ゲスト
(ka0000)
【東征】切なる祈り
マスター:香月丈流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/09/17 22:00
- 完成日
- 2015/09/26 00:55
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
昔、誰かが言っていた。
『戦争に敗者などおらず。また、勝者も存在せず。あるのは、ただ破壊のみ』と。
この言葉が真実か否か、判断は個人の解釈で変わるだろう。
だが……東方の地が破壊されたのは、紛れも無い事実。そこから目を背け、現実から逃げる事は出来ない。過去の歴史や大戦を受け止め、東方は復興に向かって歩み始めていた。
人間というのは、自分達が思っている以上に強い。逆境に晒され、絶望の底に突き落とされても、そこから這い上がろうとする『力』がある。
荒野と化した大地を開墾し、壊された家屋を再建し、犠牲になった人々を弔い……西方からの救援もあり、東方は少しずつ活気を取り戻している。
その陰から、破壊の足音が近付いているとも知らずに。
「パパ~~~!!」
少女の悲鳴と共に、父親の『遺体』が宙を舞う。
「やめろ! やめてくれぇ!!」
少年の叫びを煽るように、墓石が砕け散る。
「いや……嫌ぁぁぁぁぁぁ!」
泣き叫ぶ女性の目の前で、血溜りが広がっていく。
『憤怒』の歪虚王は倒されたが、歪虚という存在が東方から消えたワケではない。生き残りが居たのか、それとも自然発生した個体なのかは分からないが……雑魔達が再び、人々に牙を剥いていた。
人と大差ない筋肉質の体に、犬のような頭部。全身は体毛に覆われ、手足の爪は長く鋭い。俗に、コボルトと呼ばれる雑魔である。それが、集団で村に雪崩れ込んだ。
爪が家屋の屋根を斬り裂き、牙が墓石を噛み砕き、目的も無く畑や墓地を掘り返し、破壊と絶望が村全体に広がっていく。圧倒的な暴力に、一般人は抗う術を持っていない。
ただ、祈るしかなかった。
(誰か……助けて!)
『戦争に敗者などおらず。また、勝者も存在せず。あるのは、ただ破壊のみ』と。
この言葉が真実か否か、判断は個人の解釈で変わるだろう。
だが……東方の地が破壊されたのは、紛れも無い事実。そこから目を背け、現実から逃げる事は出来ない。過去の歴史や大戦を受け止め、東方は復興に向かって歩み始めていた。
人間というのは、自分達が思っている以上に強い。逆境に晒され、絶望の底に突き落とされても、そこから這い上がろうとする『力』がある。
荒野と化した大地を開墾し、壊された家屋を再建し、犠牲になった人々を弔い……西方からの救援もあり、東方は少しずつ活気を取り戻している。
その陰から、破壊の足音が近付いているとも知らずに。
「パパ~~~!!」
少女の悲鳴と共に、父親の『遺体』が宙を舞う。
「やめろ! やめてくれぇ!!」
少年の叫びを煽るように、墓石が砕け散る。
「いや……嫌ぁぁぁぁぁぁ!」
泣き叫ぶ女性の目の前で、血溜りが広がっていく。
『憤怒』の歪虚王は倒されたが、歪虚という存在が東方から消えたワケではない。生き残りが居たのか、それとも自然発生した個体なのかは分からないが……雑魔達が再び、人々に牙を剥いていた。
人と大差ない筋肉質の体に、犬のような頭部。全身は体毛に覆われ、手足の爪は長く鋭い。俗に、コボルトと呼ばれる雑魔である。それが、集団で村に雪崩れ込んだ。
爪が家屋の屋根を斬り裂き、牙が墓石を噛み砕き、目的も無く畑や墓地を掘り返し、破壊と絶望が村全体に広がっていく。圧倒的な暴力に、一般人は抗う術を持っていない。
ただ、祈るしかなかった。
(誰か……助けて!)
