ゲスト
(ka0000)
【アルカナ】 焦がれた恋心、空へと伸びる
マスター:桐咲鈴華

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/14 09:00
- 完成日
- 2015/10/22 06:20
オープニング
◆
鬱蒼と生い茂る森の中。何も音のない場所のはずであるそこに、草木をかき分ける音が響く。
走る人間、そしてそれを追う謎の巨体。木々をかわし、生い茂る草を強引に散らして走る2つの影は少しずつ距離が縮まっていく。
「ヒ、ィッ! はぁ、はぁ、は、た、助け……!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオァァァァァァァァァァ!」
空をつんざくような金切り声にも似た咆哮。静寂に突如として降り注いだ爆音に平衡感覚を揺らされた逃亡者……冒険者の男性はよろめいて倒れ伏してしまう。
巨体はすぐさまその身体から無数の手を伸ばし、冒険者の男性を捕まえる。
「や、やめ……ひ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
無数の手に掴まれた男性はそのまま巨体の中心、胴体の部分に押し付けられると、その身体が少しずつ消化されながら沈んでいく。痛みと恐怖に断末魔の悲鳴を撒き散らすも、そのまま男性は為す術もなく肉塊の中に取り込まれてしまった。
「……オ、ア……ヒトリ……ヒトリデ……」
声は呻き、犠牲者の心を呟く。取り込まれていった人々の痛み、悲痛、寂しさが顕在化し、強い怨念となって『塊』となったそれは、今もなお内包する全ての『寂しさ』を慰める為、ひとりの人間を求め続ける。
「ダレカ……コノ、テヲ……」
頭上で輝く月に向かって、抱き合い、溶け合った男女の姿をした異形は、無数の手をゆっくりと伸ばす。本体から生える翼のような肉塊が、羽ばたくようにゆっくりと上下する。
その翼は少しずつ赤黒く染まり、やがてゆらりと、陽炎がその周囲に揺らめいた。
揺らめく陽炎は少しずつ、その大きさを広げていった……。
◆
ハンターオフィスのブリーフィングルーム。そこに居たのはタロッキ族の一人であるエフィーリア・タロッキ(ka0077)と、打ち合わせの相手である受付嬢がいた。
「『The Lovers』がまた現れた、と……?」
「はい。また似たような事例をいくつか報告されておりまして。……一人で出歩く村人が帰らぬ人となっていった、という。以前と似たケースが何件か……」
The Lovers。おぞましい心臓のような肉塊から、溶け合った男女の身体と大きな肉の翼の生えた異形の歪虚。『アルカナ』と呼ばれる歪虚の一体であるそれは、『一人の人間』を探し求め、その体内に捕食してしまう恐ろしい存在だ。
「以前の報告によれば、Loversは一人を求める怪物。その犠牲となった人たちの強い怨念の集合体めいた存在だと推測されています。」
受付嬢は報告書をめくりつつ、エフィーリアに現状を報告する。
「……一人で、暗い森の中で怪物に捕食されて死ぬ。というのは、想像を絶する恐怖でしょうね。誰にも看取られず、誰にも知られず。そこに居たという証すらも残せずに食い潰される……その強い怨念が集まった存在、ですか」
「ええ。しかも、その思念は犠牲者の数が増えれば増えるほど肥大化が予想されます。寂しさを慰める為に一人を見つけ、取り込む。されどその犠牲者の恐怖によって、慰めるどころか更に気持ちを焦がれさせる。この悪循環が続けば、ただでさえ狂い暴れるLoversがどうなるのかは、想像に難くないでしょう」
以前の報告書からはじき出された答えを分析し、予想する受付嬢。その推測はエフィーリアも同意見と首を縦に振る。
「……此度も撃退が必要です。ハンター様方とはこれで2戦目となる歪虚ですが……」
エフィーリアはそこで言葉を切り、思案する。
(……どうにも、嫌な予感がします。……以前の『Magican』の言葉……あの意味は、一体……)
以前の依頼の報告を思い出し、何か嫌なものが喉の奥に引っかかるエフィーリア。だが、手元にある資料の犠牲者のリストが、その判断を急がせる。
「……いえ、何でもありません。一刻も早い対処が必要です。此度もハンター様を募って頂けますか?」
少しでも犠牲者を減らす手。それは少しでも早くLoversを撃破するしかない。そう結論づけたエフィーリアは此度もまた、依頼書を作成するのだった。
鬱蒼と生い茂る森の中。何も音のない場所のはずであるそこに、草木をかき分ける音が響く。
