ゲスト
(ka0000)
腹ぺこユグディラに魚籠は重く
マスター:練子やきも

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/25 09:00
- 完成日
- 2015/07/31 17:47
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ヴァーン!? ゴレァオレノァゴァルゥアー!」
人間同士でも言語として認識されるかあやうい音声を発しながら、大きなネコ? を威嚇する男が居た。
「オアァーォウ! シュカァーッ!」
その、黒い毛皮に鼻の所だけ白くなった大ネコ? は、どうやら男の持った魚籠を狙っているらしい。相当腹が減っている様で、退く気は無いようだ。
●遡る事しばし
「こんだけ釣れりゃあ、また暫くは持つな」
海際の小さな忘れられた漁村で、孤児達と一緒に暮らすその男は、子供達の魚が食べたい、というささやかな希望に応えて、少々離れた秘密の釣り場へと足を運び、その帰りに大黒ネコ? に目を付けられたのだった。
「ぜぁー、ぜぁー……フン、テメェもなかなかやるじゃねえか」
戦い疲れ、地面に座り込みながら差し出した右手に、同じく隣に座り込み、ニヤリと笑う様に口を歪めながら右前足をプニッと載せる大黒ネコ?。
熱く拳を交え戦った強敵(友)への贈り物として魚籠を丸ごと渡した男が、自分が何しに行ったのかを思い出したのは、村へ帰って子供達の顔を見た後だった。
●夜釣りの釣果
子供達から散々ブーイングを飛ばされた後、夜釣りと洒落込むか、と再び釣り場に向かった男が大黒ネコと別れた場所に差し掛かろうとした時……。
「オイ! お前……誰にやられたァ!?」
道の傍らにボロボロになって倒れている大黒ネコがそこに在った。
「ニ……ニャグフッ」
うつ伏せに倒れたまま顔を上げ、此方へ手を伸ばした大黒ネコの手がパタリと地面に落ちた直後。男の脳裏に、フラッシュバックするように、様々なイメージが浮かんで来た。
抱え込んだ魚籠から取り出した魚を食べながら歩く大黒ネコ……。
ネコの前に立ち塞がり、トゲトゲの鎧を身に着けてゲヘゲヘ笑いながら棍棒を舐める巨大なコボルド……。
そのコボルドの攻撃を間一髪で躱しながらカウンターパンチの一撃でコボルドをノックダウンする大黒ネコ……。
次々と襲いかかって来るコボルドの手下達を右から左に次々に倒していく大黒ネコ……。
魚籠を持って歩み去る数匹のコボルド……。
「これは……、そうか! 食いもんを狙って来たコボルドに魚籠を奪われちまったって事なんだな?」
「ニャヴァッ!」
大黒ネコが何故かいきなり立ち上がった後、再度倒れ込み……さっきより大きくなったように見えるコボルドの群れを颯爽と倒す大黒ネコの姿が脳裏に浮かんだ。
「オ、オウ……。奮闘したけど残念ながら数の力には勝てず奪われちまったって事なんだな」
何となく理解できる。そう、漢には見栄を張らねばならない時というのもあるのだ。……まだ少々不満そうな感があるものの、不承不承といった感じに倒れたまま頷く大黒ネコ。
なんだかやけに普通に通じ合っている異種間コミュニケーションだったが、それを気にするような神経が通った生き物はこの場には存在しなかった。
「コボルド、そろそろ倒しとかねーとまた村に攻めてきたら厄介だしな。あとで村のキノコに協会に依頼の申請出すの頼んどくか」
となれば先ずはコボルドの巣が何処にあるのかを確かめなければ。持っていた釣り具を木の上に隠し、走り出した男。
その背後で、1匹のネコがヨロヨロと起き上がると、男の後を追うように走り出した。のだが……。
「のぉーわぁーっ!」
「ニャァーギャァー!!」
コボルドの斥候にあっさり見付かった2人が大量のコボルドから慌てて逃げ出したのは、それからすぐの事だった。
●ハンターオフィスにて
「緊急の依頼が入りました」
ハンターオフィスに、淡々とした受付嬢の声が響く。小さな村からやって来たというパルムが、救援要請を報せてきたらしい。
