ゲスト
(ka0000)
クルセイダーの挽回
マスター:秋風落葉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/08/17 09:00
- 完成日
- 2015/08/21 19:48
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
(あああああああああああああああああああああああ……暑いですわ……暑すぎますわ……)
グラズヘイム王国南部、シエラリオ地方。
今、ロザリーことロザリア=オルラランはとある依頼を受けてこの地におり、砂浜で敵と対峙していた。
しかし、ロザリーの振るうメイスは精彩を欠いている。それは彼女が全身にまとう鎧と夏の日差しが主な原因であった。
砂浜で蠢くのは、なぜか空を飛ぶ大きな魚の群れ。外見はマンボウに似たそれは、口から時折魔力によって球状になった水の弾を飛ばしてくる。もちろん雑魔である。
ロザリーはふらつきながらも武器を振るうが、魚の雑魔はそれを軽々とよけ、お返しとばかりに体当たりを繰り出す。からくも盾で受け止めるロザリー。
一旦バックステップで距離を取り、再度敵へと攻撃をしかけようとする彼女だったが……。
(あ……もう……駄目ですわ……)
ついに限界がきたのか、ばったりと後ろ向きに倒れるロザリー。幸い足元は砂浜な為、転倒による大きな怪我は無かった。
――ロザリーさん!?
仲間が自分の名を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、ロザリーの意識は闇の中に落ちていった……。
――――――。
――――。
――。
「――はっ!?」
ロザリーが意識を取り戻したとき、ロザリーの目に仲間達の心配する顔が飛び込んできた。慌てて上半身を起こすロザリー。
「て、敵は!? 依頼は!?」
「大丈夫、ちゃんと俺達が追い払ったよ」
「そ、そうですか……良かったですわ……」
「ただ……結局倒せなかったから、また来るかもしれないけど……」
憂いの顔を見せる男の隣で、年若い女のハンターがロザリーに声をかける。
「ロザリーさんは大丈夫? 急に倒れるからびっくりしちゃった」
仲間の言葉にロザリーは顔を伏せる。
「も、申し訳ありません……夏の暑さを甘くみていたようです……」
「まあ、ロザリーさんの鎧は結構がっしりとしてるからねえ……」
ロザリーは言われて仲間達の姿を見返す。今気がついたが、彼らは夏場、かつ海辺に適していそうな軽装でこの戦いに臨んでいた。
「とにかくオフィスに報告に行こうか。追い払うことは出来たんだしな」
「そうね」
ひとまずの勝利を祝うハンター達。ロザリーも立ちあがるが、その表情はすぐれない。
「うう……今回は全くお役に立てませんでした……」
「気にするなよ。いつもは俺達がロザリーさんに迷惑かけてるしな」
「そうそう。たまにはいいじゃない?」
ロザリーとしばしばパーティーを組むハンター達は、彼女を元気付けようと様々な言葉をかける。
しかし、ロザリーの表情が晴れることは無かった。
●
「あああああああああああああああああ!!! やってしまいましたわ!」
大きな館の一室で。
野獣のような叫びと共に、大きなうさぎのぬいぐるみに拳がめりこんだ。
巨大な鮫さえ一撃でのしてしまいそうなパンチを繰り出しているのは、もちろん銀髪の淑女ロザリーである。
彼女は私物であるぬいぐるみのお腹にドスッ……ドスッ……、と重いパンチを何度も叩きこむが、その怒りが晴れた様子はない。逆に、久々に主人のお役に立てているぬいぐるみの顔はかすかに微笑んでいるように思えた。
「ああ……なんということでしょう……失態ですわ……頑丈な鎧が仇になるとは思ってもみませんでしたわ……」
全身を金属鎧で固め、左手の盾で敵の攻撃を受け流し、右手のメイスで的確に打つ。これがロザリーの得意な戦いのスタイルである。
しかし、海辺の、さらに真夏の暑さの中ではそれが逆効果となることもある。
「きっとまたあの魚の雑魔は襲撃をかけてくるに決まってますわ。こんどこそ、足を引っ張らないようにしなければ……しかし、どうすれば……」
呟きながらも拳を繰り出し続けているロザリーの目に、とあるモノが映る。
それは、過去にあるハンターからプレゼントで贈られた鎧であった。いや、かろうじて鎧と呼べるかなー、と言えるくらいの箇所しか守らない露出度の高いモノであったが。
名をビキニアーマーという。
「……」
ロザリーは恐る恐るといった様子で手に取り、かなりの長時間の葛藤の後、それを身につけてみる。なお、今までロザリーはこの鎧を身につけたことはない。
姿見にビキニアーマーを身につけた自分を映し、ロザリーの顔は即座にリンゴのように赤く染まった。
「……こ、これは……駄目ですわ……! 恥ずかしすぎますわ……! はしたないですわ……! オルララン家の者としてこのような姿を晒すわけにはいきませんわ……!」
その格好のまま再びうさぎのぬいぐるみを乱打するロザリー。夏場かつ海辺での戦いには適していそうな装備なのだが、ロザリーの羞恥心が耐えられないらしい。
ドスッ……ドスッ……、という衝撃が彼女の部屋を揺らし、そのせいかある装飾品が戸棚から落ちてきた。
ロザリーの視線がそれの上でとまり、同時に彼女の瞳は懐かしさを帯びたものになる。かつて、ロザリーがある依頼において身につけたアイテムだったからだ。
「はっ!! そうですわ!! いいことを思いつきましたわ!!」
