ゲスト
(ka0000)
【聖呪】ウィーダの街の戦い
マスター:赤山優牙

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/09/15 22:00
- 完成日
- 2015/09/23 01:02
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●王国北部の山中にて
大柄のゴブリンが2体、これまた、普通の大きさのゴブリンに囲まれながら面向かっている。
取り囲んでいるゴブリンの数は圧倒的な数だった。
「ゴラグオ、貴様ハ我ガ傘下ニハハイラナイトイウノカ!」
その様に叫ばれた大柄の亜人は、「そうだ」と堂々と発言すると、これまた、大型のラプターに飛び乗った。
「交渉はここまでだ。俺と俺の軍団は関係ない」
「強ガッタ事ヲ後デ後悔スルトイイ。ゴラグオ」
「人間を甘くみない方がいい事だな」
それだけ告げると、ゴラグオと彼の軍団は、亜人の囲みから離脱して行く。
リトルラプターに騎乗した普通の大きさの亜人――エネミン――がゴラグオに話しかけた。
「ニンゲンガ、カツト、ミマシタカ」
王国北部各地で広げられる大規模な戦い。
ゴブリン達亜人と人間との戦いは今の所、亜人の方が優勢だ。特に、異形と呼ばれる力を手にしたゴブリン達は驚くべき程、力を手にしている。
それでも、ゴラグオは人間が勝つと思っていた。
「人間が王国だけに存在しているわけではないからな」
ゴラグオは知っていた。
取引した人間から得た情報だ。魔導技術を駆使した兵器、別の世界から飛来した巨大な船。亜人と人間は違うのだ。
だから、ゴラグオは人間と取引をした。お互い、不干渉していた頃に戻るという取引だ。それは、長年、亜人と王国北部に住む人間が暗黙の了解として行ってきていた事ではあるのだが……。
「ウィーダノマチノ、ニンゲン、イナクナルト、ヤクソク、イミガナイ」
「その通りだ。いざとなれば、手助けする必要もある。その為の条件も決まっている」
ラプターを駆るゴラグオ達は、山の奥深くへと消えて行った。
●ウィーダの街にて
「移転完了しました」
領主に報告したのは、『軍師騎士』と呼ばれる一人の騎士であった。
満足そうな表情で、領主は騎士の腕を掴む。
「西部戦線から貴公を引き抜いた意味はあったという事だ。ありがとう。青の隊の騎士、ノセヤよ」
騎士ノセヤは、ウィーダの街の移転を無事に完了させる任務を領主から要請されていたのだ。
「私の力ではありません。ハンター達の活躍あってこそです」
パルシア村を繋ぐ街道の保持、北の山脈に潜む亜人の把握、亜人ゴラグオと彼の軍団との取引、『北の戦乙女』との関わり等、重要な局面で、ハンター達は良い結果を残した。
その結果、『軍師騎士』が計画した通り、事は進み、亜人達の襲撃が続くこの時期に、ほぼ無傷で街の移転が完了したのだ。
「それに、今は危惧すべき状態に陥っています」
王国北部の地図を広げるノセヤ。
「茨小鬼の南下か」
「パルシア村と移転先の街が抜かれると、王国中央に亜人達が殺到する事になります」
「どう見る?」
覗きこむように領主は地図に身体を乗り出しながら訊ねる。
「いずれ、決戦が発生すると思います。双方が望んでいる事ですので」
「……亜人にとっては、王都に攻め入る前に戦力を壊滅させておきたいし、我々人間にとっては、亜人を元の勢力域まで追い返す必要があるからか」
考えるような仕草と溜め息をついて、領主は乗り出していた身体を戻した。
ノセヤは領主の言葉に頷いた。
「移転の最後の仕上げを行う必要があります」
「そうだったな。周辺の亜人の殲滅させねば、な」
領主は顔を上げて、まったく人が居なくなった街を窓越しに眺める。
「私は……『軍師騎士』と呼ばれるのが恥ずかしいです。この様な美しい街を破壊しようとしているのですから」
領主の背に向けてノセヤはそんな言葉を発した。
「最終的な責任は全て、私にある。貴公は提案をしただけだ。『街』自体を囮と罠にしようというその発想、実に見事だったぞ」
「……ありがとうございました。また、いずれ、どこかで」
ノセヤは一礼をして、静かに部屋から去って行った。
●郊外の山中
亜人達が意気揚々とウィーダの街に向かっていた。
500体前後はいるので、かなりの戦力だ。率いるのは、茨の力に見せられた100体程のゴブリンの群れのボスだった。ボスは周辺の群れで、まだ、茨の力を得ていない群れを呼び掛けて集めた。
そして、茨の力を持つ者と取引したのだ。今だ健在であるウィーダの街を攻め落とした暁には、茨の力を得る事が約束されている。
「人間ノ街襲イ、全テを、奪イ取ル!」
振り上げた槍を街に向けると、亜人達は叫び声を上げながら街に向かって行った。
全てを奪い、そして、茨の力を手にする為に……。
だが、亜人達は知るよしもなかった。
既にウィーダの街には誰も、何も残っていない事を。
