アンナの女子会日誌

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2015/07/18 15:00
完成日
2015/07/28 00:18

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「ホープでの復興支援任務、ご苦労だった」
 復興活動を終えてヴァリオスへ帰還していたアンナは、いつものように大佐の執務室へと呼び出されていた。
 アンナはその言葉に短い返事と敬礼で返すと、真っ直ぐに大佐の瞳を見遣る。
「それで、復興の方はどうだね」
「比較的順調に進んでいるかと思います。先の戦い以降、ホープに手を掛ける歪虚も息を潜めておりますし……残る部隊と、現地の他国の兵達との力で、十分回復は見込めるでしょう」
「なるほど、それは何よりだ」
 大佐はそう言って1つ頷くと、なにやら机上の書類に判を押し、それをアンナの方へと手渡す。
「1ヶ月あまりの長期任務の直後だからな、キミ達の部隊に休暇を与える。ゆっくり英気を養いたまえ」
 そう言いながら手渡された用紙には、以下の隊、以下の者に対し、休暇を与えるという旨と共に、その期間が記されていた。
「ありがとうございます。慣れない地での任務に部下も疲れきっているようですので、きっと喜ぶ事でしょう」
 返事を返したアンナに大佐は目を細めて頷くと、「話は以上だ」と彼女を下がらせる。
 一礼の後、部屋を出て行ったアンナの背中を見送って、椅子の背もたれに深く体を預ける。
 窓の外に目をやると、隊長の帰りを待つエスト隊――そして愛する愛娘が、せっせとランニングに励んでいる姿が目に入った。
「しっかりと、英気を養って欲しい。それが終ったら……そろそろ、大きな事件を扱って貰わなければならないからな」
 その言葉はまるで自分自身に言い聞かせるかのように、深い吐息と共に吐き出されていた。
 
「――と言う事で、休暇を与えるようにとの大佐からの命令だ。各自、十二分に疲れを取るように」
 訓練場で部下達を集めたアンナは、先ほど大佐に渡された書類を示しながらそう告げていた。
 少年少女達はその言葉に目に見えて色めき立ち、小さくガッツポーズを作ってみせる。
「っしゃぁ、丁度新しい剣が欲しいと思ってたんだぜ! 今のじゃ軽くってな、フマーレの工房まで探しに行けるぜ!」
「僕も、溜まっていた本を読む機会が出来てありがたいよ。この1ヶ月は辺境に持っていく事が出来た分しか読むことが出来なかったからね」
 バンとピーノ、エスト隊の少年2人は各々決まった予定があるようで、口にしては同時に大きなため息を吐く。
「今日の訓練も切り上げる事とする。たまにはゆっくり休むと良いだろう」
 そう告げて、訓練場を立ち去ろうとするアンナを、フィオーレが背後から呼び止めていた。
「あ、隊長~。お休みの間、予定はあります? 彼氏と会うトカ」
 そう、どこか白々しく聞くフィオーレに、アンナは「いいや」と首を振って答えた。
「良かった~。じゃあ、買い物付き合ってくれません? 化粧品、そろそろ切れそうなんですよ~」
「別に構わないが……一人で行けないものなのか?」
「えー、彼氏居るならまだしも、女一人で買い物とかどれだけ寂しいニンゲンなんですか。あり得ないですよ、アリエナイ」
 大事なことなのか2度繰り返して言うその言葉に、アンナは小さく咳払いをして言葉を濁す。
「あ、ついでに、ブランドの新商品見て回りましょうよ。今年のデザイン、すっごい可愛いの。それからそれからー、裏通りに出来たカフェがとってもお洒落で、ケーキが美味しいらしいんですよ」
「それは……全部行くのか?」
「勿論ですよ、何言ってるんですか~!」
 あっけらかんとして答えるフィオーレに、アンナはため息混じりに頷いた。
「……まあ、良いだろう。私も、買い足さなければならない消耗品がいくつかあったと思う」
「やったー、決まりですねっ。お休みは隊長と女子会ね~」
 そう言って喜ぶ彼女を前に、まあ悪い気もしないアンナであったが……問題は約束をしたその日の夜の事であった。

