ゲスト
(ka0000)
孤独な獅子
マスター:STANZA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/21 22:00
- 完成日
- 2014/08/01 07:24
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「この辺りに現れる歪虚も、だいぶ強くなって来たな……」
真夜中の森で歪虚に浸食された不定型なモノを斬り捨て、男は剣を鞘に収めた。
反撃を受けた傷が、じんじんと痛む。
剣の腕にはそれなりの自信があったが、四方を囲まれては流石に無傷とはいかなかった。
時間さえあればマテリアルヒーリングを使う事も出来る。
しかし一人では、その時間を作る事さえ難しかった。
「そろそろ限界、か」
男は軽く溜息を吐く。
しかし、ハンター達は協力してくれるだろうか。
この仕事は殆ど無報酬。
ハンターオフィスに正式な依頼を出す金もない人々の為に行うボランティアなのだ。
命の危険もある歪虚狩りを、何の見返りも求めずに行う者など——
「いや、いるかもしれない」
何かを思い出した様に、男は口元を緩めた。
次に何かあった時には、彼等にも打診してみよう。
————
その機会は、意外に早く訪れた。
現場はダウンタウンの一角にある墓地。
そこに埋葬された古い骨が、歪虚に浸食されて甦ったと言う。
しかし、ダウンタウンの住民には高額なハンターオフィスの報酬を払える者などいない。
何人かで分担したとしても、とても払える金額ではなかった。
「じゃあ何か? 金のない奴等は黙って歪虚に喰われろってのか?」
誰かが腹立たしげに吐き捨てる。
だが、「彼」の噂はこの街にも届いていた。
「まあ、待てよ。確かフマーレだったか……その辺りによ、いるらしいぜ?」
「いるって、何が?」
「俺らみたいな貧乏人の為に、タダ同然で歪虚を退治してくれるハンターが、さ。確か、白獅子とか呼ばれてたっけかな……」
ダウンタウンの住民は、横の繋がりが広い。
その情報網を利用して、歪虚退治の要請は瞬く間に「彼」の元へ届けられた。
「仕事の依頼だ、レオ」
蒸気工場都市フマーレの一角にある、小さな家。
薄暗い部屋の奥にある机の向こうに、一人の男が座っていた。
男の名はデルフィーノ・ジョフレ。
その右足は伸ばされたまま、傍らには杖が立てかけてある。
どうやら、彼は足が悪い様だ。
デルフィーノは入って来たもう一人の男に声をかけ、一通の手紙を渡した。
レオと呼ばれた男はそれを黙って受け取ると、書かれた内容に目を通す。
「スケルトンが三十体以上……」
レオは眉を顰めた。
「最低でも、だ。それは今までに目撃された数……しかも、正確とは限らない」
デルフィーノが杖を頼りに立ち上がり、ゆっくりと机の脇を回って来る。
「やめた方が良いと思うがな。下手すりゃ俺の二の舞になるぜ?」
「だが助けを求める者がいるなら、放っておく訳にはいくまい」
それに、とレオは続けた。
「ハンター達が手を貸してくれるかもしれない」
「奴等が? おい、依頼の内容より、まず報酬の額を見る様な連中だぜ?」
デルフィーノはどうやら、ハンター達に余り良い印象を持っていない様だ。
「だが、新しくハンターになった者達は少し違うかもしれない」
レオが言った。
「私は何度か彼等と接したが——」
「まあ、そう思うなら頼んでみれば良いさ」
デルフィーノは投げやりにも聞こえる言葉を返す。
「もし金を要求されたら、お前が自分で何とかするんだな」
「ああ、そのつもりだ」
後刻。
レオの姿はハンターオフィスにあった。
「誰か、私と共に来る者はいないか」
頭部をすっぽりと覆う兜の為に顔は見えないが、そこから流れ出る金色の髪は肩の下まで伸びている。
身に着けたプレートメイルと背に負った盾は骨董品の様な古さだが、手入れは行き届いている様だ。
腰に帯びた剣もやはり古い物の様だが、これも手入れはされているのだろう。
「場所はポルトワールのダウンタウン、その一角にある墓地だ」
ダウンタウンと聞いて、小さな影が立ち上がった。
金色の髪を奔放に跳ね散らかした少年が、レオの前に立つ。
「兄ちゃん……で、良いんだよな? オレはアルド、ダウンタウンを仕切るカナイオ・スイーパーのリーダーだ」
ダウンタウンに踏み込むなら道案内が必要だ。
「オレも一緒に行ってやるぜ」
「良いのか、報酬は殆ど出ないが——」
「オレらカナイオ・スイーパーも、基本はボランティアさ」
アルドはニッと笑って親指を立てた。
「ノブレス・オブリージュの精神って奴だろ?」
「まあ、そうだな」
レオの声は、僅かに笑みを含んでいる様に聞こえた。
これで一人。
他に誰か、協力してくれる者はいないだろうか——?
