ゲスト
(ka0000)
水面に誘うもの
マスター:君矢

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/22 07:30
- 完成日
- 2015/07/29 20:23
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境の山の中、木々に囲まれた静かな沼があった。東西に長く南北に短い、細長い形をした沼だ。岸には、雑草が生い茂り、木が低く枝を張り出している。草があるから大丈夫だろうと迂闊に足を踏み出せば、沼へ滑り落ちるかもしれなかった。
東側の一角だけは地面が見える。地面が踏み固められ、手入れをされていて、小さいボートがひとつ岸に上げられていた。
その沼の水面に、少女が浮かんでいた。白いドレスのような服が水面に広がっている。
胸の上で、色とりどりの花を抱きしめるように少女は沼を漂っている。美しい少女に見える。しかし、近くで観察すると、ドレスも花も少女自身もどこか不自然だった。人のパーツを人らしく見えるように配置したとでもいえばいいのだろうか、人形の様に動かないから美しく思える。そんなふうに見える。
鳥が一羽、少女の胸元にある手に止まった。何かを確かめるようにくちばしでつつく。
その時、鳥の背後の水面から何かが飛び出し鳥を水中へ引きずり込んでいった。
少女はベッドに寝ているかのように沼に横たわり、うっすらとあけた目で空を見上げている。
※ ※ ※
少年少女達が山道を登っていた。髪の長い少女、ツアンプが先頭に立ち率先して歩いていく。獣道よりはマシ程度の道だが彼らの歩みはしっかりとしていた。全員が赤く塗られた鞭を腰に下げて、籠を肩にかけていた。
「草刈りってかったるいよな」
集団の後ろを歩いている少年、ヘウイがぼやく。
「なに言っているの! 次の収穫のための大切な事だよ」
先頭を歩いているツアンプが振り返り注意する。
「へいへい」
ヘウイはおざなりに返事をする。面白くなさそうに歩く彼は分かれ道に差し掛かった所で友達に耳打ちをした。
「俺、サボるわ。じゃ」
「お、おい」
ヘウイは言うだけいうと素早く分かれ道を歩いて行ってしまった。
ヘウイは、一人分かれ道を歩いて沼へとやってきた。昼寝でもしてサボろうと考えたのだった。
しかしヘウイは慌てて岸に上げてあったボートを沼に押入れることになる。
沼に少女が浮かんでいるのを見つけたのだ。
沼は長い水草が繁茂している。それが足に絡みつき、溺れて絶対に浮かんでくることはないといわれていた。だから、絶対に部族の人間はここで泳がない。
どこから少女は迷い込んだのだろうか。旅人だろうか。とにかく助けなければ。
「大丈夫か!」
ヘウイはボートに乗り、オールで漕いで少女へ近づいていく。
声をかけているのに、一向に少女は反応しなかった。
「おおい、生きてるか?」
あと少しと、オールを動かそうとするが、動かない。しかも強い力で水中へ引っ張られる。オールに水草のようなものが巻き付いているのが、ヘウイの視界に映る。
水中から何本も水草が飛び出して、ヘウイの体に巻き付いた。
不安定なボートの上、ヘウイは抵抗できず水中へ引きずり込まれた。大きな水しぶきと波紋が広がる。
波紋がおさまる。
あとには、静かな水面と誰も乗っていないボート、そしてうつろに空を見上げる少女だけが残る。
※ ※ ※
「族長、私、探しに行ってきます」
「ダメじゃ」
ツアンプは髭の長い老人、シェノグ族の族長に向かって言うが、返ってきたのは否だった。
草刈りをサボったヘウイが帰ってこなかった。ヘウイが沼へ続く分かれ道を歩いていったと聞いた彼の父親が探しに行ったが、その父も行方が分からない。
族長の孫として、草刈りのまとめ役を務めたツアンプは、あの時、ヘウイが一人違う道に進むことに気が付かなかったことを悔やんでいた。気が付いていれば、止めることが出来れば彼も彼の父親も、行方不明にならなかったはずだと責任を感じている。
「二人ともケガをして動けないのかも。早く助けに行かないと」
ツアンプはグッと手に力を込める。早く見つけないと、早く助けないと、という思いで頭がいっぱいだった。
「ならばな、ツアンプ。ハンターオフィスで依頼を出してきてくれんかの」
「依頼するのですか?」
部族の中で解決するべきではないかとツアンプは思う。
「慣れている場所で、二人も行方が分からぬ。念には念をじゃ。ただの事故ならワシの心配しすぎを笑うだけの話じゃ」
族長は、このまま探して、行方不明者を増やすよりもハンターに頼ろうとツアンプに説明する。
「族長が依頼に行ってください。私、ハンターが到着するまで探します」
「ワシは歳じゃから、歩くのが遅い。おぬしの方が早く到着できるからのう」
頼む。と祖父である族長に重ねて言われて、ツアンプは渋々頷いたのだった。
