ゲスト
(ka0000)
【深棲】買い出しに行ってくる
マスター:石田まきば

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 3日
- 締切
- 2014/07/23 07:30
- 完成日
- 2014/07/24 23:37
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●物資が足りない
「同盟からの物資がなかなか入ってこないとは、どういうことだ」
エルヴィンバルト要塞の伝話室で、どこかと連絡をとる女が一人。名をカミラ・ゲーベルと言う。
ゾンネンシュトラール帝国は、軍事国家だ。歪虚に対する人類の盾を公言し国命と掲げるこの国は、いろいろな物資を他勢力からの購入によって賄っていた。そしてその購入などの物流は、それぞれの勢力に近い場所で居を構える師団が、業務の一部として担っている。
王国側からの物資は第三師団、同盟側からの物資は第四師団といった具合だ。
そしてこのエルヴィンバルト要塞は、王国との架け橋ピースホライズンの近くに建てられた要塞……つまり、第三師団シュラーフドルンの居城ということなのだった。
「詳しく説明しろ」
伝話は第四師団につながっている。
リゼリオや自由都市同盟の沿岸で歪虚の被害が頻発していることくらいは彼女も知っている。しかし、より詳しい情報が知りたくて直接伝話をかけたのだ。
「……こちらにも応援を頼みたい? ……君は勘違いしていないか。そちらの物流が減ったら、うちの物流が増えるんだ。似た業務もあるからこそ、君達の分をかぶっているんだからな?」
語気を抑えた口調。だが相手の言葉を差し挟む隙を与えず立て続けに話すことで会話の主導権を握っていく。
「特にこちらの方が陸続きの場所が多い。物流が増えたら他の業務も増えるんだ……察してほしい。情報は感謝するが、こちらも対応やら組みなおさねばならないしな、ではまた」
カチャン。
●職権乱用?
バタン!
「まずは買い出しと輸送まわりの人数強化、スケジュールの組み直しと周知を頼む、テオ」
「そう言うだろうと思って、はじめてますよ。もう少しで終わりますから、他の指示も今出しちゃってください」
執務室に飛び込みざま指示を出すカミラに、机に向かって書き物をしていたテオバルトは少しだけ顔をあげ、すぐに戻した。これと言って特徴のない男だが、事務仕事に定評がある。
「不機嫌の理由はなんですか、ゲーベリ師団長?」
手は止めぬまま、それとなく話しかける。上司の機嫌を取るのも仕事のうちだ。
「それも君はわかっているんだろ、私の『奇跡の電卓』は? ……こちらに協力要請を出そうとしてきた。もう少し下出に出てくれば考えたかもしれないのに、言い方がいけないな、あれは」
「またその呼び名ですか。貴女が何度も言うせいで、師団中に広まってしまい困りますよ」
「いいだろう、事実君が居るから成り立っているんだから」
「……ともかく、あちらもそれだけ困っているんでしょうよ、察してあげればよかったのでは?」
「向こうが察してくれないものを、察してやる義理はないな」
カミラが腕を組み座り込んだところで、再びドアが豪快に開けられた。
「第四師団はどうだったんだ、カミラの嬢ちゃん!」
体格のいい男が入ってくる。3つあるうちの最後の椅子にどかりと座った。
「ハウプトマン副長、ノックをしてください」
「ここは俺の部屋でもあるんだからいいだろう! で、どうなんだ?」
「しばらく忙しくなるぞ。モーリにも出てもらう事があるかもな。……派遣の類は陛下次第だが」
「あまり人手は貸せないと思いますけどね。できました」
カミラとモーリッツの近くまで来たテオバルトが、書類を差し出した。
「流石だなテオ坊!」
背中をバンバン叩かれ眉をしかめたものの、テオバルトは小言を飲み込んだ。どうせノック同様、何度言っても直らないのだ。
「……」
意にも介さず、じっと書類を見つめるカミラ。目を細めて何やら頷いている。
「これならしばらくもつな。ああでもこの日だけ、第四師団に少し人を寄越してくれればもっといい」
「手伝いに貸すんですか? 断ったのでは?」
「いや、断った詫び代わりの応援物資を運ばせるだけだ。帰りは私と一緒に帰る」
カミラは帰り『は』と言った。行きは一緒ではないと言うことだ。
「また行くんですか。流石に一人で行くには情勢が良くないですよ」
「リゼリオに転移してしまえばハンターが居るじゃないか。私はまだ彼らに会ってないし、彼らなら面白い料理も知っていそうだ」
料理好きのカミラは、こと料理と食材のことになると見境がなくなることがある。