「近くの村が、コボルドの群れに襲われているようです。数は不明ですが数十を数えるとの事で、現在は門で攻勢を食い止めている模様。至急救援に向かって下さい」
テキパキと書類を用意しながら辺りを見回している受付嬢の言葉に、居合わせた数名のハンターが名乗りを上げた。
人間同士でも言語として認識されるかあやうい音声を発しながら、大きなネコ? を威嚇する男が居た。
「オアァーォウ! シュカァーッ!」
その、黒い毛皮に鼻の所だけ白くなった大ネコ? は、どうやら男の持った魚籠を狙っているらしい。相当腹が減っている様で、退く気は無いようだ。
●遡る事しばし
「こんだけ釣れりゃあ、また暫くは持つな」
海際の小さな忘れられた漁村で、孤児達と一緒に暮らすその男は、子供達の魚が食べたい、というささやかな希望に応えて、少々離れた秘密の釣り場へと足を運び、その帰りに大黒ネコ? に目を付けられたのだった。
「ぜぁー、ぜぁー……フン、テメェもなかなかやるじゃねえか」
戦い疲れ、地面に座り込みながら差し出した右手に、同じく隣に座り込み、ニヤリと笑う様に口を歪めながら右前足をプニッと載せる大黒ネコ?。
熱く拳を交え戦った強敵(友)への贈り物として魚籠を丸ごと渡した男が、自分が何しに行ったのかを思い出したのは、村へ帰って子供達の顔を見た後だった。
●夜釣りの釣果
子供達から散々ブーイングを飛ばされた後、夜釣りと洒落込むか、と再び釣り場に向かった男が大黒ネコと別れた場所に差し掛かろうとした時……。
「オイ! お前……誰にやられたァ!?」
道の傍らにボロボロになって倒れている大黒ネコがそこに在った。
「ニ……ニャグフッ」
うつ伏せに倒れたまま顔を上げ、此方へ手を伸ばした大黒ネコの手がパタリと地面に落ちた直後。男の脳裏に、フラッシュバックするように、様々なイメージが浮かんで来た。
抱え込んだ魚籠から取り出した魚を食べながら歩く大黒ネコ……。
ネコの前に立ち塞がり、トゲトゲの鎧を身に着けてゲヘゲヘ笑いながら棍棒を舐める巨大なコボルド……。
そのコボルドの攻撃を間一髪で躱しながらカウンターパンチの一撃でコボルドをノックダウンする大黒ネコ……。
次々と襲いかかって来るコボルドの手下達を右から左に次々に倒していく大黒ネコ……。
魚籠を持って歩み去る数匹のコボルド……。
「これは……、そうか! 食いもんを狙って来たコボルドに魚籠を奪われちまったって事なんだな?」
「ニャヴァッ!」
大黒ネコが何故かいきなり立ち上がった後、再度倒れ込み……さっきより大きくなったように見えるコボルドの群れを颯爽と倒す大黒ネコの姿が脳裏に浮かんだ。
「オ、オウ……。奮闘したけど残念ながら数の力には勝てず奪われちまったって事なんだな」
何となく理解できる。そう、漢には見栄を張らねばならない時というのもあるのだ。……まだ少々不満そうな感があるものの、不承不承といった感じに倒れたまま頷く大黒ネコ。
なんだかやけに普通に通じ合っている異種間コミュニケーションだったが、それを気にするような神経が通った生き物はこの場には存在しなかった。
「コボルド、そろそろ倒しとかねーとまた村に攻めてきたら厄介だしな。あとで村のキノコに協会に依頼の申請出すの頼んどくか」
となれば先ずはコボルドの巣が何処にあるのかを確かめなければ。持っていた釣り具を木の上に隠し、走り出した男。
その背後で、1匹のネコがヨロヨロと起き上がると、男の後を追うように走り出した。のだが……。
「のぉーわぁーっ!」
「ニャァーギャァー!!」
コボルドの斥候にあっさり見付かった2人が大量のコボルドから慌てて逃げ出したのは、それからすぐの事だった。
●ハンターオフィスにて
「緊急の依頼が入りました」
ハンターオフィスに、淡々とした受付嬢の声が響く。小さな村からやって来たというパルムが、救援要請を報せてきたらしい。
「近くの村が、コボルドの群れに襲われているようです。数は不明ですが数十を数えるとの事で、現在は門で攻勢を食い止めている模様。至急救援に向かって下さい」
