ゲスト
(ka0000)
貧弱司祭護衛作戦
マスター:馬車猪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2014/07/23 22:00
- 完成日
- 2014/07/25 21:22
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「死にたくねよ。なんで俺が」
断末魔に似た呪詛をこぼす兵士を少女が抱き寄せる。
「畜生、畜生っ」
清潔な生地が唾液と血で濡れ、無骨な指が糸を断ち白い肌を晒させる。
戦塵にまみれ死に瀕した男の暴力と臭いを真正面から受け止め、イコニア・カーナボン(kz0040)は優しく抱いた。
「温かい」
兵士の全身から力が抜ける。
細い腕に渾身の力を込め、男の体が地面に打ち付けられるのを防ぐ。
「お疲れ様でした」
イコニアは外套を脱ぎ亡骸を寝かせる。
男のまぶたを閉じ、ふけの目立つ髪を綺麗に整える。
戦場に倒れた兵士の顔は苦悶に満ち、けれどわずかだけではあるが安らぎが浮かんでいた。
●
ヴォイドとの戦いの翌日。
再編を終えた王国部隊の隊長を、若い司祭がたずねていた。
「明後日の葬儀に参加できず申し訳ありません」
育ちが窺える綺麗な礼だった。平民出身の隊長は強烈な居心地の悪さに襲われてしまい、大きな身振りで顔をあげるよう促した。
「司祭に見送っていただけただけで十分です」
この若さで司祭という教会の選良。しかも女性で貴族出身。そんな立場の人間が前線近くに来るなど滅多にないことだし、率先して血と汗にまみれるなど普通はない。
「ところで今後のご予定は?」
後方の街に送り届けるため護衛をつけるつもりで尋ねる。
「はい」
イコニアは野に咲く花のように控えめに微笑んだ。
「雑魔を刈りながら帰るつもりです」
スキルを使い果たしているはずなのに、小柄な体から濃厚な戦意が溢れて吹きつける。
どうやら隊長の聞き間違いではなさそうだ。
隊長が頭痛を堪えて振り返る。
これまで常に冷静沈着だったはずの副官が、熱に浮かされた目で小柄な司祭を見上げている。
再度振り返る。司令部の入り口からは大勢の……隊の主力である覚醒者達が是非護衛にしてくれと言いたげに熱烈アピールしていた。気づいたイコニアが笑顔を浮かべ、獰猛な男達が嬉しげに歓声をあげる。
なお、イコニアが戦死しても主力が抜けて大損害が生じても、隊長は良くて左遷で悪ければあの世行きだ。
隊長は一休みしてから出発するよう強く勧め、司祭を休憩用の天幕に送り届けた後、部隊で最も速い馬を伝令に与えてハンターズソサエティ支部へ向かわせる。
依頼料を全額負担するのは痛いが、このまま司祭を送り出すよりよりずっとましだった。
●
支部に伝令が駆け込んでから数分後、ハンターオフィス本部で自己主張の強い……具体的には縁取りが真っ赤っかな天然3Dディスプレイが現れた。
あなたが不審に思って目をやると、いきなり加速し鼻先まで来て停止する。
ため息をついて押しのける。
立体的な依頼票はあなたの手に逆らわずこてんと転がり、水平方向へ広がり、より詳しい情報を画面に映し出した。
3頭身で表現された小柄なエクラ教司祭が単身で前線近くから後方に向かい、雑魔の目撃情報がある峠をわざわざ選んで地方都市に戻ろうとしているようだ。
3頭身が峠にさしかかる。羽が生えた猿が何体も3頭身に襲いかかり、3頭身ははしゃぎながら1体を倒した時点で体力切れ。後は滅多打ちにされて薄れて消えていく。
『司祭の警護をお願いしたい。急げばイコニア司祭が駐屯地から出発する前に合流できる。報酬は……』
伝令の声をそのまま記憶したのだろう。疲労で息も絶え絶えな伝令が、地形情報と報酬について詳しく説明していた。
『司祭のスキルは回復していないはずだ。1日で送り届けることができないと隊長の立場がまずくなるが、最悪複数日かかけてより安全な道を使っても構わない。司祭の安全を第一に考えてくれ。……これでいいか? すまんが水を』
伝令の声が唐突に途切れる。
あなたはこの依頼をうけてもうけなくてもいいが、うけるなら急いだ方がよいかもしれない。
断末魔に似た呪詛をこぼす兵士を少女が抱き寄せる。
「畜生、畜生っ」
清潔な生地が唾液と血で濡れ、無骨な指が糸を断ち白い肌を晒させる。
戦塵にまみれ死に瀕した男の暴力と臭いを真正面から受け止め、イコニア・カーナボン(kz0040)は優しく抱いた。
「温かい」
兵士の全身から力が抜ける。
細い腕に渾身の力を込め、男の体が地面に打ち付けられるのを防ぐ。
「お疲れ様でした」
イコニアは外套を脱ぎ亡骸を寝かせる。
男のまぶたを閉じ、ふけの目立つ髪を綺麗に整える。
戦場に倒れた兵士の顔は苦悶に満ち、けれどわずかだけではあるが安らぎが浮かんでいた。
●
ヴォイドとの戦いの翌日。
再編を終えた王国部隊の隊長を、若い司祭がたずねていた。
