ゲスト
(ka0000)
懲りない連中と弄ぶ魔
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/09/17 15:00
- 完成日
- 2015/09/25 01:38
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「畜生! ふざけんなよ、皆殺しにしてやるからな!」
呻き声洩れる荒ら屋の戸口から野外へと大声が響き渡る。ここはグラズヘイム王国北東山岳地帯。山の中腹にある集落だ。
山賊『バルデア』がこの集落を手に入れたのが約半年前。先日、新たな根城を得ようと麓の村を襲ったところ、返り討ちにあう。
山賊の悪行は集落民の生き残りによって周辺地域に広まっていた。事前の準備を整えていた村人達の抵抗によって阻止されたのである。
髭面の山賊首領は集落で一番上等な石造りの住処でふて寝していた。そこへ見知らぬ赤い短髪の女が現れる。
「この集落、赤錆だらけの鉄塊があるような血の臭気に満ちていますね。嫌いじゃありませんけど」
「て、てめえ! 誰だぁ!」
声を荒らげた首領だが侵入者が美人だと知るやいなやベッドから起き上がって態度を変えた。赤髪の女が胸元の大きく開いた服を纏っていたのも要因の一つである。
下衆な笑いを浮かべつつ、首領が赤髪の女の肩を掴もうと右腕を伸ばす。その先の宙で煌めきが走った。赤髪の女が振るったナイフによって首領の小指が床へと転がる。
「痛っ!! てぇ、てめぇ!! 大事な指を!!」
「まったく隙だらけ。だから簡単にやられるのよ。これから先が思いやられるわ」
赤髪の女は椅子に座って足を組んだ。
「馬鹿にされたままじゃ寝起きも悪いでしょう? どう? 麓村の再襲撃、やるつもりなら手伝うけど?」
「どうしてそんなことを知って、いや……お前! 村のもんか! それともこの集落にいた奴か?! 小指の代償は高く付くぞっ!」
赤髪の女は襲いかかろうとする首領の左足を蹴飛ばした。倒れた首領が脂汗を流しながら顔を上げる。騒ぎを聞きつけて手下共が住処に集まりだす。
赤髪の女が口笛を吹くと窓から四つ足の動物が何匹も飛び込んでくる。
「怪我人だらけのあんた等にこいつらの相手ができるかしら? まあ、全快でも絶対無理だけど」
それは犬か狼のようだが背中に黒い牙が生えていた。
「どの子もとっても元気よ♪」
「犬や狼じゃねぇ。雑魔……だよな。……ってことは、あんたは堕落者か?」
「へぇー。髭面のむっさい顔をしていても少しは歪虚のこと知っているのね。で、どうする?」
「断りゃ殺られるだけなんだろ? それよりもだ。何で肩入れしようとしてんだ? ボロボロの山賊なんぞに」
「やけに自虐的ね。わたし、雑魔が人を殺してもワクワクしないのよね。まあ、お仕事だし、そうすることもあるのだけれど。で、今回はあんた達の後ろ盾になって楽しもうというわけ」
「……一つ訊きてぇ。俺達も雑魔や堕落者にされちまうのか?」
「人間同士が血みどろになって戦うのがいいのよ。だからそういうのは『なし』」
赤髪の女が呼び寄せた狼雑魔の一体は皮袋を咥えていた。床に皮袋が落とされると口が解けて中から二枚貝がたくさん散らばる。
「貝の中身は軟膏の薬よ。傷によく効くんだから。さあ、みんなで仲良く分けるのよ♪」
赤髪の女が貝の何個かを蹴って床を滑らせる。
首領が傷口に薬を塗るとたちまちに血が止まるのだった。
襲撃の日から数えて一週間後、ハンター一行が二両の荷馬車で村を訪れた。
怪我人だけで済んでいた人的被害だが村の施設はかなり破壊されている。そこで物資輸送を含めてハンターに協力が求められた。
村が山賊の猛攻に耐えられたのは弓矢のおかげ。村人の半数が弓の扱いに長けていたからである。
荷馬車に載せられていた矢箱を見て村人達が安堵の表情を浮かべた。回収した矢を合わせれば当座は凌げそうだからだ。
「山賊との戦いで塀の三分の一ぐらいが壊されてしまっての。これを一緒に直してほしいのじゃ」
一行が村人に頼まれたのは塀の修理だった。看板のように木板を地面に立てただけのものだが、あるとないとでは大違いである。日中は塀の修復。宵の口は矢作りを手伝う。
「塩ゆでしただけやけどもうまいで。食べてや」
休憩時には村人が茹でた落花生をだしてくれる。町外にある落花生畑は山賊共に踏み荒らされてしまったが、地下に実る豆なので被害は殆どなかった。
「矢羽根用の鳥はどうした?」
「それどころじゃねぇよ!」
一行来訪から三日目の昼過ぎ、猟師が慌てて山から戻ってくる。
「崖の向こう側をふと見たら大勢の山賊共が下山しているのが見えてよ。大急ぎで岩の裏に隠れたんだが驚いたのなんのって。なんだか今度は変な犬を連れていたで。狼かも知れんが」
一行は猟師から犬の特徴を教えてもらう。それが狼の雑魔だと気づくのに時間はかからなかった。