「同盟には珍しい食材も揃うしな。滅多に行けないから、今度はどんな出会いがあるか‥…♪」
既にうっとりとした視線を虚空に向けていた。こうなると頑固だ。
(これがなければ普通に美人なんですけどね)
(まあ面白いからいいけどな)
「モーリッツ・ハウプトマン副長、テオバルト・デッセル副長。これから私は一般兵として、買い出しに行ってくる。あとは宜しく頼んだ!」
副長二人が視線で会話していることなど気付かず、カミラは簡単な旅支度を揃えて執務室を出ていくのだった。
「同盟からの物資がなかなか入ってこないとは、どういうことだ」
エルヴィンバルト要塞の伝話室で、どこかと連絡をとる女が一人。名をカミラ・ゲーベルと言う。
ゾンネンシュトラール帝国は、軍事国家だ。歪虚に対する人類の盾を公言し国命と掲げるこの国は、いろいろな物資を他勢力からの購入によって賄っていた。そしてその購入などの物流は、それぞれの勢力に近い場所で居を構える師団が、業務の一部として担っている。
王国側からの物資は第三師団、同盟側からの物資は第四師団といった具合だ。
そしてこのエルヴィンバルト要塞は、王国との架け橋ピースホライズンの近くに建てられた要塞……つまり、第三師団シュラーフドルンの居城ということなのだった。
「詳しく説明しろ」
伝話は第四師団につながっている。
リゼリオや自由都市同盟の沿岸で歪虚の被害が頻発していることくらいは彼女も知っている。しかし、より詳しい情報が知りたくて直接伝話をかけたのだ。
「……こちらにも応援を頼みたい? ……君は勘違いしていないか。そちらの物流が減ったら、うちの物流が増えるんだ。似た業務もあるからこそ、君達の分をかぶっているんだからな?」
語気を抑えた口調。だが相手の言葉を差し挟む隙を与えず立て続けに話すことで会話の主導権を握っていく。
「特にこちらの方が陸続きの場所が多い。物流が増えたら他の業務も増えるんだ……察してほしい。情報は感謝するが、こちらも対応やら組みなおさねばならないしな、ではまた」
カチャン。
●職権乱用?
バタン!
「まずは買い出しと輸送まわりの人数強化、スケジュールの組み直しと周知を頼む、テオ」
「そう言うだろうと思って、はじめてますよ。もう少しで終わりますから、他の指示も今出しちゃってください」
執務室に飛び込みざま指示を出すカミラに、机に向かって書き物をしていたテオバルトは少しだけ顔をあげ、すぐに戻した。これと言って特徴のない男だが、事務仕事に定評がある。
「不機嫌の理由はなんですか、ゲーベリ師団長?」
手は止めぬまま、それとなく話しかける。上司の機嫌を取るのも仕事のうちだ。
「それも君はわかっているんだろ、私の『奇跡の電卓』は? ……こちらに協力要請を出そうとしてきた。もう少し下出に出てくれば考えたかもしれないのに、言い方がいけないな、あれは」
「またその呼び名ですか。貴女が何度も言うせいで、師団中に広まってしまい困りますよ」
「いいだろう、事実君が居るから成り立っているんだから」
「……ともかく、あちらもそれだけ困っているんでしょうよ、察してあげればよかったのでは?」
「向こうが察してくれないものを、察してやる義理はないな」
カミラが腕を組み座り込んだところで、再びドアが豪快に開けられた。
「第四師団はどうだったんだ、カミラの嬢ちゃん!」
体格のいい男が入ってくる。3つあるうちの最後の椅子にどかりと座った。
「ハウプトマン副長、ノックをしてください」
「ここは俺の部屋でもあるんだからいいだろう! で、どうなんだ?」
「しばらく忙しくなるぞ。モーリにも出てもらう事があるかもな。……派遣の類は陛下次第だが」
「あまり人手は貸せないと思いますけどね。できました」
カミラとモーリッツの近くまで来たテオバルトが、書類を差し出した。
「流石だなテオ坊!」
背中をバンバン叩かれ眉をしかめたものの、テオバルトは小言を飲み込んだ。どうせノック同様、何度言っても直らないのだ。
「……」
意にも介さず、じっと書類を見つめるカミラ。目を細めて何やら頷いている。
「これならしばらくもつな。ああでもこの日だけ、第四師団に少し人を寄越してくれればもっといい」
「手伝いに貸すんですか? 断ったのでは?」
「いや、断った詫び代わりの応援物資を運ばせるだけだ。帰りは私と一緒に帰る」
カミラは帰り『は』と言った。行きは一緒ではないと言うことだ。
「また行くんですか。流石に一人で行くには情勢が良くないですよ」
「リゼリオに転移してしまえばハンターが居るじゃないか。私はまだ彼らに会ってないし、彼らなら面白い料理も知っていそうだ」
