ゲスト
(ka0000)
愛の花
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/13 07:30
- 完成日
- 2015/07/15 22:59
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●結婚させてください!
「貴様のような軟弱者に、大事な娘はやれん!」
重低音のきいた怒声に、二十代半ばの青年スミスは追い出された。いわゆる門前払いだ。
家に入れるのさえ拒んだのは、五十代後半の男。痩せ形のスミスとは対照的に、工夫顔負けの屈強さを誇る。
農作業によって鍛えられた筋肉は、スミスにないものだった。
村のパン屋の店内で販売を担当しているスミスは、見た目と職種だけで恋人の父親ロドルに軟弱者扱いされてしまった。
結婚の許しを求めにきたスミスは、簡単に引き下がれない。
「お願いします! 本気なんです。娘さんを……アイラを僕にくださいっ!」
めげずに頼み込むも、やはり頷いてはもらえない。
すると、スミスと恋仲のアイラも、一緒になってロドルへ頭を下げた。
「軟弱者でも構わない。私はスミスを愛しているの。夫婦になってもいいでしょう?」
「……可愛いひとり娘の頼みだ。俺だって叶えてやりたい。だが! 大切に育ててきたからこそ、娘を守れる強い男のもとへ嫁に出したいのだ!」
折れてくれない父親を説き伏せられず、アイラは母親のリーシャをすがるような目で見た。
頼みの母親は、小さく首を左右に振るだけ。夫のロドルと、想いは同じみたいだった。
「二人とも、どうしてわかってくれないの! もういい! 許してもらえないのなら、村を出てでもスミスと一緒になります!」
アイラは叫んだ。本気だった。
親子の縁を切られたとしても、スミスと共に未来を歩みたかった。
「アイラ……気持ちは嬉しいけれど、それだけは駄目だ」
諭すようにスミスは言う。
「君を大切に想う気持ちは、僕もロドルさんも同じだ。だからこそ、僕たちの結婚を祝福してもらいたい」
「で、でも、このままじゃ……」
「大丈夫。要は、僕が軟弱者じゃないと証明できればいいんだ。村の北、高くそびえる山の頂上に咲くという花の話を知っているよね」
この村では、有名な話だ。
かつて、そこで出会った若い男女が恋に落ち、愛を誓い合うと桃色の花が咲き誇った。
嘘か本当かはわからないが、村に古くから伝わっている。住んでいる者なら、誰もが知っている話だった。
その話に登場する花を、いつからか愛の花と呼ぶようになった。
昔は婚姻の際に、新郎側が取りに行ったりもしたらしいが、最近では山に登る者すらいない。
標高はさほどでもないが、頂上付近の傾斜がキツい。愛の花を取ろうとした際に、命を落とした者もいるといわれるほどだ。
危険と隣り合わせなのもあり、愛の花の話を知っていても、誰も取りに行かなくなったのである。
「あの山に登るというの? 危険だわ。山の近くまで行った人が、敵対的亜人らしき影を見たという話もあるのよ!」
「わかってる。だからこそ、愛の花を取ってくれば、僕が軟弱者じゃないという証明になる」
ゆったりとした口調でアイラに告げたあと、スミスはロドルの目を真っ直ぐに見た。
「僕が愛の花を取ってきたら、アイラとの結婚を認めてください」
やや悩むそぶりを見せてから、ロドルは頷いた。
「いいだろう。花を取ってくれば、お前を強い男と認める。喜んで、娘を嫁にやろう」
「ありがとうございます!」
話はまとまった。
その日のうちにスミスはアイラと一緒に、唯一山の頂上までを知る村長に話を聞きに行った。
地図を貰い、注意事項を聞いた。
余計に怖くなったアイラと対照的に、スミスの顔はやる気に満ち溢れていた。
こうしてスミスは、愛の花を取りに出発する。
●アイラの不安
ひとり残されたアイラ。スミズの無事を祈るが、不安で仕方ない。
山頂までは五時間ほどかかり、傾斜がキツい。鍛えているハンターならともかく、一般人には危険な場所だ。
頂上に近づくほど岩が多くなり、気温も下がる。凍えて死ぬほどではないが、薄着をしていたら風邪をひきかねない。
そのあたりの情報はスミスも一緒に村長から聞いたので、十分に服を着込んでいった。
寒さ対策は問題ないが、装備を多くすれば、その分だけ動きが鈍くなる。
不確定情報ではあるが、山を見上げた人が敵対的亜人らしき影を見たというのも気になる。
最近の話だ。目撃した人はコボルドが山に住み着いたかもしれないと言っていた。しかも、影は複数だったらしい。
アイラ自身が肉眼で確認したわけではないので、信憑性については不明だが、不安材料に変わりはない。
山の中で桃色の花を咲かせるのは愛の花ひとつだけ。どれを取ればいいか、迷ったりはしないはずだ。
山登りの装備を持っていったので、気をつけてさえいれば、花を取る際に山頂から転落する心配もないだろう。