走る人間、そしてそれを追う謎の巨体。木々をかわし、生い茂る草を強引に散らして走る2つの影は少しずつ距離が縮まっていく。
「ヒ、ィッ! はぁ、はぁ、は、た、助け……!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオァァァァァァァァァァ!」
空をつんざくような金切り声にも似た咆哮。静寂に突如として降り注いだ爆音に平衡感覚を揺らされた逃亡者……冒険者の男性はよろめいて倒れ伏してしまう。
巨体はすぐさまその身体から無数の手を伸ばし、冒険者の男性を捕まえる。
「や、やめ……ひ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」
無数の手に掴まれた男性はそのまま巨体の中心、胴体の部分に押し付けられると、その身体が少しずつ消化されながら沈んでいく。痛みと恐怖に断末魔の悲鳴を撒き散らすも、そのまま男性は為す術もなく肉塊の中に取り込まれてしまった。
「……オ、ア……ヒトリ……ヒトリデ……」
声は呻き、犠牲者の心を呟く。取り込まれていった人々の痛み、悲痛、寂しさが顕在化し、強い怨念となって『塊』となったそれは、今もなお内包する全ての『寂しさ』を慰める為、ひとりの人間を求め続ける。
「ダレカ……コノ、テヲ……」
頭上で輝く月に向かって、抱き合い、溶け合った男女の姿をした異形は、無数の手をゆっくりと伸ばす。本体から生える翼のような肉塊が、羽ばたくようにゆっくりと上下する。
その翼は少しずつ赤黒く染まり、やがてゆらりと、陽炎がその周囲に揺らめいた。
揺らめく陽炎は少しずつ、その大きさを広げていった……。
◆
ハンターオフィスのブリーフィングルーム。そこに居たのはタロッキ族の一人であるエフィーリア・タロッキ(ka0077)と、打ち合わせの相手である受付嬢がいた。
「『The Lovers』がまた現れた、と……?」
「はい。また似たような事例をいくつか報告されておりまして。……一人で出歩く村人が帰らぬ人となっていった、という。以前と似たケースが何件か……」
The Lovers。おぞましい心臓のような肉塊から、溶け合った男女の身体と大きな肉の翼の生えた異形の歪虚。『アルカナ』と呼ばれる歪虚の一体であるそれは、『一人の人間』を探し求め、その体内に捕食してしまう恐ろしい存在だ。
「以前の報告によれば、Loversは一人を求める怪物。その犠牲となった人たちの強い怨念の集合体めいた存在だと推測されています。」
受付嬢は報告書をめくりつつ、エフィーリアに現状を報告する。
「……一人で、暗い森の中で怪物に捕食されて死ぬ。というのは、想像を絶する恐怖でしょうね。誰にも看取られず、誰にも知られず。そこに居たという証すらも残せずに食い潰される……その強い怨念が集まった存在、ですか」
「ええ。しかも、その思念は犠牲者の数が増えれば増えるほど肥大化が予想されます。寂しさを慰める為に一人を見つけ、取り込む。されどその犠牲者の恐怖によって、慰めるどころか更に気持ちを焦がれさせる。この悪循環が続けば、ただでさえ狂い暴れるLoversがどうなるのかは、想像に難くないでしょう」
以前の報告書からはじき出された答えを分析し、予想する受付嬢。その推測はエフィーリアも同意見と首を縦に振る。
「……此度も撃退が必要です。ハンター様方とはこれで2戦目となる歪虚ですが……」
エフィーリアはそこで言葉を切り、思案する。
(……どうにも、嫌な予感がします。……以前の『Magican』の言葉……あの意味は、一体……)
以前の依頼の報告を思い出し、何か嫌なものが喉の奥に引っかかるエフィーリア。だが、手元にある資料の犠牲者のリストが、その判断を急がせる。
「……いえ、何でもありません。一刻も早い対処が必要です。此度もハンター様を募って頂けますか?」
少しでも犠牲者を減らす手。それは少しでも早くLoversを撃破するしかない。そう結論づけたエフィーリアは此度もまた、依頼書を作成するのだった。
リプレイ本文
●愛を渇望する魔物
鬱蒼と生い茂る夜の森の中にそれはいる。『恋人(The Lovers)』と呼ばれる一体の歪虚だ。愛を求め、渇望するその魂は異形の肉体を駆り立てる。呻きながら空へとだらしなく無数の手を伸ばし、己の中に足りないものを追い求めるその様は、おぞましくもどこか寂しげであった。
ふと、その顔(のように見える部位)が、草木をわける音に反応し、そちらを向く。人の気配を察知した。『恋人』は呻き声をあげる。
「オ……アァ……」
異形は、その方向へとゆっくり身体を引きずっていく。まるで縋り付くように、恋い焦がれるように。その手を伸ばしながら……。
