ゲスト
(ka0000)
宴会の森と不思議な果実
マスター:蒼かなた

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/09/15 12:00
- 完成日
- 2015/09/22 15:04
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●豊穣の秋
辺境は草原と荒野と雪原だけが広がる土地。そう思う人々は意外と多い。
それも温暖で緑に溢れている東部の地が長い間歪虚に奪われていたからである。
だが今は、その全てではないが南東部に関しては歪虚を追い返し奪還することに成功したのだ。
今は故郷を取り戻した部族達が少しずつではあるが、その地へと戻り荒らされた大地の再生に励んでいる。
そんな辺境南東部にとある森があり、そこにはちょっと不思議な果物が実っている。
そのことを知るとある部族は、その森のことをこう呼んでいた。
『コンウィム・シルヴァ』、宴会の森と。
「こりゃまた、随分と実ったもんだな」
件の森へ調査にやってきた熟練ハンターのブレアは見上げながらそう呟いた。
見上げているのは空を見上げる為ではなく、頭上に生る果物を見上げてのことだ。
そこにはぐんと育ち高さ5メートルはあるであろう立派な木が生えており、その枝には沢山の赤い果実がぶら下っている。
さらにその木に巻きつくようにして随分と太い蔦が伸び、これまた木の枝のところで大量の紫色の粒をぶら下げている。
そんな赤と紫の果物が、正直数えるのも面倒なくらいにそこには実っていた。
「林檎と葡萄の夢の共演ってか? てか、また随分と高いところに生ったもんだな、おい」
重厚なプレートメイルを装備しているブレアでは木を登ることも出来ず、そういう訳で先ほどからずっと見上げていることしかできないのであった。
と、その時風切り音がして、ブレアの頭上にあった林檎が落下してきた。ブレアはそれを難なくキャッチして後ろに振り返る。
「よう、おかえりさん。そっちはどうだった?」
ブレアが振り返った先には、弓を持ったエルフの男とウサ耳のカチューシャをした人間の女がこちらにやってくるところだった。
「こちらも異常なしです。まあ、強いて言うならば他にもそれと同じ木を見つけたってことくらいです」
そう言ってエルフの男はブレアの後ろの木を指差した。
「似たようなのが私が調べたところにもあったよ。この森のあちこちに生えてるみたいだね」
ウサ耳の女性が言うには、他にも2~3箇所同じような木があったらしい。
「とりあえず、安全そうなので私は収穫用の馬車を引いてきますね」
そう言ってエルフの男は森の入り口のほうへと向かっていく。
ブレアはそれを見送り、もう一度その木をじぃっと見つめた。
「そういや聞いたことあるな。辺境には不思議な森があるとかないとか」
「どっちなのよ、それ」
ウサ耳の女性のツッコミをスルーして、ブレアは手にした林檎に齧りつく。
「……葡萄じゃねーか、これ」
辺境は草原と荒野と雪原だけが広がる土地。そう思う人々は意外と多い。
それも温暖で緑に溢れている東部の地が長い間歪虚に奪われていたからである。
だが今は、その全てではないが南東部に関しては歪虚を追い返し奪還することに成功したのだ。
今は故郷を取り戻した部族達が少しずつではあるが、その地へと戻り荒らされた大地の再生に励んでいる。
そんな辺境南東部にとある森があり、そこにはちょっと不思議な果物が実っている。
そのことを知るとある部族は、その森のことをこう呼んでいた。
『コンウィム・シルヴァ』、宴会の森と。
「こりゃまた、随分と実ったもんだな」
件の森へ調査にやってきた熟練ハンターのブレアは見上げながらそう呟いた。
見上げているのは空を見上げる為ではなく、頭上に生る果物を見上げてのことだ。
そこにはぐんと育ち高さ5メートルはあるであろう立派な木が生えており、その枝には沢山の赤い果実がぶら下っている。
さらにその木に巻きつくようにして随分と太い蔦が伸び、これまた木の枝のところで大量の紫色の粒をぶら下げている。
そんな赤と紫の果物が、正直数えるのも面倒なくらいにそこには実っていた。
「林檎と葡萄の夢の共演ってか? てか、また随分と高いところに生ったもんだな、おい」
重厚なプレートメイルを装備しているブレアでは木を登ることも出来ず、そういう訳で先ほどからずっと見上げていることしかできないのであった。
と、その時風切り音がして、ブレアの頭上にあった林檎が落下してきた。ブレアはそれを難なくキャッチして後ろに振り返る。
「よう、おかえりさん。そっちはどうだった?」
ブレアが振り返った先には、弓を持ったエルフの男とウサ耳のカチューシャをした人間の女がこちらにやってくるところだった。
