儚い夏の風物詩? 巨大蛍の鑑賞会

マスター:四方鴉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
3日
締切
2015/08/25 19:00
完成日
2015/10/20 07:39

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●飛び交う光は危険のサイン
 過疎が進む村落で、夏に村人の心を癒すのは蛍の光。
 水辺を飛び交う儚き光、水面を走り火照った身体を冷やす夜風と相まって、その光景は酷暑で疲弊した人々を癒す一時の安らぎとなるであろう。
 今日も仕事仲間である5人の農夫が汗を流し、久々に蛍観賞としゃれ込み水辺に向かうも何時もと様子が違っていた。
「ん……? おい、何か妙に光が大きくないか?」
「あー、言われれば大き……ってか、相当デカイぞ!」
 飛び交う小さな光の中、巨大な発光体を見受けた彼ら。
 その光は人の顔以上の大きさを持ち、水辺に生える数多の植物を照らし出しさながら巨大なライトの様。
 夜闇に慣れた目を凝らし、じっと光を眺めてみれば見えてきたのは巨大な蛍、その大きさは3メートルはあろうか。
「んな!? な、なんだあの蛍!? あんなの見たことない……ってかおい、こっちに来てるぞ!」
 圧倒的存在感、思わず叫んだ男の声が聞こえたのかその巨大蛍は羽を震わせ巨体に似合わぬ速度で接近。
 腹部にある発光体が一際強く輝けば、同時に全身に走る淡き閃光、それはまるで紫電を纏った弾丸の如く男達へと飛来する。
「うわぁぁああ! あ、ぐがっ……か、体が、痺れ……」
「くっそ、なんだよ今のは!? しっかりしろ、早く逃げるぞ!」
 大きく飛び退き衝突回避、しかしながら運悪く近くを飛ばれた男を蛍の閃光が掠めたのか、流れ込んだ電流が彼の身体を蝕み痺れを生ず。
 動ける男が肩を貸し、急ぎ逃げる彼らであったが更なる脅威が一同を襲ったのはその直後。
「ん、あっちに火が……? おーい、た、助けてく……なんだぁ!?」
 先に逃げていた男が見た物、それは松明と勘違いする2つの炎とそれを腹部の先端、発光体の部分に宿した巨大な蛍。
 恐怖と衝撃が入り混じり、どうすべきか考えあぐね立ちすくむ男を嘲笑うかのごとく炎を宿した蛍はふわりと高度を高め、その顔を男に向ける。
 直後、口から吐き出されたのは小さき炎の飛沫たち。
 あまりの数に避ける事は叶わず。男はその身に数多の火傷を生じさせ、一目散に走り出す。
 夜闇に光る閃光、燃え上がる火球、飛び散る飛沫。静かな水辺に男達の悲鳴が響く。
 ひと時の安らぎ、それを得るはずだった蛍観賞は一瞬にして恐怖の会場へと姿を変え、散り散りに逃げ帰った一同は何とか命を繋ぎ止めたのだった。