「……音がする、近いね。標的かな?」
「ああ、かもな。この森は普段は物音一つしないと地元民から聞いてるし、ほぼ間違いなくヤツだろう」
木々のざわめく音の間に不自然な感覚を覚えた仁川 リア(ka3483)の言葉に、柊 真司(ka0705)は頷きながら答える。真司は以前もアルカナの一体である『恋人』と交戦している。背筋に走る悪寒めいた、嫌な感覚が少しずつ近づいてくるのをなんとなく感じ、警戒を厳にしている。
「まさかまた『恋人』と相対する事になるとはね……っと」
「エニア……平気、か?」
真司と同じく『恋人』との戦いは二度目となる十色 エニア(ka0370)とオウカ・レンヴォルト(ka0301)もまた、同じ気配を感じ取っていた。オウカはふらつくエニアに肩を貸しながら、半歩エニアの前に身体を出すようにし、庇うような立ち方を心がけている。
ちなみにオウカは当初、重体のエニアに代わってエフィーリアに代役を頼もうと思っていたが、森のどこに『恋人』が出現するか分からない以上、彼女を一人で置いておくわけにもいかず、また彼女自身も戦闘は不慣れであるとのこと。重体者と戦闘経験の乏しい者と手を繋がなければならない危険性を考えるならば……と思い、彼女には今まで通り留守を守って貰うことにしたのだった。
「平気……うん。だいじょぶ。……たぶん」
「やはり、無理は、しない方が」
オウカの言葉にエニアはかぶりを振る。
「確かに無謀かも、しれないけど。あれにもう一度、会わなきゃって、そう思うんだ」
その眼には確固とした意思が宿っていたのを感じ取ると、オウカはそれ以上何も言わず、エニアの事を守り切る事を再優先で考えられるように思考を再構築していく。
「……おうっ? さっきからぞわぞわ気味悪ぃ気配が来ると思ったら……奴さんおいでなすったぜ!」
アルカナ特有の気配めいたものを感じ取り、また目視できる距離に異形が現れた事を視認した紫月・海斗(ka0788)が声を張り上げる。その視線の先で細い木々がなぎ倒され、異形の巨体を引きずるようにして森の闇から這い出してきた、一対の男女と巨大な翼を持つ歪虚……『恋人』だ。
「来た、『恋人』だ! 皆、手を繋いで!」
エニアが声をあげると同時に、皆が手を繋いでいく。エニアはオウカと、真司は海斗と。リアは傍らに控えていた和泉 澪(ka4070)とそれぞれ手を繋いだ。
「独りを襲う、異形の歪虚……想像していたよりも悍ましい、ですが……」
澪はリアと手を繋ぎながら、現れた異形を見やる。心臓部から生えた男女、翼、体液を滴らせながら伸び出す無数の手は、誰かに握って欲しいと求めるように虚空を掻き続ける。その姿は狂気染みていて酷くおぞましく、同時に……とても寂しげだと澪は感じていた。
「ほれ真司、とっととやっちまおーぜ。ったく、何が悲しくて野郎と仲良く手を繋いで戦わにゃならんのか」
「俺だって同じだよ全く。おっさんと手を組まなきゃなんねぇとは。前回といい……」
お互いに悪態をつくのは信頼の裏返しか、言葉とは裏腹に互いの手が離れぬようにしっかりと結ぶ二人。真司は前回の記憶を呼び起こしながら『恋人』を観察する。
(……なんだ、翼の周りの空気が……妙に歪んでいるような)
違和感を覚えた矢先に『恋人』の心臓から無数の腕が展開。掻き毟るような手つきでハンター達に殺到した。
「攻撃、来るぞ!」
「そら来た!」
「仁川さん、来ます!」
「了解!」
「……!」
「ひゃ、っ!」
それぞれが声をかけあって連携する。真司と海斗は同時に防御障壁を展開して攻撃から身を守り、リアが前方に出て盾で腕の攻撃を弾くようにして澪を守る。そしてオウカはエニアをお姫様抱っこして跳躍、ジェットブーツによる跳躍で攻撃を回避する。
「切り返す! 頼んだよ、せー、の!」
「やぁっ!」
掛け声と共にくるりと身体を入れ替えるようにしてリアの代わりに前に出た澪が村雨丸の鋭い剣閃で腕を切り落としていく。攻撃のタイミングでリアが後ろに下がり、回避しきれない攻撃は優先して前に出て受け、それを澪が切り落としてゆく。息のあった連携だ。
「良い攻撃だね。流石は僕の認めた剣士さんってだけはあるよ」
「お褒めに預かり光栄ですっ、仁川さんが受けてくれるお陰で、迷いなく剣術の冴えを披露出来ますよ」
殺到する腕をコンビネーションで二人が迎撃している中、残る2ペアも距離をとる。オウカ、エニアは下がって『恋人』の様子を観察し、真司と海斗はそれぞれ魔導拳銃と神罰銃を構え、『恋人』に向かって掃射する。『恋人』の全身は庇護膜代わりになっている体液に覆われており、銃弾は体表を滑って明後日の方向へと飛んでゆく。だが、前回そうして回避された経験からか、真司は『恋人』の身体の中心を狙って撃ち、海斗は着弾した弾丸を狙って重ねるように射撃をする。その狙いは確かに功を成し、効果の薄かった射撃は確実にダメージを重ねていっている。
