村おこしは好きですか

マスター:鳴海惣流

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/07/09 12:00
完成日
2015/07/11 10:09

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●嘆く村長

 村長のパウロが表情を曇らせる。
 一体、いつから赤子の声を聞いていないのか。
 子供自体はいるものの、数はどんどん減っている。
 理由は様々だ。
 田舎の村は都会の街に比べて魅力がない。仕事が少ないというのもあるだろう。
 いずれにせよ、このままではマズい。
 村の人数が減っていき、住民の高齢化がより進めば、孤独死まっしぐらな境遇の村人が増える。
 解決するには、単純に人を増やせばいい。
 簡単ではないからこそ、悩んでいるわけだが。

「若者の数を増やすのが目的じゃが、ただ移住してもらえばいいわけじゃない。お金を稼ぐための仕事も必要じゃ」

 考えるほどに、一筋縄ではいきそうにないのがわかる。
 それでも、なんとかしなければ村の未来は危うい。

「そうじゃ! 村おこしをすればよいではないか!」

 村長のパウロは閃いた。
 仕事の件もあるが、まずは村に興味を覚えてもらうのが先だ。
 名案かと思ったが、数少ない村の若い衆は畑仕事などで忙しい。

「ふうむ。人手をどうしたものか。そうじゃ! こんな時のために、ハンターズ・ソサエティがあるではないか」

 依頼を出すのを決めたはいいが。村おこしをしてくださいでは大雑把すぎる。

「村おこしか……むむむっ! さらに閃いたぞ! 料理で村おこしをすればよいのじゃ!」

 料理を出すにも人手はいる。上手く事が運んでいけば、店だって構えられるかもしれない。
 そうなれば当然、働き口も増える。少なくとも、仕事を求めて都会へ行く若者は引き止められる。

「人が集まってくれば、新たな商売のチャンスを求めて、外から人がやってくる確率も増える。我ながら名案じゃな」

 きっかけはハンターに作ってもらうにしても、以降は村の人間で名物にしていかなければならない。
 そういう点も含めて、村おこしのメインは後々、村の名物にもなってくれそうな料理に決定。

「すべての世代に楽しんでもらえるのはもちろん、子供を増やしたいわけじゃなから、小さい子にも興味を持ってもらえる料理がええのぉ」

 若い夫婦を呼び込んで子供を産んでもらうのも喜ばしいが、すでに子のいる家族に移住してもらってもいい。

「そうじゃ。タイミングよく、近いうちに村の祭りがある。そこで、完成した料理を販売すればよいのじゃ。村の財政が潤えば、言葉は悪いが、手厚い援助を餌に移住者を募れるやもしれん」

 村の内外から、子連れの家族が集まるお祭りはまさにうってつけ。
 というより、人口が少なくなる一方の村に外から人がやってくるのは、そういう機会の他にない。
 とても悲しいが、それが村の現実だった。

「自分の村の未来を他人に頼るのは心苦しいが、背に腹はかえられぬ」

 世界を飛び回るハンターならば、田舎村から出た経験のないパウロたちが想像もつかない料理を作ってくれるはずだ。
 全部が全部は無理なので仕方ないが、料理の軸となる材料は村で収穫できるものを使いたい。

「この村じゃと、一番最初にくるのは小麦じゃな。次は鶏か。卵や鶏肉なんかも使えるじゃろう。それなりに移動距離はあるが、海にも行ける。魚なども候補になるかもしれんな」

 言ったあとで、パウロは少しばかり肩を落とす。

「ワシはマダコが好きなんじゃが、若い衆には外見を気味悪がって敬遠する者が多い。なんとか食べてほしいものじゃ。そうすれば、美味しさがわかるはずじゃからな」

 海へ出かけても船がないので、量をする場合は浅瀬でモリ突きをするしかない。豊富な種類の魚を獲得するのは無理だ。釣りでよくかかるのは、キスだろうか。
 マダコはそれなりに獲れるのだが、パウロが嘆いた理由から食する人間は少ない。獲ろうとしないか、獲れても海へ返す者が大半だ。
 船を作って本格的に漁をするには費用がかかり、人手もいる。村の人間が、畑仕事を優先する理由だった。