「明後日の葬儀に参加できず申し訳ありません」
育ちが窺える綺麗な礼だった。平民出身の隊長は強烈な居心地の悪さに襲われてしまい、大きな身振りで顔をあげるよう促した。
「司祭に見送っていただけただけで十分です」
この若さで司祭という教会の選良。しかも女性で貴族出身。そんな立場の人間が前線近くに来るなど滅多にないことだし、率先して血と汗にまみれるなど普通はない。
「ところで今後のご予定は?」
後方の街に送り届けるため護衛をつけるつもりで尋ねる。
「はい」
イコニアは野に咲く花のように控えめに微笑んだ。
「雑魔を刈りながら帰るつもりです」
スキルを使い果たしているはずなのに、小柄な体から濃厚な戦意が溢れて吹きつける。
どうやら隊長の聞き間違いではなさそうだ。
隊長が頭痛を堪えて振り返る。
これまで常に冷静沈着だったはずの副官が、熱に浮かされた目で小柄な司祭を見上げている。
再度振り返る。司令部の入り口からは大勢の……隊の主力である覚醒者達が是非護衛にしてくれと言いたげに熱烈アピールしていた。気づいたイコニアが笑顔を浮かべ、獰猛な男達が嬉しげに歓声をあげる。
なお、イコニアが戦死しても主力が抜けて大損害が生じても、隊長は良くて左遷で悪ければあの世行きだ。
隊長は一休みしてから出発するよう強く勧め、司祭を休憩用の天幕に送り届けた後、部隊で最も速い馬を伝令に与えてハンターズソサエティ支部へ向かわせる。
依頼料を全額負担するのは痛いが、このまま司祭を送り出すよりよりずっとましだった。
●
支部に伝令が駆け込んでから数分後、ハンターオフィス本部で自己主張の強い……具体的には縁取りが真っ赤っかな天然3Dディスプレイが現れた。
あなたが不審に思って目をやると、いきなり加速し鼻先まで来て停止する。
ため息をついて押しのける。
立体的な依頼票はあなたの手に逆らわずこてんと転がり、水平方向へ広がり、より詳しい情報を画面に映し出した。
3頭身で表現された小柄なエクラ教司祭が単身で前線近くから後方に向かい、雑魔の目撃情報がある峠をわざわざ選んで地方都市に戻ろうとしているようだ。
3頭身が峠にさしかかる。羽が生えた猿が何体も3頭身に襲いかかり、3頭身ははしゃぎながら1体を倒した時点で体力切れ。後は滅多打ちにされて薄れて消えていく。
『司祭の警護をお願いしたい。急げばイコニア司祭が駐屯地から出発する前に合流できる。報酬は……』
伝令の声をそのまま記憶したのだろう。疲労で息も絶え絶えな伝令が、地形情報と報酬について詳しく説明していた。
『司祭のスキルは回復していないはずだ。1日で送り届けることができないと隊長の立場がまずくなるが、最悪複数日かかけてより安全な道を使っても構わない。司祭の安全を第一に考えてくれ。……これでいいか? すまんが水を』
伝令の声が唐突に途切れる。
あなたはこの依頼をうけてもうけなくてもいいが、うけるなら急いだ方がよいかもしれない。
リプレイ本文
●説得
よく回る口を武器に、最も危険な場所を手に入れようとしたイコニア・カーナボン(kz0040)。
彼女を止めたのは物理力でもよく練られた言葉でもなく、不思議そうに見上げる少年の瞳であった。
「お姉さんにとって僕らは頼りないのかな、それとも要らないのかな、嫌いなのかな」
ユノ(ka0806)がじいっと見つめる。
イコニアの額にうっすらと汗が浮かんで足取りが重くなり、自然とハンター達に追いつかれて囲まれることになる。
「うんとねお姉さん」
ユノは駐屯地で書き写した地図を確認しながら会話を続ける。しばらくは開けた地形が続くので喋っていても不意打ちされないだろう。
「もう少し心砕いてくれている人の気持ちや自分の在り方を見つめ直した方が好いと思うよー?」
教会に戻る前に倒れたら隊長おじさんがクビになって家族と一緒に路頭に迷うよねー、と考えたりするがあまり顔には出ない。
「なんか自己満足を優先してダイジナモノを踏みふみして見えるー。上手く言えないけど強さは弱さで、弱さは強さで……うにゅー?」
言っている間にユノ自身自分が何を言っているかよく分からなくなった気がする。故にイコニアは有効な反論を行えない。聖堂教会がヴォイド根絶を掲げているので反論のしようはあるけれども、一人前のハンターとはいえ子供相手に権威を持ち出すのはあらゆる意味で駄目すぎる。
エイラ・エラル(ka2464)がひとつ咳払い。
ユノはエイラの意図を察して少しだけイコニアから離れた。
「雑魔を倒すことで、散っていった戦士たちへの餞にもなるでしょう。けれどね、それで貴方が落ちてしまえばそれこそ意味がなくなるわ。剣を振るうばかりが戦いじゃないことを、あなたは知っているはずよ?」
下げてから上げる。一国の外交官から場末の詐欺師まで使う、交渉術の基本である。
「指示を出すことも立派な戦いだわ。私たちがあなたの剣となる。お願いできるかしら? 司祭様」
