ゲスト
(ka0000)
ラズビルナム調査隊(4)
マスター:湖欄黒江

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~15人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/08/25 12:00
- 完成日
- 2015/09/10 13:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ゾンネンシュトラール帝国でも最悪の魔法公害の現場となった、汚染区域『ラズビルナム』。
広大な荒野に囲まれた森は、過去10年以上誰ひとりとして立ち入ったことがなく、
ワルプルギス錬魔院、及び委託管理を行う帝国軍駐屯部隊の監視の下、
未だ汚染と雑魔を近隣一帯に吐き出し続けている。
昨今の雑魔発生数の急激な増加に対し、錬魔院はハンターから成る調査隊の設立を決定。
区域内の汚染調査と、雑魔急増の原因究明へ乗り出した。
第3回調査では、森林奥部を守る大型歪虚の討伐に成功。
同時に、旧錬魔院の施設らしき廃屋1軒を確認、
汚染の原因、そしてこの地でかつて何が行われていたのか、知るよすがを得られるものと期待されたが――
●
クリケット(kz0093)が訪れた錬金術師組合員の自宅は、郊外のこじんまりとした一戸建て。
庭先には花壇と犬が2匹、家に通されると美人の細君が接待してくれた。
子供はひとり、男の子で、その日は友達と釣りに出かけていたそうだ。
「つかぬことをお聞きしますが……」
平穏そのものの生活を前にして、クリケットはいささか気後れした。
細君が下がり、人の好さそうな組合員の男と居間でふたりきりになると、
旧錬魔院時代の失敗について尋ねるのが、随分と不躾な行為に思われてくる。それでも、
「私は下っ端でしたからね。心配せずとも、今更話して厄介はありませんよ」
組合員は鷹揚に、そう言ってみせた。
クリケットは安物の磁器に注がれた紅茶を啜って一息吐くと、懐から万年筆の残骸を取り出す。
汚染区域内のゾンビから回収された万年筆。
特注品と見て、誰かそんなものを自慢していた人間が当時いなかったか、と尋ねると、
「ええ、憶えてますよ。エルマー・クレツキでしょう。何でも祖父が転移者だったとかで、
形見の万年筆をいつも肌身離さず持ってましたよ。私とは同期だったんですが」
と語る組合員は、見たところ4、50歳ほどか。
「優秀な男でね。かなり重要な研究に関わってたんじゃないかな」
「ラズビルナム」
クリケットが水を向けると、
「そう、ラズビルナム。私は平の研究員で、それも小さな研究室に居ましたから、
友人とは言え、彼が実際何をやってたかは分からんのですが。
ただ事故のことは憶えてます。汚染から逃げてきた重病の研究員や、
施設から持ち出された資料の輸送手配には、私らも駆り出されましたから。
そこで、どうやらエルマーが死んだらしいとも……、
遺体は見つからなかったそうですが、ゾンビになっていたとは」
組合員は沈痛な面持ちで、万年筆を見下ろした。
それから話題は事故発生当時のことごとに移ったが、
組合員はあくまで事故処理の事務的部分にしか関わっておらず、
彼の話は、クリケットが錬魔院でアクセス可能な情報とも特別の齟齬が見られなかった。
「あまり、お役に立てませんで」
「クレツキ氏の名前だけでも充分ですよ、助かりました」
「革命のごたごたもありましたからね、調べ物ひとつするにも大変でしょう。お察ししますよ。
……まぁ、あそこはそういうところです。
私みたいな者は、組合で自由に、こじんまりとやるほうが性に合ってるようです」
●
帰り際、玄関まで見送りに来た組合員がはたと手を打って、
「思い出した。エルマーの爺さんの形見ですけどね、もうひとつあった気がします。
本。リアルブルーで書かれた小さな本です。万年筆と一緒に持ってて、時々ひとりで読んでいたような」
「そういうものは、見つかってませんね」
「汚染で風化してしまったか、何処かで落としてきたんでしょうかね」
「憶えておきましょう。今日はありがとう、紅茶も美味しかった」
夫の後ろに控えていた細君へ微笑みかけるクリケット。
正直に言えば、味は良く分からなかった。暑気のせいか、今日はどうも体調が優れない。
帰りの辻馬車に乗り込んで、メモを読み返しながら、夏風邪だろうか、と思う。
頭痛、軽い発熱、味覚の鈍麻。
だが予定は山積みで、とても休んでいる暇がない。ラズビルナム調査隊の次回活動、
旧錬魔院にまつわる情報集め、それにハンターの勧めで剣魔についても資料を収集中。
他にも大型魔導銃オイリアンテ改良型の実射試験手配、魔導型CAMのメンテナンスマニュアル更新、
(……っと、そうだ。APVのタングラム(kz0016)に面会のアポを……いや、普通に押しかけちまうか?
調査隊の活動も本格化してきたし、依頼外でもハンターに挨拶回りを……)
「着きやしたよ」
気づけば、帝都南部・リヒテルハイン区に馬車が入っていた。
近所にクリケットのセーフハウス――ろくに使っていないが――があり、買い物がてら帰るつもりだった。
御者に言って、商店街の前に着けさせる。運賃を払い、車を下りようとした、そこでクリケットは転倒した。
石畳へしたたかに頭を打ったせいか、眩暈のせいか、上手く起き上がれない。
じたばたしている間に、周囲の人間が駆けつけて馬車へ乗せ直した。クリケットは朦朧とする意識の中で、
「家……○丁目に……」
行先を告げると、そのまま気絶した。
●
斯様な顛末により、クリケットは1週間の安静を命じられた。
院長ナサニエル・カロッサ(kz0028)からは、
「私だって忙しい合間に、あの剣豪と大立ち回りしたりしてるんですけどねぇ」
などと嫌味を言われたが、身体が言うことを聞かないのだから仕方がない。
汚染区域調査の指揮、その前後にもラズビルナムを様々な用事で訪れていた為か、
(溜まってた汚染の影響が、一気に出たのかもな)
何はともあれ、覚醒者の治癒力を信じて、ひたすら寝て待つ――
訳にも行かなかった。ラズビルナム駐屯の帝国軍部隊から、
哨戒線付近における雑魔の出現数が増加しているとの報がもたらされた。
前回調査で区域内の大型歪虚を駆除したが、
その縄張りが消えたことで、雑魔の行動範囲に変化が生じたのかも知れない。
あまり手をこまねいていると、調査隊の活動にも支障が出かねない。
ふらつく足で錬魔院に赴き、ラズビルナムの第4回調査を手配した。
クリケットは体調不良により不参加、ハンターのみで調査隊を編成することになるが、
調査がようやく旧錬魔院施設に到達しようという矢先、
放置をして、森への進入路に雑魔がはびこるのを放っておきたくなかった。
(俺だけ留守番というのは気まずいが……そうだ)
新たな大型歪虚が確認されたときに備え、ちょっとしたプレゼントを用意しておく。
調整が長引いて中々実用化の目途が立たなかった、大型魔導銃オイリアンテ。
しかし技術者の報告では若干の軽量化に成功したようで、
(威力だけは折り紙付きだ。とりあえず基地に送っとけば、後は連中が上手く使ってくれるだろ!)
