ゲスト
(ka0000)
格闘派ゴブリンと霧の戦い
マスター:松尾京

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/30 22:00
- 完成日
- 2015/08/06 00:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
深い森の中……そのゴブリンたちは、周りを警戒していた。
「ギギ……」
出るのは少しの焦りと、うなり声。顔を回し、木々の間に、必死に敵の姿を探す。
このゴブリンたちも、無勢ではなかった。
およそ十匹の群であり、身体には人間どもから奪った装備品を身につけている。
脇を固める側近達も、ライフルや弓を手にしていた。
中には、魔法を行使する個体さえいる。
それなのに、このゴブリンたちは、自分たちが勝てる気がしていなかった。それほどの強い相手と、戦っていたのである。
一言で言えば劣勢だ。
相手は、同じゴブリンであるのに……。
バサッ!
そのとき、木の陰から、一匹の影が飛び出してくる。そのゴブリンは銃も弓も持っていない。あるのはリーチの短いメリケンサックであった。
だが、視界の悪さを活かし、高速で駆ける。弓のゴブリンが攻撃をする前に、その拳を顔に叩き込んだ。
「チョィアッ!」
「ギェッ!?」
弓のゴブリンは強烈な打撃に、一撃で沈む。
その間に、さらに別のゴブリンが木の上から飛び降りてきた。
こちらは、ヌンチャクを装備している。
「ホァァッ!」
「ギギッ!?」
素速く振り回して、銃を持ったゴブリンを仕留めた。
焦るゴブリンたち。魔法を使える個体が遅まきながら反撃しようとするが――そこにハンドサポーターだけを付けた、武器を持たぬ、筋骨隆々のゴブリンが現れていた。
「フンッ!」
「ギアアアッ!」
拳で一撃。魔法使いのゴブリンはその生命を絶たれた。
フォオオ……と拳を突き出したままの状態で、気合いを入れた吐息を吐く筋肉ゴブリン。
そこに、ザッ、ザッ……と、トンファー、三節棍、六角棍を持ったゴブリンたちが並んだ。
彼らの誰もが、普通のゴブリンには見られぬ練度を、その筋肉に現していた。
やられる側のゴブリンたちは……彼らに、あっという間に全滅させられた。
彼らは、言うなれば、格闘派ゴブリン。
今宵もまた、縄張り争いに勝ち、その領土を広げた。
彼ら格闘派ゴブリンは、銃を持たぬ。弓を持たぬ。持つ武器と言えば、己の肉体と、その延長線上にある格闘武器のみだ。
その上で修行し、練度をひたすら高めることで、他のゴブリンを駆逐するに至っていた。
銃や弓を持った相手には、視界の悪い環境や足場の悪い場所で勝負を挑むことによって、勝利した。
それが彼らの栄光だった。
武装で固めた敵にも格闘戦で勝利を得ることが、よくはわからないが彼らのプライドでありアイデンティティなのであった。多分。
とはいえゴブリンはゴブリンである。
別に高潔な精神があるわけでもなく、普通に人間から略奪も繰り返していた。
そういうときは夜半や霧が出たときに村に降りて、自分たちの得意な格闘戦で人間たちを襲うのが常だった。
その日も、朝から山のふもとの村を、霧が覆っていた。
このあたりでは、吹き込んだ湿った風が、朝方の冷え込みで霧を生むことが時たまあった。そういうタイミングが、彼ら格闘派ゴブリンにとって、一番のチャンスである。
人間が猟銃などを持っていたとしても、霧の中ではまともに狙えない。接近戦なら、ゴブリンたちには鍛え上げた筋肉がある。
絶好の略奪日和というわけであった。
「ギギギー!」
拳闘ゴブリンを筆頭に、格闘派ゴブリンは山を駆け下り、村を襲った。
「うわっ! ゴブリンだ!」
「おい、誰か銃を……って何だこいつの大胸筋は――!?」
「くっ、僧帽筋の盛り上がりが尋常じゃない――!」
火の粉を散らすように逃げていく村人達。
農村強襲の報はすぐさまハンターオフィスへ届けられ――霧の中、格闘派ゴブリンを目指して、ハンターたちは村へ踏み入った。
「ギギ……」
出るのは少しの焦りと、うなり声。顔を回し、木々の間に、必死に敵の姿を探す。
このゴブリンたちも、無勢ではなかった。
およそ十匹の群であり、身体には人間どもから奪った装備品を身につけている。
脇を固める側近達も、ライフルや弓を手にしていた。
中には、魔法を行使する個体さえいる。
それなのに、このゴブリンたちは、自分たちが勝てる気がしていなかった。それほどの強い相手と、戦っていたのである。
一言で言えば劣勢だ。
相手は、同じゴブリンであるのに……。
バサッ!