なぜか、そのアイテムを見たロザリーはにこりと微笑んだ。
●
「空飛ぶ魚の群れが再び海岸に現れました! 大至急向かってください!」
ハンターオフィスにもたらされた、魚型雑魔出現の報告。
受付嬢はハンター達を新たに募集し、集まったメンバーは急ぎ現場に駆けつける。そこには続々と海上を飛翔してくる魚の群れがいた。数は20ほどであろうか。敵を見据え、中々手こずりそうだとハンターは思う。
そしてハンター達の中にはもう一つの気がかりがある。今回、依頼に参加するはずの一人の仲間がまだこの場にやってきていないのだ。その者はクルセイダーとして登録しており、パーティーにいるのといないのとでは大きな差となるであろう。
「お待たせしましたわ!」
砂を踏む音と共に背後からかけられた威勢のいい声。待ちわびていたメンバーは一斉に後ろを振り向き、即座に目を見開いたまま硬直する。
ハンター達の目の前に立っていたのは、ビキニアーマーと仮面を身につけ、メイスと盾で武装する女性だった……。
(あああああああああああああああああああああああ……暑いですわ……暑すぎますわ……)
グラズヘイム王国南部、シエラリオ地方。
今、ロザリーことロザリア=オルラランはとある依頼を受けてこの地におり、砂浜で敵と対峙していた。
しかし、ロザリーの振るうメイスは精彩を欠いている。それは彼女が全身にまとう鎧と夏の日差しが主な原因であった。
砂浜で蠢くのは、なぜか空を飛ぶ大きな魚の群れ。外見はマンボウに似たそれは、口から時折魔力によって球状になった水の弾を飛ばしてくる。もちろん雑魔である。
ロザリーはふらつきながらも武器を振るうが、魚の雑魔はそれを軽々とよけ、お返しとばかりに体当たりを繰り出す。からくも盾で受け止めるロザリー。
一旦バックステップで距離を取り、再度敵へと攻撃をしかけようとする彼女だったが……。
(あ……もう……駄目ですわ……)
ついに限界がきたのか、ばったりと後ろ向きに倒れるロザリー。幸い足元は砂浜な為、転倒による大きな怪我は無かった。
――ロザリーさん!?
仲間が自分の名を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、ロザリーの意識は闇の中に落ちていった……。
――――――。
――――。
――。
「――はっ!?」
ロザリーが意識を取り戻したとき、ロザリーの目に仲間達の心配する顔が飛び込んできた。慌てて上半身を起こすロザリー。
「て、敵は!? 依頼は!?」
「大丈夫、ちゃんと俺達が追い払ったよ」
「そ、そうですか……良かったですわ……」
「ただ……結局倒せなかったから、また来るかもしれないけど……」
憂いの顔を見せる男の隣で、年若い女のハンターがロザリーに声をかける。
「ロザリーさんは大丈夫? 急に倒れるからびっくりしちゃった」
仲間の言葉にロザリーは顔を伏せる。
「も、申し訳ありません……夏の暑さを甘くみていたようです……」
「まあ、ロザリーさんの鎧は結構がっしりとしてるからねえ……」
ロザリーは言われて仲間達の姿を見返す。今気がついたが、彼らは夏場、かつ海辺に適していそうな軽装でこの戦いに臨んでいた。
「とにかくオフィスに報告に行こうか。追い払うことは出来たんだしな」
「そうね」
ひとまずの勝利を祝うハンター達。ロザリーも立ちあがるが、その表情はすぐれない。
「うう……今回は全くお役に立てませんでした……」
「気にするなよ。いつもは俺達がロザリーさんに迷惑かけてるしな」
「そうそう。たまにはいいじゃない?」
ロザリーとしばしばパーティーを組むハンター達は、彼女を元気付けようと様々な言葉をかける。
しかし、ロザリーの表情が晴れることは無かった。
●
「あああああああああああああああああ!!! やってしまいましたわ!」
大きな館の一室で。
野獣のような叫びと共に、大きなうさぎのぬいぐるみに拳がめりこんだ。
巨大な鮫さえ一撃でのしてしまいそうなパンチを繰り出しているのは、もちろん銀髪の淑女ロザリーである。
彼女は私物であるぬいぐるみのお腹にドスッ……ドスッ……、と重いパンチを何度も叩きこむが、その怒りが晴れた様子はない。逆に、久々に主人のお役に立てているぬいぐるみの顔はかすかに微笑んでいるように思えた。
「ああ……なんということでしょう……失態ですわ……頑丈な鎧が仇になるとは思ってもみませんでしたわ……」
全身を金属鎧で固め、左手の盾で敵の攻撃を受け流し、右手のメイスで的確に打つ。これがロザリーの得意な戦いのスタイルである。
しかし、海辺の、さらに真夏の暑さの中ではそれが逆効果となることもある。
「きっとまたあの魚の雑魔は襲撃をかけてくるに決まってますわ。こんどこそ、足を引っ張らないようにしなければ……しかし、どうすれば……」
呟きながらも拳を繰り出し続けているロザリーの目に、とあるモノが映る。
それは、過去にあるハンターからプレゼントで贈られた鎧であった。いや、かろうじて鎧と呼べるかなー、と言えるくらいの箇所しか守らない露出度の高いモノであったが。
名をビキニアーマーという。
「……」
ロザリーは恐る恐るといった様子で手に取り、かなりの長時間の葛藤の後、それを身につけてみる。なお、今までロザリーはこの鎧を身につけたことはない。
姿見にビキニアーマーを身につけた自分を映し、ロザリーの顔は即座にリンゴのように赤く染まった。
「……こ、これは……駄目ですわ……! 恥ずかしすぎますわ……! はしたないですわ……! オルララン家の者としてこのような姿を晒すわけにはいきませんわ……!」
