫でて静めながら呟いた。
昼間に声を掛けた住人の怯えた顔を思い出す。
命を奪われた男の子、軍人さん、これ以上誰も死なせまいと、緑の目が辻を睨んだ。微風に揺れた黒い髪に一筋藍が紛れ、別の場所に緑が紛れる。波を思わせるその色が所々に髪を染めて、光りが輪郭を描いた動物の幻影が水棲も陸棲も問わずに浮かび、彼女の周囲を取り囲んだ。
来未は握った刀の切っ先を真っ直ぐに辻へ向ける。
丈の倍近くの長さを持つ鎖を構えモカは一歩辻へと踏み込む。
巡らせる視線は辻の地面や壁、そこに歪虚が攻撃したような跡は無い。
「よ~っし!」
ボクが前衛に出る、とモカは3人を振り返った。マテリアルの熱が手を伝い鎖に傾れる。
大仰に頷くチマキマルの衣装がぶれてそれを覆うローブの幻影が現れる。軒の灯りに眩く光る金の装飾や、生々しく悍ましくさえある生き物の骨が飾られている。夜の闇に溶けそうな黒いローブに骨の白が明瞭に浮き上がっている。
ローブの袖を揺らしながらモカを呼び止め、杖をその鎖へと向けた。
「念のため施しておこう」
鎖が赤い光りを纏うと、炎のように揺れて全体を覆っていく。頷いてモカは辻の中央へと走る。
「……守屋君も、武器を出したまえ」
守屋が抜き身の刀を向けた。柄を握る手は枯れ木のように痩せ、骨が浮き深い皺が刻まれている。
チマキマルが杖を揺らして炎の力を纏わせる最中、その手が次第に膨れていく。
皺が張って、皮膚に艶が戻る。窶れていた身体は肉の厚みと筋の弾力を得る。白の髪には黒が混ざり、くぼんだ目が凜とした黒檀の色で前を見据えた。マテリアルの活性で大凡30年程を若返って見える肉体に彼は頷き赤く燃え上がる刀を構えた。
「うむ、良さそうじゃ……拙者も、おぬしらの前に立とう」
見据えた辻を横切った黒く大きな影が1つ。静寂に紛れるようにその影はぐるりと大きな目玉を動かし、こちらを眺めた。
「出たよ!」
「ダンゴムシか、カマキリかと思っていたが……」
色や目玉の形を覗けば玉虫の様な形で、滑らかな甲殻と左右3本ずつの細い脚を持っている。
歪んだそれは濁った色の甲殻に灯りを映し、零れ落ちそうな目玉に4人の姿を映している。狭いその道に身体を擦りながらこちらを向いて、最前に出て声を上げたモカへ向かって粘液を放った。
躱すよりも受け止めてしまった方が良いと、モカは纏っていたマントを向ける。マントに貼り付いた粘膜は、グローブ越しにマントを手繰る腕に衝撃を与えて、ぺたりと地面まで垂れていく。
マントを離し、目玉を狙いながら炎を纏った鎖を震うと、歪虚は避けることも無く、片目を弾かれて血のように捻子や発条を吹き上げた。
守屋も至近まで近付いて斬りつける。狭い辻の中では敵の爪の軌道も読みやすく、違わずに頭を狙ったが、手に返る反応は炎を纏って尚固い。
「もう一度じゃのう……」
すぐに切り替えて構え直す背にチマキマルの声を聞いた。
「少し下がってくれぬだろうか」
チマキマルが杖を振り翳すと放たれた炎は甲虫の背に叩き付けられて歯車の覗く穴を開ける。藻掻いた隙を狙ってモカが鞭を叩き付けた。
「この1匹だけ……」
そうは思えない、と来未は構えを解かずに辻へ進む。気配は消えていないが、光の届く範囲に姿は見えない。
進んだ方が良さそうだと判じ、4人は次の辻へ急いだ。次の辻でも、歪虚1匹との戦闘を終えた。
視界の端で何かが動いたように見えたが、光りを向けるとそれは闇に紛れていた。
報告にあった最後の辻、2匹の歪虚を見据えながら、来未は銀のベルを握る。
薄青い表面に呪術の文言が刻まれたそれを響かせて、不思議に澄んだ音色に鎮魂の調を重ねる。
動きを止めた歪虚を見て3人へ頷くと、彼女自身も殺された人々の為だと告げて光りを放った。
一先ず端まで見て回ったと、来未が伝話を取るが距離の為か繋がらない。ここはまだ住宅街の端だと思い出し、合流を急いだ。
廃工場へ到着した3人が辺りを見回す。しんと静まりかえった中、正面の廃屋から何かが這うような音を聞いた。
