ゲスト
(ka0000)
ようこそ新米ハンター
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/09/14 19:00
- 完成日
- 2015/09/21 00:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ここがリゼリオ……」
少女カチャは大きな旅行鞄を手にリゼリオの町角に突っ立ち、きょろきょろしている。
彼女は辺境から来た。出身部族は帝国に対し融和的な立ち位置であり、彼女自身もまた帝国に対して否定的な考えは持っていない。むしろその文化に憧れている。部族の衣装ではなく帝国の衣装を身につけているのがその証しだ。
部族の習わしとして、手の甲に入れ墨が入っているが、当人はそのことになんとなくコンプレックスを感じている。進んだ地域ではこんなの誰もしていない、というわけで。
カチャが遠いリゼリオまで来た理由は、ハンター登録のためである。つい最近、その素質があると判明したのだ。
まだどのクラスを選ぶか決めてないけれど、登録だけは先にしておこう。各地にある支局でも受付は行っているが、どっちみち登録作業は本部で行う。ならそっちまで足を運んだ方が早い。――という理由の元に。
ついでに思う存分色んなところを見て回ろう。手初めにはサルバトーレ・ロッソ見物に行きたい。船には入れなくとも、港から見えるというし。
「ええと、ええと、まずは宿泊場所を決めないと。フロントに荷物を預けて、それから町に出てー」
うきうきと地に足がついていない状態のカチャ。誰が見てもおのぼりさんだと丸解りである。
そんな彼女に、声がかかった。
「ちょっと、そこのお嬢ちゃん」
長身の、金髪碧眼。タバコを口に咥え、ちょい悪な雰囲気。都会風なイケメンだ。
これはもしや……ナンパ?
思ってない胸膨らませるカチャは、続けて予想外の台詞を聞いた。
「あんたさ、カチャ・タホだろ。辺境南部にあるカホーク村出身の」
一度も面識がない相手にいきなり自分のことを言い当てられたら、誰だってびっくりする。もちろんカチャもそうだった。
「えっ!? あ、あの、な、何で私の事を知ってるんですか!?」
イケメンはポケットからきれいに折り畳んだ便箋を出し、広げる。
そこには彼女の母親の字で、以下のように記してあった。
『拝啓 アレックス・バンダー様。
アレックスぼっちゃま、お久しぶりでございます。お元気でしょうか。きっとそうであることと思います。
実は先頃私の娘に、あなたと同様ハンターの素質があることが分かりました。
本人はリゼリオへハンター登録に行くと言っております。
かわいい子には旅をさせよとの言葉もありますので、止める気は毛頭ないのですが、何分にも娘は調子に乗りやすいところがありますので、特に町に着いてからの事が心配ですので、ぼっちゃま、どうかその間だけ娘の面倒を見てもらえませんでしょうか?
後でお礼は致します。
娘の似顔絵を同封しておきます。
それではよろしくお願い致します。
かしこ ケチャ・タホ』
アレックスはふーっと白い煙を吐いて、だるそうに言う。
「そういうことだから滞在中の寝泊まり、うちでしなよ。その方が目が行き届くから。スペースなら十分あるから。俺一人暮らしだし」
一人暮らしの若い男のところへ寝泊まり。
いくらイケメンだからって、母の知り合いみたいだからといって、やすやす乗っていい話だろうか……なんてことを考えるカチャの荷物をアレックスは、こともなげに片手で取り上げた。
「あのね、無駄な警戒しなくていいから。俺ホモだから」
カチャの目が真ん丸になった。
「ホ……ホモっていうとあの、男の人が好きな男の人というあれですか?」
「そう」
「す……すごい……さすが都会は違いますね。私、そういう人がいるって話には聞いてましたけど、実物を見るのは初めてです」
「へえ、そう。じゃあいい勉強になるな」
「ええと、ええと、母とはどういう関係ですか?」
「昔うちの家で働いてたんだよ、あんたの母親。聞いたことないか? 屋敷勤めしてたって」
●
ハンターオフィスは今日も盛況。それぞれの理由でこの場所を訪れていたハンターらは、遊び人風の青年とお上りさん風の少女が一緒に入り口から入ってくるのを見た。
