蛇の穴

マスター:cr

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/07/19 19:00
完成日
2014/07/24 00:05

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●好奇心は猫も殺す
 じめじめとした洞穴の壁、そこにランプの明かりが当てられる。
 コツリ、コツリと足音が鳴り、若者の影が二つ照らし出される。
「やっぱり不気味だな……」
「なんだ、ビビってんのか?」
 ここはとある洞穴。この洞穴は自然の力で作られたものでは無い。その昔、人々が山に埋まる宝石を掘り出すために造られたものだ。かつては宝石を掘り出すために集まった労働者で、この若者たちが住む村も大層にぎやかだったらしい。だがそれも古い話、宝石の鉱脈が枯れ、誰も坑道に入らなくなり、そしてこの洞穴は打ち捨てられた。
 そんな村の隅の誰も近寄らない洞穴に村の若者達が入っていた。刺激の少ない村でちょっとした肝試し代わりと、あわよくば宝石が手に入らないかという期待を持って。

●穴の中には
 若者たちは洞穴を進む。
 主になる坑道は幅4メートル程度、高さも同じぐらい。ここまで来るのに大体500メートルは歩いただろうか。かつての鉱脈の跡だろうか、8メートル四方はある大きく開けた場所が見えてきた。そこの前と左右にはさらなる宝石を求めて掘られた穴がある。天井には空気穴が空いていた。幼い頃に村のあちこちに開いていた穴について、大人に聞いた事を思い出した。天井の空気穴は村の穴に繋がっていたのか。
 そんなことを思い出していた時だった。若者たちの耳に何か這いずる様な音が聞こえたのは。
「な、何かいるのか?!」
「いたって蛇の一匹や二匹だろ?ビビってんじゃねーよ!」
 恐れて腰を抜かした若者を、もう一人の若者がせせら笑う。そのままへたり込んだままの男を置いて先に進む。
 そして次の瞬間、男の姿が掻き消えた。

●食物連鎖
 それはあまりにも大きかった。穴から出てきたのは蛇の頭。しかし、それは坑道を塞がんばかりに大きかった。
 その蛇が体を一巻するだけで男の体は見えなくなった。骨が砕ける嫌な音が鳴る。もう彼は助からないだろう。
 蛇は首をもたげ、ギロリともう一人の方を見る。
 男は声にならない悲鳴を上げ、一目散に坑道から飛び出した。男は自分の見た光景を村人たちに語る。
 村のすぐ近くに巨大な雑魔が潜んでいる、これは村人たちに恐怖を与えるのに十分であった。入り口だけではない。いつ村の穴から飛び出してくるのかわからないのだ。気づかなければ枕を高くして寝られただろう。だが気づいてしまったのだ。
 村からハンターズソサエティに、坑道に住み着いた仮称、坑道蛇の退治の依頼が入るのはそれからすぐのことである。

リプレイ本文


 コツ、コツ、コツ。
 真っ暗な坑道の壁がたいまつで照らされ、6人のハンター達の足音が響く。
「クリムゾンウェストの蛇なんだが……」
 春日 啓一(ka1621)は巨大蛇が敵だと聞いて、村の人々にクリムゾンウェストの蛇について確認していた。リアルブルーの蛇のイメージに引きずられて戦いに挑むと致命傷になりうることがある。そうやって聞いた蛇の生態だが
「熱や匂いに反応する。リアルブルーと同じだな。あと多くの人間が動くものに反応するって言ってたな」
「なるほど、蛇についての確認ありがとうございます。僕は坑内の状況について確認しておきました」
 シエル=アマト(ka0424)はそう返す。外の光が届かない坑内、彼らにとっては光源の確保は戦う上で必須の項目である。シエルはそのための設備があるのでは無いかと考え、村の人々に坑内の設備を確認していた。その結果だが、かつては宝石を掘り出すために作られたものであって、たいまつ立てやランタンをぶらさげるフックが設置されていたそうだ。これならば明かりの心配もなく大蛇もすみやかに倒せるだろう。
「村の人達…そして犠牲になった人も心穏やかに眠れるように、頑張りましょう」
「うん、そんな大きな蛇が出たんじゃ、村の人も心配だよね。早く退治して、みんなニコニコできるいつもの生活を取り戻さなくっちゃ!」
 シエルの決意にサトコ・ロロブリジーダ(ka2475)も同意する。が、サトコの本心は別のところにあった。
(話じゃ随分賑わった鉱脈らしいじゃねぇか。ククク、意外とお宝が眠ってるかも知れねーぞ)
 そんなサトコのドス黒い本心を知ってか知らずか、佐倉 桜(ka0386)も近いことを思っていた。
「ブラッドストーンとか、あったりしませんか、ね」
 桜は首飾りを見つめそう呟く。彼女にとって、その首飾りはただの宝石ではなく、自分の意思を示すものなのかもしれない。
「ハンターは、困っている人を、助けるのが、お仕事……です。わたしも、駆け出しだけれど、ハンターで……がんばる、です」
 一方羊谷 めい(ka0669)は自分の震えを抑えるように、そう小声で喋っていた。元々引っ込み思案な彼女にとって、慣れない戦いはさらに緊張をもたらす。
「めいが心配だからついてきたんだけど……。まあ仕事は仕事だし、しっかりと働かせてもらうよ」
 だが今回は雪柳・深紅(ka1816)が同行している。めいにとって、雪柳はリアルブルーにいたときからの友人である。少しは安心したようで、幾分か口数が多くなっていた。
「しーちゃんがいるから、ちょっと安心、かな」