「依頼は、行方不明者の捜索ですね」
ハンターオフィスの受付係は、ツアンプに確認した。
「はい。族長は何かよくないことが起きたのではないかと言っていまして、原因が分かればその排除もお願いしたいと言っていました。よろしくお願いします」
ツアンプは深くお辞儀をした。
東側の一角だけは地面が見える。地面が踏み固められ、手入れをされていて、小さいボートがひとつ岸に上げられていた。
その沼の水面に、少女が浮かんでいた。白いドレスのような服が水面に広がっている。
胸の上で、色とりどりの花を抱きしめるように少女は沼を漂っている。美しい少女に見える。しかし、近くで観察すると、ドレスも花も少女自身もどこか不自然だった。人のパーツを人らしく見えるように配置したとでもいえばいいのだろうか、人形の様に動かないから美しく思える。そんなふうに見える。
鳥が一羽、少女の胸元にある手に止まった。何かを確かめるようにくちばしでつつく。
その時、鳥の背後の水面から何かが飛び出し鳥を水中へ引きずり込んでいった。
少女はベッドに寝ているかのように沼に横たわり、うっすらとあけた目で空を見上げている。
※ ※ ※
少年少女達が山道を登っていた。髪の長い少女、ツアンプが先頭に立ち率先して歩いていく。獣道よりはマシ程度の道だが彼らの歩みはしっかりとしていた。全員が赤く塗られた鞭を腰に下げて、籠を肩にかけていた。
「草刈りってかったるいよな」
集団の後ろを歩いている少年、ヘウイがぼやく。
「なに言っているの! 次の収穫のための大切な事だよ」
先頭を歩いているツアンプが振り返り注意する。
「へいへい」
ヘウイはおざなりに返事をする。面白くなさそうに歩く彼は分かれ道に差し掛かった所で友達に耳打ちをした。
「俺、サボるわ。じゃ」
「お、おい」
ヘウイは言うだけいうと素早く分かれ道を歩いて行ってしまった。
ヘウイは、一人分かれ道を歩いて沼へとやってきた。昼寝でもしてサボろうと考えたのだった。
しかしヘウイは慌てて岸に上げてあったボートを沼に押入れることになる。
沼に少女が浮かんでいるのを見つけたのだ。
沼は長い水草が繁茂している。それが足に絡みつき、溺れて絶対に浮かんでくることはないといわれていた。だから、絶対に部族の人間はここで泳がない。
どこから少女は迷い込んだのだろうか。旅人だろうか。とにかく助けなければ。
「大丈夫か!」
ヘウイはボートに乗り、オールで漕いで少女へ近づいていく。
声をかけているのに、一向に少女は反応しなかった。
「おおい、生きてるか?」
あと少しと、オールを動かそうとするが、動かない。しかも強い力で水中へ引っ張られる。オールに水草のようなものが巻き付いているのが、ヘウイの視界に映る。
水中から何本も水草が飛び出して、ヘウイの体に巻き付いた。
不安定なボートの上、ヘウイは抵抗できず水中へ引きずり込まれた。大きな水しぶきと波紋が広がる。
波紋がおさまる。
あとには、静かな水面と誰も乗っていないボート、そしてうつろに空を見上げる少女だけが残る。
※ ※ ※
「族長、私、探しに行ってきます」
「ダメじゃ」
ツアンプは髭の長い老人、シェノグ族の族長に向かって言うが、返ってきたのは否だった。
草刈りをサボったヘウイが帰ってこなかった。ヘウイが沼へ続く分かれ道を歩いていったと聞いた彼の父親が探しに行ったが、その父も行方が分からない。
族長の孫として、草刈りのまとめ役を務めたツアンプは、あの時、ヘウイが一人違う道に進むことに気が付かなかったことを悔やんでいた。気が付いていれば、止めることが出来れば彼も彼の父親も、行方不明にならなかったはずだと責任を感じている。
「二人ともケガをして動けないのかも。早く助けに行かないと」
ツアンプはグッと手に力を込める。早く見つけないと、早く助けないと、という思いで頭がいっぱいだった。
「ならばな、ツアンプ。ハンターオフィスで依頼を出してきてくれんかの」
「依頼するのですか?」
部族の中で解決するべきではないかとツアンプは思う。
「慣れている場所で、二人も行方が分からぬ。念には念をじゃ。ただの事故ならワシの心配しすぎを笑うだけの話じゃ」
族長は、このまま探して、行方不明者を増やすよりもハンターに頼ろうとツアンプに説明する。
「族長が依頼に行ってください。私、ハンターが到着するまで探します」
「ワシは歳じゃから、歩くのが遅い。おぬしの方が早く到着できるからのう」
頼む。と祖父である族長に重ねて言われて、ツアンプは渋々頷いたのだった。
「依頼は、行方不明者の捜索ですね」
ハンターオフィスの受付係は、ツアンプに確認した。
「はい。族長は何かよくないことが起きたのではないかと言っていまして、原因が分かればその排除もお願いしたいと言っていました。よろしくお願いします」
ツアンプは深くお辞儀をした。
リプレイ本文