 自室で休暇の事を思っていたアンナ、ふと考えた。
 そう言えば……こうして上司と部下、先輩と後輩のような形でプライベートで誰かと接するのは初めてのような気がする。
 友人とならば勿論あるが、プライベートとは言え、上司と部下であることには変わりは無い。
 かと言って、外まで軍のノリを持ち出しては、せっかくの休暇も台無しだろう。
 自分にとっても、彼女にとっても。
 とは言え、そのラインを計れるほどアンナは軍務経験は豊富ではなく、しかも相手はあの大佐の娘。
 プライベートである以上は、自分と彼女の関係は「娘と、その父の部下」でもあるハズなのだ。
 そんな事を目くるめく考えていたら、次第にフィオーレに対する対応の仕方さえもあやふやになってしまい、終いには頭を抱えて深く考え込むようにすらなってしまった。
 そもそも、思えば自分は彼女とまともに仕事以外の話をした事が無い。
 彼女の趣味も、好みも、私生活も、その行動パターンも、全く持って知らないのだ。
 唐突に訪れた、仕事だけが繋いで来たその関係に一石を投じるこの場面。
「……どうしよう」
 最後にそう口にして締めくくったアンナは、手短に支度を済ませて部屋を出る。
 とりあえず誰かに相談しよう、そう思って、依頼の斡旋で世話になっているオフィスの受付嬢のもとを訪れるのであった。

リプレイ本文

●行きずりショッピング
「――と言う事で、この方々に同行して貰う事になった」
 集合先の同盟軍本部前に集まったハンター達を前にして、アンナ=リーナ・エスト(kz0108)は部下であるフィオーレに対する状況の説明に追われていた。
 まあ、それもその筈。
 急に見ず知らずのハンター達が買い物に同行する事になったのだから、戸惑わない方が無理と言うもの。
「まぁ、そう言わずに。魅力的な子たちとデートができる機会なんだ、荷物持ち程度にでも同行させて貰えれば嬉しいな」
 そう言ってニコリと薔薇の映えそうな笑みを浮かべるイルム=ローレ・エーレ(ka5113)に、フィオーレはドキリとしながらコクリと頷く。
「まぁ、そう言う事なら良いけれど~」
 ふわふわウェーブの髪をくるくると指先で弄びながら、フィオーレは仕方ないなぁと言った口調で口を尖らせる。
「私、同盟の生まれだけどヴァリオスってあんまり来た事なくてさ」
 口にしたタラサ=ドラッフェ(ka5001)は賑わう街並みの方へと遠く視線を向けて、まだ見ぬ街へ想いを馳せる。
「――お待たせしましたー!」
 タラサに釣られ街の喧騒に皆の意識が取られた時、不意に元気の良い声が集合場所へと響き渡った。
 同時に、水城もなか(ka3532)がフィオーレの背中につつっと指先を走らせ、フィオーレもまたびくりと飛び上がるようにして悲鳴を上げる。
「も、も~、何なのよ~!?」
「あらあら、最近物騒ですから、これくらいの気配気づいてくれないと安心して街の平和を任せられませんよ?」
 拳を振り下ろして抗議するフィオーレに、苦笑しながら笑いかけるもなか。
「だってオフだもの~!」
 プリプリと怒るフィオーレを前にして、アンナが「すまない」と言った視線をもなかへと送る。
 もなかもまた、「良いんですよ」とアイコンタクトで言葉を返すとぐいと拳を振り上げた。
「さてさて、それじゃあ買い物に行きましょう♪」
 いざ、エスト隊女子とハンター達の行きずりショッピングへ。