瞬間全員が灯りを向ける。重なった光りの焦点に向かって、ルネッタが彼女の丈程は有ろうかという大剣を構えながら飛び込んでいった。
その背には純白の翼の幻影が広がっている。光りの中しなやかに羽ばたくその翼は、柔らかな羽を軌跡に散らしながら収束して消えていった。けれど、羽の様に温かなマテリアルが身体を巡る高揚を確かに感じて、剣を逆袈裟に切り上げるように奮い、ぎょろ、とこちらへ向いたを目玉を捕らえた。
目玉を切り裂くと、爆ぜたそこから発条や捻子、歯車が飛び散ってくる。降り注ぐそれを防ぐまでも無く、土塊と霧に変わって散っていった。
「随分と硬そうですね。ならば内から斬るのみ。……お任せ下さい」
剣を構え直し、口角を上げる。もう片方の目玉がルネッタに向くことは無い。
ルネッタの後に続き、ヤツカも片手に剣を、片手にライトを構えて廃工場へと飛び込んでくる。もう1匹の歪虚へ真っ直ぐに切っ先を向けると、地面を蹴る勢いを乗せながら切り込んでいった。
洋装に隠されたその背中にはマテリアルの描く向日葵の幻影が広がっている。静かに熱を上げながら歪虚の首の継ぎ目に剣を刺した。
「我が一の太刀を浴びて、生き残れると思うなよ」
光りを向ける。今見えているのは、動きを止めているこの2匹だけのようだ。
光を集めた廃工場から引いて、銃の間合いを取る。
八原の飴色の双眸が微かに鋭い青の光りを帯びていた。肩幅に脚を開いて真っ直ぐに腕を伸ばし、リアサイトを覗く片目と閉じたもう片方の目。
マテリアルの冷気を纏わせた銃弾を放った銃口からは静かに硝煙が上っていた。薬莢が2つ、足下に転がってきた。
「ゼンマイ仕掛けの玩具みたい。……狙うならそこね」
動きを止めた歪虚、ルネッタが目玉を落とした眼窩から、冷気に抗うように回る歯車が覗いている。
その軸を狙い、銃を構え直す。
先に動き出した1匹をルネッタとヤツカが斬りつけ、八原が狙い澄ました銃弾を撃ち込んだ。
土塊に変わったその歪虚の空けた空間に、新しく1匹が這いだしてくる。
「やっぱり、歪虚相手はつまらないですね……何匹来ても、同じです」
刀身に絡んだ霧を払って、新しい敵に切っ先を向ける。鋭い爪を掲げて飛び込んでくる歪虚を、その爪ごと薙ぎ払うように斬りつけた。
「チェェストォォ!」
そこに、ヤツカの掛け声が響き、その高く響く声量とは裏腹の繊細な切っ先が、傷口を広げるように捌く。翻る刃に伝う光りが鋭い切っ先に瞬く。
もう一発、もう一撃と打ち込んで、斬り掛かって。3匹の歪虚を土塊に変えた。
その後をどこからか沸いてきた2匹を八原が工場内に凍て付かせ、ルネッタとヤツカの剣が斬りつけていく。
冷気を払った歪虚が飛び掛かり、弾かれたヤツカは下がって息を整え、回復を図る。補うように八原がマテリアルを込めた鉛を放ち、2人を追わせまいと、ルネッタも剣を掲げて引き付ける。
「もういない……何か残ってないかしら」
歪虚を倒しきると、ルネッタは灯りを揺らして廃工場の中を覗く。
何度かマテリアルを巡らせて傷を落ち付かせたヤツカはスカートを払って立ち上がった。
「時間があるなら、調査もしよう。進入経路や、経緯……」
「その前に、合流したいわね――どう?」
ルネッタは伝話を眺め首を横に振った。遠いらしい。
「ここに歪虚はもういないみたいですし、向かった方が良いかも知れませんね」
八原とヤツカは頷き、職人街の外の通りへ向かった。
合流にと急ぎながら、モカは辻ごとに止まって見回してから走る。かさ、と微かな音が聞こえた。
「出たよ!」
大きな声で叫んで鎖を振るい、脆く外れやすい目玉を狙って叩き付ける。
片目を奪い、次、と構える間に引き返した来未がベルを鳴らし動きを止める。守屋も疲れを見せながらだが刀を構えて、チマキマルも杖を構えた。
帰途に遭遇したのはもう1匹。最初の辻で待ち構えるように、切れかかるランタンの明かりの中、その影を揺らしていた。
