ゲスト
(ka0000)
レア妖精を探しに
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/07/16 19:00
- 完成日
- 2015/07/23 14:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
七月某日。
八橋杏子(やつはしあんこ)は知り合いである花屋のドワーフベムブルから、耳寄りな情報を聞いた。
「妖精がたくさん住んでる谷、ですか?」
「うん。花の種の採集に行くときに通る場所なんだけどね。それが、あまり見ないタイプの妖精で……羽がちょっとコウモリみたいなんだ。丸っこくってね、チーチーって鳴くの」
杏子は自称画家である――ハンター業掛け持ちの。
ひとつ世間をあっと言わせるような作品を描いてみたい。常からそう考えている彼女にとって、ベムブルのこの話は、おおいに興味を引くものだった。
「どこにあるんですか、その妖精谷! 教えてください!」
熱意をもって詰め寄ってくる相手にベムブルは、人の良さそうな顔を曇らせた。
「うーん……君、体力に自信はあるかな?」
「体力ですか? そりゃもうばっちりありますよ。私こう見えてワンダーホーゲルに一時所属していたこともあるんです。ちょっとやそっとのことじゃへこたれません!」
「そう? なら教えてあげてもいいけど……自然を荒らさないようにね」
●
杏子は杖を手に山道を上っていた。
岩があちこち露出した山肌は傾斜がきつく、小石だらけ。分厚い革靴を履いていても足裏に響く。画材道具一式を入れたザックの紐が肩に食い込む。特にイーゼルとキャンバスが重い。
少し立ち止まって彼女は、ベムブルからもらった地図を確かめた。
在所の地名とつづら折りになった登山ルートが書き込まれている。そこまではいい。問題なのは距離の表記が適当すぎる点だ。『しばらく歩く』『少し歩く』『結構長く歩く』……全部こんな感じである。
(せめてどのくらい時間がかかるかを示してくれれば……っ)
何か考えていると疲れる一方なので、心を無にし足元だけ見、歩を進める。眺望を堪能する余裕もなく。
そうやって進んでいたところ、急に頭へ堅いものが当たってきた。
「いたっ! つ~」
一体何事かと足元を見れば、小石が落ちている。
ギィ! ググィ!
岩陰から顔を出したのは、コボルド達だ。
グィイ! ギィ!
どうやら荷物を狙っているらしい。石を投げつつ、じりじり近づいてくる。
杏子は杖を振り回し追い払おうとした。
「しっ! しっ! 向こうに行きなさい!」
そのとき小石が彼女の背負っている荷物に当たった。
これはコボルドたちにとって実にまずいことだった。画家にとって商売道具は命なのである。杏子の目付きが変わった。
「……何さらすんじゃアホンダラ!!」
杖の中から白刃が現れた――仕込み杖だったのである。
彼女は一番近くに寄ってきていたコボルドの喉を切り裂いた。悲鳴を上げ倒れる仲間を前に、コボルドの群れはいったん引いた。遠吠えをし、お頭を呼ぶ。
雑な革鎧を着込んだゴブリンが現れた。
どこで手にいれたものか、戦斧を手にしている。
●
ハンターたちの耳に、コボルドの鳴き声が聞こえた。
『コボルドが頻繁に畜舎や畑を荒らしている。追いはぎのようなことまでする。山のどこかにねぐらを作っているのに違いない。退治してくれまいか』という依頼を麓の町村から受け、山中探索に来ていた彼らは、急いで音が聞こえた方に向かった。そして、杏子とゴブリンが戦っている現場に出くわした。
仕込み杖の刃は鋭いが脆い。力押しな戦斧との相性は悪いようで、苦戦ぎみである。
八橋杏子(やつはしあんこ)は知り合いである花屋のドワーフベムブルから、耳寄りな情報を聞いた。
「妖精がたくさん住んでる谷、ですか?」
「うん。花の種の採集に行くときに通る場所なんだけどね。それが、あまり見ないタイプの妖精で……羽がちょっとコウモリみたいなんだ。丸っこくってね、チーチーって鳴くの」
杏子は自称画家である――ハンター業掛け持ちの。
ひとつ世間をあっと言わせるような作品を描いてみたい。常からそう考えている彼女にとって、ベムブルのこの話は、おおいに興味を引くものだった。
「どこにあるんですか、その妖精谷! 教えてください!」
熱意をもって詰め寄ってくる相手にベムブルは、人の良さそうな顔を曇らせた。
「うーん……君、体力に自信はあるかな?」
「体力ですか? そりゃもうばっちりありますよ。私こう見えてワンダーホーゲルに一時所属していたこともあるんです。ちょっとやそっとのことじゃへこたれません!」
「そう? なら教えてあげてもいいけど……自然を荒らさないようにね」
●
杏子は杖を手に山道を上っていた。
岩があちこち露出した山肌は傾斜がきつく、小石だらけ。分厚い革靴を履いていても足裏に響く。画材道具一式を入れたザックの紐が肩に食い込む。特にイーゼルとキャンバスが重い。
少し立ち止まって彼女は、ベムブルからもらった地図を確かめた。
在所の地名とつづら折りになった登山ルートが書き込まれている。そこまではいい。問題なのは距離の表記が適当すぎる点だ。『しばらく歩く』『少し歩く』『結構長く歩く』……全部こんな感じである。
(せめてどのくらい時間がかかるかを示してくれれば……っ)
何か考えていると疲れる一方なので、心を無にし足元だけ見、歩を進める。眺望を堪能する余裕もなく。
そうやって進んでいたところ、急に頭へ堅いものが当たってきた。
「いたっ! つ~」
一体何事かと足元を見れば、小石が落ちている。
ギィ! ググィ!