●ショッピングは心の活力
「ところでたいちょー、体調いかがー?」
 へそ出しTシャツ&ホットパンツという夏真っ盛りの格好でティナ・レミントン(ka2095)はアンナへと問いかける。
「ああ……帰りはまた地獄だったが、こちらに戻ってからは健康そのものだ」
「それは良かったです~、えいっ☆」
 満面の笑みで、がしりとアンナの右腕に絡みつくティナ。
 アンナは若干驚いたように身を強張らせるも、同性なのだからそう邪険にするものでも無いと好きにさせる事にする。
「アンナってそういう趣味だったの?」
 その様子を見て、からかうように唇の端を上げるクリス・クロフォード(ka3628)。
「そういう意味じゃない……!」
「そうですよ、これがフツーなのよフツー! 他にも可愛い女の子ばかり……おっと、鼻血が」
 立て続けに答えるアンナとティナだが、同意している割にはその意には差がある様子。
「それにしても、誰かと一緒に買い物なんて久しぶりだわ」
 白金 綾瀬(ka0774)はどこか言葉の端を弾ませた様子で、歩調にもやや抑え込んだようにではあるが、楽しげなそれが伺える。
「そうですね。今日だけは仕事を忘れて、存分に楽しんじゃいましょう!」
 そう意味深に音頭を取りながらも、アンナの傍で声を潜めるもなか。
「気苦労心中お察しします……でも、今日は気にしなくて良いんじゃないですか?」
 言いながらちらりと後方のフィオーレへと目を配る。
「きっと彼女も、1人の女性としてのアンナさんと楽しみたいのだと思いますしね」
「……ああ」
 その言葉に、アンナは曖昧ながらも小さく返事を返すした。
「――あー、ここよ。私の行きつけのお店なの~」
 話題の最中に響いたフィオーレの声に、どきりと反応するアンナ。
 立ち止まる一行の前には、小さいながらもいかにも豪奢な作りのコスメショップが店を構えていた。
 中に入ると店員らしき女性店員と、所狭しと並べられた香水や化粧品の数々が出迎える。
「アンナ君は香水を付けたりしないのかな?」
「持っていない訳では無いが、任務中は意図的に付けないからな……」
 人間、郷に入れば染まるものである。
「なるほど。じゃあ、フィオーレ君はどんな香水が好みだい?」
「う~ん、私はこのブランドの19番。これがお気に入り~」
 言いながらテスターのボトルを手に取り、ハンカチにシュッとひと吹き。
「フィオーレ君の名前にピッタリな一品だね。となると……アンナ君に綾瀬君。雰囲気の近い君たちにはこの辺りなんてどうかな?」
 そう言って、テスターボトルを手に取って2人へ手渡すイルム。
 ひと吹きして広がる、スッキリとした柑橘の香り。
「いい香りだな……気持ちも落ち着きそうだ」
「でも、猫には嫌われてしまうかも……」
 好印象ではあったが、ポツリとつぶやくように口にした綾瀬。
「ティナ君もフィオーレ君のようなフローラルな香りが合いそうだね。クリス君は落ち着いたシプレー。タラサ君はスパイシーでエキゾチックに。もなか君は優しいジャスミンなんてどうだろう?」
 すらすらと、お似合いの香水を見立ててゆくイルム。
 たちまち、華やかな香りが一行を包み込むこととなっていた。
「次は服! 服見に行きません?」
 言いながらアンナの腕を引っ張るティナに先導されるように、一旦店を後にする一行。
「服ならこことかおすすめよ~」
 フィオーレが指差したのは、見たところ服やアクセサリーを広く扱った複合店のようなお店であった。
「たいちょー、部下の心を掴む為にはギャップ萌えも必要……ですよ☆」
 アンナを店内連れまわしながら、ティナは手当たり次第に目についた服を彼女へと合わせてゆく。
 が……その目につく服が、その、とても際どいものばかり。
「いや、あの、もう少し普通の服をだな……」
「あと、会話の語尾に『☆』を付けると良いですよ~。それだけでフェミニンな会話に☆」
「ま、まてまて、それはそもそもどういう原理で出してるんだ……?」
 言いながら自ら「☆」を付けて話して見せるティナであったが、悲しいことに生真面目か、マジレスで返されてしまった。
「う~ん、私にはちょっと縁が遠いわね。この後、露店でも回ってみたいわ。あなたは、何か気に入ったものとかある?」
 服と値段とを見て苦笑するクリスは、ぼーっとしていた綾瀬に問いかける。
 綾瀬はその言葉にハッとすると、きょろりと辺りを見渡して、マネキンに着せられていたマーメイドラインのドレスに手を触れる。
「こういう、キレイ目かしらね」
「あ~、それ。今年の流行なのよ~。女らしく上品なデザインが、今年のテーマみたい」
「なるほど、似合いそうよね」
 クスリと笑みを浮かべるクリスとフィオーレを他所に、小さく息を吐く綾瀬。
 流し見る視線の先に映る、ひらひらとしたワンピース。
 スカートの裾にあしらった猫の刺繍が何とも可愛らしい。
(可愛いなぁ……後でこっそり試着しに来ようかしら)
 そんな彼女の本心を知る者は居ない。
「これ、咲蛍だったっけ……もうアクセサリーのモチーフになってるんだ」
 タラサが手に取っていたのは銀細工で出来たブローチ。
 春のお祭りで話題になった「咲蛍」をモチーフにしたそれは、特徴的な光る花弁部分に宝石を配し、光に当てるときらきらと輝くように作られていた。
「イルム、これなんかあんたの髪には合いそうじゃないか?」
 言いながら、隣にあった白い花の髪飾りをイルムへと当てて見せる。
「これは良いね、素敵な見立てだ。じゃあお返しに……タラサ君にはこのドレスとか」
 そう言ってイルムがずいと差し出したのは真っ赤に染まったバックレスのドレス。
「いやいやいや、そんなひらひらしたのなんて……ほら、私だいたいこういう服を着ているし」
「そうかな? 似合うと思うのだけどね……」
 どこか残念そうなイルムを前に、タラサが安堵の息を吐いたのは言うまでもない。
 