そのとき、木の陰から、一匹の影が飛び出してくる。そのゴブリンは銃も弓も持っていない。あるのはリーチの短いメリケンサックであった。
だが、視界の悪さを活かし、高速で駆ける。弓のゴブリンが攻撃をする前に、その拳を顔に叩き込んだ。
「チョィアッ!」
「ギェッ!?」
弓のゴブリンは強烈な打撃に、一撃で沈む。
その間に、さらに別のゴブリンが木の上から飛び降りてきた。
こちらは、ヌンチャクを装備している。
「ホァァッ!」
「ギギッ!?」
素速く振り回して、銃を持ったゴブリンを仕留めた。
焦るゴブリンたち。魔法を使える個体が遅まきながら反撃しようとするが――そこにハンドサポーターだけを付けた、武器を持たぬ、筋骨隆々のゴブリンが現れていた。
「フンッ!」
「ギアアアッ!」
拳で一撃。魔法使いのゴブリンはその生命を絶たれた。
フォオオ……と拳を突き出したままの状態で、気合いを入れた吐息を吐く筋肉ゴブリン。
そこに、ザッ、ザッ……と、トンファー、三節棍、六角棍を持ったゴブリンたちが並んだ。
彼らの誰もが、普通のゴブリンには見られぬ練度を、その筋肉に現していた。
やられる側のゴブリンたちは……彼らに、あっという間に全滅させられた。
彼らは、言うなれば、格闘派ゴブリン。
今宵もまた、縄張り争いに勝ち、その領土を広げた。
彼ら格闘派ゴブリンは、銃を持たぬ。弓を持たぬ。持つ武器と言えば、己の肉体と、その延長線上にある格闘武器のみだ。
その上で修行し、練度をひたすら高めることで、他のゴブリンを駆逐するに至っていた。
銃や弓を持った相手には、視界の悪い環境や足場の悪い場所で勝負を挑むことによって、勝利した。
それが彼らの栄光だった。
武装で固めた敵にも格闘戦で勝利を得ることが、よくはわからないが彼らのプライドでありアイデンティティなのであった。多分。
とはいえゴブリンはゴブリンである。
別に高潔な精神があるわけでもなく、普通に人間から略奪も繰り返していた。
そういうときは夜半や霧が出たときに村に降りて、自分たちの得意な格闘戦で人間たちを襲うのが常だった。
その日も、朝から山のふもとの村を、霧が覆っていた。
このあたりでは、吹き込んだ湿った風が、朝方の冷え込みで霧を生むことが時たまあった。そういうタイミングが、彼ら格闘派ゴブリンにとって、一番のチャンスである。
人間が猟銃などを持っていたとしても、霧の中ではまともに狙えない。接近戦なら、ゴブリンたちには鍛え上げた筋肉がある。
絶好の略奪日和というわけであった。
「ギギギー!」
拳闘ゴブリンを筆頭に、格闘派ゴブリンは山を駆け下り、村を襲った。
「うわっ! ゴブリンだ!」
「おい、誰か銃を……って何だこいつの大胸筋は――!?」
「くっ、僧帽筋の盛り上がりが尋常じゃない――!」
火の粉を散らすように逃げていく村人達。
農村強襲の報はすぐさまハンターオフィスへ届けられ――霧の中、格闘派ゴブリンを目指して、ハンターたちは村へ踏み入った。
リプレイ本文
●突入
「霧の濃さは、想像以上ですね。ここからでは、村の内部の様子もほとんど見えない」
村へ向かう道中、レオン・フォイアロート(ka0829)が双眼鏡をのぞきつつ言う。
それでも時折、霧の間にゴブリンの姿がのぞくことはあった。情報通り、筋肉を纏った頑強そうな個体である。
「珍しい、っつうか興味深いゴブリンだな。何にせよ略奪が正当化されるわけじゃねえが」
駆けながら柊 真司(ka0705)が言えば、榊 兵庫(ka0010)も槍を手に、頷いた。
「うむ。色モノだからと足元を掬われないようにせねばな。何より――弱くはなさそうだ」
「うん。無闇に攻めるには視界が悪いし……二手に分かれて、北から順に攻めない?」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)の提案に、ハンターたちはそれぞれ同意して、村へと突入する。
「中からも、本当に何も見えねえなぁ……」
村の北端。西側で探索する役犬原 昶(ka0268)は霧の中、見回す。予想以上の濃さの霧は、数歩先の視界も奪うほどだった。
「建物すら、見えるかどうかだぜ。こりゃ」
「まあ、いいじゃない。サーチアンドデストロイ! ゴブリンがいたら、殴るだけよ」
セリス・アルマーズ(ka1079)はその周囲をがしゃがしゃと歩き回っている。
「一人ではぐれると危ないぜ、セリス」
「平気よ。この装備と、それにエクラの加護があるもの」
並ぶ真司とそんな会話をしたりしていた。
「とりあえず、この段だけでも調べちゃおうよ」
言いつつ、アルトはトランシーバーを取り出す。
「――東側はどう?」
「変わらずだ。霧しか見えん」