「料理は美味しいにこしたことはないが、最大の目的は村の名前を知ってもらうことじゃ。村おこしをしたいのじゃからな。食べられるなら、インパクトのある料理でもいいかもしれんのぉ」

 ひとり呟いたパウロだったが、言い終えたあとで首を小さく左右に振った。

「じゃが、ゲテモノ料理は勘弁じゃな。忌み嫌われる村には、なりたくないからのぉ」

 ひとり言を口にしながらメモを取っていたのもあり、依頼内容は大体固まった。
 村おこしのメインとなる料理の考案、調理。その後の実演販売まで付き合ってもらおう。
 依頼するハンターの方々には前日くらいに村へ入ってもらい、料理の考案と調理をお願いする。試作品を食べ、村長のパウロらがメニューを決定する。
 本番は翌日だ。販売すると決めた料理を調理し、交渉事なども多く経験してそうなハンターに販売をしてもらう。
 客人として村を訪れた人々が喜んでくれれば、戻った先で宣伝もしてくれるはずだ。
 なんとか、想定どおりにいってくれればよいのじゃが。
 パウロは祈るような気持ちで、依頼を出しに行く。

リプレイ本文


●何を作ろうかな

 村長のパウロだけでなく、結構な数の村人が到着したハンターたちを出迎えてくれた。

「皆様。よく来てくださいました」

 ひとりひとりの顔を見ながら、村長のパウロが両手で握手をする。
 少なくない期待を全員が感じる中、笹原 雄成(ka4797)が任せてくれとばかりに胸を張った。

「目新しい料理とかならミスターゆとり現代人の俺に任せとけよ」
「おお、これは頼もしい」

 パウロが頬を緩める。他の村人も、これでひと安心だとばかりに笑顔を見せる。

「あれだけ自信満々とは、さすがハンター。いや、ミスターゆとりでしたな」
「うむ。皆の者、ミスターゆとりを歓迎しようではないか!」

 パウロが声を張り上げると同時に、ゆとりの大合唱が始まる。
 最初は面白がっていた雄成だが、段々と表情を曇らせる。

「あっ……ごめん。ゆとりって連呼しないで、ヘコむ……」

 しょぼんとした感じで肩を落とした雄成に、村長のパウロたちが慌てて頭を下げる。

「こ、これは失礼しました。で、では早速、依頼の方をお願いしたいのじゃが……」
「村おこしをするために、お祭りで販売する料理を作ればよろしいのでしたね」

 ミネット・ベアール(ka3282)の言葉に、パウロが頷く。
 改めて依頼の内容を説明されたあと、ヘコみから回復した雄成が顎に右手を軽く当てながら、頭の中にあった料理名を口にする。

「タコの見た目をごまかして、小麦粉と卵使ってっつったら、やっぱたこ焼きが思いつくよね」

 言ったあとで、不思議そうな顔をするパウロにたこ焼きの概要を説明する。

「小麦粉と水とかだし汁、あと卵で生地作って、そこにタコの切り身とか野菜とか入れて焼く料理っすよ」
「なっついなあ、タコヤキ……よう作ってくれとったわ。ふふ、今日はいい仕事ができそうや……!」

 これまで黙っていたエルフの北条・C・レラージュ(ka4697)が、カッと見開いた目を輝かせる。

「村長、アンタ……いいセンスしてるやん?」

 独特な関西弁風の口調で言ったあと、にひっと楽しそうに笑う。

「タコと言ったらタコヤキ! 西方人はタコ苦手な人もいるみたいだけど、見えへんかったら大丈夫やしね。うん。ただ、真ダコと小麦粉と卵が在ればタコヤキができ……できひんような気がする……」

 うーんと悩むレラージュの側で、近寄り難い雰囲気の美少女が、微かに表情を和らげる。高瀬 未悠(ka3199)だ。

「たこ焼きの様なお好み焼きの様な料理を作るのね。昔に幼馴染の家で何度か食べさせてもらった事を思い出すわ」

 頭の中に蘇った、懐かしい思い出に浸る。
 漂う穏やかな雰囲気の中、華彩 理子(ka5123)が感心するように頷いた。

「リアルブルーではそんな品が……すばらしい案と思います。……それでは、蔬菜は私が。まず……甘藍はございますか?」
「甘藍……キャベツのことですな。それならば、村の食糧庫にありますぞ。遠慮せずに使ってください」
「ありがとうございます。薬味は他に求めなければ……私、探して参ります」