「ち、それでも厄介な体液だ」
「しゃーねえ、前出るしかねえか。リードしてやっからついて来い!」
海斗はジェットブーツを発動し、真司を引っ張るように前線に躍り出る。乱暴な先導だったが、それくらいが丁度いいと言わんばかりに真司もまたジェットブーツで追従。共に『恋人』へと肉薄した。『恋人』は鋭利な爪を持つ自身の手を振り翳し、迎撃しようとするが……。
「おっと、こっちがお留守になっちゃ」
「いけませんよ!」
回避と攻撃の絶妙なコンビネーションで『恋人』の懐に入り込んでいた仁川ペア。澪が振り被られた腕を切断し、攻撃を阻止する。
「グッジョブだぜ嬢ちゃん! 今だ!」
海斗がマテリアルによる電撃を放つと、『恋人』はそれによる感電で一瞬動きが止まる。
「隙を見つけたぞ、そこだ!」
仲間が連携で作り出した決定的な隙、真司はそこへ超重錬成にて巨大化させた光斬刀を叩き込んだ。『恋人』の身体全体に抉り込むように入った一撃は、誰が見ても決定的なダメージに思える一撃だった。
「……熱っ……?」
ふと、その真司の頬を熱が撫でた。次の瞬間、確かな手応えを感じる腕を引き戻す前に、突如として薙ぎ払われた『恋人』の翼に直撃し、身体を吹き飛ばされた。
「真……ぐおっ!?」
手を繋いでいた海斗もそれによってバランスを大きく崩す。続けざまに放たれた翼の一撃に同じく海斗も薙ぎ払われ、吹き飛ばされてしまう。寸での所で手は離さなかったが、二人とも大ダメージを受けて立ち上がれそうもない。
「一体何が……っ!」
澪が『恋人』を見やると、その変貌ぶりに眼を見開く。大きく広げられた翼が夜の闇の中で爛々と赤熱し、高温によって対流が起き、熱風が頬を撫ぜる。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオァァァァァァァァァ!!!』
「あれは、何……!」
困惑する澪を、リアが引き戻して入れ替わる。自身も巧みなステップで薙ぎ払われるように振るわれる翼を回避し、距離を取る。
「陽炎がたってたから相当の熱だと思っていたけれど……そんな風な隠し玉を持ってるなんて、ね……!」
直撃はしなかったもののかなりの熱だ。掠っただけにも関わらずに頬を軽く火傷し、直撃した木はなぎ倒された上に発火し、燃え上がり始めている。
「破壊力も申し分ない、か……!」
リアと澪が交戦中、遠くに離れていたオウカとエニアは『恋人』の変貌にいち早く察知できた。オウカはエニアを背後に隠すようにしつつ、機導砲によって前線で戦う二人を援護する。そしてエニアは覚醒できない身ながら、しっかりと戦場を見据え、『恋人』を観察していた。
「……赤熱の翼。……焦がれ、焦がれた想いが、飛び立つ為の翼を燃やしてる……」
先程海斗と真司によって受けたダメージに激昂したようにも見える『恋人』の動きは今際の際の絶叫にも見える。恋い焦がれ、されど果たされぬ思いが爆発し、泣き叫ぶ童のようでいて、反面叫び声だけで世界すらも壊してしまうかのような狂気に満ちている。エニアはそんな姿を見て、思わず前に踏み出していた。
「エニア、何、を……」
「ごめんなさい、でも……やらなきゃいけない。わたしに出来ることが、今……わかった気がするんだ」
そう言って踏み出すエニアの決意は硬い。重傷を負い、覚醒も出来ない身でありながら、誰かの為に何かを成そうとする意思。そう言って踏み出すエニアの様子に、オウカも覚悟を新たにする。
「わかった……だが、無理はしないで、くれ。今のお前は普通の人間と変わらない、からな」
「分かってるよ。わたしだって、死んだりする気は全然ないからね」
明るくはにかみ、オウカに応えるエニア。重傷の身体に鞭をうち、暴れ狂う『恋人』へと接近してゆく。
「ったく、あとちょっとっぽいのに限度があるよ……! ヒステリックって恐ろしいものだねっと!」
前線で攻撃をいなすリア。予め敵の様子から、炎熱系の攻撃に対して読みを入れていた事が大きなアドバンテージとなっている。同じく熱に有効な妖刀である村雨丸を携えている澪もまた、翼の放つ熱をかわしつつ、リアと入れ替わるように前に出ては、少しずつダメージを与えていく。
そこへふらりと現れるエニア。二人は重体のまま前線に出てくるエニアを見て仰天するが、次のエニアの行動で言葉を失う。