テキパキと書類を用意しながら辺りを見回している受付嬢の言葉に、居合わせた数名のハンターが名乗りを上げた。
リプレイ本文
「これは門の前まで行くのは難しそうね……」
岩陰から身を乗り出しながら、門を殴り付けるコボルド達の姿を眺めて、リューリ・ハルマ(ka0502)が隣に立っているカイン・マッコール(ka5336)に話し掛ける。
「そうだね、すぐにざくろさんが来る筈ーー」
カインの言葉が終わるが早いか、突如起こる派手な爆発。味方を巻き込む前に、と計算して醍醐(ka4836)の放ったファイアーボールの炸裂だった。何事かと騒ぎ始めるコボルド達の耳に、炎に灼かれたコボルド達の悲鳴と共に、バイクのエンジン音が響く。
「待て、お前達の相手はざくろだっ!」
特撮チックな、やたら派手な登場となりながら、コボルド達の前をバイクで駆け抜けながら大剣で斬りつけ、そのままUターンして走り抜ける。
反撃とばかりにバラバラと投げられた石を、躱すまでもなく背後に置き去りながら、再び距離を取った位置でバイクを停止して不敵にコボルド達を見据える時音 ざくろ(ka1250)。完全に場の注目を掌握したその姿の裏で……。
「悪い事しちゃうなら……」
隠れていた岩陰から、一気に門の前まで走り込み
「ぐーぱんちっ!」
明らかにぐーぱんちでは済まない、大槍を地面に叩き付けながらコボルドを威嚇するリューリの姿に、直接威嚇された訳ではないコボルドまで怯んでいるようで。
「……僕の仕事は、奴らを駆除する、それだけだ」
冷静に呟きながら、リューリの拓いた道を進んだカイン。怯んでいるうちの一体のコボルドの首を、その生命と共にカインのサーベルが刈り取る。
僅か数秒の攻防で、圧倒的に数に勝る筈のコボルド達の布陣は、普通なら分断している状態の筈のその配置を、ハンター達から挟撃されている状態に持ち込まれていた。
●ユグ(に)まっしぐら?
「この子は……何をしているのでしょうか……?」
銃撃支援に向いた場所を探しているうちに、なんだかコボルドから隠れて何かをしているように見える、大きめの黒いネコを見掛けたのは、エリシュカ・リフラー(ka0489)だった。
「コボルド達の司令塔……にしちゃあ、体隠して耳隠さずってのも妙だ……な」
喋りながら見えてきた、猫の規格からは若干外れたサイズのその生物に
(まぁ……こんな事もあらぁな……)
と、遠い目をしながら常識を懐かしむ醍醐だったが、すぐに気を取り直して、その大猫の相手はエリシュカに任せ、周囲を警戒する。
「きみは、何か、しようと……してるの、かな?」
突然現れたエリシュカ達に一瞬警戒の色を見せた大黒猫だったが、敵意がない事に気付くとそのまま作業に戻るネコ。どうやら壁に刺さっている木片を外そうとしているようだった。
良く見ると何だかそこに扉のような線が入っている事に醍醐が気付いた直後、その木片が外れ、大黒猫が親指? を立てながら『ニャッ!』と声を上げると……。
「よぉっしゃあぁー! いぃーくぞぁーゴブリン共ァー!」
壁の一部が開き、中から勢い良く、木刀を持った男が飛び出して来た。
「っしゃあ、誰かは知らねえが助勢ありがてえ! ーーまず、手始めにその通路にもう一度入ってみてくれ!」
「おうよ! 任せてくれ!」
突如現れた謎の男の姿を確認して、明らかに戦闘の邪魔になりそうだと判断した醍醐の提案に、勢いのまま素直に応じて、出てきた隠し通路にそのまま戻る男。
男が通路に入ったのを確認して扉をパタンと閉めた醍醐の目の前にアースウォールの土壁が盛り上がり、通路を塞ぐ。
「うぉっ!? 開かネェ!? コボルドの仕業かっ! オイ、オッサン! 大丈夫か!?」
(この数相手に一般人庇いながら戦う余裕はねえよ。悪いが、大人しくしててくれ……)
壁の向こうから響く声に、聞こえないフリで無言を貫く醍醐だった。
一方、門の前では、激しい戦闘が続いていた。
「向こうは後ろには下がれないんだ、もっとこっちに引き付けないと……。くらえ必殺! デルタエンド!」