「こちらも異常なしです。まあ、強いて言うならば他にもそれと同じ木を見つけたってことくらいです」
そう言ってエルフの男はブレアの後ろの木を指差した。
「似たようなのが私が調べたところにもあったよ。この森のあちこちに生えてるみたいだね」
ウサ耳の女性が言うには、他にも2~3箇所同じような木があったらしい。
「とりあえず、安全そうなので私は収穫用の馬車を引いてきますね」
そう言ってエルフの男は森の入り口のほうへと向かっていく。
ブレアはそれを見送り、もう一度その木をじぃっと見つめた。
「そういや聞いたことあるな。辺境には不思議な森があるとかないとか」
「どっちなのよ、それ」
ウサ耳の女性のツッコミをスルーして、ブレアは手にした林檎に齧りつく。
「……葡萄じゃねーか、これ」
リプレイ本文
●実る果実は不思議な味
太陽がゆっくりと空の真上へと昇ってきた頃、ハンター達は宴会の森と呼ばれる『コンウィム・シルヴァ』へとやってきた。
「ここが今日の女子会の会場ね! たまには大自然の中でっていうのも悪くないわね」
森の入り口に立ったリューナ・ヘリオドール(ka2444)は、立派な木々が生い茂った森を見つめながら1つ頷く。
「ここが例の異界の不思議フルーツが生っている森か。一見すると普通というか、ただの森にしか見えないね」
そんなリューナの隣に立つのは今回の女子会メンバーの1人、滝川雅華(ka0416)だ。確かに彼女の言う通り、ここから見る限りではそもそも果物が生っているのかも怪しい極普通の森にしか見えない。
「ハンターオフィスに貼ってあった正式な依頼なんだし、騙されてるってことはないと思うわよ?」
女子会メンバーのもう1人、ルキハ・ラスティネイル(ka2633)はバスケット片手に雅華の後ろから声を掛ける。
「ルキハ、そのバスケットは?」
「勿論、これよぉ。女子会には必須でしょ?」
雅華の問いにルキハはバスケットの蓋を開ける。そこにはワインボトルが2本と、3人分のグラスが入っていた。
「ちゃんと美味しいのを選んできたわヨ。楽しみにしててね♪」
「ああ、それなら私もパンを持ってきたよ。フルーツサンド用に生クリームも用意してきたわ」
ルキハの言葉にリューナも背負っていたリュックを下ろして、紙袋を取り出した。紙袋を開けて見せれば、そこには白くて柔らかそうなパンが顔を覗かせる。
他に何を作ろうかしらとルキハとリューナが話を盛り上げる中で、自然と自分の役割を理解した雅華は用意された収穫用の籠に視線を向ける。
「仕方がないな。これも甘いものの為ね」
雅華は頭を一度掻いて整え切れていない髪を揺らすと、籠を手にして森の中へと足を進めた。
賑やかな3人のすぐ後ろでお団子ツインテールの女の子、浅黄 小夜(ka3062)もまた収穫用の籠を受け取っていた。
「収穫の、お手伝い……ですか……」
「んっ? どうかしたか、お嬢ちゃん?」
そこで小夜に声をかけたのはブレアだった。籠をじっと見つめて何か呟いていた少女への親切心と言ったところだろうか。
「…………」
ただ、普段から人見知りの激しい小夜に突然知らない大人の男から声を掛けられるというのは色々と難易度が高かったようで、ブレアの顔を見上げる形で小夜はぴたりと固まってしまった。
「…………」
「…………えっと、大丈夫か?」
暫く見詰め合った末、先に根を上げたブレアが手をひらひらと振りながら再び声を掛ける。
「あっ、あっ! はい、大丈夫……かも……?」
「おいおい、どっちなんだそれは?」
意外と大きな声で返って来た言葉に、ブレアは大丈夫そうだと感じながらも笑いながらそう返す。
尚もあたふたする小夜の姿を一頻り眺めたところで、ブレアは改めて助け舟を出す。
「で、何か聞いておくことはあるか? 一応先に森に入ったから例の木が生えてる場所は知ってるぞ」
「あ……いいんです?」
「ああ、というか多すぎるから手伝って欲しいくらいだからな。んで、まずはここがだな……」
恐縮といった態度を見せた小夜に、ブレアは遠慮するなとばかりに手書きの地図を見せながら果物の生る木の場所を教えていく。
どうやらブレアが手が足りないと言っているのも本当なようで、ざっと教えてもらっただけでも10箇所ほどあるようだ。
「おおきに……。あ……浅黄小夜、です。よろしゅう……お頼申します……」
小夜はお礼を言ったところで、自分が名乗ってもいなければ相手の名前も聞いていないことを思い出して自己紹介と共にぺこりと頭を下げた。
「小夜か。俺はブレアだ。おっと、どうやら呼びだしだ。それじゃ収穫頑張れよ」
ブレアはそう名乗ったところで鳴り出した無線機を片手に背中を向け、残る片手でひらりと手を振ってから森の中へと消えていった。