「……はい」
イコニアがうなずくまで、1秒近い間があった。
出会って1時間の、しかも全く別組織に属するハンターをまともに指揮できるはずがない。
「転移門までの護衛をお願いします。その間、私はハンターの皆さんの指示に従います」
イコニアはエイラの予想通りの言葉を返す。
余所行きの表情のまま、目だけでよくできましたと褒める。イコニアが上目遣いに抗議……というより拗ねてみせても、小娘の上目遣い程度エイラに通じるはずがなかった。
●遠い敵
日は高く風は温い。
ハンター達が歩く速度を落とさなくてもイコニアは付いてきている。けれども体力がないせいで司祭はびっしょりと汗を掻いていた。
アクセル・ランパード(ka0448)が周囲に対する警戒を続けつつイコニアに話しかける。
「ところでカーナボン司祭様は何故雑魔を刈りながら帰るおつもりに?」
「司祭としての勤めを果たすため、と、言いたいところですが」
意味は乱れても気合いは十分なようだ。
「主に私の満足のためです」
こいつ何言ってやがるという視線が周囲から向けられている気がする。
アクセルはエクラ教一信者として司祭に対する礼を崩さなかったが、崩さないためには努力が必要だった。
「ヴォイドが減れば被害が減り、耕作可能地が増え、移動と輸送にかかる費用が下がって、王家も貴族も軍備を減らせます。社会全体が豊かになるのです」
イコニアは断言し、ですから攻撃の機会は逃さないことにしているのですと話を締めくくる。
「実は良い子ちゃんしてるのがストレス溜まって暴れ回りたいだけ……なんてなぁ」
ハッハッハァー!! と紫月海斗(ka0788)が陽性の笑いでからかう。
「もとから良い子ではなくおてんばだと思いますよ」
そう言って、司祭は清潔なタオルで汗をぬぐった。
そんな和気藹々とした雰囲気の中、最初に異変に気づいたのはスーズリー・アイアンアックス(ka1687)だった。
「地図を」
ユノが開いた地図と目の前の地形を見比べる。
左右には林、前方200メートルには峠。地図によると、峠を抜ければ奇襲に適した場所がなくなる。
「見間違い?」
他の覚醒者と比べて少しだけ性能が良い目で林の中を見る。
十数秒前に何かが動いた気がした。だが今は何も感じられない。
「ほらっ、かかってこいよ!」
情感あふれる大声を出すのは巡間 切那(ka0583)。
もっとも顔は平静なままで、黒い瞳は冷静に周囲を観察している。
自分も探そうとして無意識に動きかけたイコニアをユノが抱きついて制止。
「ほらっ」
羽ばたきの音。小動物が逃げ出す気配。そして、木々の上から一瞬見えた羽付き猿型雑魔。
「……もしかして、今回の雑魔ってのはあれか」
シュタール・フラム(ka0024)は迷う。
敵がこちらに向かって来るなら今すぐ防性強化と運動強化を使うべきだ。しかし向かってこないなら無駄うちになってしまう。
「のんで」
ユノが水筒を開けイコニアに差し出す。しばらく迷っていたが雑魔が近づいてこないのに気付いて口をつけ、軽く口の中を湿らせる。それだけでも必要以上の緊張が解け不足していた水分が補われた気がした。
「来ないな」
シュタールは緊張で激発するほど未熟ではない。左右と後ろに見え隠れする雑魔を警戒しつつも足は緩めず、峠にさしかかった。
「はじめるか!」
海斗がアサルトライフルの弾倉を確認。きちんと陸上用の弾が入っている。
峠の登場の足場を確認。見た目より踏み固められていて安定した状態で撃てそうだ。
「弾を馳走……ってな」
射撃の瞬間、海斗の体はほとんど完全に制止し、引き金に触れた指だけがかすかに動いた。
上半身をうしろに押す衝撃と、乾いた銃声を残して銃弾が飛翔する。弓でも銃でも当てるのが難しい距離を飛んでいた羽猿の胸に当たって大きく凹ませた。
大きな損害を受けた猿が着地。別の羽猿が海斗を牽制するため前進する。
再度の銃声。
最初と同じように着地しかけてバランスを崩し道の上に転がる。
「気付いてるぜ」
180度強反転する。
羽猿は3体、不意を打つため翼を伸ばした動かさず滑空していた。海斗が容赦なく発砲。
左端の腹部に深い穴を開けて撃墜し、真ん中の猿に対する銃撃を外す。
敵味方の距離が近づいたためリボルバーでの射撃が始まる。
スーズリーのドワーフらしい高性能ボディは遠距離射撃に向かない拳銃での高精度射撃を可能にする。否、ただ高性能なだけではない。
特に最初の1発は友の攻撃的マテリアルが乗り移っているかのように熱くて硬く、真ん中の猿の右肩を容易く砕いて貫通した。こうなると羽も本来の性能を発揮できない。高度がみるみる落ちていき、猿型雑魔はスーズリーにぶつかるような形で不時着、スーズリーが片手1本で支える盾に遮られ食い止められた。
右端の羽猿は驚くべき悪運でハンターの攻撃を回避し海斗の銃の最低射程の内側に入り込む。
「ビイイィィィィィィムッ!!