天候については、北の山は安定してるのでさほど気にしなくてもいい。
問題はやはり、傾斜と複数の敵対的亜人らしき影だ。
普段なら逃げ切れるかもしれないが、動きの鈍ったスミスが襲われたりすれば、ひとたまりもない。
どんどん不安が大きくなり、泣きたいほど心配になる。
そこでアイラは、スミスに内緒でハンターへ依頼を出す。
できれば同行して守ってあげてほしいが、意外と頑固なスミスは果たして了承してくれるだろうか。
脇目も振らずに突っ走るタイプだけに、愛の花を見つけるのに集中して、敵対的亜人への対処が疎かになるかもしれない。
愛の花を手に入れたら嬉しさのあまり、慎重さを欠けさせて、斜面のキツい山を駆け下りようとしかねない。
愛の花が取れなかったとしても、スミスが無事ならそれでいい。
アイラは、何度も頭を下げてお願いする。
どうか、スミスを助けてくださいと。
「貴様のような軟弱者に、大事な娘はやれん!」
重低音のきいた怒声に、二十代半ばの青年スミスは追い出された。いわゆる門前払いだ。
家に入れるのさえ拒んだのは、五十代後半の男。痩せ形のスミスとは対照的に、工夫顔負けの屈強さを誇る。
農作業によって鍛えられた筋肉は、スミスにないものだった。
村のパン屋の店内で販売を担当しているスミスは、見た目と職種だけで恋人の父親ロドルに軟弱者扱いされてしまった。
結婚の許しを求めにきたスミスは、簡単に引き下がれない。
「お願いします! 本気なんです。娘さんを……アイラを僕にくださいっ!」
めげずに頼み込むも、やはり頷いてはもらえない。
すると、スミスと恋仲のアイラも、一緒になってロドルへ頭を下げた。
「軟弱者でも構わない。私はスミスを愛しているの。夫婦になってもいいでしょう?」
「……可愛いひとり娘の頼みだ。俺だって叶えてやりたい。だが! 大切に育ててきたからこそ、娘を守れる強い男のもとへ嫁に出したいのだ!」
折れてくれない父親を説き伏せられず、アイラは母親のリーシャをすがるような目で見た。
頼みの母親は、小さく首を左右に振るだけ。夫のロドルと、想いは同じみたいだった。
「二人とも、どうしてわかってくれないの! もういい! 許してもらえないのなら、村を出てでもスミスと一緒になります!」
アイラは叫んだ。本気だった。
親子の縁を切られたとしても、スミスと共に未来を歩みたかった。
「アイラ……気持ちは嬉しいけれど、それだけは駄目だ」
諭すようにスミスは言う。
「君を大切に想う気持ちは、僕もロドルさんも同じだ。だからこそ、僕たちの結婚を祝福してもらいたい」
「で、でも、このままじゃ……」
「大丈夫。要は、僕が軟弱者じゃないと証明できればいいんだ。村の北、高くそびえる山の頂上に咲くという花の話を知っているよね」
この村では、有名な話だ。
かつて、そこで出会った若い男女が恋に落ち、愛を誓い合うと桃色の花が咲き誇った。
嘘か本当かはわからないが、村に古くから伝わっている。住んでいる者なら、誰もが知っている話だった。
その話に登場する花を、いつからか愛の花と呼ぶようになった。
昔は婚姻の際に、新郎側が取りに行ったりもしたらしいが、最近では山に登る者すらいない。
標高はさほどでもないが、頂上付近の傾斜がキツい。愛の花を取ろうとした際に、命を落とした者もいるといわれるほどだ。
危険と隣り合わせなのもあり、愛の花の話を知っていても、誰も取りに行かなくなったのである。
「あの山に登るというの? 危険だわ。山の近くまで行った人が、敵対的亜人らしき影を見たという話もあるのよ!」
「わかってる。だからこそ、愛の花を取ってくれば、僕が軟弱者じゃないという証明になる」
ゆったりとした口調でアイラに告げたあと、スミスはロドルの目を真っ直ぐに見た。
「僕が愛の花を取ってきたら、アイラとの結婚を認めてください」
やや悩むそぶりを見せてから、ロドルは頷いた。
「いいだろう。花を取ってくれば、お前を強い男と認める。喜んで、娘を嫁にやろう」
「ありがとうございます!」
話はまとまった。
その日のうちにスミスはアイラと一緒に、唯一山の頂上までを知る村長に話を聞きに行った。
地図を貰い、注意事項を聞いた。
余計に怖くなったアイラと対照的に、スミスの顔はやる気に満ち溢れていた。
こうしてスミスは、愛の花を取りに出発する。
●アイラの不安
ひとり残されたアイラ。スミズの無事を祈るが、不安で仕方ない。
山頂までは五時間ほどかかり、傾斜がキツい。鍛えているハンターならともかく、一般人には危険な場所だ。
頂上に近づくほど岩が多くなり、気温も下がる。凍えて死ぬほどではないが、薄着をしていたら風邪をひきかねない。
そのあたりの情報はスミスも一緒に村長から聞いたので、十分に服を着込んでいった。
寒さ対策は問題ないが、装備を多くすれば、その分だけ動きが鈍くなる。
不確定情報ではあるが、山を見上げた人が敵対的亜人らしき影を見たというのも気になる。