小夜はそれを見送ってから、改めて籠を手にして森を見つめる。
「沢山……採れるよぉに……頑張ります……」
そう一言呟いて、小夜はやる気十分といった様子で果物狩りを開始した。
ハンター達がそれぞれ果物を開始したところで、森に入ってすぐの場所でルヌーン・キグリル(ka5477)は立ち止まっていた。
「何だろう。ここは心が落ち着く」
それも自分の体が半分が植物になった所為なんだろうかと、ルヌーンはその場で一度しゃがみこんで草の生える地面を撫でた。
マンドレイクであるこの身ならば地面に埋まればもっと心地よいのだろうかという考えが一瞬頭を過ぎるが、残り半分の人である部分を捨てたわけでもないと思い直しルヌーンは再び立ち上がる。
「用心もしないとだしね」
ここには自分以外のハンター達も来ているのだからと、羽織っているローブのフードを深く被り直してルヌーンは森の更に奥を目指した。
森に入って十数メートル歩いたところで、雅華は早速果物の生っている木を見つける。
幹も太い立派な林檎の生る木に葡萄の蔦が巻きついて、枝には林檎と葡萄が並んでぶら下っていた。
「これが例の異界の不思議フルーツね。見た目はただの林檎に見えるけど……」
雅華は手を伸ばして林檎を1つ採ってみた。色艶共に綺麗な赤の林檎だ。それを自分の着ている少し寄れた白衣にこすり付けて磨いてみて、少しの間じっとそれを見つめた後、思い切って齧ってみる。口の中に広がってきたのは僅かな甘みと程よい酸味。それは見た目とは裏腹な不思議な味わいだった。
「――! 聞いてたから知ってはいたけど、本当に葡萄の味がするのね」
雅華は少し驚いた顔をしながら、今度はそこに生っている濃い紫色をした葡萄を摘んで口の中に含んでみた。すると思ったとおり、やはり見た目とは違う爽やかな甘みが口の中に広がった。
そんな見た目と味の違いを確認したところで雅華は改めて林檎と葡萄の生る木を見上げる。
「さて、味見はこのへんにして。面倒だけどそろそろ役目を果たさないとね。どれが美味しそうかな」
雅華は沢山生る果実達の色艶を1つ1つ確かめながら、熟した果実へとその手を伸ばした。
小夜もまた果実の生る木を見つけて収穫を始めたところだった。
「見た目は……普通の……果物みたい、やけど……味はさかさま、やって……不思議、ですね……」
幾つか籠に入れたところで、小夜は手にしている林檎をじぃっと見つめる。そこでふとした疑問が浮かんできた。
「さかさま……なってても……お菓子や、お料理に……使う時は……おんなし、使い方に……なるんかな……?」
料理となれば林檎であればアップルパイや林檎のタルト、葡萄であればゼリーやコンポートなどだろうか。
味が逆になっていても、それなら美味しそうだなと小夜は一先ず納得する。
「でも……栗と柿は……?」
小夜は籠の中に視線を向ける。そこには先ほど別の場所で収穫してきた柿と栗が入っていた。その時見た木はとても不思議な捩れた木で、割と高いところに生っていて採るのに苦労したことも一緒に思い出す。
「栗御飯は……美味しくて、好きやけど……柿御飯は……美味しい、かな……?」
自分の故郷、リアルブルーの日本で食べられている栗御飯と言えばほくほくで甘くて美味しい栗を使う有名料理の1つだ。ただそれが柿の味に置き換わるとなると、どうだろう? と小夜はむぅっと考えながら籠の中の栗を見つめる。
それに柿のほうも料理にするとしたらどんなものになるだろうか? 柿を使ったデザートと言えばと聞かれたら、そう言えばこれといって浮かんでくるものがない。
「あ……お友達の……お兄はんやったら……美味しい食べ方……知ってる、かも……」
そこで頭の中で浮かんだのは美味しいご飯を作ってくれる友達の顔であった。色々と料理をしているその友人であれば、この味があべこべになっている果物達も美味しい料理にしてくれるかもしれない。
そうと分かれば無駄に考えたり迷ったりする必要もなく、お土産で持って帰れるくらいに大量に採っておこうと小夜は籠を一杯にするべく果物採取のペースを上げた。
果物狩りが始まって2時間が過ぎた頃だろうか、その時空からぽつりと森の葉に雫が落ちてきた。
その雫の数は段々と増えてきて、あっという間にざあざあと音を鳴らす雨へと変わっていた。
「たっく、さっきまで晴れてたのに突然降ってきやがって」
その雨によってずぶ濡れにされたブレアは、不幸中の幸いかすぐ近くにあった洞窟の中に一時避難した。
「災難だったね」
「うおっ!?」
と、洞窟の入り口から雨の降る外を眺めていたブレアは突然声を掛けられて慌てて洞窟の奥へと振り返る。
するとそこにはローブのフードをしっかり被ったルヌーンの姿があった。
「確かアンタも果物狩りに来たハンターだったよな?」