海斗の引き金を引くのは指ではなく意識。アサルトライフルを媒介に生み出された光が右の猿の右羽を消し飛ばす。猿の剥き出しの歯が海斗を喉に触れる寸前、遠くからの祈りが届いたかのように風が吹いて狙いがずれた。
「確かにスピードはあるが10も20も来るんでなければまぁ何とか!」
シュタールが杖から流れ出すマテリアルを榊 兵庫(ka0010)へ向ける。
兵庫の感覚が研ぎ澄まされる。
レザーグローブ越しに握った薙刀が、まるで神経が接続されたかのように刃の隅々まで感じられた。
「こちらは任された」
海斗の近くに3体、イコニアから20メートルほど離れた場所に2体。
兵庫はイコニア近くの雑魔を無視して3体のうち最も近くの猿にうちかかる。
踏み込んで攻撃の威力を増し、刃にマテリアルを加えた上で肩から胸まで貫通させ、足の裏を叩きつけて強引に引き抜く。
「これでも喰らっとけ」
シュタールが鮮やかな手つきでワンドから拳銃へ持ち替え発砲。
大きな傷がついた胸板に新たな穴を開けた。
「今出てかれると逆に面倒だから止めてくれ」
拳銃で兵庫を援護しつつイコニアに声をかける。司祭は意外なほどしっかりとした構えで盾を構え雑魔を待ち受けていたが、肩を落としアクセル達に連れられ雑魔から離れて行く。
「速度は覚醒者未満」
太刀を構えた切那の白い手は、ゆらめく黒の気に覆われ禍々しくも美しい。
ほぼ死角から近づく猿雑魔の歯を足の動きだけで回避、無防備に晒された雑魔の背中へ渾身の力と現時点最高の効率で刃を突き立てる。
「ちっ」
骨の隙間を通す動きで肉を裂いて刃を取り戻す。
切那の瞳はマテリアル解放に伴い赤く染まっている。そこに浮かんでいるのは戦いの狂熱ではなく明らかな落胆だ。
「少しは鍛えろ」
猿は想像より弱かった。猿の腕の大振りをさらなる加速でかわし、その動きでイコニアへの進路を遮る位置へ移動する。
「この程度じゃ食い足りない」
横へ一閃。半秒遅れて体液が一筋横に飛び、1秒遅れて猿の頭がころりと地面に落ちた。
雑魔の残骸が黒く染まり形が崩れ、最初から存在しなかったかのようにこの世から消え去った。
近づくことで兵庫の間合いから逃れようとする猿とさせじと距離をコントロールする兵庫。
その真横から短い刃で切り込むような動きでスーズリーが仕掛けた。
万が一にも味方に流れ弾を食らわさないための動きだ。白兵戦の中に飛び込むので、最も敵に近づく銃口が最も汚れることになる。
銃とは即ち精密機器でそんな行動は自殺行為、のはずなのに引き金は滑らかで誤動作の気配もない。
「使える」
リアルブルーの技術力を改めて感じながら発砲。弾がめり込み猿の動きが鈍る。兵庫がの刃が猿の頭を中身ごと砕き、もう1体残っていた雑魔も海斗のアサルトライフルの前に沈黙した。
●護衛作戦
距離をとろうとした雑魔2体と、混戦を避けようとした司祭護衛班の進路がたまたま……高速で移動可能な空間は限られているので半ばは必然だが、ともかく両者は親近距離で対峙することになった。
「ふにゅー」
各種装備の調達から道中のイコニアの面倒まで休む間もなく働き続けていたユノが、たまりにたまったストレスをワンドに込めて振り下ろす。
2つ並んだ猿の右側を、普段以上の集中力で強化されたマテリアルが射貫いた。
「にゅ?」
会心の当たりなのに雑魔の動きが鋭いままだ。どうやらこの2体が主力のようだった。
「司祭は私の後ろへ」
アクセルの背から光の翼が伸びる。
本人は意識すらせず盾を掲げ、イコニアかユノを狙った剥き出しの歯を受け止める。衝撃はあってもダメージはないことを確認、視線を動かずに意識の中の引き金を引く。
「さぁ相手になりますよ!」
光弾が地面と水平に飛びもう1体の雑魔を襲う。逃げるつもりか、あるいは大回りしてハンターを背後から襲おうとしていたのかは分からない。脇腹を大きく抉られた猿型は怒り狂ってアクセルめがけて飛びかかろうとした。
そこへエイラが踏み出す。
距離は短くても高速で、赤く揺らめく闘気と髪がまっすぐに後ろへ伸びる。
鋭く短く息を吐いてロングソードで突く。威力より精度を優先した一撃が羽を含む部位を切り裂いた。
「余所見は禁物ですよ」
アクセルがバスタードソードをを振り下ろす。アクセルの目の前の雑魔は、味方の援護を諦めロングソードより一回り大きい剣の防御に専念した。
「動いては駄目よ」
エイラの言葉がイコニアの動きを止める。