街に攻め入る事自体が、罠であった事を。
そして、罠を発動させる為に、ハンター達が街に潜伏している事を。
大柄のゴブリンが2体、これまた、普通の大きさのゴブリンに囲まれながら面向かっている。
取り囲んでいるゴブリンの数は圧倒的な数だった。
「ゴラグオ、貴様ハ我ガ傘下ニハハイラナイトイウノカ!」
その様に叫ばれた大柄の亜人は、「そうだ」と堂々と発言すると、これまた、大型のラプターに飛び乗った。
「交渉はここまでだ。俺と俺の軍団は関係ない」
「強ガッタ事ヲ後デ後悔スルトイイ。ゴラグオ」
「人間を甘くみない方がいい事だな」
それだけ告げると、ゴラグオと彼の軍団は、亜人の囲みから離脱して行く。
リトルラプターに騎乗した普通の大きさの亜人――エネミン――がゴラグオに話しかけた。
「ニンゲンガ、カツト、ミマシタカ」
王国北部各地で広げられる大規模な戦い。
ゴブリン達亜人と人間との戦いは今の所、亜人の方が優勢だ。特に、異形と呼ばれる力を手にしたゴブリン達は驚くべき程、力を手にしている。
それでも、ゴラグオは人間が勝つと思っていた。
「人間が王国だけに存在しているわけではないからな」
ゴラグオは知っていた。
取引した人間から得た情報だ。魔導技術を駆使した兵器、別の世界から飛来した巨大な船。亜人と人間は違うのだ。
だから、ゴラグオは人間と取引をした。お互い、不干渉していた頃に戻るという取引だ。それは、長年、亜人と王国北部に住む人間が暗黙の了解として行ってきていた事ではあるのだが……。
「ウィーダノマチノ、ニンゲン、イナクナルト、ヤクソク、イミガナイ」
「その通りだ。いざとなれば、手助けする必要もある。その為の条件も決まっている」
ラプターを駆るゴラグオ達は、山の奥深くへと消えて行った。
●ウィーダの街にて
「移転完了しました」
領主に報告したのは、『軍師騎士』と呼ばれる一人の騎士であった。
満足そうな表情で、領主は騎士の腕を掴む。
「西部戦線から貴公を引き抜いた意味はあったという事だ。ありがとう。青の隊の騎士、ノセヤよ」
騎士ノセヤは、ウィーダの街の移転を無事に完了させる任務を領主から要請されていたのだ。
「私の力ではありません。ハンター達の活躍あってこそです」
パルシア村を繋ぐ街道の保持、北の山脈に潜む亜人の把握、亜人ゴラグオと彼の軍団との取引、『北の戦乙女』との関わり等、重要な局面で、ハンター達は良い結果を残した。
その結果、『軍師騎士』が計画した通り、事は進み、亜人達の襲撃が続くこの時期に、ほぼ無傷で街の移転が完了したのだ。
「それに、今は危惧すべき状態に陥っています」
王国北部の地図を広げるノセヤ。
「茨小鬼の南下か」
「パルシア村と移転先の街が抜かれると、王国中央に亜人達が殺到する事になります」
「どう見る?」
覗きこむように領主は地図に身体を乗り出しながら訊ねる。
「いずれ、決戦が発生すると思います。双方が望んでいる事ですので」
「……亜人にとっては、王都に攻め入る前に戦力を壊滅させておきたいし、我々人間にとっては、亜人を元の勢力域まで追い返す必要があるからか」
考えるような仕草と溜め息をついて、領主は乗り出していた身体を戻した。
ノセヤは領主の言葉に頷いた。
「移転の最後の仕上げを行う必要があります」
「そうだったな。周辺の亜人の殲滅させねば、な」
領主は顔を上げて、まったく人が居なくなった街を窓越しに眺める。
「私は……『軍師騎士』と呼ばれるのが恥ずかしいです。この様な美しい街を破壊しようとしているのですから」
領主の背に向けてノセヤはそんな言葉を発した。
「最終的な責任は全て、私にある。貴公は提案をしただけだ。『街』自体を囮と罠にしようというその発想、実に見事だったぞ」
「……ありがとうございました。また、いずれ、どこかで」
ノセヤは一礼をして、静かに部屋から去って行った。
●郊外の山中
亜人達が意気揚々とウィーダの街に向かっていた。
500体前後はいるので、かなりの戦力だ。率いるのは、茨の力に見せられた100体程のゴブリンの群れのボスだった。ボスは周辺の群れで、まだ、茨の力を得ていない群れを呼び掛けて集めた。
そして、茨の力を持つ者と取引したのだ。今だ健在であるウィーダの街を攻め落とした暁には、茨の力を得る事が約束されている。
「人間ノ街襲イ、全テを、奪イ取ル!」
振り上げた槍を街に向けると、亜人達は叫び声を上げながら街に向かって行った。
全てを奪い、そして、茨の力を手にする為に……。
だが、亜人達は知るよしもなかった。
既にウィーダの街には誰も、何も残っていない事を。
街に攻め入る事自体が、罠であった事を。
そして、罠を発動させる為に、ハンター達が街に潜伏している事を。
リプレイ本文
●戦いの前に
昼間というのに、人々が生活する声や音は聞こえてこない。
夜中よりも静かに、街はただ、最後の時を迎えようとしている。
『綺麗な街なのに、もったいない』