何しろ、あのコボルドの化け物を生身で倒した連中だ。
(悪いが、今回ばかりは全面的に頼るぜ)
ゾンネンシュトラール帝国でも最悪の魔法公害の現場となった、汚染区域『ラズビルナム』。
広大な荒野に囲まれた森は、過去10年以上誰ひとりとして立ち入ったことがなく、
ワルプルギス錬魔院、及び委託管理を行う帝国軍駐屯部隊の監視の下、
未だ汚染と雑魔を近隣一帯に吐き出し続けている。
昨今の雑魔発生数の急激な増加に対し、錬魔院はハンターから成る調査隊の設立を決定。
区域内の汚染調査と、雑魔急増の原因究明へ乗り出した。
第3回調査では、森林奥部を守る大型歪虚の討伐に成功。
同時に、旧錬魔院の施設らしき廃屋1軒を確認、
汚染の原因、そしてこの地でかつて何が行われていたのか、知るよすがを得られるものと期待されたが――
●
クリケット(kz0093)が訪れた錬金術師組合員の自宅は、郊外のこじんまりとした一戸建て。
庭先には花壇と犬が2匹、家に通されると美人の細君が接待してくれた。
子供はひとり、男の子で、その日は友達と釣りに出かけていたそうだ。
「つかぬことをお聞きしますが……」
平穏そのものの生活を前にして、クリケットはいささか気後れした。
細君が下がり、人の好さそうな組合員の男と居間でふたりきりになると、
旧錬魔院時代の失敗について尋ねるのが、随分と不躾な行為に思われてくる。それでも、
「私は下っ端でしたからね。心配せずとも、今更話して厄介はありませんよ」
組合員は鷹揚に、そう言ってみせた。
クリケットは安物の磁器に注がれた紅茶を啜って一息吐くと、懐から万年筆の残骸を取り出す。
汚染区域内のゾンビから回収された万年筆。
特注品と見て、誰かそんなものを自慢していた人間が当時いなかったか、と尋ねると、
「ええ、憶えてますよ。エルマー・クレツキでしょう。何でも祖父が転移者だったとかで、
形見の万年筆をいつも肌身離さず持ってましたよ。私とは同期だったんですが」
と語る組合員は、見たところ4、50歳ほどか。
「優秀な男でね。かなり重要な研究に関わってたんじゃないかな」
「ラズビルナム」
クリケットが水を向けると、
「そう、ラズビルナム。私は平の研究員で、それも小さな研究室に居ましたから、
友人とは言え、彼が実際何をやってたかは分からんのですが。
ただ事故のことは憶えてます。汚染から逃げてきた重病の研究員や、
施設から持ち出された資料の輸送手配には、私らも駆り出されましたから。
そこで、どうやらエルマーが死んだらしいとも……、
遺体は見つからなかったそうですが、ゾンビになっていたとは」
組合員は沈痛な面持ちで、万年筆を見下ろした。
それから話題は事故発生当時のことごとに移ったが、
組合員はあくまで事故処理の事務的部分にしか関わっておらず、
彼の話は、クリケットが錬魔院でアクセス可能な情報とも特別の齟齬が見られなかった。
「あまり、お役に立てませんで」
「クレツキ氏の名前だけでも充分ですよ、助かりました」
「革命のごたごたもありましたからね、調べ物ひとつするにも大変でしょう。お察ししますよ。
……まぁ、あそこはそういうところです。
私みたいな者は、組合で自由に、こじんまりとやるほうが性に合ってるようです」
●
帰り際、玄関まで見送りに来た組合員がはたと手を打って、
「思い出した。エルマーの爺さんの形見ですけどね、もうひとつあった気がします。
本。リアルブルーで書かれた小さな本です。万年筆と一緒に持ってて、時々ひとりで読んでいたような」
「そういうものは、見つかってませんね」
「汚染で風化してしまったか、何処かで落としてきたんでしょうかね」
「憶えておきましょう。今日はありがとう、紅茶も美味しかった」
夫の後ろに控えていた細君へ微笑みかけるクリケット。
正直に言えば、味は良く分からなかった。暑気のせいか、今日はどうも体調が優れない。
帰りの辻馬車に乗り込んで、メモを読み返しながら、夏風邪だろうか、と思う。
頭痛、軽い発熱、味覚の鈍麻。
だが予定は山積みで、とても休んでいる暇がない。ラズビルナム調査隊の次回活動、
旧錬魔院にまつわる情報集め、それにハンターの勧めで剣魔についても資料を収集中。
他にも大型魔導銃オイリアンテ改良型の実射試験手配、魔導型CAMのメンテナンスマニュアル更新、
(……っと、そうだ。APVのタングラム(kz0016)に面会のアポを……いや、普通に押しかけちまうか?
調査隊の活動も本格化してきたし、依頼外でもハンターに挨拶回りを……)
「着きやしたよ」
気づけば、帝都南部・リヒテルハイン区に馬車が入っていた。
近所にクリケットのセーフハウス――ろくに使っていないが――があり、買い物がてら帰るつもりだった。
御者に言って、商店街の前に着けさせる。運賃を払い、車を下りようとした、そこでクリケットは転倒した。
石畳へしたたかに頭を打ったせいか、眩暈のせいか、上手く起き上がれない。
じたばたしている間に、周囲の人間が駆けつけて馬車へ乗せ直した。クリケットは朦朧とする意識の中で、
「家……○丁目に……」
行先を告げると、そのまま気絶した。
●
斯様な顛末により、クリケットは1週間の安静を命じられた。
院長ナサニエル・カロッサ(kz0028)からは、
「私だって忙しい合間に、あの剣豪と大立ち回りしたりしてるんですけどねぇ」
などと嫌味を言われたが、身体が言うことを聞かないのだから仕方がない。
汚染区域調査の指揮、その前後にもラズビルナムを様々な用事で訪れていた為か、
(溜まってた汚染の影響が、一気に出たのかもな)
何はともあれ、覚醒者の治癒力を信じて、ひたすら寝て待つ――
訳にも行かなかった。ラズビルナム駐屯の帝国軍部隊から、
哨戒線付近における雑魔の出現数が増加しているとの報がもたらされた。
前回調査で区域内の大型歪虚を駆除したが、
その縄張りが消えたことで、雑魔の行動範囲に変化が生じたのかも知れない。
あまり手をこまねいていると、調査隊の活動にも支障が出かねない。
ふらつく足で錬魔院に赴き、ラズビルナムの第4回調査を手配した。
クリケットは体調不良により不参加、ハンターのみで調査隊を編成することになるが、
調査がようやく旧錬魔院施設に到達しようという矢先、
放置をして、森への進入路に雑魔がはびこるのを放っておきたくなかった。
(俺だけ留守番というのは気まずいが……そうだ)
新たな大型歪虚が確認されたときに備え、ちょっとしたプレゼントを用意しておく。
調整が長引いて中々実用化の目途が立たなかった、大型魔導銃オイリアンテ。
しかし技術者の報告では若干の軽量化に成功したようで、
(威力だけは折り紙付きだ。とりあえず基地に送っとけば、後は連中が上手く使ってくれるだろ!)