バイクで距離を置きながらコボルドを誘き寄せているざくろの、気合の声と共に、眼前に現れた三角形の光の板の、その頂点からそれぞれ伸びた光条がコボルドを貫き
「一気に行くよ!」
明るい掛け声と共に、側にいたカインに視線で合図するリューリに、軽い頷きで返答し、その場に伏せたカイン。その上でリューリがそのしなやかな身体を大きく回転させ、遠心力に任せて一気に振り回した槍が周囲を薙ぎ払う。
槍を振り回し終えたリューリの隙を狙ったコボルドを、すかさず立ち上がったカインが逆手に持った盾で殴り付け、体勢を崩した所でそのコボルドの首を一気に引き斬る。
「……死にかけは辛いだろう」
斬られた首筋から大量の血を流しながら、大地を紅く染め上げ転がり回るコボルドに、せめてもの慈悲のトドメを刺すカイン。その青い瞳に映ったのは一体何だっただろう。振り下ろすその刃に、一切の迷いは無く。その冷めた瞳は、次のターゲットを探して揺らめいていた。
●MOGURA叩き
「待たせたなオッサン! 大丈夫だったか? コボルドはどうなった?」
隠し通路を男ごと封印して、仲間達の援護に向かおうとした醍醐の背後から、聞こえてはいけない筈の声が響く。……どうやら隠し通路は一つではなかったらしい。
「何っ!? ……いや、こっちは何ともないぜ、襲って来た奴はこっちで撃退した。所でよ、ちょっと確認しておきたいんだが、その扉が中からちゃんと閉まるか試してくれねえか?」
「おう、任せろ!」
汗をダラダラ流しながら、どうにか男を言いくるめる醍醐の言葉にあっさりと応じて、通路に入って扉を閉じる男。
「……バカで良かった……」
再びアースウォールで封印を施し、流れる汗を手で拭う醍醐の前方で、再度騒ぎ声が響いたのはその後すぐだった。
「コボルドを、混乱、とか、させたり、して、くれると、皆さん、少し、楽に、なるから……」
しゃがみこんで大黒猫に視線を合わせ、頼んでみるエリシュカの言葉に、欠伸を返す大黒猫。エリシュカが見せてみたツナ缶にも然程興味を示さず、……なかなか撫でさせてくれない。
(もしかして……匂い?)
と、ふと思い付いて缶詰めをパキャッと開けてみたエリシュカの前で、カッ! と目を見開く大黒猫。
足下に転がってゴロゴロ言いながらゴロンゴロン転がるネコのおなかはとてもフカフカしていた。
「そろそろ限界かな……」
バイクに乗ったざくろを追うコボルドが居なくなってきた所で、今度は接近戦に移行するざくろ。高速での移動手段を放棄したざくろを見てチャンスと考え、一気に殺到するコボルド達に
「寄ってくるなら消毒だよ……! 超機導火炎放射!」
なんとなくモヒカンっぽい雰囲気を漂わせつつ、ざくろの放った帯状の炎が、前方の汚物……ではなくコボルドを焼き尽くすように薙ぎ払う。再度追い払われたコボルド達のその後ろから……
「手段なんてどうでもいい、奴らを殺して此処を護る……それだけだ」
躊躇いなく背後から斬り捨てるカインと
「何だかユグディラの気配がする! っていうかモフモフしたい!モフりたい!」
なんとなく本能で、近くにネコがいる事を察知したリューリが、モコモコした毛皮を想像しながらも……
「ゆっくりモフる為にも、絶対にコボルドは1匹も逃がさないからね〜!」
……処刑の執行を宣告する。
ざくろとリューリ、カインが合流できる程にその数を減らされたコボルド達に、もはや抗えるだけの戦力は残っていなかった。
ーーいっぽうーー
「……そこだっ!」
閉じていた目をカッと開いた醍醐の声が響くと共に、土の壁が盛り上がり、隠し通路と思しき場所を塞ぎ……
「ん? また開かねえ!? くそッ! コボルドめ!」
無事、現れかけた男の封印に成功する。……単に音がした所を塞いだだけなのだが。
そしてエリシュカは……
「がんばって〜」
食べるものをたらふく食べ終わった後でようやく、任せておけ! とばかりに自分の胸をポンと叩いて立ち上がった大黒猫に、間延びした黄色い声援を送るエリシュカだったが……。
