ゲスト
(ka0000)
恐怖!? 真夏の怪談を超体感!!
マスター:瑞木雫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/08/12 07:30
- 完成日
- 2015/09/12 01:38
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
うぅ…………
うぅぅぅ……………
それはまるで怨念の声。
身の毛もよだつような、何者かの―――。
うぅ……
うぅぅぅぅぅ……………
地下に潜んでいた負の存在はじわじわと雑魔化が進んでいた。――そして。
彼らが得た姿というのは、偶然にも人々の心を恐怖に陥れる見るも恐ろしいものだった………。
決して人では無い。
だがしかし、人のようにも思える不気味で形容しがたいもの。
長く続く闇の、最奥層。
そこで待っている長い黒髪の女なんてまさに、だ。
暗闇の中でも映えるほど真っ白な肌。
だからこそ嫌でも目に飛び込んでくるに違いない。
……女は、笑っている。
握り拳大もある黒目を見開きながら。
にたぁ、と。
裂けたような口が笑顔を作っている。
『う……う………』
女に見つめられたなら、察するものがあるだろう。
嗚呼、きっと、コイツは。
殺す気で襲い掛かってくる化け物だ――、と。
●真夏の日、ジェオルジのとある村にて……
ミンミンと鳴いている蝉の声。
眩しい太陽の光をいっぱい浴びて、健やかに育っている畑の野菜。
――ああ、なんとも、心寛げそうな田舎の村。
自由都市同盟の農耕推進地域「ジェオルジ」のとある村に招かれたハンター達は、早速歓迎を受けていた。
「よく来てくださりました」
「はるばるありがとうなぁ」
「これ、うちで獲れた野菜だー。食べてくんろー」
村長をはじめ、村人達はとても好意的だった。
ハンター達は一応、歪虚を退治する為に依頼を受けてやって来たのだが……。
歪虚が発生したとは思えないような、のほほんぶりだ。
そんなふうにわいわいとちやほやしているところへ、突如、若い男が乱入してくる。
凄い勢いで走って来た―――かと思うと、ハンター達の顔をまじまじと見つめ、それが拗ねたように睨むようになって。そして大声で、村長に向かって言い放った。
「おい親父、なんでハンター呼んでんだよ。俺だけで充分だっつったろ!」
「ヴァレーリオ!」
村長は息子に叱って返す。
「すみませんうちのバカ息子が……。本当、バカな奴で……」
「誰がバカだ!」
ヴァレーリオに反省の色は無く、愛想も悪く、ふんっと顔を背け、まるで嵐のようにずかずかと去って行ってしまうのを見て。
村人達が「相変わらず元気だねぇ」、「やんちゃだねぇ」と、温かく見守っていた一方で、村長はというと深い溜息を吐いていた。
「全くもう……」
村長は真面目で優しくて、村人に慕われている立派な長だ。
彼の息子だから村人にも大目に見られてはいるようだが、ヴァレーリオはとことん、村長である父親を困らせてしまうドラ息子であるらしい。「後できっちり怒っておきますので……」そうやって謝る村長の表情には、苦労の影が浮かんでいるのだった。
***
村人のハンター達への歓迎が落ち着いた頃。
本題であった件の場所へと早速村長に案内して貰うことになり、目的地へと向かっていた。
一応依頼の内容はこう、だ。
――ある男の地下倉庫が、雑魔の巣窟になってしまったかもしれない。だから地下倉庫に居る雑魔を全て退治してほしい、と。
問題の地下倉庫は、近隣には特に何もない村はずれにあった。
頑丈な扉にはやたらと念入りに鍵をかけられているのが分かる。
……それはまぁ、雑魔を外に出さないようにという安全の為に良いとして。
何やら怪しいお札のようなものが、貼られている。それもぎっしりと。
「あぁ……気にしないでください。特に何の意味もない、ただの飾りですから」
真夏だというのに暑苦しそうな黒いローブを纏っている影の薄い男が言った。
因みに彼が、雑魔の巣窟になってしまったかもしれない地下倉庫の所有者である。
村では人付き合いもせず、少々謎の多い変わり者だと言われている男……。
怪しさは満点だ。
しかし今はそこに気を取られている場合ではなく、第一発見者でもあるローブの男にその時の情報を詳しく聞くことにする。
「一応、両親から譲り受けた地下倉庫でして、僕は農作物を貯蔵する為に使用しているんです。
ですが今日もいつものように様子を見に来たところ……ふよふよとしたものが複数、飛び回っていました……」
「ふよふよとしたもの?」
「はい。こんな感じで、ふよふよって……」
ローブの男は手を使ってひらひらしながら伝える。
しかしその曖昧な緩さではなかなか伝わってこない。
「……命の危険を感じてすぐその場から逃げたので、はっきり覚えていないんです。
どうして雑魔が発生したのかも検討がつきません。……すみません」
申し訳なさそうに頭を下げた。
そして、村長も。
「得体のしれないような相手ですが、恐らく、それほど強力な歪虚だとは考えられません。
皆さんならきっと大丈夫……だとは思いますが、お気をつけください」
――ハンターは心の準備を整え、頷く。
たとえ敵の得体がしれなくても、倒さなくてはいけないものであることに変わりは無い。
さあ、行こう。
扉付近には今の所何かが潜む気配はなく、開錠しても問題ないだろう。
……そうして鍵を開けた、その瞬間だった。
制止する隙も無く地下倉庫の入り口へ飛び込み、階段を駆け降りて行く何者かを見て、村長が動揺する。
「ヴァ……ヴァレーリオ!?」
まさか鍵を開けるのを待っていたのか!?
