ゲスト
(ka0000)
野盗怒る
マスター:革酎

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/08 09:00
- 完成日
- 2015/07/12 18:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
とある地方のとある領主からの依頼を受けて、疾影士の少女メディエス・パーマー他数名のハンター達が、小さな農村を訪れていた。
その依頼とは、近隣の農村を荒し回るゴブリンの群れを退治して欲しい、というものであった。
内容としてはごくごくありふれたものであり、まだ経験の浅いメディエスでも十分に達成可能であろうと思われた。
準備を整えてハンターズ・ソサイエティを出立したメディエス達は、その日の午前中にはその農村に到着していた。
村長から事情を聞いたメディエスは挨拶もそこそこに、早速、周辺の偵察へと足を延ばした。
だがそこで、メディエスは思わぬ事態に遭遇することとなる。
* * *
メディエスは三匹のゴブリンが、仲間達が警護している農村へと向かう姿を森の中で目撃した。
ところがこのゴブリン共は、どうも普通とは若干異なる様相を呈している。
一匹はまるで巨人かと思わせる程の巨躯を誇り、一匹は恐ろしく痩せ細ってはいるが不気味な程に長身で、そして最後の一匹はゴブリンにしてはやけに小柄である。
実に特徴的な体格のゴブリン共であったが、その顔つきはいずれも無表情に近しく、奇妙な程に精気が感じられなかった。
「あいつらが、問題のゴブリン達かな? それにしても、全然普通じゃないよね。特にあの大きいやつ……見た目はゴブリンだけど、どう考えても有り得ないサイズだよ、あれ」
メディエスは、小首を捻った。
僅か三匹のゴブリンに複数の村々が恐ろしく手を焼かされるというのは、あまり聞いたことがない。
特別な事情があるのだろうか――そんなことを考えながら、三匹のゴブリンを追跡しようとしたその時、不意に背後から冷たい刃の切っ先が伸びてきて、メディエスの首元にそっと触れた。
メディエスは、緊張に全身を強張らせた。
「……ハンターか。奴らとは無関係のようだな」
独特の癖がある低い声音に、メディエスは恐る恐る、視線を巡らせた。
するとそこに、両腕にそれぞれ一本ずつの小剣を携えた、片耳隻眼の大柄な中年男性が静かに佇んでいた。
片耳隻眼の男は右手に持った小剣の切っ先をしばらくメディエスの首筋に当てていたが、やがて両手の小剣を二本とも、鞘に納めた。
メディエスは尚も緊張したまま片耳隻眼の男に向き直り、警戒の眼差しを据えた。
「さっきのゴブリン達を、追ってきたの?」
「お前も、奴らを見たのか」
その反応に、メディエスは内心で疑問を抱いた。
この中年男性は、先程目撃したゴブリン達に対して奇妙な敵意を抱いている様子だったのだ。
「あの三匹の仲間……っていう訳じゃなさそうね」
「仲間な訳ゃねぇだろう。あいつらは見かけこそゴブリンだが、通常では考えられない妙な能力を使いやがる。それにあいつらは俺の仲間達を全員、殺しやがった。あいつらだけは必ず、俺の手で始末してやる」
片耳隻眼の男が怒りを含んだ声で答えるのを聞きながら、メディエスは思わず息を呑んだ。
この男の言葉が事実ならば、あの三匹のゴブリンは――雑魔だ。
それにしても、とメディエスは疑問に思う。
雑魔を三体も相手に廻して、絶対に始末してやると息巻いているこの男も、どうやら只者ではなさそうであった。
少なくとも疾影士であるメディエスの背後をいとも簡単に奪ってしまうということは、余程の実力が無ければ不可能な話である。
それに、小剣を二刀流で構えてもいた。相当に鍛錬を積んだ戦士であることが、容易に窺えた。
「お前、あの村に仲間が居るのか?」
片耳隻眼の男は、メディエスの仲間達が滞在している農村の方角に向けて、顎をしゃくった。
メディエスが小さく頷き返すと、男は渋い表情で鼻を鳴らす。
「なら、伝えてやれ。あの三体は相当に手強いぞ」
「……味方になってくれるの?」
この応えに、片耳隻眼の男は忌々しげな色を浮かべた。
どうやら、ハンターに対してはあまり良いイメージを抱いていないらしい。
「俺はお前らとは本来なら敵対する存在……野盗の生き残りだが、今だけは休戦だ。ハンターどもはいけ好かねぇし大嫌いだが、奴らを倒す為なら、協力するしかねぇだろう」
曰く、自分が警鐘を鳴らしに行っても村人共は聞く耳を持たないだろうが、ハンターであるメディエスが警告すれば素直に警戒するだろう、との由。
成る程と頷いて早速農村に走り出そうとしたメディエスだが、ふと足を止めて片耳隻眼の男に振り返った。
「貴方……名前は?」
「ハンターなんぞに教えてやるのも腹立たしいが、名前が無けりゃ連絡もつかねぇか……ゼルガッソだ」