シェノグ族の村、中央にある広場には大きな木があり、涼しい日陰を作っていた。そこでハンター達は部族から依頼について話を聞いていた。
「俺は別次元からやって来た男ガーレッド・ロアー(ka4994)だ。よろしく」
と、別次元の渡来者を自称する男は、椅子に座っている族長に挨拶をした。族長は笑みを浮かべて挨拶を返す。
「これは珍しい人に会えたの。ワシはここの族長じゃ。こちらは孫のツアンプ。みなさんの案内役をする事になっておる」
隣に立っている少女を紹介した。
「よろしくお願いします」
ツアンプは、しっかりと挨拶をする。
「行方不明者の捜索か。何事もなければよいのだがな」
木のベンチに腰掛けているディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が言った。手作りのベンチに座っているだけなのに、品良く見える。
「親子が行方不明か……。これは少々嫌な予感がするな」
とガーレッドが返した。
「行方不明になったのは、ヘウイって少年とその父親だよねぇ。他にはいないのかい?」
木に寄りかかっているフェイル・シャーデンフロイデ(ka4808)が淡々とした口調で族長に尋ねると、今のところ二人以外に行方不明者は出ていないと答えが返った。
「行方不明者と最後に接触したのはどなたでしょう?」
目を伏せがちにしているヴィーナ・ストレアル(ka1501)が尋ねた。族長がヘウイの友達と、ヘウイの母親を呼ぶ。
友達によると、ヘウイは草刈りをサボると言って沼があるほうへ歩いていったらしい。その様子は普段のヘウイだったそうだ。
ヘウイがサボったことを聞いた父親は、帰らない息子を心配し沼を確認してくると言って家を出たのが最後だと母親が証言した。どうかよろしくお願いします。と言って母親は涙ぐんでいる。
「最善を尽くします」
母親を励ましつつ、ヴィーナが言った。他にも、危険な場所、人が寄りつかない場所、すでに捜索した場所は何処と言った質問をした。
これには、案内役のツアンプが答えている。
「お二方の無事を期待しますが、探しに出た大人が慣れた場所で戻らなくなったという点が気になります」
思案しながらアレグラ・スパーダ(ka4360)が発言し、二人の会話に加わった。
「子供たちも遊ぶ場所です。危険はないはずなのですが……」
ツアンプが言う。
「……。身動きがとれないのか、何かに巻き込まれたのか。緊急性を感じます」
とアレグラは思案しながら言った。
「何が起きたかわからない以上、十分に注意して挑みませんと。二次災害ですからね」
ヴィーナが心持を引き締めるように言う。
「山中での活動は得意ではないのですが、沼周りであればお役にたてることもあるでしょう」
と港湾都市出身のアレグラが言う。
「まあ大王たるボク達がいるのだ。絶対に見つけて見せようではないか」
ディアドラがベンチから立ち上がり宣言するように言った。
女性たちが会話をしている傍らで、水流崎トミヲ(ka4852)がブツブツと呟いていた。
「16歳の女子が道案内か……だめだだめだ……心を強く保つんだ僕……。しかも友達想いの健気系ときたもんだ……be coolだ、トミヲ」
「水流崎、何、ブツブツ言ってるんだ?」
俯きながらつぶやいていたトミヲにフェイルが声をかける。
「あ、いや。大丈夫だ。そろそろ行こうじゃないか」
トミヲが返事をした。
地面を踏み固めた道はなかなかに歩きづらい。
ハンター達は、ツアンプを先頭に沼へ続く道を歩いていった。
「足元に気をつけなくてはいけないな」
と、ディアドラ。下手に転んでこのまま落ちるなんて真似はできないぞ、と言いながら木の根を華麗によけて歩いている。
「な、なあ。ツアンプくん。本当に……ついて、くるのかい?」
トミヲがツアンプに話しかけたのは、ヘウイが最後に目撃された分かれ道にやってきた時だ。
「はい。まとめ役だったのに気が付けませんでしたから。少しでも、役に立ちたいですから」
ツアンプは後ろを振り返り、トミヲに向き直り言った。
「…怖いものも、嫌なものも見るかもしれないよ。それでもいいのかい」
トミヲは視線をそらしつつ、望みを持ちすぎると、いざ直面した時に辛くなるからと思う。このあたりでツアンプは引き返したほうがいいのではないかと思った。
「大丈夫です」
ツアンプの目には決意がこもっていた。
「無理はしないようにな」
とフェイルが声をかけた。山道を歩いているのにロングコートは重く垂れさがっている。
周囲の音に注意をはらっているヴィーナが言った。
「ツアンプちゃん。自分から危険に飛び込むような行動は控えてくださいね」
と、ツアンプに言う。はい。と素直にツアンプは返事をするが、責任感に表情は硬かった。
「たとえ行方不明の二人の何が見つかってもですよ」
ヴィーナは念を押した。
