• 東征

【東征】梓弓射る魂、救いあらば

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/09/10 09:00
完成日
2015/09/14 21:34

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●屍夢
 夢の中の幼い大江紅葉は、妹・若葉を背負って歩いていた。妹は眠ってしまい重くなってくる。
『オガツ……一緒に来ればよかったのに』
 鬼は異端。
『いい人なのにね』
 怪我をしていたのかもしれない。
 不意に心配になった。血のにおいを嗅いでいたかもしれない。深紅の背中を見たかもしれない。
 ――記憶を掘り返しても真実は出てこないのよ?
 現実の紅葉は告げた。
 不意に風景は変わる。振り返る道には屍が広がり、背中には死んだ若葉いる。

 屍は笑う。
『姉上も一緒に行こう』

 ――私は弱い。私も歪虚と契約すれば強くなれるのかしら?
 先日、思わず口を突いた言葉。誰にも聞こえていない言葉。
 それがむなしい考えだと、陰陽寮にいる紅葉は知っている。

●境界
「松永殿」
 松永光頼は紅葉を見てドキリとした。
 噂には「黙っていれば美女」という物もあったが、美なんて人それぞれだし、外見ばかり気にしてもと現実的というか冷めているところはあった。が、しかし――であった。
 紅葉はやつれてはいるが、ふっくらとした顔立ちに戻り、血色も良く、柔らかい笑みが浮かべる。
「どうしたんですか?」
 困惑している光頼を心配して、首をかしげて覗き込んでくる。余計に緊張が走る。
「い、いやその……それより、大江殿、何か用があったのでは?」
「あ、そうでした。あなたは私を殺すためにいるんでしょ? これから鬼の歪虚と接触します」
「え? いえ、別に斬ることは主ではなく……え?」
「放っておいても死にますよ?」
 あっけらかんとした言葉に光頼が理解するのに時間がかかった。
「い、いえいえ、待ってください。どういう意味です?」
「情報をもらえました」
 鬼が政府側に付いたため情報が集まってきたと告げる。
「オガツは倒します。もちろん、私は何もできません。せいぜい、ハンターの皆さんへのおとりでしょう」
「どういう……」
 光頼の口の中は渇いていき、声を出すのが難しくなる。
「以前会ったとき、私と妹を恨んでいるようなことを言っていました。だから、おとりになります」
「……そ、そんな……」
 光頼は動揺し、紅葉の繊手を掴んだ。
「……?」
 驚いた紅葉は足を止める。
 光頼は自分がとった行動が予想外で、顔を真っ赤にして手を離した。
「申し訳ない……その大江殿があまりにも……」
 儚く見えたので、とはいえず喉がひり付く。
「迷子になりそうで」
「……くすっ。大丈夫ですよ、さすがに天ノ都でそんなことになりませんから」
「そうですね」
 ははと笑う光頼の手を紅葉は握った。
「こうすれば安心ですか?」
「……い、いやその……」
 紅葉の手には洗っても落ちなかった墨がこびりついている。
「大江殿……何をするつもりなのですか?」
「……何をって?」
 術者のことは良くわからない。手の事も尋ねたところで「前から」と言われそうであった。
「いえ」
 紅葉を喪いたくないならば、手を離してはいけないと光頼は思った。

●依頼
「エトファリカの大江紅葉様よりのご依頼です」
 ハンターオフィスに掲げられた依頼に興味を持った人に、職員は情報を話す。
「憤怒の歪虚である鬼のオガツを討つ手伝いだそうです。なお、おとりとして大江さまが前に立つそうですが……」
 職員は言葉を濁した。促すと眉をひそめる。
「大江さま、前に出るのはいいのですが、魔術師タイプで多分一撃で死ぬんじゃないでしょうか……相手の強さは不明ですが記録からすると強いようですし……」
 職員は首をひねる。鬼と言えば膂力は強いのが多いから不安が募る。
「どうもこの歪虚は大江様と因縁があるそうです。この歪虚が死ぬ前に会ったのが大江様らしく、大江様を恨んで殺そうとしているとのこと。確かに、大江様が前に立てば、ハンターの皆さんはフリーになりますが、範囲攻撃してきますので……どうなんでしょう?」
 職員は作戦を決めるのはみなさんですと告げた。