東側。エヴァンス・カルヴィ(ka0639)がトランシーバーに答えた。大剣テンペストから風を生み出すが、濃密すぎる霧を晴らすには至らない。
「まあ、それでも関係無いさ……俺には相棒が二人もいるからな」
豪快に笑って、探索に戻る。
「まだ敵の姿はないな――」
兵庫は四方を警戒しながら言っている。
と、その下方――
アイビス・グラス(ka2477)が坂を駆け下り、霧の中にいるぼんやりとした敵影を見ていた。
ギギ、と、アイビスの前に姿を現すのは……メリケンサックゴブリン。
「みんな、悪いんだけどここのゴブリンと戦わせてもらっていいかしら」
アイビスは仲間に連絡して了解を得ると……自分の拳をぶつけ、風の様なオーラを纏った。
メリケンサックゴブリンに向け、拳を構える。
「相当の修練を積み重ねたのでしょう。見てわかるわ。……私も同じ。だから――真っ向から挑ませてもらうわッ!」
ゴブリンは、それに応じるように、地を蹴った。
上段でも、エヴァンスの愛犬が何かを察知し、吠えていた。
「お? ロイ、パズ。何か見つけたか?」
「家の中に反応しているようですね」
エヴァンスとレオン、そして兵庫も家へ接近する。
と、その瞬間。
大きな破砕音と共に、正面の扉が砕けた。
「ギギッ!」
同時、拳闘ゴブリンが飛び出していた。レオンはその蹴りを、しっかりと防御している。
「――ようやく現れましたか」
西側でも、アルトの犬が家の影に反応していた。
そこからは、短い。アルトがそこへ入り込むと同時、その頭上を敵影が飛んだ。
拳闘ゴブリンだ。
「フォアッ!」
勢いのまま、拳を撃ち込んでくる。それを、同じく拳で受けるのは、昶だ。
「はっはー! 拳を使うとは、漢だな! 受けて立つぜ!」
一連の騒ぎに気付いたのだろう。西側のメリケンサックゴブリンも、坂を駆け上がってきた。そのままセリスに拳を放つが――しかし真司が間に入り込み、盾で受けていた。
「――やらせるかよ!」
●戦士
「出たなゴブリン。その力、試させてもらうぜ?」
東側。現れた拳闘ゴブリンに――エヴァンスは衝撃波を放っていた。
それを、ゴブリンは跳躍して紙一重で躱した。
「回避力も並ではないようですね。それならば――」
衝撃波で一瞬晴れた視界を、レオンは見逃さない。肉迫し、勢いを乗せて刺突攻撃を放った。
「ギッ!」
脇腹から血を流すゴブリンだが……しかし退かない。
兵庫へ狙いを定めパンチを繰り出す。ごっ! と、兵庫はかすかにだけノックバック。
「威力は相当なものだ、が、浅い!」
槍で威力を殺していた兵庫は、至近で斬撃を見舞った。
直撃を受けた拳闘ゴブリンは、エヴァンスの方へ逃れる。しかしエヴァンスも、剣を使わず、不意打ちの中段蹴りで敵の腹を抉った。
たたらを踏むゴブリンを、兵庫が追い詰めるが――視界の端にあるものに気付く。
それは、連絡役のトンファーゴブリンの姿だった。
兵庫が簡潔に事情を伝えると、エヴァンスは頷いた。
「いいぜ。俺も行こう。レオン、任せていいか」
「ええ」
レオンが頷くと、兵庫とエヴァンスは下方へ、トンファーゴブリンを追った。
一人になったレオンに、拳闘ゴブリンは好機、と突進していた。
しかしレオンはそれを、正面から剣で受けた。
「この威力。よくぞここまで鍛え上げたものです。ですが――日々鍛錬に励む者が貴方達だけではないことを、教えてあげましょう」
そして拳闘ゴブリンの懐へ飛び込み――ずおっ、と上段から苛烈な剣撃を放った。
ゴブリンはその一撃に耐えられず、倒れて絶命した。
メリケンサックゴブリンが放った最初の拳を、アイビスは体をずらして避けた。
だがその余波すら、暴風のように強烈。
「まともに当たれば、ただじゃすまなそうね」
アイビスは呟きつつ――木を蹴り、跳びながら、拳を打ち下ろす。
ギィッ、とゴブリンは前へ倒れる。が、流れるように飛び起きて、拳を放ってきた。
アイビスは後退して避けるも……地面の幅が狭く、すぐ段差に行き当たる。そこへ放たれた膝蹴りを、アイビスはアクロバティックに躱すが――
後ろをとった直後。ゴブリンは振り返りと同時に回し蹴りを放った。
がつっ! アイビスは腕でガードするが……その威力、防御してなお無視できぬ程。
「……強いわね。でも、負けないわ」
昶と拳闘ゴブリンは――初撃のあと、再び互いに拳を打ち込んでいた。
「おらぁっ!」
「ギギッ!」
ぼぼっ、と今度は互いの体に同時に命中。双方が後退した。
昶は体の痛みにも……しかし笑みを浮かべる。
「いい拳じゃねえか。もっと来てみろよ」
するとゴブリンが踏み込んで拳を打つ。昶は今度はうまく避け、横からクラッシュブロウを放つ。
