ゲスト
(ka0000)
【聖呪】敵軍、投石器ヲ破壊セヨ!
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 8日
- 締切
- 2015/09/18 22:00
- 完成日
- 2015/09/23 01:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●戦模様
グラズヘイム王国と茨小鬼軍との争いが小規模な戦闘から大規模な紛争へ様変わりするのに、さして時はかからなかった。
八月上旬、敵軍がルサスール領より北、グルノアと呼ばれる村を占領、これを拠点とする。
八月中旬、ウェルズ・クリストフ・マーロウ大公を盟主とする王国・貴族軍、北方三州へ展開。敵軍、活動を激化。
八月十三日、王国北西部アルテリア地方にて千人規模の敵軍と接敵、膠着。
八月十七日、王国北東部フェルダー地方にて敵山岳部隊が幾つかの集落を強襲。北方各地で接敵。
八月二十一日、ルサスール領より東、マイラ盆地にて敵軍を発見。
八月二十三日、マーロウを中心とした貴族私兵軍及びハンター、敵軍との小競り合いを繰り返しながら西へ移動。
八月二十五日、敵軍に強力な個体を確認。南西へ後退。
八月二十六日、貴族軍左翼、ナーファ伯爵軍が独断専行して敵左翼を強襲、撃退さる。ナーファ伯爵戦死。
八月二十七日、貴族軍中央、ネッサラン子爵及びシャロワ侯爵軍が敵軍を圧倒するも、敵両翼の挟撃により一時分断さる。マーロウ本隊の突撃により両氏脱出。
八月二十八日、マーロウ本隊及びラスリド伯爵軍の奮闘により戦線膠着、戦場は西へ移動。
八月二十九日、ハンターによる強襲で敵軍を崩し、数km単位で北へ押すも、敵の数は然程変わらず。
八月三十日、貴族軍右翼、敵を包み込む動きをするも敵軍は速やかに渡河、後退。マーロウは訝しんで制止するがシャロワ侯爵を中心に進軍。両軍がヨーク丘陵の南北に布陣。
そして八月三十一日。――それは、始まった。
――――とある古ぼけた紙片より
(執筆:???)
●八月三十一日・ヨーク丘陵の戦い
「報告は正確にしろ!」
ウェルズ・クリストフ・マーロウが声を荒げて戦場を見晴かすと、薄く戦塵の広がる先に、惑う騎兵の姿が見えた。中央、左翼にある丘の麓辺りか。戦場を穿つように伸びていた土煙が、とある一点で途切れている。
「奸計により騎兵突撃は防がれたのだな?」
「は! なだらかな丘陵の影に濠のように横長い穴があるようです!」
「濠? ここには戦場の推移によって偶然布陣したのだぞ、そのような……」
不意に湧き上がる不安。その勘に従って指示を出そうとしたマーロウだが――突如、眼前が爆発した。
幕僚の悲鳴。馬の高い嘶き。大量の土砂が落ちる鈍い音。
慌てるな。マーロウは叫んだ。が、声に出ていない。いつの間にか落馬し、その身が地面に横たわっている。
土の爆発。投石器による砲撃か? 今までこの敵軍に投石器はなかった。つまり。
――読んでおったか。
敵は端からこのヨーク丘陵を戦場と設定し、準備していたのだ。
やはり昨日、強権を以て進軍を留めるべきだった。マーロウは忸怩たる思いで土に腕をつく。そして気勢を吐くように命令した。
「全軍、死力を尽くせ! ハンターを中心として確固たる戦闘単位を作り、敵に当たるのだ!」
立ち上がりかけたマーロウはしかし、力尽くように倒れ伏した。自らの意識が遠のいていく感覚。マーロウは皺だらけの拳を握り、思った。
戦闘は止まらない。時代も止まらない。故に私もまた止まる事などできぬ、と。
●八月三十一日・ヨーク丘陵右翼
「――チィ! ゴブリンどもめ。味な真似をしおって!」
ヨーク丘陵右翼で、ラスリド伯爵は声を荒げた。
ゴブリンどもなど、ひとひねりにしてくれる。
意気込んで進軍した結果が、この有様だ。よもや亜人程度が、くだらぬ策を弄してくるとは思わなかった。
先ほど、轟音と共に投石されたのが見えた。狙われたのは本陣。伝令を飛ばして無事は先ほど確認できたが、被害はでている。
急がなければならない。投石が行われたのはこの近く。すぐにでも対処する必要がある。
詳しい場所はわからないが、大体の見当はついている。
現地点から見て、右上の林の中だ。偵察兵の話では、そこから投石が行われた可能性が高いらしかった。
「奇襲が通用するのなど、最初だけよ! 仕掛けがわかれば、何の問題にもならぬわ!」
ラスリド伯爵は、右翼進軍にも同行中だったハンターたちを呼んだ。
「諸君らに任務をお願いする。林の中にいると思われる、ゴブリンどもの投石部隊の撃破だ。遠距離から狙われては、中央も苦戦は必至。一匹の討ち漏らしも許されぬ」
厳しい口調での通達に、ハンターたちが頷く。
ラスリド伯爵率いる兵は、正面に位置するホロム率いるゴブリンたちとぶつかる。そのため、ハンターたちに遊軍として投石器の撃破を担ってもらいたいのである。
率いる兵を派遣するよりも、様々な依頼をこなしてきているハンターたちへ任せた方が、作戦の成功確率が高いとも判断した。
「林へ向かうルートは主に二つ。正面の戦場を通るか、自陣右を通って向かうかだ。自陣右には敵軍の防衛部隊が配置されている。戦場は説明するまでもなく、危険度は高い」
