ゲスト
(ka0000)
救世主サマ
マスター:ぴえーる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/09/13 09:00
- 完成日
- 2015/09/18 00:59
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●森の中
「だ、誰か助けて……」
村から少し外れた森の中、一人の農夫は一匹のコボルトを前にして、尻もちをついたまま恐怖にひきつった表情を浮かべていた。
男とて、森の奥に近づくとコボルトが巣食っていたことは知っていたのだが、それがいざ自分の身に降りかかるまではどこか他人事のように考えていた。
――その結果がこれだ。
コボルトは銀色に煌めく短剣を右手で握りしめて、鋭い目つきで男を見下ろしていた。
興奮したように口の端に涎を溜めたコボルトは、次の瞬間男の脳天目がけて短剣を振り落とした。
「――ひっ」
恐怖のあまり引きつった声を漏らした男だが、コボルトの短剣が男の脳天を突き刺すことはなかった。
「ねえ、大丈夫?」
そう言って、手を伸ばしてきた彼女の姿は太陽に照らされていたことも相まって、救いを差し伸べてくれる女神様に見えた。
そして、コボルトをやっつけたのが彼女であると、男が気付いたのは、それから数秒後のことであった。
●救世主の正体
「う~ん、やっぱりいつ来ても、別荘は空気が新鮮でおいしいっ。人助けもできたし、気分は最高ねっ」
コボルトをやっつけたセリカ・アリエールは、肺一杯に空気をため込んで、太陽を全身で浴びながら大きく伸びをした。新鮮な田舎の空気は、人助けをしたことで、いつもの数倍以上も爽やかに感じられる。
普段は都会の箱入りお嬢さまとして両親に大切に育てられているセリカだが、その正体は覚醒者であり、今日は厳しい親の元を離れて、田舎にあるアリエール家所有の別荘に遊びに来ていた。
本人としては、せっかく覚醒者になったのだから、覚醒者として力を磨いていきたいという思いがあるだが、親の方針でそれは許されていない。そのため鬱憤が溜まる毎日が続いていた。
周囲の緑と太陽の光がセリカの全身に降り注ぎ、自然と気分も高揚する。いつもの窮屈な生活から解放されたのだからなおさらだ。
「お嬢さま。お言葉ですが、いくら母様と父様の目がないからと言って、あのような無茶はこれっきりでお願いします」
彼女の隣に付き従う老齢の執事が、銀縁の眼鏡を光らせて言う。
「もうわかってるってば。せっかく色んなしがらみから解放されたんだから、小言は後にしてよね」
手をひらひらとさせて執事をあしらうお嬢さま。
別荘へ向かう道すがら、セリカ達はたまたま男がコボルトに襲われている現場に遭遇した。
普段からお転婆で腕っ節に自信があるセリカが、その現場を見つけるや否やすぐさまコボルトへと接近し、男が襲われる直前に一撃でコボルトを仕留めてみせたのだった。
その余韻は、森を抜けた先の村の中にある別荘にたどり着いてからも残ったままであり、セリカはまたああいう場面に遭遇できないものかとうずうずしていた。
そんな彼女を見て、執事のタックは内心で嫌な予感を覚えていた。
――そして、当然のようにその嫌な予感は当たるのであった。
●コボルトに悩まされる村人
「我々を救って下さい」
アリエール家の別荘の玄関の前で頭を下げているのは、昨日セリカに命を救われた男である。
さらにその後ろには彼だけでなく、数人の男が神妙な面持ちで並んでいる。
「えーっと、いきなりどうしたのかな……?」
大の大人が、まだ幼さを残している少女に頭を下げるという光景は傍から見ても異様である。当の本人のセリカも困惑の表情を浮かべるしかできない状況であり、執事のタックはいぶかしげな表情でセリカの後ろから男達を眺めている。
「実は――」
男は俯いたまま、低い声で切り出した。
男の話を要約すると、村付近に出現するコボルトは昨日セリカがやっつけた一体だけでなく、森の奥のほうに集まっているとのことである。これまではよほど森の奥まで行かなければ遭遇することも襲われることもなかったため、刺激しないように放置していたのだが、昨日、男が襲われたことで、本格的に村全体でコボルト退治へと方針を固めたという。
その話を聞いて、真っ先に言葉を発したのはタックだった。
「お嬢さま、お言葉ですが、コボルトの退治はハンターに任せるべきです。お嬢さまが腕っ節に自信を持っていることは理解しておりますが、それでもコボルトの巣に飛び込むなんてあまりに危険です」
「む~、それはわかってるけど。アリエール家の人間が困っている人間を見捨てろって言うの?」
唇を尖らせて反論するセリカ。
「お嬢さまの気持ち、理解しました。しかし一人というのは危険です。ここは本業であるハンターにお願いして、お嬢さまが彼らの案内役としてついていくということでどうでしょうか?」
「う~ん、それならまあいっか」
セリカは心から納得している様子ではなさそうだったが、タックはセリカに話の主導権を渡すことなく、このまま話を進めることにした。
「というわけですので、ギルドに依頼を出します。詳しい状況を教えて下さい。私のほうから依頼を出しておきます」
男達は安堵の表情を浮かべて、コボルトの情報を話し始めたのだった。
●ギルドにて
「今回の任務は、村近くに発生しているコボルトの殲滅です」
そこで一旦言葉を切って、受付は集まったハンターの顔を見渡す。
「ただ、今回はハンターではない一般人の女性が同行することとなり、同行する女性についてなのですが、依頼人からメッセージを預かっております」
『お転婆がすぎるお嬢さまですが、ハンターの皆様には劣るとは言え、腕っ節は本物です。本人が納得する程度に活躍の場を与えていただければ本人も喜ぶことでしょう。無茶なお願いなのは承知ですが、どうかよろしくお願いいたします』
「以上になります。それではよろしくお願いいたします」
「だ、誰か助けて……」