●蛍観賞、ついでに討伐担当者募集中
「ふーん ふーん ふーんふふふーん♪ ふっふーふにゅーふっふ ふーふんふー♪
 っとと、もう集まってましたか、はいはい、蛍観賞のお誘いでーすよっとぉ」
 どこかで聞いた事があるような、そんな歌を口ずさみつつ受付嬢が集まったハンター達へ依頼の内容を説明する。
「今回は皆さんに、蛍観賞の権利をプレゼント! あ、もちろん皆さんを呼んだって事は歪虚関係、標的は蛍型雑魔になりますね。敵の数は確認したところ4匹、特徴の違うのが2匹ずつのセットって所です。
 めっちゃ光ってバチバチと帯電してる電撃な蛍と、光の代わりに炎を出してる2種類……便宜上、雷光蛍と火炎蛍と呼びましょうか、その2種類を相手取って貰います」
 標的となる雑魔は巨体を持ち、蛍の特徴である淡き光ではなく超常の力を持ち合わせる巨大蛍。
 片方は雷光を纏い、自らの攻撃だけでなく近づく相手にその電流が容赦なく流れ込む厄介な力を。
 炎を燃やす蛍は、強力な火球を発光体から放つ他、口から数多の飛沫を吐き出し広範囲を攻撃する能力を併せ持つ。
 受付嬢は少々ふざけて説明しているが、舐めて掛かれば思わぬ打撃を受ける可能性は十分にあるだろう。
「まあ、普通に戦っても倒せる相手と思いますけど、何も考えず力任せに攻めたらちょーっと面倒っちゃ面倒ですかね。
 ちなみに、雷光蛍が先に見つかったって事はどうもコイツの方が、道に近い場所がお気に入り、って感じだと思いますよ。もっとも、火炎蛍もこっちを見つけたらさっさと近づいて来るようですからすぐに遭遇できるんじゃないですかね~」
 クルクルとペン回し、用意された資料にチェックをつけていく受付嬢。
 説明漏れがないかどうか確認しつつ、個々人に手渡せるよう人数分の資料を手早く取りまとめていく。
「あ、そうそう。別にこれは依頼の成否に関係ないですけど、上手く退治して余裕があったら蛍観賞をしてきたら良いんじゃないですかね?
 雑魔が出てその辺だけ蛍が居ませんけど、ちょっと離れた場所で飛んでるみたいですし、退治したら水辺全体で飛ぶ姿が見られると思いますからね~♪」
 手早く集まったハンターに資料を渡し、依頼達成後に遊ぶ余裕もあるはずだ、と付け加える受付嬢。
 現場に行かず、言うだけの人間は楽ですけどねと言いながら、彼女は一同を送り出すのであった。

リプレイ本文

●夜闇の中より誘う光
 昼間の暑さが嘘のように、涼しい風が頬をなで。
 夜の帳が落ち、川より聞こえる水音響く湿地へと8人のハンターが歩を進めていた。
「湿地に近づきすぎなければ問題なさそうだな」
「そうだね、上手くこちら側まで誘導できれば戦いやすそうだ」
「ああ、そろそろ双眼鏡を使えば十分見える、って距離か」
 昼間に聞き及んだ周囲の情報と現地の状況、双方をすり合わせ足場の安定性を確認していた龍崎・カズマ(ka0178)にアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が応えれば、用意した双眼鏡で湿地を眺める柊 真司(ka0705)がそれに続く。
 一同の策は敵陣への突撃ではなく敵の引き寄せ、それ故に地形の把握が重要なのだ。
「……蛍かぁ。昔はじいちゃんのとこにいったらみれたっけ。こんなとこにもいるみたいだけど……なんか大きいけど。なんか攻撃的だけど」
「ええ、この世界の生態は誠に面白い物で……攻撃的というか、人を襲う蛍までいるようで……普通の鳥なんかはひとたまりもないですな」
 昔の思い出、普通の蛍を見ていた過去と現在向かう蛍との違いを思うキヅカ・リク(ka0038)にクオン・サガラ(ka0018)が返していく。
 何とかせねばと決意を固めるキヅカの隣、生態系に興味のあるクオンは此度の蛍、それを喰らう怪鳥をふと想像。
 圧倒的な体躯、膂力を持ちうる存在を想像し、居たとしても会いたくないと頭を振った。
『今回は蛍だけみたいです。夏の情景の絵、ぴったりの題材ですからお仕事をしっかりします』
 そんな2人に見える様、そっとスケッチブックで意思表示、エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が急ぎ文字を書き上げていた。
「蛍って見たことないのですよね……穏やかな光を発すると聞いているので拝見するのがとても楽しみです」
「蛍は人の魂という伝承があります……此度の蛍、未練持つ魂が形を成したとするならば。美しき夜に、葬送の舞を奉じましょう」
 初めて見る蛍へ思いを馳せるルテシィア・ハーミッシュ(ka0191)と蛍の伝承、それを語り敵として表れし蛍の雑魔、彼岸より此岸を目指す魂ならば、送り返すが定めとするは織宮 歌乃(ka4761)。
 彼女の言葉の後、無言で進む一同の耳に届く水音はより大きさを増し、湿地に近き事が誰しも分かる中言葉を発したのは真司であった。
「空気の読めない雑魔が居たぞ。話どおり道に近い」
「その奥に炎が見える……距離が遠いが、あれが火炎蛍か」
 敵発見、その一報を告げた真司により遠方を望遠鏡にて探っていたアルトも時を置かずして敵を確認。
 擬似的な前衛後衛と布陣した雷光蛍と火炎蛍、対するは引き寄せからの射撃を想定したハンター達の戦いは間もなく始まるのであった。


