ゲスト
(ka0000)
父の歩みと子の選び
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/08 07:30
- 完成日
- 2015/07/14 18:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●遺言
私の唯一の肉親にして、最愛のコリンへ。
この手紙が渡ったということは、私が辺境において生を終えてしまったこととなる。
お前が一人前、いや、お前が学校や戦いと関係ない所に身を置けるように頑張るつもりだったんだがすまなかった。
帰ってから話すつもりだったんだが、北寄りにある小さな町フォークベリーに薬草園を作ってるジャイルズ・バルネという元軍医がいる。ぜひ薬草に関して教えて欲しいと頼み込んだところ、快諾か分からないが面倒見ると言ってくれた。
ちょっと怖い顔しているが、いい人だよ。
もし、薬草園で学ぶのが嫌なら、町の司祭様を訪ねれば相談に乗ってくれるはずだ。小さい町で穏やかなところだよ。王都にもうちより近いせいか、いろんな人も住んでいる。
道はたくさんある。
遺言に関して、渡してくれた小父さんがいるだろう? そいつが護衛と言うか安全確保のための保護者と言うか、ハンター雇う手続きとかやってくれるからな。だから、お前は言うことを聞いてやってくれ。
お前には迷惑を掛けた。すまなかった。
お前の未来のために、見守っていたいと思う。
父より。
●少年の選択
孤児になる、そんなことをコリンは考えたことはなかった。
母が死んで、父一人子一人になり、親戚もいないとこうなると分かりきったことだった。
でも、二人は考えなかった。
コリンが大きくなって独り立ちするまで、父子家庭は続く……そう信じていた。
まさかの戦死。
職業として兵士を選べば少なからず発生する問題であるのだ。だからコリンは考えないようにしていただけかもしれない。
「父さん……」
働くところがあるだろうが、簡単に見つかる年齢でもない。技術や知識があるわけでもなく、下働きを見つけられたらいい方だろう。孤児院に一時的に身を寄せるか、選択肢は限られている。
「……どうして……父さん……」
敵によりすりつぶされた父は、遺体すら残っていない。残っていたのは身に着けていたものの破片。遺言を持ってきた男も帰ってこられたのが奇跡としか言いようがない状況だった。二人とも死んでいたかもしれない。
そして、その男は遺言状にあった通り頼りになる親切な人だった。コリンが住む家の大家にも話を付け、コリンがジャイルズのところまで行く道を敷いてくれた。
男は二、三日で遺言執行のための行動を終え、彼の家族が待つところに戻って行った。
「僕……どうしよう」
一人残されたコリンはメモを見る。
出発する日を決めて出ないとならない、と。涙をこぼす時間は全くなかった。
●日程を詰める
父の同僚という人が依頼も入れてくれていたということなので、コリンはハンターズソサエティの事務所に恐る恐る入る。
「どうしたんですか?」
受付の女性がにこやかに尋ねてきた。悩みを受け止めますよという柔和の笑顔。
「えと、あの……依頼してるって聞いたので……いつ出発するかって決めないと」
「そうなんですか? 名前……ああ、君がコリン君ね!」
「は、はい」
「何時でも出発できるわよ、もちろん、人が集まらないとだめだけど、日程さえ組めば予定組んできてくれるわ」
借家の退出期限等を考え、日程を出した。
「はいはい! じゃ、これで決めますね」
「あの……」
「はい?」
コリンは気付いた、彼女に言うことではないということに。しかし、ここで言っておかないと依頼の内容が違うということになりかねない。些細なことであっても粗相があってはいけないとコリンは考えていた。
「あの……父を……母さんのお墓に入れて行ってあげたいんです」
職員はコリンの父が死んだというのは依頼人から聞いていた。母はすでにないということは考えていなかったので、コリンが耐えるモノにようやく気付いた。
(泣く涙がないのね? 妙にしっかりしていると思ったのは、残された家族のためというより……諦め?)