村から少し外れた森の中、一人の農夫は一匹のコボルトを前にして、尻もちをついたまま恐怖にひきつった表情を浮かべていた。
男とて、森の奥に近づくとコボルトが巣食っていたことは知っていたのだが、それがいざ自分の身に降りかかるまではどこか他人事のように考えていた。
――その結果がこれだ。
コボルトは銀色に煌めく短剣を右手で握りしめて、鋭い目つきで男を見下ろしていた。
興奮したように口の端に涎を溜めたコボルトは、次の瞬間男の脳天目がけて短剣を振り落とした。
「――ひっ」
恐怖のあまり引きつった声を漏らした男だが、コボルトの短剣が男の脳天を突き刺すことはなかった。
「ねえ、大丈夫?」
そう言って、手を伸ばしてきた彼女の姿は太陽に照らされていたことも相まって、救いを差し伸べてくれる女神様に見えた。
そして、コボルトをやっつけたのが彼女であると、男が気付いたのは、それから数秒後のことであった。
●救世主の正体
「う~ん、やっぱりいつ来ても、別荘は空気が新鮮でおいしいっ。人助けもできたし、気分は最高ねっ」
コボルトをやっつけたセリカ・アリエールは、肺一杯に空気をため込んで、太陽を全身で浴びながら大きく伸びをした。新鮮な田舎の空気は、人助けをしたことで、いつもの数倍以上も爽やかに感じられる。
普段は都会の箱入りお嬢さまとして両親に大切に育てられているセリカだが、その正体は覚醒者であり、今日は厳しい親の元を離れて、田舎にあるアリエール家所有の別荘に遊びに来ていた。
本人としては、せっかく覚醒者になったのだから、覚醒者として力を磨いていきたいという思いがあるだが、親の方針でそれは許されていない。そのため鬱憤が溜まる毎日が続いていた。
周囲の緑と太陽の光がセリカの全身に降り注ぎ、自然と気分も高揚する。いつもの窮屈な生活から解放されたのだからなおさらだ。
「お嬢さま。お言葉ですが、いくら母様と父様の目がないからと言って、あのような無茶はこれっきりでお願いします」
彼女の隣に付き従う老齢の執事が、銀縁の眼鏡を光らせて言う。
「もうわかってるってば。せっかく色んなしがらみから解放されたんだから、小言は後にしてよね」
手をひらひらとさせて執事をあしらうお嬢さま。
別荘へ向かう道すがら、セリカ達はたまたま男がコボルトに襲われている現場に遭遇した。
普段からお転婆で腕っ節に自信があるセリカが、その現場を見つけるや否やすぐさまコボルトへと接近し、男が襲われる直前に一撃でコボルトを仕留めてみせたのだった。
その余韻は、森を抜けた先の村の中にある別荘にたどり着いてからも残ったままであり、セリカはまたああいう場面に遭遇できないものかとうずうずしていた。
そんな彼女を見て、執事のタックは内心で嫌な予感を覚えていた。
――そして、当然のようにその嫌な予感は当たるのであった。
●コボルトに悩まされる村人
「我々を救って下さい」
アリエール家の別荘の玄関の前で頭を下げているのは、昨日セリカに命を救われた男である。
さらにその後ろには彼だけでなく、数人の男が神妙な面持ちで並んでいる。
「えーっと、いきなりどうしたのかな……?」
大の大人が、まだ幼さを残している少女に頭を下げるという光景は傍から見ても異様である。当の本人のセリカも困惑の表情を浮かべるしかできない状況であり、執事のタックはいぶかしげな表情でセリカの後ろから男達を眺めている。
「実は――」
男は俯いたまま、低い声で切り出した。
男の話を要約すると、村付近に出現するコボルトは昨日セリカがやっつけた一体だけでなく、森の奥のほうに集まっているとのことである。これまではよほど森の奥まで行かなければ遭遇することも襲われることもなかったため、刺激しないように放置していたのだが、昨日、男が襲われたことで、本格的に村全体でコボルト退治へと方針を固めたという。
その話を聞いて、真っ先に言葉を発したのはタックだった。
「お嬢さま、お言葉ですが、コボルトの退治はハンターに任せるべきです。お嬢さまが腕っ節に自信を持っていることは理解しておりますが、それでもコボルトの巣に飛び込むなんてあまりに危険です」
「む~、それはわかってるけど。アリエール家の人間が困っている人間を見捨てろって言うの?」
唇を尖らせて反論するセリカ。
「お嬢さまの気持ち、理解しました。しかし一人というのは危険です。ここは本業であるハンターにお願いして、お嬢さまが彼らの案内役としてついていくということでどうでしょうか?」
「う~ん、それならまあいっか」
セリカは心から納得している様子ではなさそうだったが、タックはセリカに話の主導権を渡すことなく、このまま話を進めることにした。
「というわけですので、ギルドに依頼を出します。詳しい状況を教えて下さい。私のほうから依頼を出しておきます」
男達は安堵の表情を浮かべて、コボルトの情報を話し始めたのだった。
●ギルドにて
「今回の任務は、村近くに発生しているコボルトの殲滅です」
そこで一旦言葉を切って、受付は集まったハンターの顔を見渡す。
「ただ、今回はハンターではない一般人の女性が同行することとなり、同行する女性についてなのですが、依頼人からメッセージを預かっております」
『お転婆がすぎるお嬢さまですが、ハンターの皆様には劣るとは言え、腕っ節は本物です。本人が納得する程度に活躍の場を与えていただければ本人も喜ぶことでしょう。無茶なお願いなのは承知ですが、どうかよろしくお願いいたします』
「以上になります。それではよろしくお願いいたします」
リプレイ本文
「ふっふ……大丈夫さ、このDT魔術師の手に掛かれば……って!?」
依頼のあった村近くに、四人のハンターと依頼主であるセリカが集まり、その中で得意げな顔をしていた水流崎トミヲ(ka4852)だったが、セリカの存在に気付くと同時に絶句する。
「リアルお嬢様ァァァ!?」
トミヲに対して、セリカはどう対応すべきかと、面食らったように目をぱちくりとさせている。
(……ドえらく緊張するね……! し、失敗したら踏まれたりするのかな!)