加えて林へ向かうには川を下らなければならない。自陣右のルートは比較的安全に渡れるが、戦場ルートは確実に敵から狙われる。
「筏は我が軍で用意してある。全員が乗っても大丈夫だ。それを使ってくれ。向こう岸へ到着するまではそれなりに時間がかかるがな。ただし転覆すると困るので、筏上では遠距離であれ攻撃行動は行えない。その点も考慮してくれ」
軍が筏を用意している地点までは乗物で移動できるが、筏に乗る際は降りなければならない。向こう岸に着けば、移動手段は足だけになる。
それと……とラスリド伯爵は付け加える。
「時間がかかりすぎてもマズい。その間に投石部隊の攻撃で、各所に被害が及ぶだろうからな。諸君らが任務に失敗すれば、局地的に不利になる可能性を否定できない」
制限時間をかけられたような状況で、任務を達成しなければならない。
各ハンターの顔に、緊張の色が滲む。
戦場を突っ切れば短時間で投石器の側へ行けるだけでなく、護衛部隊との戦闘を避けられる。しかし、ゴブリンたちが森へ放った狼や大蜥蜴の歪虚がいる。
もう一方の戦場迂回ルートを使えば、川は安全に移動できる。しかし遠回りになるだけでなく、護衛部隊を丸ごと相手にしなければならなくなる。
どちらを選ぶかはハンターの自由だが、いずれにしても簡単ではない。
「危険かつ重要な任務だ。諸君らの健闘を祈る!」
ラスリド伯爵の言葉で作戦会議が終了する。
こうしてヨーク丘陵・右翼の投石器を巡る戦いが開始された。
グラズヘイム王国と茨小鬼軍との争いが小規模な戦闘から大規模な紛争へ様変わりするのに、さして時はかからなかった。
八月上旬、敵軍がルサスール領より北、グルノアと呼ばれる村を占領、これを拠点とする。
八月中旬、ウェルズ・クリストフ・マーロウ大公を盟主とする王国・貴族軍、北方三州へ展開。敵軍、活動を激化。
八月十三日、王国北西部アルテリア地方にて千人規模の敵軍と接敵、膠着。
八月十七日、王国北東部フェルダー地方にて敵山岳部隊が幾つかの集落を強襲。北方各地で接敵。
八月二十一日、ルサスール領より東、マイラ盆地にて敵軍を発見。
八月二十三日、マーロウを中心とした貴族私兵軍及びハンター、敵軍との小競り合いを繰り返しながら西へ移動。
八月二十五日、敵軍に強力な個体を確認。南西へ後退。
八月二十六日、貴族軍左翼、ナーファ伯爵軍が独断専行して敵左翼を強襲、撃退さる。ナーファ伯爵戦死。
八月二十七日、貴族軍中央、ネッサラン子爵及びシャロワ侯爵軍が敵軍を圧倒するも、敵両翼の挟撃により一時分断さる。マーロウ本隊の突撃により両氏脱出。
八月二十八日、マーロウ本隊及びラスリド伯爵軍の奮闘により戦線膠着、戦場は西へ移動。
八月二十九日、ハンターによる強襲で敵軍を崩し、数km単位で北へ押すも、敵の数は然程変わらず。
八月三十日、貴族軍右翼、敵を包み込む動きをするも敵軍は速やかに渡河、後退。マーロウは訝しんで制止するがシャロワ侯爵を中心に進軍。両軍がヨーク丘陵の南北に布陣。
そして八月三十一日。――それは、始まった。
――――とある古ぼけた紙片より
(執筆:???)
●八月三十一日・ヨーク丘陵の戦い
「報告は正確にしろ!」
ウェルズ・クリストフ・マーロウが声を荒げて戦場を見晴かすと、薄く戦塵の広がる先に、惑う騎兵の姿が見えた。中央、左翼にある丘の麓辺りか。戦場を穿つように伸びていた土煙が、とある一点で途切れている。
「奸計により騎兵突撃は防がれたのだな?」
「は! なだらかな丘陵の影に濠のように横長い穴があるようです!」
「濠? ここには戦場の推移によって偶然布陣したのだぞ、そのような……」
不意に湧き上がる不安。その勘に従って指示を出そうとしたマーロウだが――突如、眼前が爆発した。
幕僚の悲鳴。馬の高い嘶き。大量の土砂が落ちる鈍い音。
慌てるな。マーロウは叫んだ。が、声に出ていない。いつの間にか落馬し、その身が地面に横たわっている。
土の爆発。投石器による砲撃か? 今までこの敵軍に投石器はなかった。つまり。
――読んでおったか。
敵は端からこのヨーク丘陵を戦場と設定し、準備していたのだ。
やはり昨日、強権を以て進軍を留めるべきだった。マーロウは忸怩たる思いで土に腕をつく。そして気勢を吐くように命令した。
「全軍、死力を尽くせ! ハンターを中心として確固たる戦闘単位を作り、敵に当たるのだ!」
立ち上がりかけたマーロウはしかし、力尽くように倒れ伏した。自らの意識が遠のいていく感覚。マーロウは皺だらけの拳を握り、思った。
戦闘は止まらない。時代も止まらない。故に私もまた止まる事などできぬ、と。
●八月三十一日・ヨーク丘陵右翼
「――チィ! ゴブリンどもめ。味な真似をしおって!」
ヨーク丘陵右翼で、ラスリド伯爵は声を荒げた。
ゴブリンどもなど、ひとひねりにしてくれる。
意気込んで進軍した結果が、この有様だ。よもや亜人程度が、くだらぬ策を弄してくるとは思わなかった。
先ほど、轟音と共に投石されたのが見えた。狙われたのは本陣。伝令を飛ばして無事は先ほど確認できたが、被害はでている。
急がなければならない。投石が行われたのはこの近く。すぐにでも対処する必要がある。
詳しい場所はわからないが、大体の見当はついている。
