海で遊ぼう(兄妹編)

マスター:石田まきば

シナリオ形態
イベント
難易度
普通
オプション
参加費
500
参加制限
-
参加人数
1~25人
サポート
0~0人
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2015/07/31 22:00
完成日
2015/08/13 03:40

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●発端は兄妹から

 街がどんなものか、人間がどんなものか、彼らのお祭りがどんなものか。
 一度その興味が満たされると、次は、その先はと、気になってしまうのが好奇心と言うものである。
「エクゼ兄さん、海ってどんなところ?」
 中でも特に気になっているものを一つだけ、兄エクゼントの服の裾をくいと引いて尋ねる。
「……なにを言い淀んでいるかと思えば」
「その、やっぱり見てみたくて。水がすべてしょっぱいとか、水面に波があってずっと留まっていないとか……想像が追い付かなくて……」
 本で得た知識を並べてみたけれど、やっぱりそのイメージが全くできない。何故か涙目になってしまうくらいで。
「林檎を剥いた後浸けておく塩水とか、海水が近いって……舐めてみたりも、したんだけど……」
 あれは本当にしょっぱかった。そんな中を泳ぐ人がいるとか、浮かんで遊ぶとか……本当に、理解できなくて。
「やってみないと、実際に見ないとわからないって言われて、それで着いていったとき」
 どれだけ言葉を尽くしても、うまく伝えられる気はしないのだけれど。今、兄に伝えなくてはこのお願いも成功しない。
「本当に、凄かったの……! 文字だけじゃわからない事が、溢れてた……っ!」

(また森の外に出たい、と……そういうことか)
 友人の双子に比べれば、妹のデリアは大人しい方だと思う。こうしておねだりをすることも少ない。
 思いついてから今日の決行に至るまで、ずいぶんと考え悩んだろうと思う。……特に、以前は森の外に出ることを何処か怖がっている様子さえ見せていたくらいだ。去年、自分がリゼリオに行くときも心配そうにしていた。
(あまりねだらない子だからな……)
 滅多にない事態だ、叶えてやりたいという気持ちがある。
 勿論一人でとはいかない。きっと例の双子にも声を掛けるだろうから、保護者は複数居た方がいい。
(遊び方とやらも、知っている者が居なければならないか……)
 保護者というだけなら自分が休暇を取ればいいけれど、エクゼントは長老会付きの役人だ。滅多な理由では森の外に出ない。だからデリア同様、海についての知識は本で読んだ程度しかなかった。
 こういうとき、使える伝手というと一人しかいない。シャイネだ。
「……あいつに頼んでおく、それでいいか? 私もついていくことになるが」
「本当!?」
 デリアの瞳が輝く。持っていた本をぎゅっと抱きしめて、そわそわとしはじめる。
「日程は、これから休みを申請するから……少し待ってくれ」
「ありがとう兄さん……! 準備の時間もあると思うから、それで、十分……っ」

●海のしおり~吟遊詩人プロデュース~

「折角の機会だからね、海の遊びをめいっぱい楽しんでもらえたら、いい思い出になると思うよ♪」
 その為には人数が多い方がいいだろう? そう言って、APVに寄り人手の募集を掛けるのはシャイネの担当だ。
「楽しそうですねっ! でも、何をするかって決まってるんですか?」
 フクカンが受付の傍ら尋ねる。
「ふふ、勿論聞きこんでみたよ。その中でも大勢で楽しめそうな物を選んだつもり」
 微笑みながら話しだすシャイネ。
「じゃあそれも、募集内容に加えておきますね!」

<ウォーターフラッグ>
 海の上に浮かべられた3つのフロート。それぞれに立てられた3つの旗、それらを手にするのは誰か?
 海岸から皆で一斉にスタートして、より多くの旗を手に取ったチームが勝利♪
※ スキル使用全面OK、2チーム対抗ガチンコバトル!

<りんご割>
 目隠してぐるぐる回った者がバットを装備。
 周囲の助言を元に、小山状態に積み上げたりんごを割るべし!
※ エルフハイム産なのでやたら美味。割った分は自分の割り当てとして配られます。

「ところでシャイネさん、スキルの使用とか……細かいルールはあるんですよね?」
 心配そうに首を傾げるフクカンに、シャイネの微笑みが深くなる。
「ふふ、いい質問だね♪」
 よくぞ聞いてくれたと言わんばかりだ。
「お互いに怪我をしない、させないという基本的なマナーを守れば……それでOKにしようと思うんだ」
「えっ、本当に大丈夫なんですか?」
「一般のお客さんもいるだろうから、そういった人々を撒きこまないように、ってしっかり伝えておく必要があるけどね」
 そこは受付の時にも伝えておいてもらえるかな、と続く。
「それは勿論……でもまた、どうしてそんな」
「……ちょっとした牽制、かな?」
 くすりと笑って答える。
「楽しく過ごすのが一番だからね、参加してくれる皆だけじゃなくて、周りに居る人達も。特に、今回の発端であるお嬢さんが、かな」
 その少女達が世間知らずであることが一番の理由だったりする。全力で遊んでいる者達(主に戦闘能力を示しているハンター達)の中に居るエルフに、わざわざちょっかいを掛けようとする輩は居ないだろう……なんて。
(僕の親友君は心配性だからね♪)
 事件性は無い方がいいに決まっているし。兄が妹を思う気持ちは支援するに足るとも思う。
「それに、遊びを切欠に、新しい発見があるかもしれないじゃないか♪」
 スキルの新しい使い道とか。多分これはシャイネ流の建前だけれど。
「なるほど、興味深いですね! 私もいけたらよかったのに……はっ、ところで、勝ったチームには何か商品とかあるんですか?」
 せっかくの2チーム制なのだ、勝負するなら目標があった方がいい。
「そう言えば決まっていなかったね」
 うーん、と少しばかり首を傾げるシャイネ。
「負けた方の皆で、買った方の皆にそれぞれ食べ物一品奢る……とか?」
 海の家のメニューなら、特別高価なメニューもないだろう。無難なところである。