エニアは『恋人』へと近寄ると、そっとその胴体(であろう部分)に、抱きしめるように身体を寄せた。
暴れ狂う怪物、人を捕食する異形。そんな存在に身を寄せるなど、常識的に考えてありえない。誰しもが最悪の結末を想像するに難くない状況で、エニアは更に『恋人』に対し、言葉をつぶやいた。
「大丈夫、今度は、独りじゃないからね……」
優しげな声色で、慈しむように『恋人』に声をかけるエニア。この状況で、この戦況で、酔狂にも程がある行動だ。今に『恋人』は発狂し、その身を八つ裂きにして捕食される……
その場にいる誰もがそう思っていた。
だが、そのエニアの行動に、『恋人』は、ほんの僅かな間だけ、動きを、止めた。
『ウオ、オ……アアアアァァァァァァ!!』
しかしそれも長くは続かない、『恋人』はなぜか、振り払うように身体を振るい始める。
「……っ」
覚醒も出来ない自分の出来る数少ない抗う術。ダガーを取り出したエニアは、自身の持てる力を精一杯つぎ込み、ダガーを『恋人』へ突き刺した。『恋人』はそのままエニアを突き飛ばすと、そのまま燃え盛る翼を振り下ろす。
「エニア……!」
無理に入れ替わるようにオウカがエニアを庇い、振り下ろされる翼を受けて地面に叩きつけられる。強引な体勢で攻撃をまともに受けてしまった為にその鎧は砕かれ、オウカも地面に陥没するほどに打ちのめされてしまった。
「――今だ、和泉!」
「ええ、仁川さん、一緒に跳んで下さい!」
オウカへの攻撃のタイミング、その隙を逃さずにリアと澪が声を掛け合い、二人同時に地を蹴る。手を繋ぎ、互いに身体を回転させるように澪を前に出し、攻撃を放った直後の『恋人』の、ダガーの刺さっている場所目掛けて妖刀を突き立てる。
「鳴隼一刀流、隼巻閃!!」
深く食い込んだダガーに重ねられるように澪の剣閃が迸る。身体の奥底へと突き立てられたダガーと剣術自体の衝撃ダメージには耐えられなかったか、『恋人』は身体をもたげ、ゆっくりと地に堕ちる。
『ア、オァ……ウゥ…………』
悶え苦しむ『恋人』は、未だに手を伸ばす。天に、そして周囲に居るハンター達に。誰かに手を握って欲しくて、誰かが傍に欲しくて……そんな想いを込めて伸ばされた手は、そっとエニアが包むように握った。
「Спокойной ночи(おやすみなさい)」
その声に後追されるように、『恋人』は消え去っていった。
「あの歪虚は…繋がりを求めてたんだよね。けして手に入る事のない誰かとの繋がりを」
『恋人』の願い、それは誰かに大切にされたかった事、そして傍で、今際の自分を看取って欲しかった事。手に入る筈のない温もりを焦がれ、求め、その度にその恋の炎で自らの心を焼き焦がしていく存在。
「そして最期には自分の求めた物を持っている僕らに倒された。ちょっと悲しいね、なんて」
そんな存在に、リアもまた思うところがあったように言葉を漏らす。残滓となって消えた異形は、対峙している時こそ恐ろしかったが、終わってみればそのもの哀しさに胸を打たれていた。
こうして、再びアルカナの一体である『恋人』の断片は討たれた。だが、受けた傷跡は今までの『アルカナ』との戦いの中でも特に大きく、それぞれの機転がなければ全滅も在り得たかもしれない。
新たに付与されたアルカナの『性質』。その危機感を感じ取り、ハンター達は帰路についたのだった。
●幕間
「…………」
エフィーリアは苦々しい顔で、デスクの上の報告書に視線を落としていた。進化した『恋人』から受けた甚大な被害。一歩間違っていれば初の敗北になったかもしれないこの戦いを予想出来なかった自分、そして重傷のエニアを行かせてるにも関わらず自分では足手纏いになるという実力不足に、何もできない無力さ、歯がゆさを噛み締めていた。
「……伝承とは違う『アルカナ』の力、これは……由々しき事態、ですね」
言いながらエフィーリアはデスクから立ち上がる。自分に出来ることを考え、そして実行に移すために。
「……このままでは、いけません。タロッキへ、戻らなければ」
エフィーリアは考えを纏め、自らの故郷へ赴く用意を始めることにした。
鬱蒼と生い茂る夜の森の中にそれはいる。『恋人(The Lovers)』と呼ばれる一体の歪虚だ。愛を求め、渇望するその魂は異形の肉体を駆り立てる。呻きながら空へとだらしなく無数の手を伸ばし、己の中に足りないものを追い求めるその様は、おぞましくもどこか寂しげであった。
ふと、その顔(のように見える部位)が、草木をわける音に反応し、そちらを向く。人の気配を察知した。『恋人』は呻き声をあげる。
「オ……アァ……」
異形は、その方向へとゆっくり身体を引きずっていく。まるで縋り付くように、恋い焦がれるように。その手を伸ばしながら……。