現地点から見て、右上の林の中だ。偵察兵の話では、そこから投石が行われた可能性が高いらしかった。
「奇襲が通用するのなど、最初だけよ! 仕掛けがわかれば、何の問題にもならぬわ!」
ラスリド伯爵は、右翼進軍にも同行中だったハンターたちを呼んだ。
「諸君らに任務をお願いする。林の中にいると思われる、ゴブリンどもの投石部隊の撃破だ。遠距離から狙われては、中央も苦戦は必至。一匹の討ち漏らしも許されぬ」
厳しい口調での通達に、ハンターたちが頷く。
ラスリド伯爵率いる兵は、正面に位置するホロム率いるゴブリンたちとぶつかる。そのため、ハンターたちに遊軍として投石器の撃破を担ってもらいたいのである。
率いる兵を派遣するよりも、様々な依頼をこなしてきているハンターたちへ任せた方が、作戦の成功確率が高いとも判断した。
「林へ向かうルートは主に二つ。正面の戦場を通るか、自陣右を通って向かうかだ。自陣右には敵軍の防衛部隊が配置されている。戦場は説明するまでもなく、危険度は高い」
加えて林へ向かうには川を下らなければならない。自陣右のルートは比較的安全に渡れるが、戦場ルートは確実に敵から狙われる。
「筏は我が軍で用意してある。全員が乗っても大丈夫だ。それを使ってくれ。向こう岸へ到着するまではそれなりに時間がかかるがな。ただし転覆すると困るので、筏上では遠距離であれ攻撃行動は行えない。その点も考慮してくれ」
軍が筏を用意している地点までは乗物で移動できるが、筏に乗る際は降りなければならない。向こう岸に着けば、移動手段は足だけになる。
それと……とラスリド伯爵は付け加える。
「時間がかかりすぎてもマズい。その間に投石部隊の攻撃で、各所に被害が及ぶだろうからな。諸君らが任務に失敗すれば、局地的に不利になる可能性を否定できない」
制限時間をかけられたような状況で、任務を達成しなければならない。
各ハンターの顔に、緊張の色が滲む。
戦場を突っ切れば短時間で投石器の側へ行けるだけでなく、護衛部隊との戦闘を避けられる。しかし、ゴブリンたちが森へ放った狼や大蜥蜴の歪虚がいる。
もう一方の戦場迂回ルートを使えば、川は安全に移動できる。しかし遠回りになるだけでなく、護衛部隊を丸ごと相手にしなければならなくなる。
どちらを選ぶかはハンターの自由だが、いずれにしても簡単ではない。
「危険かつ重要な任務だ。諸君らの健闘を祈る!」
ラスリド伯爵の言葉で作戦会議が終了する。
こうしてヨーク丘陵・右翼の投石器を巡る戦いが開始された。
リプレイ本文
●任務開始
「時間との勝負だな……やれやれ、もう少し余裕をもってあたりたいものだ」
戦場における緊張感が最大限に強まる中、ロニ・カルディス(ka0551)が冷静な口調で言った。
呟きにも似たロニの台詞に、最初に頷いたのは榊 兵庫(ka0010)だ。
「……このまま投石器を放置していては、どれだけの被害が出るか分からないからな。我々も全力で当たらせて貰おう」
肌が裂けそうな空気の中、藤堂研司(ka0569)がやる気をみなぎらせる。
「投石器か……あいつら、割と何でもアリだな……驚いてる場合じゃねぇ、伯爵が力を買ってくれてるんなら応えてぶっ潰すまでよ!」
おお……異世界感溢れる戦場だね。水流崎トミヲ(ka4852)はそんな印象を抱きつつ、口を開く。
「ククッ……DT魔法使いの面目躍如だね!」
威勢よく言ったものの、声が震えた。内心で、いやー。正直すっごい怖い! と叫ぶ。
「投石器ね。驚いたわ、ゴブリンったらそんなのを作る頭があるのね」
ケイルカ(ka4121)の台詞だ。
「ゴブリンがこんな策を用意してくるとは誰か裏で指示してる奴でもいるんだろうか。とりあえず今は全力で投石器をぶっ壊さないとな」
顎に指を当て、軽く考えるように柊 真司(ka0705)が言った。
「私も全力でお手伝いします。これ以上、ゴブリンの好きにはさせません」
そう発したのはコルネリア・S(ka5302)だ。すぐ側にはアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)もいる。
「さて、今後の戦局にも影響しそうな重要な任務。傭兵として確りと結果を残そうか」
行動前に作戦を練る必要がある。口を開いたのはロニだ。
「基本方針としては、戦場の右側と左側に班を分けて動くべきだな」
左側を担当する班が戦場や川の対岸にいる敵を抑えている間に、右側を担当する班が渡河する。その後左側の班は兵士と協力して敵を抑えつつ、投石器があると思われる場所までの林を攻撃。射線を作り、川越しに遠距離攻撃を行う。
右側の班は森に隠れながら投石器まで接近し、周辺の敵ごと攻撃して破壊する。投石器の破壊が完了後、余裕があれば残敵の掃討も行う。
異論はなく、各ハンターが自分の担当を決める。
左側の班にはケイルカ、トミヲ、兵庫の三人。
右側の班には残りの五人が入った。
出撃の準備を整えたあと、アルトは用意した方位磁石を片手にラスリド伯爵へ声をかける。
「仲間の移動速度次第だけど、早めに乗り場についたら渡河準備を進めて、馬は伯爵の方へ逃がさせてもらいたい」
「よかろう。兵に伝えておく」
ラスリド伯爵の返事に満足したアルトは、馬で筏乗り場へと向かう。
あとに続くのはコルネリアだ。