「……あれ?」
「……ニャッ?」
エリシュカとユグディラが、ツナ缶とモフモフをお互いに堪能している間に、……戦闘は……終わっていた……。
「さっきからもう、気になって気になってさあ!」
目をキラキラさせながら駆け寄るざくろと、
「モッフモフ〜」
ひと仕事終えて、モフり倒しモードに入ったリューリが、大黒猫の元へと駆け寄って来る。
何だかよくわからないまでもチヤホヤされて悪い気はしていないようで、ネコの方も特に嫌がる様子は無いようだ。
「コボルドの妨害で遅くなっちまったな、すまねえ!」
木刀を構えながら更に別の出口から出てきた男に
「ああ……うん、大変だったな、まぁ無事で何よりだ」
と、流石に男を直視できない醍醐だった。
「それはともかくさ、感染症とかの二次災害も怖いし、コボルドの死骸は早めに処分しといた方が良いと思う」
カインの言葉で、まだやる事はある事に気付いた男が村の男衆を呼び集め、コボルドを焼き払う、なんだか香ばしい匂いが漂う中。
「この子、村で飼ってみたらどうかな? 教えれば魚釣りとか覚えてくれるかもしれないし」
希望者による厳然たるジャンケン順番に従い、今はリューリに抱き上げられていたユグディラの今後についての、リューリの提案だったが、抱き上げられたまま腕組みして首を横に振る大黒猫。
「ニャ、ニャニャ、ニャニャーニャニャ」
「さっぱりわからねえ……」
醍醐の言葉にネコがニャッと答えると、荒野のようなイメージ、森のようなイメージ、何かを探すユグディラ達のイメージ。……あと、ツナ缶?
ツナ缶のイメージにバッテンのイメージが重なり、またツナ缶のイメージが浮かびバッテンのイメージが重なる。
どうやら、何かを伝えたかったのだがツナ缶の事しか考えられなくなったらしい。
「つまり、なんか探し物があるからここに居着く訳には行かねえ、って事か?」
何故か通じる異種間コミュニケーションに、ポン、と前足を打ち男を指差す大黒猫。そういう事らしい。
やがてゆっくりとした時間は終わり、コボルド焼きが終わった頃、男から貰った魚の干物と、エリシュカから貰ったツナ缶の残りを背負って旅立つユグディラと、帰路に着くハンター達。
彼等を見守るように、見送るように、高々と昇った煙は空へとたなびいていた。
岩陰から身を乗り出しながら、門を殴り付けるコボルド達の姿を眺めて、リューリ・ハルマ(ka0502)が隣に立っているカイン・マッコール(ka5336)に話し掛ける。
「そうだね、すぐにざくろさんが来る筈ーー」
カインの言葉が終わるが早いか、突如起こる派手な爆発。味方を巻き込む前に、と計算して醍醐(ka4836)の放ったファイアーボールの炸裂だった。何事かと騒ぎ始めるコボルド達の耳に、炎に灼かれたコボルド達の悲鳴と共に、バイクのエンジン音が響く。
「待て、お前達の相手はざくろだっ!」
特撮チックな、やたら派手な登場となりながら、コボルド達の前をバイクで駆け抜けながら大剣で斬りつけ、そのままUターンして走り抜ける。
反撃とばかりにバラバラと投げられた石を、躱すまでもなく背後に置き去りながら、再び距離を取った位置でバイクを停止して不敵にコボルド達を見据える時音 ざくろ(ka1250)。完全に場の注目を掌握したその姿の裏で……。
「悪い事しちゃうなら……」
隠れていた岩陰から、一気に門の前まで走り込み
「ぐーぱんちっ!」
明らかにぐーぱんちでは済まない、大槍を地面に叩き付けながらコボルドを威嚇するリューリの姿に、直接威嚇された訳ではないコボルドまで怯んでいるようで。
「……僕の仕事は、奴らを駆除する、それだけだ」
冷静に呟きながら、リューリの拓いた道を進んだカイン。怯んでいるうちの一体のコボルドの首を、その生命と共にカインのサーベルが刈り取る。
僅か数秒の攻防で、圧倒的に数に勝る筈のコボルド達の布陣は、普通なら分断している状態の筈のその配置を、ハンター達から挟撃されている状態に持ち込まれていた。
●ユグ(に)まっしぐら?