真夜中の森で歪虚に浸食された不定型なモノを斬り捨て、男は剣を鞘に収めた。
反撃を受けた傷が、じんじんと痛む。
剣の腕にはそれなりの自信があったが、四方を囲まれては流石に無傷とはいかなかった。
時間さえあればマテリアルヒーリングを使う事も出来る。
しかし一人では、その時間を作る事さえ難しかった。
「そろそろ限界、か」
男は軽く溜息を吐く。
しかし、ハンター達は協力してくれるだろうか。
この仕事は殆ど無報酬。
ハンターオフィスに正式な依頼を出す金もない人々の為に行うボランティアなのだ。
命の危険もある歪虚狩りを、何の見返りも求めずに行う者など——
「いや、いるかもしれない」
何かを思い出した様に、男は口元を緩めた。
次に何かあった時には、彼等にも打診してみよう。
————
その機会は、意外に早く訪れた。
現場はダウンタウンの一角にある墓地。
そこに埋葬された古い骨が、歪虚に浸食されて甦ったと言う。
しかし、ダウンタウンの住民には高額なハンターオフィスの報酬を払える者などいない。
何人かで分担したとしても、とても払える金額ではなかった。
「じゃあ何か? 金のない奴等は黙って歪虚に喰われろってのか?」
誰かが腹立たしげに吐き捨てる。
だが、「彼」の噂はこの街にも届いていた。
「まあ、待てよ。確かフマーレだったか……その辺りによ、いるらしいぜ?」
「いるって、何が?」
「俺らみたいな貧乏人の為に、タダ同然で歪虚を退治してくれるハンターが、さ。確か、白獅子とか呼ばれてたっけかな……」
ダウンタウンの住民は、横の繋がりが広い。
その情報網を利用して、歪虚退治の要請は瞬く間に「彼」の元へ届けられた。
「仕事の依頼だ、レオ」
蒸気工場都市フマーレの一角にある、小さな家。
薄暗い部屋の奥にある机の向こうに、一人の男が座っていた。
男の名はデルフィーノ・ジョフレ。
その右足は伸ばされたまま、傍らには杖が立てかけてある。
どうやら、彼は足が悪い様だ。
デルフィーノは入って来たもう一人の男に声をかけ、一通の手紙を渡した。
レオと呼ばれた男はそれを黙って受け取ると、書かれた内容に目を通す。
「スケルトンが三十体以上……」
レオは眉を顰めた。
「最低でも、だ。それは今までに目撃された数……しかも、正確とは限らない」
デルフィーノが杖を頼りに立ち上がり、ゆっくりと机の脇を回って来る。
「やめた方が良いと思うがな。下手すりゃ俺の二の舞になるぜ?」
「だが助けを求める者がいるなら、放っておく訳にはいくまい」
それに、とレオは続けた。
「ハンター達が手を貸してくれるかもしれない」
「奴等が? おい、依頼の内容より、まず報酬の額を見る様な連中だぜ?」
デルフィーノはどうやら、ハンター達に余り良い印象を持っていない様だ。
「だが、新しくハンターになった者達は少し違うかもしれない」
レオが言った。
「私は何度か彼等と接したが——」
「まあ、そう思うなら頼んでみれば良いさ」
デルフィーノは投げやりにも聞こえる言葉を返す。
「もし金を要求されたら、お前が自分で何とかするんだな」
「ああ、そのつもりだ」
後刻。
レオの姿はハンターオフィスにあった。
「誰か、私と共に来る者はいないか」
頭部をすっぽりと覆う兜の為に顔は見えないが、そこから流れ出る金色の髪は肩の下まで伸びている。
身に着けたプレートメイルと背に負った盾は骨董品の様な古さだが、手入れは行き届いている様だ。
腰に帯びた剣もやはり古い物の様だが、これも手入れはされているのだろう。
「場所はポルトワールのダウンタウン、その一角にある墓地だ」
ダウンタウンと聞いて、小さな影が立ち上がった。
金色の髪を奔放に跳ね散らかした少年が、レオの前に立つ。
「兄ちゃん……で、良いんだよな? オレはアルド、ダウンタウンを仕切るカナイオ・スイーパーのリーダーだ」
ダウンタウンに踏み込むなら道案内が必要だ。
「オレも一緒に行ってやるぜ」
「良いのか、報酬は殆ど出ないが——」
「オレらカナイオ・スイーパーも、基本はボランティアさ」
アルドはニッと笑って親指を立てた。
「ノブレス・オブリージュの精神って奴だろ?」
「まあ、そうだな」
レオの声は、僅かに笑みを含んでいる様に聞こえた。
これで一人。
他に誰か、協力してくれる者はいないだろうか——?