アレックスを知る人は「あいつは女に興味ないはずなのに、なんであんな子を連れているんだ?」と疑問を持つ。
アレックスを知らない人は「あの女の子、あんな遊び人風の男といるなんて、よからぬことに巻き込まれているのでは」という不審を覚える。
とりあえず事情を確かめてみようかと動き出す。
リプレイ本文
● ハンターオフィス
カチャとアレックスを目にした天竜寺 詩(ka0396)は、左右の眉を近づけた。
(あれ、あの女の子……もしかしてカチャ? 一緒にいるあの人、誰だろう)
いかに記憶を探ってみても心当たりがない。見るからに遊び人という雰囲気がちょっと気掛かりだ。
そう思った詩は、迷わず声をかけてみることにした。
「カチャ、お久しぶりー。あれからハナアルキは出てこない?」
「あ、これは詩さんお久しぶりです! おかげさまであれ以降ハナアルキは全く姿を見せなくなりまして、つつがなく収穫を迎えられそうで――」
「こっちの人はもしかして彼氏かな?」
「いっ、いいえ違いますよ。この人は――今そこで初めて会った母の昔の顔見知りの人でして」
カチャの説明が終わらないうちに、青年本人が口を出してくる。かったるそうに。
「……俺はアレックス・バンダー。あんたと同じくハンターだ」
「ハンター? 本当にー?」
「疑うならソサエティのハンター名簿見てくれよ。名前が乗ってるから――この子の母親からお守り頼まれてんだ。登録に同行してやってくれってね。なにしろ都会は危ないから」
言いながら彼は、きっちり折り畳まれた便せんを差し出してきた。読んでみろ、ということらしい。
詩は便せんを開き読んでみる。内容は確かにアレックスが言った通りのものだ。
でも、念には念を。
「カチャ、これ本当にお母さんの字?」
「ええ、そうです。間違いありません」
そんな会話が交わされているところへ、他のハンターたちも寄ってくる。
まずはGacrux(ka2726)。依頼を探していた最中らしく、戦装束で身を固めている。
「どうかされたのですか?」
便せんとにらめっこしていた詩は顔を上げ、手短な説明を行った。
「あ、えーとね、この子はカチャさんていうんだけど、新しくハンターに登録するんだってことで、辺境からはるばるリゼリオまで来たそうで……」
「ほう、新人ですか」
新人という単語を耳にしたディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)は、王者のように自信たっぷりな態度で、カチャの肩を叩く。
「ふむ、先輩としてアドバイスか? まあ大王たるボクをアドバイス役に選んだのは適任だと言えよう。何故ならボクは大王だからな。大王は何でも知っているのだ。何でも聞いていいぞ、カチャとやら」
「あの、失礼いたしますが、どちらさまでしょうか……?」
「む、これは失礼した。ボクの名は大王ディアドラ! この世界に光をもたらす者だ!」
アレックスがカチャに耳打ちする。
「ハンターってのは他の職業に比べて奇人変人率がやたら高いからな。そのこと覚えておいて損はないぞ」
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)は、低い位置から相槌を打った。
「確かに確かに。そういった輩も少なからずおるのう、この世界には」
榊 兵庫(ka0010)はカチャに、分厚い手を差し出した。
「……新米のハンターか。俺は榊 兵庫と言う。見ての通りの槍使いだな。宜しく頼むな」
「こ、これはこちらこそ、よろしくお願いします」
あせあせ握手を交わしたカチャは、レーヴェの次の質問に、ぐっと詰まる。
「で、ハンターになるにあたって職は決まっておるかの?」
そう、ハンターと一言で言っても内実は、闇狩人、疾影士、猟撃士、魔術師、聖導士、機導士、霊闘士、舞刀士――時々新しいクラスも創設されるが――という8つのクラスに分かれている。
それぞれ長所と短所があり、2つのクラスを掛け持ちすることは出来ない。
「……ええと……そこはまだはっきりとは……」
ばつ悪そうに言う彼女に、レーヴェは明るく笑ってみせた。
「まだ決まってないなら私らの話聞いて参考にしてくれたらええよ。とりあえずはじゃの、オフィスとかちゃんと見て回るのいいと思うのじゃ。後はリゼリオ職員にご挨拶。端末とはいえ常駐するパルム達に世話になることもあろうしな。善は急げじゃ」