呻き声洩れる荒ら屋の戸口から野外へと大声が響き渡る。ここはグラズヘイム王国北東山岳地帯。山の中腹にある集落だ。
山賊『バルデア』がこの集落を手に入れたのが約半年前。先日、新たな根城を得ようと麓の村を襲ったところ、返り討ちにあう。
山賊の悪行は集落民の生き残りによって周辺地域に広まっていた。事前の準備を整えていた村人達の抵抗によって阻止されたのである。
髭面の山賊首領は集落で一番上等な石造りの住処でふて寝していた。そこへ見知らぬ赤い短髪の女が現れる。
「この集落、赤錆だらけの鉄塊があるような血の臭気に満ちていますね。嫌いじゃありませんけど」
「て、てめえ! 誰だぁ!」
声を荒らげた首領だが侵入者が美人だと知るやいなやベッドから起き上がって態度を変えた。赤髪の女が胸元の大きく開いた服を纏っていたのも要因の一つである。
下衆な笑いを浮かべつつ、首領が赤髪の女の肩を掴もうと右腕を伸ばす。その先の宙で煌めきが走った。赤髪の女が振るったナイフによって首領の小指が床へと転がる。
「痛っ!! てぇ、てめぇ!! 大事な指を!!」
「まったく隙だらけ。だから簡単にやられるのよ。これから先が思いやられるわ」
赤髪の女は椅子に座って足を組んだ。
「馬鹿にされたままじゃ寝起きも悪いでしょう? どう? 麓村の再襲撃、やるつもりなら手伝うけど?」
「どうしてそんなことを知って、いや……お前! 村のもんか! それともこの集落にいた奴か?! 小指の代償は高く付くぞっ!」
赤髪の女は襲いかかろうとする首領の左足を蹴飛ばした。倒れた首領が脂汗を流しながら顔を上げる。騒ぎを聞きつけて手下共が住処に集まりだす。
赤髪の女が口笛を吹くと窓から四つ足の動物が何匹も飛び込んでくる。
「怪我人だらけのあんた等にこいつらの相手ができるかしら? まあ、全快でも絶対無理だけど」
それは犬か狼のようだが背中に黒い牙が生えていた。
「どの子もとっても元気よ♪」
「犬や狼じゃねぇ。雑魔……だよな。……ってことは、あんたは堕落者か?」
「へぇー。髭面のむっさい顔をしていても少しは歪虚のこと知っているのね。で、どうする?」
「断りゃ殺られるだけなんだろ? それよりもだ。何で肩入れしようとしてんだ? ボロボロの山賊なんぞに」
「やけに自虐的ね。わたし、雑魔が人を殺してもワクワクしないのよね。まあ、お仕事だし、そうすることもあるのだけれど。で、今回はあんた達の後ろ盾になって楽しもうというわけ」
「……一つ訊きてぇ。俺達も雑魔や堕落者にされちまうのか?」
「人間同士が血みどろになって戦うのがいいのよ。だからそういうのは『なし』」
赤髪の女が呼び寄せた狼雑魔の一体は皮袋を咥えていた。床に皮袋が落とされると口が解けて中から二枚貝がたくさん散らばる。
「貝の中身は軟膏の薬よ。傷によく効くんだから。さあ、みんなで仲良く分けるのよ♪」
赤髪の女が貝の何個かを蹴って床を滑らせる。
首領が傷口に薬を塗るとたちまちに血が止まるのだった。
襲撃の日から数えて一週間後、ハンター一行が二両の荷馬車で村を訪れた。
怪我人だけで済んでいた人的被害だが村の施設はかなり破壊されている。そこで物資輸送を含めてハンターに協力が求められた。
村が山賊の猛攻に耐えられたのは弓矢のおかげ。村人の半数が弓の扱いに長けていたからである。
荷馬車に載せられていた矢箱を見て村人達が安堵の表情を浮かべた。回収した矢を合わせれば当座は凌げそうだからだ。
「山賊との戦いで塀の三分の一ぐらいが壊されてしまっての。これを一緒に直してほしいのじゃ」
一行が村人に頼まれたのは塀の修理だった。看板のように木板を地面に立てただけのものだが、あるとないとでは大違いである。日中は塀の修復。宵の口は矢作りを手伝う。
「塩ゆでしただけやけどもうまいで。食べてや」
休憩時には村人が茹でた落花生をだしてくれる。町外にある落花生畑は山賊共に踏み荒らされてしまったが、地下に実る豆なので被害は殆どなかった。
「矢羽根用の鳥はどうした?」
「それどころじゃねぇよ!」
一行来訪から三日目の昼過ぎ、猟師が慌てて山から戻ってくる。
「崖の向こう側をふと見たら大勢の山賊共が下山しているのが見えてよ。大急ぎで岩の裏に隠れたんだが驚いたのなんのって。なんだか今度は変な犬を連れていたで。狼かも知れんが」
一行は猟師から犬の特徴を教えてもらう。それが狼の雑魔だと気づくのに時間はかからなかった。
リプレイ本文
●
暗雲垂れ込める空の下、村は山賊との戦いに備えようとしていた。
「お兄ちゃんありがとう」
「気をつけて。転ぶんじゃないぞ」
ザレム・アズール(ka0878)が背負っていた少女を地面に下ろして頭を撫でる。
ここは村中央にある教会内。ザレムは足首をくじいた少女を連れて来ていた。村の女性に治療を頼んで塀の外へと向かう。猟師達と協力して罠の仕掛けるためである。