「その通り。今は見ての通り、雨が降ってきたから避難中」
そう言いつつ、見たところルヌーンは濡れている様子はない。
それに気付いたブレアの不思議そうな表情に、ルヌーンは一度肩をすくめて見せる。
「長く旅をしてたから天気が変わるのくらいは感じ取れるんだよ」
そのおかげで降ってくる前にこの洞窟に避難できたたのだとルヌーンは説明した。
「そいつはまた大した特技だな。それじゃあ、次は何時晴れるかは分かるか?」
「そうだな。通り雨みたいだし、30分もすれば晴れるだろうね」
ブレアの問いに、ルヌーンは洞窟の入り口まで近寄ると空を見てからそう返した。
どしゃ降りというほどではないが、地面に水溜りが出来るほどの雨の勢いは止む気配を感じさせない。
ただ、雨が降ってくる前にそれを感知したというルヌーンの言葉をブレアは信じた。
「そうかい。それなら嬉しいが……全く、さっさと止まないかね」
ブレアはそう悪態をつきながら曇る空を見る。
「まあ、植物が育つにはどうしても水が必要なんだ。森で果物が採れるのもこの雨のおかげだと考えれば?」
「おかげで俺は風邪引きそうなんだよ」
「それだけでかい体して、軟すぎない?」
「季節の変わり目は風邪を引きやすいって言うだろう? それに俺は寒がりなんだ」
そう言いながらブレアは洞窟内に転がる枝や枯れた葉を集めて、小さな焚き火をし始める。
「火はあまり好きじゃないだけど」
「文句言うな。こっちは濡れて寒いんだよ」
ルヌーンの言葉にブレアは脱いだマントを絞りながら溜息混じりに言葉を返した。
「良かった。通り雨だったみたいね」
雨に降られた時はどうしたものかと思ったが、1時間もしないうちに空には輝く太陽が戻ってきた。
リューナは木陰に避難させていた折り畳みテーブルを設置しなおしながらホッと一安心する。
「やあ、2人共。今帰ったよ」
そこに雅華も丁度森の中から戻ってきた。手にしている籠の中には沢山の果物が詰まっている。
「雅華 、お疲れサマ! 女の子に力仕事させちゃって悪いわね」
「いや、私はこの後は楽をさせて貰うからね。という訳で頼んだよ」
雅華はそう言うとルキハに籠を手渡すと、用意されていた椅子に座り込む。背もたれに完全に背中を預けてあっという間に寛ぐモードに移行していた。
「あらあら、それじゃあ功労者の雅華の為にも美味しいもの作らなきゃネ!」
くすりと微笑んだルキハは果物を籠から取り出して軽く太陽にかざす。先ほどの雨で濡れた果実はきらりと輝いて、見るからに新鮮でとても美味しそうだ。
「ふーん、確かに見た目は林檎だけど、香りはやっぱ葡萄みたいだね」
リューナも林檎を手にとってそれを嗅いでみると、豊潤な甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐった。
2人は不思議な果物達をさくっと磨いて綺麗にすると、雑談を交えながら綺麗に皮を剥いていく。
「リューナは林檎の皮を剥くの上手ね。綺麗に一本に繋がってるわ」
「ふふん、そうだろう? 一度も失敗せずに剥けるようになるまで結構練習したのよ。ところでその葡萄の皮、かなり綺麗に剥けてるけどどうやったの?」
「これにはコツがあってね。まず房についてたのと反対側の皮に小さな傷をつけて……」
「なるほどね。勉強になるわ」
そうこうしている間に、人数分の果物の用意ができた。
今回はしっかりした調理器具や設備もないので簡単な料理を2人は作っていった。
そして1時間後ほど経った頃、椅子に座って寛いでいた雅華の肩が叩かれる。雅華が目を開ければ、リューナが自分の座る椅子の前に立っていた。
「んっ……もう準備は出来たのかい?」
「ええ、もしかして寝ちゃってたかしら?」
「いや、甘い香りのおかげで全く寝られなかったよ」
「そう、ならお待たせしちゃったわね。準備が出来たから始めるわよ、私達の女子会をね」
そんな会話を交えながら2人は机の上に料理を並べるルキナの元へと向かう。
ルキナは2人がやってきたのを見計らって、テーブルに並ぶグラスにワインを注いでいった。
「さて、今回は何に乾杯しようかしら?」
「それは勿論。私達の友情に!」
「ならいつも通り、私達の友情に」
友情に、という掛け声を合わせて3人はグラスを掲げ、そのまま口元へと誘った。
それからテーブルに並ぶ採れた果物全部を使ったフルーツポンチや、林檎や葡萄のコンフィチュールとクラッカーなどに手を伸ばしながら会話に花を咲かせる。
「そうそう。雅華はこのあと爪のお手入れをしないとね」
「……何故?」
「何故って、雅華ちゃんもしかして爪のお手入れとかしてない?」
その問いに頷いた雅華に、リューナとルキハは2人は揃って目を見開いた後に顔を合わせ、同時に溜息を吐いた。