道を外れたような痕跡がないか確認をしているアレグラが、顔を上げてツアンプに話しかける。周辺には、森に入っていったような痕跡はなく行方不明の二人は沼へ向かってよいったようだ。
「沼ですが、どんな場所ですか?」
「静かな沼です。魚釣りをしてみんなで遊んだりしています」
「最近、変わったことはありますか?」
アレグラの質問に、少し考えつつツアンプが答える。
「急に魚が採れなくなったという話は聞いています。それくらいでしょうか……」
木々が途切れた先に沼があった。道が続いている岸辺は踏み固められている。
周辺を見渡したアレグラが、沼の淵に籠が落ちていることに気が付いた。汚れが付いていない籠に、ここに放置されてまだ間もないことが知れる。
「これに見覚えはありますか」
アレグラは、拾い上げた籠をツアンプに見せて確認を取る。
「たぶん、ヘウイの籠です。この辺にいるんだ」
ツアンプは、ヘウイの名前を呼びながら探そうとする。
「ここは、私たちに任せてくださいね」
ヴィーナが、ツアンプを止める。
アレグラは、岸辺の地面を調べた。二種類の大きさの足跡があった。いずれも、ひどく慌てた様子で沼へと向かい水際で途切れている。
「行方不明者の足跡でしょうか」
アレグラが足跡を指示しながら言った。
「二人がここで何かに巻き込まれた事は間違いないようだな」
足跡を見ながらディアドラが言う。
「何か、不自然なものはないだろうか……」
ディアドラが視線を上げて、周囲を見渡す。
この様子だと異変は沼にあるようだとトミヲは思った。
「……さて」
水上の出来事にも対処できるようにトミヲが、ウォーターウォークを全員にかけた。もちろんツアンプにもだ。
沼に涼やかな風が水面を渡り、漣を立てる。岸辺に近い場所に小さいボートが浮かんでいた。
「あれを見ろ」
ガーレッドが指さす方向に、全員の視線が集まる。
それは、白いドレスを着た少女だった。唐突な不自然さにハンターたちは警戒を露わにする。
「た、助けないと!」
ツアンプが慌てて言った。
慌てているツアンプを落ち着かせ、後ろに下がらせる。
改めて、沼に浮かぶ少女、らしきものにハンターたちは注意を向けた。
「何だあれは!」
トミヲは叫んだ。
「僕のDT魔力がビンビンに反応してるんだけど!」
美少女の気配! 困る!! と。
そして、フェイルもまた水面に浮かぶ少女を見て一瞬固まっていた。過去の出来事が脳裏によみがえり混乱する。
(お、嬢様……!? ……いや、髪色も背格好も違う、第一あれは10年前だ。今生きていたら20歳ぐらい……そもそももうお嬢様は死んだ……まだ引きずっているのか俺は)
ここは辺境の山中だと今いる場所を思い出し苦笑いしつつ、冷静さを取り戻す。
改めて沼の少女を観察した。体の動き、特に呼吸の形跡をみる。少女は、じっと浮かんでいるだけで動いていない。胸も上下しているように見えなかった。
「仰向けで水に浮くのを維持するの、結構難しいですよね……」
と、少女を観察しながらヴィーナが言った。
「そうですね」
言葉少なめにアレグラが同意する。
「少なくとも意識があって姿勢を維持しないと沈むはず。声をかけてみましょうか」
ヴィーナは、すっと息を吸い込み沼に浮かぶ少女へ声をかける。声が周囲の木々の間に消えていく。少女に変化は見られない。
異常なものだと判断したヴィーナは、聴覚を上昇させ周囲の音に集中する。
「鼓動はありそうかな」
フェイルがヴィーナに声をかけた。
「いえ、沼からは何も……静かですわ」
とヴィーナは返した。
「……呼吸がないってー事は死体って事かねぇ……その場合あんなとこに綺麗に浮かんでるのは不自然だ。おとりってやつ?」
フェイルが言った。
「あの不自然なものを調べれば、何かわかるかもしれないな」
ディアドラは水上を歩いて、浮かんでいたボートに乗のる。一緒に行きますというツアンプを岸から様子を見ていてもらおうと、待たせることにする。
「万が一、戦闘になったら大変だからな」
どうみても怪しいが、万が一救助が必要であればボートに乗せることもあるかもしれない。
堂々と、少女らしきものの正面から近づいていく。
ガーレッドは行方不明者の他の痕跡を見つけようと、沼の周辺の茂みに踏み込んで行った。
沼の周囲は、低木が枝を広げ、雑草が繁茂して歩きにくい。ガーレッド以前に歩いた痕跡はなさそうだった。
ということは、やはり二人は直接沼に向かっていったのだろうとガーレッドは考えた。
沼へ視線を動かす。ディアドラがボートで少女に近づいて行くのが見える。その後ろにフェイルたちが歩いてついていた。
ふと、アレ―少女に違和感を覚える。
ガーレッドの渡ってきた世界に巨大アンコウという化け物がいた。そのアンコウの提灯の先は、人間のような形をしていた……。それを水面に浮かべて、助けようとした人間を逆に喰らっていた事を思い出す。
「おいおい、待てよ」