何しろ、あのコボルドの化け物を生身で倒した連中だ。
(悪いが、今回ばかりは全面的に頼るぜ)
リプレイ本文
●
ラズビルナム、帝国軍駐屯基地の食堂にて。
「やーれやれ、今回は出発前から忙しいな。コイツが早速活躍しちまった」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)が、砲身に熱の残る大型魔導銃を床に置く。
調査隊出発前、哨戒線から森林部入口にかけて雑魔の駆除が行われたのだが、
「間の空いたせいか、数が多かった」
得物の斬魔刀に刃毀れがないか確かめつつ、クリスティン・ガフ(ka1090)が言う。
「人海戦術でいった故、見える範囲でかなり片づいたとは思うが」
「トミヲは久しいな、運動会振りだろうか。また、顔が写実的になりかけてるぞ?」
メオ・C・ウィスタリア(ka3988)の左手のパペット・たかし丸が、
汗だくで卓に突っ伏した水流崎トミヲ(ka4852)の頭上を飛ぶ。トミヲは息絶えだえに、
「み……水を」
「張り切り過ぎですよ! 運動会じゃないんだから」
来未 結(ka4610)が、調理場から水の瓶を貰って来た。
「でも、水流崎さんの頑張りのお蔭で駆除が捗りましたね。
これで行きは安全かな? ミューレ(ka4567)さん」
「ありがとう」
水を受け取りながら、ミューレは食堂を見渡す。
駆除作業に思いの外労力が要ったようで、そちらを担当した面子は皆、疲れた様子でいる。
「大怪我をした人はいませんし、汚染の影響も見られません」
そう言う結の目元にも隈ができている。
クリケットが倒れたと聞き、汚染に関する知識を再度、徹夜で叩き込んだ為だった。
ミューレは思案した後、真田 天斗(ka0014)によるチェック済みの帳簿を睨んで、
「いや、活動限界のリセットも考えて、調査は明日に回そう。物資には余裕がある」
臨時の隊長代行としての判断。未探索領域へ踏み込む以上、万全を期す。
「今夜は泊まりだ」
近くで聞いていたリュカ(ka3828)が、決定を皆に触れて回る。
報告書に没頭していたテリア・テルノード(ka4423)も、リュカが声をかけると顔を上げ、
「ここで夜明かしは、設立準備のとき以来だね。
私が参加できなかった間に、調査は大分進んだようだけど」
「まだ、はっきりしないことだらけだ」
「剣魔とやらの関係とか?」
「それも」
と言って、リュカはトミヲのほうをちらと見る。
「良く分からない。仮説は色々あるが」
「剣魔はマテリアルの吸収を最優先に動くんだったね。
大量のマテリアルが必要なのか、それとも自律して集める行為が重要なのか……、
うん、結論は出ないし、施設の存在理由について考えるのは止そうか」
テリアは報告書を閉じ、
「浴場が完成していたね。折角だ、今夜はそちらで身を清めさせてもらおうか」
●
「そう、基地には風呂があったんだよ! だから臭くないだろう」
翌朝、森の中を進む調査隊の前衛で、
ウィンス・デイランダール(ka0039)の背中にぴったりとついてトミヲが囁く。
「僕のDTを守ってくれよな!」
「どういうことだよ……」
困り顔のウィンスに、
「昨日の鍋とオタマ、ちゃんと洗って返したかい?」
「あー返したよ。ひとつ叩いただけで、敵がわんさと寄ってきやがった」
「だがこの通り、森は静かなものだ。苦労の甲斐があったな」
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が、腕を組んで尊大に頷く。
「何より、大王たるボクがいるのだ。今回の調査もきっと上手くいくであろう!」
「大王は知らないけど、やっと人工物の探索だ。
本命はまだ先だろうが……それでも期待してしまうね?」
フワ ハヤテ(ka0004)。自前の通信機をこつこつと叩き、調子を確かめる。
「いよいよ、何かしら発見できそうですね~」
エリセル・ゼノル・グールドーラ(ka2087)も呑気な声で応えるが、
その目は周囲の木々に残る、大型歪虚の破壊の跡に向けられていた。
「前回は大変だったみたいっすね?」
無限 馨(ka0544)が言う。
「大きな木はみんな枯れてるのか、ホントに汚染がヤバいんだな。
BCスーツ的な物があれば、一般人でも活動できるようになって、人海戦術も取れると思うんすけどね」
斥候のリリティア・オルベール(ka3054)と天斗が、ハンドサインでやり取りする。
薙ぎ倒された木立の先に、巨大な木造建築。
その周りは広々とした空地で、これまで以上に下草が高く茂っていた。
『BO警戒、観測機を前に』
天斗が合図して、マテリアル観測装置を持った結とミューレを呼ぶ。
ふたりが装置を頼りに安全そうなルートを選ぶと、
それをなぞって、斥候が草を掻き分けながら建物へ近づいていった。
残された面々は緊張の面持ちで見守るが――何ごとも起こらず。ミューレがワンドを掲げ、
「全員、縦列にて前進。互いに間隔を保って」
●
建物は窓の配置からして2階建て、
1階南側には大きな開口部があり、天井が高い。メオが覗き込み、
「床がコンクリだ、ガレージみたいだな」
「馬車庫か。周りも整地されてたみたいだ、今は草に埋もれてるけど」
テリアが靴の爪先で、石畳の一部を掘り返した。
「厩舎も、こちらに併設されています」
と、建物の裏側を偵察していた天斗が報告する。
屋内調査に9人が充てられた。残り6人、
ミューレとリリティア、テリア、メオは周辺を調査、
クリスティンとボルディアは建物に張りついて警戒することになった。
「あまり脆くなってねぇと助かるがっ」
大型魔導銃を背負ったまま、ボルディアが外壁をよじ登った。
傾斜の緩やかな三角屋根に這い上がると、魔導銃を構える。
「荷物を落として、屋根をブチ破るなよ! こっちも行くぜ」
ウィンスはゴーグルをつけ、口元に埃避けの布を巻くと、開口部へ向かう。
他数名も顔を布で覆ったり、結が配った手袋代わりの包帯を手に巻くが、どれだけ汚染を防げるかは不明だ。
(汚染源に近くなるほど、汚染蓄積も加速するのは道理故。さっさと終わらせたいが)
クリスティンは建物を背に、斬魔刀を持って仁王立ちする。
「外からの襲撃は任された」
「頑張ってね」
ミューレが言うと、結は彼の手を取りつつ、
「ミューレさん、顔っ」
「え?」
「固くなってる。隊長代行、大変だと思いますけど、あまり無理しないで」
それから結は、ミューレの手を一瞬強く握って、
「なんてね、えへへ……必ず皆で、無事に帰ってきます」
ウィンスのLEDライトが、開口部奥の暗がりを照らした。
室内はかなりの広さで、恐らく建物1階のスペースを3分の1は食っている。
入口近くはがらんとしていたが、奥にはがらくたがうず高く積み上がっていた。
「動力みたいなのは見当たりませんねぇ。照明……」
エリセルの足がガラス片を踏んだ。屈んで調べてみると、
「ふつーのランプ。天井から落ちてきたみたいですぅ」
「埃の積もり具合から見て、最近は雑魔の出入りもなさそうですが……」
天斗の後ろを歩きながら、リュカの目は床を注視していた。
トミヲも同じく地面に注意を注ぐ。どちらも考えは同じ、本命は、
(地下だ)
●
「土地の特性が良く表れているもの、
研究内容、あるいは剣魔に触れているもの、エルマー・クレツキの名が載っているもの……、
優先すべき手がかりはそんなところか。文字資料が狙い目だ」
ウィンスが言う。しかし開口部で目につくのはがらくたばかりで、
「日記でもありゃ良いんすけどね、恐怖体験を克明に綴ったような奴。
某月某日、嵐。奴はドアの向こうで暴れていたが、諦めて去っていった……」
馨は冗談を言いつつ、エリセル、ディアドラと共にがらくたをひと通り漁ってみる。ディアドラが、
「紙というのは須らく、陽に当て続けるとダメになる傾向が強い。
暗い場所なら、良く残っていそうなものだが」
「あっ、これ魔導ドリルですよぉ!?
