鳥かごの中の小鳥

マスター:深夜真世

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/07/13 19:00
完成日
2015/07/20 17:01

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●モータルのその後
 ここは同盟領。
 極彩色の街「ヴァリオス」の一角。
 同盟領の主都であり、独立前からの歴史がある街並みは堂々としていた。
「なんや、モータル。口閉ざして。……さては都会すぎて度肝でも抜かれたか?」
 闇の密売人、ベンドはくっくっく、とひそみ笑いして乗合馬車の中、横を見る。
 視線の先には、護衛の少年、モータルが座っている。先ほどまでは銀髪の頭をきょろきょろさせて高い建物の立ち並ぶ街を見回していたが、今はすっかりしょげていた。
「……ここの奴ら、苦労してないんだろうな」
 貧しい農村の、しかもその外れの小さな集落出身の彼には、ここは眩しすぎた。道行く人の着ている服のなんときらびやかなことか。その顔の何と涼しげなことか。
「アホ言うな。ここは、こ汚い戦場や。油断したらあかんで」
 低い声で抜け目なさそうに言ったベンドの様子にはっとするモータル。今自分が裏稼業にいることを改めて思い知る。
「誰にも足取りを分からないようにして……こんなところに?」
 モータル、自分が雇われているベンド商会――その代表たるこの男の動きについて聞いてみた。
「リアルブルーの言葉に、『丑の刻参りは誰にも見つからずに』というのがある。バレるとまずいものも……おっと、降りるで」
 ベンドが降りたのは、とある宝石商の店だった。

●広大な街で
「お待たせや」
 喫茶店で待っていたモータルのもとに、商談を終えたベンドが戻って来た。早速店員に紅茶を頼む。
「一体、今まで何を運んでたんですか? あんな小さな片田舎の町に預けていたものが、そんな高価な……」
 聞いたモータルをベンドが口元に人差し指を立てて黙らせる。
 そして身を乗り出すと、ちょいと指を曲げた。モータル、顔を近付ける。
「あの赤い宝石は、呪いの宝石でな」
 ひひひ、と陰湿に笑い、言う。
「非常に美しく大きいが、持ち主やその血筋や周りから必ず三人、死人が出る」
「ホントですか?」
 さすがに眉を顰めるモータル。 
 聞けば歴史は古く、血のように赤い宝石の来歴は、正に血の歴史だった。
「奪い合いや、その奪い合いをけん制する意味もあるんやろ。直近では……ホレ、これを受け取りに行った田舎村で一人死んどる」
「な、何ですって?」
 がた、と思わず立ったモータルをなだめるベンド。
「今回、わしらがこの宝石をここに運んだのは、予定通りこれを肌身離さずつけておいた女性が死んだからや。……おっと、気ぃ悪ぅすな。不治の病にかかっとった女児に、せめてきれいなモン持たせて、喜ばしたいう理由もあるんや」
 つまり、厄落とし。購入予定者がベンドに「確実な死を待つ三人に預けたあと、持って来るように」という注文を付けていたのだ。闇の仕事である。
「宝石の呪いで死んだ例はいずれも一瞬の苦しみが多いんや。……せめて、病でなごぅ苦しまんように、ちゅう思いもあるんやけどな」
 どうやらしばらく患った末、死んだらしい。
「……で、これで手に入れた持ち主は、死ぬことはないんですね?」
「さあ。それはその富豪の人生を賭けた博打やな」
「え?」
 どうやらその富豪、腹心の部下の中に裏切り者がいるらしい。商売敵と通じている節があるのだという。
「宝石の呪いで死ぬ可能性があれば自滅待ちで動きも鈍るわ。何より、周囲から死人が出ると聞けば真っ先に離れるやろ? 何せ、暗殺されても呪いで済まされる可能性もあんねや」
 ひひひ、と笑うベンド。もちろん富豪も暗殺されないよう細心の注意を払うらしいがの、とも。
「で、新たな仕事も入った。その富豪の娘がこの件もあって家出してな。……どうやら前から家出したかったらしい」
「前から? 理由は?」
「政略結婚」
「ああ……」
「そんで、すぐ探し出してくれ、と。ハンターオフィスで覚醒者となった後、同行していた執事係の青年を振り切って逃げたらしい」
 で、これがその時脱げた靴、と白い布をリボンにして可愛らしく飾り付けた黒い靴の片方を差し出す。
「名前は、『アムアリス・マッケレル』。手掛かりは『帽子が欲しい』としきりに言っていたこと。急きょ雇ったハンターがもうすぐ来る。身柄を確保し、しばらく預かるよう言われとる。モータルも一緒に探すんや」
 こうしてモータル、紫の瞳で紫色の髪を左サイドアップにしたツンツン娘を探すことになる。
 ちなみに、「しばらく預かるよう言われている」のは、やはり宝石の呪いが完全に厄払いされてなかった場合を考え、最愛の娘だけは巻き込むまいとベンドに身柄を預けることになっているからである。

