ゲスト
(ka0000)
【聖呪】まだ、火蓋は切られていない
マスター:秋風落葉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/17 19:00
- 完成日
- 2015/10/23 17:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ヨーク丘陵北/茨の王
茨王はどっかと腰を下ろし、胸を張って腕を組んだ。
じっと南に目を向けていると、不意に激情が込み上げてきて苛立ち紛れに腕を振るった。
「誰かある」
「は、我が王」
ヌギが追従の笑みを浮かべ、腰を折る。ヌギの傷は未だ癒えず、いかにも苦しげだ。
茨王はその姿を目に焼き付けた。次への糧とする為に。
「各地の同胞を集めろ。可能ならば征服した軟弱者どもも連れてこい」
「それは……『動く』ということでございますか!?」
「うむ」
「別動隊となり得る隊はやや距離を離してもよろしいのでは?」
鉄灰色の肌をした別の茨小鬼が言う。茨王はやや考え、首肯した。
「隊の選別は任せる。ただし本隊と軌を一にして動くよう徹底しろ」
「ははぁ!」
恭しく鉄灰色が低頭し、去っていく。その後ろ姿は喜びに満ちているように感じられた。
ヌギもまた目を輝かせて声を弾ませる。
「遂に……遂に始まるのですな!」
「欲を言えばもう少し南下しておきたかった。が、もはや……もはや我慢ならぬ!」
茨王は吼える。
地を這うような怨嗟を、天まで届かせんばかりに。力の源となった≪あの者≫にも聴こえるようにと。
「百鬼夜行……いや、茨鬼夜行の準備じゃあ! 『茨風景』を発動せよ!!」
●
「小競り合いが始まったか……ワシも静観するわけにはいかんな」
再び始まったゴブリンと人間の戦い。遠くに見える乱戦を双眼鏡で見据えながら、デルギンは忌々しそうに呟いた。
人間達との戦争。それはデルギンにとって望むところである。しかし彼は今、万全の状態ではなかった。
デルギンは己の指揮する部隊の小隊長達を招集する。中でも、どちらかというと新参の者達だ。
「今回、ワシとラプター部隊は戦場には出られぬ。お前達だけで戦うのだ」
時折やってくる痛みに顔をしかめるデルギン。ハンターとの交戦により、デルギンも決して浅くはない傷を負わされ、さらには愛用していた魔導銃も彼らの手によって破壊されていた。
もちろん壊れた魔導銃はすでに処分し、新しいものを手にしていたが、さすがに受けた傷はすぐにはふさがらない。
本当は軍勢そのものをまだ動かしたくはなかった。ラプター部隊の再編も終わっていないのだ。しかし、茨の王への体面もある。座して待つわけにもいくまい。
とはいえ、この場で戦力を失いたくはないとデルギンは考えていた。先ほど茨の王の使者がやって来た。どうやら、何か特殊なことをするらしい。
(信じられぬ話だが、あの茨の王ならば出来るのかもしれぬ)
彼の使者は言っていた。王は『道』を作り、進軍すると。
つまり、決戦の地はここではない。
「オレタチ、ドウスレバイイ?」
沈思黙考していたデルギンに、一体のゴブリンが恐る恐る尋ねた。
デルギンは小さく頷き、口を開く。
「ふむ……耳を貸せ」
●
グラズヘイム王国軍の兵士達。
彼らの目に襲い来るゴブリンの群れが見える。
しかし、兵士達は訝った。自分たちが相対しているのは『秩序の禍』デルギンの部隊のはずだ。彼らがラプターに乗り、騎乗したまま魔導銃を操ったという情報はすでに耳にしている。