「……音がする、近いね。標的かな?」
「ああ、かもな。この森は普段は物音一つしないと地元民から聞いてるし、ほぼ間違いなくヤツだろう」
木々のざわめく音の間に不自然な感覚を覚えた仁川 リア(ka3483)の言葉に、柊 真司(ka0705)は頷きながら答える。真司は以前もアルカナの一体である『恋人』と交戦している。背筋に走る悪寒めいた、嫌な感覚が少しずつ近づいてくるのをなんとなく感じ、警戒を厳にしている。
「まさかまた『恋人』と相対する事になるとはね……っと」
「エニア……平気、か?」
真司と同じく『恋人』との戦いは二度目となる十色 エニア(ka0370)とオウカ・レンヴォルト(ka0301)もまた、同じ気配を感じ取っていた。オウカはふらつくエニアに肩を貸しながら、半歩エニアの前に身体を出すようにし、庇うような立ち方を心がけている。
ちなみにオウカは当初、重体のエニアに代わってエフィーリアに代役を頼もうと思っていたが、森のどこに『恋人』が出現するか分からない以上、彼女を一人で置いておくわけにもいかず、また彼女自身も戦闘は不慣れであるとのこと。重体者と戦闘経験の乏しい者と手を繋がなければならない危険性を考えるならば……と思い、彼女には今まで通り留守を守って貰うことにしたのだった。
「平気……うん。だいじょぶ。……たぶん」
「やはり、無理は、しない方が」
オウカの言葉にエニアはかぶりを振る。
「確かに無謀かも、しれないけど。あれにもう一度、会わなきゃって、そう思うんだ」
その眼には確固とした意思が宿っていたのを感じ取ると、オウカはそれ以上何も言わず、エニアの事を守り切る事を再優先で考えられるように思考を再構築していく。
「……おうっ? さっきからぞわぞわ気味悪ぃ気配が来ると思ったら……奴さんおいでなすったぜ!」
アルカナ特有の気配めいたものを感じ取り、また目視できる距離に異形が現れた事を視認した紫月・海斗(ka0788)が声を張り上げる。その視線の先で細い木々がなぎ倒され、異形の巨体を引きずるようにして森の闇から這い出してきた、一対の男女と巨大な翼を持つ歪虚……『恋人』だ。
「来た、『恋人』だ! 皆、手を繋いで!」
エニアが声をあげると同時に、皆が手を繋いでいく。エニアはオウカと、真司は海斗と。リアは傍らに控えていた和泉 澪(ka4070)とそれぞれ手を繋いだ。
「独りを襲う、異形の歪虚……想像していたよりも悍ましい、ですが……」
澪はリアと手を繋ぎながら、現れた異形を見やる。心臓部から生えた男女、翼、体液を滴らせながら伸び出す無数の手は、誰かに握って欲しいと求めるように虚空を掻き続ける。その姿は狂気染みていて酷くおぞましく、同時に……とても寂しげだと澪は感じていた。
「ほれ真司、とっととやっちまおーぜ。ったく、何が悲しくて野郎と仲良く手を繋いで戦わにゃならんのか」
「俺だって同じだよ全く。おっさんと手を組まなきゃなんねぇとは。前回といい……」
お互いに悪態をつくのは信頼の裏返しか、言葉とは裏腹に互いの手が離れぬようにしっかりと結ぶ二人。真司は前回の記憶を呼び起こしながら『恋人』を観察する。
(……なんだ、翼の周りの空気が……妙に歪んでいるような)
違和感を覚えた矢先に『恋人』の心臓から無数の腕が展開。掻き毟るような手つきでハンター達に殺到した。
「攻撃、来るぞ!」
「そら来た!」
「仁川さん、来ます!」
「了解!」
「……!」
「ひゃ、っ!」
それぞれが声をかけあって連携する。真司と海斗は同時に防御障壁を展開して攻撃から身を守り、リアが前方に出て盾で腕の攻撃を弾くようにして澪を守る。そしてオウカはエニアをお姫様抱っこして跳躍、ジェットブーツによる跳躍で攻撃を回避する。
「切り返す! 頼んだよ、せー、の!」
「やぁっ!」
掛け声と共にくるりと身体を入れ替えるようにしてリアの代わりに前に出た澪が村雨丸の鋭い剣閃で腕を切り落としていく。攻撃のタイミングでリアが後ろに下がり、回避しきれない攻撃は優先して前に出て受け、それを澪が切り落としてゆく。息のあった連携だ。
「良い攻撃だね。流石は僕の認めた剣士さんってだけはあるよ」
「お褒めに預かり光栄ですっ、仁川さんが受けてくれるお陰で、迷いなく剣術の冴えを披露出来ますよ」