●ちょっと一息
 一通り目ぼしいお店を散策し終えて、一行はフィオーレに釣られるようにして路地にある小さなカフェへと足を運んでいた。
 最近できたばかりというそのカフェは、どこかおとぎ話のような小洒落た空間を演出する可愛らしいもので、見るからに女性ウケしそうなものである。
 そこでおすすめのケーキセットと、タラサの要望で頼んだピザを摘まみながら一時の語らいに花を咲かせる。
 ……さて、女6人(正確には違うが)集まれば何の話が始まるだろう。
 それはもう、決まりきったものである。
「たいちょーに変人はいますか~? ……あ、違った。恋人だったわ」
 そう話を切り出したティナは、自分のケーキの先を小さく切り分けながら手を添えて「こっちの、美味しいですよ~」と隣のもなかへと薦める。
 それを彼女がパクリと食べて「美味しい~」と顔を綻ばせると、今度はもなかのケーキを、口をあーんと空けてせがむのである。
「これは………間接キスということになるな!」
 食べさせてもらったケーキを粗食しながら言い放った言葉は取りあえず置いておいて、話を振られたアンナは小さく首を横に振った。
「居ないな。もちろん、あちらの世界にも」
「勿体ないわよね~。あ、でも隊長と付き合う人は大変かも~?」
 そうコメントしたフィオーレの言葉にアンナは押し黙ってしまい、何とも言えない空気が流れる。
 もちろん、フィオーレ自身はお構いなしだが。
「なら、みんなの恋愛観なんてのを聞いてみたいね。ああ、ボクは魅力的な子とならいつでも大歓迎さ!」
 そう言って、ウェルカムと胸元を両手で指し示すイルムに、他のハンター達もうーんと唸りを上げた。
「なんつーか、私の場合誰かと恋仲になったってことがなくてねえ……ただまあ、元気だったり豪快な性格の奴が好きだよ」
 ぽりぽりと頬を掻きながら答えるタラサ。
「私は恋愛はしないと決めてます。想い人なんかできちゃったらいろんな決意が鈍りそうですし……その人を悲しませたくないじゃないですか」
 そう答えたもなかの言葉はまさしく軍人然としたものであったのだろうか、死と隣り合わせで生きていく自らを省みて、どこか言い聞かせているようにも見える。
「私らばっかりじゃなくてさ、アンナやフィオーレはどうなんだ? 好みのタイプとか」
「私は~、やっぱり白馬に乗った王子様が良いかなぁ~」
 タラサの言葉にフィオーレはそうふわりと答えると、ちらりとイルムに目配せ。
「私は……そうだな。仕事を半分、何の憂いもなく任せられる人が良いな」
「それ、ただの仕事のパートナーよね」
 突っ込む綾瀬に、どこかバツが悪そうに「そうだろうか?」と聞き返すアンナ。
「じゃあじゃあ、この中で、どの女の子が一番好みですかあ? あたしは勿論――」
 言いながら、流し目気味にアンナにウィンクするティナ。
 アンナはしばしその言葉の意味を計りかねていた様子だったが、小さく一つ唸った後に、口を開いた。
「気配りができるという点では……イルムだな。こういう同僚が居れば気兼ね無く仕事に専念できるのだが……ああ、勿論、異性として見るならまた話は別だ」
「え~!?」
「え~!?」
 間髪入れずに響くティナとフィオーレの抗議の一言。
 その抗議の意味は別のものであっただろうが。
 ちなみに、おそらくアンナがイルムを異性として認識しているのであろう事は別の話として置いておいて、イルムは「光栄だね」と恭しくほほ笑みを返していた。
 