●戦い告げるは火砲の音色
「名が如く、夜鳴く鶫の嘆きを奏でなさい――『鳴鵺』」 
 雷光蛍を視認、射程に捕らえし歌乃が構えるは腰に照らしたランタンにて闇に浮かぶ小筒『鳴鵺』
 不吉な獣の名を冠す銃の引き金引かれれば、静かな水音引き裂く火薬の轟音と共に獣の呻きとも聞こえる風切り音が闇夜に響く。
 その銃撃を皮切りに多種多様な銃器を持つ面々、エヴァ、キヅカ、カズマ、真司、アルトが容赦なく発砲を。
 数種の砲音が重なり合えば、その音にあわせて遠方に見える光が左右に揺れる。
「流石にこれだけ撃てば反応しますか。一気に突っ込んできましたよ」
 携えた弓が月光を反射、闇夜に煌くその弓へ矢を番え弦を引きつつクオンが呟き、激しく左右に揺れながら突進してくる雷光蛍を凝視。
 ギリギリと引き絞られた弦が高い音を奏で始めばそれは放つべき時、ふっと指先より力を抜けば張力を得た矢が闇夜を飛翔し蛍を穿つ。
『ギギッ!』
 腕部を掠めた矢の衝撃、甲殻弾けた蛍が不気味に顎鳴らす。
 明確な害意を込めてその身に纏いし輝きを強め、ハンター狙い2匹の雷光蛍が空駆ける。
「幼虫どころか成虫でも肉食いそうな顎だな、こいつらは。とっととこっちに来な」
 大まかな目標定め突撃する雷光蛍を見遣りつつも不敵に哂い、ランタンかざしたカズマが敵はここだと蛍にアピール。
 彼を第一の標的と定めたのか2匹の蛍は軌道をずらし、一気に肉薄せんと羽ばたき強めるがそれを見越してカズマは後方へと下がりつつ手にした大型魔導拳銃、赤き外装輝くレイジオブマルスの引き金を引いていた。
 再び響く発砲音、闇夜に光るマズルフラッシュと同時に放たれた銃弾は蛍の甲殻を貫くまではいかないもその衝撃、そして炎の力を込めた弾丸は確実にその耐久力をそぎ落とす。
「目立った体で自分からやられにくる、飛んで火にいる夏の虫、ってやつか」
 闇夜に溶け込む黒き銃身、それを抱えてサイトを合わせる真司が目を細め、激しく揺れる雷光蛍の動きを予測。
 射程と引き換えに精度を欠いた「狂乱せしアルコル」の欠点を補うべく慎重に狙いを定め一拍。
 息を吐きつつ引き金引けば、予測通りに突っ込む蛍の羽に一つの風穴、そして揚力に偏重きたし体制崩す雷光蛍が大きな隙を晒していた。
(「チャーンス! ってわけでその羽を蜂の巣にしてあげるわ」)
 大きな隙を晒せば攻撃が重なるのは戦いの常、アサルトライフルを構えエヴァもよろめく雷光蛍にフルオートで銃弾を浴びせかけ機動力を削がんとす。
 流石に銃器の本職では無い以上、羽を確実に撃ち抜く事は出来なかったがばら撒かれた銃弾は相手の勢いを殺すだけなら十分に効果を発揮、その生命力を削っていく。
 遠距離から一方的な攻撃、そして接近に対して距離を置く引き撃ち戦術を前にして流れを引き寄せたハンター達ではあったが相手も超常の力を持った存在、雑魔。
 攻撃しつつ下がるという関係上、どうしても離脱に全力を出せないハンターに対し速度に秀でるという特徴を持って雷光蛍が上下左右、複雑怪奇に光の軌跡を残し被弾しつつも距離詰める。
 結果として序盤より離れていた火炎蛍と雷光蛍は、さらに移動力の差も加わり大きく引き離され、相互連携が不可能という狙い通りの形が作り上げられていた。


