ゲスト
(ka0000)
霧の島に何を見る
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/09 19:00
- 完成日
- 2015/10/21 11:42
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「暇だ……」
南部国境要塞、師団長の執務室。その椅子に腰かけ呟いたのは兵長のオットー・アルトリンゲンだ。
師団長たるロルフ・シュトライトはサラ・グリューネマン兵長と共に北方の戦闘へ参加するべく遠征している。その間、オットーは師団長の代理としてグライシュタットの防衛と要塞の管理を任された……つまり、今回は留守番というわけだ。
本来であればサラではなく自分が着いていきたいところではあったが、フリッツとの戦闘に参加できなかったことにサラが不満を持っていたのでバランスを取る意味でもオットーが残らざるをえなかった。
いつもだったらウェルナー・ブラウヒッチがこの手の仕事はやってくれるものだが、そのウェルナーは遠く海の上。すぐには帰ってこないだろう。
「そういや、ちっとは成果が上がってんのかねぇ……」
そんなことを呟きながら、オットーは苦手とするデスクワークを再開した。
●
「それでは、こういう感じでいくとしよう」
その海上では、ウェルナーが丁度指針を定めたところだった。
海賊たちが根城にしていた浸食洞。元々あった海賊船を移動させた一団は、そこに船を潜り込ませ滞在していた。その間も島周辺の調査は行っていたが、上陸しての調査はまだだった。この辺りは慎重に事を動かしたいウェルナーの意向が強く働いた結果である。だが、補給物資を積んできた輸送船が到着したことに合わせていい加減動くべきだと判断した。
方針としては少数精鋭での隠密行動。グリフォン達がいるのは到着時にも周辺調査を行っている際にも確認できている。それを刺激しないように島がどういう状態になっているかをまずは確認しようという事だ。
「この調査ではハンターに団員をつけて行動してもらう。グリフォンが使えないとなると、うちの団員は戦力的に不安があるしな」
グリフォンがいるところにグリフォンを連れていくと目立ってしまい攻撃を受ける可能性がある。それは避けたい。こうして、調査準備は速やかに進められ、ハンターとそれに同行する師団員が切り立った崖を登り島へと上陸していった。
「さて、それじゃこちらも作業を行おう」
浸食洞に残ったウェルナーは続いて指示を出す。ここには海賊たちが使っていた小屋があった。これをもう少し改修してしっかりとした滞在用拠点を作ろうという考えだ。
「……そういえば、なぜ兵長は調査に同行しないんですか?」
「あぁ。少し気になることがあるものでな……」
気になることとは、ここにいた海賊たち言っていたことだ。
彼らは歪虚から逃げていたという。覚醒者が5人も含まれていたにも関わらず逃げねばならない歪虚だ。
(水面から砲撃してきた……といっていたな。しかしどれだけ攻撃しても怯んだ様子がないと……)
逃げ切れたということは、その動きは大して早くないのだろうが、警戒するに越したことはないだろう。
「そういえば、輸送船……つけられたりしてはいないよな?」
「え? それは……少なくとも見える範囲には何もいなかったと思いますが、霧は晴れませんし断言は……」
不意に嫌な予感がしたウェルナーはそんな質問を輸送船に乗ってきた部下に投げかけた。その予感が的中していたことをこの後すぐに知らされることになる。
「暇だ……」
南部国境要塞、師団長の執務室。その椅子に腰かけ呟いたのは兵長のオットー・アルトリンゲンだ。
師団長たるロルフ・シュトライトはサラ・グリューネマン兵長と共に北方の戦闘へ参加するべく遠征している。その間、オットーは師団長の代理としてグライシュタットの防衛と要塞の管理を任された……つまり、今回は留守番というわけだ。
本来であればサラではなく自分が着いていきたいところではあったが、フリッツとの戦闘に参加できなかったことにサラが不満を持っていたのでバランスを取る意味でもオットーが残らざるをえなかった。
いつもだったらウェルナー・ブラウヒッチがこの手の仕事はやってくれるものだが、そのウェルナーは遠く海の上。すぐには帰ってこないだろう。
「そういや、ちっとは成果が上がってんのかねぇ……」
そんなことを呟きながら、オットーは苦手とするデスクワークを再開した。