 というわけで、家出した娘を探す人、求ム。

リプレイ本文


「やっほー、モータル君ひっさしぶりー♪」
「ぶっ! ……ベガさん、相変わらず元気そうで」
 シェリアク=ベガ(ka4647)がモータルの背中をばしばしと叩く。モータルが振り向き再会に笑顔を見せる。背後のテーブルには、すでにほぼ全員がそろっていた。
 その中で執事係の青年、バモスが家出したアムアリスの特徴を伝えているところだった。
「なるほど。探し人の外見特徴はよくわかったよ」
 皆が集まった喫茶店で、瀬崎 琴音(ka2560)がこくりと頷く。さらりと長い前髪が流れるが瞳は隠れたままだ。
「お嬢様って話だし、変な事に巻き込まれたりしてなきゃいいけど」
 天竜寺 詩(ka0396)は心配そう。
「ええと、その……少し冷たい対応をされるかもしれませんが……」
 バモス、少し恥じ入って大人な対応をお願いする。
 その横から牧 渉(ka0033)が尋ねる。
「お嬢さんが興味を持ちそうなものですとか…些細でも思い当たるところがありましたら、お聞かせいただければと」
「帽子を欲しがってましたが……知恵のある人です。靴の脱げたまま行ってしまうような人ではないのですが」
「ついでにひとつ。これは個人的な質問なんですけど…お嬢さんの行動については、どうお考えで?」
 渉、重ねて聞いてみた。
「悪くはないと思います。自らの力で羽ばたく力のある鳥であるなら、大空を舞うべきです……ただ、当てはないはずなんです……」
 脱げた片方の靴を取り出して見詰めるバモス。これを聞いてアルティミシア(ka5289)が赤い瞳を見開いて身を乗り出した。
「鳥…」
 アルティミシア、子供のようにうっとり。
「家出……私なんかと違って……でも……」
 その横ではアリシア・トリーズン(ka4713)が鬱々としながらつぶやいている。
「すいません」
 ここで渉、店員を呼んだ。男性給仕がやって来る。
「ヴァリオスで帽子と言えばここ、といった店や通りがありますかね」
 へえっ、とベンドが感心してその様子を眺める。
「今帽子が流行ってるとかあるのかな? それも上流階級で」
 ベガは近くにいる女性客に聞いていた。
 一方で琴音はバモスに質問。
「……あ、そうそう。アムアリスさんは、帽子を購入する為のお金は所持しているかな?」
「はい。外出用の小物入れにわたくしがそれなりの金額を忍ばせていますし、お嬢様もそれをご存知です」
「そうか。いや、探す手がかりになるかな、と思ってね。ありがとう」
 琴音、腰を上げた。
「帽子屋を当たるんです?」
 モータル、聞いてみる。
「僕は先に靴屋を」
「じゃ、地図も手に入ったし……私はアルティミシアさんと一緒に捜索するよ」
 琴音の行き先を聞いて詩も立つ。
「ええと、詩さんはどこに……」
「モータル君も一緒に行く?」
 こうしてモータル、詩と同行することになる。
「あなたはどう思われますか?」
「一先ずは、靴屋さんを見て見るべきかと思います……ほかにも気になる場所が」
 バモスに聞かれたアリシアは、琴音を見る。行く店が被らないよう気にしているのだ。
「短伝話、ひとつ持ってて貰えます? 執事係さん」
 渉、魔導短伝話をバモスに渡した。バモス、手にして皆を見ると……。
「じゃ、待ち合わせはここで」
 出発前に振り返った詩が短伝話を手にウインク。ベガもその後ろで元気よく短伝話掲げ、琴音が顎を引いてそっと短伝話を出して頷き、そしてアリシアも地味にこっそり短伝話を持つ手を見せていたり。
「じゃ、キミも、いこう」
 アルティミシア、モータルとともに詩についていく。
 ベンドはここで留守番だ。