見る限りでは雑魔の1体なら問題なく相手できるようだが司祭を傷まみれにするわけにはいかない。今日の晩には炊き出し資金集めのためのパーティ出席やらの予定が詰まっているのだから。
「良い子ね」
振り返りざまにロングソードを振るう。
機動力の落ちた雑魔では回避はできず腕を使った拙い防御を試み、手の平から肘まで縦に割られた。
頬がちぎれるほど大口を開け悲鳴をあげ、そこへユノの術が炸裂して回復の余地がなく破壊される。
「これで」
アクセルは密着することで相打ちを狙う雑魔を盾で前へ押しやり。
「終わりです!」
再度振り下ろす。
エイラのロングソードが待ち構えているため猿に逃げ場はない。刃が肩から腹までめり込み、雑魔の全身から色が消えて瞬く間に崩壊した。
唐突に音が消える。
ハンター達は得物を構えたまま油断無く周囲を警戒した。襲って来た雑魔5体は既に形を失い、新たな雑魔が現れる様子もない。
「お腹減った~」
ユノの言葉が戦闘終了の合図になった。
張り詰めた気配が消え、いつの間にか消えていた虫や小動物の音が復活する。
「まだ動ける?」
エイラが剣を鞘におさめてたずねると、イコニアは大好物なお菓子を食べられてしまった子供のような顔で、それでも礼儀正しく頭を下げるのだった。
●転移門
街が見えてからは早かった。
見慣れぬハンター、特にリアルブルー出身者に興味を惹かれた警備の兵が集まり、司祭がいることに気づかれて騒がれたがトラブルというほどでもなく問題なく転移門に到着する。
「ありがとうございました」
礼法本にそのまま載せたくなる礼をする司祭を軽く撫でてから切那が言う。、
「自分の立場、価値くらいしっかり理解しろよな」
頭一歩抜きん出てる人物の行動は、抜きん出てない者のの行動を左右するときもある。故に自分本位で動くなと伝えたつもりなのに残念ながら全く伝わっていない。
「はい。司祭の地位に恥じないよう、今まで以上にエクラ教の姿勢を行動で示すつもりで……痛いです」
こめかみをぐりぐりする切那に涙目になるイコニア。実に平和な光景だった。
「司祭殿」
かわいがりが終了してから兵庫が声をかける。
「あなたは大きな勘違いをしていると思う。前線の兵士達があなたに望んでいるのは、共に戦う戦友でなく、一歩後で支え待ってくれていて、癒しを与えてくれる聖女の役割だろう」
私は司祭の仕事をしているだけなのですけど……と言いたげなイコニアも空気を読んで静かに聴いている。
「聡明なあなたならば、なぜ彼の隊長が我々を雇ってまで送り届けようとしたのか、その意味はきちんと理解出来ているはずだ。その辺をよく考えてみる方が良いと思う」
「ま、何でもかんでも一人で抱え込むもんじゃない。他人でも仲間でも、頼れる相手がいる時は頼っていいと思うぜ」
シュタールが派手な片目瞬きを送る。もう一報の目も閉じかけだったのはご愛敬だ。
「ええと、その……がんばります」
改めて頭を下げる司祭に手を振って、ハンター達は一足先に転移門を使い帰路につく。
全員消えても、司祭はまた頭を下げていた。
よく回る口を武器に、最も危険な場所を手に入れようとしたイコニア・カーナボン(kz0040)。
彼女を止めたのは物理力でもよく練られた言葉でもなく、不思議そうに見上げる少年の瞳であった。
「お姉さんにとって僕らは頼りないのかな、それとも要らないのかな、嫌いなのかな」
ユノ(ka0806)がじいっと見つめる。
イコニアの額にうっすらと汗が浮かんで足取りが重くなり、自然とハンター達に追いつかれて囲まれることになる。
「うんとねお姉さん」
ユノは駐屯地で書き写した地図を確認しながら会話を続ける。しばらくは開けた地形が続くので喋っていても不意打ちされないだろう。
「もう少し心砕いてくれている人の気持ちや自分の在り方を見つめ直した方が好いと思うよー?」
教会に戻る前に倒れたら隊長おじさんがクビになって家族と一緒に路頭に迷うよねー、と考えたりするがあまり顔には出ない。
「なんか自己満足を優先してダイジナモノを踏みふみして見えるー。上手く言えないけど強さは弱さで、弱さは強さで……うにゅー?」
言っている間にユノ自身自分が何を言っているかよく分からなくなった気がする。故にイコニアは有効な反論を行えない。聖堂教会がヴォイド根絶を掲げているので反論のしようはあるけれども、一人前のハンターとはいえ子供相手に権威を持ち出すのはあらゆる意味で駄目すぎる。
エイラ・エラル(ka2464)がひとつ咳払い。
ユノはエイラの意図を察して少しだけイコニアから離れた。