職員は一瞬言葉に詰まらせたがすぐにいつもの笑顔に戻る。
「……そう? 場所は分かるの?」
「はい」
職員は村出てすぐだと言うことを知り、問題ないと請け負った。
「じゃ、村の入口でハンターの皆さんとは待ち合わせ……でいいかな」
「分かりますよね?」
「きっと。だって、村の入口に見たことない人数人いたら分かるし、嘘言っていたらそれこそ問題」
「お姉さん、ありがとう」
「いえいえ~」
コリンは泣き出しそうな笑顔で出て行った。
職員は独りになった瞬間、笑顔を崩した。
「行先は聞いたことない町だけど何があるのかしらね……。依頼を聞いたときは母親でも待っているのかと思ったけど……。遺言で示された町で、コリン君の父親だって考えて送るわけだから、いい未来の選択肢が待っているはず」
息子には戦いとは関係ないところに生きて欲しいと願っているとのこと。
「あたしにはあたしの仕事……」
職員は扉の開く音がしたので笑顔に戻る。
「どうかしましたか?」
私の唯一の肉親にして、最愛のコリンへ。
この手紙が渡ったということは、私が辺境において生を終えてしまったこととなる。
お前が一人前、いや、お前が学校や戦いと関係ない所に身を置けるように頑張るつもりだったんだがすまなかった。
帰ってから話すつもりだったんだが、北寄りにある小さな町フォークベリーに薬草園を作ってるジャイルズ・バルネという元軍医がいる。ぜひ薬草に関して教えて欲しいと頼み込んだところ、快諾か分からないが面倒見ると言ってくれた。
ちょっと怖い顔しているが、いい人だよ。
もし、薬草園で学ぶのが嫌なら、町の司祭様を訪ねれば相談に乗ってくれるはずだ。小さい町で穏やかなところだよ。王都にもうちより近いせいか、いろんな人も住んでいる。
道はたくさんある。
遺言に関して、渡してくれた小父さんがいるだろう? そいつが護衛と言うか安全確保のための保護者と言うか、ハンター雇う手続きとかやってくれるからな。だから、お前は言うことを聞いてやってくれ。
お前には迷惑を掛けた。すまなかった。
お前の未来のために、見守っていたいと思う。
父より。
●少年の選択
孤児になる、そんなことをコリンは考えたことはなかった。
母が死んで、父一人子一人になり、親戚もいないとこうなると分かりきったことだった。
でも、二人は考えなかった。
コリンが大きくなって独り立ちするまで、父子家庭は続く……そう信じていた。
まさかの戦死。
職業として兵士を選べば少なからず発生する問題であるのだ。だからコリンは考えないようにしていただけかもしれない。
「父さん……」
働くところがあるだろうが、簡単に見つかる年齢でもない。技術や知識があるわけでもなく、下働きを見つけられたらいい方だろう。孤児院に一時的に身を寄せるか、選択肢は限られている。
「……どうして……父さん……」
敵によりすりつぶされた父は、遺体すら残っていない。残っていたのは身に着けていたものの破片。遺言を持ってきた男も帰ってこられたのが奇跡としか言いようがない状況だった。二人とも死んでいたかもしれない。
そして、その男は遺言状にあった通り頼りになる親切な人だった。コリンが住む家の大家にも話を付け、コリンがジャイルズのところまで行く道を敷いてくれた。
男は二、三日で遺言執行のための行動を終え、彼の家族が待つところに戻って行った。
「僕……どうしよう」
一人残されたコリンはメモを見る。
出発する日を決めて出ないとならない、と。涙をこぼす時間は全くなかった。
●日程を詰める
父の同僚という人が依頼も入れてくれていたということなので、コリンはハンターズソサエティの事務所に恐る恐る入る。
「どうしたんですか?」
受付の女性がにこやかに尋ねてきた。悩みを受け止めますよという柔和の笑顔。
「えと、あの……依頼してるって聞いたので……いつ出発するかって決めないと」
「そうなんですか? 名前……ああ、君がコリン君ね!」
「は、はい」
「何時でも出発できるわよ、もちろん、人が集まらないとだめだけど、日程さえ組めば予定組んできてくれるわ」
借家の退出期限等を考え、日程を出した。
「はいはい! じゃ、これで決めますね」
「あの……」
「はい?」
コリンは気付いた、彼女に言うことではないということに。しかし、ここで言っておかないと依頼の内容が違うということになりかねない。些細なことであっても粗相があってはいけないとコリンは考えていた。
「あの……父を……母さんのお墓に入れて行ってあげたいんです」
職員はコリンの父が死んだというのは依頼人から聞いていた。母はすでにないということは考えていなかったので、コリンが耐えるモノにようやく気付いた。
(泣く涙がないのね? 妙にしっかりしていると思ったのは、残された家族のためというより……諦め?)