 さて、詩たち。
「アムちゃん、保護されたりはしてないみたい」
 近くの番所から出てきた詩が二人に告げる。特徴を告げて何かあれば連絡してもらえるようにして、何かあった場合の情報の出どころを押さえた。巧緻である。
「それじゃ、こっち」
 続いてアルティミシアが道案内。
「どこに行くんです?」
「アムちゃんの、家から近い、帽子屋さん」
 モータルに答えるアルティミシア。詩が番所に入っている間に聞き込んでいたらしい。
 その店頭で。
「帽子屋さん、ゴスロリドレスの、女の子が、来ません、でした、か?」
 赤い瞳で真剣に、小さな体で身振りを交えてゆっくり丁寧に店員に聞くアルティミシア。その様子に店員もにこにこと応対するが、どうやら来ていないらしい。
「すいませんね、お嬢さん」
「ありが、とう」
 ぺこ、とお辞儀して下がるアルティミシアだった。
「じゃ、次はここだね」
 今度は詩の心当たりの店に。
「ここは……」
 先の帽子屋と違い、フリルたっぷりのカーテンで飾られている様子に戸惑うモータル。
 それでも二人について入店した、その時!
「下着屋さん。……家出時の状況からそれほど手荷物持って無さそうだし私なら下着を買うかな。服はまだしも同じ下着を着続けるなんて耐えられない!」
 そう言って振り返った詩、じゃーん、と白くてフリル飾りのついた三角形の小さな布を掲げていた。
 モータル、ぎくっ、と後ずさり赤くなった!
「そ、その……ベガさんが心配だからそっちに行ってくる!」
「はい、短伝話」
 アルティミシアから伝話を受け取ると、ぴゅーっと逃げていくモータルだった。
「まぁ、恥ずかしいか」
「恥ずか、しいね」
 詩とアルティミシア、見つめ合ってくすくす笑って見送っていた。

 こちら、渉。
「……ええ。お転婆な娘さんに保護者が手を焼いているようでして、ちょっとお手伝いを」
 付近で一番名のある帽子屋の店員に聞き込んでいた。どうやらアムアリスは来てないようだ。
「もしいらっしゃった時にはそれとなく向こうの通りの喫茶店を勧めておいていただけないですか?」
「ああ、あそこなら人気ですね。常連のお客様も買い物の後に一休みするようですので自然にお勧めすることができます」
 渉。何ともスムーズなやり取りを見せる。これまでも捜索依頼をこなしているのは伊達ではない。
「あ、それと」
 去り際、もう一つ聞いてみた。
「お嬢様風の服に合うような服飾品を取り扱っている店は……このあたりで御存じありませんか?」
 ご覧のとおり縁がありませんから、という風に肩をすくめる渉。このユーモラスな仕草に店員は思わずくす、とほほ笑んだ。
「そうですね。小物というならあそこ……もしも一枚羽織るもの、ということでしたら……」
 とにかく、次の捜索場所は決まった。
 感謝して先を急ぐ渉。緩んだシャツの襟とネクタイをさらに緩めながら足を速める。

 さらに別の場所。
「さて、得た情報から行動を開始するの、名探偵ベガちゃんなのっ☆」
 おー、と拳を挙げるベガ。何やら路地裏にいるぞ?
「帽子が上流階級で流行ってるわけじゃないし、有名店は渉ちゃん、屋敷の近くは詩ちゃんとアルティミシアちゃんが当たってるから……」
 ぶつぶつ言いつつも「とりあえず、足で探すの、基本なのっ」と自らを鼓舞しつつうろつくベガ。
 きょろきょろと楽しそうな店などに目移りしていたが……。
「ねえ、このあたりで片足だけ靴を履いたお嬢様、見なかったかなっ?」
 石畳の路傍に座り込んで通行人を見ていた靴磨きの少年を発見し、聞いてみた。
「そんなのいないよ」
 さすがに彼の商売に関することなので間違いない情報だろう。
「じゃ、帽子職人さんとかが多い場所は? 知る人ぞ知るっ! みたいなのがいいかなっ」
「……」
 少年、ちゃっかりしている。教えない。
 ここでベガの短伝話が鳴った。モータルからだ。合流したがっている。
「モータル君、良かった。すぐ来てなのっ!」
 しばらくのち、モータルが到着すると……。
「はい、お客さんなのっ。それじゃベガちゃん、帽子職人の店で聞き込んでくるのっ!」
「え?」
 あわれ、モータル。ベガの聞き込んだ情報と引き換えにここで靴磨きの客となることに。