先の遭遇で警戒を強めていた彼等は、来未のベルを合図に鎖と刀で斬り込み、炎の礫を放つ。
最期に抗うように振り回された爪は誰を掠めることも無く、鎖に弾き飛ばされ土塊に変わった。
外の通りへ走りながら伝話を取って通話を試みた。通りを駆け抜けて廃工場への路地が見える。
そこには人影は無い。
「向かいましょう」
外への道を指して来未が言う。出発したときよりも、月が大分傾いていた。
歪虚は矢張りと言うべきか潜んでいた。光りの波に包み、それでも倒れないものを順に打ち落としていく。接近されてぶつけられた腕が僅かに軋んだが、戦いに支障は無い。もう終わる。最後の1匹へ狙いを定めた。
ユキヤが見回りを終えると伝話が着信を知らせた。
もうすぐ合流出来るらしい。
「こちらは無事、安全です」
2箇所からの連絡は何れも無事と移動を伝えるものだった。
状況を交換し、安堵すると朝から働き通しの身体が馬に凭れて疲れを訴える。
東の空が白み始めていた。
集まってくる音が聞こえる、街の人達へ安全を伝えるまで。後一仕事。
東からの日差しが行く先を照らす頃、ユキヤ・S・ディールス(ka0382)の馬が通りを駆け抜けていく。
昨晩も歪虚が出歩いたらしい痕跡を辿り、バラックの隙間や職人街へと通じる細い道を覗きながら、手綱を引いて馬を止める。
どこかに潜んでいる気配は感じるが、振り返れば無舗装の道が続くばかりだ。
端まで至ると、横腹を蹴り帰りを急ぐ。明るい内に姿を見せる様子は無い。
日が昇りきる頃には合流した。
モカ・プルーム(ka3411)が夜に向かう予定の辻の周囲の家々へ夜には外へ出ないようにと声を掛けて回り、避難が可能な住人には来未 結(ka4610)が手伝いに走った。
チマキマル(ka4372)が辻の側や退避が可能な家には退避を、その際に灯りを残すようにと伝えていく。
辻や周囲で起きた事件は知れ渡っており、概ねその了承は得られたが、家主が職人街に出ている家が多く、住人の多くが窓とドアを閉ざして閉じこもるに留めた。それでも、昼の内に住宅街は静まりかえった。
彼等に同行したユキヤは、住人に歪虚の目撃者の有無を尋ねたが、影を見たり、音を聞いた者が数人いるばかり。何れも帰宅の遅れた深夜で、今回の事件の報に沈んでいた。
「一応、皆さんにも伝えた方が良さそうですね」
夜になる前にと、廃工場の付近へ向かったルネッタ・アイリス(ka4609)へ伝話を繋ごうとして、仕舞い直した。
ここからでは少し離れすぎている。
ルネッタとヤツカ・F・リップマン(ka5180)は付近の住人へ戸締まりと避難を呼び掛けていた。八原 篝(ka3104)がハンターオフィスを通じて同様に促し、付近の数件は留守となる。
避難を手伝いながらルネッタはその住人に歪虚について尋ねた。噂話だけど、と住人は困った顔で親玉みたいなのがいるらしいと言った。
ヤツカは日も差さない工場の建物の中を覗く。中は荒れ果てて、元の形すら分からないその機械を稼働させていた物の一切が、見付からない。
恐らく繋がっていただろう歯車や、魔機導の部品らしい物の破片を、片手に握れる程度見付けるだけだった。
廃墟の奥から嫌な視線の様な気配を感じるが、それが動く気配も無かった。
日没の頃、守屋 昭二(ka5069)も合流し、一度戻って歪虚の情報の共有を終えたユキヤが、再度外の通りに向かって馬を走らせる。
休息を終えた八原は使い慣れた銃の装填を確かめてホルスターへ、ルネッタとヤツカと共に廃工場へ急いだ。
ルネッタとヤツカの話を聞く。住人への要請をしながら見た、以前この街で起きた事件の記録に似ていた。
「まさかね……今回はその親玉みたいなのには出会わないよう願いたいわね」
モカ、チマキマル、来未、守屋の4人は住宅街へ急いだ。
チマキマルの指示の通り辻の家は軒のランタンに火を残している。
ぼんやりと淡く照らされたその道に歪虚が現れる気配はまだ無いようだ。
●
真っ直ぐに指すライトの明かり、その端を目指すように戦馬は土埃を上げて駆っていく。