トミヲはお嬢さまという肩書きを持つ少女に対して妙な緊張感を覚えていた。
「コホン、ハンターの皆様。セリカ・アルセールです。本日はコボルトの住む森の奥まで案内させてもらうよ」
セリカは一度咳払いして、四人のハンターを見渡しながらペコリと頭を下げた。
「村の人たちのために、アタシも力を貸すつもりだから、今日は頑張ろうねっ」
「まあ、力なき民にかわって戦おうとするその心意気は立派だと思うぜ。俺も喜んで協力させて貰うな」
セリカの挨拶を聞いて、口元を綻ばせているのは、Anbar(ka4037)である。
「あっ、私のほうこそよろしくお願いしますね。セリカさん」
今度は小さな頭をペコリと下げて、ミオレスカ(ka3496)が挨拶を返す。
「今日一日は拙者たちと同志ということになる。こちらこそよろしく頼むのう」
執事のタックよりも、一回り以上も年を重ねた守屋 昭二(ka5069)に頭を下げられて、セリカは恐縮した様子で慌てて頭を下げ返している。
「おっと、僕のほうも挨拶はまだだったね。今日はよろしく頼むよ。お嬢さま」
トミヲの妙に気取った挨拶に対しては、少し苦笑いを浮かべていた様子のセリカだったが、一通りの挨拶を終えたところで、全員の視線がセリカへと集まる。
「詳しい内容は歩きながら説明するんで、それじゃ、さっそく出発しよっか。行くぞ-! おー!」
セリカが声高らかに拳を突き上げて宣言すると、
「おー! って、あれ? みなさんやらないんですか……?」
それに乗ってくれたのはミオレスカだけだった。
こうして、性別も年齢も息もバラバラな五人は森の奥へと進んだ。
足元は土を固めただけの、道と呼んでいいのか疑わしいほど簡素な道が延びている。
所々で別れ道があったりしたので、その度にAnbarが、自分たちが通った印として木に布を結んできた。
うっそうと茂る森の中、ハンター四人はセリカを先導にしてその後ろに従うようにして進んでいた。
「あっ、そうだ。コボルドとはいえ、油断をしていたら要らない怪我を負うこともあるから、な。装備だけはきちんとしたものを身につけていってくれ」
動きやすいように軽装をしているセリカ。彼女は武器としてナイフを装備しているが、防具の類をほとんど装備しておらず、こと戦闘においては心許ない装備である。
「えっ、まあそうなんだろうけど、今さら戻るわけにはいかないし、どうしよっか。大丈夫だよ。きっとなんとかなるよ」
「はあ……、そういうわけにもいかねえだろ。余ってるものを渡すからそれを装備しろよ」
Anbarが荷物から出そうとすると、他の三人も荷物を探ってセリカに合いそうな装備を彼女に差し出した。
「うん。なんか随分としっくりくるね。気合い入ってきたッ!」
「無理をする必要はない。力があると言っても本格的な戦いには不慣れなんだからな。俺達の戦いをよく見て、自分が出来る事をやってくれればそれで十分だ」
「ハンターのみんなに任せれば、大丈夫ってのはわかってるけどさ……」
セリカは少し不満そうに唇を尖らせた。
「ところで、だいぶ森も深くなってきたけれど、コボルトの住処はまだなのかな。詳しい場所とか村人から聞いてない?」
トミヲが深くなってきた森を見渡しながらセリカに訊ねる。
「う~ん、森の奥ってことだったけど、村の人たちも詳しい場所はわかってなかったみたい……」
「それじゃあ、そろそろ警戒したほうがいいかもね……」
そう言って、トミヲは辺りを見渡して見たが、まだコボルトの気配が近づいている様子は感じない。
「とりあえず、全員でそれぞれの方位を注意しよう。僕は風下のほうを警戒するから、セリカくんも頼むよ」
森が深くなるに比例して、五人はより一層の注意を払いながら奥へと進んだ。
「いたっ! コボルトだ」
前方の注意に当たっていたミオレスカが声を上げた。
彼女の視線の先はなだらかな坂になっており、丈長い草葉の奥にはうっすらと洞穴のようなものが見える。その洞穴から二匹のコボルトが出てきたところだった。
「間違いないよ。あれがコボルトの住処だねッ。さっそくあいつらをやっつけないと」
四人が静止する間もなく、セリカは瞬く間になだらかな坂を駆け上がり、洞穴目がけて飛び出してしまう。
「村人たちに迷惑を掛ける怨敵。今こそ成敗してあげるッ!」
村人の男を救ったときのような素早さで、一気にコボルトに肉薄したセリカは、その勢いのまま、コボルトの心臓にナイフを突き刺してやる。一撃をまともに浴びたコボルトは、悶絶してその場に崩れ落ちる。
「ふう……。まずは一匹」
一匹を仕留めたことで、気を緩めてしまったセリカ。
この場はすでに戦場であり、気を抜ける暇なんてものは存在しない。
――次の瞬間。
「――えっ」
セリカが背後を振り返ると、残ったコボルトが短剣を振り下ろそうと迫っていた。