殺到する腕をコンビネーションで二人が迎撃している中、残る2ペアも距離をとる。オウカ、エニアは下がって『恋人』の様子を観察し、真司と海斗はそれぞれ魔導拳銃と神罰銃を構え、『恋人』に向かって掃射する。『恋人』の全身は庇護膜代わりになっている体液に覆われており、銃弾は体表を滑って明後日の方向へと飛んでゆく。だが、前回そうして回避された経験からか、真司は『恋人』の身体の中心を狙って撃ち、海斗は着弾した弾丸を狙って重ねるように射撃をする。その狙いは確かに功を成し、効果の薄かった射撃は確実にダメージを重ねていっている。
「ち、それでも厄介な体液だ」
「しゃーねえ、前出るしかねえか。リードしてやっからついて来い!」
海斗はジェットブーツを発動し、真司を引っ張るように前線に躍り出る。乱暴な先導だったが、それくらいが丁度いいと言わんばかりに真司もまたジェットブーツで追従。共に『恋人』へと肉薄した。『恋人』は鋭利な爪を持つ自身の手を振り翳し、迎撃しようとするが……。
「おっと、こっちがお留守になっちゃ」
「いけませんよ!」
回避と攻撃の絶妙なコンビネーションで『恋人』の懐に入り込んでいた仁川ペア。澪が振り被られた腕を切断し、攻撃を阻止する。
「グッジョブだぜ嬢ちゃん! 今だ!」
海斗がマテリアルによる電撃を放つと、『恋人』はそれによる感電で一瞬動きが止まる。
「隙を見つけたぞ、そこだ!」
仲間が連携で作り出した決定的な隙、真司はそこへ超重錬成にて巨大化させた光斬刀を叩き込んだ。『恋人』の身体全体に抉り込むように入った一撃は、誰が見ても決定的なダメージに思える一撃だった。
「……熱っ……?」
ふと、その真司の頬を熱が撫でた。次の瞬間、確かな手応えを感じる腕を引き戻す前に、突如として薙ぎ払われた『恋人』の翼に直撃し、身体を吹き飛ばされた。
「真……ぐおっ!?」
手を繋いでいた海斗もそれによってバランスを大きく崩す。続けざまに放たれた翼の一撃に同じく海斗も薙ぎ払われ、吹き飛ばされてしまう。寸での所で手は離さなかったが、二人とも大ダメージを受けて立ち上がれそうもない。
「一体何が……っ!」
澪が『恋人』を見やると、その変貌ぶりに眼を見開く。大きく広げられた翼が夜の闇の中で爛々と赤熱し、高温によって対流が起き、熱風が頬を撫ぜる。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオァァァァァァァァァ!!!』
「あれは、何……!」
困惑する澪を、リアが引き戻して入れ替わる。自身も巧みなステップで薙ぎ払われるように振るわれる翼を回避し、距離を取る。
「陽炎がたってたから相当の熱だと思っていたけれど……そんな風な隠し玉を持ってるなんて、ね……!」
直撃はしなかったもののかなりの熱だ。掠っただけにも関わらずに頬を軽く火傷し、直撃した木はなぎ倒された上に発火し、燃え上がり始めている。
「破壊力も申し分ない、か……!」
リアと澪が交戦中、遠くに離れていたオウカとエニアは『恋人』の変貌にいち早く察知できた。オウカはエニアを背後に隠すようにしつつ、機導砲によって前線で戦う二人を援護する。そしてエニアは覚醒できない身ながら、しっかりと戦場を見据え、『恋人』を観察していた。
「……赤熱の翼。……焦がれ、焦がれた想いが、飛び立つ為の翼を燃やしてる……」
先程海斗と真司によって受けたダメージに激昂したようにも見える『恋人』の動きは今際の際の絶叫にも見える。恋い焦がれ、されど果たされぬ思いが爆発し、泣き叫ぶ童のようでいて、反面叫び声だけで世界すらも壊してしまうかのような狂気に満ちている。エニアはそんな姿を見て、思わず前に踏み出していた。
「エニア、何、を……」
「ごめんなさい、でも……やらなきゃいけない。わたしに出来ることが、今……わかった気がするんだ」
そう言って踏み出すエニアの決意は硬い。重傷を負い、覚醒も出来ない身でありながら、誰かの為に何かを成そうとする意思。そう言って踏み出すエニアの様子に、オウカも覚悟を新たにする。
「わかった……だが、無理はしないで、くれ。今のお前は普通の人間と変わらない、からな」
「分かってるよ。わたしだって、死んだりする気は全然ないからね」
明るくはにかみ、オウカに応えるエニア。重傷の身体に鞭をうち、暴れ狂う『恋人』へと接近してゆく。
「ったく、あとちょっとっぽいのに限度があるよ……! ヒステリックって恐ろしいものだねっと!」
前線で攻撃をいなすリア。予め敵の様子から、炎熱系の攻撃に対して読みを入れていた事が大きなアドバンテージとなっている。同じく熱に有効な妖刀である村雨丸を携えている澪もまた、翼の放つ熱をかわしつつ、リアと入れ替わるように前に出ては、少しずつダメージを与えていく。
そこへふらりと現れるエニア。二人は重体のまま前線に出てくるエニアを見て仰天するが、次のエニアの行動で言葉を失う。