リプレイ本文
ハンター達は、まだ明るいうちに現場に着いた。
「これで良し、と」
ヴァンシュトール・H・R(ka0169)は、町へと続く墓場の入口にロープを張り、そこにランタンを吊す。
それは骸骨達が墓地から出て行くのを防ぐと共に、野次馬や何も知らない人々が不用意に入り込まない様にする為の警戒線でもあった。
「備え在れば憂い無しってね」
同時に鈴も付けておけば鳴子の代わりにもなる。
「アルドさんには、ここで緊急時の援護と周辺の監視をお願いしますね」
摩耶(ka0362)に言われ、アルドは少し硬い表情で頷く。
「ちょっと緊張してる?」
そんなリーダーに、カナイオ・スイーパー団員のリアリュール(ka2003)が声をかけた。
「うん、まあね」
ここを守るのはアルドひとり。
別に怖くはないが、責任は重大だ。
「大丈夫、その為のコレだからね」
ヴァンシュトールがロープに付けた鈴をチリンと鳴らす。
一人では目が届かない事があったとしても、こうしておけば他の仲間が異変に気付いて援護してくれるだろう。
ただ、町の住民はまだしも骸骨達が律儀に門から出入りするとは限らない。
摩耶とリアリュールは柵の隙間など他にも抜けられそうな場所を探して、ロープで封鎖していった。
そこに吊されたのは、リアリュールが町の人から借りて来たヤカンや鍋、フライパン等々……
「レオさんもボランティアでなんて、いつもそうなの?」
「ああ、そうだが」
「だったら、こういうのはどうかな?」
お金は出せなくても、道具を貸す事は出来る。
これなら町の人も「タダで退治して貰った」という負い目を感じずに済むだろう。
「負い目、か」
それは考えた事がなかった。
そう言えば、皆はどんな思いでこの仕事を受けてくれたのだろう。
「スケルトンさん、墓場で安らかに眠ってたのになんだかかわいそうだね。なんとかして墓場に戻してあげたいな……」
そう言いながら、ミウ・ミャスカ(ka0421)は倒されていない墓石の上にランタンを置いた。
「ちょっとバチ当たりかもしれないけど、ここに置かせてね?」
地面に置くよりも、この方が広範囲を照らせるだろう。
「あとは木の上……あれ、届かないよ?」
と、その手からランタンがひょいと取り上げられる。
「ここか?」
「あ、レオさん。ありがとうだよ」
手伝ってくれたレオに、ミウはふわりと微笑む。
「碌な報酬もないのに、すまないな」
「んー……気持ちよく眠れそうな場所を教えてくれれば別にいいかな」
猫が日向ぼっこをしている様な場所、とか?
しかし、そんなミウとは対照的に、ミスティ・メイフィールド(ka0782)はご立腹だった。
「無償で歪虚退治なんて愚の骨頂ですわ。受ける側にもメリットが無いばかりか、頼む側も堕落してしまいますもの」
こうして受けた自分も人のことは言えないが、それはそれとして。
「やるならば少しはやりかたを考えるべきですわね」
金がないなら、ある所――評議会や商人達に出して貰えば良いのだ。
援助を引き出す方法は考えどころだが、歪虚を放置するデメリットを強調してはどうか。
「例えば掃除屋さんにちょっとのお金を払う事でそれを軽減できるとなれば、向こうも考慮する価値はあるのではなくて?」
だが、ここはダウンタウン。
この町を守る事に、彼等がどれだけの意義を見出してくれる事か。
「私は自分の腕が必要なら依頼人の力になるなら、それで良い」
そう呟いたのはジーナ(ka1643)だ。
「仕事は仕事だ」
報酬の多寡は気にしないし、政治的な主張などで仕事を選ぶつもりもなかった。
「私も報酬は必要ありません」
イレア・ディープブルー(ka0175)にとっては、キャラバンの名を売る事こそが報酬である様だ。
(ダウンタウンの住民の横のつながり――これは宣伝のチャンスですね!)
人々の口コミは、情報の正確さに多少の難があるとしても。
様々な考え方があるものだ。
それを知っただけでも、彼等に依頼して良かったとレオは思う。
後は無事に仕事を終えるだけだ。
やがて墓地が薄暮の中に沈み始めた頃。
各所に設置されたランタンや松明に明かりが灯される。
昼間の様に明るく、とまでは行かないが、明るいうちに下見を終えて墓石の配置なども頭に入っている為、行動に支障はないだろう。
ハンター達はメンバーを三つの班に分ける。
ミスティはA班として右翼に展開、メンバーは他にイレアとジーナの二人だ。
「イレアさんともう一人さん、宜しくお願い致しますわ」
ドワーフ嫌いとして知られるエルフらしく、ジーナに対しては名前も呼ばない。
しかし挨拶はきちんとしているあたり、ただ「らしく」振る舞おうとしているだけ、なのかもしれない。
摩耶とリアリュール、シーゲル・ジョウ(ka1134)はB班として左翼を担当、残る真ん中は司令塔のヴァンシュトールに、ミウとレオを加えた三人だ。