「雑魚なら俺一人で充分だってこと、分からせてやる!」
――ヴァレーリオは、『覚醒』する。
「こら! 戻ってきなさい!」
……しかし返事の声はもう無い。
どうやら彼は一応、覚醒者らしいが……。父としては無鉄砲すぎる息子が心配で堪らないのだろう。
居てもたってもいられず、思わず。「ばかやろぉぉぉぉ」と入口に向かって吼えていた。
するとローブの男も続く。
「僕のコレクションは壊さないでくださいねー!!」
――ん? コレクション?
●地下倉庫に潜むモノ
タンッ……タンッ……タンッ……タンッ……。
静かな地下に、階段を降りる彼の靴音が響く。
(見てろ……親父め……)
真っ暗な闇の中――。
持ってきたランタンの灯りを頼りにヴァレーリオは一人、突っ走っていた。
……それにしても。
寒気がする、というか。
背筋に悪寒が走る、というような。
妙に不快な寒気を覚えていた。
「畜生……薄気味悪いところだぜ」
どことなく、震える声。
――心臓は今にも張り裂けそう。
そんな時。
何かが聞こえた。
フフ……
ウァァー……
宙を揺れる、謎の浮遊体。
よく見れば人の顔にもよく似ているが――人とは異なる恐ろしき面。
灯りによって照らされたものはそれだけではない。
眼球の無い少女の人形。
血塗られた手。
……幸いにもそれらは作られたもの、だが。
「な、なんだよこれ…………!!!」
ヴァレーリオを恐怖へ突き落すのには十分すぎる。
彼の体はぴたりと止まって、硬直し続けていた。
うぅぅぅ……………
それはまるで怨念の声。
身の毛もよだつような、何者かの―――。
うぅ……
うぅぅぅぅぅ……………
地下に潜んでいた負の存在はじわじわと雑魔化が進んでいた。――そして。
彼らが得た姿というのは、偶然にも人々の心を恐怖に陥れる見るも恐ろしいものだった………。
決して人では無い。
だがしかし、人のようにも思える不気味で形容しがたいもの。
長く続く闇の、最奥層。
そこで待っている長い黒髪の女なんてまさに、だ。
暗闇の中でも映えるほど真っ白な肌。
だからこそ嫌でも目に飛び込んでくるに違いない。
……女は、笑っている。
握り拳大もある黒目を見開きながら。
にたぁ、と。
裂けたような口が笑顔を作っている。
『う……う………』
女に見つめられたなら、察するものがあるだろう。
嗚呼、きっと、コイツは。
殺す気で襲い掛かってくる化け物だ――、と。
●真夏の日、ジェオルジのとある村にて……
ミンミンと鳴いている蝉の声。
眩しい太陽の光をいっぱい浴びて、健やかに育っている畑の野菜。
――ああ、なんとも、心寛げそうな田舎の村。
自由都市同盟の農耕推進地域「ジェオルジ」のとある村に招かれたハンター達は、早速歓迎を受けていた。
「よく来てくださりました」
「はるばるありがとうなぁ」
「これ、うちで獲れた野菜だー。食べてくんろー」
村長をはじめ、村人達はとても好意的だった。
ハンター達は一応、歪虚を退治する為に依頼を受けてやって来たのだが……。
歪虚が発生したとは思えないような、のほほんぶりだ。
そんなふうにわいわいとちやほやしているところへ、突如、若い男が乱入してくる。
凄い勢いで走って来た―――かと思うと、ハンター達の顔をまじまじと見つめ、それが拗ねたように睨むようになって。そして大声で、村長に向かって言い放った。
「おい親父、なんでハンター呼んでんだよ。俺だけで充分だっつったろ!」
「ヴァレーリオ!」
村長は息子に叱って返す。
「すみませんうちのバカ息子が……。本当、バカな奴で……」
「誰がバカだ!」
ヴァレーリオに反省の色は無く、愛想も悪く、ふんっと顔を背け、まるで嵐のようにずかずかと去って行ってしまうのを見て。
村人達が「相変わらず元気だねぇ」、「やんちゃだねぇ」と、温かく見守っていた一方で、村長はというと深い溜息を吐いていた。
「全くもう……」
村長は真面目で優しくて、村人に慕われている立派な長だ。
彼の息子だから村人にも大目に見られてはいるようだが、ヴァレーリオはとことん、村長である父親を困らせてしまうドラ息子であるらしい。「後できっちり怒っておきますので……」そうやって謝る村長の表情には、苦労の影が浮かんでいるのだった。
***
村人のハンター達への歓迎が落ち着いた頃。
本題であった件の場所へと早速村長に案内して貰うことになり、目的地へと向かっていた。
一応依頼の内容はこう、だ。
――ある男の地下倉庫が、雑魔の巣窟になってしまったかもしれない。だから地下倉庫に居る雑魔を全て退治してほしい、と。
問題の地下倉庫は、近隣には特に何もない村はずれにあった。
頑丈な扉にはやたらと念入りに鍵をかけられているのが分かる。
……それはまぁ、雑魔を外に出さないようにという安全の為に良いとして。
何やら怪しいお札のようなものが、貼られている。それもぎっしりと。
「あぁ……気にしないでください。特に何の意味もない、ただの飾りですから」
真夏だというのに暑苦しそうな黒いローブを纏っている影の薄い男が言った。
因みに彼が、雑魔の巣窟になってしまったかもしれない地下倉庫の所有者である。
村では人付き合いもせず、少々謎の多い変わり者だと言われている男……。
怪しさは満点だ。
しかし今はそこに気を取られている場合ではなく、第一発見者でもあるローブの男にその時の情報を詳しく聞くことにする。
「一応、両親から譲り受けた地下倉庫でして、僕は農作物を貯蔵する為に使用しているんです。
ですが今日もいつものように様子を見に来たところ……ふよふよとしたものが複数、飛び回っていました……」
「ふよふよとしたもの?」
「はい。こんな感じで、ふよふよって……」
ローブの男は手を使ってひらひらしながら伝える。
しかしその曖昧な緩さではなかなか伝わってこない。
「……命の危険を感じてすぐその場から逃げたので、はっきり覚えていないんです。
どうして雑魔が発生したのかも検討がつきません。……すみません」
申し訳なさそうに頭を下げた。
そして、村長も。
「得体のしれないような相手ですが、恐らく、それほど強力な歪虚だとは考えられません。
皆さんならきっと大丈夫……だとは思いますが、お気をつけください」
――ハンターは心の準備を整え、頷く。
たとえ敵の得体がしれなくても、倒さなくてはいけないものであることに変わりは無い。
さあ、行こう。
扉付近には今の所何かが潜む気配はなく、開錠しても問題ないだろう。
……そうして鍵を開けた、その瞬間だった。
制止する隙も無く地下倉庫の入り口へ飛び込み、階段を駆け降りて行く何者かを見て、村長が動揺する。
「ヴァ……ヴァレーリオ!?」
まさか鍵を開けるのを待っていたのか!?