「わ、あ、あの、ちょっと……」
「あ、お主の案内も依頼で出来ておるよ。ほらこれ」
「ええっ!? なんでこんなものが貼り出されて!?」
小柄なドワーフに手を引かれて行くカチャを、ディアドラが追いかける。
「待った待った、それよりリゼリオ観光が先であろう! 市場の活況を味わわずして変えることはまかりならん!」
Gacruxはアレックスに視線を向けた。
「ところでその大荷物は?」
「ああ、これ? カチャのだよ。とりあえず俺のアパートまでは持っていってやろうかと思ってね。こっちにいる間は泊めることになるし」
詩は怪訝な顔をする。彼女の頭に浮かんでいる思いを読み取ったアレックスは、続けて言う。
「別に何も起こりゃしねえよ。俺ホモなんだから」
特別驚きを示さないGacrux。
「なるほど、そうなんですか」
即座に質問する詩。
「受け? 攻め?」
「時と場合によるな」
「へえ、リバーシブルなんだ」
「まあな。気分次第だ」
アレックスとやら随分オープンな性格なんだなと、傍で聞いている兵庫は思った。
それにしても詩は遠慮というものが全くない。グイグイ聞きにくそうなことを聞いている。
「私こっちでオカマには会った事あるけど、オカマとホモって違うのかな? ちなみに私のお兄ちゃんは女形なんだ」
「んー、そうだな。やってる事は基本一緒だと思うんだが……オレ個人の考えから行くと、男として男が好きなのがホモで、女として男が好きなのがオカマって感じか。女形は職業だからまた別。まあ、こっち方面に造詣があることも多いけど。あんたの兄貴とやらはその点どうだ?」
「えっ……えーと……どうなんだろ……聞いたことなかったなあ、そういうこと……」
● リゼリオ市街
リゼリオは水運都市。島々を結ぶ橋と渡し舟が風景に興を添えている。各所からハンターが集まってくるだけに道行く人種もさまざま。カチャはそわそわしっぱなし。
オフィスを一通り回った後、先輩たちとギルドショップへ行く運びになったが、興味を引くものが多すぎてさいさい立ち止まってしまう。
そんな彼女をディアドラは、流行のブティツクに案内した。
女性陣は皆、そこで大いに楽しい時間を過ごす。
「わー、見て見て、この帽子可愛いっ」
「これ店員、もっと明るい色はないか?」
「ふーん、これは私にはちと胸がきついの」
冷やかしが終わるまで男衆は、大人しく待つ。
そうこうしている内にカチャは、これから先のことが気掛かりになってきた。
先達たちにアドバイスを請う。
「ハンターになるに当たって、どういう事が大事でしょうか。私、家族にも知り合いにもこの職業の人がいませんから、そのあたりのこと、よく分からなくて」
アレックスは知らん顔してタバコを吹かしているばかり。
Gacruxは、ふむ、と腕を組む。
「アドバイス……ねぇ。特に俺から話す事も無いですが……。あえて言うならば、ハンターといえど、迂闊に信用するな、というところでしょうか。現役のハンターは副業を持つ者も多い。ハンターを隠れ蓑に、裏家業を営んでいた……なんて事も往々にしてありえます。ハンターは経歴不問ですからね。あんたの様な可愛らしいお嬢さんは、充分にお気を付け下さい」
兵庫はいかにも軍人らしい、実際的な助言を行う。
「戦闘では一人で突出するのは勧めない。ある程度のベテランになれば短期間で一人で戦う事もあるが、基本は必ず複数で戦う事を肝に銘じておくことだ。前衛後衛でそれぞれ果たすべき役割が――」
彼の意見に全面賛成する詩は、何度も深々と頷いた。
「ハンターとしての心得かぁ。うん、勇気と無謀を間違えないでねって事かな。無茶な事でもちゃんと考えて行動するならまだしも、何も考えないで行動するのはただの無謀だよ。仲間に迷惑をかけるだけだからね。兵庫さんが今言ったように、戦闘はチームプレーでやるものだからね」
詩の言葉が終わるや否や、何か言いたくてうずうずしていたディアドラが口を開く。
「まず第一義にハンターとして何を成し遂げたいのか? これをまずしっかりと確認しておきたいところだな。もちろんなってから考えるのも構わんだろうが、目標があった方が何かと頑張ることができるともいうしな。そしてもう一つは仲間を信頼するという事だな」