「それにしても……行けないのが残念だな」
「あれっ? シャイネさんも一緒じゃないんですか?」
 てっきり同行するんだと思っていたフクカンが、募集の所に添えたシャイネの名前を削除する。
「ちょっとね、用事が入ってしまったから。こうして当日の手配をするだけなんだ」
 だからこそ、お守り役として。ハンターの募集が多い……ということらしかった。

●海の家お品書き~金持ちパトロンをゲットした転移者を店長に添えて~

あたたかいもの
・焼きそば
・魚介焼き ※ その日の仕入れ次第
・ヴルスト ※ 串つき
・あげた芋
・肉入りズッペ

つめたいもの
・かき氷 ※ 目玉商品
・ビール
・ジュース ※ 炭酸はない

かしだせるもの
・うきわ
・パラソル

リプレイ本文



 今回は迷子にならなかったミミズク隊長、岩井崎 旭(ka0234)が叫ぶ!
「みんな、パラソルでも浮き輪でも、好きなもん構えろ!」
「「「おおー!!!」」」
「全員集合なのよ!」
「アサルトライダーズッ」
「と隊長の彼女」
「突撃ッ!! ってモニカはともかくシルヴィアぁ!?」
「事実じゃないですか」
「そ、そうだけどっ」
「初々しいでござる」
「ミィリアまで!?」
 遊ぶ前から賑やかである。

 移動中に見せられた水着を見た時から、むしろ海に行くと言い出した時からわかっていた。
「遊ぶぞーーー!」
 ミコト=S=レグルス(ka3953)の声高らかな炎天下、ルドルフ・デネボラ(ka3749)は場所取りに余念がない。
(可愛いけどしっかり泳ぐ気だよね)
 ミコトが纏うホルターネックのワンピース型水着は、ある意味で普段着よりも露出が少ないくらいだ。
「海の家は……あそこだね」
 支度が整ったことを確認し、よしと頷いた。

(前略お天道さんよ、もう少し控えてくれてもいいんじゃねぇか)
 海って塩でベタベタするし、暑いトコ苦手なんだケド……そんな台詞誰も聞いちゃくれなかった。
「それじゃ行ってくるね!」
 鈍いアイツ、リツカ=R=ウラノス(ka3955)がその一言だけで走っていくのがトルステン=L=ユピテル(ka3946)の視界に映った。

「わー海ー♪」
 転移してから初めての海、はしゃいだ声に少しだけ照れる。ビキニの赤さ程頬は染まっていないけれど、七夜・真夕(ka3977)は誤魔化すように周囲を見回した。
(あら?)
 知人が一人でいる様子に……ひとつ、思いついた。

 目が眩むような出会いを積み重ねて、一年を数えた。だから触発されたのかもしれない。
(もう少しだけ……)
 慣れない水着の上から薄手の服を羽織り、ラウィーヤ・マクトゥーム(ka0457)は海に臨んでいた。
 パラソルの下、手に持った伝承集から時折顔をあげて眺めると、つい目元が緩んでしまう。楽しい空気を分けてもらっているような気がする。
(……来て、よかったかも)
 一人で構わない筈が、知った声が聞こえるとホッとしたり、密かに抱いていた心細さに気付いたり。心の水面に小さな波紋を感じたその時。
「なにしてるの?」
 覗き込むように顔を近づける真夕。
「……あ、えっと」
 見つけられたことの驚きと、気恥ずかしさからくる焦りがラウィーヤの判断を遅くする。
「遊びに来たんでしょ、一緒に行きましょう!」
「……あの……?」
 気付けば手を引かれていた。

「ストレス発散と行こうか。一緒に思いっきりどう?」
「気分が落ち込む様な事が多かったからね。全力で体を動かしてみようかな」
 乱戦競技にカップルで参加。それはアルファス(ka3312)がお色気作戦の標的になった理由。
 ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)が支度で離れた隙に、オイルを塗る手伝いを頼まれる。
(後で何かある伏線だよね……さて?)
 いい人の顔のまま対応しつつ、戻ってきたユーリに向ける悪戯、いや調教、でもなく。アフターケアが頭を占めた。