●
「それでは、こういう感じでいくとしよう」
その海上では、ウェルナーが丁度指針を定めたところだった。
海賊たちが根城にしていた浸食洞。元々あった海賊船を移動させた一団は、そこに船を潜り込ませ滞在していた。その間も島周辺の調査は行っていたが、上陸しての調査はまだだった。この辺りは慎重に事を動かしたいウェルナーの意向が強く働いた結果である。だが、補給物資を積んできた輸送船が到着したことに合わせていい加減動くべきだと判断した。
方針としては少数精鋭での隠密行動。グリフォン達がいるのは到着時にも周辺調査を行っている際にも確認できている。それを刺激しないように島がどういう状態になっているかをまずは確認しようという事だ。
「この調査ではハンターに団員をつけて行動してもらう。グリフォンが使えないとなると、うちの団員は戦力的に不安があるしな」
グリフォンがいるところにグリフォンを連れていくと目立ってしまい攻撃を受ける可能性がある。それは避けたい。こうして、調査準備は速やかに進められ、ハンターとそれに同行する師団員が切り立った崖を登り島へと上陸していった。
「さて、それじゃこちらも作業を行おう」
浸食洞に残ったウェルナーは続いて指示を出す。ここには海賊たちが使っていた小屋があった。これをもう少し改修してしっかりとした滞在用拠点を作ろうという考えだ。
「……そういえば、なぜ兵長は調査に同行しないんですか?」
「あぁ。少し気になることがあるものでな……」
気になることとは、ここにいた海賊たち言っていたことだ。
彼らは歪虚から逃げていたという。覚醒者が5人も含まれていたにも関わらず逃げねばならない歪虚だ。
(水面から砲撃してきた……といっていたな。しかしどれだけ攻撃しても怯んだ様子がないと……)
逃げ切れたということは、その動きは大して早くないのだろうが、警戒するに越したことはないだろう。
「そういえば、輸送船……つけられたりしてはいないよな?」
「え? それは……少なくとも見える範囲には何もいなかったと思いますが、霧は晴れませんし断言は……」
不意に嫌な予感がしたウェルナーはそんな質問を輸送船に乗ってきた部下に投げかけた。その予感が的中していたことをこの後すぐに知らされることになる。
リプレイ本文
●
「行ったね……」
崖を登っていった時音 ざくろ(ka1250)、レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)。そして追従する第5師団員2人を見送りながら水流崎トミヲ(ka4852)は呟く。
この島が一体どうなっているのか。その答えは調査を終えてみないと分からないが……
(此処はグリフォンのための土地のように思える)
そして、それを守る存在が居る。あるいは居た……それすらも未だ推測にすぎないが。
その存在とはあるいは……
「大幻獣なんてのがいるのかしらね」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)も同じように上方へ目を向けていた。
それを聞いたトミヲはその存在に対し呟く。
「僕らに害意は無いよ」
と。
もっとも、カーミンが横に居たため大声を出すことは憚られたが。
「さぁ、いつまでも見てないで作業を始めよう」
ストゥール(ka3669)がそう声をかける。4人が調査を行っている間、残った彼女らは補給船で運んできた資材による拠点設営の手伝いを行うことになる。設営、といっても元々この地にいた海賊が建てていた小屋を利用するのだからそこまで面倒なことではない。
面倒なのはむしろそれ以外……敵が襲撃してきた場合の対応だ。これに関しては拿捕し補給船と入れ替わりで送り返した海賊たちの話から、亀型の歪虚が周辺にいることが示唆されている。
「グリフォンの調査に亀の対応に……帝国も大変ね」
「やりにくいな……輸送船を狙ってるなら被害がでないようにしないとな」
ケイ(ka4032)の呟きに、資材を抱えたミリア・コーネリウス(ka1287)が答えた。
ハンターたちは、黙々と作業を行いながら、いずれ現れるであろう歪虚に対し警戒を強めていた。
●
「ようやっと探索かー……厳重すぎだぜこの島」
崖を登り切り上陸に成功したレオーネは一息つく。それに続くざくろ。何故霧が島を隠すのか、そこには何が隠されているのか。
(冒険家としてこの謎と神秘、放っておけないもん!)