「……メディエス・パーマーよ」
お互いに名乗りを終え、メディエスは生い茂る樹々を払い除けながら農村へと走った。
ゼルガッソが教えてくれた情報を、一刻も早く仲間達に伝えなければならなかった。
その依頼とは、近隣の農村を荒し回るゴブリンの群れを退治して欲しい、というものであった。
内容としてはごくごくありふれたものであり、まだ経験の浅いメディエスでも十分に達成可能であろうと思われた。
準備を整えてハンターズ・ソサイエティを出立したメディエス達は、その日の午前中にはその農村に到着していた。
村長から事情を聞いたメディエスは挨拶もそこそこに、早速、周辺の偵察へと足を延ばした。
だがそこで、メディエスは思わぬ事態に遭遇することとなる。
* * *
メディエスは三匹のゴブリンが、仲間達が警護している農村へと向かう姿を森の中で目撃した。
ところがこのゴブリン共は、どうも普通とは若干異なる様相を呈している。
一匹はまるで巨人かと思わせる程の巨躯を誇り、一匹は恐ろしく痩せ細ってはいるが不気味な程に長身で、そして最後の一匹はゴブリンにしてはやけに小柄である。
実に特徴的な体格のゴブリン共であったが、その顔つきはいずれも無表情に近しく、奇妙な程に精気が感じられなかった。
「あいつらが、問題のゴブリン達かな? それにしても、全然普通じゃないよね。特にあの大きいやつ……見た目はゴブリンだけど、どう考えても有り得ないサイズだよ、あれ」
メディエスは、小首を捻った。
僅か三匹のゴブリンに複数の村々が恐ろしく手を焼かされるというのは、あまり聞いたことがない。
特別な事情があるのだろうか――そんなことを考えながら、三匹のゴブリンを追跡しようとしたその時、不意に背後から冷たい刃の切っ先が伸びてきて、メディエスの首元にそっと触れた。
メディエスは、緊張に全身を強張らせた。
「……ハンターか。奴らとは無関係のようだな」
独特の癖がある低い声音に、メディエスは恐る恐る、視線を巡らせた。
するとそこに、両腕にそれぞれ一本ずつの小剣を携えた、片耳隻眼の大柄な中年男性が静かに佇んでいた。
片耳隻眼の男は右手に持った小剣の切っ先をしばらくメディエスの首筋に当てていたが、やがて両手の小剣を二本とも、鞘に納めた。
メディエスは尚も緊張したまま片耳隻眼の男に向き直り、警戒の眼差しを据えた。
「さっきのゴブリン達を、追ってきたの?」
「お前も、奴らを見たのか」
その反応に、メディエスは内心で疑問を抱いた。
この中年男性は、先程目撃したゴブリン達に対して奇妙な敵意を抱いている様子だったのだ。
「あの三匹の仲間……っていう訳じゃなさそうね」
「仲間な訳ゃねぇだろう。あいつらは見かけこそゴブリンだが、通常では考えられない妙な能力を使いやがる。それにあいつらは俺の仲間達を全員、殺しやがった。あいつらだけは必ず、俺の手で始末してやる」
片耳隻眼の男が怒りを含んだ声で答えるのを聞きながら、メディエスは思わず息を呑んだ。
この男の言葉が事実ならば、あの三匹のゴブリンは――雑魔だ。
それにしても、とメディエスは疑問に思う。
雑魔を三体も相手に廻して、絶対に始末してやると息巻いているこの男も、どうやら只者ではなさそうであった。
少なくとも疾影士であるメディエスの背後をいとも簡単に奪ってしまうということは、余程の実力が無ければ不可能な話である。
それに、小剣を二刀流で構えてもいた。相当に鍛錬を積んだ戦士であることが、容易に窺えた。
「お前、あの村に仲間が居るのか?」
片耳隻眼の男は、メディエスの仲間達が滞在している農村の方角に向けて、顎をしゃくった。
メディエスが小さく頷き返すと、男は渋い表情で鼻を鳴らす。
「なら、伝えてやれ。あの三体は相当に手強いぞ」
「……味方になってくれるの?」
この応えに、片耳隻眼の男は忌々しげな色を浮かべた。
どうやら、ハンターに対してはあまり良いイメージを抱いていないらしい。
「俺はお前らとは本来なら敵対する存在……野盗の生き残りだが、今だけは休戦だ。ハンターどもはいけ好かねぇし大嫌いだが、奴らを倒す為なら、協力するしかねぇだろう」
曰く、自分が警鐘を鳴らしに行っても村人共は聞く耳を持たないだろうが、ハンターであるメディエスが警告すれば素直に警戒するだろう、との由。
成る程と頷いて早速農村に走り出そうとしたメディエスだが、ふと足を止めて片耳隻眼の男に振り返った。
「貴方……名前は?」
「ハンターなんぞに教えてやるのも腹立たしいが、名前が無けりゃ連絡もつかねぇか……ゼルガッソだ」
「……メディエス・パーマーよ」
お互いに名乗りを終え、メディエスは生い茂る樹々を払い除けながら農村へと走った。
ゼルガッソが教えてくれた情報を、一刻も早く仲間達に伝えなければならなかった。