しかし、ラプターの姿はどこにもない。確かに魔導銃を持つ亜人はいるものの徒歩であり、その数も多くはない。大半は弓や投げ槍で武装した者達だ。
どちらかというと単純な生き物であるはずのゴブリン達にしては、戦場の狂乱に飲み込まれることもなく、やや距離を取って魔導銃を発砲し、もしくは矢を射掛けてくる。
ちょうどこの場ではハンター達も王国軍に混ざり、戦いに備えていた。
彼らの目にも、ゴブリン達の動きはやや奇妙なものに映る。
「主力を温存している……? いや、それとも動かせないのか……?」
ハンターの男は疑念を口にした。もちろんその答えが返ってくるわけもなく、彼らも王国軍の兵士達と共に、デルギン配下のゴブリン達との戦闘に身を投じていく……。
茨王はどっかと腰を下ろし、胸を張って腕を組んだ。
じっと南に目を向けていると、不意に激情が込み上げてきて苛立ち紛れに腕を振るった。
「誰かある」
「は、我が王」
ヌギが追従の笑みを浮かべ、腰を折る。ヌギの傷は未だ癒えず、いかにも苦しげだ。
茨王はその姿を目に焼き付けた。次への糧とする為に。
「各地の同胞を集めろ。可能ならば征服した軟弱者どもも連れてこい」
「それは……『動く』ということでございますか!?」
「うむ」
「別動隊となり得る隊はやや距離を離してもよろしいのでは?」
鉄灰色の肌をした別の茨小鬼が言う。茨王はやや考え、首肯した。
「隊の選別は任せる。ただし本隊と軌を一にして動くよう徹底しろ」
「ははぁ!」
恭しく鉄灰色が低頭し、去っていく。その後ろ姿は喜びに満ちているように感じられた。
ヌギもまた目を輝かせて声を弾ませる。
「遂に……遂に始まるのですな!」
「欲を言えばもう少し南下しておきたかった。が、もはや……もはや我慢ならぬ!」
茨王は吼える。
地を這うような怨嗟を、天まで届かせんばかりに。力の源となった≪あの者≫にも聴こえるようにと。
「百鬼夜行……いや、茨鬼夜行の準備じゃあ! 『茨風景』を発動せよ!!」
●
「小競り合いが始まったか……ワシも静観するわけにはいかんな」
再び始まったゴブリンと人間の戦い。遠くに見える乱戦を双眼鏡で見据えながら、デルギンは忌々しそうに呟いた。
人間達との戦争。それはデルギンにとって望むところである。しかし彼は今、万全の状態ではなかった。
デルギンは己の指揮する部隊の小隊長達を招集する。中でも、どちらかというと新参の者達だ。
「今回、ワシとラプター部隊は戦場には出られぬ。お前達だけで戦うのだ」
時折やってくる痛みに顔をしかめるデルギン。ハンターとの交戦により、デルギンも決して浅くはない傷を負わされ、さらには愛用していた魔導銃も彼らの手によって破壊されていた。
もちろん壊れた魔導銃はすでに処分し、新しいものを手にしていたが、さすがに受けた傷はすぐにはふさがらない。
本当は軍勢そのものをまだ動かしたくはなかった。ラプター部隊の再編も終わっていないのだ。しかし、茨の王への体面もある。座して待つわけにもいくまい。
とはいえ、この場で戦力を失いたくはないとデルギンは考えていた。先ほど茨の王の使者がやって来た。どうやら、何か特殊なことをするらしい。
(信じられぬ話だが、あの茨の王ならば出来るのかもしれぬ)
彼の使者は言っていた。王は『道』を作り、進軍すると。
つまり、決戦の地はここではない。
「オレタチ、ドウスレバイイ?」
沈思黙考していたデルギンに、一体のゴブリンが恐る恐る尋ねた。
デルギンは小さく頷き、口を開く。
「ふむ……耳を貸せ」
●
グラズヘイム王国軍の兵士達。
彼らの目に襲い来るゴブリンの群れが見える。