 友人とその兄の姿を見つけて、エステル・クレティエ(ka3783)が声を掛ける。
「りんご割、ご一緒にどうですか?」
 すぐ頷いて、隣の兄を振り向いて。
「お兄ちゃん勝負だよ! 勝った方が1つだけ言う事を聞くんだからね?」
 挑戦状を叩きつけて、アルカ・ブラックウェル(ka0790)が笑う。そのまま兄の手を引いて駆けだす。イリューザーも競走にはしゃいで追って、シムシェックも彼らの周りをくるくる回った。
「一緒に兄妹対決しない?」
「うちの兄様、怪我しちゃって」
 日陰をちらりと示す。
「それはお大事にだね」
(……兄様林檎好きよね?)
 参加する理由の一端を担っているのは、照れくさいので秘密だ。

「変じゃねぇですかぃ?」
 不安混じりの声で鬼百合(ka3667)が聞くのは、紋様を隠さない水着姿のことだ。
「海辺で人が注目すんのは美人のちゃんねーとかたくましいイケメンでさ、そう人目に怯えなくてもいいんですぜ」
 答える春咲=桜蓮・紫苑(ka3668)はビキニの上に薄手の服を重ねている。パラソルを立てながら鬼には関係ねーですよと笑う。
(ねーさんは綺麗でさ)
 恥ずかしいから言わないけど、初対面の時から眩しいと思ってる。
 気付かれないうちに海に視線を向けて。
「海はでっけぇですねぃ。どこ見ても端っこが見えねぇんでさ……あれ、海って湖とは違うんですかぃ?」
「舐めてみればわかりまさ」
 それくらいしかわからない、なんて言わずにわかることをきっぱりと。
「塩っ辛ぇかそうじゃねぇかの違いですぜ」

(お姉ちゃん水着褒めてくれると思ったのに)
 もう知らないんだから! 真っ赤なビキニ姿の天竜寺 詩(ka0396)は姉の批判的な言葉を忘れようと1人砂浜を歩いていた。
 頬を膨らませ歩む先で見かけたのはデリア。フラッグの観戦場所をどこにするか迷っていたようで。
「今日は、一緒してもいい?」
 ひとりで素直に姉を応援する気持ちにならなかったのもきっと、理由の一つ。



 助走でスタートダッシュをかけようと、クラウチングポーズで合図を待つリツカ。浮かび上がる濡れ羽色の翼と同化するように、髪が肩を超え背へと伸びていく。
(鴉みたいに素早くっ!)
 一直線に降下するみたいに。ただ突き進むだけ!
 口角をあげヴィルマ・ネーベル(ka2549)がククッと笑う。霧を纏わせ準備万端。
 合図の担当者が構えたことを確認して、濃霧が体を覆った。

 よぉい、すたーと!

「水の上なら水圧関係ないのじゃよ~!」
 初動が肝心とばかりに駆けだす。同じく水上歩行を扱える魔術師の中でもヴィルマが突出できたのは作戦と幸運のおかげかもしれない。人数が少ない分こちらのチームはスピードが大事なのだ。
「この調子でフラッグ確保じゃ!」
 しかし後発となった敵からの妨害が迫る、それは大きな炎球となってヴィルマの横を通り抜けて着水。周囲の海水が盛り上がり、大きな波を生み出していく。
 地震よりも激しく上下左右に揺れる水面は全力前進状態のヴィルマの足をもつれさせた!
「っきゃあぁあああああ!?」
 思いの外可愛らしい悲鳴をあげながら水面に転ぶ魔女……地上と違い怪我はないが、トップグループから脱落!

 別の女の肌(背中)に触れる恋人を目撃したもやもや感も重なって、ユーリの意識は不自然なほどフラッグへ一直線。他の何にも惑わされないようにと、決意と闘志が更に強く泳ぐ力になる。
 前に敵が居れば光線が先行して露払い、向かってくる手があれば障壁が阻む。どちらもアルファスの援護だ。
 ジェット飛翔も使い近くにいてくれる感覚がある。ユーリは余念を振り払うように真っ直ぐ突き進んだ。

「ぶわわっぶつかる!?」
 合図に合わせた飛び込みも、泳ぎ始めも完璧だった。けれど初めの勢いがつき過ぎたから、目の前に現れた壁への対処が遅れた。
 トタタ……タンッ!
 強引なほど体を捻って足を付け、ステップを活かし壁を登る。頂点についてから再び飛び込み!
(間に合えっ!)
 遅れ気味のグループに追い付いたリツカ、競り合いへの参加となった。

(あーやっぱり)
 早々に離れていてよかったと、ポロリ事案に倒れた男性陣を見てアルファスは思う。
「ユーリ、今のうちに!」
 息継ぎのタイミングで視線を合わせる、ターゲットまで、もう少し。

「方程式は見えた! この溢れる生命力が肺活量を示すはず!」
 一騎打ちの約束をした親友と横並び、エリー・ローウェル(ka2576)が叫ぶ。
「最強の……ってずるいぃぃぃい!?」
 すぐ横を泳いでいた姿が宙を駆け、視界に影がかかる。
 ジャッバァァァアン!
 諦めず水を掻き続けるエリーの視界が大量の飛沫に覆われる!
「前が見えねぇええ!」
 何が起きたのか、わからないなりに信じた方角にまっすぐ進む、進む、進む!
 好機は来た!
 逆さ滝のように跳ね上がった水流が落ち着いた瞬間、エリーの視界には親友も、他の誰も居ない。フラッグは目と鼻の先だ。
「とっ……とったぁあああ!」