「最悪、馬が犠牲になろうとも、敵を無視してまっすぐ向かいましょう。自分がすぐに行けなさそうなら、盾で相手の攻撃を防ぎ、時間を稼いで敵複数の足止めをします」
兵庫も移動しようとするが、その前にラスリド伯爵と打ち合わせを行う。
「川を挟んでの遠距離攻撃で投石器破壊を実行する。俺は魔術師の護衛役となる。そこで伯爵には、正面部隊の牽制をお願いしたい」
会話を終えるなり、兵庫も急いで筏乗り場の地点へ向かう。
全員が戦場横の筏乗り場へ出発したかと思いきや、トミヲだけがひとりその場に残った。
「ラスリド伯爵、ちょっといいかい。彼らを無事に渡河させるために、数的有利を最初に掴みたいんだ」
兵士を移動させてもらい、直後にトミヲは複数のゴブリンを狙ってファイアーボールを放つ。
「溢れろ、煉獄の炎……ッ!」
爆発する火球が、三匹のゴブリンを同時に葬った。
トミヲの先制攻撃で数が減ったゴブリンたちは、隊列を変えて兵士の対応に回る。おかげで、筏乗り場へ移動するハンターへの牽制が疎かになった。
「ゴブリンどもは左のトミヲさんやケイルカさん達が抑えてくれてる! 俺達が考えるのは最速渡河のみ! 魔導バイクを全開でぶっ飛ばして一気に筏に乗り込み! そのまま仲間を信じて最速で向こう岸に行く!」
叫ぶように発しながら、研司が急ぐ。
並走していた真司が、魔導バイクを加速させる。
「石が跳んで来た方向から、投石器のおおよその場所は川向こうの右上の林の奥と推測できる。川を渡るために先ずはバイクに乗って戦場を突っ切って筏を確保。渡河組が全員揃ったら筏に乗り込んで向こう岸に出発するぜ」
各々の乗物に跨るハンターたちが筏乗り場へ到着する。筏へ乗り込むのはロニ、アルト、真司、研司、コルネリアの五名だ。
「右組が筏に乗るのを援護よ。左のゴブリンの片づけを手伝うわね」
ケイルカが視線の先には、味方の兵士たちと戦うゴブリンがいる。
護衛中の兵庫は油断なく周囲を警戒しながら、トランシーバーのチャンネルをオープンにした。渡河組と連絡をとりやすくするためだ。
無事に筏へ乗り込んだ五人が、向こう岸を目指して出発した。目ざとく見つけたゴブリンが、反撃できない筏上のハンターたちを狙う。
そうはさせじと、すかさずトミヲがファイアーボールでゴブリンを攻撃する。
向かってくるゴブリンが倒れるのを確認後、筏乗り場で仲間を守ろうとするケイルカがダメージを負った敵を攻撃する。
「さあ、猫ちゃんおいで。私に力を貸して。ゴブリン相手に戦おう」
覚醒時にやってくる幻影猫が、ひょいと跳ねる。光となって魔術具へ吸い込まれたあと、ケイルカがマジックアローを炸裂させた。
断末魔の悲鳴を上げて、ゴブリンたちが倒れる。ハンターたちの援護で、戦場左側の勢力はラスリド伯爵軍がだいぶ有利になった。
しかし一斉に動くゴブリンたちは、隙を見つけて筏上のハンターたちを弓で攻撃する。
一歩だけ前に出た真司が、構えた盾で飛んできた弓矢を弾き返す。
「ゴブリンの弓なら気にするな。俺が守ってやる」
「ならば私は筏を守ろう」
真司の横にしゃがみ込んだアルトが、筏に命中しそうな矢を盾で防御する。
二人の背中に守られた研司は、ロニやコルネリアとともに早く着けとばかりに向こう岸を睨みつける。
「サバイバルの記憶を呼び起こせ……川の流れを読んで、筏をコントロールするんだ!」
■
筏上で仲間たちがゴブリンの弓矢攻撃に耐えている頃、渡河に参加しなかったトミヲが兵士たちと協力して敵の殲滅に尽力していた。
ラスリド伯爵の指揮で兵士たちがゴブリンを引きつける。事前にトミヲから協力を依頼されていたからだ。
順調に一塊となるゴブリンたち。完全に想定内の展開だった。
「……そこを、焼き払う、と」
炸裂したファイアーボールの衝撃で、ゴブリンたちが次々と倒れる。
比較的安全が確保できたところで、ケイルカが護衛役の兵庫とともに北上する。
投石器のある位置は大体わかっている。伯爵から教えてもらった予想地点にファイアーボールを放ち、良好な視界を得るのが目的だ。
そうすれば遠距離からの魔法攻撃で、投石器を破壊できる。目論みどおりいかなくとも、この地点なら向こう岸に敵の援軍が現れた場合に対処しやすい。
「猫ちゃん、一緒にあの場所をお掃除するわよ」
強烈な衝撃が火球の着弾地点に発生するも、場にある木々をすべて消滅させるには至らない。
1度で無理なら2度3度頑張るつもりのケイルカは、めげずにファイアボールを放つ。
努力の結果か、丸見えとはいかなくとも、林の中に隠れていた投石器をなんとか肉眼で確認できた。
しかし狙いを定めてマジックアローを放とうにも、射線上にはまだ木々が存在する。これでは投石器を破壊できないかもしれない。
ケイルカが悩んでいる頃、すぐ横の戦場では、配下のゴブリンを倒されたホロムが怒りに打ち震えていた。
ホロム・ゴブリンの強烈な攻撃に、兵士たちの体が宙を舞う。
圧倒的な腕力を誇るホロム・ゴブリンが、次に狙いを定めたのはケイルカだった。
地震のごとき震動を発生させてホロム・ゴブリンが迫る。ケイルカの前に兵庫が出る。
「仲間に討ち掛かって来る敵は俺が蹴散らす」
ホロム・ゴブリンの棍棒を、軽やかに回避する。
素早く間合いを詰め、渾身の一撃を上段から振り下ろす。
