• 東征

【東征】少年、妖怪欲して恫喝される

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/08/12 15:00
完成日
2015/08/17 12:02

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●お出かけ
 嫉妬の歪虚であるプエル(kz0127)は新しい服を着せてもらって、機嫌よくエトファリカの大地を歩き回る。水干と言われる服は、グラズヘイムでは見ないものであり、袖がひらひらと動くのが面白かった。
 人間のふりをしていないと面倒だということで、極力肌は隠す。白いタイツと手袋、顔を隠すために薄衣をかぶった。
 大剣もきちんと持たされる。
 結界が怖いけれども、問題ないあたりを教えてもらって見て回る。丘の上から見下ろすと小さな砦が見え、対妖怪のためにハンターが詰めていると聞いていたと思い出す。
「気持ちいいなぁ」
 そよそよと吹く風にプエルは目を細くして微笑む。
「歌おう!」
 最近歌えるような状況がなかったので、久しぶりだった。
 澄んだ歌声が響き渡る。歪虚が歌っていると知らなければ、人間でも聞き惚れそうなものだった。

●モフリ
 一通り歌って満足したプエルは、枯れ木の側に直径30センチくらいの、綿埃のようなものを見つける。
「う、うわぁぁぁぁ」
 プエルは紫色の目をキラキラさせて、それを見つめる。
「おいで、おいで」
 袖に隠してあったブラシを取り出し、しゃがむ。
 綿埃のような妖怪は毛の中に足があるらしく、とぼとぼと歩いてやってきた。
 一つ目の動物にも見える。
 ブラッシングをすると妖怪は嬉しそうにプエルにすり寄る。
「可愛い」
 プエルは妖怪を抱きかかえる。抵抗しないので怒っていないだろうと判断していた。
「ねえ、うちにこない?」
 妖怪は問いかけに特に返事はしない。
「帰ろう」
 良い収穫だとプエルは微笑み、名前はモフリにしようと決める。
「きゅきゅきゅーーーーーーーーーーーんん」
 甲高い声で妖怪が鳴いた。
「え? ええ?」
 プエルは困惑して妖怪を見つめる。妖怪は特に変わった様子を見せない。
「別にいいんだよね、連れて行っても?」
 歩き始めたプエルは見た、大きな妖怪の姿を。
『おうおう、わしのシマで何しとんじゃー』
 プエルはすごまれた瞬間、くしゅと顔を歪める。
「な、何って? 歌って、この子を余、モフリのペットにするんだ」
『おうおう、なに勝手なことぬかしとんじゃー』
 もう一匹にすごまれ、プエルはまた小さくなる。腕に抱いた妖怪をきゅっと抱きしめる。
『西から来た奴はひ弱じゃの』
『それ、うちの期待の星じゃ、置いていけ』
『そうすれば、ひ弱なお前さんは放置しておく』
 妖怪二匹、プエルより大きな毛玉であり、近くですごまれるとより巨大で怖い。色合いが強烈で黒と黄の縞模様で威圧してくる。毛の間にはいくつか顔があり、キメラ状態ということをうかがわせる。
「えぐっ」
 プエルは涙をのみ込む。
(怖いよ、怖いよ……レチタティーヴォ様)
『何泣いとんじゃー』
『わしらが悪いことしたようで気分悪いわー』
「よ、余は泣いておらぬ!」
 妖怪は抱えたまま、片手で頬をぬぐう。
『それ置いてとっとと消えろ』
「い、嫌だ」
 プエルは駆けだした。
『おい、こっちが下手に出てればいい気になりおって』
『野郎ども、あの人形を食い殺せ』
 号令の下、プエルを追い掛け走り出した。