教会内にいたリリーベル・A・ラミアス(ka5488)は年老いた村長の前で屈んだ。
「先に謝罪させてください。畑ですが、戦いになればもう一度踏み荒らすことになりますわ」
「気にせんでおくれ。土中の落花生は大丈夫じゃ。それよりもみなさんがいてくれて心強く思うておる」
村長がリリーベルの手を握って強く頷いてみせる。
リリーベルは若者に伝令役を頼んでから一緒に櫓を目指した。すでに力を貸してもらっている弓使いの補助や手当の心得のある者は各所で待機済みである。
櫓ではミオレスカ(ka3496)とギルミア・C(ka5310)が村の周囲を眺めていた。
「狼雑魔は近づくまでに仕留めてしまうつもりです」
「問題は見えるかどうかですね。ザレムによれば雷雨になるらしいのですが」
二人で天を仰ぐ。暮れなずむ頃だというのにまるで宵の口寸前のようである。
その頃、シャルル=L=カリラ(ka4262)は地形確認のためにスクーターで村外周を走っていた。
「雷とか鳴りそうな雰囲気だヨネ。……あ! これってもしかして使えるンじゃナイ?」
思いつきを実行すべく山岳方面の森林道にハンドルを切る。三十分後、道脇に聳える高い一本の樹木に登った彼は頂にロングスピアを縛りつけた。
「うまくいくかどうかは神ならぬ雷のみぞ知るだネ。皆には報告しておくヨ」
そう呟いて地面へと降りていく。
エルバッハ・リオン(ka2434)は塀の修理をしていた。村人達に混じって玄翁を握っている。
「塀は九割方、直ったといった感じですね」
手の甲で額の汗を拭いながら遠くの山森を眺めた。あの位置からだと塀は修理されているように見えるはず。実際には適当に板を宛がっているだけの個所が約一割ある。もう一日あればと悔やむところだがこればかりは仕方がない。
「戦力の分散はしたくはないが、どこから来るのかわからないのではな……」
「それでも一番人数が来そうな正面でお相手シちゃうかな♪」
バレル・ブラウリィ(ka1228)とリオン(ka1757)は村の外周を自らの足で歩いた。明るいうちに自分達の目で確かめておきたかったからである。
一時間が経過。ミオレスカが櫓の梯子を伝って大地へ下りたときに天が目映く輝いた。わずかに遅れて凄まじい雷鳴が轟きわたる。
このとき矢が雷光に紛れて塀に命中していた。山賊の一人が戯れに射った一矢である。
「本当に降ってきましたね」
先に下りていたギルミアの頬に大粒の雨が。天蓋の底が割れたかのように雨が降りだす。
篝火が消えてしまうほど雨の勢いが増した。屋根のある場所へと移動させたり対策を行うが間に合わない。だが一人の村人が即座に別の灯りを用意してくれる。
「便利ですね、これ」
ザレムがLEDライトを村人の何名かに預けていた。おかげで混乱なく新たな篝火やランタンの用意が行える。ライトはその後、ハンター達に手渡された。
三度目の激しい雷が落ちたとき、視力のよい村人が弓を抱えながら叫んだ。暗闇と豪雨に霞む遠方に朧気ながら集団らしき影があったと。
「海賊はクールで恰好良いけど……山賊は泥臭いヨ」
シャルルがスクーターのライトで村から伸びる道を照らす。銃撃で威嚇してみるが、山賊は近づいてこようとはしない。
(慎重なんて山賊らしくないヨ。何処かに指揮官的な存在でも居る……のカナ?)
彼の推測は当たっていた。
●
「いいかい? 塀を適当に壊したら戻っておいで」
森の大樹の下で赤髪の女が指示すると狼雑魔八体が駆けだした。十数分でぐるりと村を取り囲む。赤髪の女が鳴らした笛の音を合図にして一斉に進撃。落花生の茎を踏んづけながら村へと駆ける。
南東方面から迫っていた狼雑魔のAとBが突如転倒して泥まみれに。ザレムが仕掛けた挟み式の獣罠に足が挟まれたからだ。エルバッハが放ったウィンドスラッシュの風の刃が容赦なく二体を切り刻んでいく。火球攻撃を控えたのは塀と畑への影響を考えたからである。
北西方面から近づいた狼雑魔・Cの額に矢が突き刺さった。Cが仰け反ったところに喉仏へともう一矢。矢を当てたのはミオレスカ。高加速射撃の勢いは凄まじくCの身体が後方へと吹き飛んだ。塀まで近づかせずに仕留めきる。
ギルミアが待機していたのは一番拓けた南西方面だ。人よりも遠くが見える彼女は雷光の輝きを利用する。遠射を使い、超遠距離にもかかわらず狼雑魔・Dの背中に矢を突き立てた。傷を負ったDができるのは立ち止まって周囲を見渡すだけ。Dの位置から見えるのは遠くの小さな篝火だけだった。
「そろそろかな。あ、やっと見えてきた。むさいお友達! こっちこっちだってばァ!」
村の正門近くで待機していたリオンが立ち上がる。
「YO! メーン! 鉄拳のスウィーツ驕って貰いたい奴は前に出てきちゃってェ~!」
村人の矢をかいくぐってきた山賊が正門に迫る。こうなると遠隔武器は不利。代わりにリオンが『美味しい拳』で見舞った。接待された山賊は誰もが大喜びで泥だらけになって転げ回る。