防御など役に立たない強烈な一撃となり、ホロム・ゴブリンが巨大なダメージによって地面に片膝をつく。
今だとばかりにトミヲがライトニングを放ち、伯爵軍とも協力してホロム・ゴブリンを包囲する。
いかに強力な敵とはいえ、実力あるハンターが加わった一団に囲まれて攻撃されれば不利になる。
激昂して両腕を振るうホロム・ゴブリンのせいで兵士の犠牲は出るものの、戦局をひっくり返されるまではいかない。
最終的に兵庫の一撃で勝敗は決した。砂煙を上げて、ホロム・ゴブリンが巨大な体を仰向けにして息絶えた。
「敵の背後は取った。このまま伯爵の部隊と連携して、敵を挟撃する」
宣言するように言うと、兵庫は生き残っているゴブリンを新たな標的にするのだった。
■
筏に乗っていたハンターたちが、ようやく向こう岸へ到着する。
「投石器の詳しい場所をアリスに探らせよう」
アルトが同行させている桜型妖精のアリスに調査を命じた。
待つこと少し。アリスは投石器や敵の詳しい位置を教えてくれたが、その代償で敵に発見されてしまう。
近くにいた大蜥蜴型のウォイドが、ハンターたち目がけて突進してくる。狼型の歪虚も接近中だ。
「他の皆が投石機の破壊に集中できるように……最速で投石機に向かえるように……! 大蜥蜴! 奴は俺が引き付ける!」
大蜥蜴歪虚を、言葉どおりに研司が引き受ける。
ならば狼型の歪虚は自分がと、ロニが迎撃する。
「狼歪虚は俺が食い止めよう。投石器を破壊するために、先へ進んでくれ」
他のハンターに被害が及ばないよう、ロニが狼歪虚の牙を足の防具で受け止める。
軽微なダメージをものともせず、蹴りを放つように狼歪虚を引き離す。直後にセイクリッドフラッシュで二匹の狼歪虚にダメージを与える。
研司が大蜥蜴歪虚を、ロニが狼歪虚を引き受けてくれてる間に、アルト、真司、コルネリアは投石器を目指す。
その際にアルトはロニの背中へ声をかける。
「投石器をそれなりに正確に打てるということは、ゴブリン側も何らかの情報伝達手段を持っている可能性がある。戦争で情報と言うのは特に重要。その辺りを少し気にして貰えないか」
「わかった。他の仲間にも、トランシーバーを使って伝えよう」
ロニからの返答を受け取るとすぐに、アルトも走り出した。
「真っ直ぐ投石器を目指すのはもちろんですが、直接狙う遠距離攻撃組のサポートもします」
射線を邪魔してるであろう木を、コルネリアがハンマーで壊す。根こそぎというわけにはいかないが、それなりに見晴らしは良くなる。
待ってましたとばかりに、向こう岸にいるケイルカがマジックアローで投石器のひとつを破壊した。
■
左側のゴブリンがほぼ一掃できた頃、トミヲは大急ぎで右下へ移動していた。
林前に陣取るゴブリンたちを、牽制するためだ。
注意を引きつけるためにも、川向こうに見えたゴブリンたちにファイアーボールをお見舞いする。
ゴブリンたちが怒り狂うも、向こう岸に筏はない。トミヲがわざわざ出向かなければ、直接攻撃による被害は受けないはずだ。
とはいえ、弓矢による反撃はあるかもしれない。内心恐怖で震えつつも、友人たちの成功の為に頑張ろうと決めた。
「……さて、アルトくん、シンジくん、上手くやってくれよ……っ!」
■
「木々で射線が塞がれる? その逆だ! 敵さえ見えてりゃ、跳弾のタネのこの木々が! 無限の射線を生み出すっ!!」
あえて大蜥蜴歪虚に自分を追わせていた研司が、迷彩しながら隠れて制圧射撃を放つ。
一定距離を保ちながら射撃を行い、直線の射線が通ったところで切り札の凍み矢弾を食らわせた。
動きの鈍くなった大蜥蜴にできた隙を見逃さず、研司はきっちりとどめを刺す。
なんとか自分の役目を終えると、投石器を破壊中の味方を応援するため、休憩も取らずに再び走り出した。
■
狼歪虚と戦闘中のロニは、敵の攻撃を防御や回避しつつ、効果範囲内となったところでセイクリッドフラッシュを繰り出す。
研司が大蜥蜴歪虚を倒した頃には、ロニも二匹の狼歪虚を仕留めるのに成功した。
「生命力が3分の1を切った者が居れば、ヒーリングスフィアで可能な限り纏めて回復できる。無理だけはしてくれるなよ」
そう言いながら、ロニも他の仲間と合流しようと林の中を歩き出した。
■
投石器の破壊に向かったアルトが、まずはゴブリンたちを誘き出そうと、あえて目の前を横切った。
しかし投石器の防衛が任務のゴブリンたちは、持ち場を離れようとはしない。
それならと、アルトは邪魔されないように護衛のゴブリンを攻撃する。
一匹が倒れたところに真司が突進し、ファイアスローワーで複数の投石器をまとめて破壊しにかかる。
「これ以上好きにはさせないぜ。燃え尽きちまいな」
ゴブリンが騒ぐ。狙われた投石器がほぼ、壊されたからだ。
「投石器はマンゴネル型のようですね。バネ状にねあげる皿の部分を先に狙います」
コルネリアも、着実に投石器を壊していく。普段使いなれないハンマーだが、目的は十分に果たせそうだった。
アルトが護衛のゴブリンを。真司とコルネリアが投石器の破壊を担当する。
投石器を守る部隊の異変を察し、他のゴブリンが援軍にやってくるも、川向こうにいるケイルカが対処する。
「いっけー! ぜーんぶ壊しちゃえー!」
ケイルカのファイアーボールのおかげで、援軍のゴブリンによる損害は発生しない。