その格好のまま再びうさぎのぬいぐるみを乱打するロザリー。夏場かつ海辺での戦いには適していそうな装備なのだが、ロザリーの羞恥心が耐えられないらしい。
ドスッ……ドスッ……、という衝撃が彼女の部屋を揺らし、そのせいかある装飾品が戸棚から落ちてきた。
ロザリーの視線がそれの上でとまり、同時に彼女の瞳は懐かしさを帯びたものになる。かつて、ロザリーがある依頼において身につけたアイテムだったからだ。
「はっ!! そうですわ!! いいことを思いつきましたわ!!」
なぜか、そのアイテムを見たロザリーはにこりと微笑んだ。
●
「空飛ぶ魚の群れが再び海岸に現れました! 大至急向かってください!」
ハンターオフィスにもたらされた、魚型雑魔出現の報告。
受付嬢はハンター達を新たに募集し、集まったメンバーは急ぎ現場に駆けつける。そこには続々と海上を飛翔してくる魚の群れがいた。数は20ほどであろうか。敵を見据え、中々手こずりそうだとハンターは思う。
そしてハンター達の中にはもう一つの気がかりがある。今回、依頼に参加するはずの一人の仲間がまだこの場にやってきていないのだ。その者はクルセイダーとして登録しており、パーティーにいるのといないのとでは大きな差となるであろう。
「お待たせしましたわ!」
砂を踏む音と共に背後からかけられた威勢のいい声。待ちわびていたメンバーは一斉に後ろを振り向き、即座に目を見開いたまま硬直する。
ハンター達の目の前に立っていたのは、ビキニアーマーと仮面を身につけ、メイスと盾で武装する女性だった……。
リプレイ本文
●
「ぶふっ、ぶはははははは」
振り向いた先に立っていた怪人物を見た瞬間、盛大に吹き出したのは好戦的な喧嘩少女ゾファル・G・初火(ka4407)である。ゾファルの視界に飛び込んできたのが、ビキニアーマーに仮面という出で立ちの女性だったのだから無理もない。
仮面の主はロザリーことロザリア=オルララン。彼女がこんな奇天烈な格好をしているのは、ビキニアーマーというある意味はしたない鎧を身につけていることが主な理由であった。
――ロザリア=オルラランとして、このような姿を衆目に晒すわけにはいきませんわ! ぐぬぬ、どうすれば……。
――そうですわ!
――仮面をつけて正体を隠せばいいのですわ!
という思考に至ってしまったらしい。
「ビキニ&仮面!! ビキニだけでもエロイのに仮面によるミステリアスが加わりエロさ10倍っす! やばい、鼻血が!」
謎の人物を見て一人興奮しているのは神楽(ka2032)。
「ロザリーさんありがとうっす! もう死んでもいい! 俺はやる! やるっすよ!」
もちろん、仮面の主がロザリーであることは見る人が見れば一発で分かることであった。なお、神楽は彼女にビキニアーマーをプレゼントした張本人でもある。
「え? あのビキニ仮面がロザリーさん? あはは嘘言っちゃいけないわよロザリーさんはもっと鎧着込んでるしあんな変態チックな格好するわけないじゃないやだなあ」
そう棒読みで応えたのはティス・フュラー(ka3006)。
「……まあ私も、ビキニアーマー着けてたりするからあんまり人の事言えない気もするけど。ともかく、あまり彼女の事には触れないでおきましょう……」
なぜか戦う前から疲労を感じさせる声音であった。
「あの仮面の女性、確か『聖女』さん……だよね?」
アイビス・グラス(ka2477)はしばし黙考し、すぐに深く考えるのをやめた。彼女の為に知らないフリをしようと心に決める。『聖女』の二つ名を持つハンターがあんな格好をしているのだ。きっとやむにやまれぬ事情があるのだろう。
アイビスは仮面の人物へと一歩近づいた。
「初めましてアイビス・グラスです、あなたの名前伺ってもいいかしら?」
「こちらこそ初めまして! わたくしの名はロザ……いえ、ローズマリーですわ! よろしくお願いしますわ!」
かつて、とある依頼に仮面をつけて参加した際に名乗った偽名を今回も名乗るロザリー。いや、ローズマリー。
「ろ、ローズマリーさんですね。今日は一緒に頑張りましょう」
アニス・エリダヌス(ka2491)も問い詰めては可哀相だと、正体に気付いてない風を装った。ロザリー本人と面識がある彼女からすれば、トレードマークの銀髪だけでもうばればれである。
「ええと、今日の依頼の件ですけど……」
誰かがローズマリーの正体を改めてしまうような間が空かないよう、矢継ぎ早に話しを続けるアニスであった。
「……まったくどういうつもりなんだろうな、ロザリー姐さんは。まあ、わざわざ仮面までつけているんだ。触れてやらずに、普通に接するべきなんだろうな」
Anbar(ka4037)はロザリーとも仮面のローズマリーとも面識がある。彼女が再び正体を隠しているのは事情があると考え、何も言わないことにする。
神谷 春樹(ka4560)は謎の人物が誰だかは分かっていないものの、なんとなく事情を察し、追求しない考えである。むしろ露出が多いこの謎の人物を出来るだけ援護しようという心積もりであった。
「ああ、うん……個性的な服装の者もハンターには多いからね。何も不思議はないよ」
イーディス・ノースハイド(ka2106)は唐突に現れた仮面のハンターに一瞬戸惑ったものの、そういう結論を出した。むしろ、謎の人物よりも春樹の方を意識している。
「ただ、春樹。キミは彼女の方をあまり見ないで欲しいね、他の女性に見とれているキミの姿を見るのは何故だかあまり気分が良くないんだ」