山賊に混じって狼雑魔・Eも現れた。
「雑魔ちゃん、おいたは駄目ェ♪」
リオンはEの横っ腹を叩いて塀から遠ざける。ドッジダッシュで毒針攻撃を避けながら背後へと回り、真っ黒な籠手で背骨を狙う。雑魔に骨があるかはわからないが、確かに砕ける感触が伝わってきた。
そして憤慨のリリーベルは櫓で眼下を眺める。
「豊かな実りを横から奪おうなどと、そのような愚者には裁きこそがふさわしいでしょうね」
全体を把握する彼女は伝令の中心になっていた。各方面を定期往復する伝令から情報を把握。必要な個所に物資や人員を移動させていく。その一環としてシャルルとバレルに南方面へ向かってもらう。
南方面の村人達は奮闘していた。弓撃のみで狼雑魔F、G、Hの接近を抑えきっていたのである。
ジェットブーツでいち早く辿り着いたシャルルはデリンジャーで銃撃を開始。バレルも弓「テムジン」で参加。それから数分後、狼雑魔三体が塀を目指して特攻を仕掛けてきた。
「来いよ、野良狗」
前にでたバレルのバスタードソードとFの牙が雨中に火花を散らせる。
「狼の雑魔、か…そだネ、山賊よりは手応えも有りそーだネ」
シャルルはわざと足元を撃ってGを高く跳ねさせた。その瞬間を見逃さず、ディファレンスエンジンが呻る。機導砲の光条がGの下腹に当たって背中から突き抜けていく。
Fの首がバレルによって刎ねられたとき、離れた位置にいたHが逃げだす。シャルルの銃弾を浴びつつも闇の向こうへ消えていった。
その気になれば仕留められたのだがバレルとシャルルはわざと見逃す。山賊と雑魔の背後に隠れている何者かを燻りだすために。
敗走した狼雑魔・Hが赤髪の女の元へと辿り着く。
「何でよ、なんでさぁ!」
息絶え絶えのHを見た赤髪の女が大樹の幹を激しく蹴った。
「まさか村にはハンターとやらがいるっていうのかい?」
枝葉に溜まった雨粒が一斉に落ちる中、血走った眼で赤髪の女が振り返る。灯火が点々とする遠くの村の方角を。
●
狼雑魔の奇襲によって崩された塀は極々一部に留まった。そこを一点突破しようとして散らばっていた山賊が集結する。
伏兵を危惧して最低限の人数は残しつつ村人の弓隊も集まりだす。
「見つけました。合図をお願いします!」
塀に架けた梯子の上でギルミアが弓の弦を弾きながらリリーベルに話しかける。リリーベルは吊り下げた鍋を激しく叩く。
ギルミアの遠射が終わってシャープシューティングを使う。雷光で浮かび上がった敵は狼雑魔だけではなかった。凄まじい運動能力を持つ人型の何かがいる。
「どうしたんだヨ?」
「おそらく堕落者がこちらに迫っています」
ジェットブーツで飛んできたシャルルが塀を支える柱の上へ舞い降り、ギルミアに声をかけた。
「そいつが司令官的な奴なんだろうネ」
二人が話しているところにエルバッハが駆けつける。別の梯子を登って塀の外を望んだ。
「リリーベルさんが村人に聞いた話によると、この辺りの畑の収穫は終わっているようですね。それなら遠慮無く使えます」
エルバッハはギルミアに大まかな敵位置を教えてもらう。そして雷光で景色が見えた瞬間に火球を飛ばす。膨らむファイアーボールの輝きの中に二つの影が巻き込まれた。
次々と仲間が到達。前衛が塀を越えて村外へ出て行く。
「一緒に連れてきたようですね」
塀内側の梯子に残ったミオレスカは後衛仲間と一緒にボウ「レッドコメット」で矢を放つ。盾代わりの木板を抱えて走りだした山賊の脚部へと当てていく。
「魔物の手先になっても殺されるぞ。それより共に堕落者を討つべきだ。力を貸せば悪いようにはしない」
「て、てめぇ」
ザレムが魔導拳銃を構えながら空いていた手でゴーグルを外す。髭面の山賊首領は戸惑いつつも手下を盾にしてその場から脱兎。倒した手下三人は殺さずに手足を縛って転がしておいた。
バレルとリオンがLEDライトで照らしながら畑を駆ける。暗闇から突きだされた刃を躱しつつも山賊の存在は無視して前へ。先に仕留めるべき手負いの狼雑魔は鋭い目つきをしていた。
「ヘイ、ポチ! カワウィ~ってめちゃ元気! お礼に鉄拳あげる☆」
一瞬で間合いを詰めたリオンの拳が狼雑魔を宙高く舞いあがらせる。
「雑魔風情が」
雨粒に塗れながら落ちてきた狼雑魔にバレルの渾身撃が決まる。二塊となった狼雑魔が地面へ叩きつけられたとき、赤髪の女が金切り声をあげた。
「てめぇら!」
赤髪の女の投げナイフをシャルルが華麗に避ける。
「こっちだヨ。ついてくることができるかナ」
シャルルはジェットブーツで飛び回って赤髪の女を翻弄。その間にザレムがデルタレイの機会を狙う。
赤髪の女が足を滑らせたとき、光条が左肩を貫いた。それでも怯むことなく正確無比にナイフを四方八方に投げてくる。