思わず、口からつぶやきが漏れた。この状況はソレにそっくりじゃないか? 仲間たちはもうすぐそばまで、寄っている……。
「ディアドラ! 気をつけろ! それは囮だ!」
ガーレッドは叫んだ。
岸辺から、ガーレッドの叫ぶ声が聞こえた。
それとほぼ同時、沼の中から、緑色の水草のようなツルが水上にいる三人を襲った。
ディアドラは、盾で受け止めるがツルに巻き付かれてしまう。ボートが転覆しないようにバランスを取ることに苦労する。フェイルは大きく後ろに下がってツルを回避した。ヴィーナも、なんとか絡まらないように回避する。
フェイルは、鞭を構える。今までの冷静な表情とはうって変わって、楽しい笑みを浮かべている。
「助けよーとしたとこをそうやって捕まえるとか……儚げ少女の皮かぶった食人植物様だったってー訳ぇ? 悪趣味な草は除草しねぇとなぁ!」
ハイテンションな言動とは裏腹に、フェイルは精度の高い一撃を繰り出した。
鞭による一撃は、水面に出ているツルによって阻まれ、雑魔に届かない。
「ちっ! 体は大事ですってか!」
フェイルが叫ぶ。
ヴィーナは、岸にいる仲間たちと協力するべくツルの攻撃の間をぬって背後を振り返る。トミヲが魔術を放とうとしているのが見えた。
トミヲが叫びながらライトニングボルトを放った。
「お前のようなトンデモ美少女がいるかー!」
直線に伸びる雷撃が雑魔に直撃した。歪虚は悲鳴も上げず身じろぎもしなかった。
「今、ツルを切りますね」
ヴィーナが、ディアドラに駆けより短剣で盾に巻き付いているツルを切り離した。
「礼を申すぞ」
ディアドラが礼を返す。
岸に残っているアレグラは、水上の仲間を狙っているツルに向かって魔導拳銃を構え狙う。援護射撃で味方の支援に徹した。
ペンタグラムから放たれた弾丸が冷気を纏いツルに命中する。動きの鈍くなったツルからディアドラたちが逃れた。
「大丈夫か!」
ガーレッドも目の前に出現させた光の三角形から放たれた光で、ヴィーナたちを狙っているツルを攻撃する。光に断ち切られたツルが水中へと沈んでいった。
雑魔は、ツルを切られつつも残ったツルをまとめディアドラを強襲する。
「それで僕を引きずり込むつもりか!」
ディアドラには軽く避けられてしまった。
「相手が雑魔であればあるならばこちらも遠慮する必要はあるまい」
と言ってディアドラはボートを守りつつ反撃に出る。
「水中拳銃の出番はなさそうですね」
アレグラは長引くなら、水中拳銃を用意し沼に入るつもりだったが仲間たちの活躍を見るにその必要はなさそうだと判断した。
「こいつを喰らいやがれ!」
とテンション高く攻撃するフェイルの攻撃は、今度は雑魔をざっくりと切り込んだ。
「漲れ……僕のDT魔力ゥ……ッ!」
トミヲは、右腕を水中に入れて、仲間を巻き込まないように注意しファイアーボールを雑魔に向けて放った。
それが止めになったのか、残っていたツルも水中に沈んでいった。少女の体も姿勢を維持できなくなったらしくゆっくりと転覆していった。
そして、少女の水面下にあったものが水上に現れる。コブのようなものに水草が生え、絡まっている。美しい少女からは想像できないなんとも醜いものがそこにはあった。
雑魔を倒し、ハンターたちはヘウイ親子探しをする。
しかし、他に痕跡もない上に雑魔が沼にいたのでは生存の可能性は低い物だった。
「雑魔に捕食された可能性が高いだろうとは思うが、遺品だけでも回収していきたいところだ」
と、ディアドラ。大王たるもの約束した事は守らなければならないのだ。たとえ亡くなったものの遺品だったとしても。
フェイルとガーレッドは残骸に近づくと水草をかき分けて遺品がないかと探すと、水草に引っかかるように赤い鞭を二つ見つけることができた。
「人の善意につけこむ最低最悪の雑魔だったな……きみらの無念、少しでも晴らせたか……?」
フェイルが呟いた言葉は、水面に消えていった。
ガーレッドは回収した赤い鞭をツアンプに見せて確認を取る。
「これは、私達シェノグ族の証として部族の者は全員、身に着けているものです……」
ツアンプは鞭を握りしめると静かに涙をこぼしている。
「あまり自分を責めないようにな。嬢ちゃんのせいじゃないんだ」
とガーレッドはツアンプを慰める。
トミヲもツアンプに声をかける。
「……シンドイだろうね。今は、悼んであげな。苦しみは村の皆でわけあってさ。だから今は、連れて帰ってあげよう」
苦しくても、いつか、前を向けるよ。そう続けて、ツアンプを村へと帰る道へと促した。
沼へ背を向け、ハンター達と赤い鞭を抱えたツアンプが帰っていく。
ガーレッドは、一人振り返り沼へ向け、人差し指と中指を立て目尻に添える。
「次元の彼方でまた会おう」
「俺は別次元からやって来た男ガーレッド・ロアー(ka4994)だ。よろしく」
と、別次元の渡来者を自称する男は、椅子に座っている族長に挨拶をした。族長は笑みを浮かべて挨拶を返す。