職員は一瞬言葉に詰まらせたがすぐにいつもの笑顔に戻る。
「……そう? 場所は分かるの?」
「はい」
職員は村出てすぐだと言うことを知り、問題ないと請け負った。
「じゃ、村の入口でハンターの皆さんとは待ち合わせ……でいいかな」
「分かりますよね?」
「きっと。だって、村の入口に見たことない人数人いたら分かるし、嘘言っていたらそれこそ問題」
「お姉さん、ありがとう」
「いえいえ~」
コリンは泣き出しそうな笑顔で出て行った。
職員は独りになった瞬間、笑顔を崩した。
「行先は聞いたことない町だけど何があるのかしらね……。依頼を聞いたときは母親でも待っているのかと思ったけど……。遺言で示された町で、コリン君の父親だって考えて送るわけだから、いい未来の選択肢が待っているはず」
息子には戦いとは関係ないところに生きて欲しいと願っているとのこと。
「あたしにはあたしの仕事……」
職員は扉の開く音がしたので笑顔に戻る。
「どうかしましたか?」
リプレイ本文
●出発
墓に父の遺品を埋めて、コリンは立ち上がった。
「みなさん、すみませんでした」
コリンは立ち上がると、深々と頭を下げる。
「……お別れはすみましたか? それでは参りましょう」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)は優しく微笑む。
「君の身の安全は俺たちが必ず守りますね」
アリオーシュ・アルセイデス(ka3164)はコリンと同じ年の頃の記憶がよぎり、身につまされる。
「コリン……僕たちは仕事なんだよ、謝ることはないんだ」
火椎 帝(ka5027)は距離が近くなれば良いと気安い感じで話した。
「え、あ、はい……すみません」
コリンは謝る。
帝は今は特に何も言わない、そういうことではないということを。
「特に問題はなかったですよ」
龍華 狼(ka4940)はコリンが墓参りをしている間に、道中を魔導二輪で見に行って来た。前もって道筋は調査し決めてあるので、情勢変化や天候に注意を払うこととなる。野営もしないで済みそうではあるが、野営となっても野生動物程度の脅威だろう。
依頼書に示されているように、目的地が北部に近くなるので亜人には注意だろう。
「じゃあ、出発ですね」
マリアンナ・バウアール(ka4007)は笑う、暗い気分でいるより少しでも明るくなるように。
(甘ちゃんばかりの温かい連中ばかりだな)
バイオレット(ka0277)は煙管を吹かしつつ冷めている目で眺める。ソサエティの職員が期待している甘いことや馴れ合いをするつもりはないが、プロとして護衛をこなすためにここにいる。
●思考停止
最初の休憩まで、沈黙が続く。
話したいと思っても話題がなく、口を開くことがなかった。
コリンのおとなしさが普段からなのか、父親の事がショックでこうなっているのか把握できない。
機械に興味あるなしに関わらず、狼のバイクに何らかの反応があっても良いのではと考えたりもするかもしれない。バイク自体が走っていることはまだ少ないのだから。
「妙に大人びているというか……」
「しっかりしている子が、突然のことで感覚がマヒしているのかもしれませんね」
帝のつぶやきを掬い上げるようなアリオーシュの言葉。帝はうなずく。
日数はあるのだから、ゆっくり慣れ、気分が変わればよいと二人とも考える。護衛がメーンだから、踏込過ぎも良くないけれど、幼気なので支えたい気持ちもある。
昼ご飯を食べられそうな店にやってきた。
狼推薦、マリアンナ賛同で小さな食堂に入った。コリンは特に何も言わない。
テーブル一つでは足りないため、隣接したところも使う。
レイはテキパキ注文を取りまとめ店員に告げる。
バイオレットは入口近くで煙管を吹かしながら外と中を見る。
穏やかに昼食は終わった。
狼とマリアンナは顔を見合わせる。互いに何か言ったわけではないが、コリンを気にしているのは感じ取っている。
手ごたえがなかった。まだ会ったばかりだしと二人は異口同音につぶやいた。
●きっかけ
「悩んでいるんですか?」
宿に泊まりアリオーシュは尋ねた。本当は違うかもしれないが、コリンと話すきっかけになればいい。
「……あ、はい」
「何を、とは問いませんが、俺たちでよければ、心の重荷持ちますよ? 決断するのは大変でしょうが、ゆっくり決めればいいんですよ。幸い……ジャイルズさんという方と出会いがあるみたいですし」
ジャイルズ自身、経験は豊富だろう。今でこそ薬草園を作り世間から離れているが、もともとは軍医だというのだから。
「そうですね……」
「気になってしまうんですよ、きみが。俺もきみと同じ年頃に家族を失い叔父の下に引き取られました」
コリンはアリオーシュに視線を上げた。
「守りたい……聖騎士を目指そうと考えたのはそれからですね」
「……」
「時間は有限ですが、急いで答えを出さなくてもいいでしょう。見て聞いてからでも」
コリンはうなずいて、布団にくるまった。
「バイクに乗ってみます?」
翌日、狼はコリンに尋ねる。この街道は安全なようだから、気分を変え、話すきっかけになればと誘ってみた。