「種族の垣根を越えて肉体言語で語り合おうじゃねえか!」
その一撃を……ゴブリンも強烈な拳で弾く。ゴブリンが攻撃をすると、昶もまた、拳で拳を打ち返した。
「面白ぇ」
一度下がり、自己治癒を施す。体力的にもぎりぎりと言ってよかったが……それでも、昶は戦いを楽しんでいた。
「見れば見るほど異様なゴブリンねぇ」
西の坂付近で、メリケンサックゴブリンを前にセリスは言った。
とはいえ――セリスがやることは、変わらない。見つけたら即攻撃。まっすぐ接近し、神への愛を込めつつ……ナックルで殴打した。
「ギィッ!」
ゴブリンが後退するところへ――炎色のオーラを纏ったアルトが、素速く迫る。戦いだけを映すその瞳が、冷徹にゴブリンを捉えていた。
「逃れられるとは思うな」
連続の斬撃に、ゴブリンは血潮を散らす。たまらず、壁を蹴って真司へ狙いを定めた。
そのまま膝蹴りを繰り出してくるが――真司は軌道を読み、盾で防御。すかさず、エア・スティーラーの銃口を向けた。
「この距離なら、銃でも霧は関係ねぇだろ?」
風を纏った銃弾が、メリケンサックゴブリンの胸を貫いた。それが、致命傷だ。ゴブリンは倒れ、動かなくなった。
アルトがトランシーバーで情報の共有を図る。
「……皆、問題はなさそうだ。このまま降りよう」
「了解」
真司が答え、三人はそのまま、更なる下段へ進んだ。
そして納屋付近。
アルトの犬が反応するので、三人が警戒すると――
「ホワァァッ!」
ばさっ! 納屋の影からヌンチャクゴブリンが飛び出した。
●闘争
納屋を挟んで東。エヴァンスと兵庫は武器を構えて見回していた。直前で見失ったが、トンファーゴブリンがここに潜んでいるはずだった。
「隠れていないで、出てきたらどうだ?」
と、兵庫が言った直後のことだ。
ばぁん! 焦れてか、納屋からトンファーゴブリンが突撃してきた。
不意打ちには近かったが……それはエヴァンスの正面だ。
「今度は外さないぜ!」
エヴァンスは衝撃波でゴブリンを止める。ギッ、とゴブリンは軌道を変更、兵庫へ跳び蹴りを放った。
兵庫はそれも予測済みだ。坂を蹴って躱し、逆に渾身撃を叩き込んだ。
肩から深く抉られたゴブリンは……坂へと上り、逃走をくわだてる。が、そこへ、レオンが追いついて、立ちはだかった。
「最後まで、立ち向かってはどうですか」
レオンの刺突で押し戻されたゴブリンは……勢い、兵庫へ飛びかかる。だがそれは、愚行。
「攻撃するには懐へ入ってこなくてはならない――その時点で、勝負は見えている。俺の制空圏に飛び込んで来た時が、最後と知れ!」
兵庫は槍を大きく振り、ゴブリンを切り裂く。ゴブリンは、地に落ちながら息絶えた。
アイビスはメリケンサックゴブリンに、再び立体攻撃を試みていた。
だがその拳を、がきっ、と腕でガードされる。ゴブリンが反撃で打ち出すパンチを、アイビスはバク転をして躱すが――
(膠着状態ね)
するとアイビスは、機敏な動きでリズムを変える。ゴブリンの動きを観察し……向こうが足を上げた瞬間に――キックを放った。テコンドーで言う、ネリョチャギを撃ち砕く、トルリョチャギ。
ゴブリンが驚いて出す拳も躱すと、顎へ、上段の拳を喰らわせた。
浮き上がるほどの衝撃を受けたゴブリンは……倒れ、絶命した。
「一眼・二足・三胆・四力――どの戦いでも、これを疎かにしちゃダメね」
アイビスは少しだけ、肩で息をしていた。
「……もっと、修練を積まないと」
昶と拳闘ゴブリンは、拳の打ち合いを続けていたが――拳闘ゴブリンが勝負を決めようと、跳躍して裏拳を繰り出してきた。
「ぐおっ……!」
昶は回避が遅れるも――拳を上げ、ぎりぎりでガード。逆に、空いた拳で、敵の拳に強烈なパンチを食らわせた。
「ギッ!」
鈍い音と共に、ゴブリンの拳の骨が砕ける。昶も息を上げながら……拳を突き出した。
「中々あっぱれなやつだぜ、お前は。これで最後にしよう」
するとゴブリンも、残った拳で――真っ向から攻撃してきた。双方が正面から拳を打ち合うと――倒れたのは、ゴブリンだった。
「……次、生まれ変わるなら、人間になりな。そしたらまた、殴り合おうじゃねぇか」
昶は傷だらけの体で、ゴブリンを見下ろした。
飛び出したヌンチャクゴブリンに、真司は銃を向け発砲していた。
それは命中するも――ゴブリンはヌンチャクで受け、ダメージを軽減している。
「どいつも一筋縄じゃいかねえか」
構え直す真司の横で、アルトも刀を構えるが――そこでまたも、犬が吠えた。アルトがそちらを見て、はっとする。
三節棍ゴブリンが、段差を登ってこようとしていた。挟み撃ちにするつもりだろう。
「――あのゴブリン、私に任せてくれないか」
「危なくなったら言ってくれよ」