それでも生き残りの護衛部隊のゴブリンが、弓でハンターを攻撃し、投石器を守ろうとする。
「私が補助に回ります。今のうちに投石器の破壊を優先してください」
盾を持ち、防御に専念するコルネリアに守られる形で、真司が投石器への攻撃を継続する。
「任せとけ。よし、こいつで最後だ! 全部ぶっ壊せたし、仲間に連絡をするか」
●任務完了
投石器の破壊完了後すぐに、任務を達成したハンターたちが次々とラスリド伯爵に合流する。
投石器を守り切れなかったゴブリンたちは、程なくして敗走を開始した。
「今回はご苦労だった。諸君らのような強者が配下にいてくれたら、私も楽できるのだがな」
豪快にラスリド伯爵が笑う。こんなふうに笑いあえるのも、ハンターたちが投石器の破壊に尽力してくれたおかげだった。
大局がどうなるかはいまだ不明なままだが、この場の戦闘は、ラスリド伯爵軍の勝利に終わったのである。
「時間との勝負だな……やれやれ、もう少し余裕をもってあたりたいものだ」
戦場における緊張感が最大限に強まる中、ロニ・カルディス(ka0551)が冷静な口調で言った。
呟きにも似たロニの台詞に、最初に頷いたのは榊 兵庫(ka0010)だ。
「……このまま投石器を放置していては、どれだけの被害が出るか分からないからな。我々も全力で当たらせて貰おう」
肌が裂けそうな空気の中、藤堂研司(ka0569)がやる気をみなぎらせる。
「投石器か……あいつら、割と何でもアリだな……驚いてる場合じゃねぇ、伯爵が力を買ってくれてるんなら応えてぶっ潰すまでよ!」
おお……異世界感溢れる戦場だね。水流崎トミヲ(ka4852)はそんな印象を抱きつつ、口を開く。
「ククッ……DT魔法使いの面目躍如だね!」
威勢よく言ったものの、声が震えた。内心で、いやー。正直すっごい怖い! と叫ぶ。
「投石器ね。驚いたわ、ゴブリンったらそんなのを作る頭があるのね」
ケイルカ(ka4121)の台詞だ。
「ゴブリンがこんな策を用意してくるとは誰か裏で指示してる奴でもいるんだろうか。とりあえず今は全力で投石器をぶっ壊さないとな」
顎に指を当て、軽く考えるように柊 真司(ka0705)が言った。
「私も全力でお手伝いします。これ以上、ゴブリンの好きにはさせません」
そう発したのはコルネリア・S(ka5302)だ。すぐ側にはアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)もいる。
「さて、今後の戦局にも影響しそうな重要な任務。傭兵として確りと結果を残そうか」
行動前に作戦を練る必要がある。口を開いたのはロニだ。
「基本方針としては、戦場の右側と左側に班を分けて動くべきだな」
左側を担当する班が戦場や川の対岸にいる敵を抑えている間に、右側を担当する班が渡河する。その後左側の班は兵士と協力して敵を抑えつつ、投石器があると思われる場所までの林を攻撃。射線を作り、川越しに遠距離攻撃を行う。
右側の班は森に隠れながら投石器まで接近し、周辺の敵ごと攻撃して破壊する。投石器の破壊が完了後、余裕があれば残敵の掃討も行う。
異論はなく、各ハンターが自分の担当を決める。
左側の班にはケイルカ、トミヲ、兵庫の三人。
右側の班には残りの五人が入った。
出撃の準備を整えたあと、アルトは用意した方位磁石を片手にラスリド伯爵へ声をかける。
「仲間の移動速度次第だけど、早めに乗り場についたら渡河準備を進めて、馬は伯爵の方へ逃がさせてもらいたい」
「よかろう。兵に伝えておく」
ラスリド伯爵の返事に満足したアルトは、馬で筏乗り場へと向かう。
あとに続くのはコルネリアだ。
「最悪、馬が犠牲になろうとも、敵を無視してまっすぐ向かいましょう。自分がすぐに行けなさそうなら、盾で相手の攻撃を防ぎ、時間を稼いで敵複数の足止めをします」
兵庫も移動しようとするが、その前にラスリド伯爵と打ち合わせを行う。
「川を挟んでの遠距離攻撃で投石器破壊を実行する。俺は魔術師の護衛役となる。そこで伯爵には、正面部隊の牽制をお願いしたい」
会話を終えるなり、兵庫も急いで筏乗り場の地点へ向かう。
全員が戦場横の筏乗り場へ出発したかと思いきや、トミヲだけがひとりその場に残った。
「ラスリド伯爵、ちょっといいかい。彼らを無事に渡河させるために、数的有利を最初に掴みたいんだ」
兵士を移動させてもらい、直後にトミヲは複数のゴブリンを狙ってファイアーボールを放つ。
「溢れろ、煉獄の炎……ッ!」
爆発する火球が、三匹のゴブリンを同時に葬った。
トミヲの先制攻撃で数が減ったゴブリンたちは、隊列を変えて兵士の対応に回る。おかげで、筏乗り場へ移動するハンターへの牽制が疎かになった。
「ゴブリンどもは左のトミヲさんやケイルカさん達が抑えてくれてる! 俺達が考えるのは最速渡河のみ! 魔導バイクを全開でぶっ飛ばして一気に筏に乗り込み! そのまま仲間を信じて最速で向こう岸に行く!」
叫ぶように発しながら、研司が急ぐ。
並走していた真司が、魔導バイクを加速させる。
「石が跳んで来た方向から、投石器のおおよその場所は川向こうの右上の林の奥と推測できる。川を渡るために先ずはバイクに乗って戦場を突っ切って筏を確保。渡河組が全員揃ったら筏に乗り込んで向こう岸に出発するぜ」