「なんだか眠くなってきちゃうな……あふぅ」
ミウは欠伸をひとつ。
「でも早くスケルトンさんを眠らせてわたしも寝たいし、頑張っちゃうんだよ。レオさん、よろしくね?」
見上げたミウに、レオが無言で頷く。
その様子に気負いを感じた摩耶が声をかけた。
「ほんの少しだけ、共に戦う仲間を頼ってください――あ、申し遅れました。初めまして、私は摩耶と申します」
「ありがとう。だが君達も私を頼ってくれ」
実のところ、レオは戦闘よりも回復術の方が得意なのだ。
と、その直後。
安らかに眠っていた筈の者達が目覚め始めた。
「さっ、骨は速やかにお墓の中に戻って貰おうか」
ヴァンシュトールは全体をざっと見渡すと、各班に指示を出す。
「バラバラに十体程度だね。まずは左右から挟み撃ち、僕達C班は後ろに逸らさない様に足止めを主体に行こう」
それを受けて、それぞれが持ち場に散った。
「群れで出てくるたァ、よっぽど俺に蹴散らされてェんだな」
やっと出番が来たと、シーゲルはバルディッシュを振り回しながら骸骨の群れに突っ込んで行く。
普段の戦法はジャマダハルを使って相手の懐に飛び込む近接格闘タイプだが、今日の相手は骸骨だ。
それなら重量のあるこの三日月斧をブン回し、近付かれる前に叩き潰す――いや、叩き壊してやる。
「いいぜ。お望み通りブチのめしてやるよ」
まだ遠い間合いから機導砲を一発、当たっても相手は怯む様子も見せないが、構わずにそのまま突っ込み、投げて来た骨ごと斧の分厚い刃で叩き割る。
骸骨がバラバラに崩れたのを見届ける間もなく、シーゲルは次の獲物へ。
摩耶はその間合いに入らない様に注意しながら瞬脚で移動、まともに立っている数少ない墓石の背後を伝いながらチェーンウィップを振るった。
「動く死体は暴食の歪虚といいますけれど、放っておくわけにも参りません。早急に退治して安らかな眠りにつかせてさしあげましょう」
飛んで来る骨は墓石を盾に、接近した所で足を狙って打ち払う。
「カナイオ・スイーパーとしての初仕事ね」
二人から少し距離を取ったリアリュールは、バランスを崩して転がった骸骨に向けて強弾を乗せた矢を放った。
動かない的なら狙いも付け易い。
骸骨は骨盤を砕かれて文字通り腰砕けになり、そこに摩耶が止めの鞭を一振り。
地を駆けるものの力を借り、骨を避けながら敵に接近したイレアは逆手に持った右手のダガーですれ違いざまに斬り付ける。
あまり手応えは感じられないが、構わず振り向き左手の拳銃を頭蓋に押し当て零距離射撃。
乾いた音と共に、それは粉々に砕け散った。
しかし、骸骨の本体は動きを止めず、手にしたサーベルを闇雲に振り回して来る。
体を捌いてそれを避けざま、懐に沈み込んで体当たりする様にクラッシュブロウ、脊柱を叩き砕いた。
ジーナは片手に松明を持ち、もう一方の手でグラディウスを振るう。
「死後とは安らかにあるべきだ」
元気すぎる死体に刃を打ち込み、ふらふらと遊びに行きたがるその足を止めた。
逃がさない様に、かつ後ろの仲間に通さない様に。
「もちろん私は魔術師ですもの、前衛はお任せしますわね」
その後ろに隠れる様にして、ミスティは魔法を連発。
相手は骨だが、魔法には関係ない。肉付きが良かろうと悪かろうと叩き込むのみだ。
「私の射線に入ると怪我しますわよ」
その身体を盾にしている以上は当然射線に入る訳だが、そう言いつつも、当てない様に位置取りとタイミングを計りながらきっちり援護していく。
どうやらもう慣れたらしく、ジーナとの連携も息がぴったりだ。
「貝の霊さん、力を貸してね」
ミウは貝殻の盾を構えて立つと、投げられる骨を防ぎつつウェイビングサーベルで本体に斬りつける。
ヴァンシュトールはその後ろで全体を視野に入れつつ、自らもリボルバーで応戦、まずは近くの墓から這い出そうとしている一体の頭を狙った。
「君は起きてきちゃ駄目だよ」
引き金を引いた瞬間、いつもより重たい一撃が頭蓋ばかりか上半身もろとも粉々に吹き飛ばす。
二人の友人が想いを乗せてくれた結果だろう。
ハンター達は墓地の外周から中心部へと包囲の輪を狭めていく。
しかし彼等が通り過ぎるのを待っていたかの様に、その背後から第二陣の骸骨達が姿を現した。
「AB各班、後ろに十体ずつ出たよ。まずは進路を塞いで!」
その可能性もあると踏んでいたヴァンシュトールは冷静に指示、仲間達は墓地の外に向かって歩き始めたその前に回り込む。
ここから再び包囲を狭めて行くのだ。
シーゲルは斧を豪快に振り回す。
「だいぶ大振りになるが、勢いある方が骨を砕くにゃ丁度いいだろ」
この数と密度なら適当に振り回しているだけでも当たりそうだ。
仲間の巻き添え? 知るか、勝手に避けろ!