「雑魚なら俺一人で充分だってこと、分からせてやる!」
――ヴァレーリオは、『覚醒』する。
「こら! 戻ってきなさい!」
……しかし返事の声はもう無い。
どうやら彼は一応、覚醒者らしいが……。父としては無鉄砲すぎる息子が心配で堪らないのだろう。
居てもたってもいられず、思わず。「ばかやろぉぉぉぉ」と入口に向かって吼えていた。
するとローブの男も続く。
「僕のコレクションは壊さないでくださいねー!!」
――ん? コレクション?
●地下倉庫に潜むモノ
タンッ……タンッ……タンッ……タンッ……。
静かな地下に、階段を降りる彼の靴音が響く。
(見てろ……親父め……)
真っ暗な闇の中――。
持ってきたランタンの灯りを頼りにヴァレーリオは一人、突っ走っていた。
……それにしても。
寒気がする、というか。
背筋に悪寒が走る、というような。
妙に不快な寒気を覚えていた。
「畜生……薄気味悪いところだぜ」
どことなく、震える声。
――心臓は今にも張り裂けそう。
そんな時。
何かが聞こえた。
フフ……
ウァァー……
宙を揺れる、謎の浮遊体。
よく見れば人の顔にもよく似ているが――人とは異なる恐ろしき面。
灯りによって照らされたものはそれだけではない。
眼球の無い少女の人形。
血塗られた手。
……幸いにもそれらは作られたもの、だが。
「な、なんだよこれ…………!!!」
ヴァレーリオを恐怖へ突き落すのには十分すぎる。
彼の体はぴたりと止まって、硬直し続けていた。
リプレイ本文
●
ミィナ・アレグトーリア(ka0317)達は見てしまった――壁に貼り付けられていた目玉がぎょろっと見つめ返しているのを。
「ぴにゃあぁぁああ?!」
ミィナ、大絶叫!
「み、みーちゃん……い、今、動いた……!」
「たしかに動いたよくーちゃん……!」
仲良しなクレール(ka0586)とミィリア(ka2689)は引っ付き合って、がくがくぷるぷるしている!
「何よこれ……目玉?」
「通り過ぎる人を……見るように……動く……仕掛けのよぉ、ですね……」
「へぇぇ、どうにも悪趣味ですねぃ」
浅黄 小夜(ka3062)は興味深そうに、鬼百合(ka3667)は不思議そうに首を傾げながら眺めていた。
ロス・バーミリオン(ka4718)は爪で目玉をズビシッ(※壊してはない)。
さて、此処でイレーヌ(ka1372)による緊急事態発生のお知らせ。
「皆、たいへんだ。ミィナが先に走って行ってしまっ――」
「ひぃにゃあぁぁああ!」
「うぉおああぁああ!?」
だがそれは遮られるだろう。ミィナと、ヴァレーリオと思われる男の悲鳴によって。
「……どうやら急いだほうがいいようだな」
この先を見据えるイレーヌは、何かを予感するように呟くのだった。
●
「怖いのーーん!!」
ミィナはそれはもうパニック状態になっていた。
怖い目玉から逃げるように一目散に走っていたら何かに体当たりでぶつかってしまった上、LEDハンディライトが照らしだした世界は、まるでホラー。
思わず、勢い余って咄嗟に攻撃してしまう!
「わっ! お、おい、待て! 俺は敵じゃ……」
ドゴッ☆
ヴァレーリオに見事クリーンヒットする音☆
「遅かったか……」
悲鳴に駆けつけた仲間の一人、イレーヌが冷静に呟いた。
「大丈夫~?(笑)」
ロスも心配して声を掛ける。
が、やはり良い音が鳴った分痛かったらしく、「ハンターめぇ」とめそめそしているヴァレーリオ。
そして我に返ったミィナも気付いた。
「あっ、ヴァなんとかさん!」
「ヴァ……!? なんとかさんじゃねぇっ、ヴァレーリオだ!」
というようなやりとりがあって、ほんの少し和むハンター達。
しかしそのひとときは束の間だった。
『フフフ……』と、不気味な声が漂ったからだ。
――今、誰か笑った?
ハンター達は沈黙する。
「なんやろう……この声……」
そこで小夜は持参したライトで周囲を照らしながら、その声の主を探した――その折、ヴァレーリオは青褪める。
そう、思いだしたのだ。
今はゆっくりしていられないことを……。
そして遂に、見つけた。
小夜の明かりにより正体を現したのは、人の顔を模す人魂。
それがひとつ、ふたつ、……いや、数多く。
「ひっ! お、お化け!?」
見た瞬間、クレールはぷるぷると震えだすだろう。
「どうしよう……私そういうのダメなのに……!」
「うわーん、オバケさんだなんて聞いてないでござるーー!」
最強のおサムライさんを目指しているとは言えど、ミィリアもたまらず悲鳴をあげる。
「話が違うのーん!!」
ミィナも一緒に、泣きそうになっていた。
しかし敵は無情にも、そんな彼らの反応を楽しむように人魂は揺れながら――
恐ろしい形相で迫りくる!