わきあがるモヤモヤの正体に、彼女はまだ気付いてはいなかった。
仮面の闖入者のせいで少し動揺したハンター達であったが、そこは歴戦の者達。すぐに落ち着きを取り戻し、雑魔達の方へと意識を戻す。
今回は雑魔もそうだが、夏の暑さとの戦いも重要である。
「真夏に鎧は確かに暑いけれど、サーコートを上に纏えばある程度の直射日光には耐えられる」
イーディスは全身鎧「ソリッドハート」に身を包み、パラディンサーコートをその上から羽織っている。
「そうでないと、軽装で戦場に出なければならないからね。後は適時水分補給をする事が大事さ」
そう言うとイーディスは携帯品からペットボトルを取り出し、中の水を口に含んだ。アイビスも同様に準備していたミネラルウォーターで喉を潤す。
春樹もハッカ油から作った自作の冷感スプレーを、自分と希望者へとあらかじめ吹き付けており、暑さ対策は問題ない。
「あくまで体感温度を下げるだけで実際の体温は下げられないけど、脳が感じる暑さを減らせば集中力は段違いだろうからね」
ハンター達は万全の備えで海原からやってくる雑魔達を待ち構えた。
●
「さて、随分と数が多い上に空を飛ぶか」
イーディスの目の前で続々と上陸してくる魚型の雑魔達。大海をたゆたうマンボウのように、空を自由に泳いでいる。幸いあまり高くは飛べないのか、肉弾戦の武器が届く位置だ。
イーディスは壁役を務める為、前へと出た。
さきほどまで笑い転げていたゾファルだったが、今ではすでに起き上がり、ギガースアックスを担いで連れていた馬に跨っている。なお、本当は仕事が終わるまでずっと笑い転げていたい彼女だった。今でも時々噴出すのをこらえているが、ちゃんと仕事には真面目に従事するつもりなのだ。
――俺様ちゃんには耐性が無いからそこん所は勘弁してほしいぜー、とは彼女の内心の声だ。
アニスも冷気を纏う盾「グレッチャー」をかざしつつ、右手の神罰銃「パニッシュメント」を構えた。
彼女はグレッチャーにより暑い戦場の空気が少しでも冷えることを期待している。
ついに射程内に入った雑魔に対し、ティスのアースバレットが一番槍となって襲い掛かった。石つぶてが宙を飛び、空飛ぶ魚を正面からしたたかに撃った。水の属性を秘めていた雑魔は耐え切れず、消滅する。
雑魔の群れは仲間がやられても特に動じず、魚特有の無表情さのまま行軍を続ける。まず突っ込んでくるのは群れの半数。
Anbarはアックス「ライデンシャフト」を手に最前線へと飛び込み、一体を瞬く間に切り伏せた。
「ロザ、じゃないローズマリーさんは防御が低いんだから後方支援するっす!」
ライフル「ペネトレイトC26」で銃弾をばらまきながら神楽がローズマリーに注意を喚起した。盾を構えて前に出ようとしているビキニアーマーが見えたからだ。
「そ、そういえばそうですわね。まずは援護をさせていただきますわ!」
いつもの金属鎧をまとっているつもりで前に出ようとしていたローズマリーは自分の格好に気がつき、足を止めるとプロテクションで仲間を支援することにする。
ゾファルはこみ上げてくる笑いの衝動に耐えつつ、重装馬によるチャージングからの薙ぎ払いで雑魔の群れを一閃した。
先ほど一体を屠ったティスは、持参のミネラルウォーターで喉を潤しつつ、次の敵に狙いをつける。敵が一直線に重なった瞬間を見計らい、ライトニングボルトで一掃する目論見だ。
魚の雑魔達は一斉に口から水属性の魔法弾を飛ばした。いくつかを被弾してしまう女性陣。そのことでなぜか歓喜の声を上げたのは神楽である。水属性の攻撃により、女性ハンターの服が一瞬肌に張り付いたのだ。いや、雑魔が生み出したのはあくまで水のマテリアル。実際に服が濡れた訳ではないはずだ。しかし、神楽には確かにそう見えたのである。
「おおぉ!? じゃない、お前等狙うなら俺を狙うっす! これ以上肌を傷物にするのは許さないっすよ!」
つい漏れてしまった喜びの悲鳴をすぐに打ち消し、神楽は勇ましい声を上げて仲間達を庇うために前へと出た。それに反応したかどうかは不明だが、最前線の雑魔達はハンター達へ肉弾攻撃をしかける為に突進してくる。
アイビスは雑魔の体当たりを華麗にかわすと、即座に死角へと回り込み、衝撃拳「発勁掌波」による一撃を叩き込む。自分の耐久力をはるかに上回る打撃に雑魔は地に落ち、そのままこの世との繋がりを絶たれて消えうせる。
難なく敵をしとめたアイビスの視界の端に仮面の主の姿が映った。
「苦しかったら私達に頼ってね、仲間ってそういうものだからね」
アイビスは鎧に不慣れらしいローズマリーを気遣った。大丈夫ですわ! と元気よく返事するローズマリー。
「命中精度と火力には欠けるけど、その分数で押すさ」
広角投射でチャクラムの軌道を操り、魚の群れをずたずたにした春樹は素早く二つ目のチャクラムを取り出した。もちろん再度広角投射を見舞うつもりである。
雑魔の群れはあっさりと半壊した。しかし臆することを知らない雑魔達の後続が再びハンター達へと挑みかかる。またも口から魔法弾を飛ばす雑魔達。
アニスは盾で魚雑魔の魔法弾を受け止める。同じ水の属性を持つ盾は雑魔の攻撃を完全に防いでくれた。アニスは流れるようにホーリーライトの行使に入る。彼女が生み出した光弾が先ほどアニスを狙った雑魔に命中し、一撃で無に帰した。
アイビスは蹴りと拳を使い分けて敵を圧倒、さらに範囲攻撃を行える味方の為に敵を一箇所に誘導しようとしている。