「いえ、その悪いですし……」
コリンは視線を落とす。
「ん? 狼君、道中も危ないことはないんだろう? 運転うまいしこんな機会ないよ?」
帝がコリンを促す中、狼が大きくうなずく。
「すみません、じゃ、少しだけ」
コリンを後ろに乗せた狼は先に行った。離れ過ぎず、それでも距離がある場所で仲間を待つ。
「……猫かぶってると疲れた。年近いからタメでいいだろう?」
ニカッと笑う狼に、コリンはうなずく。
「人生、どう転ぶかなんてわからない」
狼は時々笑い声も出すが、母親に捨てられてから今日までいろいろやったこと、父親かもしれない人はろくでなしだが押しかけた彼を住まわせてくれること等を話した。
「この旅だって楽しめるものにする。結構移動するってことは、土地の食べ物もあるはずだ」
コリンは小さくうなずいた。
仲間が追いついたので、また移動する。
コリンの声はほとんど聞こえないが、距離は近くなったような手ごたえはあった。
●心と心
温かい食事、温かい雰囲気の宿。
マリアンナは順調に旅が進むことに安堵する。コリンは旅慣れしていないし子どもであるから、出来る限り宿に入りたかった。
環境の変化に乏しかった彼が今混乱にあってもおかしくない。笑顔で適度に接するのが一番だと考える。歪虚に今日明日の命と脅かされているわけでもないため時間はあるが、乗り越えるのはコリン自身。
「どうしたの?」
マリアンナはバルコニーにいるコリンに声を掛ける。コリンは泣くでもなく、ただ黙っている。
「頑張ってもどうしようもないときはどうしようもないんだから……いつも通りにしていればいいんだよ。なんとんかなる……なんとかする……かもしれないけど」
出身地の辺境であったことがマリアンナはよぎる。歪虚の侵攻により、部族は残っても多くが失われ何とか生きているという現実。
「……そうですね……」
「それ、コリンのいつも通り?」
「そうかもしれません」
小さく力なく笑うコリンの目は、バイオレットの吐き出した煙を追っている。
(自分だけが不幸で可哀想と思っている糞ガキ……という以前の問題か? 感情の停止)
依頼主ということになるコリンを観察しつつ、バイオレットは考える。無茶をする護衛対象ではないので楽ではあるが、物足りなさもある。
「おや? みなさんと一緒でしたか?」
バルコニーにレイが出て来た。
おやすみと言いながら、女性陣が引っ込む。
「すみません……もう、寝たほうがいいですね」
コリンはレイと部屋に入った。
「いえ、謝ることないですよ」
「すみません」
「……いえ……」
「あ、すみません」
「……」
帝はその様子を見つつ、過去の自分にコリンを重ねあわせていた。
コリンは表情は変わらないが、狼につられて活動的になってきている。
この旅で全てが変わるわけではないだろうが、少しでもきっかけになればと思う者が多い。
三泊目の宿、帝は言ってみる。
「『すみません』『ありがとう』は使うところが似ているけれど、随分違うんだよ」
コリンは突然の言葉に驚く。
「……違いますか?」
「ああ。僕、この世界に一人来たとき、何も持ってなかった。いろんな人に世話になって『すみません』ばかり。でも、『ありがとう』の方が良かったと」
コリンはうつむいた。
「こうやって縁があって旅路に着いたんだ。コリンが悩むなら心配する……ハンターの皆、世話焼きで優しいから」
「すみません」
すぐに口癖は直らない。帝は苦笑するが、どう行動するかはコリン次第だから介入はしない。
「コリン様、また何かあったんですか?」
入ってきたレイは謝っていたのを聞き、思わず二人を見る。コリンも苦しんでいるように見えるから心配だ。
「……今は心のまま行動してしまっていいんだと思いますよ?」
コリンはきょとんとする。
「悲しんでも、傷ついても、悩んでも……ということです」
「そうなんでしょうか?」
「そうですよ」
「……すみま……ありがとうございます」
レイがきょとんとした。破顔して「どういたしまして」とお礼を返した。
●戦いの先に
あと少しで町に着く。
狼の聞き込みではゴブリンが出る可能性がある地域だ。行き来する人たちもなるべくまとまって行動すると話しが上がっている。
おおむね数匹であるのだが、北部の不安定な状況を考えると楽観もできない。
コリンを真ん中にしてアリオーシュとレイで狙われにくいように挟んだ。
狼とマリアンアそしてバイオレットは距離を置いて周囲を警戒する。荷物に銃を仕舞っていた帝は取り出すと、用心を始める。
狼はバイクで先行し、魔導短伝話を通じて連絡する。離れ過ぎると危険であるため、適度に戻ってくる。バイクの音で追い払うかもしれないが、位置を知らせる事にもなる。
木と灌木のある道にやってきた。
銃を持ち、非常に警戒をする。ここを過ぎると草原が続くため、林は最後の襲撃ポイントと言えた。
中央に進んだ帝が引き金を絞った。銃声が響く。
相手に飛び道具があった場合、コリンを馬に乗せて走り去るのは危険だ。踏みとどまり、様子を見る。