●見張り
 砦は結界の外になり不安定なところであった。簡易的な砦で、建物はそれなりに大きくしっかりしているが、柵は竹や木を立て組んだ簡単な物だった。
 散発的に妖怪と戦うことがあっても大きな争いに発展はしていない。
 詰めている兵士の緊張感が途切れていると言って過言ではない。ハンターも定期的に入れ替えて詰めているため、安心感があるに違いなかった。
 それでも命を守るのは自分たちであり、見張りは重要だった。
「た、大変だ、男の子が妖怪に追われてこっちに来ている」
 砦の中に緊張が走る。
 見張りはさらに続ける。
「……男の子は手に妖怪持ってます」
「それ、捨てろよ!」
 見張り達は突っ込みをしても、相手に届くわけではないので砦で情報を共有するために話を伝える。
「入れてやる?」
「その妖怪を捨てさせないと」
「それより、なんでその妖怪を連れているんだ」
「干せば病気に効くとか」
 かってなことを言いながら見張りは見つめる。
「妖怪の数、大きいのが二体と妖怪として一番弱いのがたくさん」
「なあ、あの大きいのと男の子が抱えているの似てないか?」
「親子だったり?」
 乾いた笑いが漏れた。そもそも妖怪に親子関係はあるのだろうか?
「たまたまか……」
 溜息を洩らした。
 そうこうしているうちに走ってきた少年は近くまで来た。肌は焼かないようにしているのか、一切見せない。顔だって薄衣で隠れて見えていない。
 見張りたちは、少年の必死を感じ助けたくなってくる。
 あと20メートルくらい。
 コケッ……ビタン……ひゅるひゅるひゅる……。
 少年は転んだ。
 その手の妖怪は高く放り出される。放物線を描いて飛んだそれは、砦の中に向かって飛んでくる――。

●探し物
 プエルがいないことは気付いたエクエスは、心の中で悪態を一通りついて出かけることにした。
「馬があると便利ですねぇ」
 上手い具合に落ちていたため、馬っぽい雑魔を拾った。機嫌よくエクエスは出発した。

リプレイ本文

●飛来
 状況が分かり次第、門の外に出る準備をするハンターたち。
 見張り台ではなくとも見えるところまで来たとき、少年が転び、顔を隠している薄衣が外れた。
 飛んでくる妖怪。
「妖怪? なんでプエルがいるんだ?」
 辺境で遭遇したことのある柊 真司(ka0705)は広い異郷の地で偶然会ったことに驚いた。
「アイツが持ってるのが飛んでくるんだろう! 危険だから着地地点から離れろ!」
 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はおおよその位置を示し、砦の兵士たちを移動させる。
「みなさん、戦う前に怪我をするのは愚か者がすることですよぉ」
 にこやかにそして柔らかくステラ・レッドキャップ(ka5434)は兵士を誘導し、警戒する。
(泣き虫の歪虚なんて初めてだぞ……立ち上がったが……。妖怪は退治しないとならないし)
 エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は敵の状況を眺めつつ思案する。
 転んだときは泣いているように見えたが、立ち上がったプエルは尊大な態度に変わっていた。
「余は要求する、モフリをこちらに速やかに渡すことを!」
 凛としゃべる割には、背後の妖怪を気にしているプエル。
『おうおう、勝手なことをぬかしおって』
『人間ども、そっちにいった奴はわしらに戻せ』
 妖怪も何か要求しているが、聞き取りにくい。状況からなんとなくわかる。
 プエルの言うモフリが、砦の中に着地する。毛を逆立てるように膨れると、一回り大きくなったようだった。小さく炎を噴き上げつつ進む。一つ目だけで感情は読み取れないが、怒っているという雰囲気は伝わる。
(こんなところまでアイツくるんだ。白い毛玉は仲間に任せよう)
 リュー・グランフェスト(ka2419)はモフリが着地したのを見るや否や、柵を乗り越えて戦闘に備える。
「分かった! 毛玉は砦の外に出すから、攻撃してくるな」
 ザレム・アズール(ka0878)は見張り台に飛び乗り声を張り上げた。つぶし合ってくれてもいいし、無駄な攻撃を避けたいという一心で反応を待つ。
 プエルの険しい表情が和らぎ、妖怪も大様に構えるようだ。
「敵だろうが、躾のできてない餓鬼はどいつも嫌いだよ、私は」
 溜息と共に煙を吐き出したバイオレット(ka0277)は煙管をしまうと、眼帯を外し外に向かう。敵を撃つために。
「援護に入るか、補強に入るか?」
 ヒースクリフ(ka1686)は門の付近で様子を見ることにした。どちらにでも動けるように。