外の通りを端から走り、昼間に気配を感じた場所や、跡を見つけた場所を照らす。
警戒を巡らせたユキヤの目にバラックを1つ押し崩すように現れた歪虚の姿が飛び込んできた。
「3匹、ですね……」
白い光りが夜の闇を巡り、丸い甲殻に溢れる程に大粒の濁った色をした目玉、金属のように光を映す鋭く細い爪を持つ脚を照らす。人よりも大きなそれが3匹、地面を掻くようにユキヤへ迫る。
これで全部かとゆっくりと光りを左右へ揺らしながら、杖を構えてマテリアルを昂ぶらせる。杖を掲げて攻撃の狙いを定めると、先に動いた甲虫が一斉に緑の粘液を放った。
咄嗟に馬を引くが、全ては躱しきれずにズボンの上から粘液を浴びる。脚を取られて動きづらい感覚を得るが、構わずに光を放つ。
「十分、届きますね」
ユキヤを中心に放たれた目を灼く程に眩い白い光の波は、歪虚全てを押し流すように拡がっていく。目や甲殻を弾かれた歪虚が、その傷口から捻子を散らし、大型の歯車を覗かせる。
割れた背から飛び出した発条がぽよん、と地面でリズミカルに跳ねた後、黒い土塊に変わり、やがて霧のように散っていった。
歪虚が2匹飛び出して襲いかかってくる。爪を擡げ濁ったうめき声を上げ。
避けるよりも、と、盾を構えた腕で1匹をいなし、もう1匹の爪は鎧で留める。逃走を試みたもう1匹は後に回して、盾と爪を交えた至近のそれに光りを放った。
その衝撃に両目を落とされてひっくり返る歪虚が藻掻く中、もう1匹へも同様に光杖を向けて爪を支える細い脚を砕く。
動けなくなった2匹を置いてもう1匹を追う。追跡に気付き攻撃に転じる前につい先程と変わらぬ間合いを確かめる様に杖を構えた。光りの波が歪虚を灼いて消し去っていく。
3匹が全て土塊と黒い霧に変わると、ユキヤは電話を取りだして通信を試みる。
矢張り繋がる様子は無い。先を見回ってからと、馬を進める。
まだ、歪虚は残っているらしい。じっとりと重い気配が漂ってきた。
住宅街へ向かった4人は最初の辻で足を止める。辻の手前でモカはスクーターを止め、来未は馬を繋いだ。モーターの音も蹄の音も止んで、4人の息遣いだけが染み入るように聞こえた。
住人が残したらしいランタンは灯っている物の、締め切られた窓から溢れる灯りは無い。
生活音の1つも零さずに、ドアの向こうで息を潜めているようだ。
「虚歪はいつも、いつだって……」
来未は馬の背を撫でて静めながら呟いた。
昼間に声を掛けた住人の怯えた顔を思い出す。
命を奪われた男の子、軍人さん、これ以上誰も死なせまいと、緑の目が辻を睨んだ。微風に揺れた黒い髪に一筋藍が紛れ、別の場所に緑が紛れる。波を思わせるその色が所々に髪を染めて、光りが輪郭を描いた動物の幻影が水棲も陸棲も問わずに浮かび、彼女の周囲を取り囲んだ。
来未は握った刀の切っ先を真っ直ぐに辻へ向ける。
丈の倍近くの長さを持つ鎖を構えモカは一歩辻へと踏み込む。
巡らせる視線は辻の地面や壁、そこに歪虚が攻撃したような跡は無い。
「よ~っし!」
ボクが前衛に出る、とモカは3人を振り返った。マテリアルの熱が手を伝い鎖に傾れる。
大仰に頷くチマキマルの衣装がぶれてそれを覆うローブの幻影が現れる。軒の灯りに眩く光る金の装飾や、生々しく悍ましくさえある生き物の骨が飾られている。夜の闇に溶けそうな黒いローブに骨の白が明瞭に浮き上がっている。
ローブの袖を揺らしながらモカを呼び止め、杖をその鎖へと向けた。
「念のため施しておこう」
鎖が赤い光りを纏うと、炎のように揺れて全体を覆っていく。頷いてモカは辻の中央へと走る。
「……守屋君も、武器を出したまえ」
守屋が抜き身の刀を向けた。柄を握る手は枯れ木のように痩せ、骨が浮き深い皺が刻まれている。
チマキマルが杖を揺らして炎の力を纏わせる最中、その手が次第に膨れていく。