最近の話だ。目撃した人はコボルドが山に住み着いたかもしれないと言っていた。しかも、影は複数だったらしい。
アイラ自身が肉眼で確認したわけではないので、信憑性については不明だが、不安材料に変わりはない。
山の中で桃色の花を咲かせるのは愛の花ひとつだけ。どれを取ればいいか、迷ったりはしないはずだ。
山登りの装備を持っていったので、気をつけてさえいれば、花を取る際に山頂から転落する心配もないだろう。
天候については、北の山は安定してるのでさほど気にしなくてもいい。
問題はやはり、傾斜と複数の敵対的亜人らしき影だ。
普段なら逃げ切れるかもしれないが、動きの鈍ったスミスが襲われたりすれば、ひとたまりもない。
どんどん不安が大きくなり、泣きたいほど心配になる。
そこでアイラは、スミスに内緒でハンターへ依頼を出す。
できれば同行して守ってあげてほしいが、意外と頑固なスミスは果たして了承してくれるだろうか。
脇目も振らずに突っ走るタイプだけに、愛の花を見つけるのに集中して、敵対的亜人への対処が疎かになるかもしれない。
愛の花を手に入れたら嬉しさのあまり、慎重さを欠けさせて、斜面のキツい山を駆け下りようとしかねない。
愛の花が取れなかったとしても、スミスが無事ならそれでいい。
アイラは、何度も頭を下げてお願いする。
どうか、スミスを助けてくださいと。
リプレイ本文
●村へ到着
村へ着いた一行は、依頼者であるアイラから事情説明を受けた。
案内されたのは、アイラが合鍵を持っているスミスの家だ。
「娘さんを守れる者に嫁がせたいという親心も分からなくはないけれど……丸く収まるように、頑張るしかないね」
アルフリート・クラッセン(ka4370)が、目の前にいるアイラを安心させるように言った。
「どうせやったらみんな幸せ。ちゅうんがええんやけどな」
こちらは紫音(ka4917)だ。彼女自身は二人が結婚後、ロドルと仲良くできるようにするつもりだった。
気持ちは同じだと、華彩 理子(ka5123)が頷く。
二人の幸せな結婚を願い、仕事としては不十分があろうとも、完全に応援者の立場で臨む旨をアイラに伝えた。
ありがとうございます。アイラは深々と頭を下げた。
スミスの思考を理解し、自身の説得が通るかを検証したがっている初月 賢四郎(ka1046)もアイラへ挨拶する。
ミルティア・ミルティエラ(ka0155)とファルファ(ka5292)も自己紹介したところで、一行は依頼達成のための作戦を練り始める。
●先行
楽しげな口調が傾斜のキツい山道に木霊す。
軽快な足取りで、山道を登るのはミルティアだ。
村で一行は、分担して依頼を円滑に解決することを決めた。
ミルティアとファルファが先行し、山頂でコボルドへの対処を行う。
一般人なら苦労する山道も、鍛えられたハンターの二人にはたいした問題にならない。
村を出発済みのスミスへ見つからないようにしながら、早くも山頂へ到達する。
仲間が無事にスミスを説得できれば、一緒になって山頂へやってくるはずだ。
その際に危険が少しでも少なくて済むよう、可能な限りコボルドの数を減らしておくのがミルティアとファルファの役割だった。
元気で楽しそうな雰囲気を醸し出していたミルティアだが、ファルファと少し距離ができるなり、真剣な顔つきをした。
「愛の花、か……。覚悟の表れを示すものであって、実際に何かしらの効力があるものでは無いと思うけど……」
……覚悟が一人を変え、一人が多くを動かす……か。
心の中で呟いたあと、ミルティアは首を小さく左右に振った。
「……今はお仕事に集中しないとね。自分の事は、それからそれから」
気を取り直していると、ファルファが近づいてきた。
「なんだかぁ……依頼っていうよりぃ、ミルティアちゃんと一緒に、山でピクニックしてるってカンジ!」
のんびり口調のファルファが、楽しそうに笑う。
「でもぉ……依頼もきちんとしないとだしぃ。スミスさんが来る前に少しでも敵さん減らしたいっていうかぁ、いっそ殲滅もしちゃいたいカモ?」
頂上にはすでに到達してるものの、コボルドの姿は見えない。どこかに隠れてるのだろうか。
山道を移動してる時から周囲を警戒してはいたが、いまだ敵の気配を捉えられていない。
現れるまで黙って待っていたら、スミスがやってきてしまう。
そこでミルティアは、山鳥の北京ダック風を使うことにした。
「それで敵を誘き出すカンジ? 釣られて出てきたら、射程ギリギリから魔法を放っちゃうしぃ!」
設置を終えたミルティアは、ファルファと一緒に岩場の陰に隠れる。
人がいなくなったと勘違いしたのか、罠に興味を示したコボルドが一匹また一匹と姿を現す。
顔を見合わせて互いに頷いたミルティアとファルファが、同時に奇襲を仕掛ける。
二人が同時に放ったシャドウブリットが、油断していたコボルドに命中する。
吹き飛ばされた仲間を見て、他のコボルドたちもぞろぞろとやってくる。