後天性聴唖者であるエヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が、スケッチブックにそんな言葉を書き込んで、仲間達に見せた。
「そう……だな……」
キャリコ・ビューイ(ka5044)が同意した。
領主館の屋上から見える整然とした街並。ウィーダの街は、大峡谷にも近いとあって、亜人との戦いを強いられており、移転が行われた。既に誰も住んではいない。今回の作戦は、街自体を罠として使う事になっている。それは、街を破壊する事も意味していた。
「描き終わったのか?」
キャリコの言葉にエヴァは頷く。
キャンバスには、ウィーダの街が描かれていた。
「街を罠にするとは、ずいぶん大胆な作戦じゃねェか。あの細っこい騎士も出世したもんだなァ」
感心した様子でシガレット=ウナギパイ(ka2884)が、愛用のタバコを吸いながら言う。
王国を襲った歪虚との大規模な戦いの折、後に、『軍師騎士』と呼ばれる事になる、騎士からの依頼で、一夜城構築防衛の依頼を、シガレットが受けたのは、昨年の事だ。
鎧を装備したら動けなくなるんじゃないかって位、細かった騎士は、王国内を転戦し、『軍師騎士』と一部では呼ばれている。亜人襲来で王国北部では大きな被害で出ている中で、ウィーダの街は損害なしでここまできただけではなく、住民の移転さえも成功させた。
「街を壊すなんて、思い切ったことを考えたものねー」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)が行き場のない感傷に浸っている事を隠しながら、言葉を口にした。
徹底的に破壊して良いという。
領主の話しによると、街は破壊しつくした後、埋め立てて、新たに支城を建てるらしい。
「とにかく、いっぱいぶっ壊しゃいいんですねぃ りょーかい、でさ!」
杖をくるくると回しながら、鬼百合(ka3667)が宣言する。
『確かに、ここまで来たら一切合財全部壊しちゃった方が次は作りやすいかしら、やってやろうじゃない!』
エヴァが地面に描き込んだ。ある意味、落書きだが、この領主館も破壊するのである。今なら、描き放題だ。
一行は、その文章を読んで、力強く頷く。
「俺達が此処で、亜人の数を減らさないと他戦線の仲間の死ぬ数が増えるのか……奴らにゲリラ戦の恐怖を教育してやる」
無骨な赤い鋼の金槌を担いだキャリコが街に向かってくる亜人の軍団に向かって言った。
全体の作戦は、この後、追撃戦が待っている予定なのだ。この街で、亜人の軍団にダメージを与えれば、その分、追撃戦が楽になる。
その為、ハンター達は、街を破壊するだけではなく、可能な限り亜人の討伐も行うつもりなのだ。
●領主館付近の路地にて
轟音が響き渡る。
領主館とその周囲の建物が、次々に爆発を起こしたのだ。我先にと集まっていた亜人は、倒れ伏したり、パニックになり走りまわったりと大混乱に陥っていた。
「いくつか、爆発しなかったものが、あるが、問題ないだろう」
爆発の様子を確認しながら、キャリコはトランシーバーで仲間に連絡をする。
亜人の数は500体近くはいるという。街中の至る所に侵入した奴らは、好き勝手に暴れ回っていた。
それが、ハンター達の罠とは気がつかずに。
『次の場所へ移ろう』
エヴァが隠れている路地の壁に走り書きした。
その時、再び爆発音が響く。
「良い感じに爆発したわね」
爆発した場所は視認できないが、カーミンの言葉通り、亜人達の騒ぎ声が聞こえる所、効果を発揮しているに違いない。
効果的に爆発や、炎上を起こす為、ハンター達は事前の準備を徹底していた。
例えば、布などの燃えやすいカーテンや絨毯に油を染み込ませておいたり、あらかじめ、崩れやすくする為に、建物にダメージを入れておいたりとだ。
それだけではなく、締めきった建物や部屋の中で、火災を起こして置いたり、いくつかの粉袋を用意し、バックドラフトや粉塵爆発の罠を張ってある。
「次は……市場だな」
「罠の準備に行かないとね。でも、その前に……」
キャリコの言葉に続き、カーミンがパイルバンカーを構えた。
ハンター達は、亜人の動きには気を配って警戒していた。だが、崩れて来た建物から飛び出してくる亜人までは、さすがに、誰も予想していなかった。
街中での遭遇戦とはそういうものだ。それ故、特に驚きもせず、3人は迎え撃つ。
『火球』
と書かれたカードを仲間達に見えるように投げると、エヴァがファイアーボールの魔法を使う。
普通、街中では使わない魔法だ。広範囲に衝撃を与えるからだが、今は、問題ない。むしろ、撃ち放題だ。
ハンター達と遭遇した亜人は、呆気なく吹き飛ぶ。生き残った亜人も、今の魔法で崩れた屋敷の下敷きとなった。
「よし、各自、移動だ。市場で集合しよう」
崩れた屋敷から、別の建物に駆けあがっていくキャリコ。
「分かったわ」
『了解』
カーミンとエヴァが応えると、それぞれが混乱する街中、市場へと向かって行った。
