ゲスト
(ka0000)
夏のキノコ狩り
マスター:黒木茨

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/28 19:00
- 完成日
- 2014/08/06 20:59
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●男の報告
西方のどこかにある村、名前もそう知られてないその場所の付近にある森でのことだ。
茂みを掻き分けて進む男の耳にふと物音が聞こえる。鳥の鳴き声だろうか、近くからだった
鳥などそう珍しいものでもない、と思い無視して進んでいる男に再び鳥の声が聞こえた。それだけではない、何かが駆ける音も聞こえる。
野生動物といっても油断ならないしな、と男が思って振り返ってみると、そこにはこちらに向かい飛翔する鳥……のようなものと、こちらを食らうべく牙を見せた狼のようななにかの姿が見えた。
恐怖に慄いて逃げる男。爪をむき出しにして、男に狼型のなにかが襲い掛かる。それを避け、足は動かし続ける。
命辛々森を出た男が振り返ってみれば、そこにはなにも居なかった。森の外までは追ってこないらしい。
もし子供が襲われたら大変だ……そう思った男は次の犠牲者を出さないよう、村長にこの件を報告した。
●
その数日後。その村では連日雨が降り続いていた。
村の子供たちは外で遊ぶことも出来ず、家の中で過ごすことを余儀なくされる。
「外で遊びたいなあ……」
退屈そうにしていた子供を見かねて、母親が言う。
「ほら、そんなこと言わないの。こんな雨の日やその後は、キノコがたくさん採れるのよ、今度採ってきてあげる」
「え、そうなの!? いいな、いいなあ! 今すぐじゃだめ?」
「今は駄目よ、危ないから」
駄目、と母親が子供を諌めても、子供は頬を膨らませるだけだ。
「すぐがいい!」
母親が危険だと再度言っても聞かず、どうすべきか困った母親は村長に相談を持ちかけることにした。
村長も雑魔には思うところあるらしく、すぐさま人が集められて方策が話し合われる。侃侃諤諤の議論の末、誰かが纏めとなる言葉を出した
「やはり我々には手に負えない、ハンターに任せるとしようか」
「そうだな……報酬はあまり出せないが、その代わり我々に出来ることをしよう」
●キノコ採集?
後日、ハンターオフィスにて。
とある村から依頼が届いたと受付嬢が言った。
興味を示した貴方が説明を求めると、後で貼り出しますがと前置きしてから受付嬢は淡々と語る。
「森に生えているキノコを採取してきてほしいそうです。ただ……現在その森の中は雑魔が潜んでいるので迂闊に立ち入れないような状況で」
と、言ったところで受付嬢は予め置いてあったと思われるコップに口をつける。一口中身を飲んだところで、続きを言うべく口を開いた
「村の今後を考えるなら、雑魔退治も行ったほうがいいかと! 雑魔は確認されているだけでも鳥型のものと狼型のもの。強大ではありませんが油断は禁物です。……と、以上ですね。キノコ狩ってきて、ついでに雑魔も。といった感じです。……あ! 報酬が少ない代わりに、らしいですけど成功したら村の人がキノコ料理を振舞ってくれるそうですよ」
さて、どうしたものか。受けるかどうかは自分次第だ。
西方のどこかにある村、名前もそう知られてないその場所の付近にある森でのことだ。
茂みを掻き分けて進む男の耳にふと物音が聞こえる。鳥の鳴き声だろうか、近くからだった
鳥などそう珍しいものでもない、と思い無視して進んでいる男に再び鳥の声が聞こえた。それだけではない、何かが駆ける音も聞こえる。
野生動物といっても油断ならないしな、と男が思って振り返ってみると、そこにはこちらに向かい飛翔する鳥……のようなものと、こちらを食らうべく牙を見せた狼のようななにかの姿が見えた。
恐怖に慄いて逃げる男。爪をむき出しにして、男に狼型のなにかが襲い掛かる。それを避け、足は動かし続ける。
命辛々森を出た男が振り返ってみれば、そこにはなにも居なかった。森の外までは追ってこないらしい。
もし子供が襲われたら大変だ……そう思った男は次の犠牲者を出さないよう、村長にこの件を報告した。
●
その数日後。その村では連日雨が降り続いていた。
村の子供たちは外で遊ぶことも出来ず、家の中で過ごすことを余儀なくされる。
「外で遊びたいなあ……」
退屈そうにしていた子供を見かねて、母親が言う。
「ほら、そんなこと言わないの。こんな雨の日やその後は、キノコがたくさん採れるのよ、今度採ってきてあげる」
「え、そうなの!? いいな、いいなあ! 今すぐじゃだめ?」
「今は駄目よ、危ないから」
駄目、と母親が子供を諌めても、子供は頬を膨らませるだけだ。
「すぐがいい!」
母親が危険だと再度言っても聞かず、どうすべきか困った母親は村長に相談を持ちかけることにした。
村長も雑魔には思うところあるらしく、すぐさま人が集められて方策が話し合われる。侃侃諤諤の議論の末、誰かが纏めとなる言葉を出した
「やはり我々には手に負えない、ハンターに任せるとしようか」
「そうだな……報酬はあまり出せないが、その代わり我々に出来ることをしよう」
●キノコ採集?