 マットタイプの浮き輪は二人で乗っても十分な広さ。蒼界の海に比べれば過ごしやすいのだなと夕凪 沙良(ka5139)は思う。芋洗いのように大勢の人がいる場所で大きな浮き輪は、きっとこんなにのんびりとは使えない。
「海とかいつ振りでしょうかね」
 狙撃手が作戦で海に寄る機会はそう多くない。演習でなら……そこまで考えたところで、何か違うと気づいた。
 夏の暑い時期、どうしても涼む方法がなくて孤児院の家族、小さい子達と共に。それが海の記憶だとすると……
「たまにはこういうのもいいね。何も考えずにのんびりしてるのも」
 仁川 リア(ka3483)の言葉にはっとする。沙良にとって、海でのんびりする時間は初めてかもしれないと気づいた。
 日焼け止めを念入りに塗るにしても、彼の手を借りたくらいで……海も、その過ごし方も知っているのにどこか緊張があったのはそのせいなのかもしれなかった。

 双眼鏡で競技の行く末を観戦しながらも、時折視線を沙良に向けるリア。
 クロスタイプのビキニは黒で、上に羽織った白いパーカー、その上からでも黒がくっきりと見える気がする。
 それだけ、沙良の肌色が白く涼やかに見えるという事で……目のやり場に困る。
(改めて意識すると……)
 これはいわゆる初デートというやつではないだろうか。そう認識した途端、それまで以上に沙良を見る自分の目元が熱くなっていくような。
 背中に触れた感触を思い出して、今度は互いの近さを再認識。
(一緒に暮らしてるのになぁもう)
 距離があるとはいえ他の人も多い場所だから、妙に照れてしまうのだ。

 借りた浮き輪は装備済み。離れないよう両腕でしっかと掴み、浅瀬で仁王立ち。龍華 狼(ka4940)は次の一歩を踏み出せないでいた。
(秘密の特訓のつもりが鬼百合居たし)
 けれど声はかけなかった。大人の女性と一緒に楽しそうにしていたからだ。
(母さんか? だとしたら声かけたら悪いな)
 自分の母親と重ねてしまいそうで近寄れない。遠目に見ただけなので、本当に親かは知らないのだが。
「行くしかねぇな……」
 自分は溺れない特訓に来たのだから。

「りっちゃん格好良かったー!」
 お帰りっ! っと駆け寄るミコトはずっと全力で声援をあげていたのだ。
「はいこれ」
 一息入れなよとルドルフが差し出すジュースを一息で飲み干して、からりと笑う。
「楽しかった! でも取れなくて悔しい! まだ足りないっ!」
「それじゃ泳ごうっ! 海に来たからには! 全力で! 力の限り、泳がないとっ!!!」
「……さすがに疲れてんじゃねーの」
「行こう行こう!」
「ってスグ行くのかよ……」
 トルステンの呟きは女子2人の耳に届かない。
「皆も一緒に泳ごうよー! ルゥ君もステン君も、誰が一番泳げるか競争しようっ!!!」
「そーだぞ男子共ー、すーぱー遠泳大会だよ!」
「泳ぐのは良いけどほどほどにしようよ?」
 ルドルフの注意もやはり届かない。
「ちょ、ミコ、リツ、そっちは遊泳禁止だって!」
「……行くしかねーのか」
 2人だけではどこまで行ってしまうのか。慌てて、もしくは怠そうに追いかけていく。

 去年は転移後間もなくて、生活に慣れることが最優先で。
(それも楽しかったけどっ)
 この世界を知る為の行動は初めてばかりで、運命の欠片が溢れていたから。ミコトは自分の居る場所を駆けまわってきた。今年は二年分の夏を楽しもうと思っている。すでに海は二度目だ。
 友人達が一緒だから楽しいってことは最初から分かっていて、一人でも楽しめる自信はあるけれど、やっぱり安心できる。
(だからかな、もっと一緒に楽しみたい!)
 たくさん思い出を共有したいと思ったのだ。それが同じことをしている記憶ならもっと嬉しい!
「まだまだ泳げるよー!」

「あーもう、残念だったー!」
 フラッグはタッチの差で取り逃してしまったけれど、やりきった清々しさに笑顔を見せるユーリ。
「あはは、たまには羽を伸ばさないとね♪」
 追うアルファスが、後ろ手に隠していた水鉄砲を構えた。
「ユーリ、こっち!」
 パシャン!
「あわわっ!! いきなり不意打ちって…!?」
「こっちだよ♪ さっきは惜しかったけど、海はまだこれか……って、うわ!?」
 バッシャァン!
 狙い通りの顔に優越感を感じる暇もなく波にさらわれる。
「こうなったら、こっちも反撃……って」
 くすくすと笑うユーリが海水を跳ね上げアルファスを追撃。
「自分でコケたら意味ないでしょ、オイルが残っていて滑ったんじゃない?」
 罰でも当たったんじゃないの? 今はもう気にしていないけれど、冗談めかして言いながらさらに水をかけていく。
「可愛いって思うのはユーリだけに決まってる」
「っ!?」
 赤い顔を隠そうと跳ね上げる水に更に勢いをつける。
 気付けばアルファスは立ち上がっている。
「降参した方が1回、何でも言う事を聞く。いいよね?」
「勿論いいよ。絶対に負けないからね」
 勢い良く頷いたのは、少しでも見つめられる時間を短くしたいから。