リプレイ本文

●真意は
 ハンターたちには疑念が一つあった。歪虚に対して紅葉がおとりになると言うが、意義があるのだろうかということだ。作戦の妨げになるなら、紅葉が隠していることを知りたかった。
「さて、そろそろ現場ですが……」
 麗奈 三春(ka4744)は馬が止まったのを見計らって口を開いた。
「以前に遭った鬼の歪虚と同一という確信はあるのですか?」
 アメリア・フォーサイス(ka4111)は疑問を口にする。
「目撃情報からそう判断しました。もし、異なっていても歪虚は倒すべきです」
 紅葉の言葉にハンターも同意した。
「強きモノとの戦いこそが、我が生きがいよ。鬼の歪虚が紅葉と因縁があろうがなかろうが、戦うために来たのだ」
 バルバロス(ka2119)は早く作戦を決めるなら決めろと促す。
「敵は強いそうですが、紅葉さんがおとりを買うことで勝算があるのですか?」
 ミオレスカ(ka3496)は心配そうに尋ねる。以前紅葉に同行した時、一般人よりましだが、ハンターとしては場数が足りないという印象だった。
「オガツなら、私を殺そうとします。そこに隙はできます」
 紅葉は確信を持っているようだが具体性に欠ける。
「倒すつもりで死ぬつもり……相討ち覚悟というふうでもない……」
 メリエ・フリョーシカ(ka1991)は眉をひそめてつぶやく。
「ああ、それは却下だ。おとりでもたかが人間一人で壁になれる相手ではないだろう?」
 龍崎・カズマ(ka0178)は直接敵を知らないが、聞いた話で推測はできた。
「そうだ。意図が分からねぇ案に従えねぇな」
 瀬崎・統夜(ka5046)が意見却下の追い打ちをかける。
「何かしら足止めする方法があると言うならいざ知らず、無謀もいいところだ」
 ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が紅葉の提案を流し切った。
「こっちだって命がけなんだ。作戦を乱すなら支障が出る、依頼主でも付いてくるな」
 統夜の言葉は厳しいが、現実だった。
「で、でも」
「大江殿、雇ったのですから、専門家に任せる方が良いと思いますが」
 おろおろする紅葉を光頼は安堵した声でなだめる。
(俺は監視であって護衛ではない……仕事なのだ逸脱はしまい)
 光頼は唇を一文字に結んだ。
 ハンターは砦の大まかな見取り図や紅葉が得ている情報を元に考える。砦と言っても遮蔽物があって、多少の雨露をしのげる建物が残るだけらしい。
 力に惹かれた雑魔が集まっている場合も含め、大きく二手に分かれることになる。雑魔を殲滅しつつ鬼の歪虚に近づく者と歪虚が動かないように牽制する者たち。
「紅葉さん、ある程度離れているところからでも攻撃できるんですよね」
「それとおとりとしても種類がありますよ、声で誘導して戦う者に隙を見せるようにするとか」
 ミオレスカと三春が現実的なことを告げる。
「本当におとりを申し出た理由は、先ほどの事だけですか? 何かあるなら教えて欲しいですが?」
 アメリアが紅葉に尋ねる、遠回しで駄目なら正面から。これで言わなければ仕方がないので、紅葉の動きに注意しつつ敵と戦うこととなる。
 紅葉は真っ直ぐな視線に怯える。正直なところを言うべきか否か。
 これまでのハンターたちの言動から紅葉がここ数週間忘れていた物を思い出していた。他人を意識する心、いや、紅葉も意識はしていたが、読み取る力がなくなっていたという方が正しいかもしれない。
(この人たちを雇ったのは私。私はこの人たちの命を預かっている。一方でこの人たちは私の命を……)
 紅葉は心を決めた。
「……方々に頼み、特殊な物を作りました」
 札に念を込めたもので、一瞬敵の行動を封じ込めるという。
「まだ隠しておるな、大王であるこのボクの目はごまかせないぞ」
 にこやかに自信満々にディアドラが言う。そんなにおいしい術はないと考えるから。
「術の効果範囲が近く……私もその間は動けません」
「話になりませんよ? 歪虚が紅葉さんを狙うなら、それを踏まえて戦えばいいわけです」
 紅葉にメリエはきっぱりと言いながらも笑みを見せた。無理に札を使う必要はないし、いざという切り札にはなるはずだ。
 うなだれた紅葉は何か言いたげに顔を上げるが、泣き出しそうな顔で「すみません」とつぶやいた。
 それを光頼が安堵の表情で見ている。これで彼女が無謀な行動はとらないだろう、と。
「無謀な飛び込みはしないでくださいね。それと光頼さんが止めてくださいね」
 ミオレスカは紅葉にくぎを刺しつつ、光頼を見る。一番近くにいるのは光頼だから当然の頼みごとだ。
「え、あ……」
 煮え切らない返答の光頼にカズマは苛立ちと共に彼を掴んで少し離れたところに行く。仲間に聞かれてもいいが、光頼が正直に動かないかもしれないリスクがある。
「てめぇで説得すればいいだろうが」
「な、何を」
 光頼は紅葉の監視役だとは同道者はそれとなく聞いている。紅葉が以前行動で、敵に寝返るのではと疑ったほんの一部の人達が安心するために作った役割だ。光頼の人柄は同道していれば分かる、誠実で公正、それに情に篤い、隠しているが。
「言い訳にしか聞こえねぇんだよ、監視だからって。心配するくらいならてめぇ自身で守る努力しやがれ」
「うっ」
 カズマは光頼に言いたいことは言ったので仲間の元に戻る。
(葛藤が外に見えている状態とは……情けないな……)
 光頼は何とも言えない顔で戻り、不思議そうな顔をしている紅葉を見て気を引き締めた。
「話が終わったのなら、とっとと行くぞ」
 バルバロスは促した。