「何だい、2人揃って溜息なんか吐いて」
「駄目よ、雅華。女の子は指先もしっかりおしゃれしなくちゃ」
「その通りよ。ほら、ルキハなんてお肌の手入れも完璧なのよ。というか、どんなお手入れしてるの? ちょっと教えなさいよ」
「いや、しかし爪なんて……綺麗に切っていればそれで十分だろう? ああ、それとこのワイン中々美味しいな」
女が3人寄れば何とやら。雑多な会話をしながらもゆっくりと時間は過ぎていく。
戦いのない束の間の休息の時間に癒しを覚えながら、3人の女子会は夕暮れ近くまで続いた。
「それじゃあ、次の女子会では雅華を美人だと自覚させるってことで決まりね」
「さんせーい♪ 雅華ちゃんは一先ずお化粧道具を持参するのよ?」
「どうしてこうなったんだ。いや、そもそも私は美人とかそういうのではなくて……」
そんなとりとめもない会話を楽しみながら、次の計画を早速練るのであった。
「沢山……採れました……」
夕暮れ時に戻ってきた小夜の籠には、溢れんばかりの果物が詰め込まれていた。
お土産の分もと考えるとつい夢中になって戻ってくるのが大分遅れたが、その分収穫はかなりの物だ。
「おっ、お嬢ちゃんも帰ってきたか。お疲れさん」
そんな小夜の姿を見つけたブレアが労いの言葉を掛ける。先に戻っていた彼のほうも籠一杯に果物を採ってきたようだ。
「……えっと……ブレアのおにいはんも……お疲れ様……です……」
先ほど自己紹介もして会話もしたとはいえ、まだ慣れていないのか小夜はぎこちなさ気に挨拶をしてぺこりと頭を下げる。
ブレアのほうはそんな様子を気にも留めず、小夜に近寄ってその手から籠を受け取ろうとする。
「あ……ブレアのおにいはん……これ、少し……お土産に……貰っても、大丈夫……?」
「おっ? そうだな。まあ、いいんじゃないか? どうせ腐るほどあるんだしな。腐らせる前に食べるなら誰も文句は言わんだろうよ」
ブレアは少し考えた後に、ニッと笑いながらそう返した。そしてそれと一緒に小さな籠を小夜に手渡す。
「ほれ、そいつにお土産の分を移しておきな」
「はい……おおきに……」
小夜はそれを受け取ると、ほんの僅かにだけ微笑んでせっせと新鮮そうな果実を選び始める。
その様子を眺めながら、ブレアは後ろに振り向いて其処に立つルヌーンに声をかけた。
「お前さんは持って帰らないのかい?」
「私はいらないよ。今日はこの森で十分気晴らしすることが出来たし……うん、それで十分」
ルヌーンはそう言って、太陽が傾いたおかげで茜色に染まった森を眺める。
もう少しすれば、夕暮れの日差しがなくてもこの森は色鮮やかに染まることだろう。
「その時になったらまた来てみようかな」
涼しい秋風が吹き始める中で、ルヌーンはフードを深く被り直してそう呟いた。
太陽がゆっくりと空の真上へと昇ってきた頃、ハンター達は宴会の森と呼ばれる『コンウィム・シルヴァ』へとやってきた。
「ここが今日の女子会の会場ね! たまには大自然の中でっていうのも悪くないわね」
森の入り口に立ったリューナ・ヘリオドール(ka2444)は、立派な木々が生い茂った森を見つめながら1つ頷く。
「ここが例の異界の不思議フルーツが生っている森か。一見すると普通というか、ただの森にしか見えないね」
そんなリューナの隣に立つのは今回の女子会メンバーの1人、滝川雅華(ka0416)だ。確かに彼女の言う通り、ここから見る限りではそもそも果物が生っているのかも怪しい極普通の森にしか見えない。
「ハンターオフィスに貼ってあった正式な依頼なんだし、騙されてるってことはないと思うわよ?」
女子会メンバーのもう1人、ルキハ・ラスティネイル(ka2633)はバスケット片手に雅華の後ろから声を掛ける。
「ルキハ、そのバスケットは?」
「勿論、これよぉ。女子会には必須でしょ?」
雅華の問いにルキハはバスケットの蓋を開ける。そこにはワインボトルが2本と、3人分のグラスが入っていた。
「ちゃんと美味しいのを選んできたわヨ。楽しみにしててね♪」
「ああ、それなら私もパンを持ってきたよ。フルーツサンド用に生クリームも用意してきたわ」
ルキハの言葉にリューナも背負っていたリュックを下ろして、紙袋を取り出した。紙袋を開けて見せれば、そこには白くて柔らかそうなパンが顔を覗かせる。
他に何を作ろうかしらとルキハとリューナが話を盛り上げる中で、自然と自分の役割を理解した雅華は用意された収穫用の籠に視線を向ける。
「仕方がないな。これも甘いものの為ね」
雅華は頭を一度掻いて整え切れていない髪を揺らすと、籠を手にして森の中へと足を進めた。
賑やかな3人のすぐ後ろでお団子ツインテールの女の子、浅黄 小夜(ka3062)もまた収穫用の籠を受け取っていた。
「収穫の、お手伝い……ですか……」