リプレイ本文
●
平和になったハズの大地で、人々の悲鳴が入り乱れる。破壊と恐怖が理不尽に降りかかり、希望の芽を刈り取っていく。復興の始まった東方で、再び戦火が上がっていた。
歪虚の残党による局地的な襲撃……統率された動きではなく、本能に任せた破壊行動。国全体を巻き込むような大きな戦いではないが、苦しめられている人々が居るなら見過ごせない。
空に広がる黒煙と火の粉を消し去るため、ハンター達が戦馬やバイクで東方の地を駆ける。目指すは、天ノ都の南東方向。その先にある村が、雑魔の襲撃を受けている。
村の入り口まで100mを切った頃、時音 ざくろ(ka1250)は仲間達に手信号で『止まれ』の合図を送った。自身も戦馬を止め、その背に飛び乗る。
「まずは、ざくろが偵察してみるよ! 目星をつけてから行動するのって、大事だと思うんだ!」
言うが早いか、ざくろはシューズからマテリアルを噴射して跳躍。近くの高い木に飛び移り、スルスルと登っていく。普段は美少女にしか見えないが、こういう姿を見ると『男』だという事が分かる。
「一理あるが、『兵は神速を貴ぶ』という言葉もある。悪いが、俺達は先行させて貰う」
彼が双眼鏡を取り出すのと、弥勒 明影(ka0189)が言葉を発したのは、ほぼ同時だった。奇しくも、2人の外見には似ている点が多い。風になびく黒い長髪に、燃えるような真紅の瞳。そして、女性と見紛う容姿も。
ほんの数秒、2人の視線が空中で交わる。『無言の会話』を終えて静かに頷くと、明影を含めて3人のハンター達が疾走。一足先に、村の奥へと消えて行った。
元々、今回の参加者達は3つの班に別れて行動するつもりだった。ここで1つの班が先行しても、特に問題は無いだろう。
住人の状況や敵の位置を確認するため、ざくろが双眼鏡で村全体を見渡す。地上で報告を待ちながら、門守 透(ka4863)は視線を巡らせていた。
「戦争に勝っても、こんな状況じゃ喜べないな……」
ポツリと呟くような一言。黒い瞳が見詰める先に在るのは……崩れた家屋や、惨殺された家畜、荒らされた田畑ばかり。ようやく勝利を手にし、復興が始まった矢先に2度目の破壊。故郷を荒らされた怒りと悲しみが、透の心で渦巻いていた。
「どうだい、ざくろさん。何か見えるかい?」
偵察中のざくろに、オルフェ(ka0290)が声を掛ける。戦場に居ても、その穏やかな声は心地良く耳に響く。春空色の瞳と髪も相まって、春風のような爽やかさを感じる。
オルフェに聞かれ、ざくろが村の状況を説明。コボルトの居る位置や数、村人が逃げて行く方向、そして……避難所に使えそうな建物の場所を伝えていく。
「大きな建物があるなら避難場所には最適だね。そこに誘導する方向で、先行した弥勒達に連絡するよ?」
報告を聞いたリョースアールヴァル(ka0427)が、トランシーバーを素早く操作。仲間が応答したのを確認し、柔らかい物腰で状況を説明している。
別れて行動するなら、情報の共有は必須と言っても過言ではない。彼らだけでなく、人々の命が懸かっているなら、尚更に。
「私のトランシーバーは、チャンネルをオープンにしておきます。治療な必要な負傷者が居たら連絡して下さい」
日下 菜摘(ka0881)の言葉に、全員が静かに頷く。参加者の中で、癒しに長けた聖導士は彼女しか居ない。治療スキルを使える者は数人居るが、回復力や使用回数を考慮すると、菜摘が回復役に最適だろう。
「ここからは時間との勝負だな。皆の活躍に期待させてもらう」
激励の言葉を口にしながら、ボルドー(ka5215)は武器を強く握った。10代や20代の覚醒者が多い中、彼は50歳を超えるベテラン戦士。若干小柄な体躯だが、その言葉には重みがあり、熟達の風格が漂っている。
「守ろう。民の希望になれる様に……僕らで村を救うんだ」
静かだが力強い、レオン(ka5108)の決意表明。青い瞳の奥で、闘志の炎が燃えているようにも見える。そのまま魔導バイクに跨り、マテリアルを込めた。
他の仲間達も、魔導バイクや馬に跨って突撃の準備を進めている。数分もしないうちに、7人は2手に別れて別々の方向に走り出した。
●
「分かった、あそこに誘導すりゃ良いんだな? 連絡ありがとうよ」
トランシーバーで情報を聞きながら、五黄(ka4688)は周囲に視線を向けていた。金色の隻眼が宙を走り、大きな建物を見詰めて止まる。
それは、リョースアールヴァルから伝えられた避難場所。運が良いのか悪いのか、五黄達の班は建物の近くまで来ていた。
「きゃ~~~!!」
不意に響いてきた甲高い叫び。その方向に視線を向けると、10歳前後の男女が4人、雑魔に追われている光景が飛び込んできた。