後日、ハンターオフィスにて。
とある村から依頼が届いたと受付嬢が言った。
興味を示した貴方が説明を求めると、後で貼り出しますがと前置きしてから受付嬢は淡々と語る。
「森に生えているキノコを採取してきてほしいそうです。ただ……現在その森の中は雑魔が潜んでいるので迂闊に立ち入れないような状況で」
と、言ったところで受付嬢は予め置いてあったと思われるコップに口をつける。一口中身を飲んだところで、続きを言うべく口を開いた
「村の今後を考えるなら、雑魔退治も行ったほうがいいかと! 雑魔は確認されているだけでも鳥型のものと狼型のもの。強大ではありませんが油断は禁物です。……と、以上ですね。キノコ狩ってきて、ついでに雑魔も。といった感じです。……あ! 報酬が少ない代わりに、らしいですけど成功したら村の人がキノコ料理を振舞ってくれるそうですよ」
さて、どうしたものか。受けるかどうかは自分次第だ。
リプレイ本文
●雨降る村で
その村にハンターが辿りついたその時にも、雨は降り続いていた。
降る雨は優しく、しかし確実にハンターたちを濡らす。一先ずの間はと村内の宿に通されたハンターたちは、村人の歓迎を受けた。
彼らを迎えた村人の中で一人、前に出た者がいた。
「俺が森までの案内を務めます、質問があればなんでも聞いてください」
前に出た男は自分が案内人であることを伝え、一礼した。
なんでもというなら、と男に質問すべく口を開いたのは、摩耶(ka0362)だった。
「森に入る前に、簡単でも地図を作成しようと思っています。森の情報やキノコが採れる場所を教えていただけますか?」
「あ、ああ。今から作るのも大変でしょうし、俺が持ってるものでよければどうぞ」
と言って、男は懐から取り出した地図を広げた。大よその道筋と、なんらかの印が書かれている。
「キノコの自生する場所は書き込んであります。古い情報なので、実際には違うかもしれません」
男が印を指差して言うあたり、印がキノコの自生範囲なのだろう。
「ありがとうございます。それと、雑魔の目撃場所がどこか、わかるのであれば教えて欲しいのですけれど」
「あ、それはあたしも気になってた。村の人が森のどのあたりで雑魔に襲われたとか、わかるなら教えて欲しいかな」
摩耶の次いでの質問の後にメイム(ka2290)も乗る。男は地図を指差して、言った。
「聞いたところ、こことここ、それと……ここで目撃情報が出ています。森中を動き回ってるみたいです」
「どうもー」
と、納得して準備に入ったメイムに対し、
「これで最後にします、どのキノコが食べられるかわかりますか?」
摩耶はもう一つ、質問があるのか男に言う。
「さあ……食用キノコに似た毒キノコがあったり、見た目が毒々しくても食べられるキノコがあるってぐらいですね……さて、暗くなってからだと戦いにくいでしょう。そろそろ行きましょうか」
と発言した後、男は別室に行き、しばらくしてから戻ってくる。その手には背負い紐の付いた大き目の籠があった。
「採取したキノコはこちらの籠にどうぞ。けっこう丈夫なんで、安心してください」
と言って、男は柊 真司(ka0705)に籠を差し出した。真司は無言でそれを受け取り、背負う。
「けっこう、似合ってるんじゃないかな」
信司の格好を見て、南條 真水(ka2377)が笑いながら言った。
●森の中で
「無事帰ってきてくださいね」
と言って、ハンターを森の入り口まで送り届け、仕事を終えた男は引き返していった。
その背中を見守りながらも、彼らは森の中を進む。
薄暗い森の中で、摩耶と南條の持つハンディLEDライトが足元を照らす光となっている。
(むー、それにしても今回の雑魔は倒した後、身が残らないみたいで残念。狼は美味しくなさそうだけど、鳥は美味しそうだったのに~)
動物が歪虚に干渉された後、討伐されると通常より旨みのある肉になる……そんな噂を聞いていたメイムは、少し残念がっていた。