料理好きのカミラは、こと料理と食材のことになると見境がなくなることがある。
「同盟には珍しい食材も揃うしな。滅多に行けないから、今度はどんな出会いがあるか‥…♪」
既にうっとりとした視線を虚空に向けていた。こうなると頑固だ。
(これがなければ普通に美人なんですけどね)
(まあ面白いからいいけどな)
「モーリッツ・ハウプトマン副長、テオバルト・デッセル副長。これから私は一般兵として、買い出しに行ってくる。あとは宜しく頼んだ!」
副長二人が視線で会話していることなど気付かず、カミラは簡単な旅支度を揃えて執務室を出ていくのだった。
リプレイ本文
●正体
「カミラ・ゲーベルだ。料理好きの師団長の代理で、料理の心得のある私が買い出しに来ている」
ハンター達の名を確認し、依頼人はそう自己紹介をした。
「帝国の物資を買うなら、任務中扱いか?」
「第三師団のものだけだから半分だな。全体の物資を買うには準備が足りない」
ビスマ・イリアス(ka1701)は心得たと頷く。
「料理が好きなのですか~☆ あたしも料理は好きですので、一緒に市場に行って食材を見てもよろしいでしょうか」
スピカ・チェリーブロッサム(ka0118)の言葉に迷わず頷いたカミラを、エイルズレトラ・マステリオ(ka0689)は見逃さなかった。
「貴女は、おたくの師団長と随分性格が似ているのですね。先ほどから、まるでご自分のことを語っていらっしゃるようですよ」
カミラは『料理の心得のある私』と言った。『料理好き』は師団長のことだったはずだ。
口の中だけで何事か呟いてからカミラは答えた。
「この場では似ている、ということにしておいてくれると嬉しい」
●食材
「う~ん。ボクは料理関連は苦手だから、主に荷物持ちって事でよろしくお願いしまぁす♪」
元気に宣言する超級まりお(ka0824)、その瞳はきらきらと輝いている。
(モチロン食べるのは好きだけどね♪)
食事費用は依頼人もちというのが大事なところだ。
ガイドをかって出たのはマルカ・アニチキン(ka2542)で、カミラの近くに居るよう努めている。
「ええっと。私の話し方が退屈でしたら申し訳ありません……ここの都市が良いところだって伝わったらいいんですけど」
うまく自分に自信が持てない分が、前置きとして言葉になる。
「君の案内は、私とは違う視点で得たものなのだろう?」
「すっすみません!」
責められていないのにとっさに謝ってしまう。
「謝らなくていい。君を退屈に思うことはないと先に言いたかっただけだ」
「申し訳……いえ、よろしくお願いします」
この人の視線に耐えられたら少し成長できるだろうか?
「どういったものを探すんだ?」
「同盟らしいものがいい」
ビスマの問いには、帝国や王国のものは仕事でも見ているとの返事。
「まずは野菜でしょうか? 日持ちがするような物を買う方が良いのでしょうかねぇ?」
輸送にまで気を配るスピカ。
「やはり芋類がよろしいのではないでしょうか? ジャガイモなんかは結構食べますね~☆」
帝国ではジャガイモをプランテーションで推奨しているくらいだ。だが他の芋は算出があっても量が少ない。
「蒸して良し、焼いて良し、揚げて良し……調理、加工方法は沢山ありますので、料理人の腕の見せ所ですよね☆」
つい話が盛り上がってしまう。
「今の季節ですと……トマトもいいでしょうねえ~。生はもちろん、乾燥させた物も美味しいですし……」
「何っ! トマトを干すのか!?」
カミラが急に立ち止まる。
「水分も抜けて、甘みが増して……勿論保存もしやすくなりますよ~?」
水に戻しても、そのまま刻んでも使えると丁寧に答える。
「軽いなら袋いっぱい買えるな! 乾物屋はどこだ?」
目を輝かせ探し出す様子にハンター達は唖然とし始めた。
先導を担っていた伊勢 渚(ka2038)は、マルカのガイドがないタイミングで話をふる。
「オレ的には喫煙の出来る喫茶店は外せないな、愛煙家は必ず大手を振って吸える場所を常に押さえるモノよ、喫茶店と煙草とコーヒーはセットだ、無論コーヒーはブラックに限るな」
彼独自の嗜好を盛り込んでいるあたりが斬新だ。予想外の視点に、カミラも目を細める。
「まーここは市場だからな、屋内の席でゆっくりも煙草も難しい。どうしたって屋台のあたりになってしまうな」
更に渚はタバコの銘柄や味の違い、普段自分がやっているタバコの作り方などもレクチャー。
「これは大人の楽しみだが早いうちに知っておいて損はないはずだ」
「ほう、そうやって巻いているんだな、何かに使えそうだ」
タバコの葉を巻く技術にカミラが釣れ図らずして依頼の目的に適う。ちなみにカミラは非喫煙者なので、気に入ったのはあくまで包む技術の模様。