リプレイ本文
●迫る怪奇
今回の依頼は単純なゴブリン退治、という話だった筈だが、ユーディタ・チャペック(ka0402)が見る限り、どうもそうではないらしい。
村の正門を出てすぐのところに広がる草原で、のんびり野草の観察等に興じていたユーディタだったが、ザレム・アズール(ka0878)が厳しい表情でバイクを走らせる姿を見て、何かが起きた、とすぐに直感した。
ザレムは、草原の向こう側に位置する森の方から飛び出してきた。
更にザレムのバイクと途中まで並走していたハンター仲間のメディエス・パーマーが、大慌てでユーディタの方へと歩を寄せてくる。
これは益々何かがおかしいと考え、ユーディタは背負っていたアサルトライフル『ヴォロンテAC47』を小脇に抱え直し、それでもその表情はいつもの飄々とした色を浮かべたままメディエスの来着を静かに待った。
「敵が来たんだね。でも、ちょいとばかし厳しそうな相手かい?」
「うん、雑魔が出た。ゴブリンだっていうのは、誤報だったみたい」
メディエスの報告を聞きながら、ユーディタは村へとバイクを急がせるザレムにちらりと視線を流した。
どうやら速度で優るバイクで、村に警告を発しに行ったらしい。
それから程無くして、同じくバイクに跨ったクオン・サガラ(ka0018)を筆頭に、ノノトト(ka0553)、榊 刑部(ka4727)、或いは霧雨 悠月(ka4130)といった面々が村を飛び出してきた。
いずれも既に戦闘準備を終えており、村の外で一戦交える腹積もりであることが、ひと目見て分かった。
「おや、ザレムさんは?」
ユーディタが小首を傾げると、ノノトトがバイクのアクセルを廻す仕草を見せながら、曰く。
「今、村のひとびとに警告して廻ってます。ぼく達がここで迎え撃つ間、絶対に外に出ないで~ってお触れを出しながら、バイクをブン、ブン、ブブブンって」
成る程と一同は頷いたが、ひとつだけ分からないことがある。
何故、雑魔が来ると分かったのか?
その点についてはメディエスが、森の中で出会った野盗ゼルガッソの存在について、手短に説明した。
「もうそろそろ、駆けつけてくる筈よ。野盗だけど、今だけは見逃してあげて」
「そんな、見逃すだなんて……寧ろ、村への危険を事前に教えてくれた恩人じゃないですか」
刑部が幾分、驚いた様子でかぶりを振った。
同じく悠月が、ゼルガッソなる人物には一切敵意が無い旨を言葉に乗せる。
「その三体の特徴なんかも、割と詳細に教えてくれてるし、悪いひとだとは思えないんだけどね……兎に角、今は共通の敵を持つ仲間同士って訳だよね」
「生憎だが、俺にはお前さん達との仲間意識なんぞ欠片も無ぇよ」
不意に、野太い声がハンター達の背後から鼓膜を打った。
片耳隻眼の、何ともいえぬ鬼気を全身に纏わせる二刀流の小剣使い――野盗ゼルガッソが、そこに居た。
如何にも悪人面といわんばかりの凶悪な容貌だが、しかしその敵意は今、ハンター達にではなく、迫り来る三体の雑魔に対してだけ向けられている。
刑部は苦笑しつつ、小さく頷き返した。
「はいはい、分かりました。では今だけ休戦ということで宜しいですね?」
「そういうこった。で、分担は決まってるのか?」
ゼルガッソの問いかけに、ハンター達は一様に頷いた。
怪力を誇る巨人型には刑部が、炎と凍気を操る痩せ型には悠月とユーディタ、ザレムが向かい、そして驚く程の敏捷性を見せる小人型の対処をノノトト、クオン、メディエスで迎え撃つ。
ならば、ということで、ゼルガッソは巨人型を受け持つこととなった。
「頼りにしてるぜ」
「そうですね……お互いに背中を預け合うのです。この一時限りとはいえ、我らは戦友となるのです……その働き、期待させて頂きますよ」
刑部の真摯な態度に、ゼルガッソはやれやれと諦めた様子でかぶりを振った。
まさか、敵であるハンターに戦友呼ばわりされるなどとは、思っても見なかったのだろう。
森の方角から草を踏みしめる足音が複数、聞こえてきた。
全員の意識がその三つの影――ゴブリン型雑魔共へと集中した。
「間に合ったか」
そこへ、バイクを走らせてきたザレムが合流してきた。まさにこれから、戦端が開かれようとしていたところであった。
「まずは俺が一発ぶちかます。後は予定通り、各個撃破だ」
いうが早いか、ザレムは士筒『波瀾』での先制攻撃に続き、デルタレイの連射を仕掛けた。
なるべく距離があるうちに削れるだけ削っておきたいというのがザレムの意図だったが、敵もさるもの、デルタレイの一発目を浴びたところで雑魔共は一気に距離を詰めてきた。
特に小人型の脚は滅法速く、ノノトトとクオン、そしてメディエスが早々に包囲戦の間合いを取らざるを得なかった。
小人型の正面を引き受けるのはノノトト、背後はメディエスである。