いよいよ本格的に戦闘開始だ。
●スミスの説得
山頂で戦闘が行われているその頃――。
懸命に山を登っているスミスに、賢四郎、アルフリート、理子の三人が追いついていた。
山へ入る前にアルフリートが村長へ話を聞き、スミスが辿りそうなルートを確認しておいたのが役立った。
「あなた方は……?」
三人に気づいたスミスが眉をひそめる。よもや、このような場所で他の人間に会うとは思ってもいなかった。
最初にアルフリートが、スミスの前へ進み出る。もちろん、説得をするためだ。
あえてアイラから依頼があったのを告げた上で、ハンターだと名乗ったアルフリートは同行の許可を求める。
「事が事だけに、一人でというのにこだわりがあると思う。しかし、考えてみてほしい。アイラさんが依頼を出したのは、スミス君に無事に戻ってもらいたいからだということを」
考えるようなそぶりを見せるスミスに、今度は理子が話しかける。
「敵対的亜人の居ります今、いにしえの習いとは危うきを異にしております。花を摘むそのことに余計な手出しはいたしませんゆえ、どうぞご同行をお許しくださいまし」
「や、やっぱり駄目です! 亜人の脅威があるからこそ、僕の勇気と強さを証明できるんですっ! 邪魔をしないでください!」
案の定というべきか、簡単には納得してくれない。
意地を張ってハンターの同行を拒否し、あくまでも一人で行こうとするスミスに理子が声を荒げる。
「……私は夫を亡くしております。混みいった経緯こそございますが、愛するものを喪うかなしみはよくよく存じております。それを、アイラさんに味わわせたいとでもおっしゃいますか!」
礼儀正しさの中にある強い感情をぶつけられ、スミスはうっと言葉に詰まる。
「申し訳ございません、不躾にございました。私は、貴方様が事もなく花を手にとられ、お二人が喜ばしき景色を共に抱かれますのを只々願うばかりにございます」
「あ、貴女がおっしゃりたいことはわかりました。それでも僕は、アイラのために強い男になる必要があるんですっ!」
「……強い男というのは、どういう男を言うのですか?」
黙って様子を見守っていた賢四郎が、ここで口を開いた。
突然に質問をぶつけられたスミスは、すぐには答えられない。
返答がないのを受けて、賢四郎は淡々とした感じで言葉を続ける。
「強いだけでも目的を達せなければ無駄ですよ。強さの一面しか見ていないんじゃないですかね? 正面から戦う事や力だけが強さじゃない」
真正面から強い視線をぶつけられ、怯んだようにスミスが一歩後退りする。
「貴方の目的は彼女と結婚する事。その為の目標に愛の花の入手を設定した。重要なのは目的と目標を逆転させない事。目標を達成できても目的を達成できなければ無為でしか無い。自分に言える事はここまでです」
「ぼ、僕は……」
「彼女は我々を使う事を示した。だが、貴方が不要だと言うなら自分は抜けます。ただそれは彼女の好意への拒否とも取れますよ」
この発言が決めてとなり、当初は頑なに助力を拒もうとしたスミスもついに折れる。
「わかり……ました。彼女を……アイラを悲しませたくありません。どうか……道中の護衛をお願いします」
●村にて
ひとり村に残った紫音は、旅の吟遊詩人という設定で仲間と別行動をしていた。
スミスや仲間に何かあった時に備え、解毒、応急手当のできる救急セット。他に山の地図、山の出来るだけ詳しい情報を準備した。
帰路の安全確保にいつでも向かえる状態になったが、すぐに出発せずに村で愛の花の話を村人から詳しく聞いてみる。
村の中では有名な話なのもあり、ほぼ全員が知っているみたいだった。
ついでにアイラとスミスの話も聞く。二人はずいぶんと仲の良い恋人同士のようだ。
話を聞いてまわってるうちに、屈強な男性に辿り着く。アイラの父親のロドルだった。
相手がロドルと知った紫音は、旅の吟遊詩人だと挨拶する。
最初は普通に相手をしてくれていたが、スミスとアイラの話題になるなり態度が一変した。
「旅人が余計な口を挟まないでもらいたい!」
はい、そうですかと引き下がるつもりのない紫音は、真正面からロドルと対峙する。
「スミスとアイラはいつも笑い合って仲睦まじいそうやね。せやけど、今のアイラはどうなん? スミスのことを思うて泣きそうな顔しとるらしいやん」
「……そんなことは言われなくてもわかっている。だが、例えば移動中にゴブリンなどに襲われたらどうする? 愛する者を守るためにも、男に強さは必要だ!」
「確かにこの世界、命は大事や。せやけど、それだけしか守れん男に娘はんは預けられるん? 大事な娘はんなんやろ? 笑ってて欲しいやん。せやったら娘さんの笑顔を守れる男に任せてもええとうちは思うけどなぁ」
頷きこそしないが、ロドルの心に紫音の言葉が響いたのは間違いなかった。
これで少しはロドルも、アイラの気持ちを考慮するようになってくれるだろう。元々、娘を大事に思うあまり、強い結婚相手を求めたような男性なのだから。