イーディスは魚雑魔の水の魔法弾を盾で捌き、お返しとばかりに剣から衝撃波を放つ。雑魔は飛来したエネルギーに両断され、あっさりと消滅した。そのまま敵が固まっている場所へと駆け出し、バスタードソード「フォルティス」を思い切り振りかぶる。刃が振りぬかれた時、雑魔達はまとめて切り裂かれた。
二十ほどいた雑魔の群れも、もはや残りわずかだ。
「ストラァァァィクブロウ!」
ロザリー、いや、ローズマリーも今では前線に出、嬉々としてメイスを振るっている。得意のストライクブロウが敵をあっさりと粉砕した。
その隣でAnbarのクラッシュブロウが最後の雑魔を断ち割り、真夏の海は平和を取り戻したのであった。
●
クルセイダーによる癒しの力で全ての傷がふさがったハンター達。ひとしきりお互いをねぎらいあった後、Anbarは仮面の女性――ローズマリーへと近づいた。
「……のどが渇いただろ? まずはこれでのどを潤してくれ」
Anbarはローズマリーにミネラルウォーター入りのペットボトルを渡す。
「……姐さんは俺が好きな女性に似ているから、つい差し出がましい事を言うんだが」
Anbarの言葉にローズマリーは首を傾げる。
「一見涼しげだが、せっかく綺麗な肌が無駄に日焼けするからその格好は良くないな。身体に張り付かないローブとかの方がこの時期は良いと思うぜ」
「なるほど。ありがとうございます!」
Anbarのアドバイスに素直に喜ぶローズマリー。先のAnbarの発言に重要な言葉が隠れていたのだが、彼女はそのことに全く気付いていないようだ。
「お疲れっす~。よく冷えてるっすよ~」
神楽も持ち込んでいた飲み物を仲間達に渡して回っている。さらにはパラソルなども砂浜に配置しはじめる神楽。とはいえ、夏の海を楽しむ気なのは神楽だけではなかった。
「うん、目の前に海があるんだから遊ぶしか無いね」
さっそく水着に着替え、浮き輪を手に戻ってきたイーディス。何気なさを装って春樹を誘う。春樹は水着は持ってきてはいなかったものの、ズボンの裾をまくり、遊ぶ気満々だ。
ティスは持ってきたツナ缶と食パンでツナサンドを作って仲間に振舞っている。ツナサンドが好物らしい謎のローズマリー仮面もサンドイッチを手に取り、物陰に隠れる。しばらくして戻ってきた時にはツナサンドは綺麗さっぱりなくなっていた。皆の前で仮面を外す気はないらしい。
自分も食事を済ませたティスは、その場で身につけているものを脱ぎだした。慌てて目を背けたり、はたまたガン見する男達。
なんということでしょう。ビキニアーマーの下からメロウビキニが現れました。用意周到な彼女は下に水着を着込んでいたのです。
アイビスも水着に着替えて颯爽と再登場。
なお、アイビスが着ている水着は「ジップアップワンピース」といい、お腹から胸元に掛けてのフロントジッパーで着込む、ワンピースタイプの競泳水着だ。ジッパーをどれだけ上げるかは使用者の使い方次第であり、そのスライダーの位置はまさに絶妙な感じであった。
アニスもすでにビキニ水着で身を包み、軽く準備運動をしていた。彼女はおもいっきり泳ぐつもりだ。
海辺は一気に華やかな雰囲気に包まれる。そんな中、ゾファルはローズマリーに謝罪をしていた。彼女の姿を見て笑い転げていたことを気に病んでいるらしい。ローズマリーは特に気にしていないようだ。むしろ、自分が笑われていたことに気付いていないのかもしれない。
「折角の海なんだし泳ぐっす! 遊ぶっす! あ、日焼けが嫌なら俺が日焼け止めを塗るっすよ! ゲヘヘ」
女性陣のところにやってきたのは神楽。そのスケベ心を隠す気もないようだ。ある意味潔い。さらに、携帯バッグからビキニ水着を取り出してローズマリーに近づく神楽。
「オルララン家のロザリーさんは無理っすけど既にビキニアーマーを着てるただのローズマリーさんなら平気っすよね? それとも無理な理由があるっすか? ケケケ」
下卑た笑みと共にビキニ水着を手にロザリーに迫る神楽。
それを見たアイビスはにこりと怖い笑みを浮かべ、手をわきわきさせると神楽に近づいた。泣く子も黙る恐怖のアイアンクローである。
「ちょっ! 待つっす! 海で遊ぶ前に死ぬのは御免っす!」
神楽は脱兎のごとく砂浜を駆け出して見えなくなる。
悪は去った。
結局ローズマリーも浅瀬に入り、ゾファルと水をかけあって遊んでいる。ゾファルは時々襲ってくる笑いの発作になんとか耐えている。ローズマリーはまだ仮面をつけたままなのだ。
イーディスも春樹と一緒に夏の海を満喫していた。
アニス達も泳いだり、神楽が持ち込んだビーチボールで遊んでおり、彼女達の笑い声と共にはじけた水しぶきがきらりと空に輝く。
しばらくして戻ってきた神楽、Anbarも、やがて砂浜で女性陣と一緒にビーチバレーで楽しんだ。ハンターの身体能力を活かした強烈なスパイクを、やはり熟練のハンターが見事に捌く。
ある意味雑魔との命のやり取りよりも熱い戦いは、メンバーが入れ替わり立ち替わり陽が落ちるまで続けられ、ハンター達の新たな夏の思い出となったのであった。
「ぶふっ、ぶはははははは」
振り向いた先に立っていた怪人物を見た瞬間、盛大に吹き出したのは好戦的な喧嘩少女ゾファル・G・初火(ka4407)である。ゾファルの視界に飛び込んできたのが、ビキニアーマーに仮面という出で立ちの女性だったのだから無理もない。
仮面の主はロザリーことロザリア=オルララン。彼女がこんな奇天烈な格好をしているのは、ビキニアーマーというある意味はしたない鎧を身につけていることが主な理由であった。
――ロザリア=オルラランとして、このような姿を衆目に晒すわけにはいきませんわ! ぐぬぬ、どうすれば……。
――そうですわ!