「これは珍しい人に会えたの。ワシはここの族長じゃ。こちらは孫のツアンプ。みなさんの案内役をする事になっておる」
隣に立っている少女を紹介した。
「よろしくお願いします」
ツアンプは、しっかりと挨拶をする。
「行方不明者の捜索か。何事もなければよいのだがな」
木のベンチに腰掛けているディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が言った。手作りのベンチに座っているだけなのに、品良く見える。
「親子が行方不明か……。これは少々嫌な予感がするな」
とガーレッドが返した。
「行方不明になったのは、ヘウイって少年とその父親だよねぇ。他にはいないのかい?」
木に寄りかかっているフェイル・シャーデンフロイデ(ka4808)が淡々とした口調で族長に尋ねると、今のところ二人以外に行方不明者は出ていないと答えが返った。
「行方不明者と最後に接触したのはどなたでしょう?」
目を伏せがちにしているヴィーナ・ストレアル(ka1501)が尋ねた。族長がヘウイの友達と、ヘウイの母親を呼ぶ。
友達によると、ヘウイは草刈りをサボると言って沼があるほうへ歩いていったらしい。その様子は普段のヘウイだったそうだ。
ヘウイがサボったことを聞いた父親は、帰らない息子を心配し沼を確認してくると言って家を出たのが最後だと母親が証言した。どうかよろしくお願いします。と言って母親は涙ぐんでいる。
「最善を尽くします」
母親を励ましつつ、ヴィーナが言った。他にも、危険な場所、人が寄りつかない場所、すでに捜索した場所は何処と言った質問をした。
これには、案内役のツアンプが答えている。
「お二方の無事を期待しますが、探しに出た大人が慣れた場所で戻らなくなったという点が気になります」
思案しながらアレグラ・スパーダ(ka4360)が発言し、二人の会話に加わった。
「子供たちも遊ぶ場所です。危険はないはずなのですが……」
ツアンプが言う。
「……。身動きがとれないのか、何かに巻き込まれたのか。緊急性を感じます」
とアレグラは思案しながら言った。
「何が起きたかわからない以上、十分に注意して挑みませんと。二次災害ですからね」
ヴィーナが心持を引き締めるように言う。
「山中での活動は得意ではないのですが、沼周りであればお役にたてることもあるでしょう」
と港湾都市出身のアレグラが言う。
「まあ大王たるボク達がいるのだ。絶対に見つけて見せようではないか」
ディアドラがベンチから立ち上がり宣言するように言った。
女性たちが会話をしている傍らで、水流崎トミヲ(ka4852)がブツブツと呟いていた。
「16歳の女子が道案内か……だめだだめだ……心を強く保つんだ僕……。しかも友達想いの健気系ときたもんだ……be coolだ、トミヲ」
「水流崎、何、ブツブツ言ってるんだ?」
俯きながらつぶやいていたトミヲにフェイルが声をかける。
「あ、いや。大丈夫だ。そろそろ行こうじゃないか」
トミヲが返事をした。
地面を踏み固めた道はなかなかに歩きづらい。
ハンター達は、ツアンプを先頭に沼へ続く道を歩いていった。
「足元に気をつけなくてはいけないな」
と、ディアドラ。下手に転んでこのまま落ちるなんて真似はできないぞ、と言いながら木の根を華麗によけて歩いている。
「な、なあ。ツアンプくん。本当に……ついて、くるのかい?」
トミヲがツアンプに話しかけたのは、ヘウイが最後に目撃された分かれ道にやってきた時だ。
「はい。まとめ役だったのに気が付けませんでしたから。少しでも、役に立ちたいですから」
ツアンプは後ろを振り返り、トミヲに向き直り言った。
「…怖いものも、嫌なものも見るかもしれないよ。それでもいいのかい」
トミヲは視線をそらしつつ、望みを持ちすぎると、いざ直面した時に辛くなるからと思う。このあたりでツアンプは引き返したほうがいいのではないかと思った。
「大丈夫です」
ツアンプの目には決意がこもっていた。
「無理はしないようにな」
とフェイルが声をかけた。山道を歩いているのにロングコートは重く垂れさがっている。
周囲の音に注意をはらっているヴィーナが言った。
「ツアンプちゃん。自分から危険に飛び込むような行動は控えてくださいね」
と、ツアンプに言う。はい。と素直にツアンプは返事をするが、責任感に表情は硬かった。
「たとえ行方不明の二人の何が見つかってもですよ」
ヴィーナは念を押した。
道を外れたような痕跡がないか確認をしているアレグラが、顔を上げてツアンプに話しかける。周辺には、森に入っていったような痕跡はなく行方不明の二人は沼へ向かってよいったようだ。
「沼ですが、どんな場所ですか?」
「静かな沼です。魚釣りをしてみんなで遊んだりしています」
「最近、変わったことはありますか?」
アレグラの質問に、少し考えつつツアンプが答える。