皺が張って、皮膚に艶が戻る。窶れていた身体は肉の厚みと筋の弾力を得る。白の髪には黒が混ざり、くぼんだ目が凜とした黒檀の色で前を見据えた。マテリアルの活性で大凡30年程を若返って見える肉体に彼は頷き赤く燃え上がる刀を構えた。
「うむ、良さそうじゃ……拙者も、おぬしらの前に立とう」
見据えた辻を横切った黒く大きな影が1つ。静寂に紛れるようにその影はぐるりと大きな目玉を動かし、こちらを眺めた。
「出たよ!」
「ダンゴムシか、カマキリかと思っていたが……」
色や目玉の形を覗けば玉虫の様な形で、滑らかな甲殻と左右3本ずつの細い脚を持っている。
歪んだそれは濁った色の甲殻に灯りを映し、零れ落ちそうな目玉に4人の姿を映している。狭いその道に身体を擦りながらこちらを向いて、最前に出て声を上げたモカへ向かって粘液を放った。
躱すよりも受け止めてしまった方が良いと、モカは纏っていたマントを向ける。マントに貼り付いた粘膜は、グローブ越しにマントを手繰る腕に衝撃を与えて、ぺたりと地面まで垂れていく。
マントを離し、目玉を狙いながら炎を纏った鎖を震うと、歪虚は避けることも無く、片目を弾かれて血のように捻子や発条を吹き上げた。
守屋も至近まで近付いて斬りつける。狭い辻の中では敵の爪の軌道も読みやすく、違わずに頭を狙ったが、手に返る反応は炎を纏って尚固い。
「もう一度じゃのう……」
すぐに切り替えて構え直す背にチマキマルの声を聞いた。
「少し下がってくれぬだろうか」
チマキマルが杖を振り翳すと放たれた炎は甲虫の背に叩き付けられて歯車の覗く穴を開ける。藻掻いた隙を狙ってモカが鞭を叩き付けた。
「この1匹だけ……」
そうは思えない、と来未は構えを解かずに辻へ進む。気配は消えていないが、光の届く範囲に姿は見えない。
進んだ方が良さそうだと判じ、4人は次の辻へ急いだ。次の辻でも、歪虚1匹との戦闘を終えた。
視界の端で何かが動いたように見えたが、光りを向けるとそれは闇に紛れていた。
報告にあった最後の辻、2匹の歪虚を見据えながら、来未は銀のベルを握る。
薄青い表面に呪術の文言が刻まれたそれを響かせて、不思議に澄んだ音色に鎮魂の調を重ねる。
動きを止めた歪虚を見て3人へ頷くと、彼女自身も殺された人々の為だと告げて光りを放った。
一先ず端まで見て回ったと、来未が伝話を取るが距離の為か繋がらない。ここはまだ住宅街の端だと思い出し、合流を急いだ。
廃工場へ到着した3人が辺りを見回す。しんと静まりかえった中、正面の廃屋から何かが這うような音を聞いた。
瞬間全員が灯りを向ける。重なった光りの焦点に向かって、ルネッタが彼女の丈程は有ろうかという大剣を構えながら飛び込んでいった。
その背には純白の翼の幻影が広がっている。光りの中しなやかに羽ばたくその翼は、柔らかな羽を軌跡に散らしながら収束して消えていった。けれど、羽の様に温かなマテリアルが身体を巡る高揚を確かに感じて、剣を逆袈裟に切り上げるように奮い、ぎょろ、とこちらへ向いたを目玉を捕らえた。
目玉を切り裂くと、爆ぜたそこから発条や捻子、歯車が飛び散ってくる。降り注ぐそれを防ぐまでも無く、土塊と霧に変わって散っていった。
「随分と硬そうですね。ならば内から斬るのみ。……お任せ下さい」
剣を構え直し、口角を上げる。もう片方の目玉がルネッタに向くことは無い。
ルネッタの後に続き、ヤツカも片手に剣を、片手にライトを構えて廃工場へと飛び込んでくる。もう1匹の歪虚へ真っ直ぐに切っ先を向けると、地面を蹴る勢いを乗せながら切り込んでいった。
洋装に隠されたその背中にはマテリアルの描く向日葵の幻影が広がっている。静かに熱を上げながら歪虚の首の継ぎ目に剣を刺した。
「我が一の太刀を浴びて、生き残れると思うなよ」
光りを向ける。今見えているのは、動きを止めているこの2匹だけのようだ。
光を集めた廃工場から引いて、銃の間合いを取る。
八原の飴色の双眸が微かに鋭い青の光りを帯びていた。肩幅に脚を開いて真っ直ぐに腕を伸ばし、リアサイトを覗く片目と閉じたもう片方の目。