「んっ? どうかしたか、お嬢ちゃん?」
そこで小夜に声をかけたのはブレアだった。籠をじっと見つめて何か呟いていた少女への親切心と言ったところだろうか。
「…………」
ただ、普段から人見知りの激しい小夜に突然知らない大人の男から声を掛けられるというのは色々と難易度が高かったようで、ブレアの顔を見上げる形で小夜はぴたりと固まってしまった。
「…………」
「…………えっと、大丈夫か?」
暫く見詰め合った末、先に根を上げたブレアが手をひらひらと振りながら再び声を掛ける。
「あっ、あっ! はい、大丈夫……かも……?」
「おいおい、どっちなんだそれは?」
意外と大きな声で返って来た言葉に、ブレアは大丈夫そうだと感じながらも笑いながらそう返す。
尚もあたふたする小夜の姿を一頻り眺めたところで、ブレアは改めて助け舟を出す。
「で、何か聞いておくことはあるか? 一応先に森に入ったから例の木が生えてる場所は知ってるぞ」
「あ……いいんです?」
「ああ、というか多すぎるから手伝って欲しいくらいだからな。んで、まずはここがだな……」
恐縮といった態度を見せた小夜に、ブレアは遠慮するなとばかりに手書きの地図を見せながら果物の生る木の場所を教えていく。
どうやらブレアが手が足りないと言っているのも本当なようで、ざっと教えてもらっただけでも10箇所ほどあるようだ。
「おおきに……。あ……浅黄小夜、です。よろしゅう……お頼申します……」
小夜はお礼を言ったところで、自分が名乗ってもいなければ相手の名前も聞いていないことを思い出して自己紹介と共にぺこりと頭を下げた。
「小夜か。俺はブレアだ。おっと、どうやら呼びだしだ。それじゃ収穫頑張れよ」
ブレアはそう名乗ったところで鳴り出した無線機を片手に背中を向け、残る片手でひらりと手を振ってから森の中へと消えていった。
小夜はそれを見送ってから、改めて籠を手にして森を見つめる。
「沢山……採れるよぉに……頑張ります……」
そう一言呟いて、小夜はやる気十分といった様子で果物狩りを開始した。
ハンター達がそれぞれ果物を開始したところで、森に入ってすぐの場所でルヌーン・キグリル(ka5477)は立ち止まっていた。
「何だろう。ここは心が落ち着く」
それも自分の体が半分が植物になった所為なんだろうかと、ルヌーンはその場で一度しゃがみこんで草の生える地面を撫でた。
マンドレイクであるこの身ならば地面に埋まればもっと心地よいのだろうかという考えが一瞬頭を過ぎるが、残り半分の人である部分を捨てたわけでもないと思い直しルヌーンは再び立ち上がる。
「用心もしないとだしね」
ここには自分以外のハンター達も来ているのだからと、羽織っているローブのフードを深く被り直してルヌーンは森の更に奥を目指した。
森に入って十数メートル歩いたところで、雅華は早速果物の生っている木を見つける。
幹も太い立派な林檎の生る木に葡萄の蔦が巻きついて、枝には林檎と葡萄が並んでぶら下っていた。
「これが例の異界の不思議フルーツね。見た目はただの林檎に見えるけど……」
雅華は手を伸ばして林檎を1つ採ってみた。色艶共に綺麗な赤の林檎だ。それを自分の着ている少し寄れた白衣にこすり付けて磨いてみて、少しの間じっとそれを見つめた後、思い切って齧ってみる。口の中に広がってきたのは僅かな甘みと程よい酸味。それは見た目とは裏腹な不思議な味わいだった。
「――! 聞いてたから知ってはいたけど、本当に葡萄の味がするのね」
雅華は少し驚いた顔をしながら、今度はそこに生っている濃い紫色をした葡萄を摘んで口の中に含んでみた。すると思ったとおり、やはり見た目とは違う爽やかな甘みが口の中に広がった。
そんな見た目と味の違いを確認したところで雅華は改めて林檎と葡萄の生る木を見上げる。
「さて、味見はこのへんにして。面倒だけどそろそろ役目を果たさないとね。どれが美味しそうかな」
雅華は沢山生る果実達の色艶を1つ1つ確かめながら、熟した果実へとその手を伸ばした。
小夜もまた果実の生る木を見つけて収穫を始めたところだった。
「見た目は……普通の……果物みたい、やけど……味はさかさま、やって……不思議、ですね……」
幾つか籠に入れたところで、小夜は手にしている林檎をじぃっと見つめる。そこでふとした疑問が浮かんできた。
「さかさま……なってても……お菓子や、お料理に……使う時は……おんなし、使い方に……なるんかな……?」
料理となれば林檎であればアップルパイや林檎のタルト、葡萄であればゼリーやコンポートなどだろうか。
味が逆になっていても、それなら美味しそうだなと小夜は一先ず納得する。
「でも……栗と柿は……?」