そう心に思いつつ彼らはまず周辺を見渡す。そこには木も草も生えていない岩場が広がっていた。とりあえず4人は外周を、周り地形を把握していく。
「……ざっと見た感じ、中央の方に向かって段々高くなってるみたいだね。山みたいになってるのかな」
「それに、最初の場所だけじゃなく、全体に木や草が見当たらないな」
「フェルゼン・ヴィーゼに似てますね」
「フェルゼン……ってあれか。グライシュタットのグリフォン牧場」
師団員の呟きに言葉を返すレオーネ。
グリフォンが棲むのは険しい鉱山が主となる。平野に大量の岩石を敷き詰めその地形を再現したのがフェルゼン・ヴィーゼだ。
「でも、島にそんな岩を運んだり出来ないよね」
そう考えるとこの島はやはり自然に出来たものなのか。
(……それにしては都合がよすぎるって気もするけど)
グリフォンが好む地形。逆に言うとそれ以外は無い島。それはさすがに不自然だとざくろはあたりを見回し思う。
「……! 伏せてください」
不意に、師団員が声を上げる。
すぐさま4人はその場に伏せ、近くの岩陰に身を隠す。
見ると、1頭のグリフォンが丁度岩場に降り立つところだった。基本的に戦闘は避けるべきなのは間違いない。4人はグリフォンを視界に入れつつ岩陰に身を隠し、そのまま島の中央を目指していった。
●
島の調査が進められている間、島の下方……浸食洞内では戦闘が始まっていた。
「やはり危惧した通りに……非戦闘員を守れ! ハンター諸君はあの敵を撃破してくれ!」
声を上げるブラウヒッチ兵長。その指示に従いハンターたちが動き出す。
「海賊に、僕らに……ついに、歪虚か」
トミヲは停泊している船を遮蔽に小舟を漕ぎだし、歪虚から見えないように迂回して接近。ミリアはその護衛に着いて動くようだ。
「さて、まずは小手調べかしらね」
「制限の多い戦場だが、致し方ない……やるだけの事はしよう」
まずはケイが魔導銃を構え、弾丸を連射。制圧射撃で動きを制するつもりだ。加えてストゥールがアサルトライフルで攻撃。砲塔とともに海面に出ていた歪虚は躱すことも出来ず直撃を受ける。
「やっぱり、そこまで機敏ではないみたいね」
一生懸命逃げていく海賊船に追い縋ることはできなかったことから、そこまで動きが速くないことは予想できていた。
「だが、防御の堅さも想像以上と見える」
ストゥールの言う通り、歪虚は2人からの苛烈な銃撃に悲鳴を上げるでもない。発見された時と同様波間に揺られているだけだ。効いているのかいないのか、それすら判別できない。
「とにかく、こちらに気を引くようにしなければ……」
ストゥールはジェットブーツを使用して大きく跳び上がり、そのまま海面から出た岩に着地。非戦闘員とは逆方向だ。これで多少安全確保は出来るはずだ。とはいえ、このまま放置していては浸食洞が崩れる可能性もある。
「早めにケリを付けないといけないわね」
制圧射撃の効果は薄いと見たケイ。通常通りの射撃で攻撃していく方針に切り替える。
「それじゃ、こっちも行こうかしら」
短時間でどうにかしたいのは同じということか。カーミンが水中へ入り歪虚へと向かう。
歪虚の方は、反撃とばかりにストゥール、ケイに対し砲撃。精度はそんなに高くないようで、2人はその砲撃を躱す。
(チャンスね)
地上の味方に攻撃をしているということは、水中への警戒が甘くなっているも同義。その間にカーミンが瞬脚を使用しながら接近。水中用ライフルを移動しつつ撃ち込んでいく。
(……効いてない?)
だが、歪虚はその攻撃を意に介した気配もない。ケイやストゥールの銃撃と同様、全くと言っていいほど効果が無いと見える。直後、亀たちは皆水中に潜る。攻撃されたから反撃する。思考は割と単純か。だが、その砲撃は水中でも効果は変わらない。当たれば痛いでは済まないだろう。それをカーミンは、1発、2発、3発と躱す。水中であっても動きは機敏だ。
「唸れェ……僕のDT魔法ゥ……」
砲撃で激しく揺れる水面から敵の位置を大凡特定したトミヲは終末幻想七式を使用。魔力は水に溶け込み、歪虚たちに影響を及ぼす……はずだ。
「……上手くいったか?」
「どうだろう……」
ただ、やはり水中の様子が正確に分かるわけではないので、どの程度効果が出たかは彼らには分からない。
(ナイス、トミヲ君!)