 ハンターたちは坑道を進む。500メートルほど歩いただろうか、やがて開けた場所にやってきた。情報の通り副道が掘られているのが確認できる。
「こっちが有利なのは数で上回っている点だから、それを最大限に活かさなきゃ」
 サトコの言葉通り数を生かすためには自由に動ける場所で戦う必要がある。ハンターたちはここを今回の戦場にする事をあらかじめ決めていた。早速ハンターたちは周辺の壁を確認する。確かにシエルが聞いていた通り、たいまつ立てやランタンを掛けるためのフックが設置されている。だが、打ち捨てられてからの期間がそのうちのいくつかを風化させ既に使い物にならなくしていた。
 仕方なく使える場所にだけたいまつやランタンを設置するが、光量は十分とはいえない。めいは残ったたいまつを、シエルの助言で床に転がす。シエルはたいまつで照らし出された空間を見て思わず呟く。
「電灯が恋しいですね、こういう時は……」


 とりあえず光源は確保できた。次は倒すべき坑道蛇だ。情報によれば坑道蛇の体長は10メートルを超えているはずだ。だがその気配は感じられない。今もこうやってどこかに潜み、犠牲者を待ち構えているはずなのだ。
「いかに相手を発見するか、だよね」
(とは言え真っ向勝負なら負けはしねーだろ……たかが蛇風情にヒーコラ言ってる場合じゃねぇしな)
 サトコの言葉に春日は頷き、持ってきた干し肉やツナ缶をランタンであぶる。匂いと明かりで蛇を誘い出そうという作戦だ。その匂いに、熱に反応してか、地面を這う音が坑道内を反響する。
「近づいてきます……、ね。うう、地面を這う音が不気味です……」
 桜は思わず恐怖に感想を漏らす。だが怖がってばかりいるだけではない。耳を澄ませどこに蛇が潜んでいるのか特定しようと試みる。しかしながら這う音は反響し、3つの副道全てから聞こえてくる。これでは特定する事は出来ない。
 そこで桜は干し肉を副道の入り口に設置する事にした。それに釣られて蛇が出てくれば、そういう考えだ。シエルは桜をいつでもフォローできる位置を取り、桜が副道の前に干し肉を置く。
「来ましたよ! 皆さん、気を付けてっ!」
 シエルが叫ぶ。桜が副道の前に干し肉を置こうとした瞬間、這いずる音が一気に激しくなる。次の刹那、副道から飛び出した蛇の頭が桜に襲い掛かっていた。