 一方、琴音。
 からころと石畳の道に下駄の音を慎ましく響かせながら、靴屋に入って行った。
「いらっしゃいませ」
「下駄を探しているのだけど、いいのはないかな?」
「下駄……ですか」
 店員、まじまじと琴音を見る。
 確かに、噂に聞く東方風の衣装「着物『青波』」を着ている。知ってはいるが、ここに下駄はない。
「すいませんが……」
「だったらこういうお嬢様風の衣装に合う靴は……いや、こんな服装のお嬢様は来店したかな?」
「いえ、それも……」
「そう。忙しいところ、手間をかけてしまったね。ありがとう」
 琴音、あっさり引いた。
「次は帽子屋だね」
 手早く次の目標を定め、散策。
 おっと、すぐ近くにあったぞ?
 早速入ってみる。
「着物に合う帽子を探しているのだけど、いいのあるかな?」
「はあ、着物……ですか」
 店員、まじまじと以下略。
 ちなみに、ここでも空振り。
 仕方なく琴音、次の靴屋や帽子屋を探す。
 余談であるがこの時、琴音は結構な店を回った。
 後日の話であるが、店の店員たちは「着物の人が来てねぇ」、「ああ、うちにも来たよ」、「下駄はさすがに置いてなくてさ」などと話題になったとか。

 アリシアも靴屋を探していた。
「やっぱり私…だめですね……」
 おっと。
 靴屋を出るなりどよーんと暗い表情だ。どうやらここには来てなかったらしい。
「琴音さんも…靴屋を探すはずでしたし……」
 アリシア、悶々と考えつつ空を見る。
 おっと。
 またすぐにうなだれた。
「……どうせ私なんかが探しても……」
 また鬱々としだして帰りかける。
 が、止まった。
「でも……家の人と…話し合って解決できないモノでしょうか…」
 また顔を上げた。
 今度は大丈夫。うなだれない。
「ハンターとしてやっていくとしたら……私自身も、武器は悩んだんですよね…」
 どうやらアムアリスに……というか、家出を決断した彼女に近しいものを感じるらしい。それが彼女が今頑張っている要因になっている。
 そんなこんなで、ふら……と目についた武器屋に入って行くのだった。
 そしてアリシア、まさかの事態におどおどすることになる。



 この時、詩とアルティミシアは街角のクレープ屋台にいた。
「このへんで、ゴスロリドレスの、女の子を、見ませんでしたか? もしかしたら、帽子を、かぶっているかも、しれません」
 あむあむと詩がクレープを食べている横で、アルティミシアが丁寧に店員に聞き込み中。
「あら、お客さんみたいな?」
 売り子、クレープを焼きつつ上機嫌。
「ボクも、可愛いお洋服、着てみたい、けど、ボク子供だから、きっと、似合いません」
「ん?」
 ここで詩の伝話に着信。発見の報だ。

 こちら、渉。
「さて、めぼしい店には聞き込みをしたけど……ん?」
 かなり広範囲の店に聞き込みと協力依頼を済ませ一息ついたところに、発見の伝話が鳴った。

「ベガさ~ん」
 モータルは発見の報を知って急いでベガの向かった帽子職人の工房へ。
「あ、モータル君。ねえねえ、似合う?」
 ベガ、大きな房飾りのある派手な帽子を被った姿のまま振り返った。どうやら職人と意気投合して話し込んでいたらしい。
「あの、発見したそうです」
 というわけで、急いで連絡のあった店に。