「僕のDT魔力よ…! 高まり、溢れろ!」
その時、トミヲの奇妙な詠唱の声が響いたと思うと、トミヲから一直線に延びた雷撃――ライトニングボルトがコボルトの身体を貫き、セリカの命は救われた。
「あ、あの、アタシ……」
トミヲの助けがなければどうなっていたか、セリカはそれを考えて身を震わせる。あの瞬間、セリカは人生において初めて死という瞬間を実感してしまった。
ハンターたち四人が、そんな彼女に何か声をかけようとしていたが、最初に彼女に声を掛けたのは守屋である。
「セリカ殿、おぬしの力には期待しております。社交辞令ではありません。あなたがわずかでも手を抜けば、儂は死ぬでしょうから」
皺が刻み込まれた守屋の顔を見て、セリカは少しだけ落ち着きを取り戻す。
「ここから先は俺が前衛を務める。みんなは後に続いてくれ」
洞穴の奥の方をのぞきながら、Anbarが言う。
「コボルトたちに囲まれている様子もないし、洞穴に入っても入り口を塞がれるなんて心配はないと思う」
トミヲが言うと、全員が小さく頷いて、洞穴へと入っていく。
セリカは少し躊躇うように俯いていたが、守屋が彼女に手を差し伸べる。
「セリカ殿。戦闘は拙者とともに行きましょう。老齢の拙者にはセリカ殿の力が必要なのじゃ」
その言葉を聞くとセリカも踏ん切りがついたようで、五人は洞穴の奥を目指した。
「――えいっ」
ミオレスカから放たれた銃弾が一直線にコボルトへと向かっていき、コボルトの身体に穴を空けた。
入り口の通路から少し進んだところに広場のような開けた空間があり、そこで十匹近いコボルトの集団と戦闘になっていた。
洞穴の中は、天井に穴が空いておりそこから太陽の光が漏れているため、この場所も視界は良好である。
そのため、後衛のミオレスカも問題なく射撃に専念できる。
広場の先にはいくつかの通路が繋がっており、その通路の先からコボルトが飛び出してくる。
ミオレスカは各個撃破するため、それらのコボルトを集結させないように制圧射撃で足止めする。
「みなさん、頑張って下さい。私がきっちりサポートしますから!」
ミオレスカは弾丸にマテリアルを込め、コボルトの集団に対して、フォールシュートという名の弾丸の雨を降らす。
「今ですっ! コボルトが怯んだ隙に攻撃して下さい!」
ミオレスカの攻撃が炸裂すると同時に、他のメンバーが攻勢を仕掛ける。
(セリカさんは……)
確かに、セリカは単独でコボルトと立ち向かえるほどに腕が立つが、この場に置いては戦闘の素人だ。後衛であるミオレスカが彼女の様子を見ながら、必要であれば援護する必要もあるだろう。
現在彼女は守屋とともにコボルトと対しているので、ひとまず彼女に関しては守屋に任せておくことにする。
「それじゃ、この後衛まで敵がたどり着かないように、私はハンターらしく、効率重視でいきます」
ミオレスカはこちらに向かってこようとするコボルトを狙い定めて、銃の引き金を引いた。
前線に立ってコボルトと相対していたAnbarは、コボルト集団との戦闘に入る前に「闘心昂揚」をかけて己の身体能力を強化している。
どうやら洞穴の入り口を見張っていたコボルトは下っ端だったようで、その二匹に比べると広場内に現れているコボルトは彼らよりも少し手強い。
広場の奥の方から湧いてくるコボルトに対して、まずは後衛のミオレスカが制圧射撃で足止めをしてくれ、その足止めしたコボルトを討ち取ってゆくのがAnbarの役割だ。
前衛といっても、ただ単純に見える敵を片っ端から倒していけば良いというわけではない。これがチーム戦である以上は、何よりも仲間との連携が大事になる。コボルトと相対しているときでも、集中力の数パーセントは常に後衛を意識しておく必要がある。
そのため、後衛のミオレスカに何か動きがあると、すぐさま彼女の支援をするように、あるいは魔法に巻き込まれないように動かなければいけない。
「――――!!」
背後から迫っていたコボルトが、Anbarの脳天を突き刺そうと短剣を振り下ろしてきた。Anbarはすかさず手にしていた斧を掲げて、その一撃を防ぐと同時に力任せにコボルトを押し返した。
コボルトがたまらず体勢を崩したところを見逃さず、Anbarは斧を叩きつけてやる。
これで一匹仕留めたが、戦場はまだまだ賑わいを見せている。
気合いを入れ直すために、Anbarは素早く手にしている斧を握り直した。
「ちなみに私の覚醒状態は人より短くしか持ちませんのでな。さあ行きますぞ!」
横に並んでいるセリカに告げると、守屋は覚醒状態になり、その容姿が六十代程度まで若返る。先ほどに比べると、少し皺が薄れたような印象があるが、それでも十分に老いている姿である。
飛び出した守屋は、集団から少し離れて行動しているコボルトに狙いを定めて、日本刀を一振りする。