分かるのは、水中戦を行っていたカーミンだけだ。その視界には動きを止めて沈んでいく歪虚の姿があった。
●
一方、調査を行っている4人は順調に奥へ奥へと島を進んでいた。人工物のようなものは今のところ見られず、ひたすら同じような岩場が続く。マッピングをしっかり行っていなければどのあたりまで来たか分からなくなっていたかもしれない。
「もう少し高いところから見渡せたらいいんだけど……」
ざくろがそう呟いたが、それは師団員に止められた。どこからグリフォンが見ているか分からない以上、あまり目立つ行動はとらない方が無難だというのだ。
「でも、おかしいよな……」
レオーネが疑問を口にする。先ほどから、何度となくグリフォンを発見しており、かなり近くに降りてきたこともある。
「それにしては見つかってない、ってのが不思議だ」
あるいは、すでに見つかっているが見逃されているのだろうか。野生のグリフォンというのは本来好戦的だ。それは無いだろうと師団員たちは考えている。それでは……
「あの霧を発生させている存在が、何か関係しているのかな……冒険家の血が騒ぐね!」
決意を新たにするざくろ。
「その意気だぜ! さて……もうすぐ島の中央だと思うんだけどな……」
書きかけの地図を見ながらレオーネが言った。海の霧と同じように方向感覚を狂わせるような何かがあるかとも思っていたのだが、島自体には霧が無い。あくまで島の外側にだけあったものだ。
険しい岩場を、しかも周囲に気を配りながら進んでいくのは精神的にもかなりの負荷だったが。それでも4人は進んでいき……やがて、そこにたどり着いた。
「これは……」
島の中心部。そこにあったのは……巨大な穴だった。
山に見立てたら火口の様な……だが、その奥からは熱などは特に感じない。ただ、穴の奥から風が吹き上げているのが奇妙だった。
「中に……降りられそうかな?」
「……いや、難しいんじゃねぇかな。どこまで続いてるか分からねぇし」
そんな時だった……島の外縁、丁度浸食洞があるあたりに光が見えたのは。
●
(効かない!?)
浸食洞、沈み行く歪虚に攻撃を仕掛けたカーミン。狙いは首の部分。ワイヤーで輪の軌跡を作りモーターで引き絞るように……だが、その攻撃に手ごたえは感じられない。
(ひょっとして……ただ堅いだけじゃないの?)
どちらかといえばスライムのような軟体に対するような手応え。外殻は固い甲羅で、内部も衝撃や斬撃に対して強い……
(……そうか、海賊さん達の『クラス』)
疾影士、闇狩人、猟撃士。これらのクラスが得意とするのは所謂物理的な攻撃だ。それが殆ど効かないような敵が相手だとしたら、海賊たちが為す術無く逃げざるを得なかった理由になるのではないだろうか。
となると、効果的なのはトミヲの魔法攻撃。そのことを知らせようとカーミンは浮上……
(……っ!)
しようとしたが、それは叶わない。歪虚が腕に噛みついている。今の攻撃で七式の影響から脱したようだ。
さらに残り2体の歪虚も気付いたようで、その砲口は……全てカーミンを捉えている。水中戦に主眼を置いていたのはカーミンだけだった。ケイとストゥールは水中戦への備えは無く、水中戦が可能であろうミリアもトミヲの護衛についている。カーミンだけが狙われるのは必定だった。歪虚が口を離すと同時に、その砲口が輝く。
同時に、水面には大きな水柱が立つ。
「くっ……」
衝撃で波が立ち、岩に立っていたストゥールは足をとたれそうになる。水中戦の用意はしていない以上、水に落ちても戦えない。やむを得ずジェットブーツを使用して退避。だが、そこを狙い撃ちされる。
辛うじて、防御障壁を使用するストゥール。だが、それでも威力は殺し切れず、砲撃を受け大きく吹き飛ぶ。
「もう少し上に上がってきてくれないと……」
すぐに攻撃が出来るよう構えていたケイだったが、砲撃はやや深い位置から行われたものだ。反撃できない。七式の影響で沈んでいったのがこの場合は仇となったか。
ケイが居た陸地には、気を失ったカーミンが打ち上げられていた。
「ちっ……遠距離攻撃は勘弁してもらいたいよ……」
そう呟くと、ミリアはトミヲの方を向く。
「普通の攻撃じゃ効果が薄そうだしな。頼むぞトミヲ」
言うが早いか、ミリアも水中へ向かう。
「……若い女の子たちに体を張らせてるんだ……僕が失敗するわけには、行かないッ!」
水に入ったトミヲは目視で狙いをつけ、ライトニングを使用。
浮上し始めていた歪虚に魔法の雷撃が叩き込まれる。歪虚は初めて苦しんだように体を震わせる。そのままミリアが突撃魂を燃やしながら神剣刺突を使用。威力の高い攻撃だ。普通の敵ならかなりのダメージを与えられる……はずだった。
(ちっ……)
ミリアは心中で舌打ちする。切っ先はわずかに甲羅に食い込み、ヒビを入れた程度。
(やはり魔法で攻めるしかないね)