一般的に『コボルト』と呼ばれる事が多い、犬人間の異形。成人男性程度の身長で、手足の爪は長く鋭い。その雑魔が、子供達を追い回して楽しんでいる。
理不尽な状況を目の当りにし、白藤(ka3768)は唇を噛み締めた。
(略奪、喧騒……此処もあっちも、何時になっても変わらへんな)
整った顔立ちが若干歪み、頭の隅で記憶が蘇る。それは……『蒼の世界』で両親と兄を殺された、悲しい思い出。その時の事が重なり、悲しみが心を満たした。
涙が零れそうになるのを我慢し、白藤が避難所を背に駆け出す。彼女を追うように五黄も疾走し、子供達との距離を詰めていく。
「動けるなら後ろの建物内に避難しろ! 今は外には絶対出るな! 分かったか!?」
五黄の声が大気を震わせ、子供達の耳に響いた。その指示に従い、少年少女は泣きながらも全力疾走。五黄の隣を通り抜け、避難所に駆け込んで行く。
覚醒者を目の当りにした雑魔は、足を止めて怒りの形相を浮かべた。殺気が一気に膨れ上がり、周囲の空気が張り詰めていく。
その圧倒的な重圧に、一般人が耐えられるワケがない。避難が遅れた少年が1人、動けなくなって地面に座りこんでしまった。
敵を牽制するように、五黄が2m近い長身で間に割って入る。白藤は素早く少年に駆け寄り、視線を合わせて頭を撫でた。
「だぁいじょうぶ! おねーちゃん達、強いんやから……何も心配いらへんよ」
優しい言葉に、柔らかい笑み。彼女に励まされて落ち着きを取り戻したのか、少年は涙を拭って笑って見せた。
直後。その表情が真っ赤に染まる。
白藤は俗に言う『わがままボディ』の持ち主であり、肌の露出も多い。首にはフワッフワのマフラーを巻いているが、上半身の衣服は水着と大差なかったりする。純真無垢な少年が直視するには、刺激が強過ぎたようだ。
もっとも……当の白藤はソレに気付かず、軽く小首を傾げているが。
そんな彼女の背後では、五黄と雑魔が殺気を叩き付け合っている。殺伐とした空気が高まっていく中、横合いから放たれた弾丸がコボルトの両脚を射抜いた。
銃撃を放ったのは、明影。強烈な攻撃が敵の体勢を崩し、膝から崩れ落ちた。動けなくなった雑魔に、ゆっくりと明影が歩み寄っていく。漆黒の焔と雷光が衣服の如く全身を包み、活性化したマテリアルが銃に収束。その状態で、銃を敵の額に突き付けた。
雑魔に、畜生風情に道理を説いても、通じない事は分かっている。それでも……明影は敢えて言葉を口にした。
「殺すならば――殺される覚悟もあるんだよな」
返事を待つ事なく、銃弾を撃ち放つ。銃口から黒炎が溢れ出し、雑魔を直撃。劫火がコボルトの全身を焼き尽くし、存在そのものを消し去った。
●
荒れ果てた村の中を、レオンのバイクが駆け抜ける。偵察するように周囲を見渡すと、視界の隅に逃げ惑う村人達の姿が映った。
「早くこっちへ! 焦らず老人や子供から!」
大声で叫び、自分の居る方向に誘導するレオン。逃げていた村人達は、老若男女が4人。その後方から、5匹の雑魔が迫っている。レオンはバイクから降り、槍を構えて立ち塞がった。
数秒遅れて、オルフェ、リョースアールヴァル、菜摘も駆け付け、班のメンバーが全員揃う。住人を守るため、ハンター達は雑魔との間に割って入った。
「わらわらと蟻のように群がってるね……さて、少しは楽しめるかな?」
リョースアールヴァルの顔に、冷たい笑みが広がっていく。緑の瞳が金色の輝きを帯び、金糸のような頭髪が風に踊る。普段の優しくて品のある立ち居振る舞いとは真逆の、獰猛で好戦的な姿が、そこにあった。
「何はともあれ……人命救助が最優先です。コボルド退治はお任せしても良いでしょうか?」
言いながら、菜摘は村人達と共に後に下がる。大怪我をしている住人は1人も居ないが、無傷の者も1人もいない。怪我の度合いを見る限り、治療が必要である。
菜摘は精霊に祈りを捧げ、マテリアルを活性化。柔らかい光を生み出し、傷口を包むように癒していく。
「それは構わないけど……僕、戦いは好きじゃないんだよね。でも、易々とやられる気はないよ!」
眉根を寄せ、後頭部を掻くオルフェ。空いた手で魔導拳銃を握ると、その表情が一変。キッと敵を睨み、闘志を研ぎ澄ましていく。静かに、戦いの火蓋が切って落とされた。
●
ざくろが偵察した時、住人の半数近くが屋外を逃げ回っていた。その数は減ってきているが、まだゼロになっていない。ボルドーは戦馬を駆り、村の端や離れている場所を中心に見回っていた。
透とざくろも同行し、発見した住人を警護しながら誘導していく。その人数が2桁に近付いてきた頃、後方から雑魔の雄叫びが聞こえてきた。
凶悪な咆哮に怯えたのか、住人達の動きが完全に停止。膝がガクガクと震え、これ以上は進めそうにない。
「ひとまず落ち着くまで、みんなであの家に避難してて?」