●閃光墜とすは刃の煌き
「それ以上はいかせない、ここで行き止まりだよ」
 近接武器の範囲、一足にて切りかかれる距離まで近づく雷光蛍に立ちはだかったキヅカが両手にマテリアルを集束、腕を突き出すと同時にその力は炎の形を取り扇状に吐き出される。
 身を焦がす炎の勢い、タンパク質が燃える不快な匂いを漂わせつつも雷光蛍は進軍を止めずキヅカに飛び掛らんとその輝きを更に増す。
 だが、その進撃を許さぬとばかりに二つの影が躍り出る。
「近くに寄れば暗さも然程気にならない、一気にケリをつける」
「雷絶ち焔穿つ、奉納の斬舞を。この朧月夜に」
 機械仕掛けの振動刀、「オートMURAMASA」携え切り込むアルトに純正なる日本刀「虎徹」構えた歌乃が続き蛍に肉薄。
 左側面に回りこんだアルトが袈裟懸けに一撃、守りに翳した蛍の腕が切り離されて宙を舞い。
 電光石火、時間差で飛び出したはずの歌乃が瞬きする間にアルトに追いつき右側面から真一文字に刀を振るい傷を付け。
 反撃被弾を苦にせず呼吸をあわせアルトが正面、歌乃が背面へと流れるように移動、手首を返したアルトの斬り上げが頭部を捕らえ顎を深く引き裂けば、敵のよろめく間に正眼に構えなおした歌乃が渾身の振り下ろし。
『ギギャッ!?』
 流れるような連携に体中を引き裂かれ、歌乃に引き裂かれた腹部から輝く体液撒き散らし慣性のままに前方へ飛び行く雷光蛍。
 頭部の一撃にて歪んだ視界、その先に浮かんだ者は黒灰色の刀身持つバスターソードを構えたルテシィアの姿。
「魔法はあまり得意ではありませんが……威力は出ますよ!」
 詠唱終えた彼女の眼前、刀身が輝き光弾放たれその衝撃が黒色の髪をたなびかせる。
 満身創痍の雷光蛍が死の間際に見た光景、それは自身の輝きよりも強く美しい光の軌跡とその先に佇み、果てるその身を最後まで見据えるルテシィアの姿であった。
「まずは一匹、火炎の奴はまだこっちに届かないようだな」
「その様ですね、ならもう一匹も手早く、です」
 同刻、戦況を把握し次なる一手を打つべく動きを見せた真司とクオン。
 連携を失い孤立した雷光蛍、必死で追いすがるも射程距離に捉えられず遠方にて揺れる炎を見せる火炎蛍を視認し雷光蛍狙いを継続。
 銃声、そして風切る矢音が同時に響けば甲殻に刻まれた銃創と突き刺さりし矢がその動きを鈍らせる。
「よっと、それ以上は近付けさせん」
 続けざまにカズマが振るうワイヤーウィップが絡みつき、更に動きを阻害すれば自慢の速度をもがれた雷光蛍はただ単純に孤立した獲物でしかない。
 必死でもがき、放電することで何とか活路を見出そうとする蛍であったが8人の連携を前にすればその抵抗など無意味に等しい。
(「後続が来る前に始末しちゃうよ」)
 もがき暴れる蛍を逃さず、杖の先にマテリアルを高めるエヴァが意識を集中。
 その力が周囲の水分を集め球体へと変化、カタパルトより射出される戦闘機のごとく凄まじい勢いにて放たれ蛍に命中。
 弾ける飛沫、そしてワイヤーに絡め取られていた体は衝突の衝撃に耐え切れず。
 体の節々からその耐久力は限界を向かえ、胸部と腹部が、両前足が、そして羽がもげ、バラバラになりつつワイヤーの拘束から逃れた果てに消滅していた。
 ようやくハンターを射程に捕らえ、滾る敵意を表すかの様に火炎蛍が到着するも既に前衛たる雷光蛍は壊滅済み、ハンター圧倒的優位のままに戦いは最後の時を迎えようとしていた。