続けざまに、今度はファイアボールを使用するトミヲ。魔力の火球は水中でもその力を失うことはなく、爆ぜるとともに3体の歪虚へダメージを与える。
だが歪虚も反撃してくる。3体の歪虚からの砲撃だ。
1発目はミリアが受け止めてくれたが、2発目、3発目の砲撃が命中。トミヲは水中で岩盤に叩きつけられる。それでもトミヲはもう一発ファイアボールを使用。再度3体を纏めて攻撃し、うち1体が沈んでいく。今の攻撃で倒せたようだ。それを確認したところで、トミヲは意識を失った。
●
「まずいか……照明弾は上げたな! 私も援護に向かう!」
浸食洞から非戦闘員を脱出させたブラウヒッチ兵長は、すぐさまハンターたちの援護に向かった。現状、カーミンとトミヲが戦闘不能。ミリアがヒーリングファクターを使用しつつ近接戦。ケイは気を失ったカーミンを守りながら援護を行っているが、敵の動きによっては射線が通らず苦戦している。この点、ストゥールはジェットブーツによる移動で位置取りを上手く変えられるので援護はしやすそうだ。とはいえ、銃撃、剣戟ではこの歪虚に決定打を与えることはできない。それはブラウヒッチ兵長にしてもそうだ。彼も魔法の類を扱うのは得意ではない。
「せめて、調査に向かった4人が戻るまでは持たせなければ……」
そう考えていた矢先だった。
「大丈夫か!」
唐突に響いたのはレオーネの声だ。
「何? こんなに早く戻って……」
こられるはずが無い、そう思ったが……一目見て答えが分かった。
「グリフォンだと!?」
レオーネ、そしてざくろはグリフォンの背に乗ってきていたのだ。
その後は簡単だった。グリフォンから飛び降り水に入ると、ざくろがデルタレイ。レオーネがロックオンレーザーで歪虚を攻撃。物理的な攻撃に強くともトミヲの魔法によるダメージは大きく、そこからさらに追加で魔法攻撃を喰らったことで、残り2体も撃破された。
こうして、襲撃してきた歪虚は全て倒せたことになる。とりあえずは作戦成功といったところか。非戦闘員や第5師団員はすぐさま被害の確認と補修。カーミンとトミヲの治療も同時におこなわれた。調査の方も、浸食洞に居るだけではわからないこと……島の内部に関しての情報を得ることができた。
「お陰で助かった。でも、何でグリフォンに?」
ざくろとレオーネに問いかけたのはミリア。これについては疑問に思ったのだろう。ケイやストゥールもやってきて質問する。
「他のグリフォンを刺激しないためにも帝国軍で使用しているグリフォンは連れてきていない……っていう話だったはずよね」
「うん、この子はこの島のグリフォンだよ」
「それでは何故……」
「……声がしたんだ」
「声?」
「『送らせる。乗るがいい』って……」
●
――敵意が無いことは分かった。
――故に、多少手助けをしたまで。
――これからどうするかは個々に考えればよかろう。
島の奥底、深淵に佇んでいた『ソレ』は闇の中で再び瞼を閉じた。
「行ったね……」
崖を登っていった時音 ざくろ(ka1250)、レオーネ・インヴェトーレ(ka1441)。そして追従する第5師団員2人を見送りながら水流崎トミヲ(ka4852)は呟く。
この島が一体どうなっているのか。その答えは調査を終えてみないと分からないが……
(此処はグリフォンのための土地のように思える)
そして、それを守る存在が居る。あるいは居た……それすらも未だ推測にすぎないが。
その存在とはあるいは……
「大幻獣なんてのがいるのかしらね」
カーミン・S・フィールズ(ka1559)も同じように上方へ目を向けていた。
それを聞いたトミヲはその存在に対し呟く。
「僕らに害意は無いよ」
と。
もっとも、カーミンが横に居たため大声を出すことは憚られたが。
「さぁ、いつまでも見てないで作業を始めよう」
ストゥール(ka3669)がそう声をかける。4人が調査を行っている間、残った彼女らは補給船で運んできた資材による拠点設営の手伝いを行うことになる。設営、といっても元々この地にいた海賊が建てていた小屋を利用するのだからそこまで面倒なことではない。
面倒なのはむしろそれ以外……敵が襲撃してきた場合の対応だ。これに関しては拿捕し補給船と入れ替わりで送り返した海賊たちの話から、亀型の歪虚が周辺にいることが示唆されている。
「グリフォンの調査に亀の対応に……帝国も大変ね」
「やりにくいな……輸送船を狙ってるなら被害がでないようにしないとな」
ケイ(ka4032)の呟きに、資材を抱えたミリア・コーネリウス(ka1287)が答えた。
ハンターたちは、黙々と作業を行いながら、いずれ現れるであろう歪虚に対し警戒を強めていた。
●
「ようやっと探索かー……厳重すぎだぜこの島」
崖を登り切り上陸に成功したレオーネは一息つく。それに続くざくろ。何故霧が島を隠すのか、そこには何が隠されているのか。
(冒険家としてこの謎と神秘、放っておけないもん!)