エニアは『恋人』へと近寄ると、そっとその胴体(であろう部分)に、抱きしめるように身体を寄せた。
暴れ狂う怪物、人を捕食する異形。そんな存在に身を寄せるなど、常識的に考えてありえない。誰しもが最悪の結末を想像するに難くない状況で、エニアは更に『恋人』に対し、言葉をつぶやいた。
「大丈夫、今度は、独りじゃないからね……」
優しげな声色で、慈しむように『恋人』に声をかけるエニア。この状況で、この戦況で、酔狂にも程がある行動だ。今に『恋人』は発狂し、その身を八つ裂きにして捕食される……
その場にいる誰もがそう思っていた。
だが、そのエニアの行動に、『恋人』は、ほんの僅かな間だけ、動きを、止めた。
『ウオ、オ……アアアアァァァァァァ!!』
しかしそれも長くは続かない、『恋人』はなぜか、振り払うように身体を振るい始める。
「……っ」
覚醒も出来ない自分の出来る数少ない抗う術。ダガーを取り出したエニアは、自身の持てる力を精一杯つぎ込み、ダガーを『恋人』へ突き刺した。『恋人』はそのままエニアを突き飛ばすと、そのまま燃え盛る翼を振り下ろす。
「エニア……!」
無理に入れ替わるようにオウカがエニアを庇い、振り下ろされる翼を受けて地面に叩きつけられる。強引な体勢で攻撃をまともに受けてしまった為にその鎧は砕かれ、オウカも地面に陥没するほどに打ちのめされてしまった。
「――今だ、和泉!」
「ええ、仁川さん、一緒に跳んで下さい!」
オウカへの攻撃のタイミング、その隙を逃さずにリアと澪が声を掛け合い、二人同時に地を蹴る。手を繋ぎ、互いに身体を回転させるように澪を前に出し、攻撃を放った直後の『恋人』の、ダガーの刺さっている場所目掛けて妖刀を突き立てる。
「鳴隼一刀流、隼巻閃!!」
深く食い込んだダガーに重ねられるように澪の剣閃が迸る。身体の奥底へと突き立てられたダガーと剣術自体の衝撃ダメージには耐えられなかったか、『恋人』は身体をもたげ、ゆっくりと地に堕ちる。
『ア、オァ……ウゥ…………』
悶え苦しむ『恋人』は、未だに手を伸ばす。天に、そして周囲に居るハンター達に。誰かに手を握って欲しくて、誰かが傍に欲しくて……そんな想いを込めて伸ばされた手は、そっとエニアが包むように握った。
「Спокойной ночи(おやすみなさい)」
その声に後追されるように、『恋人』は消え去っていった。
「あの歪虚は…繋がりを求めてたんだよね。けして手に入る事のない誰かとの繋がりを」
『恋人』の願い、それは誰かに大切にされたかった事、そして傍で、今際の自分を看取って欲しかった事。手に入る筈のない温もりを焦がれ、求め、その度にその恋の炎で自らの心を焼き焦がしていく存在。
「そして最期には自分の求めた物を持っている僕らに倒された。ちょっと悲しいね、なんて」
そんな存在に、リアもまた思うところがあったように言葉を漏らす。残滓となって消えた異形は、対峙している時こそ恐ろしかったが、終わってみればそのもの哀しさに胸を打たれていた。
こうして、再びアルカナの一体である『恋人』の断片は討たれた。だが、受けた傷跡は今までの『アルカナ』との戦いの中でも特に大きく、それぞれの機転がなければ全滅も在り得たかもしれない。
新たに付与されたアルカナの『性質』。その危機感を感じ取り、ハンター達は帰路についたのだった。
●幕間
「…………」
エフィーリアは苦々しい顔で、デスクの上の報告書に視線を落としていた。進化した『恋人』から受けた甚大な被害。一歩間違っていれば初の敗北になったかもしれないこの戦いを予想出来なかった自分、そして重傷のエニアを行かせてるにも関わらず自分では足手纏いになるという実力不足に、何もできない無力さ、歯がゆさを噛み締めていた。
「……伝承とは違う『アルカナ』の力、これは……由々しき事態、ですね」
言いながらエフィーリアはデスクから立ち上がる。自分に出来ることを考え、そして実行に移すために。
「……このままでは、いけません。タロッキへ、戻らなければ」
エフィーリアは考えを纏め、自らの故郷へ赴く用意を始めることにした。
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【相談卓】お独り様ご案内~ 十色・T・ エニア(ka0370) 人間(リアルブルー)|15才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/10/14 07:28:23 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/10 23:24:00 |