見たことない型だけど、ドリルって昔からあったんですねぇ?」
壊れた機械を拾い上げるエリセル。と、
がらくたの山の中から飛び出した手が、彼女の腕を掴む。
「……気づいてしまった、窓の外に奴のおぞましい姿が――ここで途切れている。
みたいな。って、襲われる直前に日記つけてる訳ないか……っと」
馨が退かした大きな木箱の裏に、軍装のミイラが1体隠れていた。
ミイラはか細い呻き声を上げて動き出し、馨も鞭を手に身構える。
結が、壁際に溜まっていた砂埃のサンプルを採ろうとしたとき。
壁をすり抜けて、人の形をした赤い煙のようなものがずるり、と現れる。
装置の反応に気づいて結が顔を上げるより早く、魔法のかまいたちが飛んでいた。ハヤテだ。
「早速のお出ましだ。こっちへ!」
「は、はい!」
攻撃を受けて1度は散る赤い煙だったが、じわじわと元の形に戻り始め、
「何だよこれは……!」
逃げてきた結の背中を肘で押しやり、ウィンスが前衛に立つ。
まとまり始めた煙をミラージュグレイブで払うと、
槍に込められた魔力が閃光を放ち、煙を今度こそ霧散させた。
エリセルを捕まえていた腕を、ディアドラが剣で切り落とす。
するとがらくたの山が崩れ、中から現れたのは、全身に青黴の吹いたゾンビ。
もう1体のミイラは、馨の鞭に打たれて転倒した。トミヲの魔法が止めを刺す。
「昂まり、溢れろ、DT魔力ゥ!」
「こっちにも頼むぞ!」
ディアドラがゾンビを袈裟切りにするも、
ゾンビの身体の傷は、瞬く間に増殖する黴に覆われ、元通りに繋ぎ合わさっていく。
「再生能力とは、厄介だな」
「上等だ!」
駆けつけたウィンスが、ゾンビを蹴倒して仰向けにした上、槍を突き立てて床に縫い止めてしまう。
「動けなくしちまえば……!?」
槍を伝って、黴がぞわぞわと登ってくる。
慌てて槍を抜いたところで、天斗が起き上がりかけたゾンビの頭部を踏み砕く。
ゾンビがばったりと倒れて動かなくなると、
まとわりついていた黴も宿主と共に死に、茶色い埃と化して剥がれていった。
「応援が要りそうか!?」
入口からクリスティンが声をかけるも、室内に残敵の気配はなく、
「いや、とりあえず大丈夫だぞ!」
ディアドラが返事をする。
崩れたがらくたの中には、魔導ドリルとツルハシ、その他掘削用の道具一式が混じっていた。
●
「中の連中、大丈夫かァ」
屋根の上からボルディアが尋ねると、
「そのようだ。何か見えるか」
クリスティンが応えた。ボルディアは、
「北と、西に向かって道らしいもんが。森に隠れて、先は良く見えねぇ。
敵はいねぇな、予想外に平和なもんだ。
あー……俺も探索したかったなぁ。ホコリっぽそうだけど」
「お、変な形の石だな。よし、とりあえず持って帰ろう。
おぉ……これは……何の草だ? 良く分からん、持って帰ろう」
メオは草叢に屈んで、気になるものを片っ端から拾い集め、腰につけた袋の片方へ詰めていく。
もう片方の袋には、汚染されては困ると、大事なパペットを仕舞っていた。
「窮屈だろうが辛抱だ、たかし丸。メオさんも、何か手がかり見つけないと……」
探索を続ける内、ふと、メオは口元に違和感を感じて手を触れる。
見れば、気づかぬ内に鼻血が垂れていた。しばらく押さえていると、出血はひとりでに止まる。
が、探索中何処かにぶつけた訳でもない。原因は何だ?
(マテリアル汚染――影響を受け始めたか)
メオは立ち上がると、ミューレに報告がてら、一旦建物へ下がって休むことにした。
「石畳の道は北と、西に続いてる」
舗装の痕跡を追って、テリアが森を抜けるふたつの小道に臨む。
道の先の様子は分からないが、そちらも恐らくは旧錬魔院の施設か。
「危険のない範囲で、様子を見ておきましょう」
まずはリリティアが先行する。背の高い雑草の中を、ナイフ片手にかき分けて進み――
「何処行くんだい?」
「何処って、道を……あれ?」
西の小道を追っていた筈が、リリティアはいつの間にか、まるで見当違いの方向へ進んでいた。
慌てて首を巡らし、周囲を確認する。空地の四方は何処も似たような枯れ木の壁に囲まれているが、
中心に置かれた建物の向きを見て、自分が元来た南側の道に引き返しかけていたことに気づく。
(私、方向感覚がおかしくなってる?)