各々の乗物に跨るハンターたちが筏乗り場へ到着する。筏へ乗り込むのはロニ、アルト、真司、研司、コルネリアの五名だ。
「右組が筏に乗るのを援護よ。左のゴブリンの片づけを手伝うわね」
ケイルカが視線の先には、味方の兵士たちと戦うゴブリンがいる。
護衛中の兵庫は油断なく周囲を警戒しながら、トランシーバーのチャンネルをオープンにした。渡河組と連絡をとりやすくするためだ。
無事に筏へ乗り込んだ五人が、向こう岸を目指して出発した。目ざとく見つけたゴブリンが、反撃できない筏上のハンターたちを狙う。
そうはさせじと、すかさずトミヲがファイアーボールでゴブリンを攻撃する。
向かってくるゴブリンが倒れるのを確認後、筏乗り場で仲間を守ろうとするケイルカがダメージを負った敵を攻撃する。
「さあ、猫ちゃんおいで。私に力を貸して。ゴブリン相手に戦おう」
覚醒時にやってくる幻影猫が、ひょいと跳ねる。光となって魔術具へ吸い込まれたあと、ケイルカがマジックアローを炸裂させた。
断末魔の悲鳴を上げて、ゴブリンたちが倒れる。ハンターたちの援護で、戦場左側の勢力はラスリド伯爵軍がだいぶ有利になった。
しかし一斉に動くゴブリンたちは、隙を見つけて筏上のハンターたちを弓で攻撃する。
一歩だけ前に出た真司が、構えた盾で飛んできた弓矢を弾き返す。
「ゴブリンの弓なら気にするな。俺が守ってやる」
「ならば私は筏を守ろう」
真司の横にしゃがみ込んだアルトが、筏に命中しそうな矢を盾で防御する。
二人の背中に守られた研司は、ロニやコルネリアとともに早く着けとばかりに向こう岸を睨みつける。
「サバイバルの記憶を呼び起こせ……川の流れを読んで、筏をコントロールするんだ!」
■
筏上で仲間たちがゴブリンの弓矢攻撃に耐えている頃、渡河に参加しなかったトミヲが兵士たちと協力して敵の殲滅に尽力していた。
ラスリド伯爵の指揮で兵士たちがゴブリンを引きつける。事前にトミヲから協力を依頼されていたからだ。
順調に一塊となるゴブリンたち。完全に想定内の展開だった。
「……そこを、焼き払う、と」
炸裂したファイアーボールの衝撃で、ゴブリンたちが次々と倒れる。
比較的安全が確保できたところで、ケイルカが護衛役の兵庫とともに北上する。
投石器のある位置は大体わかっている。伯爵から教えてもらった予想地点にファイアーボールを放ち、良好な視界を得るのが目的だ。
そうすれば遠距離からの魔法攻撃で、投石器を破壊できる。目論みどおりいかなくとも、この地点なら向こう岸に敵の援軍が現れた場合に対処しやすい。
「猫ちゃん、一緒にあの場所をお掃除するわよ」
強烈な衝撃が火球の着弾地点に発生するも、場にある木々をすべて消滅させるには至らない。
1度で無理なら2度3度頑張るつもりのケイルカは、めげずにファイアボールを放つ。
努力の結果か、丸見えとはいかなくとも、林の中に隠れていた投石器をなんとか肉眼で確認できた。
しかし狙いを定めてマジックアローを放とうにも、射線上にはまだ木々が存在する。これでは投石器を破壊できないかもしれない。
ケイルカが悩んでいる頃、すぐ横の戦場では、配下のゴブリンを倒されたホロムが怒りに打ち震えていた。
ホロム・ゴブリンの強烈な攻撃に、兵士たちの体が宙を舞う。
圧倒的な腕力を誇るホロム・ゴブリンが、次に狙いを定めたのはケイルカだった。
地震のごとき震動を発生させてホロム・ゴブリンが迫る。ケイルカの前に兵庫が出る。
「仲間に討ち掛かって来る敵は俺が蹴散らす」
ホロム・ゴブリンの棍棒を、軽やかに回避する。
素早く間合いを詰め、渾身の一撃を上段から振り下ろす。
防御など役に立たない強烈な一撃となり、ホロム・ゴブリンが巨大なダメージによって地面に片膝をつく。
今だとばかりにトミヲがライトニングを放ち、伯爵軍とも協力してホロム・ゴブリンを包囲する。
いかに強力な敵とはいえ、実力あるハンターが加わった一団に囲まれて攻撃されれば不利になる。
激昂して両腕を振るうホロム・ゴブリンのせいで兵士の犠牲は出るものの、戦局をひっくり返されるまではいかない。
最終的に兵庫の一撃で勝敗は決した。砂煙を上げて、ホロム・ゴブリンが巨大な体を仰向けにして息絶えた。
「敵の背後は取った。このまま伯爵の部隊と連携して、敵を挟撃する」
宣言するように言うと、兵庫は生き残っているゴブリンを新たな標的にするのだった。
■
筏に乗っていたハンターたちが、ようやく向こう岸へ到着する。
「投石器の詳しい場所をアリスに探らせよう」
アルトが同行させている桜型妖精のアリスに調査を命じた。
待つこと少し。アリスは投石器や敵の詳しい位置を教えてくれたが、その代償で敵に発見されてしまう。
近くにいた大蜥蜴型のウォイドが、ハンターたち目がけて突進してくる。狼型の歪虚も接近中だ。
「他の皆が投石機の破壊に集中できるように……最速で投石機に向かえるように……! 大蜥蜴! 奴は俺が引き付ける!」
大蜥蜴歪虚を、言葉どおりに研司が引き受ける。
ならば狼型の歪虚は自分がと、ロニが迎撃する。
「狼歪虚は俺が食い止めよう。投石器を破壊するために、先へ進んでくれ」
他のハンターに被害が及ばないよう、ロニが狼歪虚の牙を足の防具で受け止める。