アリオーシュはコリンの耳をふさぐ。銃声は慣れていない者に辛いだろうと思ったからだ。コリンは抵抗せずじっとしている。
遮蔽物が多いため敵は避けた。獣が鳴くような、言語のようなものが響き、下草を踏みしめ近寄る足音が響く。
「全部で4か?」
バイオレットは眼帯を外し、煙管を仕舞い銃を構える。接敵する前に片づけるのが理想。
銃を持つ者が隠れて近づくゴブリンを撃つ。
「少しずつ進みましょう」
アリオーシュはコリンを導き、周囲に目を走らせる。
マリアンナと狼は刃を構えて待機する。
「来たな」
銃弾をかいくぐったゴブリンに狼は刀を振るう。
「近付けさせない」
マリアンナも舞うように振るう。戦いは苦手でも、やるべきことは心得る。
まだいる可能性もあるので、コリンを連れたアリオーシュとレイが急いだ。
状況を確認しつつ、狼、マリアンナそして帝が続く。
投石があるため、銃弾を返す。
隠れていた残り4体は投石後、逃げるか否か躊躇していた。その間に、コリンの安全を確保したハンターに倒された。
バイオレットはゴブリンと言えども徹底的に処断した。切り刻み、燃やす。
そこまでとも思うハンターもいるが、死体は雑魔になる可能性があるなら、これが一番確実な手段。
コリンはぼんやりと見ている。見せないと言う選択肢もあるが、本人は動けるため誰も何も言わなかった。
ほろり……涙が頬を伝った。
「え?」
涙は止まらなかった。コリンの足が震えているのに誰もが気付く。戦いをきちんと見ていたコリンに、恐怖が来たのだろうか。
もうもうと煙が上がる中、死の匂いが漂う。
「離れようか?」
帝に促されるが、コリンはとどまる。
「父が……見た戦場はもっとひどいんですよね」
マリアンナがうなずいた。前の戦いならば、巨人や十三魔が絡み、血で血を洗う戦いだった。辺境の部族では滅ぼされたところもあった。
「あなたのお父様は、あなたのために戦い、あなたのために道を残したのです。コリン様の父君は、立派な方だと思います」
静かなレイの言葉にコリンは目を見開く。
「そんなの分かってる! 分かってるよっ! 父さんを止めるべきだったって思ってる。必要だから、必要とされているから行くっていうのも分かってる! もっと多くの人が死んだのも分かってる!」
コリンの感情が爆発し、泣き、叫んだ。
「……感傷に後悔……そんなのばかりか? 自分だけが不幸で可哀想と思っている、糞ガキは嫌いだよ、私は」
バイオレットは煙を吐き出すとともに口にする。
コリンは怒りがうかがえる目をバイオレットに向けた。しかし、特に何も言わない。両目からは涙があふれこぼれるのみ。
涙がすべてを流れ落とすのか、コリンの目は徐々に無に戻っていく。
「……すみません、八つ当たりみたいなことを言ってしまって」
コリンは落ち着いた声でレイに告げる。
「あなたの心の声が聞けて良かったです」
ニコリとレイは応えた。
「僕は不幸とかなんとかまだ実感はないです。嫌いでも構わないです」
コリンはまじめな顔でバイオレットに頭を下げた。目的地までまだある。
●薬草園の主
小さい町フォークベリーに着いた。
日が陰ってきており、走り回る子供たちが家路につき、商店が連なるところでは店じまいが一部行われている。
のんびりした空気が漂う田舎町であり、王都も多少意識したのか建物は都会的な色合いも持っている。不思議な融合が見て取れた。
目的地には住所を頼りにたどり着く。
呼び鈴を押そうとしたとき、中からエクラ教の司祭が現れた。
「おや?」
コリンとハンターを見て、表情を和らげた。
「ようこそ、みなさん。コリン君ですね。この町の教会の司祭のマークと言います」
ハンターには彼が歴戦の戦士だったと感じ取る。体格の良さ、手や顔の見えにくい所に小さな古傷が見えるからかもしれない。
「ジャイルズさん、コリン君来ましたよ。では、私はこの辺で」
ジャイルズに声をかけた後、立ち去った。
それなりに鍛えられた体型の長身の男が出てくる。眉は中心により、まさに渋面に近い表情の男だ。
「貴様がジャイルズ・バルネだな? これで依頼は完遂される」
バイオレットは淡々と告げ、コリンの背を軽く押した。
緊張するコリンを前に、ジャイルズも緊張している様子が漂っている。
「無事に来られて何よりだ。君たちもご苦労だった」
ジャイルズのコリンを見る目は優しい。突然孫でもできたかのような光が一瞬浮かんだ。
「なんとかなるよ。コリンはまだこれからなんだよ!」
マリアンナは笑顔になる。
「これやるよ。この旅の思い出としてな。この先、幸運に恵まれるように」
狼がコリンに『幸運の実』を握らせる。
「わ、悪いよ……そんな物もらっちゃ」
コリンは狼に返すが、また戻す。
「コリン様、それは受け取っておくものですよ。そして、増やして返して差し上げればいいのです」
レイの解決策に少年二人はうなずいた。幸福が来てそれを種として撒けば、幸福は広がっていくだろう。
「たくさん学ぶことがあるでしょう。エクラのお導きがありますように」
アリオーシュは微笑む、コリンは同じように仕草を返してきたから。
「困ったときは呼んでくれよ。いつでも駆けつける、約束だ」