「ぎゃああああ 来たあああああ!」
ヴァレーリオが思いっきり叫んだ!
「小夜、下がるんだ」
イレーヌは小夜の盾になるよう前に出た。聖導士の務めとして――重体である小夜を放っておけない。
そして、鬼百合も。
「大丈夫でさ、オレが守ってやんますぜ!」
小夜に向かわせないよう注意しつつ、燃える炎の矢で襲い来る人魂を消滅させる!
「ありがとう……ござい、ます……ごめんなさい……」
無理はせずに引き下がりながら、でも、出来る限りの事をしたいと思う小夜の意思は強く。
「ヴァレーリオのお兄はん……しっかり……」
硬直して立ったまま失神気味のヴァレーリオの事も気遣いつつ、仲間が戦闘を行いやすいよう――人魂が潜む闇へとライトを照らして、補佐を行う。
照明があたり、はっきりと姿が見える人魂。
「ぴにゃぁぁぁあ!」
ミィナはパニックで人魂目掛けて石つぶてを飛んでいかせ、着実に撃退!
ハンターの攻撃により跡形もなく消滅するということは、やはり雑魔なのだろう。
しかし、だとしても……。ぞっとするような姿がクレールを震えあがらせる。
もうダメ――
そんなふうに根をあげそうになる……だが、力強く、ピュアホワイトを握りなおしていた。
歓待してくれた村人達の、為にも。
(頑張らなきゃ!!)
その瞳に涙をいっぱい溜めながら、光の剣を全力で振るい人魂を消滅させていく!
「ううう、殴れるとわかればそんなに怖くはないような気がしないでもない感じがするぞー! でござるー!」
ミィリアは涙目ノンブレスで刃を振るった。
おっかない相手に内心怖がりつつも自分に言い聞かせながら。
「ええーい、覚悟!」
倒せば怖いのとオサラバ……! バシュッ、バシュッ! と、切り裂いていく。
人魂はそれ程強くはない。
どんどんと数を減らしていくだろう。
「あーんまぱっとしないわねぇ?」
ロスが楽勝と言わんばかりに鞭でビシバシとやっつけていた最中、事態は急変した。
『フフフ…… フフフフフ』
「―――!」
イレーヌは攻撃の手を続けながら、気付く。
人魂達が一斉に奥へと逃げていく――!
「待て!」
制止の声は勿論聴いてくれない。
むしろ人魂達は面白がっているようにも見えたかもしれない。
本当の恐怖はきっと、これから。
●
「ヴァレーリオさんも、単独行動しとったらさっきみたいに攻撃するかも知れんから一緒に行動せん?」
「しょうがねぇな……いいぜ、一緒に行ってやるよ」
ミィナの提案に、格好つけて返すヴァレーリオ。
さっきはビビりすぎて何も出来なかったのに、どこから来る余裕なのだろうか。
「がんばりましょうぜ、ヴァレーのにーさん」
それでも鬼百合は、からりと笑う。
良い子である。
そして相談の末、手分けして探索する事となるハンター達。
組み分けは、
ミィナとイレーヌ。
クレールとミィリア。
鬼百合と小夜とヴァレーリオと、それからーー
「ロゼのお姉はんも……良ければ……一緒にどぉでしょう……?」
小夜が首を傾げ、尋ねた。
「そうねぇ。なら後で合流させてもらおうかしら? ちょーっとやりたいことがあるのよねぇ♪」
「やりたい……事……?」
ロスは微笑を浮かべ秘密――と返していた。
●
「ぎぃやぁああぁ!」
「わぁっ!? 吃驚したぁ、大丈夫ですかい?」
ホラーコレクションより、ヴァレーリオの悲鳴に驚かされている鬼百合。
「おにいはん……これ、作り物のよぉみたい……ほら見――」
「いやぁめろぉお!!!」
小夜はヴァレーリオを安心させようと、元凶である生首のオブジェが作り物である事を証明する為にライトをよく当てて見せるが、もっとぶええっと泣かれてしまった。
本気で怖がっている様子を見つめ、明るい紫の眸をぱちくり、した後、そっと生首を丁寧に動かす。彼が怖がるので、生首には後ろを向いててもらうことにした。
「ヴァレーの兄さん。ちょっと休憩しやすかぃ?」
鬼百合はちょうどコレクションが置かれていない場所を発見したようで、提案する。
それには勿論、高速で頷くだろう。
「小夜も鬼百合も……なんで平気なんだよ……」
何もしていないのに何故か疲労困憊しているヴァレーリオが尋ねる。
「……お化け、屋敷……小夜のいた世界にも……ありました……。本物の、お化けが……いるんかは……解らへんけど……。不思議なもの……知らんかったもの……見られるのは……楽しい、です……」
大人しい雰囲気に反し物怖じせず……それよりも好奇心旺盛な心を覗かせる小夜。
「楽しいかぁ!?」
しかしヴァレーリオには同意が得られなかった模様。
「はい……」
それでも、小夜ははんなり柔らかく、頷いていた。
「にしても、にーさんはオレの事は大丈夫なんですねぃ。暗がりで見ると結構ホラーな方ですぜ」
というのは、鬼百合の覚醒姿――体中の紋様の目が、本物のように蠢くからだ。
だが。
「そりゃ大丈夫っつーか、流石に人は平気だわ」
なんて男が零すから、鬼百合は目を丸くする。
「鬼百合もなんで人魂とかローブ野郎のコレクション見て平然としてられんだ?」
「体質的にこういう耐性が程々に……というかオレが妖怪というかなんというか」
辺境の北方を、思いだしながら。
「オレは鬼って呼ばれてるんですぜ」
その言葉に、何も知らないヴァレーリオは首を傾げる。
鬼?