小夜は籠の中に視線を向ける。そこには先ほど別の場所で収穫してきた柿と栗が入っていた。その時見た木はとても不思議な捩れた木で、割と高いところに生っていて採るのに苦労したことも一緒に思い出す。
「栗御飯は……美味しくて、好きやけど……柿御飯は……美味しい、かな……?」
自分の故郷、リアルブルーの日本で食べられている栗御飯と言えばほくほくで甘くて美味しい栗を使う有名料理の1つだ。ただそれが柿の味に置き換わるとなると、どうだろう? と小夜はむぅっと考えながら籠の中の栗を見つめる。
それに柿のほうも料理にするとしたらどんなものになるだろうか? 柿を使ったデザートと言えばと聞かれたら、そう言えばこれといって浮かんでくるものがない。
「あ……お友達の……お兄はんやったら……美味しい食べ方……知ってる、かも……」
そこで頭の中で浮かんだのは美味しいご飯を作ってくれる友達の顔であった。色々と料理をしているその友人であれば、この味があべこべになっている果物達も美味しい料理にしてくれるかもしれない。
そうと分かれば無駄に考えたり迷ったりする必要もなく、お土産で持って帰れるくらいに大量に採っておこうと小夜は籠を一杯にするべく果物採取のペースを上げた。
果物狩りが始まって2時間が過ぎた頃だろうか、その時空からぽつりと森の葉に雫が落ちてきた。
その雫の数は段々と増えてきて、あっという間にざあざあと音を鳴らす雨へと変わっていた。
「たっく、さっきまで晴れてたのに突然降ってきやがって」
その雨によってずぶ濡れにされたブレアは、不幸中の幸いかすぐ近くにあった洞窟の中に一時避難した。
「災難だったね」
「うおっ!?」
と、洞窟の入り口から雨の降る外を眺めていたブレアは突然声を掛けられて慌てて洞窟の奥へと振り返る。
するとそこにはローブのフードをしっかり被ったルヌーンの姿があった。
「確かアンタも果物狩りに来たハンターだったよな?」
「その通り。今は見ての通り、雨が降ってきたから避難中」
そう言いつつ、見たところルヌーンは濡れている様子はない。
それに気付いたブレアの不思議そうな表情に、ルヌーンは一度肩をすくめて見せる。
「長く旅をしてたから天気が変わるのくらいは感じ取れるんだよ」
そのおかげで降ってくる前にこの洞窟に避難できたたのだとルヌーンは説明した。
「そいつはまた大した特技だな。それじゃあ、次は何時晴れるかは分かるか?」
「そうだな。通り雨みたいだし、30分もすれば晴れるだろうね」
ブレアの問いに、ルヌーンは洞窟の入り口まで近寄ると空を見てからそう返した。
どしゃ降りというほどではないが、地面に水溜りが出来るほどの雨の勢いは止む気配を感じさせない。
ただ、雨が降ってくる前にそれを感知したというルヌーンの言葉をブレアは信じた。
「そうかい。それなら嬉しいが……全く、さっさと止まないかね」
ブレアはそう悪態をつきながら曇る空を見る。
「まあ、植物が育つにはどうしても水が必要なんだ。森で果物が採れるのもこの雨のおかげだと考えれば?」
「おかげで俺は風邪引きそうなんだよ」
「それだけでかい体して、軟すぎない?」
「季節の変わり目は風邪を引きやすいって言うだろう? それに俺は寒がりなんだ」
そう言いながらブレアは洞窟内に転がる枝や枯れた葉を集めて、小さな焚き火をし始める。
「火はあまり好きじゃないだけど」
「文句言うな。こっちは濡れて寒いんだよ」
ルヌーンの言葉にブレアは脱いだマントを絞りながら溜息混じりに言葉を返した。
「良かった。通り雨だったみたいね」
雨に降られた時はどうしたものかと思ったが、1時間もしないうちに空には輝く太陽が戻ってきた。
リューナは木陰に避難させていた折り畳みテーブルを設置しなおしながらホッと一安心する。
「やあ、2人共。今帰ったよ」
そこに雅華も丁度森の中から戻ってきた。手にしている籠の中には沢山の果物が詰まっている。
「雅華 、お疲れサマ! 女の子に力仕事させちゃって悪いわね」
「いや、私はこの後は楽をさせて貰うからね。という訳で頼んだよ」
雅華はそう言うとルキハに籠を手渡すと、用意されていた椅子に座り込む。背もたれに完全に背中を預けてあっという間に寛ぐモードに移行していた。
「あらあら、それじゃあ功労者の雅華の為にも美味しいもの作らなきゃネ!」
くすりと微笑んだルキハは果物を籠から取り出して軽く太陽にかざす。先ほどの雨で濡れた果実はきらりと輝いて、見るからに新鮮でとても美味しそうだ。
「ふーん、確かに見た目は林檎だけど、香りはやっぱ葡萄みたいだね」
リューナも林檎を手にとってそれを嗅いでみると、豊潤な甘酸っぱい香りが鼻腔をくすぐった。
2人は不思議な果物達をさくっと磨いて綺麗にすると、雑談を交えながら綺麗に皮を剥いていく。
「リューナは林檎の皮を剥くの上手ね。綺麗に一本に繋がってるわ」