「海は初めてなんだよね?」
 詩が巻貝を拾い上げる。
「そうだ♪」
 拾い上げて、住処になっていないことを確かめる。不思議そうなデリアに微笑んで、差し出した。
「こうして耳に当ててみて。波の音が聞こえるでしょ?」
「本当です……っ」
 耳を寄せ合って楽しむ。
「……ねえ、りんご割一緒にやらない?」
「初めてなので」
 迷惑にならなければ、その言葉に笑って請け負う。
「大丈夫、しっかりナビしてあげる。大きさは違うけど、スイカ割りのコツ、きっとりんごにも通用するよ」
(……多めに割れるよう頑張って、そしたらお姉ちゃんにも持ってってあげようかな?)
 仲直りのしるしに。
「スイカ……?」
「知らない? 大きい縞々の……それも一緒に教えてあげる!」

 シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)の目に留まったのはエルフ達が持ってきたリンゴの山。続いて試作型特殊合金製ロッドを見下ろす。
「これしか持ってきていませんが、大丈夫でしょうか……?」
「バットがあるはずなのよっ?」
「シルヴィアはロッドかあ、自ら難易度をあげるなんて通でござるっ!」
 モニカ(ka1736)の言葉にミィリア(ka2689)が気付いてしみじみと頷く。
「いえ……目の前で特産品を木端微塵にしたら怒られないでしょうか……?」
「このために持ってきたらしいから、いいんじゃないかな、でござる」
「皆さんがやると言うのであれば本気を出しましょう、こういうのは得意なんですよ」
 力の限り粉砕する気配である、林檎の運命やいかに。
「しっかり応援するなのよー♪」
「それじゃ指示よろしく! でござる!」

「リンゴ美味しそ!」
 割った分が食べられると聞いて鬼百合の目が輝く。
「早速準備しますかねぇ」
 作法があるんですぜと、紫苑が目隠しを終えた鬼百合の手を取り勢いをつける。ぐるぐる、ぐるぐるぐる。
「わ、わ! ねーさん目ぇがまわりまさぁ!」
 他の誰よりも回して、その背を押した。
(……へぇ、粘りますねぃ)
 養い子の足元を見て口元に笑みを浮かべながら。
「真逆の方向ですぜ?」
 試しに明後日の場所に誘導してみれば、その通りに動く鬼百合。素直に自分の声だけ拾い上げる様子に妙に満足感を覚える。
「なぁんて冗談ですよ。そこからだと少し右、3歩ってところですねぃ」
 修正後。鬼百合が力いっぱい振り下ろしたバットは4個の林檎を仕留めた。

 回った後は、とにかく呼吸を整える。
(お兄ちゃんの声……うん、これだ!)
 方角と歩数が簡潔だ。まだ少しふらつくけれど、これなら安心して動ける。少しずれたくらいなら兄は絶対的確に言葉をくれる。
「そこだアルカ!」
 何度かの調整の後響くその声に頷いて、力いっぱい答えようと、バットを振り下ろした。
 感触はあった、1個ではないはず、目隠し前の山の形と、手ごたえから期待しながら目隠しを外す。
 1、2、……8!
「お兄ちゃんの指示、完璧だねっ!」
 でも勝負は勝負だ。
「命令といったらこれっきゃないよ! 今日1日、お兄ちゃんも思いっきり遊ぶ! いいね!?」
 イリューザーも同意するようにわふんと鳴いて。
「そうと決まれば腹ごしらえ! ついでに奢って貰っちゃおうかな?」

「……コツが要りそうですね」
 アルカを見つめていたラウィーヤが腕を振って、動きを確かめる。
(自分がやる前の山がどんな状態か、見れたらいいのですが)
 要の一個を見極めれば、きっと。

 エステルの目標は三つ。そのまま食べるだけじゃなくて、少し試してみたいことがある。
(潮風を頼りに……)
 方角には困らない。ワンピース水着のスカートが風を捉える。
(皆さんの声を聞いて、兄様の構えを思い出して……っ)
 ブンッ!

「……クレティエさん、剣を習っていたんですか?」
「見様見真似なんです」
 兄を誇らしく思う気持ちも重なって、ラウィーヤの言葉が嬉しい。
「りんご、洗って来ますね」
 思いの外うまくいって、腕の中にあるのは5子分の林檎。形が崩れた物はすりおろして、綺麗に割れた一個はうさぎ林檎にして……
(食べきれないもの。だから、こっそり)
 兄の所にお裾分けしておこう。

「「旭―!」」
「まず右なのよ」「先にまっすぐでござる!」
「ここはメルルンも教えてあげないと」
「あ、アサヒ君……っ」
「!」
 声を捉えた旭がシュバッとメル・アイザックス(ka0520)の前へ。目隠しも回転の影響も、その動きには影さえ見えない。
「これが俺の最善手だ!」
 迷わずメルの手を握る。
「さあ、行くぜメルちゃん! リンゴの場所は俺達にかかればわかったも同然だぜッ!」
 明後日の方角を高らかに指さし決めポーズ。
 ヒューヒューと盛大な茶化し声が飛んだ。