一体誰がどうして?
よくも分からず、ただ優しい少年を見て――男はこう返すだろう。
「鬼百合は人だろ?」
●
不気味でホラーなコレクションに見守られながら――
人魂を見つけては撃退しつつ隈なく地下倉庫を調査する折の事だった。
雑音と共に、何者かの低い声が。
各自所持していたトランシーバーから流れ出す――
するとその声に驚く悲鳴が続出。
それには一人行動をしていたロスがにやり、と笑みを零すだろう……。
*
「いひゃあっ?! さっきの声なんなん?!」
「……」
イレーヌは慌てふためくミィナの反応を少し後ろから眺めていた。
確かに突然低い声が流れだしたものだから驚いたが、ミィナへの効果はもっと絶大だったようだ。
心細げにきょときょとしているのを見て、やはり楽しくなってくるイレーヌ。
これはほんの少しの悪戯心のつもりだった。
後ろからぽんぽんと背中を叩く。
「イレーヌさん……?」
なんの警戒も無く、振り返るミィナに――
ばっ!
と、突き出す人形。
それも小刻みに震えさせながら。
「ひぃにゃあぁぁあ!」
案の定良い反応をしてくれるミィナ。
更に後ずさっていき棚に接触。
ガタッ☆
ゴトッ☆
……のしっ。
「にゃんかうごいひゃあぁああ!」
落ちてきた手首が這いずってくるのを見て恐怖心を煽られ――それがやがて破壊衝動へ!
「ぎにゃあぁああ!」
思いっきり武器を振り上げる。
「ミィナ」
――しかしそれは、イレーヌによって優しく止められるだろう。
「それは雑魔じゃない、コレクションだ」
「ううう」
ミィナは今にも破壊しかける体をぴたっと止めて、武器を下ろす。
コレクションを壊していいなら、片っ端から壊したいくらい限界だった。
でも……。
「依頼主さんや持ち主さんの希望はできるだけ叶えるんもハンターのお仕事なのん……」
ぽつり、呟く。
ローブの男から『壊さないで』ってお願いされているから、ミィナには壊せない。
「ん……」
イレーヌは目を細めた。
そして謝罪する。
「少し調子に乗り過ぎた、すまなかったな」
ミィナは恨めしそうにしていたが、こくりと頷いていた。
●
『驚かせんじゃねぇよクソがぁぁぁあ!!』
トランシーバーからまたドスの利いた声が聴こえてくる。
「ねーさん?」
いや。
「にーさん……?」
鬼百合、困惑。
「何か……あったんでしょうか……」
小夜も心配するように言った。
すると、その後。
今度は女性二人の悲鳴の声――。
●
「いやぁぁぁ! 何か降ってきたぁぁ!!」
クレール、戦闘態勢!
「この火! ついに見つけ……きゃぁぁぁぁ!! か……かお……っ!!」
絶賛、人魂が出てきてもなんとか奮闘中。しかし、
「うっうっ……失神してないだけ自分を褒めたい気分でござる……」
ミィリアも涙で視界が滲んでうるうるしており、おっかなびっくりライトで周りを照らしながら進んでいるが、いっぱいいっぱい。
「でも頑張るもん、頑張る……!」
くーちゃんと一緒なら大丈夫!
そう、想いを胸に張り切っている矢先――悲しき哉、人魂やコレクションに勝る恐怖がこの後二人に襲い掛かる。
●
「クソローブ野郎が……趣味わりぃモン集めやがって……(メスで)かっ捌くぞ……っ!!」
壊しそうになる衝動を抑えようと思いっきり床をバシンバシンッ叩いているのは、ロスである。
さっきは人魂に、今回はコレクションに。
連続でいきなり驚かされて腹を立たせる――が、すぐに正気を取り戻して。
「まっ。いいわ、皆の反応も楽しめたことだし♪」
もうお分かりだろうか。
トランシーバーから低い声を出していた犯人は、ロスだったのである!
ちょっと遠くから観察しつつ、楽しんでいたのだ!
そして。
「あら」
まさかの思わぬ来客が現る――。
「あー、いるいる。こういう幽霊」
リアルブルーでは怖い話などでよく出てきそうな正にいかにもな白い女。
クリムゾンウェストでは英霊は存在するが、彼らを除くならお化けなんて脳の錯覚だと科学的に見ているロスにとっては怖くもなんともない。恐らく雑魔で間違いない。
……だが。
「あらあら」
白い女に加勢するよう、人魂が面白楽しくわらわらと集まってくる。
「これは流石にやばいわね」
ロスは確信しながら、真顔で呟いた。
●
「ちょうどいい所に!」
ロスはクレールとミィリアを見つけると、にっこりした。
最初、どうしたんだろうと首を傾げていた二人だったが、
ミィリアは気付いてしまった。
ロスが怖い女の人を引き連れてきてる――!
しかも人魂も!
「う、うわーーん! こーわーいーーっ!! 助けてくーちゃーーん!!」
「みーちゃん!!」
ミィリアのピンチに咄嗟に反応したクレールは庇う様に前を出た――しかし!
「ひっ!?」
硬直した。
白い女を見て怖い、と感じたのだ。
でも。
「くーちゃんっ」
ミィリアの涙声を聴いた瞬間。
我武者羅に突進していく!
叫びと共に!
ジェットブーツで!
全力の体当たりだ!