 理子が言うと、村長より先に雄成が反応した。

「え、マジで? 理子さん野草とか使えるの? ていうかそういうの分かるんだ?」
「なけなしの取り柄です。薬師でございますゆえ」
「あ、薬師さん。へー。奇遇だね、俺薬学部だったんだわ。ポンコツだったけどね。ってことは薬草とかも見分けついたり? ……あ、はい、仕事します」

 村長のパウロの視線が気になったのか、雄成は途中で自ら会話を終了させた。
 細部までは決まってないが、料理のメインはたこ焼きに決定。
 自身が希望するマダコも食材に組み込まれるとだけあって、パウロはとても嬉しそうだ。自ら、マダコのいる海へ案内するという。
 お言葉に甘えることにした一行は、村長を先頭にして村を出る。

●海への道中

 田舎道を歩いてる途中で、理子が足を止める。
 薬師としての知識を活かし、料理だけでなく、後々必要になりそうなものまで採取する。

「薬草の類は特にこれからの為、いくらかは苗としてお使いくださいまし。栽培は易しいのでご安心なさいませ。どなたかお育ていただける方は……」

 易しいと言われても、薬草の栽培の経験がある村の人間はいない。村長に同行中の数名の村人たちは、顔を見合わせるばかりで、誰も名乗り出なかった。
 すると理子は、村にとって利益になるかもしれないと丁寧に説明した。
 人間とは現金なものである。お金になる可能性を示唆された途端に、戸惑っていたはずの村人たちが我先にと手を上げた。
 その様子を見ていたパウロは申し訳なさそうにしながらも、理子へ丁寧に頭を下げた。

「ありがとうございます。料理とは関係ありませんが、薬草の栽培も村の特産にできればと思います。村の見通しが、またひとつ明るくなったようですじゃ」

 パウロが朗らかに笑うのを見て、理子をはじめとしたハンターの面々もにこやかに微笑んだ。

●海での漁


 海へ到着すると、ミネットが村人でもマダコを簡単に獲れる方法を考える。

「壊れた農具の柄のような、持てる長めの木の棒はありませんか?」
「え? ああ、そういうのなら、探せば結構あるんじゃないかな。先端が壊れた釣竿なんかも使えるかもしれないし」

 村長に同行していた五十代の村人が、そう言ってミネットに一本の木の棒を渡してくれた。簡易的に木で作った釣竿で、先端から折れてしまったもののようだ。
 漁業などがあまり盛んでないだけあって、従来の竹ではなく木で作られた竿もあるみたいだった。
 強度的にあまり優れていないせいもあり、小さな魚ならまだしも、大物がかかればあっさり壊れてしまうらしい。
 とにもかくにも手に入った木の棒の先端に、ミネットはダガーを取り付けて槍にした。

「てぇいっ! ……あ……すっごく抜けがいいですね。仕留めただけになってしまいました」

 せっかく仕留めたマダコが、ゆらゆらと波に揺られて流されていく。これでは海の魚たちの餌になって終わりだ。
 槍などの鋭利すぎるものでは、上手に漁が行えない可能性が高い。

「どうすれば……そうです! 矢のような反しのあるものなら、抜けにくいはずです」

 今度はダガーではなく、木の棒に矢をくくりつける。完成したのを手に持ち、早速海の中のマダコに挑む。
 海面上から岩場の隙間を良く狙い、ミネットが一撃を放つ!
 見事にマダコを仕留めたミネットを見てるうちに血が騒ぎだしたのか、未悠も参戦を開始する。

「……蠢く八本の足……見つけたわ。絶対に逃がさないわよ……!」

 迷いなく、豪快にタコを刀で突き刺した。
 仕留めたマダコを皆に披露しようとした未悠だったが、獲物を間近で見るなり大きめの声を上げる。

「な、何、このおぞましい色は!? 蛸は鮮やかな赤色の筈なのに……もしかしてこれは虚歪蛸……!? ……元々この色で、火が通ると赤くなるの? 無知で恥ずかしいけど、ゲテモノを獲った訳じゃなくて安心したわ」