しかし、兵士達は訝った。自分たちが相対しているのは『秩序の禍』デルギンの部隊のはずだ。彼らがラプターに乗り、騎乗したまま魔導銃を操ったという情報はすでに耳にしている。
しかし、ラプターの姿はどこにもない。確かに魔導銃を持つ亜人はいるものの徒歩であり、その数も多くはない。大半は弓や投げ槍で武装した者達だ。
どちらかというと単純な生き物であるはずのゴブリン達にしては、戦場の狂乱に飲み込まれることもなく、やや距離を取って魔導銃を発砲し、もしくは矢を射掛けてくる。
ちょうどこの場ではハンター達も王国軍に混ざり、戦いに備えていた。
彼らの目にも、ゴブリン達の動きはやや奇妙なものに映る。
「主力を温存している……? いや、それとも動かせないのか……?」
ハンターの男は疑念を口にした。もちろんその答えが返ってくるわけもなく、彼らも王国軍の兵士達と共に、デルギン配下のゴブリン達との戦闘に身を投じていく……。
リプレイ本文
●
「折角、この前のお礼してやろーと思ったのに、デルギンのヤツ、居ねー、です」
先日、デルギン達との一戦で大きな傷を負わされた八城雪(ka0146)が悔しそうに呟いた。
「流石に、二度も同じ失敗はしたくねーんで、一人で無闇に突っ込むのは、止めとく、です。危ねー所に飛び込むのも、好きなんだけど、デルギン居ねーなら、意味ねー、です」
重傷を負った原因は逃げようとするデルギンを追いかけ、配下のゴブリン達から魔導銃の集中砲火を浴びたためであった。今ではその傷も完全に癒え、愛用のルーサーンハンマーを振るうのになんら支障はない。
「ギリギリ感が好きっつっても、大将首もねーとこに、好き好んで飛びこまねー、です」
言葉通り、今回は仲間達と隊列を組んで正面から挑むつもりの雪である。彼女の側には他に七人のハンターがおり、さらにその背後ではグラズヘイム王国軍の兵士達がすでに戦闘態勢を取っていた。
「平地に大量のゴブリンか。投石紐があれば楽なんだが、アレなら適当に投げて当たれば殺せるから楽なんだが。まあいい、銃で我慢しよう」
幼少時に村をゴブリンやコボルドといった亜人に滅ぼされ、それ以来ゴブリン達に憎悪を燃やし続けているハンター、カイン・マッコール(ka5336)。
「選り好みはしない、今あるものを最大限の効率で使い奴らを鏖にするそれだけだ」
彼が手にしているのはリアルブルーで作られた騎兵用の短銃身ライフル、カービン「プフェールトKT9」だ。性能はゴブリン達が持つ魔導銃とほぼ互角である。
「敵さんの思惑は分からねーが、負けて良い戦いってのは無え」
明らかに消極的な敵の動きを見、ジャック・エルギン(ka1522)は呟いた。ゴブリン達は一定の距離を取り、射撃戦に持ち込む構えのようだ。武器も魔導銃の他に投げ槍、弓を身につけているのがわかる。
「剣を抜いちまったら、後は目の前の相手に集中しようぜ」
言葉通り剣を構え、敵を睨みつけるジャック。
ここではないどこかで、戦いの音が聞こえてくる。他の場所でも人間とゴブリンとの戦いがまた始まっているようだ。
(王国北部のゴブリン騒ぎは、もはや「騒ぎ」なんてレベルじゃない。亜人と人との戦争……。どうして、こんなことになったの……? とても悲しいけど、理由を見つけて解決するためには最後まで戦わなきゃならない。死んでいった人と、亜人のためにも)
紫の瞳に悲しみを滲ませ、戦場を見つめる青山 りりか(ka4415)。法具でもある聖剣「ラストホープ」を引き抜き、バックラーも構えた。