そう心に思いつつ彼らはまず周辺を見渡す。そこには木も草も生えていない岩場が広がっていた。とりあえず4人は外周を、周り地形を把握していく。
「……ざっと見た感じ、中央の方に向かって段々高くなってるみたいだね。山みたいになってるのかな」
「それに、最初の場所だけじゃなく、全体に木や草が見当たらないな」
「フェルゼン・ヴィーゼに似てますね」
「フェルゼン……ってあれか。グライシュタットのグリフォン牧場」
師団員の呟きに言葉を返すレオーネ。
グリフォンが棲むのは険しい鉱山が主となる。平野に大量の岩石を敷き詰めその地形を再現したのがフェルゼン・ヴィーゼだ。
「でも、島にそんな岩を運んだり出来ないよね」
そう考えるとこの島はやはり自然に出来たものなのか。
(……それにしては都合がよすぎるって気もするけど)
グリフォンが好む地形。逆に言うとそれ以外は無い島。それはさすがに不自然だとざくろはあたりを見回し思う。
「……! 伏せてください」
不意に、師団員が声を上げる。
すぐさま4人はその場に伏せ、近くの岩陰に身を隠す。
見ると、1頭のグリフォンが丁度岩場に降り立つところだった。基本的に戦闘は避けるべきなのは間違いない。4人はグリフォンを視界に入れつつ岩陰に身を隠し、そのまま島の中央を目指していった。
●
島の調査が進められている間、島の下方……浸食洞内では戦闘が始まっていた。
「やはり危惧した通りに……非戦闘員を守れ! ハンター諸君はあの敵を撃破してくれ!」
声を上げるブラウヒッチ兵長。その指示に従いハンターたちが動き出す。
「海賊に、僕らに……ついに、歪虚か」
トミヲは停泊している船を遮蔽に小舟を漕ぎだし、歪虚から見えないように迂回して接近。ミリアはその護衛に着いて動くようだ。
「さて、まずは小手調べかしらね」
「制限の多い戦場だが、致し方ない……やるだけの事はしよう」
まずはケイが魔導銃を構え、弾丸を連射。制圧射撃で動きを制するつもりだ。加えてストゥールがアサルトライフルで攻撃。砲塔とともに海面に出ていた歪虚は躱すことも出来ず直撃を受ける。
「やっぱり、そこまで機敏ではないみたいね」
一生懸命逃げていく海賊船に追い縋ることはできなかったことから、そこまで動きが速くないことは予想できていた。
「だが、防御の堅さも想像以上と見える」
ストゥールの言う通り、歪虚は2人からの苛烈な銃撃に悲鳴を上げるでもない。発見された時と同様波間に揺られているだけだ。効いているのかいないのか、それすら判別できない。
「とにかく、こちらに気を引くようにしなければ……」
ストゥールはジェットブーツを使用して大きく跳び上がり、そのまま海面から出た岩に着地。非戦闘員とは逆方向だ。これで多少安全確保は出来るはずだ。とはいえ、このまま放置していては浸食洞が崩れる可能性もある。
「早めにケリを付けないといけないわね」
制圧射撃の効果は薄いと見たケイ。通常通りの射撃で攻撃していく方針に切り替える。
「それじゃ、こっちも行こうかしら」
短時間でどうにかしたいのは同じということか。カーミンが水中へ入り歪虚へと向かう。
歪虚の方は、反撃とばかりにストゥール、ケイに対し砲撃。精度はそんなに高くないようで、2人はその砲撃を躱す。
(チャンスね)
地上の味方に攻撃をしているということは、水中への警戒が甘くなっているも同義。その間にカーミンが瞬脚を使用しながら接近。水中用ライフルを移動しつつ撃ち込んでいく。
(……効いてない?)