「『働かざるもの食うべからず』なのが、当たり前の自由都市では朝はどこよりも早く人々は動きだします」
市場にいる間もマルカは説明を欠かさなかった。自分の買い物よりも、カミラの対応を重視していた彼女らしい律義さである。
「海という資源の需要の中、この都市は怠け者の存在は許してません」
きっと『時は金なり』と思う人が多いのかもしれません、と意見も添えた。
「同盟らしいもので持ち運びしやすく滋養に満ちたものとなると……チーズとかになるだろうか。見て回るだけでもとても楽しいかと思う」
一口にチーズと言っても実に多様だ。原料の乳からして種類があるし、味付けや製法も様々存ある。
「あとは今の季節にならではの旬の食材だな、いわゆる夏野菜の類は今が旬で栄養価も高くお勧めだ」
それと料理だが、とビスマが続ける。
「最近リアルブルーの友人ができたんで、そのレシピでならば教えられるぞ。『ちゃんこ鍋』っていうんだが」
軍のような多くの人間が共に食し、体力をつけ且つ互いの絆を深めるための料理だそうだ。レシピと聞いた時点で詰め寄ったカミラは更に目を輝かせた。うっとりとした目線が逆に怖い。
「い、いや俺もレシピ聞いただけで試したことないし夏の盛りに相応しいかどうかは……まあ一度作ってからだな、うん」
「試食出来る食材は、片っ端から味見してみたらどうですか?」
皆の後について回っていた最上 風(ka0891)も声をかけた。
「それも手だが、どこまでせびっていいものか見極めていてな」
『せびる』はあえてスルーして、風は自分の探す品について例を挙げてみた。
「一人でに喋り出す、野菜とかないですかね? 肉とか魚でも可ですが」
「それで食材が自分の鮮度を教えてくれたら便利だな!」
「何かこう、舐めると若返るとか、老けるとかの怪しい飴とか売ってませんかね?」
「変装に使えそうだな、むしろ私が任務用に欲しい」
「食べても食べても減らない、怪しい魔術的なパンとかないですかね?」
「戦闘糧食に採用したいくらいだ」
市場にはないだろうけれど、風の挙げるもの全てがカミラの気を引いていく。
「今度錬金術師組合か錬魔院に依頼してみるか?」
とまで呟いていた。もし実現しても市場に卸される気はしないのだが。
●寄道
「帝国領内はあんまこねーんだよなっ。公演やるにも雰囲気がなっ」
まるごとうさぎ、ではなく大道芸人で未来のサーカス団長リズリエル・ュリウス(ka0233)は帝国にあまり詳しくないらしい。巡業公演で各地を渡る中で、立ち寄った程度だとのこと。
「仕事だから我慢して見に来れない、大声出して楽しめないって奴が多い所は、窮屈でなっ。精々酒場が良い営業先だなっ」
「急な仕事が入るのは兵士の宿命なのは否定できないな。だが酒場は兵士も多く行っているぞ?」
全人口の殆どが歪虚との戦いに関係する職業につくような国だ。娯楽に使える時間は少ない。『人を楽しい気持ちにさせる』存在は有り難いくらいで、カミラはリズリエルとエイルズレトラに視線を向けた。
「私達だって面白いものが好きだよ。良く行く酒場に来て欲しいくらいだ」
「それならカードの店はいかがですか?」
エイルズレトラが案内したのは、彼の知り合いの店だというトランプ売りの露店。
帝国の主だった娯楽は博打だ。それはコインであったり数枚のカードであったり、戦功の競い合いだったりする。カミラはトランプを知らなかった。
「これはリアルブルーで広く普及する、トランプという玩具です。紙の札に数字とマークが印刷されたシンプルなカードですが、これが実に様々なゲームや占いに使える、奥が深い玩具です」
説明の後、トランプ一組と遊び方を記した本を購入しカミラに手渡す。
「これはプレゼントです。同盟で少しずつ普及させているところですが、良ければ帝国にも普及させていただきたいですね」
「私の仕事で来てもらっているんだが」
代金を出そうとしたカミラを遮り、自分の肩書きや名前を書いた名刺代わりのトランプを一枚増やした。これは営業なんですよ、と愛想のいい笑顔を浮かべる。
「旅の護衛から宴会芸まで、奇術士エイルズを今後ともよろしく」
育ちの良さをうかがわせる一礼がその場を支配した。
「料理には材料だけはなく、道具も大事ですよ?」
洋服に日本刀という格好の依頼人に拘りがあるのかを危ぶみつつ風が提案する。
「柳葉包丁とやらがあればいいんだがな」
和食への興味をのぞかせつつ、カミラは新たな包丁も見繕ったようだ。
●昼食
「それにしても……すごい活気ですね~☆」
スピカの声に同意するようにマルカの案内が続く。