●
建物1階部分の残りは、食堂らしき広間と台所、それに便所がいくつかあるだけだった。
仲間に階下の調べを任せ、天斗とハヤテは先に2階へ向かう。
傷みの激しい階段を慎重に上がり、窓のない、暗い廊下へ差しかかると、天斗が言った。
「ここが前衛基地になれば良いですね。修理と掃除が必要そうですが」
「倉庫兼、研究員の住居か。残念、実験室らしいものはなさそうだ」
ハヤテが頭上に手を差し上げ、魔法で灯りを作ろうとする。
が、指先に点った火はやけに小さく、手を引くとすぐに消えてしまう。
もう1度、2度と試みるが、それでもまともな灯りが点かない。ハヤテは思わず自分の腕を押さえた。
「何か、異常でも?」
「そのようだ。ボクのせいか、場所のせいか分からないが」
目を閉じ、意識を集中して再度魔法を発動。今度こそ、光源として充分なサイズの火球が現れた。
「スキル抑制の症状か……厄介だね」
「どうした、怪我でもしたか」
ディアドラが、不意に屈んで自分の脚を擦り始めたトミヲに尋ねる。
彼女とウィンスに前を歩かせつつ、1階の廊下を歩いていたトミヲだったが、
「急に脚がだるくなったんだよ。っかしいなぁ」
「トミヲもか? 実はボクも、さっきから脚が痺れて」
ふたり揃って、突然の不調に見舞われる。ディアドラも仕方なく床に座って、しばし休む。
「単なる疲労でないとしたら、汚染の影響かも知れん。
全員がおかしくなるようなら、中止して外に戻ろう」
「ひとまず、診ますね」
そう言って走って来た結が、急に口を押さえて立ち止まる。
「クリケットさんが居なければ、軍機も見放題ですぅ。ふへへぇ~」
こちらは、嬉し気に広間の各所を漁るエリセル。リュカも、地下室でもないかと辺りを歩くが、
(結から聞く限り、クリケットの容体はそう悪くないようだ。
しかしマテリアルの変調も勿論だが、過去の暗部、
その核心に近づいた分、何らかの圧力があっても不思議ではない。
どちらにせよ、今まで以上に調査を早めることが、彼の身の安全にも繋がるか……)
ランタンの灯りを頼りに薄暗い室内を調べて回る内、
視界の端に、桃色をした小さな花が1輪、転がっていた――気がした。
何を見間違えたか、改めて振り返ったときには、そんなものは何処にもなかった。
しかしリュカは代わりに、埃に埋もれて見落としかけていた、小さな揚げ板を発見する。
●
「観測機に反応! 気をつけて」
ミューレが警告するや否や、草叢に隠れていた1体のゾンビが起き上がり、
西の小道に入ろうとしたリリティアとテリアの行く手を阻んだ。
ゾンビの全身は皮膚、着衣と問わず青黴塗れで、身動きする度、細かな胞子を辺りに撒き散らす。
「できれば、近づきたくないような相手だけど」
リリティアが、背後のテリアを庇って立つ。
「ようやっと出番だ!」
ボルディアが、屋根に腰を下ろしたまま、大型魔導銃をゾンビへ向ける。
地上のクリスティンも刀を構えようとするが、、
胸に突然走った強い痛みで、思わずその場にうずくまる。
(よりによって、こんなときに症状が出るか!)
頭上で鳴り響く砲音。ボルディアが狙撃を試みるも、
「だぁっ、肝心なときに当たらねぇ!」
オイリアンテの砲弾は敵を逸れ、その背後の地面で小さな爆発を起こす。
次いで、ミューレが放ったかまいたちがゾンビを切りつけ、よろめかせると、
「私を倒したかったら、あの巨大コボルドぐらい持って来て貰わないと……!」
リリティアが飛び出した。剣舞いのような激しい動きでナイフを繰り出し、
ゾンビの首、腕、腹と続けざまに深く切り込む。
ふらつくゾンビの体表を黴が移動し、自己再生が始まる。リリティアはなおも連撃を加え、
「これでどう!?」
前蹴りで倒した拍子に、斬撃で千切れかけていたゾンビの手足がぼろっともげてしまう。
再生能力も追いつかず、ゾンビはしばしのたうち回った挙句、黴と共にまとめて土くれに戻った。
●
1階広間に見つけた、地下への入口。リュカがロープにランタンを括りつけたものを垂らすと、
「壁は土、かな? 手掘りっぽいっすね」
一緒に覗き込んでいた馨が呟く。
「やっぱりなぁ! ボクの予測じゃ、BOの原因となるマテリアルは、
水脈その他地下の空間を伝うことで広範囲に渡ってる筈!
でも、巨大な地下施設なんか旧錬魔院が秘密裡に建造する能力はなかったと思うんだよね!
元々あった空間を利用したのか、兎に角、一帯の土地の開拓記録から関係者を探し出せないか、
クリケット君に伝えておいてくれ!」
「あの、誰に向かって話してるんですか?」
興奮してまくし立てるトミヲへ、馨が心配げに声をかけた。
「誰って、ここにウィンス君とディアドラ君が」
「そっちは誰も居ませんよ」
トミヲが話しかけていたのは壁だった。廊下のほうから、
「地下室があったって?」
ウィンスがディアドラとエリセルを伴って、広間へ入って来る。トミヲは愕然とした顔で、
「あ、あれ、君たち今確かにここに」
「? あー、水を差して悪いんだが」
ディアドラが言う。
「結の具合が良くない。ボクとウィンスも、どうも体調がおかしい……」
「目ぼしいものはかっさらってきましたからぁ、1度外に出ませんかぁ?」
エリセルも胸元を擦りながら、青白い顔で言った。
地下へ潜ったリュカ。
土を固めて作った狭い通路が、北に向かって10メートルほど続いていたが、
(封鎖されている)
黒ずんだ金属の壁が、通路の途中を塞いでいる。手にしていた槍で叩くと、鈍い音がした。
(壁が厚いか、向こう側が崩落しているのか。どちらにせよ、今の装備で突破は難しいな)
壁の表面を間近に調べれば、薄らと何かの紋様が刻まれているのが分かる。
●
「銀、ですね」
屋外に集合した調査隊一同を前に、天斗が2階で見つけた金属の小箱を披露する。
真っ黒に錆びているものの確かに銀製で、
表面には、リュカが地下で出くわした壁と同じ紋様が刻まれていた。
「エクラ十字が入ってる。聖導士による法儀礼の1種……違うかな」
ミューレが言うと、ハヤテが、
「ボクも同じ見立てだ。2階、研究者用の個室のひとつから見つかった」
「紙媒体の資料は、大半が劣化して判読不能でした。しかし」
天斗が箱を開くと、中から現れたのは1冊の本。表紙は箱と同じに黒ずみ、汚染の影響がうかがえたが、
それでもなお、本としての形はしっかりと保っていた。リリティアが題を読もうとする。
「マク……ベット?」
「『マクベス』。シェイクスピアだ、翻訳だと思う」
メオが言った。天斗も頷き、
「地球で書かれた本とは興味深い。何かのヒントになれば良いのですが」
「予定の時間には少し早いけど、体調不良者が続出してる」
ミューレが撤収を命令した。今や全員が大なり小なり、身体や感覚に異変を感じていた。
「止むなしだな。皆でばたばた倒れたら、調査もクソもない」
クリスティンが言うと、ウィンスも、
「こうなりゃ長居無用、集めたモンの検分は帰ってからだ」
そしてミューレとすれ違いざま、
「ブツの管理と、身の回りに気をつけろって、俺からもクリケットに伝えとく」
「ああ。僕らのほうも気をつけておかないとね」
リュカが手持ちの四神護符を配った上、
ぼろぼろの書類や機械等、それぞれに回収した品を担いで、調査隊は戻っていく。
次回は、テリアが追った石畳の先が主な調査対象となるだろう。
西の小道の先に、朽ち果てたテント群。何体ものゾンビが徘徊しており、接近できなかった。
そして北側――異常なまでに高く成長した雑草で覆われ、先を見通すことも難しかったが、
道は確かに、『魔女の森』の中心部へまっすぐに伸びていた。
ラズビルナム、帝国軍駐屯基地の食堂にて。