「この子は……何をしているのでしょうか……?」
銃撃支援に向いた場所を探しているうちに、なんだかコボルドから隠れて何かをしているように見える、大きめの黒いネコを見掛けたのは、エリシュカ・リフラー(ka0489)だった。
「コボルド達の司令塔……にしちゃあ、体隠して耳隠さずってのも妙だ……な」
喋りながら見えてきた、猫の規格からは若干外れたサイズのその生物に
(まぁ……こんな事もあらぁな……)
と、遠い目をしながら常識を懐かしむ醍醐だったが、すぐに気を取り直して、その大猫の相手はエリシュカに任せ、周囲を警戒する。
「きみは、何か、しようと……してるの、かな?」
突然現れたエリシュカ達に一瞬警戒の色を見せた大黒猫だったが、敵意がない事に気付くとそのまま作業に戻るネコ。どうやら壁に刺さっている木片を外そうとしているようだった。
良く見ると何だかそこに扉のような線が入っている事に醍醐が気付いた直後、その木片が外れ、大黒猫が親指? を立てながら『ニャッ!』と声を上げると……。
「よぉっしゃあぁー! いぃーくぞぁーゴブリン共ァー!」
壁の一部が開き、中から勢い良く、木刀を持った男が飛び出して来た。
「っしゃあ、誰かは知らねえが助勢ありがてえ! ーーまず、手始めにその通路にもう一度入ってみてくれ!」
「おうよ! 任せてくれ!」
突如現れた謎の男の姿を確認して、明らかに戦闘の邪魔になりそうだと判断した醍醐の提案に、勢いのまま素直に応じて、出てきた隠し通路にそのまま戻る男。
男が通路に入ったのを確認して扉をパタンと閉めた醍醐の目の前にアースウォールの土壁が盛り上がり、通路を塞ぐ。
「うぉっ!? 開かネェ!? コボルドの仕業かっ! オイ、オッサン! 大丈夫か!?」
(この数相手に一般人庇いながら戦う余裕はねえよ。悪いが、大人しくしててくれ……)
壁の向こうから響く声に、聞こえないフリで無言を貫く醍醐だった。
一方、門の前では、激しい戦闘が続いていた。
「向こうは後ろには下がれないんだ、もっとこっちに引き付けないと……。くらえ必殺! デルタエンド!」
バイクで距離を置きながらコボルドを誘き寄せているざくろの、気合の声と共に、眼前に現れた三角形の光の板の、その頂点からそれぞれ伸びた光条がコボルドを貫き
「一気に行くよ!」
明るい掛け声と共に、側にいたカインに視線で合図するリューリに、軽い頷きで返答し、その場に伏せたカイン。その上でリューリがそのしなやかな身体を大きく回転させ、遠心力に任せて一気に振り回した槍が周囲を薙ぎ払う。
槍を振り回し終えたリューリの隙を狙ったコボルドを、すかさず立ち上がったカインが逆手に持った盾で殴り付け、体勢を崩した所でそのコボルドの首を一気に引き斬る。
「……死にかけは辛いだろう」
斬られた首筋から大量の血を流しながら、大地を紅く染め上げ転がり回るコボルドに、せめてもの慈悲のトドメを刺すカイン。その青い瞳に映ったのは一体何だっただろう。振り下ろすその刃に、一切の迷いは無く。その冷めた瞳は、次のターゲットを探して揺らめいていた。
●MOGURA叩き
「待たせたなオッサン! 大丈夫だったか? コボルドはどうなった?」
隠し通路を男ごと封印して、仲間達の援護に向かおうとした醍醐の背後から、聞こえてはいけない筈の声が響く。……どうやら隠し通路は一つではなかったらしい。
「何っ!? ……いや、こっちは何ともないぜ、襲って来た奴はこっちで撃退した。所でよ、ちょっと確認しておきたいんだが、その扉が中からちゃんと閉まるか試してくれねえか?」
「おう、任せろ!」
汗をダラダラ流しながら、どうにか男を言いくるめる醍醐の言葉にあっさりと応じて、通路に入って扉を閉じる男。
「……バカで良かった……」
再びアースウォールで封印を施し、流れる汗を手で拭う醍醐の前方で、再度騒ぎ声が響いたのはその後すぐだった。
「コボルドを、混乱、とか、させたり、して、くれると、皆さん、少し、楽に、なるから……」
しゃがみこんで大黒猫に視線を合わせ、頼んでみるエリシュカの言葉に、欠伸を返す大黒猫。エリシュカが見せてみたツナ缶にも然程興味を示さず、……なかなか撫でさせてくれない。
(もしかして……匂い?)
