にゃんこの住処

マスター:奈華里

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/07/17 19:00
完成日
2015/07/28 02:19

このシナリオは2日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「わわ、雨降ってきちゃったっ」
 突然の雨に駆け出す少女――彼女の名前はリブと言う。
 今日は少し遠くの街におつかいに来ていたのだが、父とはぐれてしまい歩き回る事数十分。晴れていた筈の空には徐々に雲が広がって、気付いた時にはもう遅い。泣き出した様に降る雨に、彼女も泣きたくなってくる。けれど、彼女ももう十二歳。店の手伝いもそつなくこなして、泣き虫だった頃とはもう違う。母を早くに亡くしている事もあって同世代よりはしっかりしているとよく褒められる。
「困ったなぁ~、パパ心配してるはずなのに」
 動きたいのに動けない。軒下を探して雨宿りをするも一向に雨はやみそうにない。
 加えて夕方だったという事もあって、次第に当たりが暗くなってゆく。
(どうしよう…この町、初めてだから何処に何があるかわからないよぉ~)
 泊まる事になっている宿屋は何処だっただろうか。名前を覚えておけばよかったのだが、こういう時に限って思い出せない。そうこうするうちに周囲の店も店じまいを始めて……あっという間に彼女の周りを闇が包む。
 このままではいけない。そう思うのに、何故だか今日は足がすくんで動けない。
「なんだぁ、迷子か?」
 そんな彼女を見つけて声をかけてきたのはガラの悪そうな酔っ払いで。
 昼間から飲んでいたのか、完全に出来上がっている。
「あ、あの…わたし…」
 リブが必死に声を絞り出す。けれど、てんで男は相手にしない。
「ああん、なんだって? 小さい声じゃあ聞こえないなぁ~、おいちゃんのお酌でもしてくれるってかぁ」
 何がおかしいのかケラケラ笑って、彼女は堪らずその場から駆け出す。
(怖い、怖いよ…パパッ!)
 後は無我夢中だった。雨は小雨に変わって、雲の切れ間から月光が差し込む。何人の人にぶつかったか判らない。走りつかれてしゃがみ込んだ先、するとそこには一匹の虎猫がこちらを不愛想な目が見つめている。
「ね、ねこさんっ!」
 彼女は寂しさの余りその猫に飛びつき抱きしめる。
 初めは暴れていた虎猫だったが、途中からは諦めたのか彼女に黙って寄り添う素振りを見せてくる。
「ありがと、ねこさん。私、パパとはぐれちゃってね…一人ぼっちなの…」
 路地の裏、少し先の通りではちらほら人が行き交っているが、ここにいる小さな少女に気付いてはくれない。
『ナァーオ』
 そんな彼女を慰めるように虎猫は鳴き声を上げて、彼女の頬をぺろぺろ舐める。
 彼女が落ち着くまで虎猫はそれを続けていた。

 そして翌日、彼女の父親が必死に探し回っていたようで…朝日が昇る前に彼女を発見。事なきを得る。
「すまない。一緒に行くべきだったのに…怖かったろう。もう、次からは一人にしないから」
 父・アドが彼女の存在を確かめるように優しく抱きしめ言う。
「ううん、いいよ。私が一人でいくって言ったんだし…それにね、ずっと船長が…」
「船長? 誰の事だ?」
 リブの言葉に父は疑問を浮かべる。
 リブも付き添ってくれていた猫を紹介しようと辺りを見回したが、既にそこには姿がない。
「あのね、昨日出会ったカギ髭の猫さんなの。ずっといてくれたのに、何処行っちゃったんだろう?」
 幻ではない筈だが、彼女を父が見つけた事を察して何処かに行ってしまったのだろうか。
「まぁ、いい。お腹空いただろう。宿に戻って食事にしよう」
 父の言葉に彼女が少し間をおいて頷く。
(お礼、言いたかったのに…また、会えるかなぁ?)
 彼女は想う――もし、もう一度会えたら何か美味しいものをご馳走したいと。