●宿場町付近にて
「使えるものは使わせて頂きますぜ」
鬼百合が建物の中に残っていた油が入った瓶を手に取った。
持ち運びしきれなかったのか、単に忘れただけなのか分からないが、どの道、戦火に消えるはずなのだ。使わない手はない。
「旦那の方は、旦那で張り切ってるみたいでぇ」
宿場街から響く破壊の音は、シガレットが立てている音だ。
「あっちに行くんには……」
細かい路地や建物の位置は頭に叩き込んでいる。
それと、亜人達の動きから、どこへ行き、罠の準備をすべきか考えるのだ。
「こっちの方は、あらかたやりましたぜ、旦那」
トランシーバーでシガレットに呼び掛けた。
「やるじゃねぇかァ」
返事をしながら、彼は、大型のハンマーを上段に構えた。
ただのハンマーではない。戦闘用の大型ハンマーだ。シガレットはこれで、あらかじめ、倒壊しやすく細工を施しておいた部位を力一杯叩く。
まるで、解体屋な気分だ。彼の一振りする毎に、建物は軋み、崩れて行く。
その音によって誘い出されたのか、数体の亜人が路地から飛び出してきた。
「お出ましかァ」
噂に聞く茨小鬼ではないようだ。普通の亜人であれば、数多くの戦場を経験したシガレットの敵ではない。
「余裕があれば、ボスを探し出すつもりだったがなァ」
500体程の軍団である。必ず、統率者がいると踏んでいたが、この状況ではボスを探すのは、骨が折れるだろう。だから、彼に出来るのは、遭遇した亜人を残らず殲滅する事だった。
「旦那!」
次の場所に向かう途中だった鬼百合が合流がてら、火球の魔法を使う。
シガレットは魔法の効果範囲ギリギリの所で、思いっきりハンマーを振りかぶった。
吹き飛んだ亜人が弾丸なように撃ちだされ、火球の影響で脆くなった建物の外壁にぶつかると、それがきっかけで建物が崩壊する。
「次、いくぜェ!」
破壊の化身でも現れた様相で、亜人を排除しながら、2人は次の目的地に向かって行く。
●破砕の街
「……最後のお仕事、しっかり頼むわよ」
カーミンが、最後に仕掛けた罠を発動させながら呟いた。仕掛けを施したモノが、まるで人であるかのように。
ハンター達が行っている破壊が、ただの破壊ではなく、この街に住んでいた人々を守る為に、共に戦う戦友なのだと、破壊の中に、意味を持たせようとしていた。
「大丈夫か?」
トランシーバーから、キャリコの声が聞こえた。
彼は、別の建物の屋上から、亜人の索敵と行動ルートの指示を行っている。きっと、スコープ越しに、思いっきり感傷に浸っているカーミンの顔が見えたのだろう。
「な、なによ、別にいいじゃない」
カーミンは頬をぷくーと膨らませる。
「そうだな。良いと思う」
そのキャリコの言葉で、膨らんだ頬から空気が抜けた。
トランシーバーからは彼の言葉が続く。
「俺の生まれた村は、歪虚によって破壊つくされた。それと同じではないが、人が生きた証とも言える所が壊れるのは、きっと、悲しい事なのだろう」
だから、感傷に浸って良いのだ。
「……わ、分かってるわよ。私だって……」
表情を隠す様に顔を落としたまま、カーミンは駆け出す。
市場から、住宅街へと破壊工作を行いながら3人は順調に作戦を遂行している。途中遭遇する亜人も障害にはならない。
『ごーる』
と大きな文字が外壁に書かれている場所に辿り着いた。
エヴァが先回りして合流待ちしていたのだ。
「な、なによ」
トランシーバーの会話が筒抜けだったのに気がついて、カーミンは、必要以上にニヤニヤしているエヴァに向かって、言い放った。
『可愛い♪』
「こ、こんな時に、あ、あなた、何いってるの!」
小悪魔的な笑顔を浮かべるエヴァとは対照的なカーミンは照れ怒っている。これでは、典型的なツンデレだ。
「俺はなにも言ってないぞ」
キャリコの冷静な言葉がトランシーバーから発せられる。
エヴァは声を出す事ができず、壁に言葉を書き込んでいる。2人のやり取りを彼は知らないみたいだ。
「ほら、罠は全部発動させたんだから、後は、時間まで亜人を倒すだけなのよ」
パイルバンカーが構えるカーミン。
「分かった。引き続き高台から指示を出しながら掩護する」
ライフルの銃弾が残り一つになった所で、リロードしながらキャリコが言った。
街を包み込む炎は広がりを見せていた。街に留まり続けると危険なので、脱出地点までのルートを確保しながら、亜人を倒す必要がある。
『よろしくね』
エヴァが通りの地面に大きく書いた。
●破壊の化身
まるで雷でも落ちたかと思う様な大きな音が、大通りに響いた。
「それ、もう一度だぜェ」
シガレットが大通りの石畳みを破壊していたのだ。
覚醒者がスキルを使用して振り下ろすのだ。その威力は、普通の人間が繰り出すものを越えている。
地面にちょっとしたクレーターができた。でこぼこになった道はもはや、道としての機能を果たしていない。悪路だ。人間より背の低い亜人なら、尚更。
「それぇ!」
火球が大通りのど真ん中で、多くの亜人を巻き込みながら爆発した。