ハンター達は避け、または弾く。赤髪の女にとって正確さが徒になったのかも知れない。ギルミアとミオレスカが放った矢が赤髪の女の向こう臑に命中。これによって動きが鈍った。
「堕落者で間違いないな?」
「ふん、それがどうしたっていうのさ!」
赤髪の女から答えを聞いたザレムが銃爪を絞る。こうして止めが刺された。
大勢は決する。まもなく山賊側が撤退の笛を吹き鳴らす。山森へと逃げていく山賊共をハンター達が追いかけた。
「首領は臆病者のようじゃん♪ ブルブルと震えて逃げているんじゃないかなッ♪」
リオンがいうように逃走中の山賊集団に首領は含まれている。馬もなく自らの足で坂道を上っていた。
「あれは?」
ギルミアが山賊集団を目撃したとき、今まで以上の凄まじい雷光が辺りを包み込んだ。
間近にあった山道沿いの大樹に雷が落ちたのである。しばらくしてハンター達が近づくと大樹は真っ二つに裂けて黒焦げになっていた。雨中にもかかわらず燃え続けている。
「側撃雷にやられたみたいだネ」
シャルルが水溜まりの山道を見下ろす。周辺には煤と溶けた金属の塊だけが散らばっていた。
●
「ああもうっ、雨で髪もローブも台無しじゃないの!」
リリーベルを先頭にしてハンター一行が村へ戻る。すでに沸かしてあった風呂の湯に浸かってから遅い夕食を頂くことになった。もちろん村に協力した全員がである。
山賊の気配はなくなっていた。狼雑魔を阻止したところで勝敗は決していたようだ。
村人側で怪我を負った者はほんのわずか。切羽詰まった状況だったにかかわらず先の戦いのときよりも被害は少なかった。誰もが疲れていたものの、笑顔がそれを物語っている。
「みんなが頑張っていたからね。せめて私たちはって準備していたのさ」
村の女性がハンター達をテーブルに招いて座らせた。
「ティーバッグ、ありがとうね」
「いいえ、こちらこそ。いいお湯でしたわ。この一口、身体に染み渡ります」
リリーベルが村の女性が淹れた紅茶を口に含む。彼女が提供したティーバッグによって村人全員が紅茶を愉しんだ。ちなみに村から贈られた寸志で、雷を誘導したシャルルのロングスピアと合わせて代替品を後日購入することとなる。
紅茶と一緒にピーナッツサンドを頂く。風呂上がりの後で手伝ったトースト仕立ては歯ごたえと甘味のハーモニーが心地よい。
「これ美味しいヨ。ちょうどお腹空いていたネ」
茹で落花生入りのパウンドケーキを食べたシャルルは、正面に座っていたギルミアに微笑んだ。
「ビスケットもいけますよ。ほろっと口の中で砕けてくれるんです」
ギルミアが落花生入りのビスケットを手にしてシャルルに見せる。お互いのお勧めを交換して味を確かめた。
「落花生、美味しいです♪」
「姉ちゃん、いい食いっぷりだな」
ミオレスカは塩ゆで落花生を食べ始めて止まらなくなる。いつの間にか村の男性と競うことに。あっと言う間に殻の山ができあがった。お腹がいっぱいになった後は醤油の話に花が咲く。
「はい、あたしが塗ったんだよ♪」
「ありがとう。うん、うまいな」
ザレムは少女から受け取ったピーナッツバターたっぷりのパンを食べて笑みを零す。
彼は村滞在の間に捕まえたり降参した一部山賊への情状酌量を促したいと考えていた。三日後になるが本人達だけでなく村長も理解してくれる。元々は山賊に襲われた立場の元で生きるために仕方なくやっていたようだ。
「悪くはない」
「えー、美味しいじゃんよ! ほら、こっちのバタピー、食べてごらんよ。ぎゅっと押しつぶして焼いたパンにピーナッツバターを塗ったのもほら。うん、うまいな♪」
淡々と食べるバレルにリオンが次々と料理を勧めていった。
「ピーナッツ、特産なのも頷ける味ですね」
「落花生油は美容にもいいのよっ♪ この炒め物も食べて食べて♪」
村の女性に勧められてエルバッハは山菜の落花生油炒めを味わう。落花生そのものも加えられていて素晴らしい一品に仕上がっていた。
それから数日間、ハンター達は塀の修理と落花生の収穫を手伝う。
「これでいったん帰らせていただくけれど、またいつでも呼んでちょうだい。畑を直すお手伝いはいくらでもさせてもらうわ」
リリーベルが代表して村人達に別れの言葉を贈る。村人達はハンター一行を乗せた馬車が見えなくなるまで手を振り続けたのだった。
暗雲垂れ込める空の下、村は山賊との戦いに備えようとしていた。
「お兄ちゃんありがとう」
「気をつけて。転ぶんじゃないぞ」
ザレム・アズール(ka0878)が背負っていた少女を地面に下ろして頭を撫でる。
ここは村中央にある教会内。ザレムは足首をくじいた少女を連れて来ていた。村の女性に治療を頼んで塀の外へと向かう。猟師達と協力して罠の仕掛けるためである。
教会内にいたリリーベル・A・ラミアス(ka5488)は年老いた村長の前で屈んだ。
「先に謝罪させてください。畑ですが、戦いになればもう一度踏み荒らすことになりますわ」