 安堵の息をついた未悠が、次々と刀を使ってマダコを獲っていく。
 ミネットも同時に漁を行っているので、料理に使う分のマダコはあっという間に入手できた。
 いつでも帰村できる状態にはなったが、マダコの習性を観察しながら漁をしていたミネットがまだ海から離れたがらない。

「無事にマダコは獲れましたけど、これもやっぱり狩猟の知識や経験が要りますしね……誰でもできるような方法じゃないかもですね」

 大切なのは、村人が簡単にできる漁だ。加えて仕事にできそうなら、職を求めて生まれ故郷を出るしかない若者を引き止められる。

「今回の分はこれ以上獲らなくてもいいですけど、名物にするなら安定供給の方法は探さないと……」

 呟いたミネットの視界に、一匹のマダコが映る。
 獲るつもりはなかったのだが、危険を察知したのか、泳いできたマダコが素早く姿を隠した。

「岩と岩の隙間なんかの狭いところに隠れた? ……なんか壷みたいなのはないですか? 使ってないやつで!」
「あ、ああ……ついでに魚も獲れたら持って帰ろうと思って、小さな壺なら持ってきたけど……」

 同行中の村の男性が、丁度持参していた壺をミネットへ手渡した。

「ありがとうございます。私の予想が確かであれば、こうしてタコを追い詰めていくと……」

 タコの近くにロープを使って壺を設置したミネットが、タコを棒でつつく。
 攻撃されると思ったタコは身を隠すため、躊躇いなく設置していた壺の中へ自ら飛び込んだ。
 仕掛けを成功させたミネットは、編み出した漁の方法を村人に教える。
 無傷でマダコを捕まえられるので、食材としての価値も高まる。

「いやはや、このような漁の方法があるとは。感服しましたですじゃ! あとは村に戻って、料理をするだけですな!」

 興奮を抑えきれないパウロは、本当に老齢かと思えるほど機敏に動いて、帰り支度を始めた。

●調理開始

 村人へ調理手順を説明する意味も含めて、村の真ん中に調理器具を用意してたこ焼きを作ることになった。
 集まった村人がざわざわする中、理子が未悠に話しかける。

「たこ焼きなるものの支度、私にもぜひ。未悠ちゃん、よかったら作り方を教えて?」

 自信満々な未悠が調理の一番手に名乗りを上げると、村人たちから「おおっ」と歓声が上がった。
 ――グシャ。
 場に響いたのは、卵が握り潰された音。
 周囲の目が点になってるのを尻目に、今度は小麦粉と水を目分量で入れる。

「いけない。私としたことが、タコの準備を忘れていたわ」

 言うが早いか、刀で豪快にマダコを叩き斬る。
 周囲が騒がしくなってきたのを合図に、金縛りが解けたかのように理子が動いた。
 背後から抱きつくようにして未悠を制止する。

「あっ……その……ええと、やっぱり売る方を手伝ってあげて?」
「売る方が人手が足りない……? 了解。では、明日の打ち合わせを村長さんたちとしてくるわ」

 未悠が離れた隙に、たこ焼きの知識が豊富なレラージュと雄成が調理場に立った。
 たこ焼きのタネを、フライパンで平型に焼いていく。

「味付けは、んー、たこ焼きとかお好み焼きのソース的な……ある?」

 尋ねたところで、リアルブルーの知識のないパウロたちが首を縦に振るはずもなかった。

「醤油とか、ダシが無いしアレンジが要りそうやね」
「お困りなのはソース? ……かけ汁でございますね。考えてみましょう」

 雄成とレラージュの会話を聞いていた理子がパウロにお願いして、村の食糧庫を見せてもらう。
 蕃茄――トマトをベースに玉葱、人参、林檎らをすり潰して煮込み、酢と蜂蜜を混ぜる。

「リアルブルーのとは…違っていても、よく合いましょう? 手間こそございますが、真似のできぬ特産品になると存じます」
「なるほどね。俺は地元で食ったことあるし、北条さんは関西人の知り合いがいるって言ってたし、食ったことあんのかな。味知ってたら一緒に味見とかしよーぜ」
「ええね! オリーブオイルと柑橘系、トマトソースやクリームソースあたりで応用したのも作ろか。味つけを選べるのも、たこ焼きの醍醐味やろ」