「ちょ、クレールちゃんやるわね」
恐怖に震えながらもぶつかっていく姿勢のクレールに関心するロスおネェさん。
「みーちゃん! 今ぁっ!!」
白い女は飛びかかるクレールへと意識が集中しており、隙が出来ている。
ミィリアも勇気を振り絞った。
「ずえりゃー!! これでもくらえでござるー!!!」
おサムライ魂全開!
舞い乱れる桜は、荒れる吹雪の如く!
刀を振るう!
そこに騒ぎを聞きつけたミィナ、イレーヌ、小夜、鬼百合、ヴァレーリオも合流。
白い女、わらわら集まっている人魂。
それらを彼らはコレクションの無い所まで導いて、悲鳴をあげ、恐怖に固まり、それでも立ち向かっていく――!
戦闘は勿論、終始カオスでした!
●
「きゅぅ」
「大丈夫……ですか?」
依頼を全うして力尽きるクレールに、小夜がそっと気遣う。
「散々な目にあったのんー……ヴァレーリオさんは平気だったのん?」
「そ、そりゃあ平気だったぜ」
ミィナと目を合わせずに男は言った。平気じゃなかったようです。
「にーさんは村長さんを見返してやりたいんですかぃ?」
図星の沈黙。
鬼百合には父親が居らず会いたいとも思わないけれど、ヴァレーリオを見ていると、思う。いいものだなぁって――
真夏の怪談に挑戦チーム、ミッションコンプリート!
ミィナ・アレグトーリア(ka0317)達は見てしまった――壁に貼り付けられていた目玉がぎょろっと見つめ返しているのを。
「ぴにゃあぁぁああ?!」
ミィナ、大絶叫!
「み、みーちゃん……い、今、動いた……!」
「たしかに動いたよくーちゃん……!」
仲良しなクレール(ka0586)とミィリア(ka2689)は引っ付き合って、がくがくぷるぷるしている!
「何よこれ……目玉?」
「通り過ぎる人を……見るように……動く……仕掛けのよぉ、ですね……」
「へぇぇ、どうにも悪趣味ですねぃ」
浅黄 小夜(ka3062)は興味深そうに、鬼百合(ka3667)は不思議そうに首を傾げながら眺めていた。
ロス・バーミリオン(ka4718)は爪で目玉をズビシッ(※壊してはない)。
さて、此処でイレーヌ(ka1372)による緊急事態発生のお知らせ。
「皆、たいへんだ。ミィナが先に走って行ってしまっ――」
「ひぃにゃあぁぁああ!」
「うぉおああぁああ!?」
だがそれは遮られるだろう。ミィナと、ヴァレーリオと思われる男の悲鳴によって。
「……どうやら急いだほうがいいようだな」
この先を見据えるイレーヌは、何かを予感するように呟くのだった。
●
「怖いのーーん!!」
ミィナはそれはもうパニック状態になっていた。
怖い目玉から逃げるように一目散に走っていたら何かに体当たりでぶつかってしまった上、LEDハンディライトが照らしだした世界は、まるでホラー。
思わず、勢い余って咄嗟に攻撃してしまう!
「わっ! お、おい、待て! 俺は敵じゃ……」
ドゴッ☆
ヴァレーリオに見事クリーンヒットする音☆
「遅かったか……」
悲鳴に駆けつけた仲間の一人、イレーヌが冷静に呟いた。
「大丈夫~?(笑)」
ロスも心配して声を掛ける。
が、やはり良い音が鳴った分痛かったらしく、「ハンターめぇ」とめそめそしているヴァレーリオ。
そして我に返ったミィナも気付いた。
「あっ、ヴァなんとかさん!」
「ヴァ……!? なんとかさんじゃねぇっ、ヴァレーリオだ!」
というようなやりとりがあって、ほんの少し和むハンター達。
しかしそのひとときは束の間だった。
『フフフ……』と、不気味な声が漂ったからだ。
――今、誰か笑った?
ハンター達は沈黙する。
「なんやろう……この声……」
そこで小夜は持参したライトで周囲を照らしながら、その声の主を探した――その折、ヴァレーリオは青褪める。
そう、思いだしたのだ。
今はゆっくりしていられないことを……。
そして遂に、見つけた。
小夜の明かりにより正体を現したのは、人の顔を模す人魂。
それがひとつ、ふたつ、……いや、数多く。
「ひっ! お、お化け!?」
見た瞬間、クレールはぷるぷると震えだすだろう。
「どうしよう……私そういうのダメなのに……!」
「うわーん、オバケさんだなんて聞いてないでござるーー!」
最強のおサムライさんを目指しているとは言えど、ミィリアもたまらず悲鳴をあげる。
「話が違うのーん!!」
ミィナも一緒に、泣きそうになっていた。
しかし敵は無情にも、そんな彼らの反応を楽しむように人魂は揺れながら――
恐ろしい形相で迫りくる!
「ぎゃああああ 来たあああああ!」
ヴァレーリオが思いっきり叫んだ!
「小夜、下がるんだ」
イレーヌは小夜の盾になるよう前に出た。聖導士の務めとして――重体である小夜を放っておけない。
そして、鬼百合も。
「大丈夫でさ、オレが守ってやんますぜ!」
小夜に向かわせないよう注意しつつ、燃える炎の矢で襲い来る人魂を消滅させる!
「ありがとう……ござい、ます……ごめんなさい……」
無理はせずに引き下がりながら、でも、出来る限りの事をしたいと思う小夜の意思は強く。
「ヴァレーリオのお兄はん……しっかり……」
硬直して立ったまま失神気味のヴァレーリオの事も気遣いつつ、仲間が戦闘を行いやすいよう――人魂が潜む闇へとライトを照らして、補佐を行う。
照明があたり、はっきりと姿が見える人魂。
「ぴにゃぁぁぁあ!」
ミィナはパニックで人魂目掛けて石つぶてを飛んでいかせ、着実に撃退!