守屋の突撃に気付いたコボルトは、こちらに向き直り短剣でその攻撃を受け止める。
集団から離れて行動しているということはそれだけ腕に自信があるということだ。集団のボスという感じではないが、よく見比べてみると、集団で固まっているコボルトよりもその体躯は一回り大きいのがわかる。
守屋はすかさず追撃を仕掛けるが、その一撃も受け止められてしまう。
「ああっ、もうじれったい」
セリカが意を決して、守屋と対峙しているコボルトへと飛び出していく。
コボルトの背後へと回り、その背中にナイフを突き出す。
それでも致命傷をまぬがれたコボルトは、身体をくの字に曲げると同時に背後を振り返ってセリカを見やる。
すると、コボルトは標的をセリカへと変えて短剣を閃かせる。
その隙に、守屋は刀を鞘に納め、気息充実で集中状態に入る。
「――ふんっ」
守屋が居合で切りつけると、コボルトの身体が呆気なく真っ二つになった。
「やったね。守屋さん。ナイスだよっ」
親指を立てて、守屋を称えるセリカ。
気を抜く間もなく、二人は次のコボルトへと向かっていく。
守屋が前に切り下せばセリカが後ろに同時に切りおろし、時々よろけて攻撃されそうになる守屋をセリカがカバーする。経験不足のセリカの隙間を、技術でカバーする守屋が先の先で刀を振り、コボルトの頸動脈をそっと斬ると血が噴き出す。
その時、守屋の覚醒状態が切れてしまい、その顔に刻まれた皺が深くなり、九十代の容姿まで逆戻りしてしまう。
手にしていた刀すら持つのがやっとのヨボヨボの状態になってしまうが、コボルトと守屋の間にセリカが割って入る。
(そっか……。守屋さん、こんな年なのに第一線で戦ってるんだ。きっと経験とか技術がアタシとは違うんだ)
セリカのナイフでコボルトの短剣を受け止めた瞬間、彼女の背後から冷気を纏った弾丸がコボルトへと突き刺さる。
「セリカさん。今ですっ!」
ミオレスカの攻撃で怯んだコボルトに対して、セリカはナイフを突き立ててやった。
「悪いけど……君たちは、人を傷つけるんだろう?」
目の前に見える、二匹のコボルトに対して、トミヲはファイヤーボールを打ち込んでやる。
するとコボルトは、黒焦げになって倒れた。
「……居た!」
その時、通路の奥の方から、他のコボルトよりも一回り大きい個体が現れた。その周りには数匹のコボルトが控えており、あれがコボルトの主とみて間違いないだろう。
トミヲがすかさずファイヤーボールを打ち込むが、周りの数匹のコボルトには命中したが親玉は間一髪で身軽に躱した。
他のメンバーもボスの存在に気付いたようで、まずは前衛のAnbarがクラッシュブロウを乗せて親玉に攻撃を掛ける。
親玉は短剣で受け止めようとしたが、それよりも一瞬早くAnbarの攻撃が炸裂する。
苦しそうによろめいている親玉だが、まだその目の色は死んでいない。Anbarへ反撃に出るが、彼はすぐさま離脱して攻撃をやり過ごす。
間髪入れず、ミオレスカのレイターコールドショットが炸裂し、怯んだ隙にトミヲがファイヤーボールを叩き込んだ。
すると、ハンターの猛攻を受けた親玉は、為す術なくその命を消滅させた。
しかし親玉を倒したからといって、戦闘が終わったわけではない。
ボスが倒れたことで、一瞬だけ気を抜いたトミヲの背後にコボルトが迫っていた。
肝を冷やしたトミヲだったが、寸前でセリカがコボルトの背中をナイフで刺したことにより事なきを得た。
「い、いやぁ、た、たた助かったよ!」
「大丈夫? これで、入り口で助けてもらった分を返せたね」
「ははっ……で、でも、あんまり無茶をしたら、だめだよ? 女の子、なんだからさ」
そうして一行は残りのコボルトもやっつけて、任務を果たしたのであった。
残党がいないことを確認して、五人は帰路へと就いた。
村に戻った五人がコボルト討伐の旨を告げると、村人たちは心から安堵の表情を浮かべていた。
そんな彼らの表情を見て、セリカは大きな達成感に包まれていた。
「お疲れ様だった。誰かの為に戦うというのはどうだった? なかなか良いものだろう?」
Anbarがそう言って、口元に薄い笑みを浮かべる。
「そうだね。今はすっごく良い気分。だけどハンターの大変さも身に染みたし、これからは少しだけ大人しくしておこうかな。なんて、あはは」
そんな彼女の笑顔を照らすように、太陽の光が降り注いでいた。
依頼のあった村近くに、四人のハンターと依頼主であるセリカが集まり、その中で得意げな顔をしていた水流崎トミヲ(ka4852)だったが、セリカの存在に気付くと同時に絶句する。
「リアルお嬢様ァァァ!?」
トミヲに対して、セリカはどう対応すべきかと、面食らったように目をぱちくりとさせている。
(……ドえらく緊張するね……! し、失敗したら踏まれたりするのかな!)