「やーれやれ、今回は出発前から忙しいな。コイツが早速活躍しちまった」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)が、砲身に熱の残る大型魔導銃を床に置く。
調査隊出発前、哨戒線から森林部入口にかけて雑魔の駆除が行われたのだが、
「間の空いたせいか、数が多かった」
得物の斬魔刀に刃毀れがないか確かめつつ、クリスティン・ガフ(ka1090)が言う。
「人海戦術でいった故、見える範囲でかなり片づいたとは思うが」
「トミヲは久しいな、運動会振りだろうか。また、顔が写実的になりかけてるぞ?」
メオ・C・ウィスタリア(ka3988)の左手のパペット・たかし丸が、
汗だくで卓に突っ伏した水流崎トミヲ(ka4852)の頭上を飛ぶ。トミヲは息絶えだえに、
「み……水を」
「張り切り過ぎですよ! 運動会じゃないんだから」
来未 結(ka4610)が、調理場から水の瓶を貰って来た。
「でも、水流崎さんの頑張りのお蔭で駆除が捗りましたね。
これで行きは安全かな? ミューレ(ka4567)さん」
「ありがとう」
水を受け取りながら、ミューレは食堂を見渡す。
駆除作業に思いの外労力が要ったようで、そちらを担当した面子は皆、疲れた様子でいる。
「大怪我をした人はいませんし、汚染の影響も見られません」
そう言う結の目元にも隈ができている。
クリケットが倒れたと聞き、汚染に関する知識を再度、徹夜で叩き込んだ為だった。
ミューレは思案した後、真田 天斗(ka0014)によるチェック済みの帳簿を睨んで、
「いや、活動限界のリセットも考えて、調査は明日に回そう。物資には余裕がある」
臨時の隊長代行としての判断。未探索領域へ踏み込む以上、万全を期す。
「今夜は泊まりだ」
近くで聞いていたリュカ(ka3828)が、決定を皆に触れて回る。
報告書に没頭していたテリア・テルノード(ka4423)も、リュカが声をかけると顔を上げ、
「ここで夜明かしは、設立準備のとき以来だね。
私が参加できなかった間に、調査は大分進んだようだけど」
「まだ、はっきりしないことだらけだ」
「剣魔とやらの関係とか?」
「それも」
と言って、リュカはトミヲのほうをちらと見る。
「良く分からない。仮説は色々あるが」
「剣魔はマテリアルの吸収を最優先に動くんだったね。
大量のマテリアルが必要なのか、それとも自律して集める行為が重要なのか……、
うん、結論は出ないし、施設の存在理由について考えるのは止そうか」
テリアは報告書を閉じ、
「浴場が完成していたね。折角だ、今夜はそちらで身を清めさせてもらおうか」
●
「そう、基地には風呂があったんだよ! だから臭くないだろう」
翌朝、森の中を進む調査隊の前衛で、
ウィンス・デイランダール(ka0039)の背中にぴったりとついてトミヲが囁く。
「僕のDTを守ってくれよな!」
「どういうことだよ……」
困り顔のウィンスに、
「昨日の鍋とオタマ、ちゃんと洗って返したかい?」
「あー返したよ。ひとつ叩いただけで、敵がわんさと寄ってきやがった」
「だがこの通り、森は静かなものだ。苦労の甲斐があったな」
ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が、腕を組んで尊大に頷く。
「何より、大王たるボクがいるのだ。今回の調査もきっと上手くいくであろう!」
「大王は知らないけど、やっと人工物の探索だ。
本命はまだ先だろうが……それでも期待してしまうね?」
フワ ハヤテ(ka0004)。自前の通信機をこつこつと叩き、調子を確かめる。
「いよいよ、何かしら発見できそうですね~」
エリセル・ゼノル・グールドーラ(ka2087)も呑気な声で応えるが、
その目は周囲の木々に残る、大型歪虚の破壊の跡に向けられていた。
「前回は大変だったみたいっすね?」
無限 馨(ka0544)が言う。
「大きな木はみんな枯れてるのか、ホントに汚染がヤバいんだな。
BCスーツ的な物があれば、一般人でも活動できるようになって、人海戦術も取れると思うんすけどね」
斥候のリリティア・オルベール(ka3054)と天斗が、ハンドサインでやり取りする。
薙ぎ倒された木立の先に、巨大な木造建築。
その周りは広々とした空地で、これまで以上に下草が高く茂っていた。
『BO警戒、観測機を前に』
天斗が合図して、マテリアル観測装置を持った結とミューレを呼ぶ。
ふたりが装置を頼りに安全そうなルートを選ぶと、
それをなぞって、斥候が草を掻き分けながら建物へ近づいていった。
残された面々は緊張の面持ちで見守るが――何ごとも起こらず。ミューレがワンドを掲げ、
「全員、縦列にて前進。互いに間隔を保って」
●
建物は窓の配置からして2階建て、
1階南側には大きな開口部があり、天井が高い。メオが覗き込み、
「床がコンクリだ、ガレージみたいだな」
「馬車庫か。周りも整地されてたみたいだ、今は草に埋もれてるけど」
テリアが靴の爪先で、石畳の一部を掘り返した。
「厩舎も、こちらに併設されています」
と、建物の裏側を偵察していた天斗が報告する。
屋内調査に9人が充てられた。残り6人、
ミューレとリリティア、テリア、メオは周辺を調査、
クリスティンとボルディアは建物に張りついて警戒することになった。
「あまり脆くなってねぇと助かるがっ」
大型魔導銃を背負ったまま、ボルディアが外壁をよじ登った。
傾斜の緩やかな三角屋根に這い上がると、魔導銃を構える。
「荷物を落として、屋根をブチ破るなよ! こっちも行くぜ」
ウィンスはゴーグルをつけ、口元に埃避けの布を巻くと、開口部へ向かう。
他数名も顔を布で覆ったり、結が配った手袋代わりの包帯を手に巻くが、どれだけ汚染を防げるかは不明だ。
(汚染源に近くなるほど、汚染蓄積も加速するのは道理故。さっさと終わらせたいが)
クリスティンは建物を背に、斬魔刀を持って仁王立ちする。
「外からの襲撃は任された」
「頑張ってね」
ミューレが言うと、結は彼の手を取りつつ、
「ミューレさん、顔っ」
「え?」
「固くなってる。隊長代行、大変だと思いますけど、あまり無理しないで」
それから結は、ミューレの手を一瞬強く握って、
「なんてね、えへへ……必ず皆で、無事に帰ってきます」
ウィンスのLEDライトが、開口部奥の暗がりを照らした。
室内はかなりの広さで、恐らく建物1階のスペースを3分の1は食っている。
入口近くはがらんとしていたが、奥にはがらくたがうず高く積み上がっていた。
「動力みたいなのは見当たりませんねぇ。照明……」
エリセルの足がガラス片を踏んだ。屈んで調べてみると、
「ふつーのランプ。天井から落ちてきたみたいですぅ」
「埃の積もり具合から見て、最近は雑魔の出入りもなさそうですが……」
天斗の後ろを歩きながら、リュカの目は床を注視していた。
トミヲも同じく地面に注意を注ぐ。どちらも考えは同じ、本命は、
(地下だ)
●
「土地の特性が良く表れているもの、
研究内容、あるいは剣魔に触れているもの、エルマー・クレツキの名が載っているもの……、
優先すべき手がかりはそんなところか。文字資料が狙い目だ」
ウィンスが言う。しかし開口部で目につくのはがらくたばかりで、
「日記でもありゃ良いんすけどね、恐怖体験を克明に綴ったような奴。
某月某日、嵐。奴はドアの向こうで暴れていたが、諦めて去っていった……」
馨は冗談を言いつつ、エリセル、ディアドラと共にがらくたをひと通り漁ってみる。ディアドラが、
「紙というのは須らく、陽に当て続けるとダメになる傾向が強い。
暗い場所なら、良く残っていそうなものだが」
「あっ、これ魔導ドリルですよぉ!?