 それは一瞬だった。桜も逃げようとする。だが坑道蛇はそれを上回るスピードで桜に体をぶつけ、一気にその体を桜に巻きつける。こうやって絞め殺した犠牲者をゆっくり喰らうのがこの坑道蛇の食事なのだろう。だが、今は悠長にそう思っている場合ではない。今捕まっているのは仲間なのだ。
 シエルとサトコはすかさずデリンジャーを抜き撃ちする。蛇を威嚇し、ひるませ、桜を救出し坑道蛇を完全にこの場所に引きずり出すためだ。発射音が響き、弾が蛇の口内に飛び込む。ハンターの持ち出した兵器に坑道蛇はその身をよじる。だが、桜を絞め上げる力を緩めようとはしない。
「ううっ……」
 全身の骨を砕かんばかりの圧力に桜は苦悶の声を上げる。このままでは自分の体は持たないだろう。桜は一か八か自分の体重を一気に後ろにかけた。50キロも無い細身の桜が1トンを超えるであろう坑道蛇を押しつぶせるわけがない。だが、シエルとサトコの銃撃と締め付けていた相手の想定外の反撃にさしもの坑道蛇も一瞬その体をゆるめる。その隙に桜は必死に脱出する。わずかな隙間に体を滑らせると、蛇の作った輪の名から桜が滑り出る。
「リアルブルーでは見なかったような巨大蛇、相手にとって不足なし」
 桜が脱出するのと入れ替わるように、春日が蛇の前に立つ。春日は武術一家の三男である。ハンターになったのも強大な敵と戦い、己の力を磨くためだ。坑道蛇はまさに春日にとって戦いたい相手だった。春日は蛇の力を見極めるように、闇雲に近づくわけでなく、間合いを計りながら距離を詰めていく。
「ここからが本番です!」
 春日のその姿を確認して、シエルは自らのマテリアルをエネルギーとして春日に流し込む。春日のドリルナックルの破壊力がさらに引き出される。
 一方雪柳は風を自らにまとわせ、めいと坑道蛇の間に立つ。
「無茶は、しないでくださいっ」
「まだ、無茶じゃないし……。いいから下がってて」
 めいの言葉に雪柳はそう答える。めいは大切な友人だ。大切な友人を守るためならその身を投げ出す事も厭わない。雪柳はめいを守るべく、蛇の前にその身をさらす。もちろんただ死に急ぐつもりはない。もしも自分が坑道蛇に巻きつかれたときのことを考え逆手にダガーを握ると、素早く動けるように動物霊の力を借り、体重をつま先に乗せ構える。
 めいは心配しつつも、蛇に絞められ傷ついた桜を癒すべく精霊に祈りを捧げる。この坑道に入ってきたときの震えはもう止まり、喋る言葉も流暢になっていた。自分には戦うための力がある、その思いがめいを支えている。視線を真っ直ぐに桜を見つめる。めいの青い瞳の中に燐光がきらめく。すると柔らかな光が桜の体を包み、その傷ついた体を治していった。
 そうやって蛇の前に立つ者が決まったところで、後ろ側に立つ者から鋭い風が放たれる。
(でけェってことはその分、的としても当てやすいってこった。くたばれ蛇野郎ッ!)
 サトコは蛇が狙い通り開けた場所に出てきたのを見て魔術を発動する。サトコから放たれた風は刃となって蛇の体を襲う。風の刃はちょうど持ち上げた蛇の体の、その柔らかい腹部を切り裂き、蛇は地鳴りの様な音を上げて苦痛にその身を暴れさす。
「てめえに恨みは無い、だがここで倒れてもらうぜ」
 サトコが作ったチャンスを春日が見逃すはずがない。春日は一気に間合いを詰めるとマテリアルを自らのドリルナックルに込め、強く踏み込みながら拳を蛇の頭部に向けて繰り出す。真っ直ぐ、最短距離で放たれたパンチが蛇の頭部を捕らえる。
「役に立つかはわからんが、危なくなったときにでもこいつを使ってみろ」
 春日が依頼前に言われた言葉を思い出していた。その思いだけでも春日を後押ししてくれる。
 今まで受けたことの無い強打を受け蛇は一段と体を激しく動かす。普通の雑魔ならこれだけで十分に致命傷になったであろう。だが、恐るべきタフネスを持った坑道蛇はそれでもひるむことなく、攻撃を受けた頭部をもう一度突き出し、春日の頭目掛け頭突きを繰り出す。
 その蛇の姿を見た桜は、傷ついている自らの体をいとわず、すかさず意識を集中する。蛇の恐ろしさは他でも無い桜の身体に刻まれた。怖い、恐ろしい、死の恐怖に震えながらも、誰かを護るという一念で決して逃げ出さない。その思いがもたらしたものか、光が桜の身体から放たれ春日の体を覆う。
「ぐっ!」
 桜が放った光が春日の身を護る。だが、それでも止めきれない強烈な衝撃が春日に打ち込まれる。坑道蛇は桜にそうしたように、春日の身体に巻きつき締め上げようとする。春日は必死に身体をそらし巻きつかれるのは回避したが、その前に受けたダメージだけでも恐るべきものがあった。この頭突きだけでも、もう一度喰らえば一溜りもないだろう。
 めいは傷ついた春日の姿を見て、今度は春日を癒そうと精霊に祈りを捧げる。そのめいの小さな身体を見て坑道蛇は最も御しやすい相手と思ったのか、身体をひねるとめいに襲い掛かろうとする。
 しかし、めいの前には雪柳がいた。雪柳はめいの前に飛び出し、めいを護ろうと動く。その動きを目障りに思ったのか、蛇はターゲットをめいから雪柳に切り替え再び頭突きを繰り出す。
 だが、頭突きは空を切った。雪柳は宙を舞いひらりと華麗に蛇の攻撃をかわす。
「雪柳さん!」
 シエルは今度はマテリアルを雪柳に流し込む。雪柳のエストックの威力が増したところで、雪柳も祖霊の力をエストックに込める。
「でかいし、目障りなんだよ!」
 宙を舞った雪柳は叫びとともに上からエストックを思い切り蛇に突き刺す。その叫びを引き金に、サトコは風の刃を、桜は聖なる光の弾を飛ばし蛇に追撃する。二人の放った魔撃は同時に蛇を襲い、その身体を穿つ。
 二人は後ろに下がり蛇の姿が良く見えるところに位置取っていた。ここなら蛇を迎撃するように動く事ができる。雪柳が蛇の頭突きをかわした事で生まれた大きな隙に、カウンターでサトコと桜、二人の攻撃が加えられた。サトコが言っていた通り、ハンターたちが有利なのは数の多さ。その数を生かした的確な連携だった。
「これで終わりだ」
 痛烈な一撃を受けていた春日だが、めいの癒しの光を受けてその身体を立て直す。再び構えを取るとマテリアルを一気にドリルナックルに流し込み限界まで回転させる。そして再び踏み込むと、下から上に、上顎目掛け拳を突き出す。春日が放ったアッパーカットは蛇の顎を捉え、その頭を、そして脳を貫いた。