●ぼふっ
『なんでお前が喜ぶんじゃ』
「……ああ言っておいて、余もモフリも、皆殺すつもりなんだ! 人間はいつも……」
『ここまで連れてきた奴が何をぬかしとんじゃー!』
 プエルと妖怪たちは険悪なムードとなってきている。
 見張り台にいるザレムは内心ニヤリとしつつも、仲間が毛玉をどうしているか見る。
 レイオスとステラ、門との間に真司がいる。火を発している妖怪なため早急に出すことが重要だ。
「熱っ」
「ほらほらあっちですよ」
 妖怪が柵にぶつからないように回り込んで捕まえようとしたレイオスの悲鳴と、手を叩いて誘導するステラ。真司は外の手助けかこちらを助けるか思案し、門の側に立つ。
「攻撃してしまっていいか?」
 見張り台の下からヒースクリフの声がする。
「少し様子を見てくれるか?」
 苛立つバイオレットと了解と手を上げるリューをザレムは見た。
 仲間が毛玉を捕まえる努力している間、エヴァンスはプエルの側まで行く。
 人間が近付いてきたため、言い争いは止まり警戒態勢に変わる。
「待った、ホラ、武器は抜いてないだろう」
 にこやかな交渉人のようにエヴァンスは両手を振る。
「魔法を使うやつかもしれない」
 プエルに妖怪が同意してうなずく。
「あんたが十三魔レチタティーヴォの従者プエルだな?」
 プエルの目は知られている理由を問いながらも、ハンターを見て自分で答えを見つけうなずいていた。
「あんたの落し物は今探し中だ」
 目がキラキラ輝くプエルとは対照的に、妖怪たちは毛を逆立て怒りを示した。

●効果少ない
 毛玉の妖怪は炎を噴き上げるから遅いのか、元から歩く速度は遅いのか。
 レイオスは意を決して抱きかかえることにした。あっさりつかめるが、炎に強いという装備を身に付けても熱い。
「レイオスさん、頑張ってください!」
「英断だ。さすがに途中からは変わるが」
 ステラと真司の応援がレイオスに届く。
「弓を撃てる奴は、スライムをまとめて狙うように。あと、柵が攻撃受けたら直ちに補強を。来るぞ!」
 交渉決裂になっているためザレムは声を掛ける。
 最後はバイオレットたち外で待機している者たちへの言葉だ。ザレムは今しばらく様子を見る。仲間と妖怪たちの動きを見るために。
『野郎ども、やっちまえ』
 妖怪が号令を出した。
 巨大毛玉の一匹は砦に向かう。号令を出した妖怪はプエルの方に来る。
 スライムたちは半分ずつくらいでそれぞれについていく。ただし、それほど足が速いモノではないので砦には着くのが遅いだろう。
 プエルは考え込んで「帰ろう」とつぶやいた。
「ほら、こいつらに毛玉取られるぞ」
「本当に余にくれるのか?」
 猜疑心は強いようだが、エヴァンスが力強くうなずくと愛らしく笑って大剣を引き抜いた。
(泣く子となんとかは……って!)
 エヴァンスは戦うために自分も武器を抜いたが、プエルの攻撃にあわてて回避した。
 人間は味方の数に入らないようで問答無用に大剣を振るっている。
「あれ?」
「ん?」
「あまり手ごたえがない」
「軟体だからだ」
 エヴァンスが説明するとプエルの表情は一瞬苛立ちになった。

●退避
「あと少しで門です」
 ステラは応援しつつ、位置を教える。門の外を見ると、乱戦状態になっているのが分かった。
「やばくなった言えよ」
「おう」
 毛玉を持ったレイオスは何とかなると判断し、真司は門の外で近寄ってくる妖怪を倒すため、杖を構えて魔法の範囲に入るのを待った。

『邪魔だ人間』
 接敵してきた大きな妖怪の体当たりをリューは回避する。
「大挙されてこっちも迷惑だ」
 リューは一撃をくれてやる。
「魔法の方が効くのか……エクエスいないから使ってもいいよね……」
 大剣を地面に突きたてるように置いたプエルは歌うような詠唱を行う。
 相方に見られたくないのではなく、無差別に攻撃する魔法なのではないかと推測できた。
 どの範囲で来るのか分からないし、教えてくれるわけがない。エヴァンスは攻撃する前に回避を選び、リューも逃げられる範囲でプエルから距離を取る。
 この隙に下級妖怪がプエルに寄り集まる。
「えいっ」
 掛け声の後、プエルを中心に闇の波動が広がる。スライム状の妖怪がプルプル震え、動きを止め攻撃に耐えている。
「ふふっ、本当だ! もう一度使おう」
『やかましいわっ』
 攻撃に巻き込まれた巨大毛玉がプエルに体当たりをした。吹き飛ばされたプエルはスライムがうごめくところに落ちた。
 うにょうにょとのしかかられてプエルはもがく。
「おい、さっきの魔法使えばいいじゃないか」
 エヴァンスは攻撃をプエルに当てないように妖怪を削るべく、薙ぎ払ってとどめを刺した。
「むぐっ、むぐうぅ」
 プエルは口をふさがれたようだった。
「気持ち悪いな……助けないとまずいよな」
「強いから大丈夫だと思うけれど」
 エヴァンスとリューは冷静に状況を考える。
 大物二体を倒して下級妖怪の動きが止まればいいが。数を考えると、歪虚の手も借りたい。
 プエルに攻撃を当てないように、スライムと大きな妖怪に攻撃を開始した。