鬼百合が放ったものだ。彼はバイクで入り組んだ路地の中を疾走しつつ、遭遇した亜人を大通りに誘導し、土壁を生み出す魔法を使う。
亜人達は、突然現れた土壁に行く手を遮られてパニックをなった所を、ファイアーボールで一網打尽だ。
「合流場所を目指しながら、掃討するかァ」
「りょうかいだよ、旦那!」
ウィーダの街は完全に火に包まれていた。
亜人達は組織的な動きを完全に失い、右往左往しているだけだ。
龍の唸りのようにも聞こえるシガレットの魔導バイク。
トゲトゲしい装甲が取り付けられている鬼百合の魔導バイク。
バイクに跨った2人が悪路と化した大通りをゆっくりと走る。なにか、世紀末的な雰囲気がするが、きっと、気のせいだ。
「死にたい奴は、いるかァ」
魔導エンジンを無駄に吹かしながら、魔導拳銃を、空に向かって、これまた、無駄に連続発砲するシガレット。
マテリアルの無駄使いとはこの事である。
「シガレットの旦那のお通りですぜぇ」
鬼百合が混乱して行く手を遮る亜人の集団に火球を叩きつける。
慈悲の欠片はこれっぽちも見られない。
亜人と、どっちが悪人かと分からない位、2人のハンターは凶悪な笑顔を湛え、燃えさかる街の光景をバックにしていたのであった。
その姿は目立ったのだろう。
恐怖を覚え、ひたすら逃げようとする亜人。パニックのあまり、逆上して向かってくる亜人。
そのいずれも、2人は文字通り殲滅しながら脱出地点を目指した。
●脱出
「首尾は上々のようだなァ」
計画通り、脱出地点に集まった仲間のハンター達へ、シガレットは声をかけた。
ウィーダの街は、もはや、全体が破壊の炎に包まれている。脱出地点付近も例外ではない。
「これが、『軍師騎士』の置き土産なんですぜぇ」
鬼百合の言う通り、特製脱出ボートが用意されていた。
ウィーダの街を流れる川から脱出する計画になっているからだ。
「さすがだな」
キャリコが感心した様子でボートを眺めていた。
罠を仕掛けた者が、混乱した街から、どう脱出するか。当初から計算されていたのだろう。という事は、この街自体の放棄も、相当前から決めてあったはずだ。
「最後に川下りなんて、洒落てるじゃないのかしらね」
既にボートに乗り込んだカーミンが、川岸に立つエヴァに話しかけた。
燃えさかる街並を眺めながらの川下り。なかなか、ある事ではない。ますます、感傷に浸りそうだ。
『私はボートに乗らないけどね』
馬にウォーターウォークの魔法をかけるエヴァ。
ないとは思うが、亜人が逆襲してくる可能性もある。
「ボートの数に余裕があって、良かったでさ~、旦那」
「まったくだぜェ」
ただのボートではなく、特別に補強してある事もあり、鬼百合とシガレットの魔導バイクも乗った。
載せられなかったら、きっと、ウィーダの街と一緒に破壊するしかなかっただろう。もしくは、地中に埋めて、後で掘り返しにきたか。
『先導するね』
水の上を、エヴァが馬を駆って、先に行く。
戦場で騎乗するために調教されているだけあって、この川の上でも特に問題はないようだ。
「出発するか」
キャリコがライフルの具合を確認した。最後まで気を抜く事はしない。
しかし、追撃はきっとないだろうなとカーミンはなぜか、そう思った。
(そんな気がする。街が、そう言ってる気がするわ)
ボートが進みだした。
ウィーダの街郊外の丘で戦況の行く末を見守る領主と兵士達。
作戦は計画通り遂行されていた。500体にも届くかという亜人の軍団は、ウィーダの街の中でハンター達が放った罠にハマり、大混乱を起こし、住処である北の山脈に向かって逃走を開始していた。
「だいぶと、数を減らしたようだな」
無様に逃げる亜人共の様子を見て領主が呟いた。想定以上の戦果だ。
100体程は数を減らしているだろう。
「最善の策の上に、本気を出した覚醒者が数人いるだけで、これだけの戦果を上げる事ができるとは、な」
領主自身も覚醒者であり、部下にも数名いるが、とても、ここまでできる自信はなかった。
今なら、『軍師騎士』がその呼び方をされるのを嫌っていたのを分かる気がした。
「ありがとう、ハンターの諸君……私達の街も、最後まで戦えて、本望だったはずだ」
黙祷を捧げるように瞳を閉じた領主。
しばしの後、見開くと、剣を潰走する亜人集団に向けて宣言をした。
「これより、亜人の追撃戦を開始する!」
ハンター達の活躍により、『軍師騎士』の作戦は成った。
同時に多くの亜人を葬る事にも成功し、ウィーダの街における戦いは、人間側の完全勝利となったのであった。
おしまい。
昼間というのに、人々が生活する声や音は聞こえてこない。
夜中よりも静かに、街はただ、最後の時を迎えようとしている。
『綺麗な街なのに、もったいない』
後天性聴唖者であるエヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が、スケッチブックにそんな言葉を書き込んで、仲間達に見せた。