――仮面をつけて正体を隠せばいいのですわ!
という思考に至ってしまったらしい。
「ビキニ&仮面!! ビキニだけでもエロイのに仮面によるミステリアスが加わりエロさ10倍っす! やばい、鼻血が!」
謎の人物を見て一人興奮しているのは神楽(ka2032)。
「ロザリーさんありがとうっす! もう死んでもいい! 俺はやる! やるっすよ!」
もちろん、仮面の主がロザリーであることは見る人が見れば一発で分かることであった。なお、神楽は彼女にビキニアーマーをプレゼントした張本人でもある。
「え? あのビキニ仮面がロザリーさん? あはは嘘言っちゃいけないわよロザリーさんはもっと鎧着込んでるしあんな変態チックな格好するわけないじゃないやだなあ」
そう棒読みで応えたのはティス・フュラー(ka3006)。
「……まあ私も、ビキニアーマー着けてたりするからあんまり人の事言えない気もするけど。ともかく、あまり彼女の事には触れないでおきましょう……」
なぜか戦う前から疲労を感じさせる声音であった。
「あの仮面の女性、確か『聖女』さん……だよね?」
アイビス・グラス(ka2477)はしばし黙考し、すぐに深く考えるのをやめた。彼女の為に知らないフリをしようと心に決める。『聖女』の二つ名を持つハンターがあんな格好をしているのだ。きっとやむにやまれぬ事情があるのだろう。
アイビスは仮面の人物へと一歩近づいた。
「初めましてアイビス・グラスです、あなたの名前伺ってもいいかしら?」
「こちらこそ初めまして! わたくしの名はロザ……いえ、ローズマリーですわ! よろしくお願いしますわ!」
かつて、とある依頼に仮面をつけて参加した際に名乗った偽名を今回も名乗るロザリー。いや、ローズマリー。
「ろ、ローズマリーさんですね。今日は一緒に頑張りましょう」
アニス・エリダヌス(ka2491)も問い詰めては可哀相だと、正体に気付いてない風を装った。ロザリー本人と面識がある彼女からすれば、トレードマークの銀髪だけでもうばればれである。
「ええと、今日の依頼の件ですけど……」
誰かがローズマリーの正体を改めてしまうような間が空かないよう、矢継ぎ早に話しを続けるアニスであった。
「……まったくどういうつもりなんだろうな、ロザリー姐さんは。まあ、わざわざ仮面までつけているんだ。触れてやらずに、普通に接するべきなんだろうな」
Anbar(ka4037)はロザリーとも仮面のローズマリーとも面識がある。彼女が再び正体を隠しているのは事情があると考え、何も言わないことにする。
神谷 春樹(ka4560)は謎の人物が誰だかは分かっていないものの、なんとなく事情を察し、追求しない考えである。むしろ露出が多いこの謎の人物を出来るだけ援護しようという心積もりであった。
「ああ、うん……個性的な服装の者もハンターには多いからね。何も不思議はないよ」
イーディス・ノースハイド(ka2106)は唐突に現れた仮面のハンターに一瞬戸惑ったものの、そういう結論を出した。むしろ、謎の人物よりも春樹の方を意識している。
「ただ、春樹。キミは彼女の方をあまり見ないで欲しいね、他の女性に見とれているキミの姿を見るのは何故だかあまり気分が良くないんだ」
わきあがるモヤモヤの正体に、彼女はまだ気付いてはいなかった。
仮面の闖入者のせいで少し動揺したハンター達であったが、そこは歴戦の者達。すぐに落ち着きを取り戻し、雑魔達の方へと意識を戻す。
今回は雑魔もそうだが、夏の暑さとの戦いも重要である。
「真夏に鎧は確かに暑いけれど、サーコートを上に纏えばある程度の直射日光には耐えられる」
イーディスは全身鎧「ソリッドハート」に身を包み、パラディンサーコートをその上から羽織っている。
「そうでないと、軽装で戦場に出なければならないからね。後は適時水分補給をする事が大事さ」
そう言うとイーディスは携帯品からペットボトルを取り出し、中の水を口に含んだ。アイビスも同様に準備していたミネラルウォーターで喉を潤す。
春樹もハッカ油から作った自作の冷感スプレーを、自分と希望者へとあらかじめ吹き付けており、暑さ対策は問題ない。
「あくまで体感温度を下げるだけで実際の体温は下げられないけど、脳が感じる暑さを減らせば集中力は段違いだろうからね」
ハンター達は万全の備えで海原からやってくる雑魔達を待ち構えた。
●
「さて、随分と数が多い上に空を飛ぶか」
イーディスの目の前で続々と上陸してくる魚型の雑魔達。大海をたゆたうマンボウのように、空を自由に泳いでいる。幸いあまり高くは飛べないのか、肉弾戦の武器が届く位置だ。
イーディスは壁役を務める為、前へと出た。