マテリアルの冷気を纏わせた銃弾を放った銃口からは静かに硝煙が上っていた。薬莢が2つ、足下に転がってきた。
「ゼンマイ仕掛けの玩具みたい。……狙うならそこね」
動きを止めた歪虚、ルネッタが目玉を落とした眼窩から、冷気に抗うように回る歯車が覗いている。
その軸を狙い、銃を構え直す。
先に動き出した1匹をルネッタとヤツカが斬りつけ、八原が狙い澄ました銃弾を撃ち込んだ。
土塊に変わったその歪虚の空けた空間に、新しく1匹が這いだしてくる。
「やっぱり、歪虚相手はつまらないですね……何匹来ても、同じです」
刀身に絡んだ霧を払って、新しい敵に切っ先を向ける。鋭い爪を掲げて飛び込んでくる歪虚を、その爪ごと薙ぎ払うように斬りつけた。
「チェェストォォ!」
そこに、ヤツカの掛け声が響き、その高く響く声量とは裏腹の繊細な切っ先が、傷口を広げるように捌く。翻る刃に伝う光りが鋭い切っ先に瞬く。
もう一発、もう一撃と打ち込んで、斬り掛かって。3匹の歪虚を土塊に変えた。
その後をどこからか沸いてきた2匹を八原が工場内に凍て付かせ、ルネッタとヤツカの剣が斬りつけていく。
冷気を払った歪虚が飛び掛かり、弾かれたヤツカは下がって息を整え、回復を図る。補うように八原がマテリアルを込めた鉛を放ち、2人を追わせまいと、ルネッタも剣を掲げて引き付ける。
「もういない……何か残ってないかしら」
歪虚を倒しきると、ルネッタは灯りを揺らして廃工場の中を覗く。
何度かマテリアルを巡らせて傷を落ち付かせたヤツカはスカートを払って立ち上がった。
「時間があるなら、調査もしよう。進入経路や、経緯……」
「その前に、合流したいわね――どう?」
ルネッタは伝話を眺め首を横に振った。遠いらしい。
「ここに歪虚はもういないみたいですし、向かった方が良いかも知れませんね」
八原とヤツカは頷き、職人街の外の通りへ向かった。
合流にと急ぎながら、モカは辻ごとに止まって見回してから走る。かさ、と微かな音が聞こえた。
「出たよ!」
大きな声で叫んで鎖を振るい、脆く外れやすい目玉を狙って叩き付ける。
片目を奪い、次、と構える間に引き返した来未がベルを鳴らし動きを止める。守屋も疲れを見せながらだが刀を構えて、チマキマルも杖を構えた。
帰途に遭遇したのはもう1匹。最初の辻で待ち構えるように、切れかかるランタンの明かりの中、その影を揺らしていた。
先の遭遇で警戒を強めていた彼等は、来未のベルを合図に鎖と刀で斬り込み、炎の礫を放つ。
最期に抗うように振り回された爪は誰を掠めることも無く、鎖に弾き飛ばされ土塊に変わった。
外の通りへ走りながら伝話を取って通話を試みた。通りを駆け抜けて廃工場への路地が見える。
そこには人影は無い。
「向かいましょう」
外への道を指して来未が言う。出発したときよりも、月が大分傾いていた。
歪虚は矢張りと言うべきか潜んでいた。光りの波に包み、それでも倒れないものを順に打ち落としていく。接近されてぶつけられた腕が僅かに軋んだが、戦いに支障は無い。もう終わる。最後の1匹へ狙いを定めた。
ユキヤが見回りを終えると伝話が着信を知らせた。
もうすぐ合流出来るらしい。
「こちらは無事、安全です」
2箇所からの連絡は何れも無事と移動を伝えるものだった。
状況を交換し、安堵すると朝から働き通しの身体が馬に凭れて疲れを訴える。
東の空が白み始めていた。
集まってくる音が聞こえる、街の人達へ安全を伝えるまで。後一仕事。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/28 15:07:39 |
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作戦相談卓 ヤツカ・F・リップマン(ka5180) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/07/01 00:00:27 |