ロドルとの会話がひと段落したところで、紫音も山へ向かうことにする。
そろそろ仲間たちが、スミスと一緒に愛の花を入手している頃かもしれない。
●山頂にて
ミルティアとファルファは、お互いにヒールの範囲からは離れないように連携していた。
安定した戦闘ができる一方で、一気に敵を殲滅させるには至らない。
「誰かを守りながら戦うって、ちょっと苦手なんだけどね……!」
ミルティアがファルファを守るように戦い、一方のファルファは攻撃後に敵から離れて移動する。
「いわゆる引き撃ちってカンジ?」
そこへスミスを護衛中の仲間たちが合流する。
敵の注意が分散したところで、ミルティアは一気に接近戦へ転じる。
「私が君たちを綺麗に紅く咲かせてあげるよ……!」
まるで接近戦こそが戦の花だと言いたげな、楽しそうな様子を見せる。
ミルティアとファルファがコボルドを仕留めていく間、同行中のハンターはスミスを守るのに全力を注ぐ。
「移動中や彼が花を摘んでいる最中は、特に警戒を強める必要があるだろう。奇襲だけは防がなければならないからね」
敵をスミスに近寄らせないのが第一。アルフリートはチェーンソードを鞭のように使ってコボルドたちを威嚇する。
近寄られる前に追い払えれば、遊撃を担当するミルティアとファルファが攻撃を仕掛けてくれる。
射程外からアサルトライフルで攻撃をしていた賢四郎が、強引に接近してきたコボルドの攻撃をムーバブルシールドで押し返す。
理子もスミスを守るために前へ出て応戦する。
その際に命綱をしっかり使う事や、逸る気持ちを抑え慎重に歩いてほしいとの注意も怠らない。
効果的にヒールを使いながら、接近してのストライクブロウで、ミルティアがコボルドの数をまた一匹減らす。
「コボルドの相手は、ボクたちに任せておいてくれればいいからね!」
叫んだミルティアの言葉に頷き、スミスが山頂にある愛の花を手に取る。
「と、取れたっ! こ、これで僕は……! アイラ! すぐに君のもとへ帰るよっ!」
感動と興奮で、スミスが涙を流す。
いきなり走り出しそうな気配を察した理子が、慌てて声を上げる。
「アイラさんが! ……貴方様の無事をお祈りしながら、お待ちになっております」
アイラの名前を強調されたことで、反射的にスミスが足を止めた。
「よくよくお考えの上、猶も逸るのでありますれば……やむなき事にございます」
落ち着かせる絶好の機会を逃さないように、今度はアルフリートがスミスへ諭すように話しかける。
「逸る気持ちはわかるけれど、急いては事を仕損じるよ。花を無事に持ち帰るためにも、まずは落ち着くんだ」
冷静なアルフリートの説得により、なんとかスミスは落ち着きを取り戻す。
目に浮かんだ涙を拭い、ハンターたちへ帰りもお願いしますと頭を下げる。
「もちろんだ。私たちは、そのために来ているのだからね」
アルフリートと理子、それにミルティアがスミスを護衛して山を下りようとする。
その際に、すでに帰路の確保をしてくれてるであろう紫音に魔導短伝話で連絡を取った。
●下山
連絡を取り終えた紫音は、下山のルートとなる場所で丁度、山頂から逃げてきたコボルドをバスタードソードで斬り捨てたところだった。
動かなくなった躯を片手で持ち、正面にいる他のコボルドを睨みつける。
「こうなりとうなかったら、去った方が身のためや。おどれらわかるな?」
紫音の見せた笑顔がよほど怖かったのか、人間の言葉がわからないはずなのにコボルドは強く怯えた。
すっかり戦意を喪失させたコボルドが、再び山頂の方へ逃げる。
下山途中のスミスらを無視して、山頂まで戻ったコボルドを待ち受けていたのは賢四郎とファルファだった。
「愛の花の入手は終わりました。依頼は達成したも同然ですが、他の方へ与える影響も考え、敵は殲滅しておくべきです」
「繁殖したら村が危険っていうかぁ、賢四郎さんも言ってるけど、同じ願掛けに登山して来た人が危険な目に遭っちゃうカモ」
逃げてきたコボルドをきっちり仕留め、これで十匹いた敵対的亜人の殲滅が終了した。
このために残っていた賢四郎とファルファも下山を開始する。
あとはスミスが、ロドルの前でアイラに愛の花を手渡せば終わりだった。
●エピローグ
笑顔で帰村したスミスを、アイラが抱きしめる。
わざわざロドルも、スミスの家の前でアイラと一緒に帰りを待ってくれていた。
ハンターたちは村の手前で別れるのを提案したが、スミス自身が最後まで同行してくださいとお願いした。
「愛の花は取ってきました。ですが、僕一人では難しかったでしょう。アイラが、ハンターの方々に頼んでくれたからこその結果です」
自分ひとりの力ではないというスミスに、ロドルは首を左右に振ってみせた。
「俺も間違っていた。娘を強い男の嫁にしたいが、それだけでは駄目だったんだな」
「お父さん……」
涙目になるアイラの前で、ロドルは正式にスミスとの結婚を認めると告げた。