ハンターの攻撃により跡形もなく消滅するということは、やはり雑魔なのだろう。
しかし、だとしても……。ぞっとするような姿がクレールを震えあがらせる。
もうダメ――
そんなふうに根をあげそうになる……だが、力強く、ピュアホワイトを握りなおしていた。
歓待してくれた村人達の、為にも。
(頑張らなきゃ!!)
その瞳に涙をいっぱい溜めながら、光の剣を全力で振るい人魂を消滅させていく!
「ううう、殴れるとわかればそんなに怖くはないような気がしないでもない感じがするぞー! でござるー!」
ミィリアは涙目ノンブレスで刃を振るった。
おっかない相手に内心怖がりつつも自分に言い聞かせながら。
「ええーい、覚悟!」
倒せば怖いのとオサラバ……! バシュッ、バシュッ! と、切り裂いていく。
人魂はそれ程強くはない。
どんどんと数を減らしていくだろう。
「あーんまぱっとしないわねぇ?」
ロスが楽勝と言わんばかりに鞭でビシバシとやっつけていた最中、事態は急変した。
『フフフ…… フフフフフ』
「―――!」
イレーヌは攻撃の手を続けながら、気付く。
人魂達が一斉に奥へと逃げていく――!
「待て!」
制止の声は勿論聴いてくれない。
むしろ人魂達は面白がっているようにも見えたかもしれない。
本当の恐怖はきっと、これから。
●
「ヴァレーリオさんも、単独行動しとったらさっきみたいに攻撃するかも知れんから一緒に行動せん?」
「しょうがねぇな……いいぜ、一緒に行ってやるよ」
ミィナの提案に、格好つけて返すヴァレーリオ。
さっきはビビりすぎて何も出来なかったのに、どこから来る余裕なのだろうか。
「がんばりましょうぜ、ヴァレーのにーさん」
それでも鬼百合は、からりと笑う。
良い子である。
そして相談の末、手分けして探索する事となるハンター達。
組み分けは、
ミィナとイレーヌ。
クレールとミィリア。
鬼百合と小夜とヴァレーリオと、それからーー
「ロゼのお姉はんも……良ければ……一緒にどぉでしょう……?」
小夜が首を傾げ、尋ねた。
「そうねぇ。なら後で合流させてもらおうかしら? ちょーっとやりたいことがあるのよねぇ♪」
「やりたい……事……?」
ロスは微笑を浮かべ秘密――と返していた。
●
「ぎぃやぁああぁ!」
「わぁっ!? 吃驚したぁ、大丈夫ですかい?」
ホラーコレクションより、ヴァレーリオの悲鳴に驚かされている鬼百合。
「おにいはん……これ、作り物のよぉみたい……ほら見――」
「いやぁめろぉお!!!」
小夜はヴァレーリオを安心させようと、元凶である生首のオブジェが作り物である事を証明する為にライトをよく当てて見せるが、もっとぶええっと泣かれてしまった。
本気で怖がっている様子を見つめ、明るい紫の眸をぱちくり、した後、そっと生首を丁寧に動かす。彼が怖がるので、生首には後ろを向いててもらうことにした。
「ヴァレーの兄さん。ちょっと休憩しやすかぃ?」
鬼百合はちょうどコレクションが置かれていない場所を発見したようで、提案する。
それには勿論、高速で頷くだろう。
「小夜も鬼百合も……なんで平気なんだよ……」
何もしていないのに何故か疲労困憊しているヴァレーリオが尋ねる。
「……お化け、屋敷……小夜のいた世界にも……ありました……。本物の、お化けが……いるんかは……解らへんけど……。不思議なもの……知らんかったもの……見られるのは……楽しい、です……」
大人しい雰囲気に反し物怖じせず……それよりも好奇心旺盛な心を覗かせる小夜。
「楽しいかぁ!?」
しかしヴァレーリオには同意が得られなかった模様。
「はい……」
それでも、小夜ははんなり柔らかく、頷いていた。
「にしても、にーさんはオレの事は大丈夫なんですねぃ。暗がりで見ると結構ホラーな方ですぜ」
というのは、鬼百合の覚醒姿――体中の紋様の目が、本物のように蠢くからだ。
だが。
「そりゃ大丈夫っつーか、流石に人は平気だわ」
なんて男が零すから、鬼百合は目を丸くする。
「鬼百合もなんで人魂とかローブ野郎のコレクション見て平然としてられんだ?」
「体質的にこういう耐性が程々に……というかオレが妖怪というかなんというか」
辺境の北方を、思いだしながら。
「オレは鬼って呼ばれてるんですぜ」
その言葉に、何も知らないヴァレーリオは首を傾げる。
鬼?
一体誰がどうして?
よくも分からず、ただ優しい少年を見て――男はこう返すだろう。
「鬼百合は人だろ?」
●
不気味でホラーなコレクションに見守られながら――
人魂を見つけては撃退しつつ隈なく地下倉庫を調査する折の事だった。
雑音と共に、何者かの低い声が。
各自所持していたトランシーバーから流れ出す――
するとその声に驚く悲鳴が続出。
それには一人行動をしていたロスがにやり、と笑みを零すだろう……。
*
「いひゃあっ?! さっきの声なんなん?!」
「……」
イレーヌは慌てふためくミィナの反応を少し後ろから眺めていた。
確かに突然低い声が流れだしたものだから驚いたが、ミィナへの効果はもっと絶大だったようだ。
心細げにきょときょとしているのを見て、やはり楽しくなってくるイレーヌ。
これはほんの少しの悪戯心のつもりだった。
後ろからぽんぽんと背中を叩く。
「イレーヌさん……?」
なんの警戒も無く、振り返るミィナに――
ばっ!