帝にコリンは「ありがとうございます」と小さな笑みを浮かべてお辞儀をした。
立ち去る一行を、コリンはジャイルズと共に見えなくなるまで見送った。その表情は、無ではなく希望が湧きあがってきていた。
墓に父の遺品を埋めて、コリンは立ち上がった。
「みなさん、すみませんでした」
コリンは立ち上がると、深々と頭を下げる。
「……お別れはすみましたか? それでは参りましょう」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)は優しく微笑む。
「君の身の安全は俺たちが必ず守りますね」
アリオーシュ・アルセイデス(ka3164)はコリンと同じ年の頃の記憶がよぎり、身につまされる。
「コリン……僕たちは仕事なんだよ、謝ることはないんだ」
火椎 帝(ka5027)は距離が近くなれば良いと気安い感じで話した。
「え、あ、はい……すみません」
コリンは謝る。
帝は今は特に何も言わない、そういうことではないということを。
「特に問題はなかったですよ」
龍華 狼(ka4940)はコリンが墓参りをしている間に、道中を魔導二輪で見に行って来た。前もって道筋は調査し決めてあるので、情勢変化や天候に注意を払うこととなる。野営もしないで済みそうではあるが、野営となっても野生動物程度の脅威だろう。
依頼書に示されているように、目的地が北部に近くなるので亜人には注意だろう。
「じゃあ、出発ですね」
マリアンナ・バウアール(ka4007)は笑う、暗い気分でいるより少しでも明るくなるように。
(甘ちゃんばかりの温かい連中ばかりだな)
バイオレット(ka0277)は煙管を吹かしつつ冷めている目で眺める。ソサエティの職員が期待している甘いことや馴れ合いをするつもりはないが、プロとして護衛をこなすためにここにいる。
●思考停止
最初の休憩まで、沈黙が続く。
話したいと思っても話題がなく、口を開くことがなかった。
コリンのおとなしさが普段からなのか、父親の事がショックでこうなっているのか把握できない。
機械に興味あるなしに関わらず、狼のバイクに何らかの反応があっても良いのではと考えたりもするかもしれない。バイク自体が走っていることはまだ少ないのだから。
「妙に大人びているというか……」
「しっかりしている子が、突然のことで感覚がマヒしているのかもしれませんね」
帝のつぶやきを掬い上げるようなアリオーシュの言葉。帝はうなずく。
日数はあるのだから、ゆっくり慣れ、気分が変わればよいと二人とも考える。護衛がメーンだから、踏込過ぎも良くないけれど、幼気なので支えたい気持ちもある。
昼ご飯を食べられそうな店にやってきた。
狼推薦、マリアンナ賛同で小さな食堂に入った。コリンは特に何も言わない。
テーブル一つでは足りないため、隣接したところも使う。
レイはテキパキ注文を取りまとめ店員に告げる。
バイオレットは入口近くで煙管を吹かしながら外と中を見る。
穏やかに昼食は終わった。
狼とマリアンナは顔を見合わせる。互いに何か言ったわけではないが、コリンを気にしているのは感じ取っている。
手ごたえがなかった。まだ会ったばかりだしと二人は異口同音につぶやいた。
●きっかけ
「悩んでいるんですか?」
宿に泊まりアリオーシュは尋ねた。本当は違うかもしれないが、コリンと話すきっかけになればいい。
「……あ、はい」
「何を、とは問いませんが、俺たちでよければ、心の重荷持ちますよ? 決断するのは大変でしょうが、ゆっくり決めればいいんですよ。幸い……ジャイルズさんという方と出会いがあるみたいですし」
ジャイルズ自身、経験は豊富だろう。今でこそ薬草園を作り世間から離れているが、もともとは軍医だというのだから。
「そうですね……」
「気になってしまうんですよ、きみが。俺もきみと同じ年頃に家族を失い叔父の下に引き取られました」
コリンはアリオーシュに視線を上げた。
「守りたい……聖騎士を目指そうと考えたのはそれからですね」
「……」
「時間は有限ですが、急いで答えを出さなくてもいいでしょう。見て聞いてからでも」
コリンはうなずいて、布団にくるまった。
「バイクに乗ってみます?」
翌日、狼はコリンに尋ねる。この街道は安全なようだから、気分を変え、話すきっかけになればと誘ってみた。
「いえ、その悪いですし……」
コリンは視線を落とす。
「ん? 狼君、道中も危ないことはないんだろう? 運転うまいしこんな機会ないよ?」
帝がコリンを促す中、狼が大きくうなずく。
「すみません、じゃ、少しだけ」
コリンを後ろに乗せた狼は先に行った。離れ過ぎず、それでも距離がある場所で仲間を待つ。
「……猫かぶってると疲れた。年近いからタメでいいだろう?」
ニカッと笑う狼に、コリンはうなずく。
「人生、どう転ぶかなんてわからない」
狼は時々笑い声も出すが、母親に捨てられてから今日までいろいろやったこと、父親かもしれない人はろくでなしだが押しかけた彼を住まわせてくれること等を話した。