と言うか、子供が見たら泣き出しそうな壮絶な笑顔で暴れ回る彼に自ら近付こうとする者はいないだろう。
それは笑顔ではあるが、それだけに余計に怖かった。
「おら、くたばれェ!」
振り下ろした斧を軸に足を振り上げ、強烈な蹴りを見舞う。
「ツレを殺ったのは骨野郎共じゃねェが、雑魔って時点で同罪だ。一匹たりとも逃してやるつもりはねェ」
頭蓋を鷲掴みにし、眉間に零距離機導砲。
自分の手まで吹っ飛ばしそうになるが、シーゲルは全く頓着しなかった。
一度に現れるものの他にも、骸骨は気紛れに姿を現す。
出鼻を挫くのが楽だというヴァンシュトールの指示に従い、リアリュールは今しも起き上がろうとしていた骸骨に強弾を乗せた矢を放った。
既に出歩いているものは摩耶が鞭を振るい、或いはリアリュールが牽制し、敵を集めて一網打尽。
「これでも元軍人、舐めないでいただきたいですね。通信士でしたけど」
通信士でも基礎訓練は受けている。
イレアは投げ付けられた骨を蹴り上げて弾くと、そのまま距離を詰めて頭蓋に銃口を近づけて射撃。
「……ふぅ。こんなものでしょうか」
一旦下がって体勢を立て直し、また次の標的を探す。
軍人たるもの、不用意に複数の相手はしない。囲まれそうになったら素早く位置を変え、敵の射線に他の敵を挟み込む。
「それにしても数が多いな」
ジーナは囲まれまいと移動を繰り返しつつ、クラッシュブロウを乗せた剣を叩き込む。
その背後にある倒れた墓石の下から、新たな骸骨が甦って来た。
しかし、背中を狙うその背中をミスティのウィンドスラッシュが切り裂いた。
「すまない、助かった」
「わ、私は最善の戦術を取っているだけですわ」
素直に礼を言うジーナに、ミスティはちょっと照れた様子でそっぽを向きながら答える。
「ほら、ぼやぼやしてると新手が来ますわよ!」
照れ隠しなのか、今度はファイアアローが飛んだ。
ミウは出来るだけ早く早く敵の数を減らせる様にと、クラッシュブロウを連続で叩き込む。
その隣ではレオが年代物のロングソードを振るっていた。
他の仲間達が左右から包囲網を狭めれば、骸骨達は自然と彼等の方に逃げて来る。
それを待ち伏せて叩くのが彼等の役目だ。
だが、敵は予想もしない時に近くの墓から突然現れる事もあった。
「そっちにいっちゃいけないよ」
ヴァンシュトールが牽制の一撃を見舞うが、それは怯む様子もなく出口の方へ歩いて行く。
更にもう一体、包囲網を抜けようとする。
そちらは動きに気付いたリアリュールが矢を放ち、その注意を逸らした隙にミウが飛び込んで止めを刺した。
だが、もう一体は――チリン、ロープに付けた鈴が鳴る。
ロープを切る知能さえないのか、骸骨はそこに引っかかったまま足踏みをしていた。
そこで待ち構えていたアルドは釘バットを思いきり振りかぶり、叩き付ける。
見送ってくれた友達と、オフィスで知り合ったお姉さんが力を貸してくれた気がした。
その一撃で、骸骨は崩れ去る。
他にはもう、抜けて来るものはいなかった。
「取りこぼしはない様だな」
暫く後、その鋭敏な視覚で辺りを確かめたジーナが言った。
「兵士が私情で動くのは愚かなことだけど……まっ、僕はもうただのハンターだからね」
こうして人情で戦うのも悪くはないと、ヴァンシュトールはレオに笑いかけた。
「さて、気を付けたつもりだけど、やっぱり荒れちゃってるね」
「遺骨もこんなことになるなんて」
リアリュールが散らばった白骨に目を落とす。
歪虚が取り憑いて間もないのか、大部分は元の遺骨に戻っていた。
「再び安らかに眠れるように、埋葬してあげようね」
「できればお墓の中に入れてあげたいけど、どのお墓かわからないね」
ミウが少し悲しげに言う。
だが、とにかくこのままにはしておけない。
ハンター達は遺骨をなるべく元通りに復元しつつ、一ヶ所に纏めた。
後で住民達に共同墓地でも作って貰えば良いだろう。
その後、彼等は手分けして荒れた墓地の手入れと修繕にかかった。
力仕事はドワーフの持ち味を活かしてジーナが買って出る。
それに男性陣、勿論レオとアルドも一緒に。
「少しでも明るくなるといいな」
周囲の雑草を引きながら、リアリュールが言った。
荒れた墓地には歪虚も居つきやすいのだろう。
町の皆が時々こうして手入れをするようになれば、これからも守って行けるだろうか。
戻ったら提案してみよう。
「五月蝿くしてごめんね。今度こそゆっくりおやすみ」
ヴァンシュトールはその下で眠りについているであろう誰かに手を合わせる。
「今度こそ安らかに眠ってね」
ミウは墓石に付いた泥を落としながら……うとうと、かくん。
後日、彼等は町の人々に結果の報告に行った。
「イレアと申します。ハンターは副業で、本業はリゼリオを拠点としたキャラバンで受付をしております」
にっこり営業スマイル。
「日用品から骨董品まで、両世界の品物をお安く取り扱っています。機会があればぜひ、ぜひ一度お越しくださいませ!」
いや、そうじゃなくて。
結果の報告を、ね?