真司の言葉に頷き、アルトは三節棍ゴブリンの対応へ向かった。
「とにかく、こっちもさっさと終わらせましょう」
セリスは目の前のヌンチャクゴブリンを凝視している。ただ目の前の倒すべき敵を。
ヌンチャクゴブリンは何かしらの脅威を感じて跳びすさるが……ごおっ! セリスが地面を殴ると、魔法の光の奔流が爆発。ゴブリンを襲った。
「ギィッ!」
ゴブリンは悲鳴を上げつつも、攻撃するしかない。
だがセリスに振るったヌンチャクは、真司の展開した防御障壁とセリス自身の装甲に阻まれた。
「そんなもの効かないわよ?」
セリスが発揮するのは……武術をねじ伏せる、重装甲と筋力による純粋な暴力。
魔力を込めてぶん回した盾で、ゴブリンを吹っ飛ばし、その命を絶った。
●制圧
アルトは三節棍ゴブリンの前に降り立っていた。
向こうも気づき――ざっ、とアルトと向き合う。
「おまえも接近戦に自信があるんだろう。私もなんだ。だから、一対一でやろう」
アルトの言葉に応じるように――ゴブリンは地を蹴って、三節棍を振り下ろした。
アルトは紙一重で躱す。それでも、炎色の髪が一本、はらりと断ち切られて落ちる。
(速いな)
だがアルトも抜刀し、剣撃を加えた。ゴブリンは喰らいながらも……しかし三節棍で威力を軽減している。そのまま反撃。連続攻撃のうち一撃を受け、アルトは後退した。
「いいだろう。それならば――」
アルトは息を整え、肉迫。剣を振り下ろすそぶりを見せるが――それはフェイント。
刀を右手に持ち替え、タイミングと方向をずらしての斬撃を喰らわせた。
その威力に、ゴブリンは……驚愕の表情のまま、倒れた。
アルトは刀を収め、見下ろした。
「惜しいな……人を襲いさえしなければ、な……」
敵の最後の一匹、六角棍ゴブリンは……奪った作物を抱え、逃走しようとしていた。
しかし西へ走ったところで、どん、と何かにぶつかる。
「そのまま行かせるわけないだろ?」
盾と銃を構えた、真司である。
発砲されて驚いたゴブリンは、作物を捨て、東の方向へ跳躍する。だが空中で大剣の斬撃を喰らった。
「残念だな。こっちも行き止まりだぜ」
愛剣のテンペストを振るうエヴァンスである。二人だけでなく、皆がゴブリンを包囲していた。
「ギギィ……」
やるしかないと判断したか、ゴブリンは六角棍を振るってエヴァンスを襲った。
ぎぃん、とエヴァンスは真正面から剣で受けた。
「鍛え上げたところ悪いが、一匹残らず狩らせてもらうつもりなんでな」
エヴァンスは距離を詰め、上段から剣を振り下ろす。脳天から両断され、ゴブリンは一瞬で絶命した。
村には安全が戻った。破壊されたり荒れされた場所はあったが、それも真司達の手伝いである程度の修復をみた。
セリスはゴブリンの死体を埋め、弔った。
「エクラの光の下、あらゆる命は平等に召されるのです」
歪虚は除く、とはセリス本人の談である。
「慈悲深いものだな」
兵庫の言葉にセリスは顔をぱっと明るくした。
「でしょう。エクラ教に入れば死後も安心。その上いろんな加護が見込めるかも! ということでエクラ教に入ってくれるわね?」
え、いきなり? という顔をする兵庫だけでなく、周りも勧誘するセリス。
「アルト君もアイビス君もエヴァンス君も。今時は一家に一信仰よ。真司君は入ってくれることになったんだっけ?」
「いや言った覚えはねえぞ……」
「何だか楽しそうだな!」
「あなたも入っていいのよ?」
昶にもそんなことを言うセリスだった。
「ひとまずは一度、帰還しましょうか」
賑やかしくなりつつも……レオンの言葉に、皆は頷いた。
「霧の濃さは、想像以上ですね。ここからでは、村の内部の様子もほとんど見えない」
村へ向かう道中、レオン・フォイアロート(ka0829)が双眼鏡をのぞきつつ言う。
それでも時折、霧の間にゴブリンの姿がのぞくことはあった。情報通り、筋肉を纏った頑強そうな個体である。
「珍しい、っつうか興味深いゴブリンだな。何にせよ略奪が正当化されるわけじゃねえが」
駆けながら柊 真司(ka0705)が言えば、榊 兵庫(ka0010)も槍を手に、頷いた。
「うむ。色モノだからと足元を掬われないようにせねばな。何より――弱くはなさそうだ」
「うん。無闇に攻めるには視界が悪いし……二手に分かれて、北から順に攻めない?」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)の提案に、ハンターたちはそれぞれ同意して、村へと突入する。
「中からも、本当に何も見えねえなぁ……」
村の北端。西側で探索する役犬原 昶(ka0268)は霧の中、見回す。予想以上の濃さの霧は、数歩先の視界も奪うほどだった。