「この旅だって楽しめるものにする。結構移動するってことは、土地の食べ物もあるはずだ」
コリンは小さくうなずいた。
仲間が追いついたので、また移動する。
コリンの声はほとんど聞こえないが、距離は近くなったような手ごたえはあった。
●心と心
温かい食事、温かい雰囲気の宿。
マリアンナは順調に旅が進むことに安堵する。コリンは旅慣れしていないし子どもであるから、出来る限り宿に入りたかった。
環境の変化に乏しかった彼が今混乱にあってもおかしくない。笑顔で適度に接するのが一番だと考える。歪虚に今日明日の命と脅かされているわけでもないため時間はあるが、乗り越えるのはコリン自身。
「どうしたの?」
マリアンナはバルコニーにいるコリンに声を掛ける。コリンは泣くでもなく、ただ黙っている。
「頑張ってもどうしようもないときはどうしようもないんだから……いつも通りにしていればいいんだよ。なんとんかなる……なんとかする……かもしれないけど」
出身地の辺境であったことがマリアンナはよぎる。歪虚の侵攻により、部族は残っても多くが失われ何とか生きているという現実。
「……そうですね……」
「それ、コリンのいつも通り?」
「そうかもしれません」
小さく力なく笑うコリンの目は、バイオレットの吐き出した煙を追っている。
(自分だけが不幸で可哀想と思っている糞ガキ……という以前の問題か? 感情の停止)
依頼主ということになるコリンを観察しつつ、バイオレットは考える。無茶をする護衛対象ではないので楽ではあるが、物足りなさもある。
「おや? みなさんと一緒でしたか?」
バルコニーにレイが出て来た。
おやすみと言いながら、女性陣が引っ込む。
「すみません……もう、寝たほうがいいですね」
コリンはレイと部屋に入った。
「いえ、謝ることないですよ」
「すみません」
「……いえ……」
「あ、すみません」
「……」
帝はその様子を見つつ、過去の自分にコリンを重ねあわせていた。
コリンは表情は変わらないが、狼につられて活動的になってきている。
この旅で全てが変わるわけではないだろうが、少しでもきっかけになればと思う者が多い。
三泊目の宿、帝は言ってみる。
「『すみません』『ありがとう』は使うところが似ているけれど、随分違うんだよ」
コリンは突然の言葉に驚く。
「……違いますか?」
「ああ。僕、この世界に一人来たとき、何も持ってなかった。いろんな人に世話になって『すみません』ばかり。でも、『ありがとう』の方が良かったと」
コリンはうつむいた。
「こうやって縁があって旅路に着いたんだ。コリンが悩むなら心配する……ハンターの皆、世話焼きで優しいから」
「すみません」
すぐに口癖は直らない。帝は苦笑するが、どう行動するかはコリン次第だから介入はしない。
「コリン様、また何かあったんですか?」
入ってきたレイは謝っていたのを聞き、思わず二人を見る。コリンも苦しんでいるように見えるから心配だ。
「……今は心のまま行動してしまっていいんだと思いますよ?」
コリンはきょとんとする。
「悲しんでも、傷ついても、悩んでも……ということです」
「そうなんでしょうか?」
「そうですよ」
「……すみま……ありがとうございます」
レイがきょとんとした。破顔して「どういたしまして」とお礼を返した。
●戦いの先に
あと少しで町に着く。
狼の聞き込みではゴブリンが出る可能性がある地域だ。行き来する人たちもなるべくまとまって行動すると話しが上がっている。
おおむね数匹であるのだが、北部の不安定な状況を考えると楽観もできない。
コリンを真ん中にしてアリオーシュとレイで狙われにくいように挟んだ。
狼とマリアンアそしてバイオレットは距離を置いて周囲を警戒する。荷物に銃を仕舞っていた帝は取り出すと、用心を始める。
狼はバイクで先行し、魔導短伝話を通じて連絡する。離れ過ぎると危険であるため、適度に戻ってくる。バイクの音で追い払うかもしれないが、位置を知らせる事にもなる。
木と灌木のある道にやってきた。
銃を持ち、非常に警戒をする。ここを過ぎると草原が続くため、林は最後の襲撃ポイントと言えた。
中央に進んだ帝が引き金を絞った。銃声が響く。
相手に飛び道具があった場合、コリンを馬に乗せて走り去るのは危険だ。踏みとどまり、様子を見る。
アリオーシュはコリンの耳をふさぐ。銃声は慣れていない者に辛いだろうと思ったからだ。コリンは抵抗せずじっとしている。
遮蔽物が多いため敵は避けた。獣が鳴くような、言語のようなものが響き、下草を踏みしめ近寄る足音が響く。
「全部で4か?」
バイオレットは眼帯を外し、煙管を仕舞い銃を構える。接敵する前に片づけるのが理想。
銃を持つ者が隠れて近づくゴブリンを撃つ。
「少しずつ進みましょう」
アリオーシュはコリンを導き、周囲に目を走らせる。
マリアンナと狼は刃を構えて待機する。
「来たな」
銃弾をかいくぐったゴブリンに狼は刀を振るう。
「近付けさせない」
マリアンナも舞うように振るう。戦いは苦手でも、やるべきことは心得る。
まだいる可能性もあるので、コリンを連れたアリオーシュとレイが急いだ。