「これで良し、と」
ヴァンシュトール・H・R(ka0169)は、町へと続く墓場の入口にロープを張り、そこにランタンを吊す。
それは骸骨達が墓地から出て行くのを防ぐと共に、野次馬や何も知らない人々が不用意に入り込まない様にする為の警戒線でもあった。
「備え在れば憂い無しってね」
同時に鈴も付けておけば鳴子の代わりにもなる。
「アルドさんには、ここで緊急時の援護と周辺の監視をお願いしますね」
摩耶(ka0362)に言われ、アルドは少し硬い表情で頷く。
「ちょっと緊張してる?」
そんなリーダーに、カナイオ・スイーパー団員のリアリュール(ka2003)が声をかけた。
「うん、まあね」
ここを守るのはアルドひとり。
別に怖くはないが、責任は重大だ。
「大丈夫、その為のコレだからね」
ヴァンシュトールがロープに付けた鈴をチリンと鳴らす。
一人では目が届かない事があったとしても、こうしておけば他の仲間が異変に気付いて援護してくれるだろう。
ただ、町の住民はまだしも骸骨達が律儀に門から出入りするとは限らない。
摩耶とリアリュールは柵の隙間など他にも抜けられそうな場所を探して、ロープで封鎖していった。
そこに吊されたのは、リアリュールが町の人から借りて来たヤカンや鍋、フライパン等々……
「レオさんもボランティアでなんて、いつもそうなの?」
「ああ、そうだが」
「だったら、こういうのはどうかな?」
お金は出せなくても、道具を貸す事は出来る。
これなら町の人も「タダで退治して貰った」という負い目を感じずに済むだろう。
「負い目、か」
それは考えた事がなかった。
そう言えば、皆はどんな思いでこの仕事を受けてくれたのだろう。
「スケルトンさん、墓場で安らかに眠ってたのになんだかかわいそうだね。なんとかして墓場に戻してあげたいな……」
そう言いながら、ミウ・ミャスカ(ka0421)は倒されていない墓石の上にランタンを置いた。
「ちょっとバチ当たりかもしれないけど、ここに置かせてね?」
地面に置くよりも、この方が広範囲を照らせるだろう。
「あとは木の上……あれ、届かないよ?」
と、その手からランタンがひょいと取り上げられる。
「ここか?」
「あ、レオさん。ありがとうだよ」
手伝ってくれたレオに、ミウはふわりと微笑む。
「碌な報酬もないのに、すまないな」
「んー……気持ちよく眠れそうな場所を教えてくれれば別にいいかな」
猫が日向ぼっこをしている様な場所、とか?
しかし、そんなミウとは対照的に、ミスティ・メイフィールド(ka0782)はご立腹だった。
「無償で歪虚退治なんて愚の骨頂ですわ。受ける側にもメリットが無いばかりか、頼む側も堕落してしまいますもの」
こうして受けた自分も人のことは言えないが、それはそれとして。
「やるならば少しはやりかたを考えるべきですわね」
金がないなら、ある所――評議会や商人達に出して貰えば良いのだ。
援助を引き出す方法は考えどころだが、歪虚を放置するデメリットを強調してはどうか。
「例えば掃除屋さんにちょっとのお金を払う事でそれを軽減できるとなれば、向こうも考慮する価値はあるのではなくて?」
だが、ここはダウンタウン。
この町を守る事に、彼等がどれだけの意義を見出してくれる事か。
「私は自分の腕が必要なら依頼人の力になるなら、それで良い」
そう呟いたのはジーナ(ka1643)だ。
「仕事は仕事だ」
報酬の多寡は気にしないし、政治的な主張などで仕事を選ぶつもりもなかった。
「私も報酬は必要ありません」
イレア・ディープブルー(ka0175)にとっては、キャラバンの名を売る事こそが報酬である様だ。
(ダウンタウンの住民の横のつながり――これは宣伝のチャンスですね!)
人々の口コミは、情報の正確さに多少の難があるとしても。
様々な考え方があるものだ。
それを知っただけでも、彼等に依頼して良かったとレオは思う。
後は無事に仕事を終えるだけだ。
やがて墓地が薄暮の中に沈み始めた頃。
各所に設置されたランタンや松明に明かりが灯される。
昼間の様に明るく、とまでは行かないが、明るいうちに下見を終えて墓石の配置なども頭に入っている為、行動に支障はないだろう。
ハンター達はメンバーを三つの班に分ける。
ミスティはA班として右翼に展開、メンバーは他にイレアとジーナの二人だ。
「イレアさんともう一人さん、宜しくお願い致しますわ」
ドワーフ嫌いとして知られるエルフらしく、ジーナに対しては名前も呼ばない。
しかし挨拶はきちんとしているあたり、ただ「らしく」振る舞おうとしているだけ、なのかもしれない。
摩耶とリアリュール、シーゲル・ジョウ(ka1134)はB班として左翼を担当、残る真ん中は司令塔のヴァンシュトールに、ミウとレオを加えた三人だ。