さきほどまで笑い転げていたゾファルだったが、今ではすでに起き上がり、ギガースアックスを担いで連れていた馬に跨っている。なお、本当は仕事が終わるまでずっと笑い転げていたい彼女だった。今でも時々噴出すのをこらえているが、ちゃんと仕事には真面目に従事するつもりなのだ。
――俺様ちゃんには耐性が無いからそこん所は勘弁してほしいぜー、とは彼女の内心の声だ。
アニスも冷気を纏う盾「グレッチャー」をかざしつつ、右手の神罰銃「パニッシュメント」を構えた。
彼女はグレッチャーにより暑い戦場の空気が少しでも冷えることを期待している。
ついに射程内に入った雑魔に対し、ティスのアースバレットが一番槍となって襲い掛かった。石つぶてが宙を飛び、空飛ぶ魚を正面からしたたかに撃った。水の属性を秘めていた雑魔は耐え切れず、消滅する。
雑魔の群れは仲間がやられても特に動じず、魚特有の無表情さのまま行軍を続ける。まず突っ込んでくるのは群れの半数。
Anbarはアックス「ライデンシャフト」を手に最前線へと飛び込み、一体を瞬く間に切り伏せた。
「ロザ、じゃないローズマリーさんは防御が低いんだから後方支援するっす!」
ライフル「ペネトレイトC26」で銃弾をばらまきながら神楽がローズマリーに注意を喚起した。盾を構えて前に出ようとしているビキニアーマーが見えたからだ。
「そ、そういえばそうですわね。まずは援護をさせていただきますわ!」
いつもの金属鎧をまとっているつもりで前に出ようとしていたローズマリーは自分の格好に気がつき、足を止めるとプロテクションで仲間を支援することにする。
ゾファルはこみ上げてくる笑いの衝動に耐えつつ、重装馬によるチャージングからの薙ぎ払いで雑魔の群れを一閃した。
先ほど一体を屠ったティスは、持参のミネラルウォーターで喉を潤しつつ、次の敵に狙いをつける。敵が一直線に重なった瞬間を見計らい、ライトニングボルトで一掃する目論見だ。
魚の雑魔達は一斉に口から水属性の魔法弾を飛ばした。いくつかを被弾してしまう女性陣。そのことでなぜか歓喜の声を上げたのは神楽である。水属性の攻撃により、女性ハンターの服が一瞬肌に張り付いたのだ。いや、雑魔が生み出したのはあくまで水のマテリアル。実際に服が濡れた訳ではないはずだ。しかし、神楽には確かにそう見えたのである。
「おおぉ!? じゃない、お前等狙うなら俺を狙うっす! これ以上肌を傷物にするのは許さないっすよ!」
つい漏れてしまった喜びの悲鳴をすぐに打ち消し、神楽は勇ましい声を上げて仲間達を庇うために前へと出た。それに反応したかどうかは不明だが、最前線の雑魔達はハンター達へ肉弾攻撃をしかける為に突進してくる。
アイビスは雑魔の体当たりを華麗にかわすと、即座に死角へと回り込み、衝撃拳「発勁掌波」による一撃を叩き込む。自分の耐久力をはるかに上回る打撃に雑魔は地に落ち、そのままこの世との繋がりを絶たれて消えうせる。
難なく敵をしとめたアイビスの視界の端に仮面の主の姿が映った。
「苦しかったら私達に頼ってね、仲間ってそういうものだからね」
アイビスは鎧に不慣れらしいローズマリーを気遣った。大丈夫ですわ! と元気よく返事するローズマリー。
「命中精度と火力には欠けるけど、その分数で押すさ」
広角投射でチャクラムの軌道を操り、魚の群れをずたずたにした春樹は素早く二つ目のチャクラムを取り出した。もちろん再度広角投射を見舞うつもりである。
雑魔の群れはあっさりと半壊した。しかし臆することを知らない雑魔達の後続が再びハンター達へと挑みかかる。またも口から魔法弾を飛ばす雑魔達。
アニスは盾で魚雑魔の魔法弾を受け止める。同じ水の属性を持つ盾は雑魔の攻撃を完全に防いでくれた。アニスは流れるようにホーリーライトの行使に入る。彼女が生み出した光弾が先ほどアニスを狙った雑魔に命中し、一撃で無に帰した。
アイビスは蹴りと拳を使い分けて敵を圧倒、さらに範囲攻撃を行える味方の為に敵を一箇所に誘導しようとしている。
イーディスは魚雑魔の水の魔法弾を盾で捌き、お返しとばかりに剣から衝撃波を放つ。雑魔は飛来したエネルギーに両断され、あっさりと消滅した。そのまま敵が固まっている場所へと駆け出し、バスタードソード「フォルティス」を思い切り振りかぶる。刃が振りぬかれた時、雑魔達はまとめて切り裂かれた。
二十ほどいた雑魔の群れも、もはや残りわずかだ。
「ストラァァァィクブロウ!」
ロザリー、いや、ローズマリーも今では前線に出、嬉々としてメイスを振るっている。得意のストライクブロウが敵をあっさりと粉砕した。
その隣でAnbarのクラッシュブロウが最後の雑魔を断ち割り、真夏の海は平和を取り戻したのであった。
●
クルセイダーによる癒しの力で全ての傷がふさがったハンター達。ひとしきりお互いをねぎらいあった後、Anbarは仮面の女性――ローズマリーへと近づいた。