 が、その機会は意外と早く訪れる事になる。
「てんめぇ、またおまえかっ!」
 宿屋の厨房から駆け出してくる小さな影。灰色の体毛に黒の縞模様、特徴的な髭の持ち主、船長だ。
 口に咥えられるだけの魚を咥えて、一目散に外へと駆け出していく。
「あ、あの猫さんだ!」
 リブはその姿を見つけ追いかける。
「あ、おいっ!」
 その行動に父も追いかけざる負えない。十数分の後、二人がへとへとになった頃船長はある建物へと消えてゆく。
 そこは空き家の様だった。家主が手放した後、買い手がつかなかったようだ。壊れたドアがきしきし音を立てる。
「ここは…」
 リブがそっと中を覗き込む。するとそこにはこちらを見つめる多くの瞳。一匹や二匹ではない。数十は超えるであろう数の猫がこちらを睨みつける。そして、その中に船長もいて…とってきた魚を皆に分け与えている。
「なんだ、野良猫屋敷か?」
 後から来たアドが言う。
「みたいだね…みんな可愛いけど、大変そう」
 数が数だ。船長のそれでは全然足りない。しかし、だからと言ってこの数を飼う事はリブには無理だ。
 昨日言いそびれたありがとうを船長に向けて呟いて、彼女とアドはその場を離れる。
 がその時だった。すれ違いざまの事――不動産業者だろうか。魔導短伝話を片手に話している。
「やっとこの家も買い手がついたか。まぁ、家自体は建て替えないといかんが…遊ばせておくのは勿体ないからな。よかったよかった。え、住み着いてる猫? そんなの知った事か」
「ッ!?」
 リブがその話を聞き振り返る。もし、あの家が潰されたら…船長達はどうなってしまうのだろう。
「パパ、どうにかできない? 私の、私の大事な友達だよ?」
 リブが泣きそうな目で言う。父は困った顔で暫く考えて、ハンターオフィスに掛け合ってみる事にするのだった。 

リプレイ本文

●交流
「船長、いますか…?」
 朽ちた扉の隙間からリブが中を覗き込む。
 今日の彼女は一人ではない。アドの提案でハンターの力を借りる事になった為、状況を確認したいというハンター達も彼女の後ろに続いているからだ。
「猫さんがいっぱい…」
 リブより少し年上で、身長も少し高いナツキ(ka2481)が中の様子を見取り言う。
 屋敷の中には確かに野良猫達が集まっているようだった。そして情報にある通り、屋敷はかなりの老朽化が進み、天井も所々穴が開いて光が差し込んでいる。その直射日光を避けて猫達は互いに生活しているようだ。
 そんな中でこちらに気付いた一匹が面倒気に身体を上げる。
「船長!」
 その姿を見取り、リブが駆け寄る。
 が船長は見知らぬ人間の気配を感じ、ぴたりと足を止める。
「あらあら、風格のある猫さんですね」
 アリエス・エスクード(ka1961)の素直な感想。確かに船長は他の猫とは違った雰囲気を持っている。髭の特徴もそうであるが、まだ見た感じ若く見えるのにとても落ち着いているのだ。それに彼の後ろには数匹の雄が続き、まるで彼が従えている様に見える。
「成程、流石なの」
 その様子に今度はリューリ・ハルマ(ka0502)が声を漏らす。
 そして、早速船長の説得に入る。
「ねえ、船長さん聞いて。この家もうすぐ無くなっちゃうかもしれないんだよ」
 勿論人間の言葉が野良猫に理解できるとは思っていない。しかし、何かしらの危機感が伝われば、猫達も協力してくれるかもしれないと彼女は思う。だから、彼女は出来うる限り心を込めて船長に語りかける。
 幸い、船長はすぐには仕掛けてきたりはしなかった。警戒する様にその場でじっとしたまま、時折耳を小刻みに動かしつつ、目を光らせている。
(大丈夫。ちゃん届くよね)
 その眼光に少し緊張しながら彼女は続ける。
「だから協力して欲しいの。みんなバラバラになっちゃうかもしれないけど、でも住めるところは頑張って探してみるから! もしよかったら何匹か一緒に来てくれないかな?」
 猫達の行く末を考えて――集まったハンター達がまず思いついたのは里親探しだった。
 それにはやはり本人、ならぬ本猫がいないと話にならない。そこで連れ出せるものならと思っている彼女である。が、やはり見ず知らずの相手においそれと心を許す程、野良猫は甘くない。暫くの沈黙が続いて…そこで助け舟を出したのはナツキだ。
「リューリ、ここはわたしに任せて」
 彼女はそう言って姿勢を低くし彼らの出方をみながらゆっくりと近付く。その時、彼女は出来るだけ目は合わせない。猫の礼儀として、凝視する事はすなわち喧嘩を売っている事になるというのを彼女は知っていたからだ。相手の様子を確認しつつ、慎重に距離をつめて、そこで取り出したのはツナ缶と水。
「おなか、減ってない? 少しだけだけど、これプレゼント…」
 予め用意してきたお皿に中身を出して、彼女は猫達に振舞う。
 それでも暫くは手をつけようとはしなかった猫達であるが、匂いに負けたのか一匹の子猫がよちよち進んでツナをペロリ。それがきっかけとなった。特に害成すものは入っていないと判ったのだろう。徐々にお皿を介して猫達が距離を縮めてくる。
「そっか、そういう方法があったのかぁ。凄いね、ナツキさん」
 リューリが感心したように言う。
「まずは仲良くなる所から…これ当然」
 ナツキはそう言い、寄って来た一匹を静かに撫でる。
「おまたせ…この屋敷の件、少しだけなら融通が利きそうだよ」
 とそこへ別件で遅れていたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が合流した。
 彼女はリューリの友らしく、彼女の登場にリューリは嬉しそうだ。
「あの、どちらに行かれていたのですか?」
 初めての依頼で未だ緊張気味のアリエスが問う。
「え、あぁ…ここの不動産屋にね。ちょっといつもの癖が出ちゃったけど…ここの建て替え工事、少し待ってもらえるって」
 いつもの癖とは何の事だろう。直接聞くのも忍ばれて、首を傾げて見せるアリエスに代わり、友が踏み込む。
「もしかしてアルトちゃん、何かしたの?」
「えっ、あ…いやぁ……それにしてもホントに沢山いるんだね。あ~でも、うちよりは少し少ないかな…?」
「え、お姉さんとこってそんなに多いの?」
 話題を逸らしに入ったアルトにリブが無意識に加担する。
「ん~多分、四十位かな」
「四十…ですか」
 確かにその数ならここより多いだろう。ざっとみても二十弱だ。
(凄い人もいるものね…)
 アリエスがしみじみ思う。
「みんな、今のうちに猫さん数える。怪我してる子いたら、わたしにおねがい」
 話がそれかけたのをナツキが戻して、一同まずは状況確認。性別や特徴をまとめ始める。そんな彼女らを船長はじっと見ていて、
「……立派なおひげ、寝癖…かな?」
 ナツキの独り言にも船長は相変わらず無言を貫いていた。