「急に魚が採れなくなったという話は聞いています。それくらいでしょうか……」
木々が途切れた先に沼があった。道が続いている岸辺は踏み固められている。
周辺を見渡したアレグラが、沼の淵に籠が落ちていることに気が付いた。汚れが付いていない籠に、ここに放置されてまだ間もないことが知れる。
「これに見覚えはありますか」
アレグラは、拾い上げた籠をツアンプに見せて確認を取る。
「たぶん、ヘウイの籠です。この辺にいるんだ」
ツアンプは、ヘウイの名前を呼びながら探そうとする。
「ここは、私たちに任せてくださいね」
ヴィーナが、ツアンプを止める。
アレグラは、岸辺の地面を調べた。二種類の大きさの足跡があった。いずれも、ひどく慌てた様子で沼へと向かい水際で途切れている。
「行方不明者の足跡でしょうか」
アレグラが足跡を指示しながら言った。
「二人がここで何かに巻き込まれた事は間違いないようだな」
足跡を見ながらディアドラが言う。
「何か、不自然なものはないだろうか……」
ディアドラが視線を上げて、周囲を見渡す。
この様子だと異変は沼にあるようだとトミヲは思った。
「……さて」
水上の出来事にも対処できるようにトミヲが、ウォーターウォークを全員にかけた。もちろんツアンプにもだ。
沼に涼やかな風が水面を渡り、漣を立てる。岸辺に近い場所に小さいボートが浮かんでいた。
「あれを見ろ」
ガーレッドが指さす方向に、全員の視線が集まる。
それは、白いドレスを着た少女だった。唐突な不自然さにハンターたちは警戒を露わにする。
「た、助けないと!」
ツアンプが慌てて言った。
慌てているツアンプを落ち着かせ、後ろに下がらせる。
改めて、沼に浮かぶ少女、らしきものにハンターたちは注意を向けた。
「何だあれは!」
トミヲは叫んだ。
「僕のDT魔力がビンビンに反応してるんだけど!」
美少女の気配! 困る!! と。
そして、フェイルもまた水面に浮かぶ少女を見て一瞬固まっていた。過去の出来事が脳裏によみがえり混乱する。
(お、嬢様……!? ……いや、髪色も背格好も違う、第一あれは10年前だ。今生きていたら20歳ぐらい……そもそももうお嬢様は死んだ……まだ引きずっているのか俺は)
ここは辺境の山中だと今いる場所を思い出し苦笑いしつつ、冷静さを取り戻す。
改めて沼の少女を観察した。体の動き、特に呼吸の形跡をみる。少女は、じっと浮かんでいるだけで動いていない。胸も上下しているように見えなかった。
「仰向けで水に浮くのを維持するの、結構難しいですよね……」
と、少女を観察しながらヴィーナが言った。
「そうですね」
言葉少なめにアレグラが同意する。
「少なくとも意識があって姿勢を維持しないと沈むはず。声をかけてみましょうか」
ヴィーナは、すっと息を吸い込み沼に浮かぶ少女へ声をかける。声が周囲の木々の間に消えていく。少女に変化は見られない。
異常なものだと判断したヴィーナは、聴覚を上昇させ周囲の音に集中する。
「鼓動はありそうかな」
フェイルがヴィーナに声をかけた。
「いえ、沼からは何も……静かですわ」
とヴィーナは返した。
「……呼吸がないってー事は死体って事かねぇ……その場合あんなとこに綺麗に浮かんでるのは不自然だ。おとりってやつ?」
フェイルが言った。
「あの不自然なものを調べれば、何かわかるかもしれないな」
ディアドラは水上を歩いて、浮かんでいたボートに乗のる。一緒に行きますというツアンプを岸から様子を見ていてもらおうと、待たせることにする。
「万が一、戦闘になったら大変だからな」
どうみても怪しいが、万が一救助が必要であればボートに乗せることもあるかもしれない。
堂々と、少女らしきものの正面から近づいていく。
ガーレッドは行方不明者の他の痕跡を見つけようと、沼の周辺の茂みに踏み込んで行った。
沼の周囲は、低木が枝を広げ、雑草が繁茂して歩きにくい。ガーレッド以前に歩いた痕跡はなさそうだった。
ということは、やはり二人は直接沼に向かっていったのだろうとガーレッドは考えた。
沼へ視線を動かす。ディアドラがボートで少女に近づいて行くのが見える。その後ろにフェイルたちが歩いてついていた。
ふと、アレ―少女に違和感を覚える。
ガーレッドの渡ってきた世界に巨大アンコウという化け物がいた。そのアンコウの提灯の先は、人間のような形をしていた……。それを水面に浮かべて、助けようとした人間を逆に喰らっていた事を思い出す。
「おいおい、待てよ」
思わず、口からつぶやきが漏れた。この状況はソレにそっくりじゃないか? 仲間たちはもうすぐそばまで、寄っている……。
「ディアドラ! 気をつけろ! それは囮だ!」
ガーレッドは叫んだ。
岸辺から、ガーレッドの叫ぶ声が聞こえた。
それとほぼ同時、沼の中から、緑色の水草のようなツルが水上にいる三人を襲った。