 平らなオムレツみたいな形のたこ焼きを、ひと口サイズにわける。
 あとはお好みのソースにつけて食べるだけだ。
 待ってましたで味見をするのは、ミネットだ。

「いやぁ、やっぱり運動の後の食事は最高ですね!」

 試食したパウロや村人たちも、上手いと口を揃える。
 無事に完成したかに思えたが、レラージュだけは満足していなかった。

「やっぱり、丸いのやないと嫌や……!」

 パンを作るように酵母を混ぜて、生地を練る。
 中にタコを入れた部分を、丸いひと口サイズにして油多めのフライパンで揚げる。
 香ばしいにおいに、うっとりする人間が続出する。

「じゃーん! タコヤキならぬタコ揚げや!」

 見た目的にはこっちが正義やねと、満足げにレラージュがうんうん頷く。

「これは本当に素晴らしいですじゃ! このたこ焼きで、明日の祭りも成功させますぞ!」

●祭り当日

 外見が気持ち悪い。
 そう言ってマダコを嫌っていた村人も、たこ焼きを食するなり感想を一変させた。
 祭りの場でも大盛況。調理してるところを見れるのもあって、人がどんどん集まってくる。
 噂が広まるのは早いもので、朝にたこ焼きを目にした人により次々と情報が伝達されていく。
 昼過ぎには、村中が人で溢れることになった。
 中心にあるのは、たこ焼きを販売中の屋台だ。
 調理を担当しているのは、雄成とレラージュだった。他の三人は売り子に励んでいる。
 足りなくなった食材の調達は村人が行っている。

「いらっしゃい。美味しいタコ料理はいかが?」

 ミネットや理子は順調に売り上げを伸ばしてるのに、未悠だけはなかなか上手くいかない。
 ……もしかして、怖がられているの? 笑顔じゃないから……かしら。
 依頼を達成するためにも、村のためにも、ハンターとして未悠は笑顔を作る。

「わああんっ!」

 接客した六歳程度の男児が、目の前で号泣する。
 ちょ、ちょっと!? 笑ったのに泣かれるなんて、どういうことなの!? 子供をあやすのには確か……。
 無理に笑った顔が怖かったなんて理由を知る由もない未悠は、テンパリながらも全力で変顔を披露する。

「ぷっ、あはは!」

 なんとか笑ってくれた子供にたこ焼きを売り、未悠は内心で安堵のため息をついた。

「売り子も大変な職業ね。それにしても……美味しそうだわ……」

 くう。なんとも可愛らしい音が、周囲に響いた。

「……生理現象よ」

 迂闊にもお腹を鳴らしてしまった未悠が、少しだけ恥ずかしそうに言った。

●祭り終盤

 祭りが佳境に近づいてくると、雄成とレラージュはそれぞれ子供たちにもたこ焼きを作らせ始める。

「チビすけー、火傷すんなよー」
「ほな、好きなように具入れてみー。味付けも、好きなようにしたらええ。色々と試行錯誤して、我が家の味を作るまでがタコヤキや……!」

 子供の人気を得たのもあり、売り上げはうなぎのぼり。たくさん用意した材料が、すべてなくなるほどだった。
 大盛況のうちに祭りが終わる。
 夜になると、村長のパウロは満面の笑みでハンターたちを労う。

「すべて皆様のおかげですじゃ。たこ焼きを名物にして売り上げを得ることで、移住者に援助もできます。実際に今日、田舎でのびのび子育てをしたいと移住を希望してくれた家族もおりました」

 パウロの上機嫌さを見てるだけで、依頼は大成功に終わったというのがわかる。
 今回のハンターたちの働きにより、遠からず村には活気が戻ってくるだろう。
 朗らかに笑うパウロからは、悲観的な様子は微塵も見受けられなくなっていた。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • シグルドと共に
    未悠(ka3199
    人間(蒼)|21才|女性|霊闘士
  • ♯冷静とは
    ミネット・ベアール(ka3282
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士

  • 北条・C・レラージュ(ka4697
    エルフ|23才|女性|猟撃士

  • 笹原 雄成(ka4797
    人間(蒼)|20才|男性|機導師

  • 華彩 理子(ka5123
    人間(紅)|25才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 【相談卓】レッツ村おこし
笹原 雄成(ka4797
人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/07/09 10:56:29
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/09 10:35:55

 
 
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