クオンはバイクを駆って周囲を旋回し、距離を詰めながら小人型の離脱を防ぐという算段であった。
実のところこの戦術は、相当に難しい。
というのも、バイクが機動力に富むというのは他の車両と比べての話であり、小回りという点では矢張り徒歩の戦闘者には及ばない。
バイクはどうしてもハンドル操作、前後の両輪差、その重量等を巧みに操作しなければならないのに対し、徒歩は単純に己の脚だけで素早く動き回れる。
これだけのデメリットを抱えつつ、それでもクオンは、小人型の動きを限られたエリアだけに封じることに成功していた。
勿論運転に集中力を奪われる為、攻撃面では多少手数が減るのだが、そこは割り切るしかないだろう。
一方、同じバイク乗用者であるザレムは痩せ型への攻撃に際しては早々に降車し、銃撃での包囲戦に切り替えていた。
痩せ型への接近戦は、覚醒した状態での悠月が担当する。彼は猛き銀狼の呼び名の通り、至近距離から猛然と攻撃を繰り出していた。
「手強そうな相手だけど……この胸の高鳴り、堪らないね」
決して余裕を持って倒せる相手ではないのだが、しかし悠月の昂揚感を抑える材料とはならない。
持ち得る全ての技術を注ぎ込み、悠月は徹底して痩せ型の攻撃目標を自分自身に引きつけていた。
「ほら、よそ見しているとこの牙が首を捉えるよ」
その動き、まさに雷鳴の如し。
痩せ型の大きく開かれた口から吐き出される凍気は、決して小さくはないダメージを悠月の肉体に累積してゆく。だが多少の打撃を受けても尚、悠月の動きは更に鋭さを増すばかりであった。
逆に痩せ型は、少しずつ小回りが利かなくなり始めている。
岩陰から下半身への銃撃を加えているユーディタが、着実に痩せ型の機動力を奪っていたからだ。
「これ、終わったら、村で、酒を、たらふく、痛飲、するッ、と」
引き金を搾る毎に軽い衝撃が銃床から肩へと伝わる為、ひとり言ながら言葉が途切れがちになっていた。
酒という雑念に支配されながらも、悠月へ誤射せず、確実に痩せ型の下半身に弾丸を叩き込んでゆく技量は流石という他は無い。
「邪念だらけであの腕前。大したものだな」
ザレムが悠月から僅かに退がった位置で同じように銃撃を加えつつ、ユーディタの技量に呆れ半分、感嘆半分の念を抱いた。
巨人型への対処は、他と比べてひとり少ない。
それでも刑部とゼルガッソが互角の展開を見せていられたのは、単に個人の技量のみならず、初めてペアを組むとは思えない程の見事な連携が取れていたからだ。
刑部は接近戦に特化した技能を上手く組み合わせて一撃離脱戦法を取り、その一方でゼルガッソは巨人型の真正面に張り付いて離れず、怪力から繰り出される必殺の攻撃を紙一重でかわしながら、刑部が仕掛ける疾風剣の瞬間に合わせて、自らの小剣を左右から叩き込んでいた。
実際は刑部の攻撃が打撃の大半を占めているのだが、その刑部に標的が向かないようにと、ゼルガッソがタイミングを合わせて小剣を繰り出すことで、巨人型に与えている打撃の全てはゼルガッソの小剣によるものだというある種の錯覚のようなものを生じさせていたのだ。
結果、刑部は自分に攻撃が向けられる心配を気にすることなく、ひたすら剣戟に集中出来る。
野盗ながら、そのアイデアは見事だと内心で舌を巻いていた刑部だが、逆にゼルガッソも刑部の剣から繰り出される威力の高さには感心していた。
●三匹を斬る
最初に決着を見せたのは、痩せ型との戦闘であった。
悠月は至近距離からの炎と凍気による打撃に己の生命力を削られながらも、白刃を翻らせて次々と剣戟を叩き込んでいた。
しかしどうにも、決定打に欠ける。
矢張り自らも打撃を受けているせいか、攻撃力が鈍ってきていた。
となれば、他の者にとどめを依頼する方が賢明であろう。
「ユーディタさん、頼まれてくれる?」
「まぁっかせなさぁい」
悠月に請われる形で、ユーディタは岩陰から飛び出すと同時に機導砲の態勢に入った。
ザレムもユーディタの一撃に合わせて、自らの銃撃をここぞとばかりに集中させる。
悠月が楯となって正面に立ち、ユーディタとザレムがここまで徹底して下半身への攻撃を加え続けていたことが、最大限に活きる格好となった。
痩せ型は回避運動もままならず、ユーディタの機導砲とザレムの集中打を浴びた。
「やったか」
ザレムが、低く吐息を漏らした。
とどめの大火力を受けて、痩せ型はほとんど瞬間的に姿を消していた。
三体のうちの一体が斃れた。
となれば、パワーバランスの崩壊は目に見えていた。
巨人型には悠月とザレムが、小人型にはユーディタがそれぞれ、援護に廻る。
増援が来着したことで、それぞれの戦局にも大きな変化が訪れることとなった。
小人型は依然としてノノトトが正面を張っており、メディエスが後方から少しずつではあるが、着実に打撃を加えつつある。