だが、歪虚はその攻撃を意に介した気配もない。ケイやストゥールの銃撃と同様、全くと言っていいほど効果が無いと見える。直後、亀たちは皆水中に潜る。攻撃されたから反撃する。思考は割と単純か。だが、その砲撃は水中でも効果は変わらない。当たれば痛いでは済まないだろう。それをカーミンは、1発、2発、3発と躱す。水中であっても動きは機敏だ。
「唸れェ……僕のDT魔法ゥ……」
砲撃で激しく揺れる水面から敵の位置を大凡特定したトミヲは終末幻想七式を使用。魔力は水に溶け込み、歪虚たちに影響を及ぼす……はずだ。
「……上手くいったか?」
「どうだろう……」
ただ、やはり水中の様子が正確に分かるわけではないので、どの程度効果が出たかは彼らには分からない。
(ナイス、トミヲ君!)
分かるのは、水中戦を行っていたカーミンだけだ。その視界には動きを止めて沈んでいく歪虚の姿があった。
●
一方、調査を行っている4人は順調に奥へ奥へと島を進んでいた。人工物のようなものは今のところ見られず、ひたすら同じような岩場が続く。マッピングをしっかり行っていなければどのあたりまで来たか分からなくなっていたかもしれない。
「もう少し高いところから見渡せたらいいんだけど……」
ざくろがそう呟いたが、それは師団員に止められた。どこからグリフォンが見ているか分からない以上、あまり目立つ行動はとらない方が無難だというのだ。
「でも、おかしいよな……」
レオーネが疑問を口にする。先ほどから、何度となくグリフォンを発見しており、かなり近くに降りてきたこともある。
「それにしては見つかってない、ってのが不思議だ」
あるいは、すでに見つかっているが見逃されているのだろうか。野生のグリフォンというのは本来好戦的だ。それは無いだろうと師団員たちは考えている。それでは……
「あの霧を発生させている存在が、何か関係しているのかな……冒険家の血が騒ぐね!」
決意を新たにするざくろ。
「その意気だぜ! さて……もうすぐ島の中央だと思うんだけどな……」
書きかけの地図を見ながらレオーネが言った。海の霧と同じように方向感覚を狂わせるような何かがあるかとも思っていたのだが、島自体には霧が無い。あくまで島の外側にだけあったものだ。
険しい岩場を、しかも周囲に気を配りながら進んでいくのは精神的にもかなりの負荷だったが。それでも4人は進んでいき……やがて、そこにたどり着いた。
「これは……」
島の中心部。そこにあったのは……巨大な穴だった。
山に見立てたら火口の様な……だが、その奥からは熱などは特に感じない。ただ、穴の奥から風が吹き上げているのが奇妙だった。
「中に……降りられそうかな?」
「……いや、難しいんじゃねぇかな。どこまで続いてるか分からねぇし」
そんな時だった……島の外縁、丁度浸食洞があるあたりに光が見えたのは。
●
(効かない!?)
浸食洞、沈み行く歪虚に攻撃を仕掛けたカーミン。狙いは首の部分。ワイヤーで輪の軌跡を作りモーターで引き絞るように……だが、その攻撃に手ごたえは感じられない。
(ひょっとして……ただ堅いだけじゃないの?)
どちらかといえばスライムのような軟体に対するような手応え。外殻は固い甲羅で、内部も衝撃や斬撃に対して強い……
(……そうか、海賊さん達の『クラス』)
疾影士、闇狩人、猟撃士。これらのクラスが得意とするのは所謂物理的な攻撃だ。それが殆ど効かないような敵が相手だとしたら、海賊たちが為す術無く逃げざるを得なかった理由になるのではないだろうか。
となると、効果的なのはトミヲの魔法攻撃。そのことを知らせようとカーミンは浮上……
(……っ!)