 さて話は遡り、アルトの癖とは?
 依頼書にあった屋敷の場所から不動産屋を割り出したアルトは単身、そちらへと足を向ける。ちなみに不動産屋自体を見つけるのは簡単だった。売りに出されていた屋敷の事。看板には連絡先が記されていたからである。
「こんにちは。少し話がしたいんだけどいいかな?」
 アオザイの裾を揺らして彼女は担当を呼んでもらい交渉に入る。
「え、はい。構いませんが…あの屋敷は既に買い手がついていますので何とも…」
「うん、知ってる。だからその買い手の事を教えて欲しいんだけど」
 実に単刀直入――彼女、見た目はクールなのだが性格は意外と大胆なようだ。
「は、はぁ…しかしですね。それは個人情報になりまして」
「そんなの判ってるって。でもね、どうしても必要なんだよねぇ、きみが教えたって言わないからさ。お願い、教えてよ」
 笑顔のままで彼女の手が何故か腰の刀にかかる。
 その手の動きを担当者も見逃さない。
「や、そう言われましても、お客様…」
 視線が刀へと注がれ、俄かに担当が後退る。それに気付いてはっとするアルト。
「あっ…ごめんごめん。これ癖なんだよね。緊張した時の…ほ、ホントだよ?」
 誤魔化す様に笑う彼女に苦笑いの担当。この空気を変えなくてはと彼女は続ける。
「ねぇ、担当さん。少しだけ聞いて…この話はきっと貴方たちの損にはならないよ」
 少し含みを持たせた言いようで、彼女は担当をちらりと見る。
 そして丁寧に彼女が事情を話し始めると、担当も多少理解を示し始めて、
「成程…あの猫達ですか。確かに気にはなっていたのですが…やりようがなくてねぇ。貴方方がどうにかしてくれるなら、協力はしましょう。但し、買い手の方は一般の方ですし、先程申しました通り個人情報はお教えできません。ですが、取り壊し建て替えには時間が必要ですので、その辺で多少の調整は致しましょう」
 それが最大の譲歩だった。とはいえ猶予が出来たのは大きい。
「あ、ついでに猫カフェとか希望しているお客さんがいたら教えて欲しいな」
 ここぞとばかりにアルトが付け加える。
「判りました。一応気に留めておきますよ」
 担当はそう言うと、彼女の連絡先を渋々受け取り奥へと帰る。
「よし、これで一安心だね」
 彼女はほっとし、その場を後にした。