岩陰から顔を出したのは、コボルド達だ。
グィイ! ギィ!
どうやら荷物を狙っているらしい。石を投げつつ、じりじり近づいてくる。
杏子は杖を振り回し追い払おうとした。
「しっ! しっ! 向こうに行きなさい!」
そのとき小石が彼女の背負っている荷物に当たった。
これはコボルドたちにとって実にまずいことだった。画家にとって商売道具は命なのである。杏子の目付きが変わった。
「……何さらすんじゃアホンダラ!!」
杖の中から白刃が現れた――仕込み杖だったのである。
彼女は一番近くに寄ってきていたコボルドの喉を切り裂いた。悲鳴を上げ倒れる仲間を前に、コボルドの群れはいったん引いた。遠吠えをし、お頭を呼ぶ。
雑な革鎧を着込んだゴブリンが現れた。
どこで手にいれたものか、戦斧を手にしている。
●
ハンターたちの耳に、コボルドの鳴き声が聞こえた。
『コボルドが頻繁に畜舎や畑を荒らしている。追いはぎのようなことまでする。山のどこかにねぐらを作っているのに違いない。退治してくれまいか』という依頼を麓の町村から受け、山中探索に来ていた彼らは、急いで音が聞こえた方に向かった。そして、杏子とゴブリンが戦っている現場に出くわした。
仕込み杖の刃は鋭いが脆い。力押しな戦斧との相性は悪いようで、苦戦ぎみである。
リプレイ本文
ゴースロンに跨がった岩井崎 旭(ka0234)。同じくゴースロンに跨がるメリエ・フリョーシカ(ka1991)。後者の鞍の後ろには何 静花(ka4831)が積まれている。
ハンターなのに虚弱という矛盾した体質である彼女は、山歩きを始めて数時間後倒れ、このように荷物となっている次第。ユキヤ・S・ディールス(ka0382)はひっきりなしカタカタ震えている静花が心配になり、歩きながら声をかける。
「あの、大丈夫ですか?」
「山、道は……」
台詞の途中で盛大に咳き込み吐血する静花。目はどんよりと曇り、顔色は土気色。死相が出ている。
ノアール=プレアール(ka1623)と三鷹 璃袈(ka4427)の脳裏に「この人、これで戦えるのだろうか」という懸念がよぎった。
ガーレッド・ロアー(ka4994)は最後尾。持参したバイクの後輪をうっかり窪みに落ち込ませ、手押しで抜け出させているところ。手伝うジルボ(ka1732)がぼやいている。
「そもそもバイクで山道を駆けようってのが無茶だったんじゃねえか?」
「そんなこたねえよ。リアルブルーにはモトクロスってえ競技があってだな……」
山は静かである。一行の立てる音以外に、音らしい音はない。嘆息しながら璃袈は、周囲を見回した。
「はぅ~……山のどこか、とは言っても探す範囲が広すぎて。何か取っ掛かりが見つかればいいのですけれど……」
そのときけたたましい鳴き声が聞こえてきた。コボルドの声だ。
「飛んで火にいる……とはこの事ですかね! ジール!」
メリエは愛馬に拍車をかけた。旭もまた。2頭のゴースロンがいななき、先を争って走りだす。積まれている静花はずり落ちそうだ。脱輪を戻したガーレッドは、アクセルグリップを回す。
●
杏子は押されていた。背後を取られないように、そして荷物に手を出されないように、岩壁を背に戦っていたのだが、右にも左にも動けなくなってしまっている。
疲労がそのまま隙となり手傷の数となる。勝利を確信したゴブリンは醜い顔を歪め笑い、周囲ではコボルドがうるさく囃し立てている。
そこへ嵐のように、メリエが飛び込んできた。
「メリエ・フリョーシカ! 義によって助太刀いたーす!」
ジールの蹄がコボルドたちを蹴とばし踏み付け、あっと言う間に散らしていく。