「そう……だな……」
キャリコ・ビューイ(ka5044)が同意した。
領主館の屋上から見える整然とした街並。ウィーダの街は、大峡谷にも近いとあって、亜人との戦いを強いられており、移転が行われた。既に誰も住んではいない。今回の作戦は、街自体を罠として使う事になっている。それは、街を破壊する事も意味していた。
「描き終わったのか?」
キャリコの言葉にエヴァは頷く。
キャンバスには、ウィーダの街が描かれていた。
「街を罠にするとは、ずいぶん大胆な作戦じゃねェか。あの細っこい騎士も出世したもんだなァ」
感心した様子でシガレット=ウナギパイ(ka2884)が、愛用のタバコを吸いながら言う。
王国を襲った歪虚との大規模な戦いの折、後に、『軍師騎士』と呼ばれる事になる、騎士からの依頼で、一夜城構築防衛の依頼を、シガレットが受けたのは、昨年の事だ。
鎧を装備したら動けなくなるんじゃないかって位、細かった騎士は、王国内を転戦し、『軍師騎士』と一部では呼ばれている。亜人襲来で王国北部では大きな被害で出ている中で、ウィーダの街は損害なしでここまできただけではなく、住民の移転さえも成功させた。
「街を壊すなんて、思い切ったことを考えたものねー」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)が行き場のない感傷に浸っている事を隠しながら、言葉を口にした。
徹底的に破壊して良いという。
領主の話しによると、街は破壊しつくした後、埋め立てて、新たに支城を建てるらしい。
「とにかく、いっぱいぶっ壊しゃいいんですねぃ りょーかい、でさ!」
杖をくるくると回しながら、鬼百合(ka3667)が宣言する。
『確かに、ここまで来たら一切合財全部壊しちゃった方が次は作りやすいかしら、やってやろうじゃない!』
エヴァが地面に描き込んだ。ある意味、落書きだが、この領主館も破壊するのである。今なら、描き放題だ。
一行は、その文章を読んで、力強く頷く。
「俺達が此処で、亜人の数を減らさないと他戦線の仲間の死ぬ数が増えるのか……奴らにゲリラ戦の恐怖を教育してやる」
無骨な赤い鋼の金槌を担いだキャリコが街に向かってくる亜人の軍団に向かって言った。
全体の作戦は、この後、追撃戦が待っている予定なのだ。この街で、亜人の軍団にダメージを与えれば、その分、追撃戦が楽になる。
その為、ハンター達は、街を破壊するだけではなく、可能な限り亜人の討伐も行うつもりなのだ。
●領主館付近の路地にて
轟音が響き渡る。
領主館とその周囲の建物が、次々に爆発を起こしたのだ。我先にと集まっていた亜人は、倒れ伏したり、パニックになり走りまわったりと大混乱に陥っていた。
「いくつか、爆発しなかったものが、あるが、問題ないだろう」
爆発の様子を確認しながら、キャリコはトランシーバーで仲間に連絡をする。
亜人の数は500体近くはいるという。街中の至る所に侵入した奴らは、好き勝手に暴れ回っていた。
それが、ハンター達の罠とは気がつかずに。
『次の場所へ移ろう』
エヴァが隠れている路地の壁に走り書きした。
その時、再び爆発音が響く。
「良い感じに爆発したわね」
爆発した場所は視認できないが、カーミンの言葉通り、亜人達の騒ぎ声が聞こえる所、効果を発揮しているに違いない。
効果的に爆発や、炎上を起こす為、ハンター達は事前の準備を徹底していた。
例えば、布などの燃えやすいカーテンや絨毯に油を染み込ませておいたり、あらかじめ、崩れやすくする為に、建物にダメージを入れておいたりとだ。
それだけではなく、締めきった建物や部屋の中で、火災を起こして置いたり、いくつかの粉袋を用意し、バックドラフトや粉塵爆発の罠を張ってある。
「次は……市場だな」
「罠の準備に行かないとね。でも、その前に……」
キャリコの言葉に続き、カーミンがパイルバンカーを構えた。
ハンター達は、亜人の動きには気を配って警戒していた。だが、崩れて来た建物から飛び出してくる亜人までは、さすがに、誰も予想していなかった。
街中での遭遇戦とはそういうものだ。それ故、特に驚きもせず、3人は迎え撃つ。
『火球』
と書かれたカードを仲間達に見えるように投げると、エヴァがファイアーボールの魔法を使う。
普通、街中では使わない魔法だ。広範囲に衝撃を与えるからだが、今は、問題ない。むしろ、撃ち放題だ。
ハンター達と遭遇した亜人は、呆気なく吹き飛ぶ。生き残った亜人も、今の魔法で崩れた屋敷の下敷きとなった。
「よし、各自、移動だ。市場で集合しよう」
崩れた屋敷から、別の建物に駆けあがっていくキャリコ。
「分かったわ」
『了解』
カーミンとエヴァが応えると、それぞれが混乱する街中、市場へと向かって行った。
●宿場町付近にて
「使えるものは使わせて頂きますぜ」
鬼百合が建物の中に残っていた油が入った瓶を手に取った。