「ハンターの方々の手助けがあったにしろ、言ったとおりの愛の花を持ってきたのはお前だ。その勇気と覚悟で、娘を……アイラを幸せにしてやってくれ」
「はいっ!」
元気に返事をするスミスの隣で、幸せそうに微笑むアイラ。
そして、強い充実感を覚えて微笑むハンターたち。
しかし彼らは知らない。
この後、招待される夕食の席で、延々とスミスとアイラのノロケ話を聞かされるはめになるのを。
村へ着いた一行は、依頼者であるアイラから事情説明を受けた。
案内されたのは、アイラが合鍵を持っているスミスの家だ。
「娘さんを守れる者に嫁がせたいという親心も分からなくはないけれど……丸く収まるように、頑張るしかないね」
アルフリート・クラッセン(ka4370)が、目の前にいるアイラを安心させるように言った。
「どうせやったらみんな幸せ。ちゅうんがええんやけどな」
こちらは紫音(ka4917)だ。彼女自身は二人が結婚後、ロドルと仲良くできるようにするつもりだった。
気持ちは同じだと、華彩 理子(ka5123)が頷く。
二人の幸せな結婚を願い、仕事としては不十分があろうとも、完全に応援者の立場で臨む旨をアイラに伝えた。
ありがとうございます。アイラは深々と頭を下げた。
スミスの思考を理解し、自身の説得が通るかを検証したがっている初月 賢四郎(ka1046)もアイラへ挨拶する。
ミルティア・ミルティエラ(ka0155)とファルファ(ka5292)も自己紹介したところで、一行は依頼達成のための作戦を練り始める。
●先行
楽しげな口調が傾斜のキツい山道に木霊す。
軽快な足取りで、山道を登るのはミルティアだ。
村で一行は、分担して依頼を円滑に解決することを決めた。
ミルティアとファルファが先行し、山頂でコボルドへの対処を行う。
一般人なら苦労する山道も、鍛えられたハンターの二人にはたいした問題にならない。
村を出発済みのスミスへ見つからないようにしながら、早くも山頂へ到達する。
仲間が無事にスミスを説得できれば、一緒になって山頂へやってくるはずだ。
その際に危険が少しでも少なくて済むよう、可能な限りコボルドの数を減らしておくのがミルティアとファルファの役割だった。
元気で楽しそうな雰囲気を醸し出していたミルティアだが、ファルファと少し距離ができるなり、真剣な顔つきをした。
「愛の花、か……。覚悟の表れを示すものであって、実際に何かしらの効力があるものでは無いと思うけど……」
……覚悟が一人を変え、一人が多くを動かす……か。
心の中で呟いたあと、ミルティアは首を小さく左右に振った。
「……今はお仕事に集中しないとね。自分の事は、それからそれから」
気を取り直していると、ファルファが近づいてきた。
「なんだかぁ……依頼っていうよりぃ、ミルティアちゃんと一緒に、山でピクニックしてるってカンジ!」
のんびり口調のファルファが、楽しそうに笑う。
「でもぉ……依頼もきちんとしないとだしぃ。スミスさんが来る前に少しでも敵さん減らしたいっていうかぁ、いっそ殲滅もしちゃいたいカモ?」
頂上にはすでに到達してるものの、コボルドの姿は見えない。どこかに隠れてるのだろうか。
山道を移動してる時から周囲を警戒してはいたが、いまだ敵の気配を捉えられていない。
現れるまで黙って待っていたら、スミスがやってきてしまう。
そこでミルティアは、山鳥の北京ダック風を使うことにした。
「それで敵を誘き出すカンジ? 釣られて出てきたら、射程ギリギリから魔法を放っちゃうしぃ!」
設置を終えたミルティアは、ファルファと一緒に岩場の陰に隠れる。
人がいなくなったと勘違いしたのか、罠に興味を示したコボルドが一匹また一匹と姿を現す。
顔を見合わせて互いに頷いたミルティアとファルファが、同時に奇襲を仕掛ける。
二人が同時に放ったシャドウブリットが、油断していたコボルドに命中する。
吹き飛ばされた仲間を見て、他のコボルドたちもぞろぞろとやってくる。
いよいよ本格的に戦闘開始だ。
●スミスの説得
山頂で戦闘が行われているその頃――。
懸命に山を登っているスミスに、賢四郎、アルフリート、理子の三人が追いついていた。
山へ入る前にアルフリートが村長へ話を聞き、スミスが辿りそうなルートを確認しておいたのが役立った。
「あなた方は……?」
三人に気づいたスミスが眉をひそめる。よもや、このような場所で他の人間に会うとは思ってもいなかった。
最初にアルフリートが、スミスの前へ進み出る。もちろん、説得をするためだ。
あえてアイラから依頼があったのを告げた上で、ハンターだと名乗ったアルフリートは同行の許可を求める。
「事が事だけに、一人でというのにこだわりがあると思う。しかし、考えてみてほしい。アイラさんが依頼を出したのは、スミス君に無事に戻ってもらいたいからだということを」
考えるようなそぶりを見せるスミスに、今度は理子が話しかける。