「雑魔を倒すことで、散っていった戦士たちへの餞にもなるでしょう。けれどね、それで貴方が落ちてしまえばそれこそ意味がなくなるわ。剣を振るうばかりが戦いじゃないことを、あなたは知っているはずよ?」
下げてから上げる。一国の外交官から場末の詐欺師まで使う、交渉術の基本である。
「指示を出すことも立派な戦いだわ。私たちがあなたの剣となる。お願いできるかしら? 司祭様」
「……はい」
イコニアがうなずくまで、1秒近い間があった。
出会って1時間の、しかも全く別組織に属するハンターをまともに指揮できるはずがない。
「転移門までの護衛をお願いします。その間、私はハンターの皆さんの指示に従います」
イコニアはエイラの予想通りの言葉を返す。
余所行きの表情のまま、目だけでよくできましたと褒める。イコニアが上目遣いに抗議……というより拗ねてみせても、小娘の上目遣い程度エイラに通じるはずがなかった。
●遠い敵
日は高く風は温い。
ハンター達が歩く速度を落とさなくてもイコニアは付いてきている。けれども体力がないせいで司祭はびっしょりと汗を掻いていた。
アクセル・ランパード(ka0448)が周囲に対する警戒を続けつつイコニアに話しかける。
「ところでカーナボン司祭様は何故雑魔を刈りながら帰るおつもりに?」
「司祭としての勤めを果たすため、と、言いたいところですが」
意味は乱れても気合いは十分なようだ。
「主に私の満足のためです」
こいつ何言ってやがるという視線が周囲から向けられている気がする。
アクセルはエクラ教一信者として司祭に対する礼を崩さなかったが、崩さないためには努力が必要だった。
「ヴォイドが減れば被害が減り、耕作可能地が増え、移動と輸送にかかる費用が下がって、王家も貴族も軍備を減らせます。社会全体が豊かになるのです」
イコニアは断言し、ですから攻撃の機会は逃さないことにしているのですと話を締めくくる。
「実は良い子ちゃんしてるのがストレス溜まって暴れ回りたいだけ……なんてなぁ」
ハッハッハァー!! と紫月海斗(ka0788)が陽性の笑いでからかう。
「もとから良い子ではなくおてんばだと思いますよ」
そう言って、司祭は清潔なタオルで汗をぬぐった。
そんな和気藹々とした雰囲気の中、最初に異変に気づいたのはスーズリー・アイアンアックス(ka1687)だった。
「地図を」
ユノが開いた地図と目の前の地形を見比べる。
左右には林、前方200メートルには峠。地図によると、峠を抜ければ奇襲に適した場所がなくなる。
「見間違い?」
他の覚醒者と比べて少しだけ性能が良い目で林の中を見る。
十数秒前に何かが動いた気がした。だが今は何も感じられない。
「ほらっ、かかってこいよ!」
情感あふれる大声を出すのは巡間 切那(ka0583)。
もっとも顔は平静なままで、黒い瞳は冷静に周囲を観察している。
自分も探そうとして無意識に動きかけたイコニアをユノが抱きついて制止。
「ほらっ」
羽ばたきの音。小動物が逃げ出す気配。そして、木々の上から一瞬見えた羽付き猿型雑魔。
「……もしかして、今回の雑魔ってのはあれか」
シュタール・フラム(ka0024)は迷う。
敵がこちらに向かって来るなら今すぐ防性強化と運動強化を使うべきだ。しかし向かってこないなら無駄うちになってしまう。
「のんで」
ユノが水筒を開けイコニアに差し出す。しばらく迷っていたが雑魔が近づいてこないのに気付いて口をつけ、軽く口の中を湿らせる。それだけでも必要以上の緊張が解け不足していた水分が補われた気がした。
「来ないな」
シュタールは緊張で激発するほど未熟ではない。左右と後ろに見え隠れする雑魔を警戒しつつも足は緩めず、峠にさしかかった。
「はじめるか!」
海斗がアサルトライフルの弾倉を確認。きちんと陸上用の弾が入っている。
峠の登場の足場を確認。見た目より踏み固められていて安定した状態で撃てそうだ。
「弾を馳走……ってな」
射撃の瞬間、海斗の体はほとんど完全に制止し、引き金に触れた指だけがかすかに動いた。
上半身をうしろに押す衝撃と、乾いた銃声を残して銃弾が飛翔する。弓でも銃でも当てるのが難しい距離を飛んでいた羽猿の胸に当たって大きく凹ませた。
大きな損害を受けた猿が着地。別の羽猿が海斗を牽制するため前進する。
再度の銃声。
最初と同じように着地しかけてバランスを崩し道の上に転がる。
「気付いてるぜ」
180度強反転する。
羽猿は3体、不意を打つため翼を伸ばした動かさず滑空していた。海斗が容赦なく発砲。