彼女の嘆きをよそに、ゴブリン達の矢と銃弾はハンター達と王国軍に襲い掛かってきた。
●
「わらわらと……うぜぇな」
冬樹 文太(ka0124)は悪態をつきながらも、友軍であるグラズヘイム王国兵に援護射撃を依頼する。自分は前衛が敵へと近づけるよう、射撃で援護する考えだ。
ジャックはハンター達の前衛に立ってカイトシールドをかざし、降り注ぐ矢と銃弾の雨から己と仲間達を守っている。
鵤(ka3319)もその隣でやはり盾を構え、矢弾を受けていた。
「おっさんわざわざ守りに行ってやるほどお人好しじゃないもんでねぇ? そんなに守って欲しけりゃ、大人しく後ろを歩いてなさいよぉ」
ニヤニヤと人を小馬鹿にするような笑みを浮かべている鵤。
ハンター達の防壁を越え、いくつかの攻撃が彼らへと突き刺さる。魔導銃の威力はやはり侮れず、不運にも直撃を受けたハンターは痛みに顔をしかめた。
「前回の例もあるし、油断はできねえぜ」
仲間が受けた矢傷と銃創を癒すため、クルス(ka3922)はヒーリングスフィアを行使した。たちまち柔らかい光が彼から溢れ、仲間達を癒す。しかしそれを上書きせんとばかりに亜人達は遠距離攻撃を間断なく続けた。
りりかは彼らに対抗しようと前衛の仲間にプロテクションを順次使用していた。光がハンターを覆い、敵の攻撃を和らげる障壁となる。雪を狙って放たれたゴブリンの矢はりりかのスキルに威力を殺がれ、大した効果をあげることはなかった。
文太は敵の矢が降り注ぐ中、アサルトライフル「ヴォロンテAC47」を構えて狙いをつけ、トリガーを引いた。彼のスキルである遠射と制圧射撃の組み合わせによる無数の弾丸が敵の一帯を混乱させる。
それにあわせる形で鵤もデルタレイを見舞った。
宙に生まれた光の三角形の頂点から、それぞれ伸びた三条の光線が空を裂き、ゴブリン達へと襲い掛かる。亜人達が逃れる間も無くビームはその胴体を貫き、彼らの命を奪った。
「今や、行け!」
崩れた敵陣を見た文太が叫んだ。
敵の戦列が乱れた隙に、肉弾戦を主体とするハンター達が距離を詰める。
「ンー? デルギンの部隊が出てきたって聞いたんですケド。肝心の大将首が見当たりませんネー……残念。まあいいデス! この前逃がした鬱憤、彼の部下にぶつけときマス!」
クロード・N・シックス(ka4741)は烈光旋棍で飛来した矢を弾きながら首を傾げる。彼女は先日、デルギンの懐に飛び込むチャンスがありながらも、その首を挙げることが出来なかった。その時の借りをデルギンに返そうと思っていたのだが……いないのならば仕方ない。怒りのトンファーを他のゴブリンに向かって叩きつけるのみである。
「強そうなヤツは居ないみたいですネ? じゃ、skillは出し惜しみしないで使っちゃいましょうカ!」
クロードは他のゴブリンの中にも手練と呼べる猛者がいないことを見抜いた。気をつけるべき相手は魔導銃を持つゴブリンくらいであろう。
「お楽しみのParty timeデス! 大盤振舞と洒落込みますかネ!! Be right there!! ワタシの双旋棍は血に飢えてマス!! 今すぐブッ飛ばしてあげますヨ!!」
宣言通り瞬く間にゴブリンの集団に飛び込み、旋棍「光輝燦然」で華麗な一撃を見舞った。たまらず吹き飛ぶ亜人。
雪も矢を番えていたゴブリンへと己の武器を横に払い、衝撃波を放つ。予想もつかない一撃をまともに受け、仲間を巻き込んで転倒したゴブリン。
それを見て慌てて距離を取ろうとしていた魔導銃を持つ亜人を発見し、雪はルーサーンハンマーを手に駆け寄った。