怯える村人達に、ざくろが避難を促す。この人数を守りながら戦うよりも、近くの家に退避してもらった方が安全である。
ざくろが人々を励ましながら誘導している間に、透とボルドーは馬を走らせた。迫り来る雑魔の前に立ち塞がり、武器を構える。
「これ以上、人々に手を出すな。射殺されたいか……!」
ボルドーの黒眼が敵を射抜き、殺意を込めた言葉が突き刺さる。それを気にする事なく、距離を詰めてくる雑魔が4匹。小さく舌打ちし、ボルドーは弓を引いて矢を放った。
弓撃が空気を切り裂き、先頭のコボルトに命中。肩口から鮮血が舞い散る中、透が馬を走らせた。
騎乗したまま手綱を操り、日本刀を疾風の如く薙ぎ払う。青白い雷光を纏った切先がコボルトの首を捉え、一撃で切断。頭部を斬り落とされた雑魔は、力尽きて地に伏した。
「さあ、かかってこい! お前たちの相手は、この僕だ!」
声を張り上げ、透が敵の注意を集める。彼の狙い通り、雑魔達の標的は覚醒者達に変わったようだ。コボルトの爪や牙が殺意を纏い、透とボルドーに迫る。
攻撃の勢いは激しいが、俊敏性なら2人の方が若干高い。爪牙がカスる事はあっても、ダメージに繋がる一撃は受けていない。
透が反撃しようとした瞬間、目の前を『黒い影』が通り過ぎた。シューズからマテリアルを噴射し、一気に間合いを詰める。身長よりも大きな剣にマテリアルを込め、全力で振り下ろした。
斬撃の瞬間、武器が一瞬だけ巨大化。そのまま、敵を一刀両断に斬り伏せた。
「ざくろ達が来たからには、村の人には牙一本触れさせないもん!」
黒影の正体は、高速移動したざくろ。高らかな宣言と共に、近付いて来る敵を斬り倒していく。
(凄い剣技だ……西方に来たのは正解だったかもしれないな)
東方出身の透は、西方のハンターに強い興味を持っていた。様々な武術を勉強するために家を出た事もあり、ざくろのような熟練者の動きを目に焼き付けようとしている。その活躍に負けないように、透は日本刀を奔らせた。
●
オルフェが魔導拳銃にマテリアルを込めると、春空色の紙が胡桃色に変わっていく。不敵な笑みを浮かべながら、静かに引金を引いた。マテリアルがエネルギーに変換され、光の筋となって宙を奔る。閃光が敵を貫き、その命までも撃ち砕いた。
(ぼくは『牙無き民を守る剣』。ここで救えなくて、何の為に力を得たんだ……!)
心が奮い立ち、レオンのマテリアルが巨大な槍に集まっていく。漆黒の槍撃が空気を貫き、雑魔の胸部に突き刺さった。血が噴き出すより速く、レオンは槍を抜いて追撃の殴打を叩き込む。素早い連撃をマトモに喰らい、コボルトは力無く崩れ落ちた。
残った3匹は、リョースアールヴァルが相手をしている。敵の懐に特攻し、至近距離から槍を突き出す。それが雑魔の脇腹を掠めると、大きく踏み込んで渾身の追撃を叩き込んだ。更に、手首を返して槍を高く上げ、勢い良く振り下ろす。
一撃必殺ではない、手数を重視した戦法……荒々しくも激しい動きは、まるで狼のように鋭い。その勢いは衰える事なく、数分もしないうちに雑魔達を殲滅した。
敵の全滅を確認し、菜摘と村人達に歩み寄るハンター達。視線を巡らせるオルフェの瞳に、怯える少女の姿が映った。
「怖かったよね……もう大丈夫だよ」
微笑みながら、少女の頭を優しく撫でる。オルフェの穏やかな雰囲気が通じたのか、少女の表情が徐々に柔らかくなり、言葉の代わりに満面の笑顔が返ってきた。
●
ハンター達の活躍で、コボルトの咆哮が村から徐々に消えている。残った敵は、恐らく片手で数える程も居ないだろう。それでも……敵の数がゼロになったワケではない。
「馬鹿面揃えて……楽しそうだなぁ、犬っころ!」
3体の雑魔を発見し、挑発するように吠える五黄。煽って注意を引く事が目的だったが、その作戦は成功したようだ。雑魔は低く唸りながら、五黄達を睨んでいる。
緊迫した空気が流れる中、横合いの民家から男性が顔を覗かせた。恐らく……逃げ遅れて隠れていたが、ハンターの声を聞いて様子が気になったのだろう。
無防備な姿を晒す男性は、雑魔の『餌』でしかない。敵が襲い掛かるより早く、白藤が動いた。
弾丸にマテリアルを込め、足元を狙って発射。射撃が冷気を纏い、空中に氷の道を描く。そのまま弾丸が雑魔に命中し、脚部を凍結させて動きを封じた。
「うちらの事、無視せんでよ。寂しいやん?」
不敵な笑みを浮かべ、連続射撃で弾幕を張る。何があっても、敵を村人に近付ける気は無いらしい。白藤が雑魔を足止めしている間に、明影は住人男性に近寄った。
「この場は任せておけ。他の住民も避難している……おまえも急いだ方が良い」
行動の非を責める事なく、静かに避難を促す。男性が無言で頷くと、明影は彼を連れて雑魔から離れ、安全な位置まで見送った。