 坑道蛇は倒れた。あれほどの巨体の雑魔とつい先ほどまで激しい戦いを繰り広げた後だというのに、辺りは嘘のように静まり返っている。
 傷ついた桜と春日の身体をめいと、そして桜自身が癒していく。
「帰ったらひとっ風呂浴びたいもんだ、全く」
 春日はやれやれと言わんばかりに一言つぶやく。おびき出すために使った干し肉やツナ缶が転がっている。村の人々は、村で渡せるものなら使ったものは補充してくれると言ってくれた。ありがたく受け取る事にしようとそう思う。
 その頃シエルとサトコは坑道蛇がいた副道の中を照らし、あちこち探していた。二人の目的は犠牲者の遺留品の確保。一通りぐるりと見回したサトコは、地面にキラリと光を反射するものを見つける。サトコが密かに狙っていたお宝か、と見つけたものの元に向かうが、そこに落ちていたのは小さな丸い金属だった。
(っチ、クソシケたもんしか転がってねぇな)
 明らかに価値の無さそうなものに毒づきながら、サトコは拾ったそれをシエルに渡す。だが、シエルはその金属に小さな穴を開ける加工が施されていた事に気づいた。おそらく犠牲になった彼が首飾りか何かとして身につけていたものだろう。
「どうか、安らかに…」
 こんなものしか遺品は無いが、せめてこれを村に持ち帰り弔ってもらおう。そう思いシエルはそれをポケットに入れた。
「世に…平穏の、あらんことを…」
 一方、めいは祈っていた。自分たちが倒した坑道蛇に謝罪と祈りを捧げていた。世界が平和ならこんなことにはならなかったのに、とそう思う。大蛇を倒したのは自分たちであるけれども、それでも、命を失うことは悲しい。
 そんな落ち込んだめいの手を雪柳が引いていく。
「……僕達がやらなくても、いずれ他のハンターに殺されてたよ」
 めいの姿を見て、雪柳は慣れないなぐさめの言葉を掛ける他無かったのであった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 桜の光弾
    佐倉 桜(ka0386
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 夜煌の月
    シエル=アマト(ka0424
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • Sanctuary
    羊谷 めい(ka0669
    人間(蒼)|15才|女性|聖導士
  • 破れず破り
    春日 啓一(ka1621
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人

  • 雪柳・深紅(ka1816
    人間(蒼)|16才|男性|霊闘士
  • ライブラリアン
    サトコ・ロロブリジーダ(ka2475
    人間(紅)|11才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/14 20:14:24
アイコン 相談卓
佐倉 桜(ka0386
人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/07/19 18:08:34