「建物すら、見えるかどうかだぜ。こりゃ」
「まあ、いいじゃない。サーチアンドデストロイ! ゴブリンがいたら、殴るだけよ」
セリス・アルマーズ(ka1079)はその周囲をがしゃがしゃと歩き回っている。
「一人ではぐれると危ないぜ、セリス」
「平気よ。この装備と、それにエクラの加護があるもの」
並ぶ真司とそんな会話をしたりしていた。
「とりあえず、この段だけでも調べちゃおうよ」
言いつつ、アルトはトランシーバーを取り出す。
「――東側はどう?」
「変わらずだ。霧しか見えん」
東側。エヴァンス・カルヴィ(ka0639)がトランシーバーに答えた。大剣テンペストから風を生み出すが、濃密すぎる霧を晴らすには至らない。
「まあ、それでも関係無いさ……俺には相棒が二人もいるからな」
豪快に笑って、探索に戻る。
「まだ敵の姿はないな――」
兵庫は四方を警戒しながら言っている。
と、その下方――
アイビス・グラス(ka2477)が坂を駆け下り、霧の中にいるぼんやりとした敵影を見ていた。
ギギ、と、アイビスの前に姿を現すのは……メリケンサックゴブリン。
「みんな、悪いんだけどここのゴブリンと戦わせてもらっていいかしら」
アイビスは仲間に連絡して了解を得ると……自分の拳をぶつけ、風の様なオーラを纏った。
メリケンサックゴブリンに向け、拳を構える。
「相当の修練を積み重ねたのでしょう。見てわかるわ。……私も同じ。だから――真っ向から挑ませてもらうわッ!」
ゴブリンは、それに応じるように、地を蹴った。
上段でも、エヴァンスの愛犬が何かを察知し、吠えていた。
「お? ロイ、パズ。何か見つけたか?」
「家の中に反応しているようですね」
エヴァンスとレオン、そして兵庫も家へ接近する。
と、その瞬間。
大きな破砕音と共に、正面の扉が砕けた。
「ギギッ!」
同時、拳闘ゴブリンが飛び出していた。レオンはその蹴りを、しっかりと防御している。
「――ようやく現れましたか」
西側でも、アルトの犬が家の影に反応していた。
そこからは、短い。アルトがそこへ入り込むと同時、その頭上を敵影が飛んだ。
拳闘ゴブリンだ。
「フォアッ!」
勢いのまま、拳を撃ち込んでくる。それを、同じく拳で受けるのは、昶だ。
「はっはー! 拳を使うとは、漢だな! 受けて立つぜ!」
一連の騒ぎに気付いたのだろう。西側のメリケンサックゴブリンも、坂を駆け上がってきた。そのままセリスに拳を放つが――しかし真司が間に入り込み、盾で受けていた。
「――やらせるかよ!」
●戦士
「出たなゴブリン。その力、試させてもらうぜ?」
東側。現れた拳闘ゴブリンに――エヴァンスは衝撃波を放っていた。
それを、ゴブリンは跳躍して紙一重で躱した。
「回避力も並ではないようですね。それならば――」
衝撃波で一瞬晴れた視界を、レオンは見逃さない。肉迫し、勢いを乗せて刺突攻撃を放った。
「ギッ!」
脇腹から血を流すゴブリンだが……しかし退かない。
兵庫へ狙いを定めパンチを繰り出す。ごっ! と、兵庫はかすかにだけノックバック。
「威力は相当なものだ、が、浅い!」
槍で威力を殺していた兵庫は、至近で斬撃を見舞った。
直撃を受けた拳闘ゴブリンは、エヴァンスの方へ逃れる。しかしエヴァンスも、剣を使わず、不意打ちの中段蹴りで敵の腹を抉った。
たたらを踏むゴブリンを、兵庫が追い詰めるが――視界の端にあるものに気付く。
それは、連絡役のトンファーゴブリンの姿だった。
兵庫が簡潔に事情を伝えると、エヴァンスは頷いた。
「いいぜ。俺も行こう。レオン、任せていいか」
「ええ」
レオンが頷くと、兵庫とエヴァンスは下方へ、トンファーゴブリンを追った。
一人になったレオンに、拳闘ゴブリンは好機、と突進していた。
しかしレオンはそれを、正面から剣で受けた。
「この威力。よくぞここまで鍛え上げたものです。ですが――日々鍛錬に励む者が貴方達だけではないことを、教えてあげましょう」
そして拳闘ゴブリンの懐へ飛び込み――ずおっ、と上段から苛烈な剣撃を放った。
ゴブリンはその一撃に耐えられず、倒れて絶命した。
メリケンサックゴブリンが放った最初の拳を、アイビスは体をずらして避けた。
だがその余波すら、暴風のように強烈。
「まともに当たれば、ただじゃすまなそうね」
アイビスは呟きつつ――木を蹴り、跳びながら、拳を打ち下ろす。
ギィッ、とゴブリンは前へ倒れる。が、流れるように飛び起きて、拳を放ってきた。
アイビスは後退して避けるも……地面の幅が狭く、すぐ段差に行き当たる。そこへ放たれた膝蹴りを、アイビスはアクロバティックに躱すが――