と、突き出す人形。
それも小刻みに震えさせながら。
「ひぃにゃあぁぁあ!」
案の定良い反応をしてくれるミィナ。
更に後ずさっていき棚に接触。
ガタッ☆
ゴトッ☆
……のしっ。
「にゃんかうごいひゃあぁああ!」
落ちてきた手首が這いずってくるのを見て恐怖心を煽られ――それがやがて破壊衝動へ!
「ぎにゃあぁああ!」
思いっきり武器を振り上げる。
「ミィナ」
――しかしそれは、イレーヌによって優しく止められるだろう。
「それは雑魔じゃない、コレクションだ」
「ううう」
ミィナは今にも破壊しかける体をぴたっと止めて、武器を下ろす。
コレクションを壊していいなら、片っ端から壊したいくらい限界だった。
でも……。
「依頼主さんや持ち主さんの希望はできるだけ叶えるんもハンターのお仕事なのん……」
ぽつり、呟く。
ローブの男から『壊さないで』ってお願いされているから、ミィナには壊せない。
「ん……」
イレーヌは目を細めた。
そして謝罪する。
「少し調子に乗り過ぎた、すまなかったな」
ミィナは恨めしそうにしていたが、こくりと頷いていた。
●
『驚かせんじゃねぇよクソがぁぁぁあ!!』
トランシーバーからまたドスの利いた声が聴こえてくる。
「ねーさん?」
いや。
「にーさん……?」
鬼百合、困惑。
「何か……あったんでしょうか……」
小夜も心配するように言った。
すると、その後。
今度は女性二人の悲鳴の声――。
●
「いやぁぁぁ! 何か降ってきたぁぁ!!」
クレール、戦闘態勢!
「この火! ついに見つけ……きゃぁぁぁぁ!! か……かお……っ!!」
絶賛、人魂が出てきてもなんとか奮闘中。しかし、
「うっうっ……失神してないだけ自分を褒めたい気分でござる……」
ミィリアも涙で視界が滲んでうるうるしており、おっかなびっくりライトで周りを照らしながら進んでいるが、いっぱいいっぱい。
「でも頑張るもん、頑張る……!」
くーちゃんと一緒なら大丈夫!
そう、想いを胸に張り切っている矢先――悲しき哉、人魂やコレクションに勝る恐怖がこの後二人に襲い掛かる。
●
「クソローブ野郎が……趣味わりぃモン集めやがって……(メスで)かっ捌くぞ……っ!!」
壊しそうになる衝動を抑えようと思いっきり床をバシンバシンッ叩いているのは、ロスである。
さっきは人魂に、今回はコレクションに。
連続でいきなり驚かされて腹を立たせる――が、すぐに正気を取り戻して。
「まっ。いいわ、皆の反応も楽しめたことだし♪」
もうお分かりだろうか。
トランシーバーから低い声を出していた犯人は、ロスだったのである!
ちょっと遠くから観察しつつ、楽しんでいたのだ!
そして。
「あら」
まさかの思わぬ来客が現る――。
「あー、いるいる。こういう幽霊」
リアルブルーでは怖い話などでよく出てきそうな正にいかにもな白い女。
クリムゾンウェストでは英霊は存在するが、彼らを除くならお化けなんて脳の錯覚だと科学的に見ているロスにとっては怖くもなんともない。恐らく雑魔で間違いない。
……だが。
「あらあら」
白い女に加勢するよう、人魂が面白楽しくわらわらと集まってくる。
「これは流石にやばいわね」
ロスは確信しながら、真顔で呟いた。
●
「ちょうどいい所に!」
ロスはクレールとミィリアを見つけると、にっこりした。
最初、どうしたんだろうと首を傾げていた二人だったが、
ミィリアは気付いてしまった。
ロスが怖い女の人を引き連れてきてる――!
しかも人魂も!
「う、うわーーん! こーわーいーーっ!! 助けてくーちゃーーん!!」
「みーちゃん!!」
ミィリアのピンチに咄嗟に反応したクレールは庇う様に前を出た――しかし!
「ひっ!?」
硬直した。
白い女を見て怖い、と感じたのだ。
でも。
「くーちゃんっ」
ミィリアの涙声を聴いた瞬間。
我武者羅に突進していく!
叫びと共に!
ジェットブーツで!
全力の体当たりだ!
「ちょ、クレールちゃんやるわね」
恐怖に震えながらもぶつかっていく姿勢のクレールに関心するロスおネェさん。
「みーちゃん! 今ぁっ!!」
白い女は飛びかかるクレールへと意識が集中しており、隙が出来ている。
ミィリアも勇気を振り絞った。
「ずえりゃー!! これでもくらえでござるー!!!」
おサムライ魂全開!
舞い乱れる桜は、荒れる吹雪の如く!
刀を振るう!
そこに騒ぎを聞きつけたミィナ、イレーヌ、小夜、鬼百合、ヴァレーリオも合流。
白い女、わらわら集まっている人魂。
それらを彼らはコレクションの無い所まで導いて、悲鳴をあげ、恐怖に固まり、それでも立ち向かっていく――!
戦闘は勿論、終始カオスでした!
●
「きゅぅ」
「大丈夫……ですか?」
依頼を全うして力尽きるクレールに、小夜がそっと気遣う。
「散々な目にあったのんー……ヴァレーリオさんは平気だったのん?」
「そ、そりゃあ平気だったぜ」
ミィナと目を合わせずに男は言った。平気じゃなかったようです。
「にーさんは村長さんを見返してやりたいんですかぃ?」
図星の沈黙。
鬼百合には父親が居らず会いたいとも思わないけれど、ヴァレーリオを見ていると、思う。いいものだなぁって――
真夏の怪談に挑戦チーム、ミッションコンプリート!
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 4人 |
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おばけ退治! クレール・ディンセルフ(ka0586) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/08/12 00:52:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/09 18:40:04 |