トミヲはお嬢さまという肩書きを持つ少女に対して妙な緊張感を覚えていた。
「コホン、ハンターの皆様。セリカ・アルセールです。本日はコボルトの住む森の奥まで案内させてもらうよ」
セリカは一度咳払いして、四人のハンターを見渡しながらペコリと頭を下げた。
「村の人たちのために、アタシも力を貸すつもりだから、今日は頑張ろうねっ」
「まあ、力なき民にかわって戦おうとするその心意気は立派だと思うぜ。俺も喜んで協力させて貰うな」
セリカの挨拶を聞いて、口元を綻ばせているのは、Anbar(ka4037)である。
「あっ、私のほうこそよろしくお願いしますね。セリカさん」
今度は小さな頭をペコリと下げて、ミオレスカ(ka3496)が挨拶を返す。
「今日一日は拙者たちと同志ということになる。こちらこそよろしく頼むのう」
執事のタックよりも、一回り以上も年を重ねた守屋 昭二(ka5069)に頭を下げられて、セリカは恐縮した様子で慌てて頭を下げ返している。
「おっと、僕のほうも挨拶はまだだったね。今日はよろしく頼むよ。お嬢さま」
トミヲの妙に気取った挨拶に対しては、少し苦笑いを浮かべていた様子のセリカだったが、一通りの挨拶を終えたところで、全員の視線がセリカへと集まる。
「詳しい内容は歩きながら説明するんで、それじゃ、さっそく出発しよっか。行くぞ-! おー!」
セリカが声高らかに拳を突き上げて宣言すると、
「おー! って、あれ? みなさんやらないんですか……?」
それに乗ってくれたのはミオレスカだけだった。
こうして、性別も年齢も息もバラバラな五人は森の奥へと進んだ。
足元は土を固めただけの、道と呼んでいいのか疑わしいほど簡素な道が延びている。
所々で別れ道があったりしたので、その度にAnbarが、自分たちが通った印として木に布を結んできた。
うっそうと茂る森の中、ハンター四人はセリカを先導にしてその後ろに従うようにして進んでいた。
「あっ、そうだ。コボルドとはいえ、油断をしていたら要らない怪我を負うこともあるから、な。装備だけはきちんとしたものを身につけていってくれ」
動きやすいように軽装をしているセリカ。彼女は武器としてナイフを装備しているが、防具の類をほとんど装備しておらず、こと戦闘においては心許ない装備である。
「えっ、まあそうなんだろうけど、今さら戻るわけにはいかないし、どうしよっか。大丈夫だよ。きっとなんとかなるよ」
「はあ……、そういうわけにもいかねえだろ。余ってるものを渡すからそれを装備しろよ」
Anbarが荷物から出そうとすると、他の三人も荷物を探ってセリカに合いそうな装備を彼女に差し出した。
「うん。なんか随分としっくりくるね。気合い入ってきたッ!」
「無理をする必要はない。力があると言っても本格的な戦いには不慣れなんだからな。俺達の戦いをよく見て、自分が出来る事をやってくれればそれで十分だ」
「ハンターのみんなに任せれば、大丈夫ってのはわかってるけどさ……」
セリカは少し不満そうに唇を尖らせた。
「ところで、だいぶ森も深くなってきたけれど、コボルトの住処はまだなのかな。詳しい場所とか村人から聞いてない?」
トミヲが深くなってきた森を見渡しながらセリカに訊ねる。
「う~ん、森の奥ってことだったけど、村の人たちも詳しい場所はわかってなかったみたい……」
「それじゃあ、そろそろ警戒したほうがいいかもね……」
そう言って、トミヲは辺りを見渡して見たが、まだコボルトの気配が近づいている様子は感じない。
「とりあえず、全員でそれぞれの方位を注意しよう。僕は風下のほうを警戒するから、セリカくんも頼むよ」
森が深くなるに比例して、五人はより一層の注意を払いながら奥へと進んだ。
「いたっ! コボルトだ」
前方の注意に当たっていたミオレスカが声を上げた。
彼女の視線の先はなだらかな坂になっており、丈長い草葉の奥にはうっすらと洞穴のようなものが見える。その洞穴から二匹のコボルトが出てきたところだった。
「間違いないよ。あれがコボルトの住処だねッ。さっそくあいつらをやっつけないと」
四人が静止する間もなく、セリカは瞬く間になだらかな坂を駆け上がり、洞穴目がけて飛び出してしまう。
「村人たちに迷惑を掛ける怨敵。今こそ成敗してあげるッ!」
村人の男を救ったときのような素早さで、一気にコボルトに肉薄したセリカは、その勢いのまま、コボルトの心臓にナイフを突き刺してやる。一撃をまともに浴びたコボルトは、悶絶してその場に崩れ落ちる。
「ふう……。まずは一匹」
一匹を仕留めたことで、気を緩めてしまったセリカ。
この場はすでに戦場であり、気を抜ける暇なんてものは存在しない。
――次の瞬間。
「――えっ」
セリカが背後を振り返ると、残ったコボルトが短剣を振り下ろそうと迫っていた。
「僕のDT魔力よ…! 高まり、溢れろ!」