後ろをとった直後。ゴブリンは振り返りと同時に回し蹴りを放った。
がつっ! アイビスは腕でガードするが……その威力、防御してなお無視できぬ程。
「……強いわね。でも、負けないわ」
昶と拳闘ゴブリンは――初撃のあと、再び互いに拳を打ち込んでいた。
「おらぁっ!」
「ギギッ!」
ぼぼっ、と今度は互いの体に同時に命中。双方が後退した。
昶は体の痛みにも……しかし笑みを浮かべる。
「いい拳じゃねえか。もっと来てみろよ」
するとゴブリンが踏み込んで拳を打つ。昶は今度はうまく避け、横からクラッシュブロウを放つ。
「種族の垣根を越えて肉体言語で語り合おうじゃねえか!」
その一撃を……ゴブリンも強烈な拳で弾く。ゴブリンが攻撃をすると、昶もまた、拳で拳を打ち返した。
「面白ぇ」
一度下がり、自己治癒を施す。体力的にもぎりぎりと言ってよかったが……それでも、昶は戦いを楽しんでいた。
「見れば見るほど異様なゴブリンねぇ」
西の坂付近で、メリケンサックゴブリンを前にセリスは言った。
とはいえ――セリスがやることは、変わらない。見つけたら即攻撃。まっすぐ接近し、神への愛を込めつつ……ナックルで殴打した。
「ギィッ!」
ゴブリンが後退するところへ――炎色のオーラを纏ったアルトが、素速く迫る。戦いだけを映すその瞳が、冷徹にゴブリンを捉えていた。
「逃れられるとは思うな」
連続の斬撃に、ゴブリンは血潮を散らす。たまらず、壁を蹴って真司へ狙いを定めた。
そのまま膝蹴りを繰り出してくるが――真司は軌道を読み、盾で防御。すかさず、エア・スティーラーの銃口を向けた。
「この距離なら、銃でも霧は関係ねぇだろ?」
風を纏った銃弾が、メリケンサックゴブリンの胸を貫いた。それが、致命傷だ。ゴブリンは倒れ、動かなくなった。
アルトがトランシーバーで情報の共有を図る。
「……皆、問題はなさそうだ。このまま降りよう」
「了解」
真司が答え、三人はそのまま、更なる下段へ進んだ。
そして納屋付近。
アルトの犬が反応するので、三人が警戒すると――
「ホワァァッ!」
ばさっ! 納屋の影からヌンチャクゴブリンが飛び出した。
●闘争
納屋を挟んで東。エヴァンスと兵庫は武器を構えて見回していた。直前で見失ったが、トンファーゴブリンがここに潜んでいるはずだった。
「隠れていないで、出てきたらどうだ?」
と、兵庫が言った直後のことだ。
ばぁん! 焦れてか、納屋からトンファーゴブリンが突撃してきた。
不意打ちには近かったが……それはエヴァンスの正面だ。
「今度は外さないぜ!」
エヴァンスは衝撃波でゴブリンを止める。ギッ、とゴブリンは軌道を変更、兵庫へ跳び蹴りを放った。
兵庫はそれも予測済みだ。坂を蹴って躱し、逆に渾身撃を叩き込んだ。
肩から深く抉られたゴブリンは……坂へと上り、逃走をくわだてる。が、そこへ、レオンが追いついて、立ちはだかった。
「最後まで、立ち向かってはどうですか」
レオンの刺突で押し戻されたゴブリンは……勢い、兵庫へ飛びかかる。だがそれは、愚行。
「攻撃するには懐へ入ってこなくてはならない――その時点で、勝負は見えている。俺の制空圏に飛び込んで来た時が、最後と知れ!」
兵庫は槍を大きく振り、ゴブリンを切り裂く。ゴブリンは、地に落ちながら息絶えた。
アイビスはメリケンサックゴブリンに、再び立体攻撃を試みていた。
だがその拳を、がきっ、と腕でガードされる。ゴブリンが反撃で打ち出すパンチを、アイビスはバク転をして躱すが――
(膠着状態ね)
するとアイビスは、機敏な動きでリズムを変える。ゴブリンの動きを観察し……向こうが足を上げた瞬間に――キックを放った。テコンドーで言う、ネリョチャギを撃ち砕く、トルリョチャギ。
ゴブリンが驚いて出す拳も躱すと、顎へ、上段の拳を喰らわせた。
浮き上がるほどの衝撃を受けたゴブリンは……倒れ、絶命した。
「一眼・二足・三胆・四力――どの戦いでも、これを疎かにしちゃダメね」
アイビスは少しだけ、肩で息をしていた。
「……もっと、修練を積まないと」
昶と拳闘ゴブリンは、拳の打ち合いを続けていたが――拳闘ゴブリンが勝負を決めようと、跳躍して裏拳を繰り出してきた。
「ぐおっ……!」
昶は回避が遅れるも――拳を上げ、ぎりぎりでガード。逆に、空いた拳で、敵の拳に強烈なパンチを食らわせた。
「ギッ!」
鈍い音と共に、ゴブリンの拳の骨が砕ける。昶も息を上げながら……拳を突き出した。
「中々あっぱれなやつだぜ、お前は。これで最後にしよう」
するとゴブリンも、残った拳で――真っ向から攻撃してきた。双方が正面から拳を打ち合うと――倒れたのは、ゴブリンだった。
「……次、生まれ変わるなら、人間になりな。そしたらまた、殴り合おうじゃねぇか」