「ふふん、そうだろう? 一度も失敗せずに剥けるようになるまで結構練習したのよ。ところでその葡萄の皮、かなり綺麗に剥けてるけどどうやったの?」
「これにはコツがあってね。まず房についてたのと反対側の皮に小さな傷をつけて……」
「なるほどね。勉強になるわ」
そうこうしている間に、人数分の果物の用意ができた。
今回はしっかりした調理器具や設備もないので簡単な料理を2人は作っていった。
そして1時間後ほど経った頃、椅子に座って寛いでいた雅華の肩が叩かれる。雅華が目を開ければ、リューナが自分の座る椅子の前に立っていた。
「んっ……もう準備は出来たのかい?」
「ええ、もしかして寝ちゃってたかしら?」
「いや、甘い香りのおかげで全く寝られなかったよ」
「そう、ならお待たせしちゃったわね。準備が出来たから始めるわよ、私達の女子会をね」
そんな会話を交えながら2人は机の上に料理を並べるルキナの元へと向かう。
ルキナは2人がやってきたのを見計らって、テーブルに並ぶグラスにワインを注いでいった。
「さて、今回は何に乾杯しようかしら?」
「それは勿論。私達の友情に!」
「ならいつも通り、私達の友情に」
友情に、という掛け声を合わせて3人はグラスを掲げ、そのまま口元へと誘った。
それからテーブルに並ぶ採れた果物全部を使ったフルーツポンチや、林檎や葡萄のコンフィチュールとクラッカーなどに手を伸ばしながら会話に花を咲かせる。
「そうそう。雅華はこのあと爪のお手入れをしないとね」
「……何故?」
「何故って、雅華ちゃんもしかして爪のお手入れとかしてない?」
その問いに頷いた雅華に、リューナとルキハは2人は揃って目を見開いた後に顔を合わせ、同時に溜息を吐いた。
「何だい、2人揃って溜息なんか吐いて」
「駄目よ、雅華。女の子は指先もしっかりおしゃれしなくちゃ」
「その通りよ。ほら、ルキハなんてお肌の手入れも完璧なのよ。というか、どんなお手入れしてるの? ちょっと教えなさいよ」
「いや、しかし爪なんて……綺麗に切っていればそれで十分だろう? ああ、それとこのワイン中々美味しいな」
女が3人寄れば何とやら。雑多な会話をしながらもゆっくりと時間は過ぎていく。
戦いのない束の間の休息の時間に癒しを覚えながら、3人の女子会は夕暮れ近くまで続いた。
「それじゃあ、次の女子会では雅華を美人だと自覚させるってことで決まりね」
「さんせーい♪ 雅華ちゃんは一先ずお化粧道具を持参するのよ?」
「どうしてこうなったんだ。いや、そもそも私は美人とかそういうのではなくて……」
そんなとりとめもない会話を楽しみながら、次の計画を早速練るのであった。
「沢山……採れました……」
夕暮れ時に戻ってきた小夜の籠には、溢れんばかりの果物が詰め込まれていた。
お土産の分もと考えるとつい夢中になって戻ってくるのが大分遅れたが、その分収穫はかなりの物だ。
「おっ、お嬢ちゃんも帰ってきたか。お疲れさん」
そんな小夜の姿を見つけたブレアが労いの言葉を掛ける。先に戻っていた彼のほうも籠一杯に果物を採ってきたようだ。
「……えっと……ブレアのおにいはんも……お疲れ様……です……」
先ほど自己紹介もして会話もしたとはいえ、まだ慣れていないのか小夜はぎこちなさ気に挨拶をしてぺこりと頭を下げる。
ブレアのほうはそんな様子を気にも留めず、小夜に近寄ってその手から籠を受け取ろうとする。
「あ……ブレアのおにいはん……これ、少し……お土産に……貰っても、大丈夫……?」
「おっ? そうだな。まあ、いいんじゃないか? どうせ腐るほどあるんだしな。腐らせる前に食べるなら誰も文句は言わんだろうよ」
ブレアは少し考えた後に、ニッと笑いながらそう返した。そしてそれと一緒に小さな籠を小夜に手渡す。
「ほれ、そいつにお土産の分を移しておきな」
「はい……おおきに……」
小夜はそれを受け取ると、ほんの僅かにだけ微笑んでせっせと新鮮そうな果実を選び始める。
その様子を眺めながら、ブレアは後ろに振り向いて其処に立つルヌーンに声をかけた。
「お前さんは持って帰らないのかい?」
「私はいらないよ。今日はこの森で十分気晴らしすることが出来たし……うん、それで十分」
ルヌーンはそう言って、太陽が傾いたおかげで茜色に染まった森を眺める。
もう少しすれば、夕暮れの日差しがなくてもこの森は色鮮やかに染まることだろう。
「その時になったらまた来てみようかな」
涼しい秋風が吹き始める中で、ルヌーンはフードを深く被り直してそう呟いた。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
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