そのような状況下で中距離射撃での火力を担当していたクオンだったが、ユーディタの来援を受けてほっと胸を撫で下ろした。
正直なところ、この小人型は想像以上に機動性が高い。
バイクを運転しながらという不安定な姿勢からの射撃であった為、中々狙いを定められなかった。
尤も、小人型の周囲を旋回して他の戦線にちょっかいを出さないようにと牽制していたのだから、クオン自身の役割は十分に果たせている。
後は単純に、手数の問題であった。
そこへユーディタの加勢だから、クオンは心底、有り難いと思った。
ノノトトも、ブロウビートが効果を発揮せず、真正面からの純粋な殴り合いに徹せざるを得ない状況に、多少の息苦しさを感じていたが、足止め役が増えればここで一気に勝負をかけられる。
クオンのエレクトリックショックで足止めした瞬間を狙い、同時にユーディタの機導砲で回避を封じ、ノノトトの鉄パイプによる渾身の一撃で仕留めてしまおうという算段が立った。
「さぁ、後は宜しくッ!」
バイクを飛び降り、何とか小人型の足止めに成功したクオンがさっと退いて、ふたりに呼びかけた。
機動性が高いものの、耐久力は然程に高くはない相手である。
当たりさえすれば、仕留められるのは確実だった。
「こいつを仕留めたら、村で一杯やるんだ」
「それ、死亡フラグですから」
ノノトトは凄まじく不穏なひと言を放ったが、最後は、自身が繰り出した鉄パイプを振り抜いての一発で、決着をつけた。
直後、小人型は跡形も無く消失した。
一方、巨人型もほぼ同時に決着がついていた。
悠月とザレムが加勢したことで、対応人数は一気に倍へと広がったのだ。
それまで刑部とゼルガッソがふたりだけで互角の勝負を演じていたのだから、戦力が倍増するということは即ち、勝利へのカウントダウンが始まるということであった。
「四人で取り囲んで、勝負をかけよう」
ザレムの提案で四方から攻撃を仕掛ける格好となったが、悠月がふと、どうでも良いことに気付いて苦笑を浮かべた。
「しかし……見事に前衛ばっかりが集まったね」
「体力の塊みたいなやつだから、それはそれで良いんじゃないですか」
悠月に釣られて、刑部も笑った。
接近戦を専門としているということは、直接の殴り合いで高い火力を誇るということでもある。
巨人型のような奴を相手にするには遠隔からちまちまと削るよりは、こうして間近から直接ごりごりと生命力を削いでやった方が手っ取り早い。
事実、四人が仕掛けた包囲戦で、巨人型は見る見るうちに動きが鈍くなり、ものの数分とかからずに圧倒することが出来た。
最後の最後に、巨人型が力を振り絞って剛腕を振り回し始めると、流石に危ないと察知した四人は素早く間合いを取った。
が、そこでザレムは残弾を全て叩き込んた。
戦力を温存しても意味が無いので、さっさと決着をつけてしまおうという腹積もりなのだろう。
「動きが、止まった……仕上げは任せたぞ」
ザレムの呼び掛けに、刑部と悠月が素早く反応した。
巨人型が完全に動きを止めたのは、間違いなく好機だ。
刑部の疾風剣が脇腹を貫くと、悠月の白刃が宙空を奔って、巨人型の頭部を横薙ぎに叩き斬った。
巨人型も消滅し、三体のゴブリン型雑魔は全て駆逐した。
接近戦を担当していたノノトト、刑部、悠月はノーダメージでは済まなかったものの、これだけの激戦を、ひとりの犠牲者も出さずに終えることが出来たのだ。
疲労感以上の満足感を充実――ところがひとりだけ、まだ精神の緊張を解いていない者が居る。
ゼルガッソであった。
雑魔共を全て倒した以上、ここから先は休戦協定は破棄される。
だが刑部はそんなゼルガッソに敢えて背を向けて、ハンター達に呼びかけた。
「甘いかも知れませんが……一時的でも、共に強敵と戦った御仁と今ここで刃を交えたいとは思いません。今は気持ちよく別れたいと思うのですが」
異論は、出なかった。
「ありがとうのクッキーあげる。美味しいよ」
ノノトトが呑気な笑顔を湛えつつ、取り出したクッキーをゼルガッソに向けた。
ゼルガッソは二本の小剣を鞘に収めつつ、ノノトトから受け取ったクッキーを齧り、ひと言。
「……この辺にゃあ野盗団がみっつ程あるが、こんなに強いハンター共がうろうろしてるんじゃあ、下手な真似は出来ねぇな。連中には、この周辺では仕事するなと忠告しておく」
いってからゼルガッソは、微妙な表情をノノトトに向けた。
「おめぇ……喉が渇き切ってるところにクッキーか。ぱっさぱさで喉が詰まるじゃねぇか」
中々やるな、ハンターめ――冗談めかしてぼやくゼルガッソに、ノノトトはふふふと不敵に笑い返した。
今回の依頼は単純なゴブリン退治、という話だった筈だが、ユーディタ・チャペック(ka0402)が見る限り、どうもそうではないらしい。