「危機一髪でしたね! こいつら最近、一帯を荒らしまわってるって連中なんですよ!」
旭は真っすぐゴブリンの元までシーザーを駆けさせた。
ボロフグイの一撃がゴブリンを弾き飛ばす。
「よう、襲われてるみてーだったから勝手に割り込んじまった。無事か?」
杏子は頬の血を拭い、息を切らしながら答える。
「大丈夫……ありがとう」
弾き飛ばされたゴブリンが起き上がり、怒りも露に向かってくる。
璃袈は杏子に駆け寄りワンドをかざした。斧の一撃を受け止めた光の盾が、ガラスのように砕け散る。
「ご無事でしょうか? あたし達は、このあたりに住み着いたっていうコボルトの退治に来たんですけれど……」
口早に言いながら璃袈は、杏子のいで立ちを確認する――山賊退治のために来ているのではないのは明らかだ。一体何しにこんな山奥にへ。そのあたり確かめたいが、ゴブリンと対峙している今、そんな暇は無さそう。詮索は後回しだ。
立て続けに雷を放つ璃袈に旭が加勢する。槍の動きと射るような眼差しで相手を威圧する。手下へ指示を出させないように。
「さあ、どうした。かかってこい! さあ!」
彼らがそうしている間にユキヤは、杏子の治癒に当たる。
「僕たちは、コボルトを掃討しに来たハンターです。助太刀……しますね」
傷は多いが深いものでは無い。大丈夫、ヒールで間に合う。
「怪我は、平気ですか?」
手から生まれた柔らかい光によって、傷がたちまち塞がって行く。
「――ええ、すっかり!」
勢いを取り戻した杏子は仕込み刀を振るい、再度ゴブリンに向かう。今度は璃袈と二人掛かりの攻撃だ。
●
コボルドたちの側面を、ガーレッドのファイアスローワーが襲う。
「俺は別次元からやって来た男ガーレッド・ロアーだ。女を集団で襲うとはふてぇ野郎共だ、ここで成敗してやる」
炎が腕の動きに連動し広がる、閉じる。コボルドの群れを包みこむ。数匹が巻き込まれる。
おののき方向転換しようとする輩の前に、ジルボが銃弾を浴びせる。
「人だろうが亜人だろうが賊は賊だ。そりゃあ撃たれても文句は言えないぜ?」
銃声。はじかれたように倒れるコボルド。
弾を避け岩陰に潜ろうとするところにユキヤが、セイクリッドフラッシュを放つ。その上ノアールが俊足で回り込んでくる。
「んもう、逃さないわよー?」
宙に生じた三角形から光線が放たれ、対象を貫いた。
1匹たりとてコボルドを逃がすつもりなどない。下手に取りこぼすと、懲りずにまた悪さをするに決まっている。こういう場合は根絶やしが一番だ。
「ふおおおおおおおお!」
獣のような咆哮を上げているのは静花だ。覚醒した彼女は見違えるように活動である。パイレーツアックスを振り回し首を刈って行く様は、鬼気迫るとしか言いようがない。
コボルドたちはうろたえ、恐怖し、手当たり次第石を投げる。メリエはそれを盾で弾き、突っこみ、切り捨てて行く。
「人と共生出来ないなら、力ある者が残る。自然の摂理だな! どちらが残る? お前等か……? 私達か? それは、結果が教えてくれるだろうさ!」
コボルドたちは頭目へ助けを呼ぶ。だがその肝心な頭目自身が苦戦中だ。自分の命も危ういのに他を助ける余裕などあるわけがない。
たじろぐ鼻面を捕まえガーレッドは、容赦なく拳をたたき込む。機導剣で刺し貫く。
●
杏子の刃がゴブリンの片目に刺さった。
「ギャアアッ!」
激痛に斧を取り落としたゴブリンは、目を押さえ背を向け逃げ出した。
生き残った数匹のコボルドたちが、我先に頭目を追いかけ始める。
これは願ったりだ、とユキヤは思った。四散して逃げられるより固まって逃げられた方が追いやすい。
(頭目が逃げ込むところなら、必ずねぐらのはず……!)