「ここだね」
 琴音も連絡を受け、早速、小さな武器&装備屋へとやって来ていた。
 店に入ると……。
「な、何よ。また来たの?」
 黒と白のゴスロリ衣装で、椅子に座って底厚ショートブーツの紐を結んでいた娘が眉を吊り上げていた。その周りにはアリシアや渉、詩にアルティミシア、そしてベガにモータルもいた。
 この娘が、アムアリス=マッケレルだ。
「遠出するなら……貧弱な靴よりもこういう靴の方がいいそう…」
 アリシア、ここにアムのいた理由を本人に代わって話すのだった。
 とにかく靴だけ購入して、喫茶店に。



「とにかく、このメッセージは役に立たなかったのね!」
 アムアリスことアム、早速ツンツンしている。手にしているは残した黒靴に結んであった白いリボン。広げると「お父様に私が家出したと報告して、町はずれの駅馬車の宿舎に来なさい。貴方も一緒に家出するわよ」とのメッセージが書いてあった。
「すいません」
 謝るバモス。が、ホッとしている。
「家出した理由は……」
 渉、含みのある視線をアムに。
「べ、別に駆け落ちとかじゃないんですからねっ。誰とも知らぬ男と勝手に結婚なんてさせられたくないわ!」
 これを聞いて詩、ニコリ。
「私の家もね、古い伝統ある家で厳しくて、自由に色々する事に憧れてたんだ。だからアムちゃんの気持ち少し解るな……だけどね、一年家を離れてみて、自由ってのは全ての事に自分で責任を持つって事なんだって……」
「あなたたちの説教は褒めたり釘を刺したり大変ね。……でもいいわ、ありがたく受け取っとく」
 アム、詩の言葉を遮った。横ではアリシアがハラハラしている。
 アリシア、武器屋で先にアムと話していた会話を思い出す。

「それなら、私も家出をしますね…はい…あれ? ダメですか? 嫌なら逃げてもいいじゃないですか…逃げるのも立派な選択ですですよ……」
「逃げるんじゃないわよ、何かを掴みにいくのよっ!」
 とにかく能動的な性格らしい。

「帰れる場所が、あるのは、素晴らしい、事だよ。どんな、家族でも。キミも、嫌いじゃ、ないんでしょ? 家も家族も……」
 今度はアルティミシアが寄り添うように話してみた。
「パパも……」
 アムの瞳に一瞬追憶の色が宿ったが、すぐに振り払った。
「パパは家出して出世したわ。そして貧しかった家族を迎え入れたの。……才能があるなら、それをしぼませてしまう方が罪だわ」
 だから、行く。
 そんな決心。横ではベンドがにやにやして「親も期待するはずやな」とかぼそり。
「後悔、しない?」
「この機会を逃したら後悔するわ」
 覚悟アリ。
 渉も詩もアリシアもアルティミシアも、そう感じた。
「じゃ、支度だね」
 琴音が「かんざし『乱れ椿』」を髪から外して言った。ぎらん、と先が光る。暗器だ。それなりの準備をしなさい、ということだ。
「買い物だね。じゃ、モータル君、あーそぼっ。スイーツ食べに行こう!」
 ベガがそう言って場を和らげる。ついでに生真面目なモータルに遊びのススメ。
「美味しい、クレープの店、あった」
「んじゃそこなのっ! アムちゃんもいくのっ!」
「おいしそう……」
「ちょ……変装が先よっ!」
「下着買って来たけど……」
「……ベンドさん、何か面白い話あります?」
「見えないところ着替えてどうするの! 貴女、着物の替えは?」
「……ない」
 アルティミシアが伝えてベガがモータルの腕を取って連れ出そうとし、アリシアもふらふらとついていきそうになったところアムが待ったしたのだけど詩が純白の何かを取り出し慌てて渉がそっぽ向いてベンドに話すのをしり目にアムは琴音の服装が変装にいいと思ったけどさすがに琴音も替えは持ってないようで。

 そんなこんなで、まずは買い物である。

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参加者一覧

  • 探し物屋
    牧 渉(ka0033
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 漆黒深紅の刃
    瀬崎 琴音(ka2560
    人間(蒼)|13才|女性|機導師
  • 魔導トラック野郎
    シェリアク=ベガ(ka4647
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 影のベーシスト
    アリシア・トリーズン(ka4713
    人間(蒼)|18才|女性|機導師

  • アルティミシア(ka5289
    人間(紅)|11才|女性|疾影士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/10 08:58:32
アイコン 相談卓だよ。
天竜寺 詩(ka0396
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/07/13 01:51:27