「気にせんでおくれ。土中の落花生は大丈夫じゃ。それよりもみなさんがいてくれて心強く思うておる」
村長がリリーベルの手を握って強く頷いてみせる。
リリーベルは若者に伝令役を頼んでから一緒に櫓を目指した。すでに力を貸してもらっている弓使いの補助や手当の心得のある者は各所で待機済みである。
櫓ではミオレスカ(ka3496)とギルミア・C(ka5310)が村の周囲を眺めていた。
「狼雑魔は近づくまでに仕留めてしまうつもりです」
「問題は見えるかどうかですね。ザレムによれば雷雨になるらしいのですが」
二人で天を仰ぐ。暮れなずむ頃だというのにまるで宵の口寸前のようである。
その頃、シャルル=L=カリラ(ka4262)は地形確認のためにスクーターで村外周を走っていた。
「雷とか鳴りそうな雰囲気だヨネ。……あ! これってもしかして使えるンじゃナイ?」
思いつきを実行すべく山岳方面の森林道にハンドルを切る。三十分後、道脇に聳える高い一本の樹木に登った彼は頂にロングスピアを縛りつけた。
「うまくいくかどうかは神ならぬ雷のみぞ知るだネ。皆には報告しておくヨ」
そう呟いて地面へと降りていく。
エルバッハ・リオン(ka2434)は塀の修理をしていた。村人達に混じって玄翁を握っている。
「塀は九割方、直ったといった感じですね」
手の甲で額の汗を拭いながら遠くの山森を眺めた。あの位置からだと塀は修理されているように見えるはず。実際には適当に板を宛がっているだけの個所が約一割ある。もう一日あればと悔やむところだがこればかりは仕方がない。
「戦力の分散はしたくはないが、どこから来るのかわからないのではな……」
「それでも一番人数が来そうな正面でお相手シちゃうかな♪」
バレル・ブラウリィ(ka1228)とリオン(ka1757)は村の外周を自らの足で歩いた。明るいうちに自分達の目で確かめておきたかったからである。
一時間が経過。ミオレスカが櫓の梯子を伝って大地へ下りたときに天が目映く輝いた。わずかに遅れて凄まじい雷鳴が轟きわたる。
このとき矢が雷光に紛れて塀に命中していた。山賊の一人が戯れに射った一矢である。
「本当に降ってきましたね」
先に下りていたギルミアの頬に大粒の雨が。天蓋の底が割れたかのように雨が降りだす。
篝火が消えてしまうほど雨の勢いが増した。屋根のある場所へと移動させたり対策を行うが間に合わない。だが一人の村人が即座に別の灯りを用意してくれる。
「便利ですね、これ」
ザレムがLEDライトを村人の何名かに預けていた。おかげで混乱なく新たな篝火やランタンの用意が行える。ライトはその後、ハンター達に手渡された。
三度目の激しい雷が落ちたとき、視力のよい村人が弓を抱えながら叫んだ。暗闇と豪雨に霞む遠方に朧気ながら集団らしき影があったと。
「海賊はクールで恰好良いけど……山賊は泥臭いヨ」
シャルルがスクーターのライトで村から伸びる道を照らす。銃撃で威嚇してみるが、山賊は近づいてこようとはしない。
(慎重なんて山賊らしくないヨ。何処かに指揮官的な存在でも居る……のカナ?)
彼の推測は当たっていた。
●
「いいかい? 塀を適当に壊したら戻っておいで」
森の大樹の下で赤髪の女が指示すると狼雑魔八体が駆けだした。十数分でぐるりと村を取り囲む。赤髪の女が鳴らした笛の音を合図にして一斉に進撃。落花生の茎を踏んづけながら村へと駆ける。
南東方面から迫っていた狼雑魔のAとBが突如転倒して泥まみれに。ザレムが仕掛けた挟み式の獣罠に足が挟まれたからだ。エルバッハが放ったウィンドスラッシュの風の刃が容赦なく二体を切り刻んでいく。火球攻撃を控えたのは塀と畑への影響を考えたからである。
北西方面から近づいた狼雑魔・Cの額に矢が突き刺さった。Cが仰け反ったところに喉仏へともう一矢。矢を当てたのはミオレスカ。高加速射撃の勢いは凄まじくCの身体が後方へと吹き飛んだ。塀まで近づかせずに仕留めきる。
ギルミアが待機していたのは一番拓けた南西方面だ。人よりも遠くが見える彼女は雷光の輝きを利用する。遠射を使い、超遠距離にもかかわらず狼雑魔・Dの背中に矢を突き立てた。傷を負ったDができるのは立ち止まって周囲を見渡すだけ。Dの位置から見えるのは遠くの小さな篝火だけだった。
「そろそろかな。あ、やっと見えてきた。むさいお友達! こっちこっちだってばァ!」
村の正門近くで待機していたリオンが立ち上がる。
「YO! メーン! 鉄拳のスウィーツ驕って貰いたい奴は前に出てきちゃってェ~!」
村人の矢をかいくぐってきた山賊が正門に迫る。こうなると遠隔武器は不利。代わりにリオンが『美味しい拳』で見舞った。接待された山賊は誰もが大喜びで泥だらけになって転げ回る。
山賊に混じって狼雑魔・Eも現れた。
「雑魔ちゃん、おいたは駄目ェ♪」