ハンターたちは追跡を始める。道なき道をものともせずに。ノアール、ジルボ、瑠璃は、駆けながら発砲し続けた。音で気を散らし、考える余裕を与えないために。当たる当たらないは二の次だ。
――行く手から鋭い悲鳴が上がった。追いついてみれば、頭を叩き割られたコボルドの死骸が転がっていた。ついて来られると居場所が分かってしまうということで始末されたらしい。哀れと言えば哀れだが、ゴブリンにおけるコボルドの扱いというのは、大体こんなものだ。
ジルボは銃口で地面を指し示す。
「アホだなー。余計なことするから血の跡がついちまってるぞ」
メリエはふん、と鼻を鳴らす。
「いわゆる浅知恵という奴ですね」
斧から落ちたのだろう血を追うと、洞穴に行き着いた。入り口が中から岩で塞がれている。
「これで隠れたつもりか……見くびられたもんだな」
顎から下を真っ赤にした静花が、がっぷり岩に取り組んだ。こめかみの血管が盛り上がる。
「う おおお お お おおお!」
重い音を立て岩が動いた。静花は倒れた。
「あ゛ー……死にそう」
活動時間の限界が来たらしい。
息詰まる間を置いてゴブリンが、暗がりから飛び出してくる。迎え受けたのはメリエの重い一撃だった。脳天が砕け脳漿が飛び散る。
声も上げられないまま崩れ落ちる亜人。ガーレッドは人差し指と中指を立てて目じりに添え、はなむけの言葉を送る。
「次元の彼方でまた会おう!」
本当に死にそうな様子の静花に、ユキヤが急いでヒールをかける。
「取り合えずは、こんな所でしょうか……一応ねぐらの中も見てみますか? まだ残党が中にいるかも知れません」
「そうだな。確認はしてみた方がよさそうだな」
言いながら旭は、持ち込んできた松明に火をつけた。
ハンターたちは――のびている静花を除き――洞窟に足を踏み入れた。独特の獣臭と生活臭が鼻をつく。残党はいない。倒して来たものがすべてだったようだ。その代わり、幾らかの金品が奥に隠してあるのを見つけた。金貨、銀貨、銅貨に、きらきらとした装身具。
旭は頭をかいた。
「これは……どうするべきだろうな。ハンターソサエティに持ち帰るか、依頼者のかたがたに引き渡すべきか……俺たちのものには出来ないよなあ、明らかに盗品だし」
「うーん……依頼者の方々に引き渡した方がいいんじゃないでしょうか? どの道この近辺で盗んだものでしょうし」
そう言って璃袈は、ふと杏子に顔を向けた。
「それにしても、八橋さんはどうしてそんな大荷物で登山なんて……?」
「え? ああ、これね。いえ、絵を描きに行くところだったんです。私、画家をやってまして」
メリエは感嘆の声を上げる。
「画家さんですかぁ。凄いですね。私、絵とかそういうのって得意じゃなくて。じゃあ山の絵を描きに来たんですか?」
「いいえ、違うのよ。実は――」
杏子はこれまでの経緯をかい摘まんで説明する。研究者肌のノアールが、激しく食いついてきた。
「レア妖精……!? そんなものが居るのね……。妖精はマテリアルと密接な関係をもつもの。ものすごく興味をそそられるわー。絶対に見に行かなくちゃ」
メリエは、興味深げに聞き返す。
「かわった妖精……じゃあ、それを題材にするって事ですか?」
「ええ。聞く限りまだ誰にも描かれていないみたいだから」
「でも……まだ賊の生き残りや残党もいるかもしれませんよ?」
「……それでも行かなきゃいけないのよ。そこに新しい画題が有る限り!」
意志を曲げる気はつゆほども無さそうだ。そう見て取った旭は、妖精谷までの護衛を申し出た。
「ここまで来たらついでだからな。荷物、シーザーに乗せてもいいぜ?」
「え、いいんですか。結構重たいですよ」
「なあに、こいつにとってみたら軽い軽い」
愛馬の首筋を叩いて笑う彼に、杏子がペコリと頭を下げる。
「ありがとうございます!」
荷を下ろした彼女に、メリエが誘いかける。
「そうだ、相乗りしますか?」
「相乗り、ですか? えっと……私馬に乗ったことがないんですけど、大丈夫でしょうか」
「もちろん。簡単ですよ」
そこにカアカア騒がしい声が聞こえてきた。振り向けば倒れたままの静花にカラスが集団でたかっている。
ユキヤと璃袈は追い払いにかかった。
「駄目です、彼女は死んでません、まだ死んでませんから」
「向こうに行ってくださーい」
振り回される杖に逃げて行くカラス。
ジルボは静花の前に座り込み、指をかざす。
「何本か分かるか?」
「……3本……」
「いや、1本だぞ?」
「……あれ……おかしいな……確かに4本……見える……」