●里親
「猫の里親探してまーす! ご興味のある方いませんかー?」
 ショップに向かう道すがら、アリエスがリブと共に声かけをして進む。
 けれど、そう簡単に名乗り出てくれる者はいない。それに結局の所、連れ出せたのは船長のみだ。
「なかなか難しいものですねぇ」
 山から下りて来たばかりのエルフにとって、街でのツテがある訳ではない。簡単な依頼かと思っていたが、これは意外に解決には時間がかかりそうだ。
「こんなで大丈夫かな…」
 リブが少しの弱音を吐く。
「リブちゃんが諦めてどうするの? 私も頑張るから諦めないで」
 そんな彼女を励ます様にアリエスは彼女を抱きしめる。
「リブ。おともだち助けたい、その気持ち立派。いいこいいこ」
 同行していたナツキもそれを聞き、彼女の頭を撫でる。
 しかし、ナツキはここまでだった。彼女には思うフシがあるらしくショップに到着するとそちらの窓口へと移動してしまう。そして、
「すいません。支給品の猫達を管理している場所と担当さん、教えて欲しい…」
 彼女のお願いに目をぱちくりする窓口。けれど、ナツキの目の付け所は悪くなかった。

 一方リブとアリエスは、その後ハンターオフィスへ。
 ここならば終日人の出入りも多く、里親探しにはもってこいのように思える。が実際はそうでもなくて…立ち止まってはくれるものの、引き受けてくれる人は外と余り変わりない。
(いっその事依頼を出してしまうのはどうかしら?)
 そう思ったアリエスであるが、それではミイラ取りがミイラ状態ではないか。それに依頼を出すにはそれなりの費用がかかる。リブの父親とて自分達を集める為に自腹を切っている筈だ。
(これ以上負担をかけては駄目ね…となると、無料で出来るのは…)
 そこで彼女の目に留まったのは一枚のポスターだ。
「そうよ。この手があったわ!」
 アリエスの表情に光が差す。
「この手って?」
 その様子にリブも気付いて、
「ポスターよ。ねえ、リブちゃん。里親募集のポスター作ってみない? 猫さん達の似顔絵を描いて、興味を持って貰うの。そうすれば気に入ってくれる人が出てくるかもしれないわよ」
 普段はのんびりしている彼女であるが、嬉しさの余り少し言葉が早口になっている。
「そっか、ポスター!」
 その提案にリブも賛成の様だった。


「あれ、ここどこだっけ?」
 街の広場らしきところで立ち止まってリューリが呟く。
 片手には地図が携えられているが、何故か手の中でさかさまになっている。
「あー、もう。何やってるんだよ…アドさんとの待ち合わせ場所はあっちだよ?」
 そんな彼女を見つけてアルトが素早く駆け寄り、彼女の手を引っ張る。
「え、だって…こっちがあっちで…」
「もう、いいから。きみってかなりの方向音痴だったんだね」
 友の意外な一面に溜息をつきながら、アルトが誘導する。
 そして、彼女達はリブの父親に会い情報提供を求める。
「動物のいる店…ですか?」
「そう、リアルブルーには猫カフェていうのがあるらしいんだよね。だから、そういうお店をしたいと思ってる人とか実際のカフェさんでそういう趣向にチャレンジしようと思っている人いないかなと思って」
「猫カフェって猫のいるカフェって事ですよね?」
 二人の問いに聞き返すアド。猫カフェ自体、まだこちらの世界では馴染みのないもののようだ。
「じゃあいっそ、提案してみるのはどうかな? 案外珍しいから儲かるかも」
 新規オープンのカフェを当たるか。それも今からではなかなかに難しいだろう。提案してすぐ始められるものではない。八方塞がりに思えてきたこの依頼であるが、またしてもナツキの一声が彼等を救う事となる。
『もしもし、聞こえてますか?』
 魔導短伝話から届いたナツキの声にリューリが慌てて応答する。
「うん、ちゃんと聞こえてるよ。で何か収穫あった?」
『はい。担当の人が事情を聞いて方々に連絡してくれて…そこで耳寄りな情報、貰った』
 彼女はそこで言葉を区切り、何やら書き留めた紙を探る。
「ナツキさん?」
『えと…今、そっちの街にサーカス来てる。行ってみて…きっと力になってくれる筈』
「サーカス?」
 詳しく聞きたい所であったが、移動中だったのかそこで伝話は終了する。
「サーカスに猫…どう関係するのだろう」
 アドが呟く。
 そんな彼にひとまず別れを告げて、二人はそのサーカスを探し始めるのだった。