話している間に彼女の胸は、どんどん反ってくる。
「新人1人ではゴブリンにも負ける可能性があるが、8人もいれば上位種にだって勝つことができるだろう。それを成し遂げるためにはやはり仲間一人一人を信頼し、皆が一人のために、一人が皆のために行動することが、ハンターとして身を立てる上で一番大事なことだな」
しょっぱなから釘を刺されっぱなしで気後れしたらしいカチャに、レーヴェはにやりと笑いかけた。
「どんなハンターになりたい? 戦いに明け暮れるもよし、日常を守る為に奔走するもよし。お主が立っておる分岐点は様々な道が示されておる――お主の自由じゃ。好きに決めたらいい」
● ギルドショップ
『これから冒険に出掛けるあなた、当店だけで装備の全てが揃います! ハンターソサエティ公認優良店。武器、防具、装身具、食料品、服、ペット……品揃えはクリムゾン1。年中無休24時間営業。大形商品は自宅までお届け可能。何かお困りのことなどございましたら、店員に遠慮なくお声をおかけくださいませ』
「24時間営業だなんて……し、信じられない。うちの田舎は飲み屋でさえ8時に営業終了するのに……すごい! やっぱ都会ってすごい!」
大きな感銘を受けたカチャは、先達たちと一緒に、ギルドショップへ足を踏み入れた。
無数に陳列してある刀剣、鎧、銃。マテリアルを高めるための装身具、衣類もあれば、携帯食料などもある。
「……ええと、どこから見て回ったらいいんでしょう」
兵庫は迷いなく、防具が並んでいるコーナーを指さした。
「まず何よりきちんとした防具を身につける事を心掛けた方がいい。戦う以上、例え後衛職とはいえ負傷の危険はつきまとう。自分の身を守る最後の砦が防具だ。なるべく丈夫なものをつけた方が良いだろう」
どう見てもこれまで戦闘訓練など受けたことが無さそうなので、手軽に着込めるチョッキ型を勧める。さてそこからは。
「武器については好みで選べばいい。あれこれ浮気するより一つの武器を使い続けて習熟した方がより早く戦いになれるからな」
武器。武器を決めるなら自分がどういう戦い方をしたいのか、はっきりさせておかなくてはならないが、カチャ本人は、まだ自分が何をしたいのか決められない。
「何を選んだらいいでしょう」
困り顔の彼女にGacruxは、軽く肩をすくめた。
「職ですか。ならば、あんたの武器を基準に選んでみては? 銃ならば猟撃士など、ね。俺個人の立場から言わせてもらえれば、あんたはちょいと、直接戦闘に向いてない性格みたいだ。後方支援を受け持つ方がいいかもしれない。魔法を扱うクラス――魔術師か聖導士なんてのが、いいかもな」
レーヴェは背伸びをし銃の棚を物色する。目新しい商品が出ていないかなと。
「猟撃士はの、弓と銃を扱い、後方からの攻撃支援を主とする。前衛の派手さはない、ストイックに確実な仕事が求められるかの。我等後衛は背中を任せられておるからの。銃器の扱いや弓の腕に覚えあるなら此方がよいかの。個人的なやつだが誰かの役一番実感できるのは聖導士じゃないかなーとかは思うがな……」
当のクルセイダーである詩は、レーヴェに続き熱弁を振るう。
「攻撃魔法もあるけど、主に仲間の防御力や抵抗力をあげる補助系魔法や、怪我や状態異常の治療魔法を行使するスキルだね。縁の下の力持ち的なクラスだから、派手に目立ちたいって場合は合わないかもしれないけどね」
考え込みつつ武器を眺めていたカチャは、急にある一点で目を留め、声を上げた。
「あっ、これいい! すごくいいです!」
彼女が駆け寄った先にあったのは、銀色の杖だった。魔術師、あるいは聖導士用の武器であろう。蔦と花が彫り込まれており、見るからに瀟洒だ。
が、大きい。カチャの身長分は確実にある。
兵庫は咳払いした。
「ただ気をつけなくてはいけないのは場所によっては使い辛い武器もあると言うことだ。例えば洞窟など高さに限りがある場所だと大剣を振り回すのは難儀するし、な。だから、さっきの言葉とやや矛盾するが、必要に応じて使い分けることも大切だと覚えておいてくれ」
遠回しにそれは止めたほうがいいのではという意味の言葉であったが、残念ながらカチャはあまり聞いていない。うっとり杖を眺めている。
「私、クルセイダーになろうかな」
それを聞いたレーヴェは、勢いつけて彼女の背中を叩く。