ほぼ同時に、五黄は全身のマテリアルを開放。身体能力が向上し、虎のような耳と尾が生えてきた。戦闘体勢を整え、地面を蹴って疾走。黒漆の太刀を強く握り、全力で薙ぎ払った。
刀身が雑魔の体を深々と斬り裂き、鮮血が噴き出す。それを避けるように体を捻り、今度は下段から斬り上げた。2つの斬撃が、雑魔に十字の傷を刻み込む。それが止めとなり、コボルトの1体が力尽きた。
五黄を支援するように、白藤の銃弾が雑魔に降り注ぐ。無数の弾丸が全身を貫通し、次々に穴を穿っていく。
止めとばかりに、五黄は動物霊の力を借りて高速移動。素早い動きから斬撃を繰り出し、雑魔の首を刈り取った。もし第三者が今の光景を目撃していたら……五黄の姿は『獲物を狩る虎』に見えたかもしれない。
●
ハンター達が村に突入してから数時間。互いにトランシーバーで情報交換していた10人が、避難場所に集まっていた。
雑魔は10匹以上倒したし、村に残っている気配は無い。ざくろと透が高所から双眼鏡で確認したが、敵の姿は見えなかった。
「少し、村を見回ってくる。目標は殲滅したと思うが、万が一という事もあるからな」
そう言って、ボルドーは馬に跨って手綱を操った。敵が残っている可能性は低いが、用心するに越した事はない。見回りはボルドーに任せ、残ったメンバーは避難所の中に入った。
室内では、菜摘が住人の治療を続けている。幸いな事に、行方不明者や死者は居ないが、素直に喜べる状態でもない。肉体の怪我は治せるが……『心の傷』を癒すには、もう少し時間が必要かもしれない。
「村人の皆さんは、これからもこの地で暮らしていくのですよね……でしたら、少しでも復興をお手伝い致しましょう」
菜摘の提案に、住人達がザワつく。助けて貰った事は感謝しているし嬉しいが、復興を手伝ってくれるとは思っていなかったのだろう。
それに……心のどこかで『また歪虚に壊される』という恐怖があった。でも、ハンター達が手伝ってくれるなら、不安や恐怖も希望に変わる。心の底から活力が湧いてくるのを、住人達は実感していた。
そして、覚醒者達は誰もが、復興支援するつもりで村に来ている。この状況でも輝きを失わない人々を見ていたら、喜んで手を貸すだろう。
この日……小さな村は、復興への『大きな1歩』を踏み出した。
平和になったハズの大地で、人々の悲鳴が入り乱れる。破壊と恐怖が理不尽に降りかかり、希望の芽を刈り取っていく。復興の始まった東方で、再び戦火が上がっていた。
歪虚の残党による局地的な襲撃……統率された動きではなく、本能に任せた破壊行動。国全体を巻き込むような大きな戦いではないが、苦しめられている人々が居るなら見過ごせない。
空に広がる黒煙と火の粉を消し去るため、ハンター達が戦馬やバイクで東方の地を駆ける。目指すは、天ノ都の南東方向。その先にある村が、雑魔の襲撃を受けている。
村の入り口まで100mを切った頃、時音 ざくろ(ka1250)は仲間達に手信号で『止まれ』の合図を送った。自身も戦馬を止め、その背に飛び乗る。
「まずは、ざくろが偵察してみるよ! 目星をつけてから行動するのって、大事だと思うんだ!」
言うが早いか、ざくろはシューズからマテリアルを噴射して跳躍。近くの高い木に飛び移り、スルスルと登っていく。普段は美少女にしか見えないが、こういう姿を見ると『男』だという事が分かる。
「一理あるが、『兵は神速を貴ぶ』という言葉もある。悪いが、俺達は先行させて貰う」
彼が双眼鏡を取り出すのと、弥勒 明影(ka0189)が言葉を発したのは、ほぼ同時だった。奇しくも、2人の外見には似ている点が多い。風になびく黒い長髪に、燃えるような真紅の瞳。そして、女性と見紛う容姿も。
ほんの数秒、2人の視線が空中で交わる。『無言の会話』を終えて静かに頷くと、明影を含めて3人のハンター達が疾走。一足先に、村の奥へと消えて行った。
元々、今回の参加者達は3つの班に別れて行動するつもりだった。ここで1つの班が先行しても、特に問題は無いだろう。
住人の状況や敵の位置を確認するため、ざくろが双眼鏡で村全体を見渡す。地上で報告を待ちながら、門守 透(ka4863)は視線を巡らせていた。
「戦争に勝っても、こんな状況じゃ喜べないな……」
ポツリと呟くような一言。黒い瞳が見詰める先に在るのは……崩れた家屋や、惨殺された家畜、荒らされた田畑ばかり。ようやく勝利を手にし、復興が始まった矢先に2度目の破壊。故郷を荒らされた怒りと悲しみが、透の心で渦巻いていた。
「どうだい、ざくろさん。何か見えるかい?」
偵察中のざくろに、オルフェ(ka0290)が声を掛ける。戦場に居ても、その穏やかな声は心地良く耳に響く。春空色の瞳と髪も相まって、春風のような爽やかさを感じる。