村の正門を出てすぐのところに広がる草原で、のんびり野草の観察等に興じていたユーディタだったが、ザレム・アズール(ka0878)が厳しい表情でバイクを走らせる姿を見て、何かが起きた、とすぐに直感した。
ザレムは、草原の向こう側に位置する森の方から飛び出してきた。
更にザレムのバイクと途中まで並走していたハンター仲間のメディエス・パーマーが、大慌てでユーディタの方へと歩を寄せてくる。
これは益々何かがおかしいと考え、ユーディタは背負っていたアサルトライフル『ヴォロンテAC47』を小脇に抱え直し、それでもその表情はいつもの飄々とした色を浮かべたままメディエスの来着を静かに待った。
「敵が来たんだね。でも、ちょいとばかし厳しそうな相手かい?」
「うん、雑魔が出た。ゴブリンだっていうのは、誤報だったみたい」
メディエスの報告を聞きながら、ユーディタは村へとバイクを急がせるザレムにちらりと視線を流した。
どうやら速度で優るバイクで、村に警告を発しに行ったらしい。
それから程無くして、同じくバイクに跨ったクオン・サガラ(ka0018)を筆頭に、ノノトト(ka0553)、榊 刑部(ka4727)、或いは霧雨 悠月(ka4130)といった面々が村を飛び出してきた。
いずれも既に戦闘準備を終えており、村の外で一戦交える腹積もりであることが、ひと目見て分かった。
「おや、ザレムさんは?」
ユーディタが小首を傾げると、ノノトトがバイクのアクセルを廻す仕草を見せながら、曰く。
「今、村のひとびとに警告して廻ってます。ぼく達がここで迎え撃つ間、絶対に外に出ないで~ってお触れを出しながら、バイクをブン、ブン、ブブブンって」
成る程と一同は頷いたが、ひとつだけ分からないことがある。
何故、雑魔が来ると分かったのか?
その点についてはメディエスが、森の中で出会った野盗ゼルガッソの存在について、手短に説明した。
「もうそろそろ、駆けつけてくる筈よ。野盗だけど、今だけは見逃してあげて」
「そんな、見逃すだなんて……寧ろ、村への危険を事前に教えてくれた恩人じゃないですか」
刑部が幾分、驚いた様子でかぶりを振った。
同じく悠月が、ゼルガッソなる人物には一切敵意が無い旨を言葉に乗せる。
「その三体の特徴なんかも、割と詳細に教えてくれてるし、悪いひとだとは思えないんだけどね……兎に角、今は共通の敵を持つ仲間同士って訳だよね」
「生憎だが、俺にはお前さん達との仲間意識なんぞ欠片も無ぇよ」
不意に、野太い声がハンター達の背後から鼓膜を打った。
片耳隻眼の、何ともいえぬ鬼気を全身に纏わせる二刀流の小剣使い――野盗ゼルガッソが、そこに居た。
如何にも悪人面といわんばかりの凶悪な容貌だが、しかしその敵意は今、ハンター達にではなく、迫り来る三体の雑魔に対してだけ向けられている。
刑部は苦笑しつつ、小さく頷き返した。
「はいはい、分かりました。では今だけ休戦ということで宜しいですね?」
「そういうこった。で、分担は決まってるのか?」
ゼルガッソの問いかけに、ハンター達は一様に頷いた。
怪力を誇る巨人型には刑部が、炎と凍気を操る痩せ型には悠月とユーディタ、ザレムが向かい、そして驚く程の敏捷性を見せる小人型の対処をノノトト、クオン、メディエスで迎え撃つ。
ならば、ということで、ゼルガッソは巨人型を受け持つこととなった。
「頼りにしてるぜ」
「そうですね……お互いに背中を預け合うのです。この一時限りとはいえ、我らは戦友となるのです……その働き、期待させて頂きますよ」
刑部の真摯な態度に、ゼルガッソはやれやれと諦めた様子でかぶりを振った。
まさか、敵であるハンターに戦友呼ばわりされるなどとは、思っても見なかったのだろう。
森の方角から草を踏みしめる足音が複数、聞こえてきた。
全員の意識がその三つの影――ゴブリン型雑魔共へと集中した。
「間に合ったか」
そこへ、バイクを走らせてきたザレムが合流してきた。まさにこれから、戦端が開かれようとしていたところであった。
「まずは俺が一発ぶちかます。後は予定通り、各個撃破だ」
いうが早いか、ザレムは士筒『波瀾』での先制攻撃に続き、デルタレイの連射を仕掛けた。
なるべく距離があるうちに削れるだけ削っておきたいというのがザレムの意図だったが、敵もさるもの、デルタレイの一発目を浴びたところで雑魔共は一気に距離を詰めてきた。
特に小人型の脚は滅法速く、ノノトトとクオン、そしてメディエスが早々に包囲戦の間合いを取らざるを得なかった。
小人型の正面を引き受けるのはノノトト、背後はメディエスである。
クオンはバイクを駆って周囲を旋回し、距離を詰めながら小人型の離脱を防ぐという算段であった。
実のところこの戦術は、相当に難しい。
というのも、バイクが機動力に富むというのは他の車両と比べての話であり、小回りという点では矢張り徒歩の戦闘者には及ばない。