「あとで分けっこしましょうぜ!」
 紫苑の応援に精を出す鬼百合。
「もう少し左! ですよぃ!」
 そこですぜ! 合図に合わせたフルスイングは、林檎6個分。
(それにしても……)
 海といえば西瓜ではないのかと、分け前を持って日陰に戻りながら首を傾げるのだった。

「美味しいー! ……で、ござるっ」
「むむむ、やっぱりスイカさんもあったほうがきっと楽しいなのよっ、ここはモニカが一肌脱ぐ……じゃなかった、着るしかないなのね!」
 リンゴを頬ばりうっとり顔のミィリアの横で、観戦に徹していたモニカが荷を漁り始める。
「じゃじゃーん! まるごとすいかー! なのよっ」
「おぉー、リンゴよりもおっきなものだなんて、なんだか強そう! でござる!」
「やはり海と言えばスイカ割り……」
 本当のスイカのサイズを知っている筈のシルヴィアだが、なぜかそれ以上の言及をしない。
「これを着てしゃがみこめば、ほら完璧! どこからどう見てもすいかさんなのよーっ」
「お、おい、スイカになる人は誰が……まさかっ」
「是非これを着て見せていただけませんか」
 早速協力者を探し始めるシルヴィア、仕事が早い。
「探すのは流石に不味いって、どんな逆ナンだよ!」
 旭もある意味で手馴れてしまった。
「……仕方ねぇ、俺が着るかー……」
 感覚がマヒしてきているのかもしれない。
「んんん?? 旭が来てくれるの? なのよ??」
「まさにこの木刀西瓜割さんが唸っちゃう好機でござる……!!」
 目標おっきく、何事にも全力で! ミィリアの素振りが始まる。
「スイカさん、覚悟……っ!」
「……って、人間は割っちゃダメー!?」
 メルが気付いたのはこのタイミング。ワンテンポ遅いのは仕方がないことだ。
(ちょ、STOP間に合え、間に合えぇぇぇぇ!?)
 大慌てで止めようと駆ける。しかし彼らはアサルトライダーズ。突撃は十八番と言ってもいいくらい!
「「「どーぞどーぞっ!」」」
 着るのがやたら早いのはお約束だ!
 ぱっかーん!

 スイカ + 旭の頭 + 巨大たんこぶ → 3連達成!

「私は割れただけで充分。二人のおかげだわ」
 一番多かった7個のラウィーヤにコツを聞いて、5個割ったエステルの細かい指示の声を頼りに動いて。目隠しを外した真夕が見た自分の記録は、3個。
「自分一人の力じゃできないところが面白いし……ううん、考えちゃだめね。とにかく、楽しんだ者勝ちよね!」
 エステルのハイタッチに答えながらくすくすと笑う。
「三人でこんなに食べきれるかしら?」
 首を傾げてからひとつ、思いつく。
「その分運動すればいいわよね?」
 一度休憩にしましょうかと、海の家へ誘った。



 海の家から肉の焼ける香りが漂っている。フラッグで勝った相手チームから出た要望に肉とあり、負けたチーム代表でエクゼントが焼いているのだ。デリアも手伝っているようで。
 何の肉かは遠目にはわからないが……集客にもいくらか貢献しているようだった。

「もーヤダ、ホント俺外出るの向いてねぇ……」
 途中で力尽き沈んでいこうとしたところをルドルフの援護で浅瀬に連れられ、何とか岸に上がったトルステン。
「……何読んでんだ?」
 青い装丁の本をもったデリアが視界に入る。
「その、海の話と、本物を比べたいなって」
「へぇ、リアルブルーの童話とか興味あるか?」
「いいんですか……っ!」
 詳しいわけでもねーけどと言いつつも、請われるまま童謡や海賊の話をしていく。眠気覚ましに協力感謝、等と思いながら。

「二人とも、ほどほどにしなよ!?」
 二人が何往復したのか数えるのも馬鹿らしくなってきた頃合いでルドルフもギブアップ。ふらつく足取りで岸にあがればトルステンはまだ倒れていた。
「なー、なんで耐久大会になってんの俺ら……」
「ルゥ君ー! ステン君ー! 焼きそばよろしくねー!」
 中断して腕を大きく振るミコトに、リツカが続く。
「トリィ、私の焼きそば大盛りで!」
 やたら食べたくなるよねと笑う。
「うちのもっ! かき氷は虹色絶対だからねっ!」

 決着を見届けた後は波の向くままに流されて。気付けばリアと沙良は砂浜に打ち上げられていた。時折、火照った体を冷ますように波が二人を擽っていく。
 特別話をするわけでもない。ただ傍にいるだけで、落ち着くことだってある。二人だけの時間はまだ続いている。
「ふぅ……あれ、なんか賑やかになってきた?」
 どうしようか? ふいに伸びをしたリアが、ごろりと沙良の方に体を向けた。
「お昼時だからではないですか」
 海水で遊んでいた者達も皆砂浜に戻ってきているのだ。
「確かにお腹すいたかも」
 リアのお腹がぐぅと鳴った。
「今度はパラソルの下で涼みましょうか?」
「賛成、何にしようかなー」
 早速行こうか。先に立ち上がったリアが差し出した手に、沙良の手が重なった。