状況を確認しつつ、狼、マリアンナそして帝が続く。
投石があるため、銃弾を返す。
隠れていた残り4体は投石後、逃げるか否か躊躇していた。その間に、コリンの安全を確保したハンターに倒された。
バイオレットはゴブリンと言えども徹底的に処断した。切り刻み、燃やす。
そこまでとも思うハンターもいるが、死体は雑魔になる可能性があるなら、これが一番確実な手段。
コリンはぼんやりと見ている。見せないと言う選択肢もあるが、本人は動けるため誰も何も言わなかった。
ほろり……涙が頬を伝った。
「え?」
涙は止まらなかった。コリンの足が震えているのに誰もが気付く。戦いをきちんと見ていたコリンに、恐怖が来たのだろうか。
もうもうと煙が上がる中、死の匂いが漂う。
「離れようか?」
帝に促されるが、コリンはとどまる。
「父が……見た戦場はもっとひどいんですよね」
マリアンナがうなずいた。前の戦いならば、巨人や十三魔が絡み、血で血を洗う戦いだった。辺境の部族では滅ぼされたところもあった。
「あなたのお父様は、あなたのために戦い、あなたのために道を残したのです。コリン様の父君は、立派な方だと思います」
静かなレイの言葉にコリンは目を見開く。
「そんなの分かってる! 分かってるよっ! 父さんを止めるべきだったって思ってる。必要だから、必要とされているから行くっていうのも分かってる! もっと多くの人が死んだのも分かってる!」
コリンの感情が爆発し、泣き、叫んだ。
「……感傷に後悔……そんなのばかりか? 自分だけが不幸で可哀想と思っている、糞ガキは嫌いだよ、私は」
バイオレットは煙を吐き出すとともに口にする。
コリンは怒りがうかがえる目をバイオレットに向けた。しかし、特に何も言わない。両目からは涙があふれこぼれるのみ。
涙がすべてを流れ落とすのか、コリンの目は徐々に無に戻っていく。
「……すみません、八つ当たりみたいなことを言ってしまって」
コリンは落ち着いた声でレイに告げる。
「あなたの心の声が聞けて良かったです」
ニコリとレイは応えた。
「僕は不幸とかなんとかまだ実感はないです。嫌いでも構わないです」
コリンはまじめな顔でバイオレットに頭を下げた。目的地までまだある。
●薬草園の主
小さい町フォークベリーに着いた。
日が陰ってきており、走り回る子供たちが家路につき、商店が連なるところでは店じまいが一部行われている。
のんびりした空気が漂う田舎町であり、王都も多少意識したのか建物は都会的な色合いも持っている。不思議な融合が見て取れた。
目的地には住所を頼りにたどり着く。
呼び鈴を押そうとしたとき、中からエクラ教の司祭が現れた。
「おや?」
コリンとハンターを見て、表情を和らげた。
「ようこそ、みなさん。コリン君ですね。この町の教会の司祭のマークと言います」
ハンターには彼が歴戦の戦士だったと感じ取る。体格の良さ、手や顔の見えにくい所に小さな古傷が見えるからかもしれない。
「ジャイルズさん、コリン君来ましたよ。では、私はこの辺で」
ジャイルズに声をかけた後、立ち去った。
それなりに鍛えられた体型の長身の男が出てくる。眉は中心により、まさに渋面に近い表情の男だ。
「貴様がジャイルズ・バルネだな? これで依頼は完遂される」
バイオレットは淡々と告げ、コリンの背を軽く押した。
緊張するコリンを前に、ジャイルズも緊張している様子が漂っている。
「無事に来られて何よりだ。君たちもご苦労だった」
ジャイルズのコリンを見る目は優しい。突然孫でもできたかのような光が一瞬浮かんだ。
「なんとかなるよ。コリンはまだこれからなんだよ!」
マリアンナは笑顔になる。
「これやるよ。この旅の思い出としてな。この先、幸運に恵まれるように」
狼がコリンに『幸運の実』を握らせる。
「わ、悪いよ……そんな物もらっちゃ」
コリンは狼に返すが、また戻す。
「コリン様、それは受け取っておくものですよ。そして、増やして返して差し上げればいいのです」
レイの解決策に少年二人はうなずいた。幸福が来てそれを種として撒けば、幸福は広がっていくだろう。
「たくさん学ぶことがあるでしょう。エクラのお導きがありますように」
アリオーシュは微笑む、コリンは同じように仕草を返してきたから。
「困ったときは呼んでくれよ。いつでも駆けつける、約束だ」
帝にコリンは「ありがとうございます」と小さな笑みを浮かべてお辞儀をした。
立ち去る一行を、コリンはジャイルズと共に見えなくなるまで見送った。その表情は、無ではなく希望が湧きあがってきていた。
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相談卓 マリアンナ・バウアール(ka4007) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/07/08 00:20:31 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/07 04:46:42 |