ディアドラは、盾で受け止めるがツルに巻き付かれてしまう。ボートが転覆しないようにバランスを取ることに苦労する。フェイルは大きく後ろに下がってツルを回避した。ヴィーナも、なんとか絡まらないように回避する。
フェイルは、鞭を構える。今までの冷静な表情とはうって変わって、楽しい笑みを浮かべている。
「助けよーとしたとこをそうやって捕まえるとか……儚げ少女の皮かぶった食人植物様だったってー訳ぇ? 悪趣味な草は除草しねぇとなぁ!」
ハイテンションな言動とは裏腹に、フェイルは精度の高い一撃を繰り出した。
鞭による一撃は、水面に出ているツルによって阻まれ、雑魔に届かない。
「ちっ! 体は大事ですってか!」
フェイルが叫ぶ。
ヴィーナは、岸にいる仲間たちと協力するべくツルの攻撃の間をぬって背後を振り返る。トミヲが魔術を放とうとしているのが見えた。
トミヲが叫びながらライトニングボルトを放った。
「お前のようなトンデモ美少女がいるかー!」
直線に伸びる雷撃が雑魔に直撃した。歪虚は悲鳴も上げず身じろぎもしなかった。
「今、ツルを切りますね」
ヴィーナが、ディアドラに駆けより短剣で盾に巻き付いているツルを切り離した。
「礼を申すぞ」
ディアドラが礼を返す。
岸に残っているアレグラは、水上の仲間を狙っているツルに向かって魔導拳銃を構え狙う。援護射撃で味方の支援に徹した。
ペンタグラムから放たれた弾丸が冷気を纏いツルに命中する。動きの鈍くなったツルからディアドラたちが逃れた。
「大丈夫か!」
ガーレッドも目の前に出現させた光の三角形から放たれた光で、ヴィーナたちを狙っているツルを攻撃する。光に断ち切られたツルが水中へと沈んでいった。
雑魔は、ツルを切られつつも残ったツルをまとめディアドラを強襲する。
「それで僕を引きずり込むつもりか!」
ディアドラには軽く避けられてしまった。
「相手が雑魔であればあるならばこちらも遠慮する必要はあるまい」
と言ってディアドラはボートを守りつつ反撃に出る。
「水中拳銃の出番はなさそうですね」
アレグラは長引くなら、水中拳銃を用意し沼に入るつもりだったが仲間たちの活躍を見るにその必要はなさそうだと判断した。
「こいつを喰らいやがれ!」
とテンション高く攻撃するフェイルの攻撃は、今度は雑魔をざっくりと切り込んだ。
「漲れ……僕のDT魔力ゥ……ッ!」
トミヲは、右腕を水中に入れて、仲間を巻き込まないように注意しファイアーボールを雑魔に向けて放った。
それが止めになったのか、残っていたツルも水中に沈んでいった。少女の体も姿勢を維持できなくなったらしくゆっくりと転覆していった。
そして、少女の水面下にあったものが水上に現れる。コブのようなものに水草が生え、絡まっている。美しい少女からは想像できないなんとも醜いものがそこにはあった。
雑魔を倒し、ハンターたちはヘウイ親子探しをする。
しかし、他に痕跡もない上に雑魔が沼にいたのでは生存の可能性は低い物だった。
「雑魔に捕食された可能性が高いだろうとは思うが、遺品だけでも回収していきたいところだ」
と、ディアドラ。大王たるもの約束した事は守らなければならないのだ。たとえ亡くなったものの遺品だったとしても。
フェイルとガーレッドは残骸に近づくと水草をかき分けて遺品がないかと探すと、水草に引っかかるように赤い鞭を二つ見つけることができた。
「人の善意につけこむ最低最悪の雑魔だったな……きみらの無念、少しでも晴らせたか……?」
フェイルが呟いた言葉は、水面に消えていった。
ガーレッドは回収した赤い鞭をツアンプに見せて確認を取る。
「これは、私達シェノグ族の証として部族の者は全員、身に着けているものです……」
ツアンプは鞭を握りしめると静かに涙をこぼしている。
「あまり自分を責めないようにな。嬢ちゃんのせいじゃないんだ」
とガーレッドはツアンプを慰める。
トミヲもツアンプに声をかける。
「……シンドイだろうね。今は、悼んであげな。苦しみは村の皆でわけあってさ。だから今は、連れて帰ってあげよう」
苦しくても、いつか、前を向けるよ。そう続けて、ツアンプを村へと帰る道へと促した。
沼へ背を向け、ハンター達と赤い鞭を抱えたツアンプが帰っていく。
ガーレッドは、一人振り返り沼へ向け、人差し指と中指を立て目尻に添える。
「次元の彼方でまた会おう」
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ヘウイ一家をさがせ 水流崎トミヲ(ka4852) 人間(リアルブルー)|27才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/07/21 13:37:27 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/20 00:18:29 |