狼の肉はともかく、チキンとキノコのソテーとなれば、たしかにちょっとしたご馳走となるだろう。
それだけに、残念に思うのだろうか。
「ふふ、なつかしいわね」
その一方で、ふと、エーミ・エーテルクラフト(ka2225)が呟いた。彼女が昔、師匠と呼んでいた人物との旅の中では、山に入って食材を集めることもあった。それを思い出させる何かが、この依頼にはあったのだろう。
エーミは昔の経験と、事前に仲間が聞いていた情報を元に採取したキノコを、真司の背負う籠に入れていた。
摩耶もまた、地図を確認しつつ木の陰のような細かいポイントをチェックして採取している。
探索のその間も彼らは聞き耳を立てて、雑魔の出現を警戒していた。
……今のところ、羽音や獣が駆けるような足音は聞こえていない。まだ遠くにいるようだ。
(見つからないですわね……)
ロジー・ビィ(ka0296)は照らされた足元を見ながら、狼型雑魔の足跡を探していた。
森中で動き回るものなら、もちろん足跡はあるはずなのだが……雨で流れてしまったのだろうか、それらしきものが見つかることはない。
探索していると、一行は少し開けた場所に辿り付いた。今までの移動で雑魔の気配らしきものは未だ捉えられないままだ。ならばいっそ、
「キノコ狩りの素振りを見せれば敵が寄ってくるかな?」
と、メイム。
「探すよりは向こうに来てもらった方が、都合がいいわね」
と、エーミ……といった感じで、のこのこキノコ狩りしに来た人、の気配を演出しつつ、迎え撃つ手はずとなった。
フリではあるが、採取しているのは事実である。雑談に興じながらではあるが、籠の中にはキノコがほんの僅かではあるが入れられていっている。
「……これ、食えそうか? 真水」
「いや、南條さんにもさっぱりなんだよね」
真司の問いかけに答えた南條の手には、真司の持つキノコよりも毒々しいキノコが握られていた。
そんな不安を感じる採集をよそに、ロジーは仲間から少し離れた場所で木々にロープを結びつけている。
膝ぐらいの高さに張られたロープを確認して、ロジーは仲間の元へ戻っていった。
「思ったんだがエイミに聞けばいいな」
真司がふと漏らしたところで、ちょうどエーミがやってきては、
「二人とも何してるの」
と言い、それに南條が
「噂をすれば」
と入れた合いの手に一寸遅れて、何かが羽ばたく音が響いた。
次いで、獣の駆ける音もする。
「しっ……、音。来たわね」
エーミが、周囲に警戒を促した。
●戦いの中で
音に気付いたのはエーミだけでなく、後ろに控えていたメイムも手を振って雑魔の出現を示す。
真司は背負っていた籠を下ろして武器を構える。
そのように各自戦闘態勢をとるハンターの前に、鳥の姿をした雑魔が二体現れる。
狼の姿は見えないが、油断は禁物だろう。
何らかの理由で移動を止めざるを得ないのか、獣の駆ける音は度々止まっているが……。
鳥姿の雑魔は、片方は直線を引くように、片方は孤を描いて襲い掛かる……が、未だ敵の姿を捉えきってないのかその攻撃は空振りに終わった。
ロジーは相手の出方を伺いながら、メイムは野生の瞳で感覚を研ぎ澄まし攻撃に備える。
態勢を整えようとしている雑魔の片方に照準を合わせた真司は、友人である老齢のエルフの祈りを感じながら機導砲を放つ。
その祈りのお陰か、いつもより威力の高い砲撃に想定以上に弱った一体に、追い討ちのように火炎を纏う矢が刺さる。
エーミの放ったその火炎の矢は敵を燃やしつくし、跡形もなく消し去った。
「来る!」
誰かが言った言葉と同時に、残ったもう一体は直線を引くようにロジーに向かっていく。
このままでは直撃するところを鮮やかな動きで屈んで避け、空振りに戸惑う相手に剣を振るう。
……が、惜しいところで避けられてしまう。動きは鈍らないまま、鳥姿の雑魔は飛び立った。
次を狙うため機動を変えようとした雑魔を、メイムの射撃と南條の機導砲が襲う。