オルフェに聞かれ、ざくろが村の状況を説明。コボルトの居る位置や数、村人が逃げて行く方向、そして……避難所に使えそうな建物の場所を伝えていく。
「大きな建物があるなら避難場所には最適だね。そこに誘導する方向で、先行した弥勒達に連絡するよ?」
報告を聞いたリョースアールヴァル(ka0427)が、トランシーバーを素早く操作。仲間が応答したのを確認し、柔らかい物腰で状況を説明している。
別れて行動するなら、情報の共有は必須と言っても過言ではない。彼らだけでなく、人々の命が懸かっているなら、尚更に。
「私のトランシーバーは、チャンネルをオープンにしておきます。治療な必要な負傷者が居たら連絡して下さい」
日下 菜摘(ka0881)の言葉に、全員が静かに頷く。参加者の中で、癒しに長けた聖導士は彼女しか居ない。治療スキルを使える者は数人居るが、回復力や使用回数を考慮すると、菜摘が回復役に最適だろう。
「ここからは時間との勝負だな。皆の活躍に期待させてもらう」
激励の言葉を口にしながら、ボルドー(ka5215)は武器を強く握った。10代や20代の覚醒者が多い中、彼は50歳を超えるベテラン戦士。若干小柄な体躯だが、その言葉には重みがあり、熟達の風格が漂っている。
「守ろう。民の希望になれる様に……僕らで村を救うんだ」
静かだが力強い、レオン(ka5108)の決意表明。青い瞳の奥で、闘志の炎が燃えているようにも見える。そのまま魔導バイクに跨り、マテリアルを込めた。
他の仲間達も、魔導バイクや馬に跨って突撃の準備を進めている。数分もしないうちに、7人は2手に別れて別々の方向に走り出した。
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「分かった、あそこに誘導すりゃ良いんだな? 連絡ありがとうよ」
トランシーバーで情報を聞きながら、五黄(ka4688)は周囲に視線を向けていた。金色の隻眼が宙を走り、大きな建物を見詰めて止まる。
それは、リョースアールヴァルから伝えられた避難場所。運が良いのか悪いのか、五黄達の班は建物の近くまで来ていた。
「きゃ~~~!!」
不意に響いてきた甲高い叫び。その方向に視線を向けると、10歳前後の男女が4人、雑魔に追われている光景が飛び込んできた。
一般的に『コボルト』と呼ばれる事が多い、犬人間の異形。成人男性程度の身長で、手足の爪は長く鋭い。その雑魔が、子供達を追い回して楽しんでいる。
理不尽な状況を目の当りにし、白藤(ka3768)は唇を噛み締めた。
(略奪、喧騒……此処もあっちも、何時になっても変わらへんな)
整った顔立ちが若干歪み、頭の隅で記憶が蘇る。それは……『蒼の世界』で両親と兄を殺された、悲しい思い出。その時の事が重なり、悲しみが心を満たした。
涙が零れそうになるのを我慢し、白藤が避難所を背に駆け出す。彼女を追うように五黄も疾走し、子供達との距離を詰めていく。
「動けるなら後ろの建物内に避難しろ! 今は外には絶対出るな! 分かったか!?」
五黄の声が大気を震わせ、子供達の耳に響いた。その指示に従い、少年少女は泣きながらも全力疾走。五黄の隣を通り抜け、避難所に駆け込んで行く。
覚醒者を目の当りにした雑魔は、足を止めて怒りの形相を浮かべた。殺気が一気に膨れ上がり、周囲の空気が張り詰めていく。
その圧倒的な重圧に、一般人が耐えられるワケがない。避難が遅れた少年が1人、動けなくなって地面に座りこんでしまった。
敵を牽制するように、五黄が2m近い長身で間に割って入る。白藤は素早く少年に駆け寄り、視線を合わせて頭を撫でた。
「だぁいじょうぶ! おねーちゃん達、強いんやから……何も心配いらへんよ」
優しい言葉に、柔らかい笑み。彼女に励まされて落ち着きを取り戻したのか、少年は涙を拭って笑って見せた。
直後。その表情が真っ赤に染まる。
白藤は俗に言う『わがままボディ』の持ち主であり、肌の露出も多い。首にはフワッフワのマフラーを巻いているが、上半身の衣服は水着と大差なかったりする。純真無垢な少年が直視するには、刺激が強過ぎたようだ。
もっとも……当の白藤はソレに気付かず、軽く小首を傾げているが。
そんな彼女の背後では、五黄と雑魔が殺気を叩き付け合っている。殺伐とした空気が高まっていく中、横合いから放たれた弾丸がコボルトの両脚を射抜いた。
銃撃を放ったのは、明影。強烈な攻撃が敵の体勢を崩し、膝から崩れ落ちた。動けなくなった雑魔に、ゆっくりと明影が歩み寄っていく。漆黒の焔と雷光が衣服の如く全身を包み、活性化したマテリアルが銃に収束。その状態で、銃を敵の額に突き付けた。
雑魔に、畜生風情に道理を説いても、通じない事は分かっている。それでも……明影は敢えて言葉を口にした。