●別れ
「ようこそ猫サーカスへ。今宵の開演は八時からですが?」
 テント前にいた団員が訪れた一行の姿を見取り告げる。
「あ、いえお客じゃないんです。あの、もしよかったら団長さんに合わせて頂けませんか?」
 そこでリューリが相談を持ち掛けて――暫くの後、団長が姿を現す。
「おやおや、可愛らしいお客さん達だ」
 若き女性陣を前に白髪の老人が微笑む。
 彼が団長であるが、全然厳つくはなくてとても人の良さそうな老人だった。
 そんな彼の傍には数匹の猫がついてまわっている。
「猫さん…」
 リブが船長を抱いたまま呟く。
「伝話で話は少し聞いとるよ。わしでよければ力になろう」
 団長はそう言い、彼女らを軽く案内する。
 そのサーカスは皆が想像する程厳しいものではなく、猫と人間…それぞれペアになって日々ショーに向けて芸を磨いているようだ。それに芸といっても無理に仕込むのではなく、遊びの一環として教えているようで猫達も実にのびのびと過ごしている。
(ここなら大丈夫だ)
 誰もがそう確信する。
「で後何匹残っているのかね? できれば親子の方が助かるが」
 団長の要望――それは願ってもない事だ。
「親子、一緒。凄くいい」
 戻ってきたナツキが表情を和らげながら言う。とそこへ再び伝話の着信。
 今度はアルトの方にだ。
「あ、もしもしアルトですけど…え、本当ですか! 有難う御座います!」
 話を聞くにつれ明るくなる彼女に新たな貰い手を悟る仲間達。
 その後は思いの外、順調に里親が決まっていって…最後に残ったのはなんと船長だった。
 元々泥棒猫として知られていたから無理もない。貰い手の方も彼を見て避けていったに違いない。しかし、売れ残り状態であっても当の本人は何処吹く風…一人屋敷で呑気に欠伸をして見せる。
「船長、自由過ぎ…」
 そんな彼を見守りながら、仲間は屋敷の最終チェック。もし隅にまだ残っていたらと掃除を交えつつ、隅々まで猫の姿がないかを探す。そしてそれが終わる頃はまたも彼の姿はなくて、
「船長?」
 リブが再び彼の名を呼ぶも彼は戻っては来ない。
 が、その代わりにエントランスには一輪の花が残されている。
「ねえ、これってもしかして…」
 船長の置き土産か。確かめる方法はないが、まだ運ばれてきてそれ程経っていないように見える。
「あの子からリブちゃんへのお礼かしら?」
 その花を手に取り、アリエスがリブに渡す。
「そんな……だって私は」
「船長の有難う、受け取って。じゃないと、船長。可哀想」
 お礼がしたかったのは自分なのに…。それでもリブは純粋に嬉しく思う。
「また会えるかな」
 船長の姿を思い浮かべ彼女が言う。
「きっと大丈夫。あの子、リブのともだち…ともだちなら忘れたりしない」
「本当?」
 リブが願うように問い返す。
「大丈夫だよ。私もそう思う」
「思いあれば…というやつだね」
 その不安をかき消すようにリューリとアルトも援護射撃。すると、泣きそうになっていたリブも涙を我慢し、一路工房のある街へと戻る決意をする。
(また来るからね…)
 そんな彼女の乗った幌馬車にこっそり便乗している鉤髭の猫がいた事を彼女は知る由もなかった。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • 元気な墓守猫
    リューリ・ハルマ(ka0502
    エルフ|20才|女性|霊闘士

  • アリエス・エスクード(ka1961
    エルフ|20才|女性|猟撃士
  • にゃんこはともだち
    ナツキ(ka2481
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/17 10:37:07
アイコン 猫達のこれからを考える
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/07/17 16:09:32