●突撃
 かつての塀だったところ、門だったところを一行は通る。
 中央には建物の残骸。ところどころに柱と屋根があるが、雨露しのぐのは気持ち程度かもしれない。
 鬼の歪虚を探すメンバーは真っ直ぐ進み、雑魔を探す者は途中までは共に行動し、周りを見渡した。
 雑魔は建物だった跡の左右に分かれて散らばっている。
 覚醒状態になったハンターたちは、互いのやるべきことのために行動を開始した。

 建物の左側に雑魔を見たメリエが走る。散っているならばまとめないとならないと考える。
 雑魔に接敵して牽制する役割を担っているバルバロスは右側に走った。
 この二人を援護射撃する予定だったミオレスカとアメリアは別れるか、片方ずつか決断を迫られた。
「私たちは真ん中に近いですから、どちらからでもいけますね」
「スピード重視と確実性、まとまっていきますか?」
 ミオレスカがうなずいた後、メリエの後方から雑魔を見据えた。

 中央に向かったのは鬼の歪虚へ牽制を行うメンバー、カズマ、ディアドラ、三春そして統夜。建物の残骸でやや足元が不安定であるが、大きな問題ではない。
 屋根が残るところの柱に寄りかかるようにいる大きな影あった。うずくまるように座るそれは人間のようで、人間ではない。もともとは鬼であったと思わせる角、硬質な肌、薄く粗末な鎧。太刀を二振持ち、うめいている様子だ。
「殺す、殺さないと……」
 雑魔たちが襲撃を受けているのに気付き、己に近づく人間がいるのを目にした。
 カズマ、ディアドラ、三春が武器や盾を構え鬼の歪虚を見据える。統夜は銃を構え、紅葉らと仲間の間位に位置を取った。
 あの時の鬼の歪虚かは否かは紅葉の判断だ。
「オガツなの?」
 歪虚は立ち上がり、二対ある腕に太刀を持つ。
「一人はな」
 妖怪との付き合いが長い紅葉と光頼は瞬時に判断する、取り込んだか取り込まれたかその中にオガツがいるというのだ。
「本体があなたなの? それとも食らった餌がオガツなの」
「さあ、忘れた。ただ、俺はオガツで歪虚だ。人間は殺す、クレハだろうが何だろうが殺す」
 まだ歪虚は動かない。ハンターたちを見つめ、何かつぶやく。