リオンはEの横っ腹を叩いて塀から遠ざける。ドッジダッシュで毒針攻撃を避けながら背後へと回り、真っ黒な籠手で背骨を狙う。雑魔に骨があるかはわからないが、確かに砕ける感触が伝わってきた。
そして憤慨のリリーベルは櫓で眼下を眺める。
「豊かな実りを横から奪おうなどと、そのような愚者には裁きこそがふさわしいでしょうね」
全体を把握する彼女は伝令の中心になっていた。各方面を定期往復する伝令から情報を把握。必要な個所に物資や人員を移動させていく。その一環としてシャルルとバレルに南方面へ向かってもらう。
南方面の村人達は奮闘していた。弓撃のみで狼雑魔F、G、Hの接近を抑えきっていたのである。
ジェットブーツでいち早く辿り着いたシャルルはデリンジャーで銃撃を開始。バレルも弓「テムジン」で参加。それから数分後、狼雑魔三体が塀を目指して特攻を仕掛けてきた。
「来いよ、野良狗」
前にでたバレルのバスタードソードとFの牙が雨中に火花を散らせる。
「狼の雑魔、か…そだネ、山賊よりは手応えも有りそーだネ」
シャルルはわざと足元を撃ってGを高く跳ねさせた。その瞬間を見逃さず、ディファレンスエンジンが呻る。機導砲の光条がGの下腹に当たって背中から突き抜けていく。
Fの首がバレルによって刎ねられたとき、離れた位置にいたHが逃げだす。シャルルの銃弾を浴びつつも闇の向こうへ消えていった。
その気になれば仕留められたのだがバレルとシャルルはわざと見逃す。山賊と雑魔の背後に隠れている何者かを燻りだすために。
敗走した狼雑魔・Hが赤髪の女の元へと辿り着く。
「何でよ、なんでさぁ!」
息絶え絶えのHを見た赤髪の女が大樹の幹を激しく蹴った。
「まさか村にはハンターとやらがいるっていうのかい?」
枝葉に溜まった雨粒が一斉に落ちる中、血走った眼で赤髪の女が振り返る。灯火が点々とする遠くの村の方角を。
●
狼雑魔の奇襲によって崩された塀は極々一部に留まった。そこを一点突破しようとして散らばっていた山賊が集結する。
伏兵を危惧して最低限の人数は残しつつ村人の弓隊も集まりだす。
「見つけました。合図をお願いします!」
塀に架けた梯子の上でギルミアが弓の弦を弾きながらリリーベルに話しかける。リリーベルは吊り下げた鍋を激しく叩く。
ギルミアの遠射が終わってシャープシューティングを使う。雷光で浮かび上がった敵は狼雑魔だけではなかった。凄まじい運動能力を持つ人型の何かがいる。
「どうしたんだヨ?」
「おそらく堕落者がこちらに迫っています」
ジェットブーツで飛んできたシャルルが塀を支える柱の上へ舞い降り、ギルミアに声をかけた。
「そいつが司令官的な奴なんだろうネ」
二人が話しているところにエルバッハが駆けつける。別の梯子を登って塀の外を望んだ。
「リリーベルさんが村人に聞いた話によると、この辺りの畑の収穫は終わっているようですね。それなら遠慮無く使えます」
エルバッハはギルミアに大まかな敵位置を教えてもらう。そして雷光で景色が見えた瞬間に火球を飛ばす。膨らむファイアーボールの輝きの中に二つの影が巻き込まれた。
次々と仲間が到達。前衛が塀を越えて村外へ出て行く。
「一緒に連れてきたようですね」
塀内側の梯子に残ったミオレスカは後衛仲間と一緒にボウ「レッドコメット」で矢を放つ。盾代わりの木板を抱えて走りだした山賊の脚部へと当てていく。
「魔物の手先になっても殺されるぞ。それより共に堕落者を討つべきだ。力を貸せば悪いようにはしない」
「て、てめぇ」
ザレムが魔導拳銃を構えながら空いていた手でゴーグルを外す。髭面の山賊首領は戸惑いつつも手下を盾にしてその場から脱兎。倒した手下三人は殺さずに手足を縛って転がしておいた。
バレルとリオンがLEDライトで照らしながら畑を駆ける。暗闇から突きだされた刃を躱しつつも山賊の存在は無視して前へ。先に仕留めるべき手負いの狼雑魔は鋭い目つきをしていた。
「ヘイ、ポチ! カワウィ~ってめちゃ元気! お礼に鉄拳あげる☆」
一瞬で間合いを詰めたリオンの拳が狼雑魔を宙高く舞いあがらせる。
「雑魔風情が」
雨粒に塗れながら落ちてきた狼雑魔にバレルの渾身撃が決まる。二塊となった狼雑魔が地面へ叩きつけられたとき、赤髪の女が金切り声をあげた。
「てめぇら!」
赤髪の女の投げナイフをシャルルが華麗に避ける。
「こっちだヨ。ついてくることができるかナ」
シャルルはジェットブーツで飛び回って赤髪の女を翻弄。その間にザレムがデルタレイの機会を狙う。
赤髪の女が足を滑らせたとき、光条が左肩を貫いた。それでも怯むことなく正確無比にナイフを四方八方に投げてくる。
ハンター達は避け、または弾く。赤髪の女にとって正確さが徒になったのかも知れない。ギルミアとミオレスカが放った矢が赤髪の女の向こう臑に命中。これによって動きが鈍った。
「堕落者で間違いないな?」
「ふん、それがどうしたっていうのさ!」
赤髪の女から答えを聞いたザレムが銃爪を絞る。こうして止めが刺された。