「てめーらみてーのでも、デルギンの周りに、群れてウロウロされると、めんどー、です」
言葉と共に振りかぶり、勢いよく振り下ろす。それだけでゴブリンは魔導銃と共に叩き潰され、大地に横たわった。
雪が武器を振った後、無防備な瞬間を狙って槍を投げようとしたゴブリンがいたが、彼は突然悲鳴をあげてもんどりうった。亜人の足をカインが撃ったのだ。
「下手に殺すほうが労力を使う、まずは動けなくして頭数を減らすのが優先だ。それからゆっくりと殺せばいい」
言葉通り、彼の銃口はすぐに次のゴブリンへと向けられていた。
文太もフォールシュートで一箇所に固まっているゴブリンを狙う。しかしこのスキルは使用すると全弾を射出してしまうというシロモノだ。その間にゴブリンが距離を詰めてくると少々面倒なことになる。
「俺かて死にたくないしな、しっかり守ってくれや」
側を固める仲間に悪戯っぽく笑みを浮かべる文太。しかしすぐにまた真剣な表情になり、マテリアルを解き放つ。
彼の撃った銃弾がやがて雨となり、亜人の群れへと降り注いだ。スキルの範囲内にいたゴブリン達は悲鳴をあげる。
「道を、開けてもらうぜ!」
ジャックも前線へと飛び込み、刺突一穿で敵を刺し貫いていた。
ゴブリン達の反撃が彼へと命中するがジャックはひるまない。新たな敵へとバスタードソード「フォルティス」を手に挑みかかる。刃が一閃し、亜人は悲鳴と共に絶命した。
「クロード、生きてっかー!」
ゴブリンを難なく切り伏せ、友人に安否を問うジャック。クロードは元気な声で応えつつ、目の前の敵に得物を振るう。
しかしそんなクロードにゴブリン達がタイミングを合わせ、一斉に射撃をしかけた。いくつもの矢と銃弾が彼女を襲う。
幸い弾丸は彼女の体をかすめていくに過ぎなかったが、飛来した全ての矢は捌ききれず、二本の矢尻がクロードを抉る。痛みに歯を食いしばるクロード。逆に士気高揚し、槍を手に彼女に殺到するゴブリン達。
「そいつに近づくんじゃねぇ!!」
弾の装填を済ませた文太が激昂の叫びと共に銃のトリガーを引いた。今、彼の肌は蒼白になり、白目は黒く反転し、瞳は光を帯びていた。文太の感情の昂ぶりが、己の姿をこのように変えてしまうのだ。
彼の怒りの銃弾は一体のゴブリンを見事に撃ちぬいた。りりかも即座にクロードへとヒールを使用し、彼女の傷を癒す。仲間の援護を受けたクロードは残るゴブリンの攻撃をなんとか回避し、返す打撃でこれを沈めた。
●
戦線が動く中、りりかは倒れているゴブリンにまだ息があることに気付くと、その亜人をひっつかみ、首に剣を押し当てて囁いた。
「デルギンの主力部隊は? 貴方たちは何をしようとしてるの?」
ゴブリンは懇願の視線と共に言葉を吐き出す。しかし、それは彼らゴブリン達が使用する言語だった。このゴブリンは人語を解していないようだ。
「よそうぜ。時間が勿体ねえ」
彼女とゴブリンの間に入るように声をかけたのはクルスだ。
りりかも今は時間の無駄だと悟ったのか、手を離し、ゴブリンを解放してやや距離の離れてしまった仲間の後を追った。
クルスもほっとしているらしいゴブリンへと一瞬だけ視線を投げ、すぐにりりかと並行する。
クルスはゴブリン達相手といえど、殺生は好んでいなかった。今回、敵の動きがなにやら積極的でないということもある。可能なら生き残った亜人を殺さず捕虜にしてもらおうと、王国軍に頼んでみるつもりであった。
(別の戦場じゃ、味方になってくれた亜人もいる事だしよ。俺は聖導士だ。甘くって上等。死んだゴブリンにも、祈りくらいはまあ、いいんじゃね)