 この間、砦の側に控えているバイオレットとヒースクリフは下級妖怪を削るため地道に攻撃をする。
 ある程度距離が縮まれば魔法も使えるとヒースクリフは考えるが、妖怪の歩みは遅い。中途半端に前に出るのも意義を感じない。
 プエルが範囲魔法を使ったのも見えたが、影響がない。
「威力は大したことない?」
「威力があるなら、砦ごと消しに来ていただろうよ」
 バイオレットの言葉にヒースクリフは「確かに」とうなずいた。もちろん、生身の人間が食らった場合、それなりの覚悟はいるだろうとも。

●混戦
 門のところまでやってきたレイオスは、混戦状態を見て顔をひきつらせた。プエルに毛玉を見せつけて戦わせるにしても姿が見えない。
 見張り台からザレムはジェットブーツを使って下りてきて簡単に説明する。
 入れ替わりに見張り台にステラが登り、猟銃を構える。
「下級妖怪は結局……スライムなんだよな」
 レイオスの言葉を肯定するようにザレムがうなずく。
「魔法範囲内に来た……」
 真司はデバイスの入っている杖を振るう。
 ザレムもマテリアルを活性化させる。
 機導師二人がデルタレイを放つ。同じ敵を狙えば早く確実に攻撃が行く。
 上からステラの銃撃が敵に当たる。
 レイオスはためしに毛玉を地面に下した。砦に向わないならひとまず置いて、敵を減らす努力をした方がいいと。
 毛玉は下されるととぼとぼと歩きだす、砦ではない方に向かって。
 毛玉の行方に注意しつつ、レイオスは弓で攻撃を開始した。
 ヒースクリフは仲間が出て来たので、魔法が届く位置になったためファイアスローワーで攻撃を行った。
「甘ちゃんばかりだ」
 バイオレットはあきれながらも、仲間の方針は守り毛玉は狙わない。

 大きな妖怪へは牽制、出来る限り下級妖怪にダメージを入れるように、薙ぎ払ったエヴァンスとリュー。下にいるプエルが振り落とし始めているようだった。まだ重いようだ。
 大きな妖怪は目の前にいる二人をそれぞれ攻撃する。当たると痛いが大振りなので避けることも可能。

「よし」
 真司は目の前の下級妖怪が消えたので目標を変える。ファイアスローワーにした方がいいと思ったが、歩いている毛玉が邪魔だった。
「ややこしくなるから狙わない」
 毛玉を避けつつデルタレイを放つザレム。
「スライム? 強酸持っているんだっけ」
 ステラは独り言をつぶやいた。

『邪魔をするな』
『そのまま小さいのは溶かしてしまえ』
 大きな妖怪は下級を鼓舞する。強酸を吐いたのか、じゅっと言う音がそれらの下からする。
「むぐー」
「助けてやるから頑張れ」
「なんでこうなってるんだ」
 くぐくもったプエルの悲鳴に、エヴァンスとリューは複雑な思いで下級妖怪に攻撃し倒した。

 再生能力もあるため、遅々として進まないように見えるが、集中攻撃の甲斐もあり減ってきている。
「結構近づいているな」
 真司は魔法を放ち眉をひそめる。
「一匹ずつでも倒さないと」
 ヒースクリフが声をかける。
「減ってはいる」
 ザレムは地道な作業に戻る。
 のたのた歩く毛玉を目で追いながら、レイオスは他の妖怪に矢を放つ。
「あっちも変化あるみたいだ」
 見張り台にいるステラが短く告げた。

「あ、モフリ」
 プエルが何とか起き上がり、歓喜の声を上げた。
 妖怪たちも毛玉に気づくが、エヴァンスとリューが攻撃を仕掛けるため動けない。
「砦に行かれると困る」
「お前も戦えよ!」
 リューの言葉をプエルは聞いていなかった。