その時、トミヲの奇妙な詠唱の声が響いたと思うと、トミヲから一直線に延びた雷撃――ライトニングボルトがコボルトの身体を貫き、セリカの命は救われた。
「あ、あの、アタシ……」
トミヲの助けがなければどうなっていたか、セリカはそれを考えて身を震わせる。あの瞬間、セリカは人生において初めて死という瞬間を実感してしまった。
ハンターたち四人が、そんな彼女に何か声をかけようとしていたが、最初に彼女に声を掛けたのは守屋である。
「セリカ殿、おぬしの力には期待しております。社交辞令ではありません。あなたがわずかでも手を抜けば、儂は死ぬでしょうから」
皺が刻み込まれた守屋の顔を見て、セリカは少しだけ落ち着きを取り戻す。
「ここから先は俺が前衛を務める。みんなは後に続いてくれ」
洞穴の奥の方をのぞきながら、Anbarが言う。
「コボルトたちに囲まれている様子もないし、洞穴に入っても入り口を塞がれるなんて心配はないと思う」
トミヲが言うと、全員が小さく頷いて、洞穴へと入っていく。
セリカは少し躊躇うように俯いていたが、守屋が彼女に手を差し伸べる。
「セリカ殿。戦闘は拙者とともに行きましょう。老齢の拙者にはセリカ殿の力が必要なのじゃ」
その言葉を聞くとセリカも踏ん切りがついたようで、五人は洞穴の奥を目指した。
「――えいっ」
ミオレスカから放たれた銃弾が一直線にコボルトへと向かっていき、コボルトの身体に穴を空けた。
入り口の通路から少し進んだところに広場のような開けた空間があり、そこで十匹近いコボルトの集団と戦闘になっていた。
洞穴の中は、天井に穴が空いておりそこから太陽の光が漏れているため、この場所も視界は良好である。
そのため、後衛のミオレスカも問題なく射撃に専念できる。
広場の先にはいくつかの通路が繋がっており、その通路の先からコボルトが飛び出してくる。
ミオレスカは各個撃破するため、それらのコボルトを集結させないように制圧射撃で足止めする。
「みなさん、頑張って下さい。私がきっちりサポートしますから!」
ミオレスカは弾丸にマテリアルを込め、コボルトの集団に対して、フォールシュートという名の弾丸の雨を降らす。
「今ですっ! コボルトが怯んだ隙に攻撃して下さい!」
ミオレスカの攻撃が炸裂すると同時に、他のメンバーが攻勢を仕掛ける。
(セリカさんは……)
確かに、セリカは単独でコボルトと立ち向かえるほどに腕が立つが、この場に置いては戦闘の素人だ。後衛であるミオレスカが彼女の様子を見ながら、必要であれば援護する必要もあるだろう。
現在彼女は守屋とともにコボルトと対しているので、ひとまず彼女に関しては守屋に任せておくことにする。
「それじゃ、この後衛まで敵がたどり着かないように、私はハンターらしく、効率重視でいきます」
ミオレスカはこちらに向かってこようとするコボルトを狙い定めて、銃の引き金を引いた。
前線に立ってコボルトと相対していたAnbarは、コボルト集団との戦闘に入る前に「闘心昂揚」をかけて己の身体能力を強化している。
どうやら洞穴の入り口を見張っていたコボルトは下っ端だったようで、その二匹に比べると広場内に現れているコボルトは彼らよりも少し手強い。
広場の奥の方から湧いてくるコボルトに対して、まずは後衛のミオレスカが制圧射撃で足止めをしてくれ、その足止めしたコボルトを討ち取ってゆくのがAnbarの役割だ。
前衛といっても、ただ単純に見える敵を片っ端から倒していけば良いというわけではない。これがチーム戦である以上は、何よりも仲間との連携が大事になる。コボルトと相対しているときでも、集中力の数パーセントは常に後衛を意識しておく必要がある。
そのため、後衛のミオレスカに何か動きがあると、すぐさま彼女の支援をするように、あるいは魔法に巻き込まれないように動かなければいけない。
「――――!!」
背後から迫っていたコボルトが、Anbarの脳天を突き刺そうと短剣を振り下ろしてきた。Anbarはすかさず手にしていた斧を掲げて、その一撃を防ぐと同時に力任せにコボルトを押し返した。
コボルトがたまらず体勢を崩したところを見逃さず、Anbarは斧を叩きつけてやる。
これで一匹仕留めたが、戦場はまだまだ賑わいを見せている。
気合いを入れ直すために、Anbarは素早く手にしている斧を握り直した。
「ちなみに私の覚醒状態は人より短くしか持ちませんのでな。さあ行きますぞ!」
横に並んでいるセリカに告げると、守屋は覚醒状態になり、その容姿が六十代程度まで若返る。先ほどに比べると、少し皺が薄れたような印象があるが、それでも十分に老いている姿である。
飛び出した守屋は、集団から少し離れて行動しているコボルトに狙いを定めて、日本刀を一振りする。
守屋の突撃に気付いたコボルトは、こちらに向き直り短剣でその攻撃を受け止める。