「これで一体は倒せるかな、っと!」
メイムが呟きと共に発した、何かに手助けされたかのようにキレのいい射撃と、南條のそれを補助する一閃が敵に命中する。
残った光の消えたあと、そこに鳥型雑魔の姿はなかった。情報が正しければ鳥型雑魔はこれで全滅、残りは狼型を残すだけである。
丁度いいタイミングで、狼型雑魔……元はこの森に生息していたであろう狼の変わり果てた姿が現れる。
駆け抜けた状態そのままに、狼は構える誰かに噛み付こうと飛び掛った。
先にいた摩耶にどうにか命中したものの、与えられた傷は浅く、仕留めるには足りない。
狼は自らの傷を癒す摩耶を無視して次を狙い、駆け出した。
メイムは敵がこちらに向かってくるまでに、と筋力充填を用い身体能力を向上させる。
狼は速く、この勢いのままで攻撃は……というところで先ほど張られたロープが効果を発揮したのか、気付かずに突っ込んだ狼は怯み、その隙をロジーの強打が突く。
足を狙って放たれたそれは狼の足の一本を砕き、動きを鈍らせた。さらに、死角から摩耶のチェーンウィップが飛ぶ。
死角からの予測できない動きに狼も避けることが出来ず、直撃してよろめいた。何らかの力で威力の上がった摩耶の攻撃は、狼の力を想定以上に奪っていた。
失速しながらも狼が最後に狙ったのは、メイムだ。不自由な足を引き摺りながらも、一番小さい相手をとでも思ったのだろうか。
しかし、狙った相手は特別弱いというわけでもない。メイムは狙っていたこの時に、構えた武器を狼に食い込ませた。
●平和の中で
メイムの一撃に狼は最後の一声を上げ、消滅した。雑魔が殲滅されてひとまずは平和になった森で、改めてキノコ狩りは再開された。
「これで一安心だな」
真司は戦闘の際に置いた籠を背負いなおし、適当にキノコをとる。
「どんなメニューが出るのかなー」
メイムも先ほどのフリの段階で採りそびれた分も含め、どんどん籠にキノコを入れていく。
「おぉ!? なんだか色とりどりのキノコ群が」
真司とメイムから少し離れた場所で、南條が何やら……凄まじい色合いのキノコの群生地を見つけたようだ。
「ふふっ、あたしは見目良いモノを取りましょうか。あの赤いキノコなんて綺麗ですわね……あっ、あれも珍しいですわ! これも採取、と」
そのキノコ群にどこか楽しそうな反応をし、真っ赤なキノコ、紫にドットのキノコ……と次々とキノコを採っていくロジー。
「これは果たして食べても大丈夫なやつなのか……」
その隣でうん……と悩みながらも採っていく南條の手元は、すごく……カラフルだった。
対して、情報や経験を元に効率よくキノコを採る者もいる。
摩耶は地図を片手にして、エーミは過去の経験と聞いた話を元にして、食用のものを的確に、かつ大量に採ろうとする。
全員が採ってきた分を籠に入れてみると溢れるくらいだった。重そうな籠を真司が背負い、村まで戻る。地図のお陰で道には心配なく、戻ることができた。
ハンターの帰還をどこから知ったのかはわからないが、戻ってくる頃には多数の村人が宿に集まっていた。
籠いっぱいになったキノコを眺めて、子供たちも目を輝かせている。
「ちょっと不安だから、一番に見てほしいね」
南條が鑑定を前に、一言言った。村人がそれに応じたので、一つ一つ。一番最初の普通のキノコと、途中のどこにでもあるキノコはさておき、問題は次からだ。村人の反応を見るように、赤い傘に紫マーブルだとか、ドクロ模様、緑一色のキノコは毒、と判定を受けた。しかし意外にも青く点滅したものは食べられる……といった反応だった。しかしすぐわかりそうなものはある。最後に南條さんが差し出したのは……ペットのパルムだった。
「!?」
と、差し出されたパルムも怯えていたが、南條に戻ってくるように言われて安堵する。
「待ってる間、お風呂とか借りてもいいかな」
「どうぞ」
と、村人の許可も下りたところで、南條はパルムを連れて宿の奥に消えていった。