「おなかすいたーっ、昼餉の支度は出来ておろうな」
「殿かよ」
 お遊び口調のリツカに、希望通りの品を並べながらトルステン。
「うむ、よきにはからえ」
「二人ともお疲れ様。丁度揃ったところだから冷めないうちにね」
 ミコト、リツカの順に好物を取り分けるのが既に癖のようになっているルドルフが労う。
「え、疲れた? 腐抜けてるなー、こんなに楽しいのに!」
 にんまり笑えば、トルステンが肩をすくめていた。

「今度はかき氷なのよ!」
 イベント担当モニカの進行は暑さになんて負けないのだ!
「短い時間によりたくさんのかき氷を食べた人の勝ち! なのよーっ」

 皆さん横並びによぉい、はじめっ!

「パワーじゃ負けても早食い、いや、速食いじゃ負けねぇ!」
 旭選手、経験からくる適度な一口を重ねる作戦っ! やはり蒼界は有利か!?
「忍耐力には人一倍自信があるのですよ、一位は頂いたようなものですね」
 それよりも大きな一口で挑戦するシルヴィア選手、表情の動きが小さく確かに読めない、これは戦術の勝利?
「冷たさを感じる前に飲みこむこと! 我ながら完璧に違い、な……」
 あぁ~っとどうしたミィリア選手、数口含んだところで動きが止まったー!?
「う、うわーーん! 頭痛いーっ!」
 大声って余計に響き……セルフダメージ増量中!
「こんなの聞いてないでござる~るる~~」
 涙腺大崩壊、声量ダウンのミィリア選手の横からモニカ選手追い上げる、コツをつかんだか?
「頭がきーーんってなってもモニカ負けない! なのよっ」
「いーやっ、仲間だろうが手を抜いてやると思うなよ?」
「一位は頂いたようなものですね」
「……って、あはは……何も勝負にしなくても」
「どんな勝負だって仲間こそが最大のライバルぅ……頭痛の壁が阻むでござるぅ……」
 スープあるけど一口飲む? サポーターに徹するメルの介護でミィリア選手復活、追い上げ開始か――

 結果発表!
「いちごのかき氷なら、いくらでも食べられるなのよーーーっ!!」
 最終的に、ペース控えめだったモニカの数が一番で決着! 冷え冷えダメージが少ない作戦勝ちか?
「そういえば、たくさん食べた人の勝利だったか」
 大食い大会だったはず。メルの呟きに崩れ落ちた残り3人なのだった。



 モノクロストライプの水着、髪色に合わせたパレオがフィルメリア・クリスティア(ka3380)を飾っている。
(この様子なら取り越し苦労かしら)
 念のためとはいえ、気は抜けない。すぐ手に取れるよう『月桂樹』を横において。視界に常に収めておくのは、ゲームに興じる依頼主のエルフ達だ。
 シャクッ。かき氷を一口。
「あるところにはあるのね」
 店の奥に見えた魔導製氷機を思い出す。結構大がかりな代物だった。あれがあればお酒も色々楽しめるのに、等と思ったり……今は守り役だ、気を戻さないと。
「暑さに染みるのよね……」

「かき氷にかけたらどうかと思って」
 すり林檎はそのためだ。食感が足されることは勿論、残さず食べられていい案でもある。
 新鮮な魚介焼きや焼きそばを囲みながらエステルが微笑む。
 楽しい、その気持ちをうまく伝えられているだろうか。素直に示すことはまだ少し苦手で。
「あの……ありがとう、ございます」
 控えめな声で伝えるラウィーヤ。真夕もエステルも彼女の精一杯に気付いている。
「何言ってるの、引っ張ってきたの私なんだから」
 楽しんでくれたようでよかったわと笑う真夕。
「まだ終わりじゃないわよ?」
 パシャン! 波打ち際に駆けてから二人を振り向く。
 折角来たのだから海そのものも楽しまないとね?

(友人と海なんて初めてじゃ)
 ヴィルマは青いかき氷(アイスのせ)を食べる手を止めて、エリーのかき氷(ゼリーのせ、黄色)を見た。
「それもおいしそうなのじゃ……! 一口食べたいのじゃがだめかのぅ?」
 丁度掬い上げていた一口分を食べようとして、エリーの手が止まる。
(えっこれ?)
 ドキッとしたのは多分気の迷い。こっちのフラグは予想してなんかない。確かに仲のいい友達だけどそんなつもりは……じゃなくて!
「! は、半分食べたら交換ってことで!」
 一騎打ちの勝利に高揚してるだけだから! 慌て気味の声音だったけれど気づかれてないよね?
(後で頭冷やそう、海水とかちょうどいいし)
 この後展開される水掛け合いっこは始めこそ女子会。次第に真剣勝負になったので、二人は純粋なお友達関係だと証明された模様。