●女子会の先に
 腹と胸を満たし、再び街へと繰り出した一行は、先ほどアタリを付けた目ぼしいものを買い回って居た。
 増える荷物に比例して、軽くなってゆく心の重り。
 買い物はストレス発散――女の子の重要素だ。
「いい値段したけどさ、たまにはいいよな」
 ブローチの入った小箱を手に、満足げなタラサ。
「今日買った服で、今度は二人っきりでデートしましょうねっ☆」
 言いながらティナは再びアンナの腕に絡みつく。
 何というか、本人が幸せそうならそれで良いのかもしれない。
「ふふふ、ジェオルジ産の良いハーブが買えてよかったよ。帰ってから、早速ソープを作らないと」
 こちらも満足気にハーブの束の入った籠と、みんなの荷物を持ちながら、充実したようにほほ笑むイルム。
「と、そうだ……綾瀬君とアンナ君にこれ」
 思い出したように、2つの包みをそれぞれ手渡すイルム。
「こ、これって……」
 包みの中身を見てドキリと、胸を高鳴らせる綾瀬。
 これは、先ほどのお店で見つけた猫の刺繍のワンピース――
「物欲しそうな視線を向けていたからね……お節介だったかな?」
「あ……いえ、その、友達がこういうの好きだったから。でも、せっかくだし頂いておくわ」
 言いながら、自分の手に持った紙袋へとしまい込む。
 ちなみに、紙袋の中は皆の目を盗んで買い漁った猫グッズで一杯である。
「私のこれは……先ほど薦めて貰った香水と、こっちは――」
 2つある小瓶のうちのもう一方を手にして、僅かに目を見張る。
「フィオーレ君が好きだって言ってたものさ。たまに使ってあげると、話題もできるんじゃないかな?」
「……ありがとう、礼を言おう」
 イルムの気遣いに、小さく頭を下げるアンナ。
「人間関係なんて、勝手に出来ていくものよ……気にしすぎるとギクシャクしちゃって、それがずっとってこともあるわ」
 香水をバッグに仕舞うアンナの隣にそっとクリスが寄って、囁くように口添える。
「最初はいつも通りで良いの。数回重ねれば、そのうち行き着くべき関係に収まるから」
 人と接するってそういうものだからと、クリスは説く。
「そう……なのだろうな。確かにそれは、世界も立場も違っても、変わらないものなのかもしれない」
「なんなら、暇な時に私で練習してみる? 誘ってくれるなら大歓迎よ。奢ってもらった分も返したいし」
 頷き返すアンナに、そう言って笑みを浮かべるクリス。
「機会があれば……友人として、な」
 隣のティナを見やって、言葉を付け加えるアンナであったが……イルムの性別を見抜けない彼女に、クリスの真実も見抜けるわけはなかっただろう。
「さ~て、みなさん街を歩き回ってお腹、空きませんか。良いお店、知ってるんですよ~!」
 タイミングを見計らったかのようにして、一行を振り返ってそう提案するもなか。
「いいね。摘まんだピザじゃ、ちょっと足りなかったところだ」
 お腹を摩りながら答えるタラサに、もなかは満面の笑みで頷く。
「じゃあ、行きましょう! リアルブルーでは絶対にお目にかかれない――クリムゾンウェスト原産ゲテモノ料理のお店へ!」
 一瞬、もなか以外の全員がその耳を疑った事は言うまでもない。
 しかして同時に、連れていかれた怪しげな料理店の門を潜って阿鼻叫喚の悲鳴がヴァリオスに響き渡ったのも言うまでもなかった。

依頼結果

依頼成功度成功
面白かった! 6
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレka5113

重体一覧

参加者一覧

  • 《死》の未来を覆す奏者
    白金 綾瀬(ka0774
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • 幸せの百合の園
    ティナ・レミントン(ka2095
    エルフ|15才|女性|機導師
  • 特務偵察兵
    水城もなか(ka3532
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 魂の灯火
    クリス・クロフォード(ka3628
    人間(蒼)|18才|男性|闘狩人
  • 誓いの隻眼
    タラサ=ドラッフェ(ka5001
    人間(紅)|23才|女性|闘狩人
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/15 21:53:07
アイコン 乙女たちの休日
イルム=ローレ・エーレ(ka5113
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2015/07/18 00:18:56