と、ふと思い付いて缶詰めをパキャッと開けてみたエリシュカの前で、カッ! と目を見開く大黒猫。
足下に転がってゴロゴロ言いながらゴロンゴロン転がるネコのおなかはとてもフカフカしていた。
「そろそろ限界かな……」
バイクに乗ったざくろを追うコボルドが居なくなってきた所で、今度は接近戦に移行するざくろ。高速での移動手段を放棄したざくろを見てチャンスと考え、一気に殺到するコボルド達に
「寄ってくるなら消毒だよ……! 超機導火炎放射!」
なんとなくモヒカンっぽい雰囲気を漂わせつつ、ざくろの放った帯状の炎が、前方の汚物……ではなくコボルドを焼き尽くすように薙ぎ払う。再度追い払われたコボルド達のその後ろから……
「手段なんてどうでもいい、奴らを殺して此処を護る……それだけだ」
躊躇いなく背後から斬り捨てるカインと
「何だかユグディラの気配がする! っていうかモフモフしたい!モフりたい!」
なんとなく本能で、近くにネコがいる事を察知したリューリが、モコモコした毛皮を想像しながらも……
「ゆっくりモフる為にも、絶対にコボルドは1匹も逃がさないからね〜!」
……処刑の執行を宣告する。
ざくろとリューリ、カインが合流できる程にその数を減らされたコボルド達に、もはや抗えるだけの戦力は残っていなかった。
ーーいっぽうーー
「……そこだっ!」
閉じていた目をカッと開いた醍醐の声が響くと共に、土の壁が盛り上がり、隠し通路と思しき場所を塞ぎ……
「ん? また開かねえ!? くそッ! コボルドめ!」
無事、現れかけた男の封印に成功する。……単に音がした所を塞いだだけなのだが。
そしてエリシュカは……
「がんばって〜」
食べるものをたらふく食べ終わった後でようやく、任せておけ! とばかりに自分の胸をポンと叩いて立ち上がった大黒猫に、間延びした黄色い声援を送るエリシュカだったが……。
「……あれ?」
「……ニャッ?」
エリシュカとユグディラが、ツナ缶とモフモフをお互いに堪能している間に、……戦闘は……終わっていた……。
「さっきからもう、気になって気になってさあ!」
目をキラキラさせながら駆け寄るざくろと、
「モッフモフ〜」
ひと仕事終えて、モフり倒しモードに入ったリューリが、大黒猫の元へと駆け寄って来る。
何だかよくわからないまでもチヤホヤされて悪い気はしていないようで、ネコの方も特に嫌がる様子は無いようだ。
「コボルドの妨害で遅くなっちまったな、すまねえ!」
木刀を構えながら更に別の出口から出てきた男に
「ああ……うん、大変だったな、まぁ無事で何よりだ」
と、流石に男を直視できない醍醐だった。
「それはともかくさ、感染症とかの二次災害も怖いし、コボルドの死骸は早めに処分しといた方が良いと思う」
カインの言葉で、まだやる事はある事に気付いた男が村の男衆を呼び集め、コボルドを焼き払う、なんだか香ばしい匂いが漂う中。
「この子、村で飼ってみたらどうかな? 教えれば魚釣りとか覚えてくれるかもしれないし」
希望者による厳然たるジャンケン順番に従い、今はリューリに抱き上げられていたユグディラの今後についての、リューリの提案だったが、抱き上げられたまま腕組みして首を横に振る大黒猫。
「ニャ、ニャニャ、ニャニャーニャニャ」
「さっぱりわからねえ……」
醍醐の言葉にネコがニャッと答えると、荒野のようなイメージ、森のようなイメージ、何かを探すユグディラ達のイメージ。……あと、ツナ缶?
ツナ缶のイメージにバッテンのイメージが重なり、またツナ缶のイメージが浮かびバッテンのイメージが重なる。
どうやら、何かを伝えたかったのだがツナ缶の事しか考えられなくなったらしい。
「つまり、なんか探し物があるからここに居着く訳には行かねえ、って事か?」
何故か通じる異種間コミュニケーションに、ポン、と前足を打ち男を指差す大黒猫。そういう事らしい。
やがてゆっくりとした時間は終わり、コボルド焼きが終わった頃、男から貰った魚の干物と、エリシュカから貰ったツナ缶の残りを背負って旅立つユグディラと、帰路に着くハンター達。
彼等を見守るように、見送るように、高々と昇った煙は空へとたなびいていた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 リューリ・ハルマ(ka0502) エルフ|20才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/07/24 23:22:57 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/21 22:26:25 |