 建物の跡を右に回り込み雑魔と接敵したバルバロス。ちらりと鬼の歪虚や他のハンターがいる方を見た。
 早く死合いたい!
 歪虚からひしひしと伝わる力に歓喜が湧く。
 仲間は別のところで雑魔と戦っているため、戦斧を思いっきり振るう、敵を殲滅するために。

 手近にいる雑魔一体に攻撃を試みる。攻撃をするが素早い雑魔にメリエは舌打ちをしたくなるが、落ち着かないとならない。
「まとめて行きますよ!」
 メリエの前の敵は適度に離れつつも【フォールシュート】範囲に入っていた。ミオレスカは宣言通りマテリアルを込めて銃弾を射出する。
 弱った雑魔に銃弾をたたきこもうと構えるアメリアは、一撃で全て倒れた敵に思わず叫んだ。
「……ええっ! 私の出番ないんですか!」
 アメリアは壁を取りつつ、バルバロスへの援護にすぐに走った。
「わたしは鬼歪虚に向かいます」
 意外だった結果にミオレスカが唖然としている間に、メリエも移動に入った。
「当たり所が良かったんですね」
 そういう運が良い瞬間もある。

「貴様らを殺して取り込む……これまた一興」
 カズマに向かって歪虚は接敵し太刀を振り下ろす。
「近づく手間を省いてくれて助かったぜ」
 歪虚の攻撃は二撃とも外れていたが、感じた風圧は非常に強かった。カズマは相手の腕を狙って鋭い突きを叩きこむ。
「そうですね」
 三春は素早く行動をとるが、歪虚がそれを上回る。
「大王として! 民の心を乱す歪虚は討ち滅ぼさないとならない」
 ディアドラは挑発するように盾を構えつつ正面に付き、鋭い突きの攻撃を加えた。歪虚の固い部分だったらしく効果は薄かった。
「当たるには当たるが」
 統夜の銃弾も硬い部分にはじかれたようだった。
 光頼は紅葉の防御のため行動はせず、紅葉はオガツに向かって矢を放つ。軌道は良かったが回避される。

「近づいてくれるのは好都合」
 離れていた雑魔もやってきたので、再びバルバロスは斧を振り回したが当たらない。
「こちらの援護に入ります」
 アメリアは射程に問題がない雑魔に狙いを定めマテリアルを活性化し引き金を絞った。回避できなかったのか、弾丸を食らい霧散した。
「一体ずつが確実か」
 バルバロスは確実に倒すことに切り替えた。

 ミオレスカは弾を込めてから移動をし、歪虚の後方になるような位置に走り込む。
「鬼退治に参戦しますっ」
 メリエも歪虚の側面に出ると、力強く声を上げた。接敵するには距離があるため、回避等の行動を捨てないように気を配る。
 カズマの攻撃で腕が狙われることが苛立ちとなるのか、歪虚の怒りが上がっていく。その割には攻撃が回避され、三春とディアドラはその都度冷静さを保つため、敵を見据える。
「邪魔だあ!」
 鬼が太刀を大振りに振るった。マテリアルが凝縮された攻撃は無数の刃を生み出し、近くにいる三人に襲い掛かる。
 悲鳴を押し殺し攻撃を受けた。その直後、通常に振るった刃は三春には当たらず空を切った。
「お前の相手はこのボクたちだ」
 ディアドラは盾を構え直し声を上げた。

 バルバロスの一撃は雑魔を粉砕し、アメリアの一撃は雑魔を貫いた。これで見えるところにいる雑魔はない。
 喜色満面と言うには荒々しい笑みと共にバルバロスは鬼歪虚の方向へ足を向ける。
 アメリアも援護のために建物側に向かった、周囲には十分気を配って。

 ミオレスカの冷気を込めた銃弾はオガツに命中する。
 メリエの攻撃を食らった動きの鈍っている歪虚は、続いたカズマの攻撃を回避した。これまでの攻撃に対する怒りがそうさせたのかその瞬間の行動は素早かった。
 ハンターたちの攻撃は吸い込まれるように当たる。
「己ぇ!」
 歪虚の怒りと共に使われた技は近接する者たちに襲い掛かり、細かく多量の傷を生じさせる。その直後、太刀が三春に襲い掛かるが回避する。
「みなさん」
 悲鳴を上げ、紅葉は札を手にする。
「せめて、回り込んでくれ」
 統夜は背後の動きを察して声を出す。
 紅葉は光頼と走り出す。タイミングは悪く、ハンターたちは動けない。