南條の差し出したもののほかに籠に入っていたキノコの話になるが、ほとんどが食用になるものだったようだ。
「初めてでここまで採れるのはすごいよ」
と、後に村人も感心していたらしい。
同じ宿の厨房では、エーミが調理係の一人と話をしている。最初は宴会に使われる料理のことのようだったが段々エーミの言う魔術のことも触れられているようだった。
「面白い魔法やねえ、ハンターの人はすごいわあ」
という調理係の声に、
「そう、エーテルクラフトの魔術は、皆を笑顔にする為にあるの」
と言ってからエーミは手に持っているもの……既にたくさんのレシピが書き込まれた魔術書を開き、
「よかったらレシピ、教えてくださるかしら?」
と言った。
「こんなもんでお礼になるんならいくらでも」
と、調理係が言ってから、エーミに順を追ってレシピの解説をしていく。それをエーミは聞き取りながら、新しい魔術を記していく。主役はキノコ、特別凝っているわけではないけれど、素朴で暖かい味。そんな印象の料理が語られ、記録されていった。この魔術も、また別の誰かが笑顔になるために使われるのだろうか。
雨が止んだことを合図に、宴は始まった。真司の差し入れたブランデーも並んでより一層豪華になった食事が揃い、村人も明るい気分で食事を進める。
招かれたハンターたちもそれぞれ宴を楽しんでいた。
「あははっ」
「やだー!」
軽い悪戯をしてはしゃぐ子供たちと、
「ほら、待ちなさいな」
彼らと遊ぶロジーの姿や、
「村に平穏が戻ってよかったです」
と、安心する摩耶の姿。
「おいしー! 頑張った甲斐あったね」
「うん、うまいな」
料理に舌鼓を打つメイムと真司、
「こっちってこんな料理があるんだねー」
そして、南條の姿。酒が回って歌い出した村人も出始めて、宴は騒々しくも楽しく進む。やはり生活を脅かす雑魔への怯えもなかったといえば嘘になるらしく、村の様子は到着した当初よりも、雑魔の消えた今のほうが……心なしか、緊張の解けたものになっているような気がする。これで子供たちも安心して森へ遊びにいけるだろう。
宴と平和を楽しみながら、ハンターたちはキノコを頬張った。
その村にハンターが辿りついたその時にも、雨は降り続いていた。
降る雨は優しく、しかし確実にハンターたちを濡らす。一先ずの間はと村内の宿に通されたハンターたちは、村人の歓迎を受けた。
彼らを迎えた村人の中で一人、前に出た者がいた。
「俺が森までの案内を務めます、質問があればなんでも聞いてください」
前に出た男は自分が案内人であることを伝え、一礼した。
なんでもというなら、と男に質問すべく口を開いたのは、摩耶(ka0362)だった。
「森に入る前に、簡単でも地図を作成しようと思っています。森の情報やキノコが採れる場所を教えていただけますか?」
「あ、ああ。今から作るのも大変でしょうし、俺が持ってるものでよければどうぞ」
と言って、男は懐から取り出した地図を広げた。大よその道筋と、なんらかの印が書かれている。
「キノコの自生する場所は書き込んであります。古い情報なので、実際には違うかもしれません」
男が印を指差して言うあたり、印がキノコの自生範囲なのだろう。
「ありがとうございます。それと、雑魔の目撃場所がどこか、わかるのであれば教えて欲しいのですけれど」
「あ、それはあたしも気になってた。村の人が森のどのあたりで雑魔に襲われたとか、わかるなら教えて欲しいかな」
摩耶の次いでの質問の後にメイム(ka2290)も乗る。男は地図を指差して、言った。
「聞いたところ、こことここ、それと……ここで目撃情報が出ています。森中を動き回ってるみたいです」
「どうもー」
と、納得して準備に入ったメイムに対し、
「これで最後にします、どのキノコが食べられるかわかりますか?」
摩耶はもう一つ、質問があるのか男に言う。