集団から離れて行動しているということはそれだけ腕に自信があるということだ。集団のボスという感じではないが、よく見比べてみると、集団で固まっているコボルトよりもその体躯は一回り大きいのがわかる。
守屋はすかさず追撃を仕掛けるが、その一撃も受け止められてしまう。
「ああっ、もうじれったい」
セリカが意を決して、守屋と対峙しているコボルトへと飛び出していく。
コボルトの背後へと回り、その背中にナイフを突き出す。
それでも致命傷をまぬがれたコボルトは、身体をくの字に曲げると同時に背後を振り返ってセリカを見やる。
すると、コボルトは標的をセリカへと変えて短剣を閃かせる。
その隙に、守屋は刀を鞘に納め、気息充実で集中状態に入る。
「――ふんっ」
守屋が居合で切りつけると、コボルトの身体が呆気なく真っ二つになった。
「やったね。守屋さん。ナイスだよっ」
親指を立てて、守屋を称えるセリカ。
気を抜く間もなく、二人は次のコボルトへと向かっていく。
守屋が前に切り下せばセリカが後ろに同時に切りおろし、時々よろけて攻撃されそうになる守屋をセリカがカバーする。経験不足のセリカの隙間を、技術でカバーする守屋が先の先で刀を振り、コボルトの頸動脈をそっと斬ると血が噴き出す。
その時、守屋の覚醒状態が切れてしまい、その顔に刻まれた皺が深くなり、九十代の容姿まで逆戻りしてしまう。
手にしていた刀すら持つのがやっとのヨボヨボの状態になってしまうが、コボルトと守屋の間にセリカが割って入る。
(そっか……。守屋さん、こんな年なのに第一線で戦ってるんだ。きっと経験とか技術がアタシとは違うんだ)
セリカのナイフでコボルトの短剣を受け止めた瞬間、彼女の背後から冷気を纏った弾丸がコボルトへと突き刺さる。
「セリカさん。今ですっ!」
ミオレスカの攻撃で怯んだコボルトに対して、セリカはナイフを突き立ててやった。
「悪いけど……君たちは、人を傷つけるんだろう?」
目の前に見える、二匹のコボルトに対して、トミヲはファイヤーボールを打ち込んでやる。
するとコボルトは、黒焦げになって倒れた。
「……居た!」
その時、通路の奥の方から、他のコボルトよりも一回り大きい個体が現れた。その周りには数匹のコボルトが控えており、あれがコボルトの主とみて間違いないだろう。
トミヲがすかさずファイヤーボールを打ち込むが、周りの数匹のコボルトには命中したが親玉は間一髪で身軽に躱した。
他のメンバーもボスの存在に気付いたようで、まずは前衛のAnbarがクラッシュブロウを乗せて親玉に攻撃を掛ける。
親玉は短剣で受け止めようとしたが、それよりも一瞬早くAnbarの攻撃が炸裂する。
苦しそうによろめいている親玉だが、まだその目の色は死んでいない。Anbarへ反撃に出るが、彼はすぐさま離脱して攻撃をやり過ごす。
間髪入れず、ミオレスカのレイターコールドショットが炸裂し、怯んだ隙にトミヲがファイヤーボールを叩き込んだ。
すると、ハンターの猛攻を受けた親玉は、為す術なくその命を消滅させた。
しかし親玉を倒したからといって、戦闘が終わったわけではない。
ボスが倒れたことで、一瞬だけ気を抜いたトミヲの背後にコボルトが迫っていた。
肝を冷やしたトミヲだったが、寸前でセリカがコボルトの背中をナイフで刺したことにより事なきを得た。
「い、いやぁ、た、たた助かったよ!」
「大丈夫? これで、入り口で助けてもらった分を返せたね」
「ははっ……で、でも、あんまり無茶をしたら、だめだよ? 女の子、なんだからさ」
そうして一行は残りのコボルトもやっつけて、任務を果たしたのであった。
残党がいないことを確認して、五人は帰路へと就いた。
村に戻った五人がコボルト討伐の旨を告げると、村人たちは心から安堵の表情を浮かべていた。
そんな彼らの表情を見て、セリカは大きな達成感に包まれていた。
「お疲れ様だった。誰かの為に戦うというのはどうだった? なかなか良いものだろう?」
Anbarがそう言って、口元に薄い笑みを浮かべる。
「そうだね。今はすっごく良い気分。だけどハンターの大変さも身に染みたし、これからは少しだけ大人しくしておこうかな。なんて、あはは」
そんな彼女の笑顔を照らすように、太陽の光が降り注いでいた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/11 09:21:10 |
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相談卓 守屋 昭二(ka5069) 人間(リアルブルー)|92才|男性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/09/13 00:33:22 |