持ち運びしきれなかったのか、単に忘れただけなのか分からないが、どの道、戦火に消えるはずなのだ。使わない手はない。
「旦那の方は、旦那で張り切ってるみたいでぇ」
宿場街から響く破壊の音は、シガレットが立てている音だ。
「あっちに行くんには……」
細かい路地や建物の位置は頭に叩き込んでいる。
それと、亜人達の動きから、どこへ行き、罠の準備をすべきか考えるのだ。
「こっちの方は、あらかたやりましたぜ、旦那」
トランシーバーでシガレットに呼び掛けた。
「やるじゃねぇかァ」
返事をしながら、彼は、大型のハンマーを上段に構えた。
ただのハンマーではない。戦闘用の大型ハンマーだ。シガレットはこれで、あらかじめ、倒壊しやすく細工を施しておいた部位を力一杯叩く。
まるで、解体屋な気分だ。彼の一振りする毎に、建物は軋み、崩れて行く。
その音によって誘い出されたのか、数体の亜人が路地から飛び出してきた。
「お出ましかァ」
噂に聞く茨小鬼ではないようだ。普通の亜人であれば、数多くの戦場を経験したシガレットの敵ではない。
「余裕があれば、ボスを探し出すつもりだったがなァ」
500体程の軍団である。必ず、統率者がいると踏んでいたが、この状況ではボスを探すのは、骨が折れるだろう。だから、彼に出来るのは、遭遇した亜人を残らず殲滅する事だった。
「旦那!」
次の場所に向かう途中だった鬼百合が合流がてら、火球の魔法を使う。
シガレットは魔法の効果範囲ギリギリの所で、思いっきりハンマーを振りかぶった。
吹き飛んだ亜人が弾丸なように撃ちだされ、火球の影響で脆くなった建物の外壁にぶつかると、それがきっかけで建物が崩壊する。
「次、いくぜェ!」
破壊の化身でも現れた様相で、亜人を排除しながら、2人は次の目的地に向かって行く。
●破砕の街
「……最後のお仕事、しっかり頼むわよ」
カーミンが、最後に仕掛けた罠を発動させながら呟いた。仕掛けを施したモノが、まるで人であるかのように。
ハンター達が行っている破壊が、ただの破壊ではなく、この街に住んでいた人々を守る為に、共に戦う戦友なのだと、破壊の中に、意味を持たせようとしていた。
「大丈夫か?」
トランシーバーから、キャリコの声が聞こえた。
彼は、別の建物の屋上から、亜人の索敵と行動ルートの指示を行っている。きっと、スコープ越しに、思いっきり感傷に浸っているカーミンの顔が見えたのだろう。
「な、なによ、別にいいじゃない」
カーミンは頬をぷくーと膨らませる。
「そうだな。良いと思う」
そのキャリコの言葉で、膨らんだ頬から空気が抜けた。
トランシーバーからは彼の言葉が続く。
「俺の生まれた村は、歪虚によって破壊つくされた。それと同じではないが、人が生きた証とも言える所が壊れるのは、きっと、悲しい事なのだろう」
だから、感傷に浸って良いのだ。
「……わ、分かってるわよ。私だって……」
表情を隠す様に顔を落としたまま、カーミンは駆け出す。
市場から、住宅街へと破壊工作を行いながら3人は順調に作戦を遂行している。途中遭遇する亜人も障害にはならない。
『ごーる』
と大きな文字が外壁に書かれている場所に辿り着いた。
エヴァが先回りして合流待ちしていたのだ。
「な、なによ」
トランシーバーの会話が筒抜けだったのに気がついて、カーミンは、必要以上にニヤニヤしているエヴァに向かって、言い放った。
『可愛い♪』
「こ、こんな時に、あ、あなた、何いってるの!」
小悪魔的な笑顔を浮かべるエヴァとは対照的なカーミンは照れ怒っている。これでは、典型的なツンデレだ。
「俺はなにも言ってないぞ」
キャリコの冷静な言葉がトランシーバーから発せられる。
エヴァは声を出す事ができず、壁に言葉を書き込んでいる。2人のやり取りを彼は知らないみたいだ。
「ほら、罠は全部発動させたんだから、後は、時間まで亜人を倒すだけなのよ」
パイルバンカーが構えるカーミン。
「分かった。引き続き高台から指示を出しながら掩護する」
ライフルの銃弾が残り一つになった所で、リロードしながらキャリコが言った。
街を包み込む炎は広がりを見せていた。街に留まり続けると危険なので、脱出地点までのルートを確保しながら、亜人を倒す必要がある。
『よろしくね』
エヴァが通りの地面に大きく書いた。
●破壊の化身
まるで雷でも落ちたかと思う様な大きな音が、大通りに響いた。
「それ、もう一度だぜェ」
シガレットが大通りの石畳みを破壊していたのだ。
覚醒者がスキルを使用して振り下ろすのだ。その威力は、普通の人間が繰り出すものを越えている。
地面にちょっとしたクレーターができた。でこぼこになった道はもはや、道としての機能を果たしていない。悪路だ。人間より背の低い亜人なら、尚更。
「それぇ!」
火球が大通りのど真ん中で、多くの亜人を巻き込みながら爆発した。
鬼百合が放ったものだ。彼はバイクで入り組んだ路地の中を疾走しつつ、遭遇した亜人を大通りに誘導し、土壁を生み出す魔法を使う。