「大人も子供も腰の曲がったご高齢の方々も、皆この街では何かしらの仕事をしながら生きているんです」
子供は大人の手伝いを、齢を重ねた者であれば積み重ねた知恵や経験を後世に伝えることを仕事として、商品として扱う者もいる。もちろん現役で働き盛りの年代に交じって働く者もいるだろう。
「市場は特に賑わっています。人が集まると、自然に物質やお金や情報が集まります。知りたいことがあれば、この市場で聞いて見てください。誰もが親切に答えてくれる……はずですっ」
事前に考えていた口上を伝えきったことで、マルカの緊張が少し解けた。その肩にカミラが軽く触れる。
「は、はいっ?」
何か不備があっただろうかと身を竦ませるマルカに、カミラは笑いかけた。
「お疲れ。あとはそうだな……同じものを食べて、感想をくれたらもっといい」
「あそこは安くて……っ!」
香ってくる匂いに惹かれたリズリエルが早速屋台に向かっていく。
大きめにカットした肉の塊に黒胡椒と塩と香草をまぶしたものを焼いて、平べったい皮で巻いて食べるらしい。野菜やチーズ、魚等も並んでいたが、彼女はただ肉だけを見つめていた。
じーーーーーっ
「嬢ちゃん、そっちはまだ使う前の肉だぜ?」
見ていたのは店の奥にある生肉。狩りたて捌きたての新鮮なものではなく、熟成させた食べごろの肉。
「おっちゃん、まけろ」
本当は一番好きな生肉を諦め、彼女は肉の大盛りを注文。親父はおまけで肉を追加してくれたようだ。
「どんな味だ?」
カミラの疑問に一度首をかしげるリズリエル。
「ちょっとしかがじがじできないなっ。……んーと、締まってた肉だからうまいぞっ」
いつも通り感じたままに答えた後に言い直している。もっと相手に伝わるような表現も大事ですよと、彼女のメイド、アミグダ・ロサの教育が効果を発揮したのかもしれない。
「参考までに、リズリエルにとっての帝国料理はどんなものか教えてくれ」
「帝国のはとんつんしゅって感じだなっ。ちなみにうちの料理は多分辺境の方のだから、もっとざくざくどんどんって感じだっ」
擬音語ばかりだがカミラは頷いた。
「でもロサが作るから色々だ。あっちこっち旅してるから手に入る食材も変わるしなっ」
「それは羨ましい、食材が多彩なのは本当にいいことだ」
「まぁ実際味わってみるのが一番だな。カミラは何を食うんだ?」
「彼女とは別のものがいいな、感想も聞けたし。誰かおすすめはあるか?」
「さっきのチーズを使った物なんかどうだ、肉と合わせれば酒もうまいぞ」
せっかくだし呑まないかとビスマが誘う。
「あまり強くないんだ。これはそこそこいけるが、度の強いものは一杯が限度でな」
言いながらビールを酌み交わす。既に頬は赤かった。
「やはり、ビールとタバコは合うな、ビールに合う飯は当然必須だ、大人の料理ってやつを叩き込んでやるぜ」
「ビールなら帝国にもあるぞ、ヴルストとビール、魚と芋の揚げ物は定番だからな」
「それだそれ、正に大人の料理ってやつだな!」
わかってるじゃないか、と頷く渚。彼の煙草の煙も、それに合わせてゆらりと揺れた。
「カミラさん、リアルブルーには万能調味料があるって話、知ってる?」
「何だそれはっ?」
予想通り食いついたカミラに、まりおはかいつまんで話す。
「大繁盛している店で、隠し味に使うため、こっそり取り寄せて使っているっていう話があるくらいなんだよ」
リアルブルーでの話なんだけどね、と付け足すのは忘れない。
「入手出来たら、料理好きのカミラさんなら喜んでくれそうだなー、みたいに思ったんだけど……そう都合良く売ってたりしないよねー♪」
調味料の店をのぞいては見たが、それらしいものは見当たらなかった。だが彼女はひとつ確信があり、小さく続ける。
「……まぁサルヴァトーレ・ロッソになら確実に有るんだけどね」
「なるほどな。……だが、私はそれは買わない」
「どうして?」
欲しがるだろうと予想していた分、驚きが大きい。
「これでも料理修行をした身だ。絶対に美味しくなる便利なものを使うより、自分の力量で美味しくしたいと思う」
あくまでも私の持論だから、皆が同じというわけではないだろうけど、面白い話は感謝するよとまりおの頭を撫でた。
「今度、これを参考にお店でも出してみましょうかね~☆」
自らが経営する喫茶店の新作メニューとして、軽食を考えているスピカ。露店メニューを参考に形を変えたり、ドリンクとの食べ合わせを考えたり、アレンジを考えるのも楽しい。
「風の知識では、キュウリにハチミツを付けるとメロン味とか、プリンに醤油でウニとかですね」
スピカに食べ合わせの提案をしている風だが『知識』ということなので証拠がない、本当に美味しいのか?