「なんだか眠くなってきちゃうな……あふぅ」
ミウは欠伸をひとつ。
「でも早くスケルトンさんを眠らせてわたしも寝たいし、頑張っちゃうんだよ。レオさん、よろしくね?」
見上げたミウに、レオが無言で頷く。
その様子に気負いを感じた摩耶が声をかけた。
「ほんの少しだけ、共に戦う仲間を頼ってください――あ、申し遅れました。初めまして、私は摩耶と申します」
「ありがとう。だが君達も私を頼ってくれ」
実のところ、レオは戦闘よりも回復術の方が得意なのだ。
と、その直後。
安らかに眠っていた筈の者達が目覚め始めた。
「さっ、骨は速やかにお墓の中に戻って貰おうか」
ヴァンシュトールは全体をざっと見渡すと、各班に指示を出す。
「バラバラに十体程度だね。まずは左右から挟み撃ち、僕達C班は後ろに逸らさない様に足止めを主体に行こう」
それを受けて、それぞれが持ち場に散った。
「群れで出てくるたァ、よっぽど俺に蹴散らされてェんだな」
やっと出番が来たと、シーゲルはバルディッシュを振り回しながら骸骨の群れに突っ込んで行く。
普段の戦法はジャマダハルを使って相手の懐に飛び込む近接格闘タイプだが、今日の相手は骸骨だ。
それなら重量のあるこの三日月斧をブン回し、近付かれる前に叩き潰す――いや、叩き壊してやる。
「いいぜ。お望み通りブチのめしてやるよ」
まだ遠い間合いから機導砲を一発、当たっても相手は怯む様子も見せないが、構わずにそのまま突っ込み、投げて来た骨ごと斧の分厚い刃で叩き割る。
骸骨がバラバラに崩れたのを見届ける間もなく、シーゲルは次の獲物へ。
摩耶はその間合いに入らない様に注意しながら瞬脚で移動、まともに立っている数少ない墓石の背後を伝いながらチェーンウィップを振るった。
「動く死体は暴食の歪虚といいますけれど、放っておくわけにも参りません。早急に退治して安らかな眠りにつかせてさしあげましょう」
飛んで来る骨は墓石を盾に、接近した所で足を狙って打ち払う。
「カナイオ・スイーパーとしての初仕事ね」
二人から少し距離を取ったリアリュールは、バランスを崩して転がった骸骨に向けて強弾を乗せた矢を放った。
動かない的なら狙いも付け易い。
骸骨は骨盤を砕かれて文字通り腰砕けになり、そこに摩耶が止めの鞭を一振り。
地を駆けるものの力を借り、骨を避けながら敵に接近したイレアは逆手に持った右手のダガーですれ違いざまに斬り付ける。
あまり手応えは感じられないが、構わず振り向き左手の拳銃を頭蓋に押し当て零距離射撃。
乾いた音と共に、それは粉々に砕け散った。
しかし、骸骨の本体は動きを止めず、手にしたサーベルを闇雲に振り回して来る。
体を捌いてそれを避けざま、懐に沈み込んで体当たりする様にクラッシュブロウ、脊柱を叩き砕いた。
ジーナは片手に松明を持ち、もう一方の手でグラディウスを振るう。
「死後とは安らかにあるべきだ」
元気すぎる死体に刃を打ち込み、ふらふらと遊びに行きたがるその足を止めた。
逃がさない様に、かつ後ろの仲間に通さない様に。
「もちろん私は魔術師ですもの、前衛はお任せしますわね」
その後ろに隠れる様にして、ミスティは魔法を連発。
相手は骨だが、魔法には関係ない。肉付きが良かろうと悪かろうと叩き込むのみだ。
「私の射線に入ると怪我しますわよ」
その身体を盾にしている以上は当然射線に入る訳だが、そう言いつつも、当てない様に位置取りとタイミングを計りながらきっちり援護していく。
どうやらもう慣れたらしく、ジーナとの連携も息がぴったりだ。
「貝の霊さん、力を貸してね」
ミウは貝殻の盾を構えて立つと、投げられる骨を防ぎつつウェイビングサーベルで本体に斬りつける。
ヴァンシュトールはその後ろで全体を視野に入れつつ、自らもリボルバーで応戦、まずは近くの墓から這い出そうとしている一体の頭を狙った。
「君は起きてきちゃ駄目だよ」
引き金を引いた瞬間、いつもより重たい一撃が頭蓋ばかりか上半身もろとも粉々に吹き飛ばす。
二人の友人が想いを乗せてくれた結果だろう。
ハンター達は墓地の外周から中心部へと包囲の輪を狭めていく。
しかし彼等が通り過ぎるのを待っていたかの様に、その背後から第二陣の骸骨達が姿を現した。
「AB各班、後ろに十体ずつ出たよ。まずは進路を塞いで!」
その可能性もあると踏んでいたヴァンシュトールは冷静に指示、仲間達は墓地の外に向かって歩き始めたその前に回り込む。
ここから再び包囲を狭めて行くのだ。
シーゲルは斧を豪快に振り回す。
「だいぶ大振りになるが、勢いある方が骨を砕くにゃ丁度いいだろ」
この数と密度なら適当に振り回しているだけでも当たりそうだ。
仲間の巻き添え? 知るか、勝手に避けろ!