左端の腹部に深い穴を開けて撃墜し、真ん中の猿に対する銃撃を外す。
敵味方の距離が近づいたためリボルバーでの射撃が始まる。
スーズリーのドワーフらしい高性能ボディは遠距離射撃に向かない拳銃での高精度射撃を可能にする。否、ただ高性能なだけではない。
特に最初の1発は友の攻撃的マテリアルが乗り移っているかのように熱くて硬く、真ん中の猿の右肩を容易く砕いて貫通した。こうなると羽も本来の性能を発揮できない。高度がみるみる落ちていき、猿型雑魔はスーズリーにぶつかるような形で不時着、スーズリーが片手1本で支える盾に遮られ食い止められた。
右端の羽猿は驚くべき悪運でハンターの攻撃を回避し海斗の銃の最低射程の内側に入り込む。
「ビイイィィィィィィムッ!!
海斗の引き金を引くのは指ではなく意識。アサルトライフルを媒介に生み出された光が右の猿の右羽を消し飛ばす。猿の剥き出しの歯が海斗を喉に触れる寸前、遠くからの祈りが届いたかのように風が吹いて狙いがずれた。
「確かにスピードはあるが10も20も来るんでなければまぁ何とか!」
シュタールが杖から流れ出すマテリアルを榊 兵庫(ka0010)へ向ける。
兵庫の感覚が研ぎ澄まされる。
レザーグローブ越しに握った薙刀が、まるで神経が接続されたかのように刃の隅々まで感じられた。
「こちらは任された」
海斗の近くに3体、イコニアから20メートルほど離れた場所に2体。
兵庫はイコニア近くの雑魔を無視して3体のうち最も近くの猿にうちかかる。
踏み込んで攻撃の威力を増し、刃にマテリアルを加えた上で肩から胸まで貫通させ、足の裏を叩きつけて強引に引き抜く。
「これでも喰らっとけ」
シュタールが鮮やかな手つきでワンドから拳銃へ持ち替え発砲。
大きな傷がついた胸板に新たな穴を開けた。
「今出てかれると逆に面倒だから止めてくれ」
拳銃で兵庫を援護しつつイコニアに声をかける。司祭は意外なほどしっかりとした構えで盾を構え雑魔を待ち受けていたが、肩を落としアクセル達に連れられ雑魔から離れて行く。
「速度は覚醒者未満」
太刀を構えた切那の白い手は、ゆらめく黒の気に覆われ禍々しくも美しい。
ほぼ死角から近づく猿雑魔の歯を足の動きだけで回避、無防備に晒された雑魔の背中へ渾身の力と現時点最高の効率で刃を突き立てる。
「ちっ」
骨の隙間を通す動きで肉を裂いて刃を取り戻す。
切那の瞳はマテリアル解放に伴い赤く染まっている。そこに浮かんでいるのは戦いの狂熱ではなく明らかな落胆だ。
「少しは鍛えろ」
猿は想像より弱かった。猿の腕の大振りをさらなる加速でかわし、その動きでイコニアへの進路を遮る位置へ移動する。
「この程度じゃ食い足りない」
横へ一閃。半秒遅れて体液が一筋横に飛び、1秒遅れて猿の頭がころりと地面に落ちた。
雑魔の残骸が黒く染まり形が崩れ、最初から存在しなかったかのようにこの世から消え去った。
近づくことで兵庫の間合いから逃れようとする猿とさせじと距離をコントロールする兵庫。
その真横から短い刃で切り込むような動きでスーズリーが仕掛けた。
万が一にも味方に流れ弾を食らわさないための動きだ。白兵戦の中に飛び込むので、最も敵に近づく銃口が最も汚れることになる。
銃とは即ち精密機器でそんな行動は自殺行為、のはずなのに引き金は滑らかで誤動作の気配もない。
「使える」
リアルブルーの技術力を改めて感じながら発砲。弾がめり込み猿の動きが鈍る。兵庫がの刃が猿の頭を中身ごと砕き、もう1体残っていた雑魔も海斗のアサルトライフルの前に沈黙した。
●護衛作戦
距離をとろうとした雑魔2体と、混戦を避けようとした司祭護衛班の進路がたまたま……高速で移動可能な空間は限られているので半ばは必然だが、ともかく両者は親近距離で対峙することになった。
「ふにゅー」
各種装備の調達から道中のイコニアの面倒まで休む間もなく働き続けていたユノが、たまりにたまったストレスをワンドに込めて振り下ろす。
2つ並んだ猿の右側を、普段以上の集中力で強化されたマテリアルが射貫いた。
「にゅ?」
会心の当たりなのに雑魔の動きが鋭いままだ。どうやらこの2体が主力のようだった。
「司祭は私の後ろへ」
アクセルの背から光の翼が伸びる。
本人は意識すらせず盾を掲げ、イコニアかユノを狙った剥き出しの歯を受け止める。衝撃はあってもダメージはないことを確認、視線を動かずに意識の中の引き金を引く。
「さぁ相手になりますよ!」