 向かってくるプエルをとっさに避けた真司のデルタレイが飛ぶ。
「おい、妖怪がこいつを狙っているのにいいのか?」
 レイオスの言葉に下級妖怪の間にいたプエルは足を止めて首を横に振り、詠唱を始めた。
「距離は問題ないはずだけど」
 ザレムは先ほどの魔法の効果を見ていたが、警戒する。距離によっては攻撃される可能性がある。
 ステラもかまえたままじっとした。
 魔法でどれだけダメージが入るか注目していた。

 プエルは二度魔法を放った後、大剣が手元にないことに気付いておろおろしていた。
 その間に、弱った下級妖怪にとどめをハンターは刺す。
 大きな妖怪も無事倒れた。
『人間どもめ~』
『糞ガキが』
 妖怪たちの怒りの声はもっともであり、人間側としても「巻き込まれた」感が強く疲労が大きかった。

●下僕
「ふわあ……」
 顔をぱーと明るくした後、モフリに刀が突きつけられているのを見てプエルは怒りに震える。そして、相手が人間だったと思い出したのか、きりっとした顔に戻る。
「褒めてやる」
「……いや、もう……。で、お前、鬼へのお使いは終わったのか?」
 レイオスはこれまでの状況をかんがみて鎌をかける。
 彼自身はエトファリカでこれまでプエルを直接見ていない。動く死体、人心を操ろうとする歪虚という少ない情報からの推測であり、十三魔の配下が無意味にうろついていないだろう疑問。
「答えないなら毛玉の毛を刈るぞ」
「食べやすくなるか?」
 レイオスとリューに脅されるがプエルの表情は変わらない。
「角は触ったぞ?」
「お前のボスは?」
「レチタティーヴォ様はそういうことはしない」
「……あれ?」
 リューがレイオスの肩を叩いた。
「ボスが鬼の角触った、という質問になってる」
 解説にその通りでしまったと思うしかなかった。
「なんで追われていたんだ?」
 真司の問いかけに、プエルは簡単に説明し、モフリの所有権を主張する。
「保護者はどうした」
「……余は子どもではない!」
 どこがという雰囲気がハンターの中に漂う。
 レイオスは諦めて刀をしまった。
 トコトコと歩いてモフリはプエルの足元に来た。炎も発さず、毛も静かになり、小さくなっている。
 プエルは抱きかかえる。
「その毛玉の食べ物はなんだい?」
 ザレムの問いかけにプエルは首をかしげる。
「人間?」
 即答だった、疑問形だが。
「……余はそろそろ帰る」
「そういえば、君の故郷はどこだい?」
 ザレムの問いにプエルはきょとんとする。
「……余、余の故郷……? グ、グラズヘイム……」
 口をパクパクして何とか絞り出した声はかすれている。プエルの肩は震え、視線は泳いでいる。
 泳いだ視線が遠くに見える馬のような物と乗っている人物に気付いた。馬と言うより、カバのような生き物に長毛がついたような生き物。
 パーン。
 バイオレットが冷静にそれを射撃した。
 生き物は貫かれ、闇の塊のようになって消えた。乗っていた人物は慣性の法則に従い、前方に飛ばされ、地面に落ちる。
 これ以上の厄介事はなく円満に砦を守ってと思っていた男たちは全身に冷や汗が出る。
「ごきげんよう」
 お辞儀したプエルは、モフリを抱きかかえて立ち去った。
「保護者、地面に伸びてるがいいのか?」
「怒ってこっちに向かってくるかとも思ったんだが」
 真司とエヴァンスは踊るようなプエルの背中を見送る。
「本人は有頂天で、そこまで気にしないんですよ」
 見張り台からステラが言う。彼が見ていると、地面に転がっている青年を起こして何かしゃべっている。
「良かったのか、妖怪一匹逃した上、歪虚一匹逃がして」
 臨戦態勢を解いたバイオレットは煙管を取り出す。
「砦の防衛考え、保護者とやらではなく、乗り物狙ったんだろう?」
 ヒースクリフもやれやれと言う感じに座れるところを探すが、砦の外では難しかった。

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重体一覧

参加者一覧


  • バイオレット(ka0277
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 絆の雷撃
    ヒースクリフ(ka1686
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • 巡るスズラン
    リュー・グランフェスト(ka2419
    人間(紅)|18才|男性|闘狩人
  • Rot Jaeger
    ステラ・レッドキャップ(ka5434
    人間(紅)|14才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ステラ・レッドキャップ(ka5434
人間(クリムゾンウェスト)|14才|男性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2015/08/12 13:25:19
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/12 01:37:43