「さあ……食用キノコに似た毒キノコがあったり、見た目が毒々しくても食べられるキノコがあるってぐらいですね……さて、暗くなってからだと戦いにくいでしょう。そろそろ行きましょうか」
と発言した後、男は別室に行き、しばらくしてから戻ってくる。その手には背負い紐の付いた大き目の籠があった。
「採取したキノコはこちらの籠にどうぞ。けっこう丈夫なんで、安心してください」
と言って、男は柊 真司(ka0705)に籠を差し出した。真司は無言でそれを受け取り、背負う。
「けっこう、似合ってるんじゃないかな」
信司の格好を見て、南條 真水(ka2377)が笑いながら言った。
●森の中で
「無事帰ってきてくださいね」
と言って、ハンターを森の入り口まで送り届け、仕事を終えた男は引き返していった。
その背中を見守りながらも、彼らは森の中を進む。
薄暗い森の中で、摩耶と南條の持つハンディLEDライトが足元を照らす光となっている。
(むー、それにしても今回の雑魔は倒した後、身が残らないみたいで残念。狼は美味しくなさそうだけど、鳥は美味しそうだったのに~)
動物が歪虚に干渉された後、討伐されると通常より旨みのある肉になる……そんな噂を聞いていたメイムは、少し残念がっていた。
狼の肉はともかく、チキンとキノコのソテーとなれば、たしかにちょっとしたご馳走となるだろう。
それだけに、残念に思うのだろうか。
「ふふ、なつかしいわね」
その一方で、ふと、エーミ・エーテルクラフト(ka2225)が呟いた。彼女が昔、師匠と呼んでいた人物との旅の中では、山に入って食材を集めることもあった。それを思い出させる何かが、この依頼にはあったのだろう。
エーミは昔の経験と、事前に仲間が聞いていた情報を元に採取したキノコを、真司の背負う籠に入れていた。
摩耶もまた、地図を確認しつつ木の陰のような細かいポイントをチェックして採取している。
探索のその間も彼らは聞き耳を立てて、雑魔の出現を警戒していた。
……今のところ、羽音や獣が駆けるような足音は聞こえていない。まだ遠くにいるようだ。
(見つからないですわね……)
ロジー・ビィ(ka0296)は照らされた足元を見ながら、狼型雑魔の足跡を探していた。
森中で動き回るものなら、もちろん足跡はあるはずなのだが……雨で流れてしまったのだろうか、それらしきものが見つかることはない。
探索していると、一行は少し開けた場所に辿り付いた。今までの移動で雑魔の気配らしきものは未だ捉えられないままだ。ならばいっそ、
「キノコ狩りの素振りを見せれば敵が寄ってくるかな?」
と、メイム。
「探すよりは向こうに来てもらった方が、都合がいいわね」
と、エーミ……といった感じで、のこのこキノコ狩りしに来た人、の気配を演出しつつ、迎え撃つ手はずとなった。
フリではあるが、採取しているのは事実である。雑談に興じながらではあるが、籠の中にはキノコがほんの僅かではあるが入れられていっている。
「……これ、食えそうか? 真水」
「いや、南條さんにもさっぱりなんだよね」
真司の問いかけに答えた南條の手には、真司の持つキノコよりも毒々しいキノコが握られていた。
そんな不安を感じる採集をよそに、ロジーは仲間から少し離れた場所で木々にロープを結びつけている。
膝ぐらいの高さに張られたロープを確認して、ロジーは仲間の元へ戻っていった。
「思ったんだがエイミに聞けばいいな」
真司がふと漏らしたところで、ちょうどエーミがやってきては、
「二人とも何してるの」
と言い、それに南條が
「噂をすれば」
と入れた合いの手に一寸遅れて、何かが羽ばたく音が響いた。
次いで、獣の駆ける音もする。
「しっ……、音。来たわね」
エーミが、周囲に警戒を促した。
●戦いの中で
音に気付いたのはエーミだけでなく、後ろに控えていたメイムも手を振って雑魔の出現を示す。
真司は背負っていた籠を下ろして武器を構える。