「……のどが渇いただろ? まずはこれでのどを潤してくれ」
Anbarはローズマリーにミネラルウォーター入りのペットボトルを渡す。
「……姐さんは俺が好きな女性に似ているから、つい差し出がましい事を言うんだが」
Anbarの言葉にローズマリーは首を傾げる。
「一見涼しげだが、せっかく綺麗な肌が無駄に日焼けするからその格好は良くないな。身体に張り付かないローブとかの方がこの時期は良いと思うぜ」
「なるほど。ありがとうございます!」
Anbarのアドバイスに素直に喜ぶローズマリー。先のAnbarの発言に重要な言葉が隠れていたのだが、彼女はそのことに全く気付いていないようだ。
「お疲れっす~。よく冷えてるっすよ~」
神楽も持ち込んでいた飲み物を仲間達に渡して回っている。さらにはパラソルなども砂浜に配置しはじめる神楽。とはいえ、夏の海を楽しむ気なのは神楽だけではなかった。
「うん、目の前に海があるんだから遊ぶしか無いね」
さっそく水着に着替え、浮き輪を手に戻ってきたイーディス。何気なさを装って春樹を誘う。春樹は水着は持ってきてはいなかったものの、ズボンの裾をまくり、遊ぶ気満々だ。
ティスは持ってきたツナ缶と食パンでツナサンドを作って仲間に振舞っている。ツナサンドが好物らしい謎のローズマリー仮面もサンドイッチを手に取り、物陰に隠れる。しばらくして戻ってきた時にはツナサンドは綺麗さっぱりなくなっていた。皆の前で仮面を外す気はないらしい。
自分も食事を済ませたティスは、その場で身につけているものを脱ぎだした。慌てて目を背けたり、はたまたガン見する男達。
なんということでしょう。ビキニアーマーの下からメロウビキニが現れました。用意周到な彼女は下に水着を着込んでいたのです。
アイビスも水着に着替えて颯爽と再登場。
なお、アイビスが着ている水着は「ジップアップワンピース」といい、お腹から胸元に掛けてのフロントジッパーで着込む、ワンピースタイプの競泳水着だ。ジッパーをどれだけ上げるかは使用者の使い方次第であり、そのスライダーの位置はまさに絶妙な感じであった。
アニスもすでにビキニ水着で身を包み、軽く準備運動をしていた。彼女はおもいっきり泳ぐつもりだ。
海辺は一気に華やかな雰囲気に包まれる。そんな中、ゾファルはローズマリーに謝罪をしていた。彼女の姿を見て笑い転げていたことを気に病んでいるらしい。ローズマリーは特に気にしていないようだ。むしろ、自分が笑われていたことに気付いていないのかもしれない。
「折角の海なんだし泳ぐっす! 遊ぶっす! あ、日焼けが嫌なら俺が日焼け止めを塗るっすよ! ゲヘヘ」
女性陣のところにやってきたのは神楽。そのスケベ心を隠す気もないようだ。ある意味潔い。さらに、携帯バッグからビキニ水着を取り出してローズマリーに近づく神楽。
「オルララン家のロザリーさんは無理っすけど既にビキニアーマーを着てるただのローズマリーさんなら平気っすよね? それとも無理な理由があるっすか? ケケケ」
下卑た笑みと共にビキニ水着を手にロザリーに迫る神楽。
それを見たアイビスはにこりと怖い笑みを浮かべ、手をわきわきさせると神楽に近づいた。泣く子も黙る恐怖のアイアンクローである。
「ちょっ! 待つっす! 海で遊ぶ前に死ぬのは御免っす!」
神楽は脱兎のごとく砂浜を駆け出して見えなくなる。
悪は去った。
結局ローズマリーも浅瀬に入り、ゾファルと水をかけあって遊んでいる。ゾファルは時々襲ってくる笑いの発作になんとか耐えている。ローズマリーはまだ仮面をつけたままなのだ。
イーディスも春樹と一緒に夏の海を満喫していた。
アニス達も泳いだり、神楽が持ち込んだビーチボールで遊んでおり、彼女達の笑い声と共にはじけた水しぶきがきらりと空に輝く。
しばらくして戻ってきた神楽、Anbarも、やがて砂浜で女性陣と一緒にビーチバレーで楽しんだ。ハンターの身体能力を活かした強烈なスパイクを、やはり熟練のハンターが見事に捌く。
ある意味雑魔との命のやり取りよりも熱い戦いは、メンバーが入れ替わり立ち替わり陽が落ちるまで続けられ、ハンター達の新たな夏の思い出となったのであった。
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相談卓 ティス・フュラー(ka3006) エルフ|13才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/08/15 10:41:36 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/12 11:26:13 |