●消え行く炎は何映す
(「っとぉ、やってくれるわね!」)
 眼前に迫る巨大な火球、それをとっさに生み出した土の壁にて防ぎながらエヴァが次なる行動を模索する。
 一撃で強度の大部分を持っていかれた壁は続けざまの攻撃には耐えられないと彼女は判断、とっさに距離を離せばもう一発放たれた火が壁を砕き、彼女が立っていた場所が炎に包まれ燃え上がる。
 だが、如何に強大な火力であっても命中させることが出来なければ意味は無く。
 強引にハンター達の陣形に切り込んだが故に、火炎蛍は包囲からの集中攻撃を浴びる事となっていた。
「捉えた、一気にきめるよ」
「ええ、都合よく纏めて倒せそうですね」
 並び立つのは二人のアルケミスト、キヅカとクオン。
 同時複数体を穿つ魔法のデルタレイ、二人の前にそれぞれ光の三角形が姿を現し、その頂点からレーザーのごとく伸びた光が火炎蛍の体を貫く。
 2匹の火炎蛍はそれぞれ2本、計4本の光条に体を穿たれ、その身へ大きなダメージを受けていくが猛攻は終わらない。
「さて、これを避けれるか?」
 火炎蛍の正面から瞬時の隙つき右側面へ。
 速度を生かし回りこんだアルトが容赦なく斬撃を繰り出せばその動きに呼応、今まで距離置き戦っていたカズマが一気に接近。
 金色の刀身持ったバスタードソード「フォルティス」が火炎蛍の炎を映し怪しく光り一閃。
 力任せに振り下ろされた一撃からさらにマテリアルを活性化、機敏になった身体能力にモノを言わせてそのまま左側面を駆け抜け様に振り上げる。
「よっと、まだもう一発残ってるぜ」
 数多の斬撃、傷つき動き鈍った相手は逃さないとばかりにサイトを合わせた真司が更なる追い討ち。
 トリガー引けばマガジンに残った最後の一発が轟音と共に放たれ眉間を穿つ。
『ギギャギャ!?』
 激痛、そして死への恐怖か集中砲火を浴びた火炎蛍は聞くに堪えない叫びを上げて無茶苦茶に飛び回り、狙い定めることなくその口から多量の飛沫が撒き散らされて周囲を焦がす。
 最早瀕死の同胞、仲間が倒れ死を待つならば自分が活路を開くと奮起したのか残る一匹の火炎蛍が高度を上げて羽ばたき強め、口腔に炎を溜める。
 そして仲間ごと、憎き相手となったアルトとカズマを狙い多量の飛沫が吐き出されればふらつく火炎蛍が炎上、咄嗟に避けたアルトは無傷だが運悪く複数の飛沫に狙われたカズマは避けきれず、上着を焦がし右肩に火傷を負った。
 しかし、必死の反撃も最早ここまで。
「すぐに癒します、ご安心を」
 剣を翳し、祈りをささげたルテシィアの癒しの力。
 淡く輝く光によって火傷からくる痛みは瞬時に和らぎ、反撃にて生じたダメージは無力化される。
「焔に刀紋閃かせ舞いましょう?」
 そして、撒き散らされた飛沫にて煤けた炎を上げる下草飛び越え躍り出たのは歌乃。
 篝火の下、神へ武技を奉納する巫女の如く振るわれた剣撃は一拍の間に二撃。
 奮起す雑魔の心をへし折る斬撃にてその抵抗は力を失い火勢弱まり。
「厄介な相手だったが、これで終わりだな」
 まともな反撃すら許されず、続けざまに攻撃を受け地に落ちた火炎蛍にカズマが近づき、痙攣する体へと剣を突き立て戦いは終わりを告げるのであった。