そのように各自戦闘態勢をとるハンターの前に、鳥の姿をした雑魔が二体現れる。
狼の姿は見えないが、油断は禁物だろう。
何らかの理由で移動を止めざるを得ないのか、獣の駆ける音は度々止まっているが……。
鳥姿の雑魔は、片方は直線を引くように、片方は孤を描いて襲い掛かる……が、未だ敵の姿を捉えきってないのかその攻撃は空振りに終わった。
ロジーは相手の出方を伺いながら、メイムは野生の瞳で感覚を研ぎ澄まし攻撃に備える。
態勢を整えようとしている雑魔の片方に照準を合わせた真司は、友人である老齢のエルフの祈りを感じながら機導砲を放つ。
その祈りのお陰か、いつもより威力の高い砲撃に想定以上に弱った一体に、追い討ちのように火炎を纏う矢が刺さる。
エーミの放ったその火炎の矢は敵を燃やしつくし、跡形もなく消し去った。
「来る!」
誰かが言った言葉と同時に、残ったもう一体は直線を引くようにロジーに向かっていく。
このままでは直撃するところを鮮やかな動きで屈んで避け、空振りに戸惑う相手に剣を振るう。
……が、惜しいところで避けられてしまう。動きは鈍らないまま、鳥姿の雑魔は飛び立った。
次を狙うため機動を変えようとした雑魔を、メイムの射撃と南條の機導砲が襲う。
「これで一体は倒せるかな、っと!」
メイムが呟きと共に発した、何かに手助けされたかのようにキレのいい射撃と、南條のそれを補助する一閃が敵に命中する。
残った光の消えたあと、そこに鳥型雑魔の姿はなかった。情報が正しければ鳥型雑魔はこれで全滅、残りは狼型を残すだけである。
丁度いいタイミングで、狼型雑魔……元はこの森に生息していたであろう狼の変わり果てた姿が現れる。
駆け抜けた状態そのままに、狼は構える誰かに噛み付こうと飛び掛った。
先にいた摩耶にどうにか命中したものの、与えられた傷は浅く、仕留めるには足りない。
狼は自らの傷を癒す摩耶を無視して次を狙い、駆け出した。
メイムは敵がこちらに向かってくるまでに、と筋力充填を用い身体能力を向上させる。
狼は速く、この勢いのままで攻撃は……というところで先ほど張られたロープが効果を発揮したのか、気付かずに突っ込んだ狼は怯み、その隙をロジーの強打が突く。
足を狙って放たれたそれは狼の足の一本を砕き、動きを鈍らせた。さらに、死角から摩耶のチェーンウィップが飛ぶ。
死角からの予測できない動きに狼も避けることが出来ず、直撃してよろめいた。何らかの力で威力の上がった摩耶の攻撃は、狼の力を想定以上に奪っていた。
失速しながらも狼が最後に狙ったのは、メイムだ。不自由な足を引き摺りながらも、一番小さい相手をとでも思ったのだろうか。
しかし、狙った相手は特別弱いというわけでもない。メイムは狙っていたこの時に、構えた武器を狼に食い込ませた。
●平和の中で
メイムの一撃に狼は最後の一声を上げ、消滅した。雑魔が殲滅されてひとまずは平和になった森で、改めてキノコ狩りは再開された。
「これで一安心だな」
真司は戦闘の際に置いた籠を背負いなおし、適当にキノコをとる。
「どんなメニューが出るのかなー」
メイムも先ほどのフリの段階で採りそびれた分も含め、どんどん籠にキノコを入れていく。
「おぉ!? なんだか色とりどりのキノコ群が」
真司とメイムから少し離れた場所で、南條が何やら……凄まじい色合いのキノコの群生地を見つけたようだ。
「ふふっ、あたしは見目良いモノを取りましょうか。あの赤いキノコなんて綺麗ですわね……あっ、あれも珍しいですわ! これも採取、と」
そのキノコ群にどこか楽しそうな反応をし、真っ赤なキノコ、紫にドットのキノコ……と次々とキノコを採っていくロジー。
「これは果たして食べても大丈夫なやつなのか……」
その隣でうん……と悩みながらも採っていく南條の手元は、すごく……カラフルだった。
対して、情報や経験を元に効率よくキノコを採る者もいる。