「ようこそ、同士諸君」
兵庫は説得を諦めた、ため息交じりにこう述べた。
「武器防具以外にも照明器具とか通信器具とか仕事の上で必要になるものがある。この辺は依頼を受ける際に先輩にアドバイスを貰うと良いだろうな」
値札を確かめるカチャに、詩は、そうだ、と思い出したように言った。
「カチャ、サルヴァトーレ・ロッソを見に行きたかったんだよね」
「はい。港の一番近いところから見られたらなって」
「あのね、私LH044からこの世界に来る時ロッソに乗ってきてね、IDカードも持ってるんだ。それを見せたら、皆も入れてもらえるかもしれない」
「本当ですか!」
期待に胸膨らませるカチャ。
それまで一歩引いた冷静さを維持していたGacruxも、その話に食いついた。
「ロッソですか! 良いですね。俺も是非観光に同行させて下さい。一度、あの船の中を拝見したかったのですよ――そういえば、今度、ロッソの祭りが開催されるらしいですね?」
● 艦
祭りが行われようとしていることもあり、ハンターたちは、ロッソへの出入りを許された。無論、先方が許可したエリアのみであるが。
レーヴェにとっては、見るものすべてが興味の的。展示されているCAMを弄繰り回している。
関係者が注意しに来ても話を長引かせ場に居座ろうと試みる。
「うんうんうん以前は仲間が世話かけた。ドワーフじゃしあっちの機械技術は垂涎モノでな……」
Gacruxは戦艦の巨大さに感じ入り、感嘆しきり。
「我々のいう船の概念ではないですね……これは、動く都市です。そう思いませんか?」
話しかけられたアレックスは、煙をくゆらせつつ呟いた。
「兵隊と大砲つきの、な」
カチャ、ディアドラ、詩、兵庫は、設置してあるモニターに見入っている。その中では、ゾンネンシュトラール皇帝、グラズヘイム王国王女、同盟軍元帥、オイマト族長、サルヴァトーレ・ロッソ艦長、エトファリカ連邦国の帝、そしてハンターズ・ソサエティ総長が演説を行っていた。
「……誰がクリムゾン連合軍の長になるんでしょう」
「うーん、まだわからぬな」
「皆甲乙付けがたいよね」
「そうだな。よくも悪しくも」
カチャとアレックスを目にした天竜寺 詩(ka0396)は、左右の眉を近づけた。
(あれ、あの女の子……もしかしてカチャ? 一緒にいるあの人、誰だろう)
いかに記憶を探ってみても心当たりがない。見るからに遊び人という雰囲気がちょっと気掛かりだ。
そう思った詩は、迷わず声をかけてみることにした。
「カチャ、お久しぶりー。あれからハナアルキは出てこない?」
「あ、これは詩さんお久しぶりです! おかげさまであれ以降ハナアルキは全く姿を見せなくなりまして、つつがなく収穫を迎えられそうで――」
「こっちの人はもしかして彼氏かな?」
「いっ、いいえ違いますよ。この人は――今そこで初めて会った母の昔の顔見知りの人でして」
カチャの説明が終わらないうちに、青年本人が口を出してくる。かったるそうに。
「……俺はアレックス・バンダー。あんたと同じくハンターだ」
「ハンター? 本当にー?」
「疑うならソサエティのハンター名簿見てくれよ。名前が乗ってるから――この子の母親からお守り頼まれてんだ。登録に同行してやってくれってね。なにしろ都会は危ないから」
言いながら彼は、きっちり折り畳まれた便せんを差し出してきた。読んでみろ、ということらしい。
詩は便せんを開き読んでみる。内容は確かにアレックスが言った通りのものだ。
でも、念には念を。
「カチャ、これ本当にお母さんの字?」
「ええ、そうです。間違いありません」
そんな会話が交わされているところへ、他のハンターたちも寄ってくる。
まずはGacrux(ka2726)。依頼を探していた最中らしく、戦装束で身を固めている。
「どうかされたのですか?」
便せんとにらめっこしていた詩は顔を上げ、手短な説明を行った。
「あ、えーとね、この子はカチャさんていうんだけど、新しくハンターに登録するんだってことで、辺境からはるばるリゼリオまで来たそうで……」
「ほう、新人ですか」
新人という単語を耳にしたディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)は、王者のように自信たっぷりな態度で、カチャの肩を叩く。