「殺すならば――殺される覚悟もあるんだよな」
返事を待つ事なく、銃弾を撃ち放つ。銃口から黒炎が溢れ出し、雑魔を直撃。劫火がコボルトの全身を焼き尽くし、存在そのものを消し去った。
●
荒れ果てた村の中を、レオンのバイクが駆け抜ける。偵察するように周囲を見渡すと、視界の隅に逃げ惑う村人達の姿が映った。
「早くこっちへ! 焦らず老人や子供から!」
大声で叫び、自分の居る方向に誘導するレオン。逃げていた村人達は、老若男女が4人。その後方から、5匹の雑魔が迫っている。レオンはバイクから降り、槍を構えて立ち塞がった。
数秒遅れて、オルフェ、リョースアールヴァル、菜摘も駆け付け、班のメンバーが全員揃う。住人を守るため、ハンター達は雑魔との間に割って入った。
「わらわらと蟻のように群がってるね……さて、少しは楽しめるかな?」
リョースアールヴァルの顔に、冷たい笑みが広がっていく。緑の瞳が金色の輝きを帯び、金糸のような頭髪が風に踊る。普段の優しくて品のある立ち居振る舞いとは真逆の、獰猛で好戦的な姿が、そこにあった。
「何はともあれ……人命救助が最優先です。コボルド退治はお任せしても良いでしょうか?」
言いながら、菜摘は村人達と共に後に下がる。大怪我をしている住人は1人も居ないが、無傷の者も1人もいない。怪我の度合いを見る限り、治療が必要である。
菜摘は精霊に祈りを捧げ、マテリアルを活性化。柔らかい光を生み出し、傷口を包むように癒していく。
「それは構わないけど……僕、戦いは好きじゃないんだよね。でも、易々とやられる気はないよ!」
眉根を寄せ、後頭部を掻くオルフェ。空いた手で魔導拳銃を握ると、その表情が一変。キッと敵を睨み、闘志を研ぎ澄ましていく。静かに、戦いの火蓋が切って落とされた。
●
ざくろが偵察した時、住人の半数近くが屋外を逃げ回っていた。その数は減ってきているが、まだゼロになっていない。ボルドーは戦馬を駆り、村の端や離れている場所を中心に見回っていた。
透とざくろも同行し、発見した住人を警護しながら誘導していく。その人数が2桁に近付いてきた頃、後方から雑魔の雄叫びが聞こえてきた。
凶悪な咆哮に怯えたのか、住人達の動きが完全に停止。膝がガクガクと震え、これ以上は進めそうにない。
「ひとまず落ち着くまで、みんなであの家に避難してて?」
怯える村人達に、ざくろが避難を促す。この人数を守りながら戦うよりも、近くの家に退避してもらった方が安全である。
ざくろが人々を励ましながら誘導している間に、透とボルドーは馬を走らせた。迫り来る雑魔の前に立ち塞がり、武器を構える。
「これ以上、人々に手を出すな。射殺されたいか……!」
ボルドーの黒眼が敵を射抜き、殺意を込めた言葉が突き刺さる。それを気にする事なく、距離を詰めてくる雑魔が4匹。小さく舌打ちし、ボルドーは弓を引いて矢を放った。
弓撃が空気を切り裂き、先頭のコボルトに命中。肩口から鮮血が舞い散る中、透が馬を走らせた。
騎乗したまま手綱を操り、日本刀を疾風の如く薙ぎ払う。青白い雷光を纏った切先がコボルトの首を捉え、一撃で切断。頭部を斬り落とされた雑魔は、力尽きて地に伏した。
「さあ、かかってこい! お前たちの相手は、この僕だ!」
声を張り上げ、透が敵の注意を集める。彼の狙い通り、雑魔達の標的は覚醒者達に変わったようだ。コボルトの爪や牙が殺意を纏い、透とボルドーに迫る。
攻撃の勢いは激しいが、俊敏性なら2人の方が若干高い。爪牙がカスる事はあっても、ダメージに繋がる一撃は受けていない。
透が反撃しようとした瞬間、目の前を『黒い影』が通り過ぎた。シューズからマテリアルを噴射し、一気に間合いを詰める。身長よりも大きな剣にマテリアルを込め、全力で振り下ろした。
斬撃の瞬間、武器が一瞬だけ巨大化。そのまま、敵を一刀両断に斬り伏せた。
「ざくろ達が来たからには、村の人には牙一本触れさせないもん!」
黒影の正体は、高速移動したざくろ。高らかな宣言と共に、近付いて来る敵を斬り倒していく。
(凄い剣技だ……西方に来たのは正解だったかもしれないな)
東方出身の透は、西方のハンターに強い興味を持っていた。様々な武術を勉強するために家を出た事もあり、ざくろのような熟練者の動きを目に焼き付けようとしている。その活躍に負けないように、透は日本刀を奔らせた。
●
オルフェが魔導拳銃にマテリアルを込めると、春空色の紙が胡桃色に変わっていく。不敵な笑みを浮かべながら、静かに引金を引いた。マテリアルがエネルギーに変換され、光の筋となって宙を奔る。閃光が敵を貫き、その命までも撃ち砕いた。
(ぼくは『牙無き民を守る剣』。ここで救えなくて、何の為に力を得たんだ……!)