摩耶は地図を片手にして、エーミは過去の経験と聞いた話を元にして、食用のものを的確に、かつ大量に採ろうとする。
全員が採ってきた分を籠に入れてみると溢れるくらいだった。重そうな籠を真司が背負い、村まで戻る。地図のお陰で道には心配なく、戻ることができた。
ハンターの帰還をどこから知ったのかはわからないが、戻ってくる頃には多数の村人が宿に集まっていた。
籠いっぱいになったキノコを眺めて、子供たちも目を輝かせている。
「ちょっと不安だから、一番に見てほしいね」
南條が鑑定を前に、一言言った。村人がそれに応じたので、一つ一つ。一番最初の普通のキノコと、途中のどこにでもあるキノコはさておき、問題は次からだ。村人の反応を見るように、赤い傘に紫マーブルだとか、ドクロ模様、緑一色のキノコは毒、と判定を受けた。しかし意外にも青く点滅したものは食べられる……といった反応だった。しかしすぐわかりそうなものはある。最後に南條さんが差し出したのは……ペットのパルムだった。
「!?」
と、差し出されたパルムも怯えていたが、南條に戻ってくるように言われて安堵する。
「待ってる間、お風呂とか借りてもいいかな」
「どうぞ」
と、村人の許可も下りたところで、南條はパルムを連れて宿の奥に消えていった。
南條の差し出したもののほかに籠に入っていたキノコの話になるが、ほとんどが食用になるものだったようだ。
「初めてでここまで採れるのはすごいよ」
と、後に村人も感心していたらしい。
同じ宿の厨房では、エーミが調理係の一人と話をしている。最初は宴会に使われる料理のことのようだったが段々エーミの言う魔術のことも触れられているようだった。
「面白い魔法やねえ、ハンターの人はすごいわあ」
という調理係の声に、
「そう、エーテルクラフトの魔術は、皆を笑顔にする為にあるの」
と言ってからエーミは手に持っているもの……既にたくさんのレシピが書き込まれた魔術書を開き、
「よかったらレシピ、教えてくださるかしら?」
と言った。
「こんなもんでお礼になるんならいくらでも」
と、調理係が言ってから、エーミに順を追ってレシピの解説をしていく。それをエーミは聞き取りながら、新しい魔術を記していく。主役はキノコ、特別凝っているわけではないけれど、素朴で暖かい味。そんな印象の料理が語られ、記録されていった。この魔術も、また別の誰かが笑顔になるために使われるのだろうか。
雨が止んだことを合図に、宴は始まった。真司の差し入れたブランデーも並んでより一層豪華になった食事が揃い、村人も明るい気分で食事を進める。
招かれたハンターたちもそれぞれ宴を楽しんでいた。
「あははっ」
「やだー!」
軽い悪戯をしてはしゃぐ子供たちと、
「ほら、待ちなさいな」
彼らと遊ぶロジーの姿や、
「村に平穏が戻ってよかったです」
と、安心する摩耶の姿。
「おいしー! 頑張った甲斐あったね」
「うん、うまいな」
料理に舌鼓を打つメイムと真司、
「こっちってこんな料理があるんだねー」
そして、南條の姿。酒が回って歌い出した村人も出始めて、宴は騒々しくも楽しく進む。やはり生活を脅かす雑魔への怯えもなかったといえば嘘になるらしく、村の様子は到着した当初よりも、雑魔の消えた今のほうが……心なしか、緊張の解けたものになっているような気がする。これで子供たちも安心して森へ遊びにいけるだろう。
宴と平和を楽しみながら、ハンターたちはキノコを頬張った。
依頼結果
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相談卓 メイム(ka2290) エルフ|15才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/07/28 08:01:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/23 23:48:21 |