「おなかに余裕があるなら、粉ものの店もおすすめしますよ」
「それは甘いのか辛いのか、説明もくれるか」
「後はお肉やお魚も見て回りたいですね~」
「魚の種類も、いくつかあったと思います」
「白身魚以外にあるのか?」
エイルズレトラの声に飛びついたと思えば、スピカとマルカの言葉にも食いつく。案内される分はすべて回ろうとするカミラに、少し予定を早めたほうがいいかもしれないとハンター達は視線を合わせた。予定はまだびっしり残っている。
●帰路
干したトマトや魚介がメインの日持ち食材、新たな包丁、貰い物のトランプと本等をいっぱいに抱えたカミラはまだ少し頬が赤い。
「その量、大丈夫なのか?」
バランスの悪そうな様子に思わず声をかけたビスマにも、大丈夫だ! と声だけが返ってくる。顔が見えない。
「今度お会いした時には、その食材で何を作ったのか教えてくださいね~☆」
「勿論そうしよう。……皆今日は楽しく過ごさせてもらった。またハンター達に依頼することもあるだろう、その時はよろしく頼む」
くるりと背を向け歩いていく、その歩みはしっかりしていた。
「実は結構、腕に自信がある方なのでしょうか」
「わかりにくい方ですが、そうみたいですね」
マルカの呟きに、エイルズレトラが肩をすくめた。
「カミラ・ゲーベルだ。料理好きの師団長の代理で、料理の心得のある私が買い出しに来ている」
ハンター達の名を確認し、依頼人はそう自己紹介をした。
「帝国の物資を買うなら、任務中扱いか?」
「第三師団のものだけだから半分だな。全体の物資を買うには準備が足りない」
ビスマ・イリアス(ka1701)は心得たと頷く。
「料理が好きなのですか~☆ あたしも料理は好きですので、一緒に市場に行って食材を見てもよろしいでしょうか」
スピカ・チェリーブロッサム(ka0118)の言葉に迷わず頷いたカミラを、エイルズレトラ・マステリオ(ka0689)は見逃さなかった。
「貴女は、おたくの師団長と随分性格が似ているのですね。先ほどから、まるでご自分のことを語っていらっしゃるようですよ」
カミラは『料理の心得のある私』と言った。『料理好き』は師団長のことだったはずだ。
口の中だけで何事か呟いてからカミラは答えた。
「この場では似ている、ということにしておいてくれると嬉しい」
●食材
「う~ん。ボクは料理関連は苦手だから、主に荷物持ちって事でよろしくお願いしまぁす♪」
元気に宣言する超級まりお(ka0824)、その瞳はきらきらと輝いている。
(モチロン食べるのは好きだけどね♪)
食事費用は依頼人もちというのが大事なところだ。
ガイドをかって出たのはマルカ・アニチキン(ka2542)で、カミラの近くに居るよう努めている。
「ええっと。私の話し方が退屈でしたら申し訳ありません……ここの都市が良いところだって伝わったらいいんですけど」
うまく自分に自信が持てない分が、前置きとして言葉になる。
「君の案内は、私とは違う視点で得たものなのだろう?」
「すっすみません!」
責められていないのにとっさに謝ってしまう。
「謝らなくていい。君を退屈に思うことはないと先に言いたかっただけだ」
「申し訳……いえ、よろしくお願いします」
この人の視線に耐えられたら少し成長できるだろうか?
「どういったものを探すんだ?」
「同盟らしいものがいい」
ビスマの問いには、帝国や王国のものは仕事でも見ているとの返事。
「まずは野菜でしょうか? 日持ちがするような物を買う方が良いのでしょうかねぇ?」
輸送にまで気を配るスピカ。
「やはり芋類がよろしいのではないでしょうか? ジャガイモなんかは結構食べますね~☆」
帝国ではジャガイモをプランテーションで推奨しているくらいだ。だが他の芋は算出があっても量が少ない。
「蒸して良し、焼いて良し、揚げて良し……調理、加工方法は沢山ありますので、料理人の腕の見せ所ですよね☆」
つい話が盛り上がってしまう。
「今の季節ですと……トマトもいいでしょうねえ~。生はもちろん、乾燥させた物も美味しいですし……」
「何っ! トマトを干すのか!?」
カミラが急に立ち止まる。
「水分も抜けて、甘みが増して……勿論保存もしやすくなりますよ~?」
水に戻しても、そのまま刻んでも使えると丁寧に答える。
「軽いなら袋いっぱい買えるな! 乾物屋はどこだ?」
目を輝かせ探し出す様子にハンター達は唖然とし始めた。
先導を担っていた伊勢 渚(ka2038)は、マルカのガイドがないタイミングで話をふる。
「オレ的には喫煙の出来る喫茶店は外せないな、愛煙家は必ず大手を振って吸える場所を常に押さえるモノよ、喫茶店と煙草とコーヒーはセットだ、無論コーヒーはブラックに限るな」
彼独自の嗜好を盛り込んでいるあたりが斬新だ。予想外の視点に、カミラも目を細める。
「まーここは市場だからな、屋内の席でゆっくりも煙草も難しい。どうしたって屋台のあたりになってしまうな」
更に渚はタバコの銘柄や味の違い、普段自分がやっているタバコの作り方などもレクチャー。
「これは大人の楽しみだが早いうちに知っておいて損はないはずだ」
「ほう、そうやって巻いているんだな、何かに使えそうだ」
タバコの葉を巻く技術にカミラが釣れ図らずして依頼の目的に適う。ちなみにカミラは非喫煙者なので、気に入ったのはあくまで包む技術の模様。
「『働かざるもの食うべからず』なのが、当たり前の自由都市では朝はどこよりも早く人々は動きだします」