心が奮い立ち、レオンのマテリアルが巨大な槍に集まっていく。漆黒の槍撃が空気を貫き、雑魔の胸部に突き刺さった。血が噴き出すより速く、レオンは槍を抜いて追撃の殴打を叩き込む。素早い連撃をマトモに喰らい、コボルトは力無く崩れ落ちた。
残った3匹は、リョースアールヴァルが相手をしている。敵の懐に特攻し、至近距離から槍を突き出す。それが雑魔の脇腹を掠めると、大きく踏み込んで渾身の追撃を叩き込んだ。更に、手首を返して槍を高く上げ、勢い良く振り下ろす。
一撃必殺ではない、手数を重視した戦法……荒々しくも激しい動きは、まるで狼のように鋭い。その勢いは衰える事なく、数分もしないうちに雑魔達を殲滅した。
敵の全滅を確認し、菜摘と村人達に歩み寄るハンター達。視線を巡らせるオルフェの瞳に、怯える少女の姿が映った。
「怖かったよね……もう大丈夫だよ」
微笑みながら、少女の頭を優しく撫でる。オルフェの穏やかな雰囲気が通じたのか、少女の表情が徐々に柔らかくなり、言葉の代わりに満面の笑顔が返ってきた。
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ハンター達の活躍で、コボルトの咆哮が村から徐々に消えている。残った敵は、恐らく片手で数える程も居ないだろう。それでも……敵の数がゼロになったワケではない。
「馬鹿面揃えて……楽しそうだなぁ、犬っころ!」
3体の雑魔を発見し、挑発するように吠える五黄。煽って注意を引く事が目的だったが、その作戦は成功したようだ。雑魔は低く唸りながら、五黄達を睨んでいる。
緊迫した空気が流れる中、横合いの民家から男性が顔を覗かせた。恐らく……逃げ遅れて隠れていたが、ハンターの声を聞いて様子が気になったのだろう。
無防備な姿を晒す男性は、雑魔の『餌』でしかない。敵が襲い掛かるより早く、白藤が動いた。
弾丸にマテリアルを込め、足元を狙って発射。射撃が冷気を纏い、空中に氷の道を描く。そのまま弾丸が雑魔に命中し、脚部を凍結させて動きを封じた。
「うちらの事、無視せんでよ。寂しいやん?」
不敵な笑みを浮かべ、連続射撃で弾幕を張る。何があっても、敵を村人に近付ける気は無いらしい。白藤が雑魔を足止めしている間に、明影は住人男性に近寄った。
「この場は任せておけ。他の住民も避難している……おまえも急いだ方が良い」
行動の非を責める事なく、静かに避難を促す。男性が無言で頷くと、明影は彼を連れて雑魔から離れ、安全な位置まで見送った。
ほぼ同時に、五黄は全身のマテリアルを開放。身体能力が向上し、虎のような耳と尾が生えてきた。戦闘体勢を整え、地面を蹴って疾走。黒漆の太刀を強く握り、全力で薙ぎ払った。
刀身が雑魔の体を深々と斬り裂き、鮮血が噴き出す。それを避けるように体を捻り、今度は下段から斬り上げた。2つの斬撃が、雑魔に十字の傷を刻み込む。それが止めとなり、コボルトの1体が力尽きた。
五黄を支援するように、白藤の銃弾が雑魔に降り注ぐ。無数の弾丸が全身を貫通し、次々に穴を穿っていく。
止めとばかりに、五黄は動物霊の力を借りて高速移動。素早い動きから斬撃を繰り出し、雑魔の首を刈り取った。もし第三者が今の光景を目撃していたら……五黄の姿は『獲物を狩る虎』に見えたかもしれない。
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ハンター達が村に突入してから数時間。互いにトランシーバーで情報交換していた10人が、避難場所に集まっていた。
雑魔は10匹以上倒したし、村に残っている気配は無い。ざくろと透が高所から双眼鏡で確認したが、敵の姿は見えなかった。
「少し、村を見回ってくる。目標は殲滅したと思うが、万が一という事もあるからな」
そう言って、ボルドーは馬に跨って手綱を操った。敵が残っている可能性は低いが、用心するに越した事はない。見回りはボルドーに任せ、残ったメンバーは避難所の中に入った。
室内では、菜摘が住人の治療を続けている。幸いな事に、行方不明者や死者は居ないが、素直に喜べる状態でもない。肉体の怪我は治せるが……『心の傷』を癒すには、もう少し時間が必要かもしれない。
「村人の皆さんは、これからもこの地で暮らしていくのですよね……でしたら、少しでも復興をお手伝い致しましょう」
菜摘の提案に、住人達がザワつく。助けて貰った事は感謝しているし嬉しいが、復興を手伝ってくれるとは思っていなかったのだろう。
それに……心のどこかで『また歪虚に壊される』という恐怖があった。でも、ハンター達が手伝ってくれるなら、不安や恐怖も希望に変わる。心の底から活力が湧いてくるのを、住人達は実感していた。
そして、覚醒者達は誰もが、復興支援するつもりで村に来ている。この状況でも輝きを失わない人々を見ていたら、喜んで手を貸すだろう。
この日……小さな村は、復興への『大きな1歩』を踏み出した。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/09/16 08:01:04 |
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相談しましょう 門守 透(ka4863) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|男性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/09/17 20:37:39 |