●戻りし平穏と静寂
「はい、これで大丈夫です。後には残らないはずですよ」
 雷光蛍が常時放つ電撃、火炎蛍の飛沫によって負傷した面々にヒールを施すルテシィア。
 全員の治療が終われば、後は各々が蛍狩りを楽しむ時だ。

「くーっ、仕事終わりの一杯は格別だぜ。蛍なんて元の世界じゃ殆ど見れなくなったから、久しぶりに見るぜ」
 プシュッ、と炭酸が奏でる小気味良い音と共に缶ビールのタブを起こし、最初の一口を喉に流し込んだ真司が気分よく声を出す。
 ライトを消して自然の明かり、淡い月明かりの下を真司が歩きながら蛍を見れば各所に散らばった仲間達も思い思いに蛍を見遣っていた。

「小型の雷光蛍とか火炎蛍が居るかもしれませんね……」
 リアルブルーでは環境変化で大きく数を減じてしまった、明滅する小さな光を眺めつつクオンがポツリと呟けば、隣に立ったカズマが居たら困るとばかりに肩を竦める。
「ふふ、心配性だね。折角の夏の風物詩、妙な事は考えないで楽しもうよ」
 戦い終えて浴衣に着替え、団扇を持ったアルトが微笑みながら隣を進む。
 そんな三人から離れた場所では一人、散策しつつ二人っきり、周囲から隔離され彼女と一緒に蛍を見れる場所を探すキヅカの姿。

 水辺から視線を移せば同じく一人、此方は用意した画材を広げスケッチにいそしむエヴァの姿がそこにはある。
(「絵を描く為に来たから思いっきりやらなきゃね。でも、あんなに明るいのに暖かくないなんて不思議よね」)
 筆を走らせ、傍に近づき輝く蛍を手に乗せ思い、彼女は無心に手を動かす。

 再び水辺に目を移せば、既に居たのは飛び交う蛍の中で歌を諳んじあうルテシィアと歌乃。
「文化は違うものの……物凄く親近感がわきますね……」
「ええ、異なる夢と地なれど、結ばれる縁と詩も御座いますね」
 互いを見遣り、言葉交わせばふと強き風が吹き。
 風にあおられ舞い上がる蛍が彼岸に旅立つ魂の様に瞬き、8人のハンター達を見下ろしていた……

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 4
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 課せられた罰の先に
    クオン・サガラ(ka0018
    人間(蒼)|25才|男性|機導師
  • 雄弁なる真紅の瞳
    エヴァ・A・カルブンクルス(ka0029
    人間(紅)|18才|女性|魔術師
  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 撲滅お嬢さま
    ルテシィア・ハーミッシュ(ka0191
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士

  • 織宮 歌乃(ka4761
    人間(紅)|16才|女性|舞刀士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/25 06:42:24
アイコン 相談卓
織宮 歌乃(ka4761
人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2015/08/25 18:31:03