しようとしたが、それは叶わない。歪虚が腕に噛みついている。今の攻撃で七式の影響から脱したようだ。
さらに残り2体の歪虚も気付いたようで、その砲口は……全てカーミンを捉えている。水中戦に主眼を置いていたのはカーミンだけだった。ケイとストゥールは水中戦への備えは無く、水中戦が可能であろうミリアもトミヲの護衛についている。カーミンだけが狙われるのは必定だった。歪虚が口を離すと同時に、その砲口が輝く。
同時に、水面には大きな水柱が立つ。
「くっ……」
衝撃で波が立ち、岩に立っていたストゥールは足をとたれそうになる。水中戦の用意はしていない以上、水に落ちても戦えない。やむを得ずジェットブーツを使用して退避。だが、そこを狙い撃ちされる。
辛うじて、防御障壁を使用するストゥール。だが、それでも威力は殺し切れず、砲撃を受け大きく吹き飛ぶ。
「もう少し上に上がってきてくれないと……」
すぐに攻撃が出来るよう構えていたケイだったが、砲撃はやや深い位置から行われたものだ。反撃できない。七式の影響で沈んでいったのがこの場合は仇となったか。
ケイが居た陸地には、気を失ったカーミンが打ち上げられていた。
「ちっ……遠距離攻撃は勘弁してもらいたいよ……」
そう呟くと、ミリアはトミヲの方を向く。
「普通の攻撃じゃ効果が薄そうだしな。頼むぞトミヲ」
言うが早いか、ミリアも水中へ向かう。
「……若い女の子たちに体を張らせてるんだ……僕が失敗するわけには、行かないッ!」
水に入ったトミヲは目視で狙いをつけ、ライトニングを使用。
浮上し始めていた歪虚に魔法の雷撃が叩き込まれる。歪虚は初めて苦しんだように体を震わせる。そのままミリアが突撃魂を燃やしながら神剣刺突を使用。威力の高い攻撃だ。普通の敵ならかなりのダメージを与えられる……はずだった。
(ちっ……)
ミリアは心中で舌打ちする。切っ先はわずかに甲羅に食い込み、ヒビを入れた程度。
(やはり魔法で攻めるしかないね)
続けざまに、今度はファイアボールを使用するトミヲ。魔力の火球は水中でもその力を失うことはなく、爆ぜるとともに3体の歪虚へダメージを与える。
だが歪虚も反撃してくる。3体の歪虚からの砲撃だ。
1発目はミリアが受け止めてくれたが、2発目、3発目の砲撃が命中。トミヲは水中で岩盤に叩きつけられる。それでもトミヲはもう一発ファイアボールを使用。再度3体を纏めて攻撃し、うち1体が沈んでいく。今の攻撃で倒せたようだ。それを確認したところで、トミヲは意識を失った。
●
「まずいか……照明弾は上げたな! 私も援護に向かう!」
浸食洞から非戦闘員を脱出させたブラウヒッチ兵長は、すぐさまハンターたちの援護に向かった。現状、カーミンとトミヲが戦闘不能。ミリアがヒーリングファクターを使用しつつ近接戦。ケイは気を失ったカーミンを守りながら援護を行っているが、敵の動きによっては射線が通らず苦戦している。この点、ストゥールはジェットブーツによる移動で位置取りを上手く変えられるので援護はしやすそうだ。とはいえ、銃撃、剣戟ではこの歪虚に決定打を与えることはできない。それはブラウヒッチ兵長にしてもそうだ。彼も魔法の類を扱うのは得意ではない。
「せめて、調査に向かった4人が戻るまでは持たせなければ……」
そう考えていた矢先だった。
「大丈夫か!」
唐突に響いたのはレオーネの声だ。
「何? こんなに早く戻って……」
こられるはずが無い、そう思ったが……一目見て答えが分かった。
「グリフォンだと!?」
レオーネ、そしてざくろはグリフォンの背に乗ってきていたのだ。
その後は簡単だった。グリフォンから飛び降り水に入ると、ざくろがデルタレイ。レオーネがロックオンレーザーで歪虚を攻撃。物理的な攻撃に強くともトミヲの魔法によるダメージは大きく、そこからさらに追加で魔法攻撃を喰らったことで、残り2体も撃破された。
こうして、襲撃してきた歪虚は全て倒せたことになる。とりあえずは作戦成功といったところか。非戦闘員や第5師団員はすぐさま被害の確認と補修。カーミンとトミヲの治療も同時におこなわれた。調査の方も、浸食洞に居るだけではわからないこと……島の内部に関しての情報を得ることができた。
「お陰で助かった。でも、何でグリフォンに?」
ざくろとレオーネに問いかけたのはミリア。これについては疑問に思ったのだろう。ケイやストゥールもやってきて質問する。
「他のグリフォンを刺激しないためにも帝国軍で使用しているグリフォンは連れてきていない……っていう話だったはずよね」
「うん、この子はこの島のグリフォンだよ」
「それでは何故……」
「……声がしたんだ」
「声?」
「『送らせる。乗るがいい』って……」
●
――敵意が無いことは分かった。
――故に、多少手助けをしたまで。
――これからどうするかは個々に考えればよかろう。
島の奥底、深淵に佇んでいた『ソレ』は闇の中で再び瞼を閉じた。
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依頼相談スレ レオーネ・インヴェトーレ(ka1441) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/10/09 03:08:19 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/07 10:20:43 |