光弾が地面と水平に飛びもう1体の雑魔を襲う。逃げるつもりか、あるいは大回りしてハンターを背後から襲おうとしていたのかは分からない。脇腹を大きく抉られた猿型は怒り狂ってアクセルめがけて飛びかかろうとした。
そこへエイラが踏み出す。
距離は短くても高速で、赤く揺らめく闘気と髪がまっすぐに後ろへ伸びる。
鋭く短く息を吐いてロングソードで突く。威力より精度を優先した一撃が羽を含む部位を切り裂いた。
「余所見は禁物ですよ」
アクセルがバスタードソードをを振り下ろす。アクセルの目の前の雑魔は、味方の援護を諦めロングソードより一回り大きい剣の防御に専念した。
「動いては駄目よ」
エイラの言葉がイコニアの動きを止める。
見る限りでは雑魔の1体なら問題なく相手できるようだが司祭を傷まみれにするわけにはいかない。今日の晩には炊き出し資金集めのためのパーティ出席やらの予定が詰まっているのだから。
「良い子ね」
振り返りざまにロングソードを振るう。
機動力の落ちた雑魔では回避はできず腕を使った拙い防御を試み、手の平から肘まで縦に割られた。
頬がちぎれるほど大口を開け悲鳴をあげ、そこへユノの術が炸裂して回復の余地がなく破壊される。
「これで」
アクセルは密着することで相打ちを狙う雑魔を盾で前へ押しやり。
「終わりです!」
再度振り下ろす。
エイラのロングソードが待ち構えているため猿に逃げ場はない。刃が肩から腹までめり込み、雑魔の全身から色が消えて瞬く間に崩壊した。
唐突に音が消える。
ハンター達は得物を構えたまま油断無く周囲を警戒した。襲って来た雑魔5体は既に形を失い、新たな雑魔が現れる様子もない。
「お腹減った~」
ユノの言葉が戦闘終了の合図になった。
張り詰めた気配が消え、いつの間にか消えていた虫や小動物の音が復活する。
「まだ動ける?」
エイラが剣を鞘におさめてたずねると、イコニアは大好物なお菓子を食べられてしまった子供のような顔で、それでも礼儀正しく頭を下げるのだった。
●転移門
街が見えてからは早かった。
見慣れぬハンター、特にリアルブルー出身者に興味を惹かれた警備の兵が集まり、司祭がいることに気づかれて騒がれたがトラブルというほどでもなく問題なく転移門に到着する。
「ありがとうございました」
礼法本にそのまま載せたくなる礼をする司祭を軽く撫でてから切那が言う。、
「自分の立場、価値くらいしっかり理解しろよな」
頭一歩抜きん出てる人物の行動は、抜きん出てない者のの行動を左右するときもある。故に自分本位で動くなと伝えたつもりなのに残念ながら全く伝わっていない。
「はい。司祭の地位に恥じないよう、今まで以上にエクラ教の姿勢を行動で示すつもりで……痛いです」
こめかみをぐりぐりする切那に涙目になるイコニア。実に平和な光景だった。
「司祭殿」
かわいがりが終了してから兵庫が声をかける。
「あなたは大きな勘違いをしていると思う。前線の兵士達があなたに望んでいるのは、共に戦う戦友でなく、一歩後で支え待ってくれていて、癒しを与えてくれる聖女の役割だろう」
私は司祭の仕事をしているだけなのですけど……と言いたげなイコニアも空気を読んで静かに聴いている。
「聡明なあなたならば、なぜ彼の隊長が我々を雇ってまで送り届けようとしたのか、その意味はきちんと理解出来ているはずだ。その辺をよく考えてみる方が良いと思う」
「ま、何でもかんでも一人で抱え込むもんじゃない。他人でも仲間でも、頼れる相手がいる時は頼っていいと思うぜ」
シュタールが派手な片目瞬きを送る。もう一報の目も閉じかけだったのはご愛敬だ。
「ええと、その……がんばります」
改めて頭を下げる司祭に手を振って、ハンター達は一足先に転移門を使い帰路につく。
全員消えても、司祭はまた頭を下げていた。
依頼結果
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- 無邪気にして聡明?
ユノ(ka0806)
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相談用 エイラ・エラル(ka2464) エルフ|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/07/23 21:44:10 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/20 14:20:48 |