バイクはどうしてもハンドル操作、前後の両輪差、その重量等を巧みに操作しなければならないのに対し、徒歩は単純に己の脚だけで素早く動き回れる。
これだけのデメリットを抱えつつ、それでもクオンは、小人型の動きを限られたエリアだけに封じることに成功していた。
勿論運転に集中力を奪われる為、攻撃面では多少手数が減るのだが、そこは割り切るしかないだろう。
一方、同じバイク乗用者であるザレムは痩せ型への攻撃に際しては早々に降車し、銃撃での包囲戦に切り替えていた。
痩せ型への接近戦は、覚醒した状態での悠月が担当する。彼は猛き銀狼の呼び名の通り、至近距離から猛然と攻撃を繰り出していた。
「手強そうな相手だけど……この胸の高鳴り、堪らないね」
決して余裕を持って倒せる相手ではないのだが、しかし悠月の昂揚感を抑える材料とはならない。
持ち得る全ての技術を注ぎ込み、悠月は徹底して痩せ型の攻撃目標を自分自身に引きつけていた。
「ほら、よそ見しているとこの牙が首を捉えるよ」
その動き、まさに雷鳴の如し。
痩せ型の大きく開かれた口から吐き出される凍気は、決して小さくはないダメージを悠月の肉体に累積してゆく。だが多少の打撃を受けても尚、悠月の動きは更に鋭さを増すばかりであった。
逆に痩せ型は、少しずつ小回りが利かなくなり始めている。
岩陰から下半身への銃撃を加えているユーディタが、着実に痩せ型の機動力を奪っていたからだ。
「これ、終わったら、村で、酒を、たらふく、痛飲、するッ、と」
引き金を搾る毎に軽い衝撃が銃床から肩へと伝わる為、ひとり言ながら言葉が途切れがちになっていた。
酒という雑念に支配されながらも、悠月へ誤射せず、確実に痩せ型の下半身に弾丸を叩き込んでゆく技量は流石という他は無い。
「邪念だらけであの腕前。大したものだな」
ザレムが悠月から僅かに退がった位置で同じように銃撃を加えつつ、ユーディタの技量に呆れ半分、感嘆半分の念を抱いた。
巨人型への対処は、他と比べてひとり少ない。
それでも刑部とゼルガッソが互角の展開を見せていられたのは、単に個人の技量のみならず、初めてペアを組むとは思えない程の見事な連携が取れていたからだ。
刑部は接近戦に特化した技能を上手く組み合わせて一撃離脱戦法を取り、その一方でゼルガッソは巨人型の真正面に張り付いて離れず、怪力から繰り出される必殺の攻撃を紙一重でかわしながら、刑部が仕掛ける疾風剣の瞬間に合わせて、自らの小剣を左右から叩き込んでいた。
実際は刑部の攻撃が打撃の大半を占めているのだが、その刑部に標的が向かないようにと、ゼルガッソがタイミングを合わせて小剣を繰り出すことで、巨人型に与えている打撃の全てはゼルガッソの小剣によるものだというある種の錯覚のようなものを生じさせていたのだ。
結果、刑部は自分に攻撃が向けられる心配を気にすることなく、ひたすら剣戟に集中出来る。
野盗ながら、そのアイデアは見事だと内心で舌を巻いていた刑部だが、逆にゼルガッソも刑部の剣から繰り出される威力の高さには感心していた。
●三匹を斬る
最初に決着を見せたのは、痩せ型との戦闘であった。
悠月は至近距離からの炎と凍気による打撃に己の生命力を削られながらも、白刃を翻らせて次々と剣戟を叩き込んでいた。
しかしどうにも、決定打に欠ける。
矢張り自らも打撃を受けているせいか、攻撃力が鈍ってきていた。
となれば、他の者にとどめを依頼する方が賢明であろう。
「ユーディタさん、頼まれてくれる?」
「まぁっかせなさぁい」
悠月に請われる形で、ユーディタは岩陰から飛び出すと同時に機導砲の態勢に入った。
ザレムもユーディタの一撃に合わせて、自らの銃撃をここぞとばかりに集中させる。
悠月が楯となって正面に立ち、ユーディタとザレムがここまで徹底して下半身への攻撃を加え続けていたことが、最大限に活きる格好となった。
痩せ型は回避運動もままならず、ユーディタの機導砲とザレムの集中打を浴びた。
「やったか」
ザレムが、低く吐息を漏らした。
とどめの大火力を受けて、痩せ型はほとんど瞬間的に姿を消していた。
三体のうちの一体が斃れた。
となれば、パワーバランスの崩壊は目に見えていた。
巨人型には悠月とザレムが、小人型にはユーディタがそれぞれ、援護に廻る。
増援が来着したことで、それぞれの戦局にも大きな変化が訪れることとなった。
小人型は依然としてノノトトが正面を張っており、メディエスが後方から少しずつではあるが、着実に打撃を加えつつある。
そのような状況下で中距離射撃での火力を担当していたクオンだったが、ユーディタの来援を受けてほっと胸を撫で下ろした。
正直なところ、この小人型は想像以上に機動性が高い。
バイクを運転しながらという不安定な姿勢からの射撃であった為、中々狙いを定められなかった。