 浮き輪で浮かぶだけでも全身が強張る。
(これ失くしたらやべぇ、俺泳げねぇし)
 緊張感が狼の体を支配して、浅瀬の小さな波でも肩が震える。
「いつもグータラしてるんだからこういう時くらい一緒に……」
 とりあえず親父として一緒に暮らしている男を思い出す。木偶の坊でも居れば寂しくないかな、なんて。
「ねぇな……いても録でもねぇしな……」
 すぐ否定。居たとしてもナンパに勤しむか、自分に小遣いをせびるのが関の山だ。
「っ!?」
 ずる……ぼちゃっ! バシャバシャッ!
「ぐぁ、ゲホッゴホゴホゴホ……ッ!」
 腰ぐらいの高さしかない事を思いだすのは、しばらく足掻いてからだった。

 兄の方はともかく。不慣れな様子が簡単に見て取れるデリアは格好の獲物らしかった。声を掛けられ戸惑う場面に、フィルメリアは何度助け舟を出しただろう。
「兄さんが、お礼にって」
 帰り支度を終えた頃。すっかり信頼の眼差しでフィルメリアを見つめるデリアが林檎を持ってきた。割る側にもなっていない、まだ綺麗な数個。
(のんびりさせてもらったついで、みたいなものだけど)
 土産にもなるしと受け取れば、安堵の微笑みが向けられる。
「美味しく頂きます。……ねえ、今日は楽しかった?」
 少女の笑顔が深まった。



「トウモロコシが、食べたかった……」
「つ、冷たくないも……の……」
「ガチガチガチガチ(義足が小刻みに震える音)」
「……言わんこっちゃない」
 水っ腹ぐったり冷え冷えモードの三人を横目にしながら、一日を思い返すメル。
(でも、いろいろ楽しかったぁ)
 怒涛の展開ばかりだったけど、面白かったのは確かで、誘ってもらえたことが本当に嬉しくて。
「アサヒ君も、お疲れ様」
「格好悪いとこ見せちゃったけど……」
 パラソルの下、膝の上。旭の額をそっと撫でる。たんこぶもだいぶ落ち着いてきたみたいだ。

「ねーさん!!!」
 楽しい時間が終わると認識した途端、襲ってくるのは遊び倒した証の痛み。
 初めてでどうしていいかわからず、たまらず紫苑に抱き付く鬼百合。
「なんかすっげ体痛い!」
 いつも肌を覆って過ごしているから陽射しにも弱かったようで。
「あーあ、こりゃあまた元気に焼いたもんで。帰ったら冷やしましょうか」
 それまで我慢ですぜと宥める紫苑。
「お願いしまさ。でも、海って楽しいんですねぃ!」
「それなら良かったですぜ」
 くしゃりと濡れたままの黒髪を撫ぜた。

 海遊びに全力を出し切って熟睡する2人。ミコトをルドルフが、リツカをトルステンが抱えて帰るのは、蒼界で共に学生していた頃からのお決まりの光景なのだった。

依頼結果

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参加者一覧

  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 凶獣の狙撃手
    シルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338
    人間(蒼)|14才|女性|猟撃士
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • ともしびは共に
    ラウィーヤ・マクトゥーム(ka0457
    人間(紅)|23才|女性|闘狩人
  • 「ししょー」
    岩井崎 メル(ka0520
    人間(蒼)|17才|女性|機導師
  • 陽光の愛し子
    アルカ・ブラックウェル(ka0790
    人間(紅)|17才|女性|疾影士
  • 【騎突】芽出射手
    モニカ(ka1736
    エルフ|12才|女性|猟撃士
  • 其の霧に、籠め給ひしは
    ヴィルマ・レーヴェシュタイン(ka2549
    人間(紅)|23才|女性|魔術師
  • 『未来』を背負う者
    エリー・ローウェル(ka2576
    人間(紅)|19才|女性|闘狩人
  • 春霞桜花
    ミィリア(ka2689
    ドワーフ|12才|女性|闘狩人
  • 《聡明》なる天空の術師
    アルファス(ka3312
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 世界より大事なモノ
    フィルメリア・クリスティア(ka3380
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • 大地の救済者
    仁川 リア(ka3483
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • 瑞鬼「白澤」
    鬼百合(ka3667
    エルフ|12才|男性|魔術師
  • 任侠姐さん
    春咲=桜蓮・紫苑(ka3668
    人間(蒼)|22才|女性|闘狩人
  • カウダ・レオニス
    ルドルフ・デネボラ(ka3749
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 星の音を奏でる者
    エステル・クレティエ(ka3783
    人間(紅)|17才|女性|魔術師
  • Q.E.D.
    トルステン=L=ユピテル(ka3946
    人間(蒼)|18才|男性|聖導士
  • コル・レオニス
    ミコト=S=レグルス(ka3953
    人間(蒼)|16才|女性|霊闘士
  • スカイラブハリケーン
    リツカ=R=ウラノス(ka3955
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 轟雷の巫女
    七夜・真夕(ka3977
    人間(蒼)|17才|女性|魔術師
  • 清冽なれ、栄達なれ
    龍華 狼(ka4940
    人間(紅)|11才|男性|舞刀士
  • 自在の弾丸
    キャリコ・ビューイ(ka5044
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 紅瞳の狙撃手
    夕凪 沙良(ka5139
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 夏だ!海だ!全力で遊び隊!
ミコト=S=レグルス(ka3953
人間(リアルブルー)|16才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/07/30 01:55:34
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/28 21:54:44