「ふむ、先輩としてアドバイスか? まあ大王たるボクをアドバイス役に選んだのは適任だと言えよう。何故ならボクは大王だからな。大王は何でも知っているのだ。何でも聞いていいぞ、カチャとやら」
「あの、失礼いたしますが、どちらさまでしょうか……?」
「む、これは失礼した。ボクの名は大王ディアドラ! この世界に光をもたらす者だ!」
アレックスがカチャに耳打ちする。
「ハンターってのは他の職業に比べて奇人変人率がやたら高いからな。そのこと覚えておいて損はないぞ」
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)は、低い位置から相槌を打った。
「確かに確かに。そういった輩も少なからずおるのう、この世界には」
榊 兵庫(ka0010)はカチャに、分厚い手を差し出した。
「……新米のハンターか。俺は榊 兵庫と言う。見ての通りの槍使いだな。宜しく頼むな」
「こ、これはこちらこそ、よろしくお願いします」
あせあせ握手を交わしたカチャは、レーヴェの次の質問に、ぐっと詰まる。
「で、ハンターになるにあたって職は決まっておるかの?」
そう、ハンターと一言で言っても内実は、闇狩人、疾影士、猟撃士、魔術師、聖導士、機導士、霊闘士、舞刀士――時々新しいクラスも創設されるが――という8つのクラスに分かれている。
それぞれ長所と短所があり、2つのクラスを掛け持ちすることは出来ない。
「……ええと……そこはまだはっきりとは……」
ばつ悪そうに言う彼女に、レーヴェは明るく笑ってみせた。
「まだ決まってないなら私らの話聞いて参考にしてくれたらええよ。とりあえずはじゃの、オフィスとかちゃんと見て回るのいいと思うのじゃ。後はリゼリオ職員にご挨拶。端末とはいえ常駐するパルム達に世話になることもあろうしな。善は急げじゃ」
「わ、あ、あの、ちょっと……」
「あ、お主の案内も依頼で出来ておるよ。ほらこれ」
「ええっ!? なんでこんなものが貼り出されて!?」
小柄なドワーフに手を引かれて行くカチャを、ディアドラが追いかける。
「待った待った、それよりリゼリオ観光が先であろう! 市場の活況を味わわずして変えることはまかりならん!」
Gacruxはアレックスに視線を向けた。
「ところでその大荷物は?」
「ああ、これ? カチャのだよ。とりあえず俺のアパートまでは持っていってやろうかと思ってね。こっちにいる間は泊めることになるし」
詩は怪訝な顔をする。彼女の頭に浮かんでいる思いを読み取ったアレックスは、続けて言う。
「別に何も起こりゃしねえよ。俺ホモなんだから」
特別驚きを示さないGacrux。
「なるほど、そうなんですか」
即座に質問する詩。
「受け? 攻め?」
「時と場合によるな」
「へえ、リバーシブルなんだ」
「まあな。気分次第だ」
アレックスとやら随分オープンな性格なんだなと、傍で聞いている兵庫は思った。
それにしても詩は遠慮というものが全くない。グイグイ聞きにくそうなことを聞いている。
「私こっちでオカマには会った事あるけど、オカマとホモって違うのかな? ちなみに私のお兄ちゃんは女形なんだ」
「んー、そうだな。やってる事は基本一緒だと思うんだが……オレ個人の考えから行くと、男として男が好きなのがホモで、女として男が好きなのがオカマって感じか。女形は職業だからまた別。まあ、こっち方面に造詣があることも多いけど。あんたの兄貴とやらはその点どうだ?」
「えっ……えーと……どうなんだろ……聞いたことなかったなあ、そういうこと……」
● リゼリオ市街
リゼリオは水運都市。島々を結ぶ橋と渡し舟が風景に興を添えている。各所からハンターが集まってくるだけに道行く人種もさまざま。カチャはそわそわしっぱなし。
オフィスを一通り回った後、先輩たちとギルドショップへ行く運びになったが、興味を引くものが多すぎてさいさい立ち止まってしまう。
そんな彼女をディアドラは、流行のブティツクに案内した。
女性陣は皆、そこで大いに楽しい時間を過ごす。
「わー、見て見て、この帽子可愛いっ」
「これ店員、もっと明るい色はないか?」
「ふーん、これは私にはちと胸がきついの」
冷やかしが終わるまで男衆は、大人しく待つ。