亜人達は、突然現れた土壁に行く手を遮られてパニックをなった所を、ファイアーボールで一網打尽だ。
「合流場所を目指しながら、掃討するかァ」
「りょうかいだよ、旦那!」
ウィーダの街は完全に火に包まれていた。
亜人達は組織的な動きを完全に失い、右往左往しているだけだ。
龍の唸りのようにも聞こえるシガレットの魔導バイク。
トゲトゲしい装甲が取り付けられている鬼百合の魔導バイク。
バイクに跨った2人が悪路と化した大通りをゆっくりと走る。なにか、世紀末的な雰囲気がするが、きっと、気のせいだ。
「死にたい奴は、いるかァ」
魔導エンジンを無駄に吹かしながら、魔導拳銃を、空に向かって、これまた、無駄に連続発砲するシガレット。
マテリアルの無駄使いとはこの事である。
「シガレットの旦那のお通りですぜぇ」
鬼百合が混乱して行く手を遮る亜人の集団に火球を叩きつける。
慈悲の欠片はこれっぽちも見られない。
亜人と、どっちが悪人かと分からない位、2人のハンターは凶悪な笑顔を湛え、燃えさかる街の光景をバックにしていたのであった。
その姿は目立ったのだろう。
恐怖を覚え、ひたすら逃げようとする亜人。パニックのあまり、逆上して向かってくる亜人。
そのいずれも、2人は文字通り殲滅しながら脱出地点を目指した。
●脱出
「首尾は上々のようだなァ」
計画通り、脱出地点に集まった仲間のハンター達へ、シガレットは声をかけた。
ウィーダの街は、もはや、全体が破壊の炎に包まれている。脱出地点付近も例外ではない。
「これが、『軍師騎士』の置き土産なんですぜぇ」
鬼百合の言う通り、特製脱出ボートが用意されていた。
ウィーダの街を流れる川から脱出する計画になっているからだ。
「さすがだな」
キャリコが感心した様子でボートを眺めていた。
罠を仕掛けた者が、混乱した街から、どう脱出するか。当初から計算されていたのだろう。という事は、この街自体の放棄も、相当前から決めてあったはずだ。
「最後に川下りなんて、洒落てるじゃないのかしらね」
既にボートに乗り込んだカーミンが、川岸に立つエヴァに話しかけた。
燃えさかる街並を眺めながらの川下り。なかなか、ある事ではない。ますます、感傷に浸りそうだ。
『私はボートに乗らないけどね』
馬にウォーターウォークの魔法をかけるエヴァ。
ないとは思うが、亜人が逆襲してくる可能性もある。
「ボートの数に余裕があって、良かったでさ~、旦那」
「まったくだぜェ」
ただのボートではなく、特別に補強してある事もあり、鬼百合とシガレットの魔導バイクも乗った。
載せられなかったら、きっと、ウィーダの街と一緒に破壊するしかなかっただろう。もしくは、地中に埋めて、後で掘り返しにきたか。
『先導するね』
水の上を、エヴァが馬を駆って、先に行く。
戦場で騎乗するために調教されているだけあって、この川の上でも特に問題はないようだ。
「出発するか」
キャリコがライフルの具合を確認した。最後まで気を抜く事はしない。
しかし、追撃はきっとないだろうなとカーミンはなぜか、そう思った。
(そんな気がする。街が、そう言ってる気がするわ)
ボートが進みだした。
ウィーダの街郊外の丘で戦況の行く末を見守る領主と兵士達。
作戦は計画通り遂行されていた。500体にも届くかという亜人の軍団は、ウィーダの街の中でハンター達が放った罠にハマり、大混乱を起こし、住処である北の山脈に向かって逃走を開始していた。
「だいぶと、数を減らしたようだな」
無様に逃げる亜人共の様子を見て領主が呟いた。想定以上の戦果だ。
100体程は数を減らしているだろう。
「最善の策の上に、本気を出した覚醒者が数人いるだけで、これだけの戦果を上げる事ができるとは、な」
領主自身も覚醒者であり、部下にも数名いるが、とても、ここまでできる自信はなかった。
今なら、『軍師騎士』がその呼び方をされるのを嫌っていたのを分かる気がした。
「ありがとう、ハンターの諸君……私達の街も、最後まで戦えて、本望だったはずだ」
黙祷を捧げるように瞳を閉じた領主。
しばしの後、見開くと、剣を潰走する亜人集団に向けて宣言をした。
「これより、亜人の追撃戦を開始する!」
ハンター達の活躍により、『軍師騎士』の作戦は成った。
同時に多くの亜人を葬る事にも成功し、ウィーダの街における戦いは、人間側の完全勝利となったのであった。
おしまい。
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/13 22:55:09 |
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相談卓 シガレット=ウナギパイ(ka2884) 人間(クリムゾンウェスト)|32才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/09/15 20:54:46 |