ガーレッドは静花を持ち上げ、バイクの荷台に乗せた。こんな状態の人間を放置して先へ進むわけにはいかない。
「ずり落ちないようにしてくれよ」
「……ありがとう……ガハッ! ウェゴホゴホゴホッ! ゲハァァ!」
「おい、本当に大丈夫なのかよ、あんた……」
とにもかくにも出発だ。
杏子から地図を貸してもらった旭は、意気揚々先頭を受け持つ。
「よし、行先は大体わかった。んじゃ行くか! この先を左だ!」
「旭さん違います、逆です。進むのは右です」
彼は方向音痴だが、間違えるつど杏子から訂正が入るので問題はない。
メリエはまだ見ぬレア妖精について、あれこれ想像を巡らせる。
「どんなのなのか、興味ありますねっ! イカしてたら一緒に来ないか交渉しようかなぁ」
●
つづら折りの山道を通り過ぎ、ほぼ垂直な山肌に沿った細道を通過し、一同は妖精谷にたどり着く。
険しい断崖に挟まれた谷間は鮮やかな緑。谷底にある澄んだ湖は空の色を映す青。絵にかいたような風景だが、肝心なものが欠けている。
「……花咲いてねえな」
ジルボが言うとおり、花が咲いていない。見ればどれもまだ蕾の状態だ。
杏子が惜しそうに言う。
「ちょっと時機を外しましたかねえ」
花咲き乱れる様を想像していたメリエも、少々拍子抜けしてしまう。しかし本来の目的は妖精捜しである、と気持ちを切り替える。
「どこにいるんですかね。見たところ1匹も飛んでいませんが……」
ノアールはスケッチブックを片手に調査を始めた。谷の植物は形状こそさまざまであるが、全体的に大型だ。人の背丈を越える群落がちらほら見受けられる。
「こんなに大型化するということは、マテリアルが豊富なのかしら……あら?」
葉の陰に丸いものが並んでぶら下がっている。羽根と葉にしがみついている足以外はコウモリでなく人型。頭身の低さやふくふくぶりは、パルムに相通じるところがある……。
「皆さーん、妖精さんがいましたよー」
ハンターたちが集団で寄ってきても、妖精たちは微動だにせず目を閉じている……寝ているらしい。
「……なんだこりゃ」
ジルボが試しにつついてみると、うるさそうに体をもぞつかせ、チーチーチー、と鳴いた。でも逃げない。寝ることに固執している模様だ。
旭は呆れ顔をする。
「相変わらずよく分かんねー生き物が出てくる世界だよなぁ。にしてもこの妖精、可愛いのか?」
「かわいいと思いますよ。おもちみたいで」
「いいゆるキャラぶりですよね」
メリエと璃袈は妖精が逃げないのをいいことに、頬をぷにぷにつつき、ぺちぺち羽根で叩かれる。
ガーレッドは、優美とはとても言えない容姿について、こう結論づける。
「まあ、妖精というイメージからはちと外れてるが……これはこれでありなのかも知れないな」
ユキヤは空を見上げた。
日は傾き夕暮れが訪れようとしている。ハンターが9人も揃っていれば危険があるということはまずないだろうが、ライトでも持ってきたらよかったろうか――等考えていたところ、不意に涼やかな香りがしてきた。
視線を地上に戻し、驚く。
「――あっ」
バイクの傍らで横になっていた静花は、かすんだ目で周囲をぼんやり眺める。
(……また幻覚が見える……)
夕日が山の端に沈んでいくに従い、次から次へと谷の花が開いていく。どの花も微光を帯びていた。夜が濃くなるにつれ、その光は一層強くなって行き、谷全体を優しく照らし浮かび上がらせる。
チ。
チーチー。
妖精たちが起きてきた。羽を開き、飛び始めた。
ノアールは得心する。
「なるほど……この谷のものは全て夜行性なのね」
湖の底からも光が浮かぶ。瑠袈は近寄り覗き込む――水の中にも花が咲いていた。
「きれい……」
創作意欲を刺激された杏子は、イーゼルを組み立てる。
ジルボはハーモニカを取り出し吹き始めた。パルムが寄ってくる。妖精も寄ってくる。
(とっ捕まえて見世物にでもすりゃ良い金になるだろうに……ど~にも気が乗らん)
お人よしたちに感化されている自分に軽い歯がゆさを覚えたジルボは、手に取った丸っこい妖精をグニグニ弄る。羽でぺちぺちされながら。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談 何 静花(ka4831) エルフ|14才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/07/16 02:16:00 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/16 02:10:54 |