市場にいる間もマルカは説明を欠かさなかった。自分の買い物よりも、カミラの対応を重視していた彼女らしい律義さである。
「海という資源の需要の中、この都市は怠け者の存在は許してません」
きっと『時は金なり』と思う人が多いのかもしれません、と意見も添えた。
「同盟らしいもので持ち運びしやすく滋養に満ちたものとなると……チーズとかになるだろうか。見て回るだけでもとても楽しいかと思う」
一口にチーズと言っても実に多様だ。原料の乳からして種類があるし、味付けや製法も様々存ある。
「あとは今の季節にならではの旬の食材だな、いわゆる夏野菜の類は今が旬で栄養価も高くお勧めだ」
それと料理だが、とビスマが続ける。
「最近リアルブルーの友人ができたんで、そのレシピでならば教えられるぞ。『ちゃんこ鍋』っていうんだが」
軍のような多くの人間が共に食し、体力をつけ且つ互いの絆を深めるための料理だそうだ。レシピと聞いた時点で詰め寄ったカミラは更に目を輝かせた。うっとりとした目線が逆に怖い。
「い、いや俺もレシピ聞いただけで試したことないし夏の盛りに相応しいかどうかは……まあ一度作ってからだな、うん」
「試食出来る食材は、片っ端から味見してみたらどうですか?」
皆の後について回っていた最上 風(ka0891)も声をかけた。
「それも手だが、どこまでせびっていいものか見極めていてな」
『せびる』はあえてスルーして、風は自分の探す品について例を挙げてみた。
「一人でに喋り出す、野菜とかないですかね? 肉とか魚でも可ですが」
「それで食材が自分の鮮度を教えてくれたら便利だな!」
「何かこう、舐めると若返るとか、老けるとかの怪しい飴とか売ってませんかね?」
「変装に使えそうだな、むしろ私が任務用に欲しい」
「食べても食べても減らない、怪しい魔術的なパンとかないですかね?」
「戦闘糧食に採用したいくらいだ」
市場にはないだろうけれど、風の挙げるもの全てがカミラの気を引いていく。
「今度錬金術師組合か錬魔院に依頼してみるか?」
とまで呟いていた。もし実現しても市場に卸される気はしないのだが。
●寄道
「帝国領内はあんまこねーんだよなっ。公演やるにも雰囲気がなっ」
まるごとうさぎ、ではなく大道芸人で未来のサーカス団長リズリエル・ュリウス(ka0233)は帝国にあまり詳しくないらしい。巡業公演で各地を渡る中で、立ち寄った程度だとのこと。
「仕事だから我慢して見に来れない、大声出して楽しめないって奴が多い所は、窮屈でなっ。精々酒場が良い営業先だなっ」
「急な仕事が入るのは兵士の宿命なのは否定できないな。だが酒場は兵士も多く行っているぞ?」
全人口の殆どが歪虚との戦いに関係する職業につくような国だ。娯楽に使える時間は少ない。『人を楽しい気持ちにさせる』存在は有り難いくらいで、カミラはリズリエルとエイルズレトラに視線を向けた。
「私達だって面白いものが好きだよ。良く行く酒場に来て欲しいくらいだ」
「それならカードの店はいかがですか?」
エイルズレトラが案内したのは、彼の知り合いの店だというトランプ売りの露店。
帝国の主だった娯楽は博打だ。それはコインであったり数枚のカードであったり、戦功の競い合いだったりする。カミラはトランプを知らなかった。
「これはリアルブルーで広く普及する、トランプという玩具です。紙の札に数字とマークが印刷されたシンプルなカードですが、これが実に様々なゲームや占いに使える、奥が深い玩具です」
説明の後、トランプ一組と遊び方を記した本を購入しカミラに手渡す。
「これはプレゼントです。同盟で少しずつ普及させているところですが、良ければ帝国にも普及させていただきたいですね」
「私の仕事で来てもらっているんだが」
代金を出そうとしたカミラを遮り、自分の肩書きや名前を書いた名刺代わりのトランプを一枚増やした。これは営業なんですよ、と愛想のいい笑顔を浮かべる。
「旅の護衛から宴会芸まで、奇術士エイルズを今後ともよろしく」
育ちの良さをうかがわせる一礼がその場を支配した。
「料理には材料だけはなく、道具も大事ですよ?」
洋服に日本刀という格好の依頼人に拘りがあるのかを危ぶみつつ風が提案する。
「柳葉包丁とやらがあればいいんだがな」
和食への興味をのぞかせつつ、カミラは新たな包丁も見繕ったようだ。
●昼食
「それにしても……すごい活気ですね~☆」
スピカの声に同意するようにマルカの案内が続く。
「大人も子供も腰の曲がったご高齢の方々も、皆この街では何かしらの仕事をしながら生きているんです」
子供は大人の手伝いを、齢を重ねた者であれば積み重ねた知恵や経験を後世に伝えることを仕事として、商品として扱う者もいる。もちろん現役で働き盛りの年代に交じって働く者もいるだろう。
「市場は特に賑わっています。人が集まると、自然に物質やお金や情報が集まります。知りたいことがあれば、この市場で聞いて見てください。誰もが親切に答えてくれる……はずですっ」
事前に考えていた口上を伝えきったことで、マルカの緊張が少し解けた。その肩にカミラが軽く触れる。
「は、はいっ?」
何か不備があっただろうかと身を竦ませるマルカに、カミラは笑いかけた。
「お疲れ。あとはそうだな……同じものを食べて、感想をくれたらもっといい」
「あそこは安くて……っ!」
香ってくる匂いに惹かれたリズリエルが早速屋台に向かっていく。