そうこうしている内にカチャは、これから先のことが気掛かりになってきた。
先達たちにアドバイスを請う。
「ハンターになるに当たって、どういう事が大事でしょうか。私、家族にも知り合いにもこの職業の人がいませんから、そのあたりのこと、よく分からなくて」
アレックスは知らん顔してタバコを吹かしているばかり。
Gacruxは、ふむ、と腕を組む。
「アドバイス……ねぇ。特に俺から話す事も無いですが……。あえて言うならば、ハンターといえど、迂闊に信用するな、というところでしょうか。現役のハンターは副業を持つ者も多い。ハンターを隠れ蓑に、裏家業を営んでいた……なんて事も往々にしてありえます。ハンターは経歴不問ですからね。あんたの様な可愛らしいお嬢さんは、充分にお気を付け下さい」
兵庫はいかにも軍人らしい、実際的な助言を行う。
「戦闘では一人で突出するのは勧めない。ある程度のベテランになれば短期間で一人で戦う事もあるが、基本は必ず複数で戦う事を肝に銘じておくことだ。前衛後衛でそれぞれ果たすべき役割が――」
彼の意見に全面賛成する詩は、何度も深々と頷いた。
「ハンターとしての心得かぁ。うん、勇気と無謀を間違えないでねって事かな。無茶な事でもちゃんと考えて行動するならまだしも、何も考えないで行動するのはただの無謀だよ。仲間に迷惑をかけるだけだからね。兵庫さんが今言ったように、戦闘はチームプレーでやるものだからね」
詩の言葉が終わるや否や、何か言いたくてうずうずしていたディアドラが口を開く。
「まず第一義にハンターとして何を成し遂げたいのか? これをまずしっかりと確認しておきたいところだな。もちろんなってから考えるのも構わんだろうが、目標があった方が何かと頑張ることができるともいうしな。そしてもう一つは仲間を信頼するという事だな」
話している間に彼女の胸は、どんどん反ってくる。
「新人1人ではゴブリンにも負ける可能性があるが、8人もいれば上位種にだって勝つことができるだろう。それを成し遂げるためにはやはり仲間一人一人を信頼し、皆が一人のために、一人が皆のために行動することが、ハンターとして身を立てる上で一番大事なことだな」
しょっぱなから釘を刺されっぱなしで気後れしたらしいカチャに、レーヴェはにやりと笑いかけた。
「どんなハンターになりたい? 戦いに明け暮れるもよし、日常を守る為に奔走するもよし。お主が立っておる分岐点は様々な道が示されておる――お主の自由じゃ。好きに決めたらいい」
● ギルドショップ
『これから冒険に出掛けるあなた、当店だけで装備の全てが揃います! ハンターソサエティ公認優良店。武器、防具、装身具、食料品、服、ペット……品揃えはクリムゾン1。年中無休24時間営業。大形商品は自宅までお届け可能。何かお困りのことなどございましたら、店員に遠慮なくお声をおかけくださいませ』
「24時間営業だなんて……し、信じられない。うちの田舎は飲み屋でさえ8時に営業終了するのに……すごい! やっぱ都会ってすごい!」
大きな感銘を受けたカチャは、先達たちと一緒に、ギルドショップへ足を踏み入れた。
無数に陳列してある刀剣、鎧、銃。マテリアルを高めるための装身具、衣類もあれば、携帯食料などもある。
「……ええと、どこから見て回ったらいいんでしょう」
兵庫は迷いなく、防具が並んでいるコーナーを指さした。
「まず何よりきちんとした防具を身につける事を心掛けた方がいい。戦う以上、例え後衛職とはいえ負傷の危険はつきまとう。自分の身を守る最後の砦が防具だ。なるべく丈夫なものをつけた方が良いだろう」
どう見てもこれまで戦闘訓練など受けたことが無さそうなので、手軽に着込めるチョッキ型を勧める。さてそこからは。
「武器については好みで選べばいい。あれこれ浮気するより一つの武器を使い続けて習熟した方がより早く戦いになれるからな」
武器。武器を決めるなら自分がどういう戦い方をしたいのか、はっきりさせておかなくてはならないが、カチャ本人は、まだ自分が何をしたいのか決められない。
「何を選んだらいいでしょう」
困り顔の彼女にGacruxは、軽く肩をすくめた。
「職ですか。ならば、あんたの武器を基準に選んでみては? 銃ならば猟撃士など、ね。俺個人の立場から言わせてもらえれば、あんたはちょいと、直接戦闘に向いてない性格みたいだ。後方支援を受け持つ方がいいかもしれない。魔法を扱うクラス――魔術師か聖導士なんてのが、いいかもな」