見たことない型だけど、ドリルって昔からあったんですねぇ?」
壊れた機械を拾い上げるエリセル。と、
がらくたの山の中から飛び出した手が、彼女の腕を掴む。
「……気づいてしまった、窓の外に奴のおぞましい姿が――ここで途切れている。
みたいな。って、襲われる直前に日記つけてる訳ないか……っと」
馨が退かした大きな木箱の裏に、軍装のミイラが1体隠れていた。
ミイラはか細い呻き声を上げて動き出し、馨も鞭を手に身構える。
結が、壁際に溜まっていた砂埃のサンプルを採ろうとしたとき。
壁をすり抜けて、人の形をした赤い煙のようなものがずるり、と現れる。
装置の反応に気づいて結が顔を上げるより早く、魔法のかまいたちが飛んでいた。ハヤテだ。
「早速のお出ましだ。こっちへ!」
「は、はい!」
攻撃を受けて1度は散る赤い煙だったが、じわじわと元の形に戻り始め、
「何だよこれは……!」
逃げてきた結の背中を肘で押しやり、ウィンスが前衛に立つ。
まとまり始めた煙をミラージュグレイブで払うと、
槍に込められた魔力が閃光を放ち、煙を今度こそ霧散させた。
エリセルを捕まえていた腕を、ディアドラが剣で切り落とす。
するとがらくたの山が崩れ、中から現れたのは、全身に青黴の吹いたゾンビ。
もう1体のミイラは、馨の鞭に打たれて転倒した。トミヲの魔法が止めを刺す。
「昂まり、溢れろ、DT魔力ゥ!」
「こっちにも頼むぞ!」
ディアドラがゾンビを袈裟切りにするも、
ゾンビの身体の傷は、瞬く間に増殖する黴に覆われ、元通りに繋ぎ合わさっていく。
「再生能力とは、厄介だな」
「上等だ!」
駆けつけたウィンスが、ゾンビを蹴倒して仰向けにした上、槍を突き立てて床に縫い止めてしまう。
「動けなくしちまえば……!?」
槍を伝って、黴がぞわぞわと登ってくる。
慌てて槍を抜いたところで、天斗が起き上がりかけたゾンビの頭部を踏み砕く。
ゾンビがばったりと倒れて動かなくなると、
まとわりついていた黴も宿主と共に死に、茶色い埃と化して剥がれていった。
「応援が要りそうか!?」
入口からクリスティンが声をかけるも、室内に残敵の気配はなく、
「いや、とりあえず大丈夫だぞ!」
ディアドラが返事をする。
崩れたがらくたの中には、魔導ドリルとツルハシ、その他掘削用の道具一式が混じっていた。
●
「中の連中、大丈夫かァ」
屋根の上からボルディアが尋ねると、
「そのようだ。何か見えるか」
クリスティンが応えた。ボルディアは、
「北と、西に向かって道らしいもんが。森に隠れて、先は良く見えねぇ。
敵はいねぇな、予想外に平和なもんだ。
あー……俺も探索したかったなぁ。ホコリっぽそうだけど」
「お、変な形の石だな。よし、とりあえず持って帰ろう。
おぉ……これは……何の草だ? 良く分からん、持って帰ろう」
メオは草叢に屈んで、気になるものを片っ端から拾い集め、腰につけた袋の片方へ詰めていく。
もう片方の袋には、汚染されては困ると、大事なパペットを仕舞っていた。
「窮屈だろうが辛抱だ、たかし丸。メオさんも、何か手がかり見つけないと……」
探索を続ける内、ふと、メオは口元に違和感を感じて手を触れる。
見れば、気づかぬ内に鼻血が垂れていた。しばらく押さえていると、出血はひとりでに止まる。
が、探索中何処かにぶつけた訳でもない。原因は何だ?
(マテリアル汚染――影響を受け始めたか)
メオは立ち上がると、ミューレに報告がてら、一旦建物へ下がって休むことにした。
「石畳の道は北と、西に続いてる」
舗装の痕跡を追って、テリアが森を抜けるふたつの小道に臨む。
道の先の様子は分からないが、そちらも恐らくは旧錬魔院の施設か。
「危険のない範囲で、様子を見ておきましょう」
まずはリリティアが先行する。背の高い雑草の中を、ナイフ片手にかき分けて進み――
「何処行くんだい?」
「何処って、道を……あれ?」
西の小道を追っていた筈が、リリティアはいつの間にか、まるで見当違いの方向へ進んでいた。
慌てて首を巡らし、周囲を確認する。空地の四方は何処も似たような枯れ木の壁に囲まれているが、
中心に置かれた建物の向きを見て、自分が元来た南側の道に引き返しかけていたことに気づく。
(私、方向感覚がおかしくなってる?)