大勢は決する。まもなく山賊側が撤退の笛を吹き鳴らす。山森へと逃げていく山賊共をハンター達が追いかけた。
「首領は臆病者のようじゃん♪ ブルブルと震えて逃げているんじゃないかなッ♪」
リオンがいうように逃走中の山賊集団に首領は含まれている。馬もなく自らの足で坂道を上っていた。
「あれは?」
ギルミアが山賊集団を目撃したとき、今まで以上の凄まじい雷光が辺りを包み込んだ。
間近にあった山道沿いの大樹に雷が落ちたのである。しばらくしてハンター達が近づくと大樹は真っ二つに裂けて黒焦げになっていた。雨中にもかかわらず燃え続けている。
「側撃雷にやられたみたいだネ」
シャルルが水溜まりの山道を見下ろす。周辺には煤と溶けた金属の塊だけが散らばっていた。
●
「ああもうっ、雨で髪もローブも台無しじゃないの!」
リリーベルを先頭にしてハンター一行が村へ戻る。すでに沸かしてあった風呂の湯に浸かってから遅い夕食を頂くことになった。もちろん村に協力した全員がである。
山賊の気配はなくなっていた。狼雑魔を阻止したところで勝敗は決していたようだ。
村人側で怪我を負った者はほんのわずか。切羽詰まった状況だったにかかわらず先の戦いのときよりも被害は少なかった。誰もが疲れていたものの、笑顔がそれを物語っている。
「みんなが頑張っていたからね。せめて私たちはって準備していたのさ」
村の女性がハンター達をテーブルに招いて座らせた。
「ティーバッグ、ありがとうね」
「いいえ、こちらこそ。いいお湯でしたわ。この一口、身体に染み渡ります」
リリーベルが村の女性が淹れた紅茶を口に含む。彼女が提供したティーバッグによって村人全員が紅茶を愉しんだ。ちなみに村から贈られた寸志で、雷を誘導したシャルルのロングスピアと合わせて代替品を後日購入することとなる。
紅茶と一緒にピーナッツサンドを頂く。風呂上がりの後で手伝ったトースト仕立ては歯ごたえと甘味のハーモニーが心地よい。
「これ美味しいヨ。ちょうどお腹空いていたネ」
茹で落花生入りのパウンドケーキを食べたシャルルは、正面に座っていたギルミアに微笑んだ。
「ビスケットもいけますよ。ほろっと口の中で砕けてくれるんです」
ギルミアが落花生入りのビスケットを手にしてシャルルに見せる。お互いのお勧めを交換して味を確かめた。
「落花生、美味しいです♪」
「姉ちゃん、いい食いっぷりだな」
ミオレスカは塩ゆで落花生を食べ始めて止まらなくなる。いつの間にか村の男性と競うことに。あっと言う間に殻の山ができあがった。お腹がいっぱいになった後は醤油の話に花が咲く。
「はい、あたしが塗ったんだよ♪」
「ありがとう。うん、うまいな」
ザレムは少女から受け取ったピーナッツバターたっぷりのパンを食べて笑みを零す。
彼は村滞在の間に捕まえたり降参した一部山賊への情状酌量を促したいと考えていた。三日後になるが本人達だけでなく村長も理解してくれる。元々は山賊に襲われた立場の元で生きるために仕方なくやっていたようだ。
「悪くはない」
「えー、美味しいじゃんよ! ほら、こっちのバタピー、食べてごらんよ。ぎゅっと押しつぶして焼いたパンにピーナッツバターを塗ったのもほら。うん、うまいな♪」
淡々と食べるバレルにリオンが次々と料理を勧めていった。
「ピーナッツ、特産なのも頷ける味ですね」
「落花生油は美容にもいいのよっ♪ この炒め物も食べて食べて♪」
村の女性に勧められてエルバッハは山菜の落花生油炒めを味わう。落花生そのものも加えられていて素晴らしい一品に仕上がっていた。
それから数日間、ハンター達は塀の修理と落花生の収穫を手伝う。
「これでいったん帰らせていただくけれど、またいつでも呼んでちょうだい。畑を直すお手伝いはいくらでもさせてもらうわ」
リリーベルが代表して村人達に別れの言葉を贈る。村人達はハンター一行を乗せた馬車が見えなくなるまで手を振り続けたのだった。
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作戦相談卓 バレル・ブラウリィ(ka1228) 人間(リアルブルー)|21才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/09/17 14:53:14 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/15 20:14:31 |
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質問卓 リオン(ka1757) 人間(リアルブルー)|20才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/09/17 14:54:39 |