レーヴェは背伸びをし銃の棚を物色する。目新しい商品が出ていないかなと。
「猟撃士はの、弓と銃を扱い、後方からの攻撃支援を主とする。前衛の派手さはない、ストイックに確実な仕事が求められるかの。我等後衛は背中を任せられておるからの。銃器の扱いや弓の腕に覚えあるなら此方がよいかの。個人的なやつだが誰かの役一番実感できるのは聖導士じゃないかなーとかは思うがな……」
当のクルセイダーである詩は、レーヴェに続き熱弁を振るう。
「攻撃魔法もあるけど、主に仲間の防御力や抵抗力をあげる補助系魔法や、怪我や状態異常の治療魔法を行使するスキルだね。縁の下の力持ち的なクラスだから、派手に目立ちたいって場合は合わないかもしれないけどね」
考え込みつつ武器を眺めていたカチャは、急にある一点で目を留め、声を上げた。
「あっ、これいい! すごくいいです!」
彼女が駆け寄った先にあったのは、銀色の杖だった。魔術師、あるいは聖導士用の武器であろう。蔦と花が彫り込まれており、見るからに瀟洒だ。
が、大きい。カチャの身長分は確実にある。
兵庫は咳払いした。
「ただ気をつけなくてはいけないのは場所によっては使い辛い武器もあると言うことだ。例えば洞窟など高さに限りがある場所だと大剣を振り回すのは難儀するし、な。だから、さっきの言葉とやや矛盾するが、必要に応じて使い分けることも大切だと覚えておいてくれ」
遠回しにそれは止めたほうがいいのではという意味の言葉であったが、残念ながらカチャはあまり聞いていない。うっとり杖を眺めている。
「私、クルセイダーになろうかな」
それを聞いたレーヴェは、勢いつけて彼女の背中を叩く。
「ようこそ、同士諸君」
兵庫は説得を諦めた、ため息交じりにこう述べた。
「武器防具以外にも照明器具とか通信器具とか仕事の上で必要になるものがある。この辺は依頼を受ける際に先輩にアドバイスを貰うと良いだろうな」
値札を確かめるカチャに、詩は、そうだ、と思い出したように言った。
「カチャ、サルヴァトーレ・ロッソを見に行きたかったんだよね」
「はい。港の一番近いところから見られたらなって」
「あのね、私LH044からこの世界に来る時ロッソに乗ってきてね、IDカードも持ってるんだ。それを見せたら、皆も入れてもらえるかもしれない」
「本当ですか!」
期待に胸膨らませるカチャ。
それまで一歩引いた冷静さを維持していたGacruxも、その話に食いついた。
「ロッソですか! 良いですね。俺も是非観光に同行させて下さい。一度、あの船の中を拝見したかったのですよ――そういえば、今度、ロッソの祭りが開催されるらしいですね?」
● 艦
祭りが行われようとしていることもあり、ハンターたちは、ロッソへの出入りを許された。無論、先方が許可したエリアのみであるが。
レーヴェにとっては、見るものすべてが興味の的。展示されているCAMを弄繰り回している。
関係者が注意しに来ても話を長引かせ場に居座ろうと試みる。
「うんうんうん以前は仲間が世話かけた。ドワーフじゃしあっちの機械技術は垂涎モノでな……」
Gacruxは戦艦の巨大さに感じ入り、感嘆しきり。
「我々のいう船の概念ではないですね……これは、動く都市です。そう思いませんか?」
話しかけられたアレックスは、煙をくゆらせつつ呟いた。
「兵隊と大砲つきの、な」
カチャ、ディアドラ、詩、兵庫は、設置してあるモニターに見入っている。その中では、ゾンネンシュトラール皇帝、グラズヘイム王国王女、同盟軍元帥、オイマト族長、サルヴァトーレ・ロッソ艦長、エトファリカ連邦国の帝、そしてハンターズ・ソサエティ総長が演説を行っていた。
「……誰がクリムゾン連合軍の長になるんでしょう」
「うーん、まだわからぬな」
「皆甲乙付けがたいよね」
「そうだな。よくも悪しくも」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/13 07:47:06 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/09/13 12:57:07 |