尤も、小人型の周囲を旋回して他の戦線にちょっかいを出さないようにと牽制していたのだから、クオン自身の役割は十分に果たせている。
後は単純に、手数の問題であった。
そこへユーディタの加勢だから、クオンは心底、有り難いと思った。
ノノトトも、ブロウビートが効果を発揮せず、真正面からの純粋な殴り合いに徹せざるを得ない状況に、多少の息苦しさを感じていたが、足止め役が増えればここで一気に勝負をかけられる。
クオンのエレクトリックショックで足止めした瞬間を狙い、同時にユーディタの機導砲で回避を封じ、ノノトトの鉄パイプによる渾身の一撃で仕留めてしまおうという算段が立った。
「さぁ、後は宜しくッ!」
バイクを飛び降り、何とか小人型の足止めに成功したクオンがさっと退いて、ふたりに呼びかけた。
機動性が高いものの、耐久力は然程に高くはない相手である。
当たりさえすれば、仕留められるのは確実だった。
「こいつを仕留めたら、村で一杯やるんだ」
「それ、死亡フラグですから」
ノノトトは凄まじく不穏なひと言を放ったが、最後は、自身が繰り出した鉄パイプを振り抜いての一発で、決着をつけた。
直後、小人型は跡形も無く消失した。
一方、巨人型もほぼ同時に決着がついていた。
悠月とザレムが加勢したことで、対応人数は一気に倍へと広がったのだ。
それまで刑部とゼルガッソがふたりだけで互角の勝負を演じていたのだから、戦力が倍増するということは即ち、勝利へのカウントダウンが始まるということであった。
「四人で取り囲んで、勝負をかけよう」
ザレムの提案で四方から攻撃を仕掛ける格好となったが、悠月がふと、どうでも良いことに気付いて苦笑を浮かべた。
「しかし……見事に前衛ばっかりが集まったね」
「体力の塊みたいなやつだから、それはそれで良いんじゃないですか」
悠月に釣られて、刑部も笑った。
接近戦を専門としているということは、直接の殴り合いで高い火力を誇るということでもある。
巨人型のような奴を相手にするには遠隔からちまちまと削るよりは、こうして間近から直接ごりごりと生命力を削いでやった方が手っ取り早い。
事実、四人が仕掛けた包囲戦で、巨人型は見る見るうちに動きが鈍くなり、ものの数分とかからずに圧倒することが出来た。
最後の最後に、巨人型が力を振り絞って剛腕を振り回し始めると、流石に危ないと察知した四人は素早く間合いを取った。
が、そこでザレムは残弾を全て叩き込んた。
戦力を温存しても意味が無いので、さっさと決着をつけてしまおうという腹積もりなのだろう。
「動きが、止まった……仕上げは任せたぞ」
ザレムの呼び掛けに、刑部と悠月が素早く反応した。
巨人型が完全に動きを止めたのは、間違いなく好機だ。
刑部の疾風剣が脇腹を貫くと、悠月の白刃が宙空を奔って、巨人型の頭部を横薙ぎに叩き斬った。
巨人型も消滅し、三体のゴブリン型雑魔は全て駆逐した。
接近戦を担当していたノノトト、刑部、悠月はノーダメージでは済まなかったものの、これだけの激戦を、ひとりの犠牲者も出さずに終えることが出来たのだ。
疲労感以上の満足感を充実――ところがひとりだけ、まだ精神の緊張を解いていない者が居る。
ゼルガッソであった。
雑魔共を全て倒した以上、ここから先は休戦協定は破棄される。
だが刑部はそんなゼルガッソに敢えて背を向けて、ハンター達に呼びかけた。
「甘いかも知れませんが……一時的でも、共に強敵と戦った御仁と今ここで刃を交えたいとは思いません。今は気持ちよく別れたいと思うのですが」
異論は、出なかった。
「ありがとうのクッキーあげる。美味しいよ」
ノノトトが呑気な笑顔を湛えつつ、取り出したクッキーをゼルガッソに向けた。
ゼルガッソは二本の小剣を鞘に収めつつ、ノノトトから受け取ったクッキーを齧り、ひと言。
「……この辺にゃあ野盗団がみっつ程あるが、こんなに強いハンター共がうろうろしてるんじゃあ、下手な真似は出来ねぇな。連中には、この周辺では仕事するなと忠告しておく」
いってからゼルガッソは、微妙な表情をノノトトに向けた。
「おめぇ……喉が渇き切ってるところにクッキーか。ぱっさぱさで喉が詰まるじゃねぇか」
中々やるな、ハンターめ――冗談めかしてぼやくゼルガッソに、ノノトトはふふふと不敵に笑い返した。
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相談スレッド ザレム・アズール(ka0878) 人間(クリムゾンウェスト)|19才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/07/07 23:07:20 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/04 19:42:32 |