軽微なダメージをものともせず、蹴りを放つように狼歪虚を引き離す。直後にセイクリッドフラッシュで二匹の狼歪虚にダメージを与える。
研司が大蜥蜴歪虚を、ロニが狼歪虚を引き受けてくれてる間に、アルト、真司、コルネリアは投石器を目指す。
その際にアルトはロニの背中へ声をかける。
「投石器をそれなりに正確に打てるということは、ゴブリン側も何らかの情報伝達手段を持っている可能性がある。戦争で情報と言うのは特に重要。その辺りを少し気にして貰えないか」
「わかった。他の仲間にも、トランシーバーを使って伝えよう」
ロニからの返答を受け取るとすぐに、アルトも走り出した。
「真っ直ぐ投石器を目指すのはもちろんですが、直接狙う遠距離攻撃組のサポートもします」
射線を邪魔してるであろう木を、コルネリアがハンマーで壊す。根こそぎというわけにはいかないが、それなりに見晴らしは良くなる。
待ってましたとばかりに、向こう岸にいるケイルカがマジックアローで投石器のひとつを破壊した。
■
左側のゴブリンがほぼ一掃できた頃、トミヲは大急ぎで右下へ移動していた。
林前に陣取るゴブリンたちを、牽制するためだ。
注意を引きつけるためにも、川向こうに見えたゴブリンたちにファイアーボールをお見舞いする。
ゴブリンたちが怒り狂うも、向こう岸に筏はない。トミヲがわざわざ出向かなければ、直接攻撃による被害は受けないはずだ。
とはいえ、弓矢による反撃はあるかもしれない。内心恐怖で震えつつも、友人たちの成功の為に頑張ろうと決めた。
「……さて、アルトくん、シンジくん、上手くやってくれよ……っ!」
■
「木々で射線が塞がれる? その逆だ! 敵さえ見えてりゃ、跳弾のタネのこの木々が! 無限の射線を生み出すっ!!」
あえて大蜥蜴歪虚に自分を追わせていた研司が、迷彩しながら隠れて制圧射撃を放つ。
一定距離を保ちながら射撃を行い、直線の射線が通ったところで切り札の凍み矢弾を食らわせた。
動きの鈍くなった大蜥蜴にできた隙を見逃さず、研司はきっちりとどめを刺す。
なんとか自分の役目を終えると、投石器を破壊中の味方を応援するため、休憩も取らずに再び走り出した。
■
狼歪虚と戦闘中のロニは、敵の攻撃を防御や回避しつつ、効果範囲内となったところでセイクリッドフラッシュを繰り出す。
研司が大蜥蜴歪虚を倒した頃には、ロニも二匹の狼歪虚を仕留めるのに成功した。
「生命力が3分の1を切った者が居れば、ヒーリングスフィアで可能な限り纏めて回復できる。無理だけはしてくれるなよ」
そう言いながら、ロニも他の仲間と合流しようと林の中を歩き出した。
■
投石器の破壊に向かったアルトが、まずはゴブリンたちを誘き出そうと、あえて目の前を横切った。
しかし投石器の防衛が任務のゴブリンたちは、持ち場を離れようとはしない。
それならと、アルトは邪魔されないように護衛のゴブリンを攻撃する。
一匹が倒れたところに真司が突進し、ファイアスローワーで複数の投石器をまとめて破壊しにかかる。
「これ以上好きにはさせないぜ。燃え尽きちまいな」
ゴブリンが騒ぐ。狙われた投石器がほぼ、壊されたからだ。
「投石器はマンゴネル型のようですね。バネ状にねあげる皿の部分を先に狙います」
コルネリアも、着実に投石器を壊していく。普段使いなれないハンマーだが、目的は十分に果たせそうだった。
アルトが護衛のゴブリンを。真司とコルネリアが投石器の破壊を担当する。
投石器を守る部隊の異変を察し、他のゴブリンが援軍にやってくるも、川向こうにいるケイルカが対処する。
「いっけー! ぜーんぶ壊しちゃえー!」
ケイルカのファイアーボールのおかげで、援軍のゴブリンによる損害は発生しない。
それでも生き残りの護衛部隊のゴブリンが、弓でハンターを攻撃し、投石器を守ろうとする。
「私が補助に回ります。今のうちに投石器の破壊を優先してください」
盾を持ち、防御に専念するコルネリアに守られる形で、真司が投石器への攻撃を継続する。
「任せとけ。よし、こいつで最後だ! 全部ぶっ壊せたし、仲間に連絡をするか」
●任務完了
投石器の破壊完了後すぐに、任務を達成したハンターたちが次々とラスリド伯爵に合流する。
投石器を守り切れなかったゴブリンたちは、程なくして敗走を開始した。
「今回はご苦労だった。諸君らのような強者が配下にいてくれたら、私も楽できるのだがな」
豪快にラスリド伯爵が笑う。こんなふうに笑いあえるのも、ハンターたちが投石器の破壊に尽力してくれたおかげだった。
大局がどうなるかはいまだ不明なままだが、この場の戦闘は、ラスリド伯爵軍の勝利に終わったのである。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 5人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
作戦相談 藤堂研司(ka0569) 人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/09/18 16:45:39 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/16 13:30:35 |