と言うか、子供が見たら泣き出しそうな壮絶な笑顔で暴れ回る彼に自ら近付こうとする者はいないだろう。
それは笑顔ではあるが、それだけに余計に怖かった。
「おら、くたばれェ!」
振り下ろした斧を軸に足を振り上げ、強烈な蹴りを見舞う。
「ツレを殺ったのは骨野郎共じゃねェが、雑魔って時点で同罪だ。一匹たりとも逃してやるつもりはねェ」
頭蓋を鷲掴みにし、眉間に零距離機導砲。
自分の手まで吹っ飛ばしそうになるが、シーゲルは全く頓着しなかった。
一度に現れるものの他にも、骸骨は気紛れに姿を現す。
出鼻を挫くのが楽だというヴァンシュトールの指示に従い、リアリュールは今しも起き上がろうとしていた骸骨に強弾を乗せた矢を放った。
既に出歩いているものは摩耶が鞭を振るい、或いはリアリュールが牽制し、敵を集めて一網打尽。
「これでも元軍人、舐めないでいただきたいですね。通信士でしたけど」
通信士でも基礎訓練は受けている。
イレアは投げ付けられた骨を蹴り上げて弾くと、そのまま距離を詰めて頭蓋に銃口を近づけて射撃。
「……ふぅ。こんなものでしょうか」
一旦下がって体勢を立て直し、また次の標的を探す。
軍人たるもの、不用意に複数の相手はしない。囲まれそうになったら素早く位置を変え、敵の射線に他の敵を挟み込む。
「それにしても数が多いな」
ジーナは囲まれまいと移動を繰り返しつつ、クラッシュブロウを乗せた剣を叩き込む。
その背後にある倒れた墓石の下から、新たな骸骨が甦って来た。
しかし、背中を狙うその背中をミスティのウィンドスラッシュが切り裂いた。
「すまない、助かった」
「わ、私は最善の戦術を取っているだけですわ」
素直に礼を言うジーナに、ミスティはちょっと照れた様子でそっぽを向きながら答える。
「ほら、ぼやぼやしてると新手が来ますわよ!」
照れ隠しなのか、今度はファイアアローが飛んだ。
ミウは出来るだけ早く早く敵の数を減らせる様にと、クラッシュブロウを連続で叩き込む。
その隣ではレオが年代物のロングソードを振るっていた。
他の仲間達が左右から包囲網を狭めれば、骸骨達は自然と彼等の方に逃げて来る。
それを待ち伏せて叩くのが彼等の役目だ。
だが、敵は予想もしない時に近くの墓から突然現れる事もあった。
「そっちにいっちゃいけないよ」
ヴァンシュトールが牽制の一撃を見舞うが、それは怯む様子もなく出口の方へ歩いて行く。
更にもう一体、包囲網を抜けようとする。
そちらは動きに気付いたリアリュールが矢を放ち、その注意を逸らした隙にミウが飛び込んで止めを刺した。
だが、もう一体は――チリン、ロープに付けた鈴が鳴る。
ロープを切る知能さえないのか、骸骨はそこに引っかかったまま足踏みをしていた。
そこで待ち構えていたアルドは釘バットを思いきり振りかぶり、叩き付ける。
見送ってくれた友達と、オフィスで知り合ったお姉さんが力を貸してくれた気がした。
その一撃で、骸骨は崩れ去る。
他にはもう、抜けて来るものはいなかった。
「取りこぼしはない様だな」
暫く後、その鋭敏な視覚で辺りを確かめたジーナが言った。
「兵士が私情で動くのは愚かなことだけど……まっ、僕はもうただのハンターだからね」
こうして人情で戦うのも悪くはないと、ヴァンシュトールはレオに笑いかけた。
「さて、気を付けたつもりだけど、やっぱり荒れちゃってるね」
「遺骨もこんなことになるなんて」
リアリュールが散らばった白骨に目を落とす。
歪虚が取り憑いて間もないのか、大部分は元の遺骨に戻っていた。
「再び安らかに眠れるように、埋葬してあげようね」
「できればお墓の中に入れてあげたいけど、どのお墓かわからないね」
ミウが少し悲しげに言う。
だが、とにかくこのままにはしておけない。
ハンター達は遺骨をなるべく元通りに復元しつつ、一ヶ所に纏めた。
後で住民達に共同墓地でも作って貰えば良いだろう。
その後、彼等は手分けして荒れた墓地の手入れと修繕にかかった。
力仕事はドワーフの持ち味を活かしてジーナが買って出る。
それに男性陣、勿論レオとアルドも一緒に。
「少しでも明るくなるといいな」
周囲の雑草を引きながら、リアリュールが言った。
荒れた墓地には歪虚も居つきやすいのだろう。
町の皆が時々こうして手入れをするようになれば、これからも守って行けるだろうか。
戻ったら提案してみよう。
「五月蝿くしてごめんね。今度こそゆっくりおやすみ」
ヴァンシュトールはその下で眠りについているであろう誰かに手を合わせる。
「今度こそ安らかに眠ってね」
ミウは墓石に付いた泥を落としながら……うとうと、かくん。
後日、彼等は町の人々に結果の報告に行った。
「イレアと申します。ハンターは副業で、本業はリゼリオを拠点としたキャラバンで受付をしております」
にっこり営業スマイル。
「日用品から骨董品まで、両世界の品物をお安く取り扱っています。機会があればぜひ、ぜひ一度お越しくださいませ!」
いや、そうじゃなくて。
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MVP一覧
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ヴァンシュトール・H・R(ka0169)
重体一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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*ご相談* リアリュール(ka2003) エルフ|17才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/07/21 21:51:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/17 21:38:20 |