「敵対的亜人の居ります今、いにしえの習いとは危うきを異にしております。花を摘むそのことに余計な手出しはいたしませんゆえ、どうぞご同行をお許しくださいまし」
「や、やっぱり駄目です! 亜人の脅威があるからこそ、僕の勇気と強さを証明できるんですっ! 邪魔をしないでください!」
案の定というべきか、簡単には納得してくれない。
意地を張ってハンターの同行を拒否し、あくまでも一人で行こうとするスミスに理子が声を荒げる。
「……私は夫を亡くしております。混みいった経緯こそございますが、愛するものを喪うかなしみはよくよく存じております。それを、アイラさんに味わわせたいとでもおっしゃいますか!」
礼儀正しさの中にある強い感情をぶつけられ、スミスはうっと言葉に詰まる。
「申し訳ございません、不躾にございました。私は、貴方様が事もなく花を手にとられ、お二人が喜ばしき景色を共に抱かれますのを只々願うばかりにございます」
「あ、貴女がおっしゃりたいことはわかりました。それでも僕は、アイラのために強い男になる必要があるんですっ!」
「……強い男というのは、どういう男を言うのですか?」
黙って様子を見守っていた賢四郎が、ここで口を開いた。
突然に質問をぶつけられたスミスは、すぐには答えられない。
返答がないのを受けて、賢四郎は淡々とした感じで言葉を続ける。
「強いだけでも目的を達せなければ無駄ですよ。強さの一面しか見ていないんじゃないですかね? 正面から戦う事や力だけが強さじゃない」
真正面から強い視線をぶつけられ、怯んだようにスミスが一歩後退りする。
「貴方の目的は彼女と結婚する事。その為の目標に愛の花の入手を設定した。重要なのは目的と目標を逆転させない事。目標を達成できても目的を達成できなければ無為でしか無い。自分に言える事はここまでです」
「ぼ、僕は……」
「彼女は我々を使う事を示した。だが、貴方が不要だと言うなら自分は抜けます。ただそれは彼女の好意への拒否とも取れますよ」
この発言が決めてとなり、当初は頑なに助力を拒もうとしたスミスもついに折れる。
「わかり……ました。彼女を……アイラを悲しませたくありません。どうか……道中の護衛をお願いします」
●村にて
ひとり村に残った紫音は、旅の吟遊詩人という設定で仲間と別行動をしていた。
スミスや仲間に何かあった時に備え、解毒、応急手当のできる救急セット。他に山の地図、山の出来るだけ詳しい情報を準備した。
帰路の安全確保にいつでも向かえる状態になったが、すぐに出発せずに村で愛の花の話を村人から詳しく聞いてみる。
村の中では有名な話なのもあり、ほぼ全員が知っているみたいだった。
ついでにアイラとスミスの話も聞く。二人はずいぶんと仲の良い恋人同士のようだ。
話を聞いてまわってるうちに、屈強な男性に辿り着く。アイラの父親のロドルだった。
相手がロドルと知った紫音は、旅の吟遊詩人だと挨拶する。
最初は普通に相手をしてくれていたが、スミスとアイラの話題になるなり態度が一変した。
「旅人が余計な口を挟まないでもらいたい!」
はい、そうですかと引き下がるつもりのない紫音は、真正面からロドルと対峙する。
「スミスとアイラはいつも笑い合って仲睦まじいそうやね。せやけど、今のアイラはどうなん? スミスのことを思うて泣きそうな顔しとるらしいやん」
「……そんなことは言われなくてもわかっている。だが、例えば移動中にゴブリンなどに襲われたらどうする? 愛する者を守るためにも、男に強さは必要だ!」
「確かにこの世界、命は大事や。せやけど、それだけしか守れん男に娘はんは預けられるん? 大事な娘はんなんやろ? 笑ってて欲しいやん。せやったら娘さんの笑顔を守れる男に任せてもええとうちは思うけどなぁ」
頷きこそしないが、ロドルの心に紫音の言葉が響いたのは間違いなかった。
これで少しはロドルも、アイラの気持ちを考慮するようになってくれるだろう。元々、娘を大事に思うあまり、強い結婚相手を求めたような男性なのだから。
ロドルとの会話がひと段落したところで、紫音も山へ向かうことにする。
そろそろ仲間たちが、スミスと一緒に愛の花を入手している頃かもしれない。
●山頂にて
ミルティアとファルファは、お互いにヒールの範囲からは離れないように連携していた。
安定した戦闘ができる一方で、一気に敵を殲滅させるには至らない。
「誰かを守りながら戦うって、ちょっと苦手なんだけどね……!」
ミルティアがファルファを守るように戦い、一方のファルファは攻撃後に敵から離れて移動する。
「いわゆる引き撃ちってカンジ?」
そこへスミスを護衛中の仲間たちが合流する。
敵の注意が分散したところで、ミルティアは一気に接近戦へ転じる。
「私が君たちを綺麗に紅く咲かせてあげるよ……!」
まるで接近戦こそが戦の花だと言いたげな、楽しそうな様子を見せる。
ミルティアとファルファがコボルドを仕留めていく間、同行中のハンターはスミスを守るのに全力を注ぐ。