昶は傷だらけの体で、ゴブリンを見下ろした。
飛び出したヌンチャクゴブリンに、真司は銃を向け発砲していた。
それは命中するも――ゴブリンはヌンチャクで受け、ダメージを軽減している。
「どいつも一筋縄じゃいかねえか」
構え直す真司の横で、アルトも刀を構えるが――そこでまたも、犬が吠えた。アルトがそちらを見て、はっとする。
三節棍ゴブリンが、段差を登ってこようとしていた。挟み撃ちにするつもりだろう。
「――あのゴブリン、私に任せてくれないか」
「危なくなったら言ってくれよ」
真司の言葉に頷き、アルトは三節棍ゴブリンの対応へ向かった。
「とにかく、こっちもさっさと終わらせましょう」
セリスは目の前のヌンチャクゴブリンを凝視している。ただ目の前の倒すべき敵を。
ヌンチャクゴブリンは何かしらの脅威を感じて跳びすさるが……ごおっ! セリスが地面を殴ると、魔法の光の奔流が爆発。ゴブリンを襲った。
「ギィッ!」
ゴブリンは悲鳴を上げつつも、攻撃するしかない。
だがセリスに振るったヌンチャクは、真司の展開した防御障壁とセリス自身の装甲に阻まれた。
「そんなもの効かないわよ?」
セリスが発揮するのは……武術をねじ伏せる、重装甲と筋力による純粋な暴力。
魔力を込めてぶん回した盾で、ゴブリンを吹っ飛ばし、その命を絶った。
●制圧
アルトは三節棍ゴブリンの前に降り立っていた。
向こうも気づき――ざっ、とアルトと向き合う。
「おまえも接近戦に自信があるんだろう。私もなんだ。だから、一対一でやろう」
アルトの言葉に応じるように――ゴブリンは地を蹴って、三節棍を振り下ろした。
アルトは紙一重で躱す。それでも、炎色の髪が一本、はらりと断ち切られて落ちる。
(速いな)
だがアルトも抜刀し、剣撃を加えた。ゴブリンは喰らいながらも……しかし三節棍で威力を軽減している。そのまま反撃。連続攻撃のうち一撃を受け、アルトは後退した。
「いいだろう。それならば――」
アルトは息を整え、肉迫。剣を振り下ろすそぶりを見せるが――それはフェイント。
刀を右手に持ち替え、タイミングと方向をずらしての斬撃を喰らわせた。
その威力に、ゴブリンは……驚愕の表情のまま、倒れた。
アルトは刀を収め、見下ろした。
「惜しいな……人を襲いさえしなければ、な……」
敵の最後の一匹、六角棍ゴブリンは……奪った作物を抱え、逃走しようとしていた。
しかし西へ走ったところで、どん、と何かにぶつかる。
「そのまま行かせるわけないだろ?」
盾と銃を構えた、真司である。
発砲されて驚いたゴブリンは、作物を捨て、東の方向へ跳躍する。だが空中で大剣の斬撃を喰らった。
「残念だな。こっちも行き止まりだぜ」
愛剣のテンペストを振るうエヴァンスである。二人だけでなく、皆がゴブリンを包囲していた。
「ギギィ……」
やるしかないと判断したか、ゴブリンは六角棍を振るってエヴァンスを襲った。
ぎぃん、とエヴァンスは真正面から剣で受けた。
「鍛え上げたところ悪いが、一匹残らず狩らせてもらうつもりなんでな」
エヴァンスは距離を詰め、上段から剣を振り下ろす。脳天から両断され、ゴブリンは一瞬で絶命した。
村には安全が戻った。破壊されたり荒れされた場所はあったが、それも真司達の手伝いである程度の修復をみた。
セリスはゴブリンの死体を埋め、弔った。
「エクラの光の下、あらゆる命は平等に召されるのです」
歪虚は除く、とはセリス本人の談である。
「慈悲深いものだな」
兵庫の言葉にセリスは顔をぱっと明るくした。
「でしょう。エクラ教に入れば死後も安心。その上いろんな加護が見込めるかも! ということでエクラ教に入ってくれるわね?」
え、いきなり? という顔をする兵庫だけでなく、周りも勧誘するセリス。
「アルト君もアイビス君もエヴァンス君も。今時は一家に一信仰よ。真司君は入ってくれることになったんだっけ?」
「いや言った覚えはねえぞ……」
「何だか楽しそうだな!」
「あなたも入っていいのよ?」
昶にもそんなことを言うセリスだった。
「ひとまずは一度、帰還しましょうか」
賑やかしくなりつつも……レオンの言葉に、皆は頷いた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 榊 兵庫(ka0010) 人間(リアルブルー)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/07/30 21:49:51 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/30 07:53:47 |