 前衛が総崩れになる前に敵を倒すことを意識する。
 歪虚も死にもの狂いである。
「それまでの傷を持ちながら失わない闘志!」
 バルバロスは嬉々として戦斧を振るう。
 三春は攻撃をせず、もしものために紅葉がいる方に回り込んでおく。
「オガツ、動くなっ」
 紅葉の声が響き、マテリアルが込められ札がふわりと舞う。攻撃をしようとした歪虚を縛った。
 ほんの一瞬であったが、ハンターが次の手を打つ間に十分だった。
 怒涛の攻撃を受けたあと歪虚の動きが止まった。
「……なぜ、なぜ、俺が! あの時、人間の子を……」
「てめぇが弱いせいだ、他人のせいにするんじゃねぇ」
「違います!」
 カズマの言葉を遮るように紅葉が叫んだ。
「オガツは弱くありません。私たちを守ってくれました」
 前に出ようとする紅葉を光頼は止める。
『違う……守ったけど……大江なら雇ってくれる……有利に運びたかった』
「それでも、守ってくれたことには変わりありません」
 斬られた胴には別の顔も浮かび、涙が這うように見える。
「うるさいっ」
 歪虚が太刀を振るおうとしたが、手から武器が落ちる。
『無事でよかった』
 小さく聞こえた声が最後であり、歪虚のマテリアルは放出され、死体は倒れた。そして、消えてなくなった。

●未来を
「みなさん……手当を」
 紅葉は慌てて荷物を探る。
 ミオレスカとアメリアも武器をしまうと手当の準備を始めた。
「見回りしてくる、物足りない」
 バルバロスはむすっとした顔で建物の跡を出て行った。
 統夜は一緒に行こうとしたが、その場で周囲に目を走らせることにした。
「大王たるボクにかかればこのようなものだ……痛っ。さすがにちょっと危なかったな」
 紅葉の手当てにディアドラはニコリと笑う。
「そうですか。ありがとうございました」
「なら、笑わないと」
 ディアドラは紅葉の頬に手で触れる。
「無理に笑う必要もないけどな」
「でも、笑う門に福来たる、でしたっけことわざがあると聞きましたよ」
「そっか? ……死んだ大切だった人からすれば生きてほしいだろう、あがいてでも。死者は何もできないんだから」
 統夜はミオレスカに一部丸め込まれているが、紅葉に告げる。
「ことわざ、何か違う気もしますが、悲しい顔よりはいいですよ……ぃっ」
 止血するアメリアがギュッと縛ったため、三春の表情は一瞬固まった。
「札使わないで済みませんでしたが、いいタイミングでしたよ」
 アメリアは微笑みつつ手当を続行する。
「……周りに見てくれる誰かいるんですよ、何かあると」
 メリエは自分の過去を思い、そして、今を見てつぶやく。快活な笑顔が紅葉に向く。
「……そうですね。私も……家の者たち、みなさんにも迷惑かけました……あと、命令とはいえ松永殿にも」
 紅葉ははにかんだ笑みを見せた。
「いだぁ」
「あ、すまない」
 カズマは手当してくれる光頼が頬を赤らめているため、ニヤリと笑い、からかうようなことを言いたいが、ひとまずは我慢した。
「無事、凱旋してからだな」
 笑うカズマの言葉に光頼が首をかしげた。

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MVP一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマka0178
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカka3496

重体一覧

参加者一覧

  • 虹の橋へ
    龍崎・カズマ(ka0178
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士
  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
    人間(紅)|12才|女性|闘狩人
  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • 狂戦士
    バルバロス(ka2119
    ドワーフ|75才|男性|霊闘士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 戦場の舞刀姫
    麗奈 三春(ka4744
    人間(紅)|27才|女性|舞刀士
  • 【魔装】希望への手紙
    瀬崎・統夜(ka5046
    人間(蒼)|28才|男性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/08/30 23:52:28
アイコン 鬼退治(相談
龍崎・カズマ(ka0178
人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/09/09 23:44:51