●
建物1階部分の残りは、食堂らしき広間と台所、それに便所がいくつかあるだけだった。
仲間に階下の調べを任せ、天斗とハヤテは先に2階へ向かう。
傷みの激しい階段を慎重に上がり、窓のない、暗い廊下へ差しかかると、天斗が言った。
「ここが前衛基地になれば良いですね。修理と掃除が必要そうですが」
「倉庫兼、研究員の住居か。残念、実験室らしいものはなさそうだ」
ハヤテが頭上に手を差し上げ、魔法で灯りを作ろうとする。
が、指先に点った火はやけに小さく、手を引くとすぐに消えてしまう。
もう1度、2度と試みるが、それでもまともな灯りが点かない。ハヤテは思わず自分の腕を押さえた。
「何か、異常でも?」
「そのようだ。ボクのせいか、場所のせいか分からないが」
目を閉じ、意識を集中して再度魔法を発動。今度こそ、光源として充分なサイズの火球が現れた。
「スキル抑制の症状か……厄介だね」
「どうした、怪我でもしたか」
ディアドラが、不意に屈んで自分の脚を擦り始めたトミヲに尋ねる。
彼女とウィンスに前を歩かせつつ、1階の廊下を歩いていたトミヲだったが、
「急に脚がだるくなったんだよ。っかしいなぁ」
「トミヲもか? 実はボクも、さっきから脚が痺れて」
ふたり揃って、突然の不調に見舞われる。ディアドラも仕方なく床に座って、しばし休む。
「単なる疲労でないとしたら、汚染の影響かも知れん。
全員がおかしくなるようなら、中止して外に戻ろう」
「ひとまず、診ますね」
そう言って走って来た結が、急に口を押さえて立ち止まる。
「クリケットさんが居なければ、軍機も見放題ですぅ。ふへへぇ~」
こちらは、嬉し気に広間の各所を漁るエリセル。リュカも、地下室でもないかと辺りを歩くが、
(結から聞く限り、クリケットの容体はそう悪くないようだ。
しかしマテリアルの変調も勿論だが、過去の暗部、
その核心に近づいた分、何らかの圧力があっても不思議ではない。
どちらにせよ、今まで以上に調査を早めることが、彼の身の安全にも繋がるか……)
ランタンの灯りを頼りに薄暗い室内を調べて回る内、
視界の端に、桃色をした小さな花が1輪、転がっていた――気がした。
何を見間違えたか、改めて振り返ったときには、そんなものは何処にもなかった。
しかしリュカは代わりに、埃に埋もれて見落としかけていた、小さな揚げ板を発見する。
●
「観測機に反応! 気をつけて」
ミューレが警告するや否や、草叢に隠れていた1体のゾンビが起き上がり、
西の小道に入ろうとしたリリティアとテリアの行く手を阻んだ。
ゾンビの全身は皮膚、着衣と問わず青黴塗れで、身動きする度、細かな胞子を辺りに撒き散らす。
「できれば、近づきたくないような相手だけど」
リリティアが、背後のテリアを庇って立つ。
「ようやっと出番だ!」
ボルディアが、屋根に腰を下ろしたまま、大型魔導銃をゾンビへ向ける。
地上のクリスティンも刀を構えようとするが、、
胸に突然走った強い痛みで、思わずその場にうずくまる。
(よりによって、こんなときに症状が出るか!)
頭上で鳴り響く砲音。ボルディアが狙撃を試みるも、
「だぁっ、肝心なときに当たらねぇ!」
オイリアンテの砲弾は敵を逸れ、その背後の地面で小さな爆発を起こす。
次いで、ミューレが放ったかまいたちがゾンビを切りつけ、よろめかせると、
「私を倒したかったら、あの巨大コボルドぐらい持って来て貰わないと……!」
リリティアが飛び出した。剣舞いのような激しい動きでナイフを繰り出し、
ゾンビの首、腕、腹と続けざまに深く切り込む。
ふらつくゾンビの体表を黴が移動し、自己再生が始まる。リリティアはなおも連撃を加え、
「これでどう!?」
前蹴りで倒した拍子に、斬撃で千切れかけていたゾンビの手足がぼろっともげてしまう。
再生能力も追いつかず、ゾンビはしばしのたうち回った挙句、黴と共にまとめて土くれに戻った。
●
1階広間に見つけた、地下への入口。リュカがロープにランタンを括りつけたものを垂らすと、
「壁は土、かな? 手掘りっぽいっすね」
一緒に覗き込んでいた馨が呟く。
「やっぱりなぁ! ボクの予測じゃ、BOの原因となるマテリアルは、
水脈その他地下の空間を伝うことで広範囲に渡ってる筈!
でも、巨大な地下施設なんか旧錬魔院が秘密裡に建造する能力はなかったと思うんだよね!
元々あった空間を利用したのか、兎に角、一帯の土地の開拓記録から関係者を探し出せないか、
クリケット君に伝えておいてくれ!」
「あの、誰に向かって話してるんですか?」
興奮してまくし立てるトミヲへ、馨が心配げに声をかけた。
「誰って、ここにウィンス君とディアドラ君が」
「そっちは誰も居ませんよ」
トミヲが話しかけていたのは壁だった。廊下のほうから、
「地下室があったって?」
ウィンスがディアドラとエリセルを伴って、広間へ入って来る。トミヲは愕然とした顔で、
「あ、あれ、君たち今確かにここに」
「? あー、水を差して悪いんだが」
ディアドラが言う。
「結の具合が良くない。ボクとウィンスも、どうも体調がおかしい……」
「目ぼしいものはかっさらってきましたからぁ、1度外に出ませんかぁ?」
エリセルも胸元を擦りながら、青白い顔で言った。
地下へ潜ったリュカ。
土を固めて作った狭い通路が、北に向かって10メートルほど続いていたが、
(封鎖されている)
黒ずんだ金属の壁が、通路の途中を塞いでいる。手にしていた槍で叩くと、鈍い音がした。
(壁が厚いか、向こう側が崩落しているのか。どちらにせよ、今の装備で突破は難しいな)
壁の表面を間近に調べれば、薄らと何かの紋様が刻まれているのが分かる。
●
「銀、ですね」
屋外に集合した調査隊一同を前に、天斗が2階で見つけた金属の小箱を披露する。
真っ黒に錆びているものの確かに銀製で、
表面には、リュカが地下で出くわした壁と同じ紋様が刻まれていた。
「エクラ十字が入ってる。聖導士による法儀礼の1種……違うかな」
ミューレが言うと、ハヤテが、
「ボクも同じ見立てだ。2階、研究者用の個室のひとつから見つかった」
「紙媒体の資料は、大半が劣化して判読不能でした。しかし」
天斗が箱を開くと、中から現れたのは1冊の本。表紙は箱と同じに黒ずみ、汚染の影響がうかがえたが、
それでもなお、本としての形はしっかりと保っていた。リリティアが題を読もうとする。
「マク……ベット?」
「『マクベス』。シェイクスピアだ、翻訳だと思う」
メオが言った。天斗も頷き、
「地球で書かれた本とは興味深い。何かのヒントになれば良いのですが」
「予定の時間には少し早いけど、体調不良者が続出してる」
ミューレが撤収を命令した。今や全員が大なり小なり、身体や感覚に異変を感じていた。
「止むなしだな。皆でばたばた倒れたら、調査もクソもない」
クリスティンが言うと、ウィンスも、
「こうなりゃ長居無用、集めたモンの検分は帰ってからだ」
そしてミューレとすれ違いざま、
「ブツの管理と、身の回りに気をつけろって、俺からもクリケットに伝えとく」
「ああ。僕らのほうも気をつけておかないとね」
リュカが手持ちの四神護符を配った上、
ぼろぼろの書類や機械等、それぞれに回収した品を担いで、調査隊は戻っていく。
次回は、テリアが追った石畳の先が主な調査対象となるだろう。
西の小道の先に、朽ち果てたテント群。何体ものゾンビが徘徊しており、接近できなかった。
そして北側――異常なまでに高く成長した雑草で覆われ、先を見通すことも難しかったが、
道は確かに、『魔女の森』の中心部へまっすぐに伸びていた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 ボルディア・コンフラムス(ka0796) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/08/25 11:03:52 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/08/22 06:24:24 |