大きめにカットした肉の塊に黒胡椒と塩と香草をまぶしたものを焼いて、平べったい皮で巻いて食べるらしい。野菜やチーズ、魚等も並んでいたが、彼女はただ肉だけを見つめていた。
じーーーーーっ
「嬢ちゃん、そっちはまだ使う前の肉だぜ?」
見ていたのは店の奥にある生肉。狩りたて捌きたての新鮮なものではなく、熟成させた食べごろの肉。
「おっちゃん、まけろ」
本当は一番好きな生肉を諦め、彼女は肉の大盛りを注文。親父はおまけで肉を追加してくれたようだ。
「どんな味だ?」
カミラの疑問に一度首をかしげるリズリエル。
「ちょっとしかがじがじできないなっ。……んーと、締まってた肉だからうまいぞっ」
いつも通り感じたままに答えた後に言い直している。もっと相手に伝わるような表現も大事ですよと、彼女のメイド、アミグダ・ロサの教育が効果を発揮したのかもしれない。
「参考までに、リズリエルにとっての帝国料理はどんなものか教えてくれ」
「帝国のはとんつんしゅって感じだなっ。ちなみにうちの料理は多分辺境の方のだから、もっとざくざくどんどんって感じだっ」
擬音語ばかりだがカミラは頷いた。
「でもロサが作るから色々だ。あっちこっち旅してるから手に入る食材も変わるしなっ」
「それは羨ましい、食材が多彩なのは本当にいいことだ」
「まぁ実際味わってみるのが一番だな。カミラは何を食うんだ?」
「彼女とは別のものがいいな、感想も聞けたし。誰かおすすめはあるか?」
「さっきのチーズを使った物なんかどうだ、肉と合わせれば酒もうまいぞ」
せっかくだし呑まないかとビスマが誘う。
「あまり強くないんだ。これはそこそこいけるが、度の強いものは一杯が限度でな」
言いながらビールを酌み交わす。既に頬は赤かった。
「やはり、ビールとタバコは合うな、ビールに合う飯は当然必須だ、大人の料理ってやつを叩き込んでやるぜ」
「ビールなら帝国にもあるぞ、ヴルストとビール、魚と芋の揚げ物は定番だからな」
「それだそれ、正に大人の料理ってやつだな!」
わかってるじゃないか、と頷く渚。彼の煙草の煙も、それに合わせてゆらりと揺れた。
「カミラさん、リアルブルーには万能調味料があるって話、知ってる?」
「何だそれはっ?」
予想通り食いついたカミラに、まりおはかいつまんで話す。
「大繁盛している店で、隠し味に使うため、こっそり取り寄せて使っているっていう話があるくらいなんだよ」
リアルブルーでの話なんだけどね、と付け足すのは忘れない。
「入手出来たら、料理好きのカミラさんなら喜んでくれそうだなー、みたいに思ったんだけど……そう都合良く売ってたりしないよねー♪」
調味料の店をのぞいては見たが、それらしいものは見当たらなかった。だが彼女はひとつ確信があり、小さく続ける。
「……まぁサルヴァトーレ・ロッソになら確実に有るんだけどね」
「なるほどな。……だが、私はそれは買わない」
「どうして?」
欲しがるだろうと予想していた分、驚きが大きい。
「これでも料理修行をした身だ。絶対に美味しくなる便利なものを使うより、自分の力量で美味しくしたいと思う」
あくまでも私の持論だから、皆が同じというわけではないだろうけど、面白い話は感謝するよとまりおの頭を撫でた。
「今度、これを参考にお店でも出してみましょうかね~☆」
自らが経営する喫茶店の新作メニューとして、軽食を考えているスピカ。露店メニューを参考に形を変えたり、ドリンクとの食べ合わせを考えたり、アレンジを考えるのも楽しい。
「風の知識では、キュウリにハチミツを付けるとメロン味とか、プリンに醤油でウニとかですね」
スピカに食べ合わせの提案をしている風だが『知識』ということなので証拠がない、本当に美味しいのか?
「おなかに余裕があるなら、粉ものの店もおすすめしますよ」
「それは甘いのか辛いのか、説明もくれるか」
「後はお肉やお魚も見て回りたいですね~」
「魚の種類も、いくつかあったと思います」
「白身魚以外にあるのか?」
エイルズレトラの声に飛びついたと思えば、スピカとマルカの言葉にも食いつく。案内される分はすべて回ろうとするカミラに、少し予定を早めたほうがいいかもしれないとハンター達は視線を合わせた。予定はまだびっしり残っている。
●帰路
干したトマトや魚介がメインの日持ち食材、新たな包丁、貰い物のトランプと本等をいっぱいに抱えたカミラはまだ少し頬が赤い。
「その量、大丈夫なのか?」
バランスの悪そうな様子に思わず声をかけたビスマにも、大丈夫だ! と声だけが返ってくる。顔が見えない。
「今度お会いした時には、その食材で何を作ったのか教えてくださいね~☆」
「勿論そうしよう。……皆今日は楽しく過ごさせてもらった。またハンター達に依頼することもあるだろう、その時はよろしく頼む」
くるりと背を向け歩いていく、その歩みはしっかりしていた。
「実は結構、腕に自信がある方なのでしょうか」
「わかりにくい方ですが、そうみたいですね」
マルカの呟きに、エイルズレトラが肩をすくめた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/22 23:15:36 |
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相談卓 最上 風(ka0891) 人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/07/22 01:00:48 |