「移動中や彼が花を摘んでいる最中は、特に警戒を強める必要があるだろう。奇襲だけは防がなければならないからね」
敵をスミスに近寄らせないのが第一。アルフリートはチェーンソードを鞭のように使ってコボルドたちを威嚇する。
近寄られる前に追い払えれば、遊撃を担当するミルティアとファルファが攻撃を仕掛けてくれる。
射程外からアサルトライフルで攻撃をしていた賢四郎が、強引に接近してきたコボルドの攻撃をムーバブルシールドで押し返す。
理子もスミスを守るために前へ出て応戦する。
その際に命綱をしっかり使う事や、逸る気持ちを抑え慎重に歩いてほしいとの注意も怠らない。
効果的にヒールを使いながら、接近してのストライクブロウで、ミルティアがコボルドの数をまた一匹減らす。
「コボルドの相手は、ボクたちに任せておいてくれればいいからね!」
叫んだミルティアの言葉に頷き、スミスが山頂にある愛の花を手に取る。
「と、取れたっ! こ、これで僕は……! アイラ! すぐに君のもとへ帰るよっ!」
感動と興奮で、スミスが涙を流す。
いきなり走り出しそうな気配を察した理子が、慌てて声を上げる。
「アイラさんが! ……貴方様の無事をお祈りしながら、お待ちになっております」
アイラの名前を強調されたことで、反射的にスミスが足を止めた。
「よくよくお考えの上、猶も逸るのでありますれば……やむなき事にございます」
落ち着かせる絶好の機会を逃さないように、今度はアルフリートがスミスへ諭すように話しかける。
「逸る気持ちはわかるけれど、急いては事を仕損じるよ。花を無事に持ち帰るためにも、まずは落ち着くんだ」
冷静なアルフリートの説得により、なんとかスミスは落ち着きを取り戻す。
目に浮かんだ涙を拭い、ハンターたちへ帰りもお願いしますと頭を下げる。
「もちろんだ。私たちは、そのために来ているのだからね」
アルフリートと理子、それにミルティアがスミスを護衛して山を下りようとする。
その際に、すでに帰路の確保をしてくれてるであろう紫音に魔導短伝話で連絡を取った。
●下山
連絡を取り終えた紫音は、下山のルートとなる場所で丁度、山頂から逃げてきたコボルドをバスタードソードで斬り捨てたところだった。
動かなくなった躯を片手で持ち、正面にいる他のコボルドを睨みつける。
「こうなりとうなかったら、去った方が身のためや。おどれらわかるな?」
紫音の見せた笑顔がよほど怖かったのか、人間の言葉がわからないはずなのにコボルドは強く怯えた。
すっかり戦意を喪失させたコボルドが、再び山頂の方へ逃げる。
下山途中のスミスらを無視して、山頂まで戻ったコボルドを待ち受けていたのは賢四郎とファルファだった。
「愛の花の入手は終わりました。依頼は達成したも同然ですが、他の方へ与える影響も考え、敵は殲滅しておくべきです」
「繁殖したら村が危険っていうかぁ、賢四郎さんも言ってるけど、同じ願掛けに登山して来た人が危険な目に遭っちゃうカモ」
逃げてきたコボルドをきっちり仕留め、これで十匹いた敵対的亜人の殲滅が終了した。
このために残っていた賢四郎とファルファも下山を開始する。
あとはスミスが、ロドルの前でアイラに愛の花を手渡せば終わりだった。
●エピローグ
笑顔で帰村したスミスを、アイラが抱きしめる。
わざわざロドルも、スミスの家の前でアイラと一緒に帰りを待ってくれていた。
ハンターたちは村の手前で別れるのを提案したが、スミス自身が最後まで同行してくださいとお願いした。
「愛の花は取ってきました。ですが、僕一人では難しかったでしょう。アイラが、ハンターの方々に頼んでくれたからこその結果です」
自分ひとりの力ではないというスミスに、ロドルは首を左右に振ってみせた。
「俺も間違っていた。娘を強い男の嫁にしたいが、それだけでは駄目だったんだな」
「お父さん……」
涙目になるアイラの前で、ロドルは正式にスミスとの結婚を認めると告げた。
「ハンターの方々の手助けがあったにしろ、言ったとおりの愛の花を持ってきたのはお前だ。その勇気と覚悟で、娘を……アイラを幸せにしてやってくれ」
「はいっ!」
元気に返事をするスミスの隣で、幸せそうに微笑むアイラ。
そして、強い充実感を覚えて微笑むハンターたち。
しかし彼らは知らない。
この後、招待される夕食の席で、延々とスミスとアイラのノロケ話を聞かされるはめになるのを。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/12 02:07:49 |
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【相談卓】お二人のために 華彩 理子(ka5123) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/07/13 06:23:12 |