とはいえ、ゴブリン達の攻撃はまだ続いており、クルスも仲間へのバックアップを怠ることは一切なかった。
鵤は幾度目かになるデルタレイでゴブリンを屠り、カインは接近戦をしかけてきたゴブリンを盾で殴ってひるませ、ダガー「コルタール」で切り裂いてとどめをさした。淡々と武器についた血を拭うカイン。
グラズヘイム王国軍もゴブリン達へと弓による射撃を行い、少しずつ亜人の群れを打ち倒していく。最初こそ互角に思えたものの、蓋を開けてみるとあっさりとこの場での戦いは終わりを迎えた。
ハンター達、それにグラズヘイム王国軍、彼らの奮戦によりゴブリン達はやがて壊走した。クロードの見立て通り大した敵もおらず、ハンター達もそれほど大きな傷は負っていない。
未だ激昂状態にある文太は逃げていく敵の頭を目掛けて射撃を行う。対照的に、今回は深追いをするつもりがない雪が逃げていく敵をじっと見ていた。
「罠かなんかかと思ったけど、違うみてー、です。でも、なんかヤな感じ、です」
結局出てこなかったデルギン。あまり戦意も感じられなかったゴブリン達。
雪はしっくりこないという表情で呟いた。
●
「ひゅう、どーにか生き残ったか。見たとこ全員無事かね」
戦いが終わり、ジャックは組んでいた仲間のハンターの顔ぶれを見回して言った。幸い、ハンター達の中に欠ける者は一人もいない。
「一杯飲んで寝ちまいたいトコだが、どうせ次の出番も近いんだろーな」
装備品の血を拭い、損傷具合を確かめるジャック。今回のゴブリン達が本腰でなかったように見えていたのは彼も同様だった。
戦闘がひと段落した後、りりかは捕虜となったゴブリンの中で人語をかろうじて理解している者に今度こそ尋問したが、得られた答えはあまり芳しくなかった。
聞き出した話からりりかに分かったことは、彼らはただの捨て石に過ぎなかったのではないかということ……おそらく、本隊の戦力を温存させる為に。
亜人達がまだ挑んでくるというのなら、りりかもまた戦わなければならないのだろう。合戦前に、りりかが心の中で呟いたように。
「今回の戦いは単なる小競り合いって感じですネー。ということは、近々本命の決戦がありそうデス」
クロードも戦いを振り返って思う。決戦の際はきっと、デルギンとその直属の配下達も戦場に現れるだろう。
「小鬼風情が百鬼を名乗るなら……その行列を粉砕して差し上げないと、ですねえ? 草葉の陰の盟友に笑われたくないですから!」
クロードは握り拳と共に吠えた。
文太、鵤、カインらはゴブリン達の死体を一箇所に集め、燃やしていた。数が多いため、王国軍の兵士達の手も借りて。兵士達はハンター達の行動を訝しがった。
「……べぇつにぃ? 深い意味は無いっつーかぁ? ……ま、念のためよ。念のため」
協力を頼まれた王国兵がなぜそんなことをするのかと尋ねた際、鵤はこう答えた。煙に巻かれたような顔で兵士は首を捻る。
実際はゴブリンの死体がゾンビ化する可能性と、未だ未知数の茨の力を警戒してのことである。鵤は骨が燃え尽きずに残った場合も残らずそれを持ち帰り、一かけらも残さない腹積もりだ。
文太は紙巻煙草を一本くわえ、仲間の無事を喜びつつ静かに紫煙を吐き出していた。彼は気付いたように鵤に煙草を一本差し出す。銘柄は吸えればなんでもいいらしい鵤はそれを受け取って火をつける。
クルスは死んだ王国軍の兵士へと祈りを捧げ、それと同時にゴブリンの死者に対しても祈りの言葉を囁いていた。
その側に立っているのはカイン。
カインがゴブリンの死体を燃やすことを主張したのは、ただの衛生上の問題でしかなかったが……。
(なぜ亜人を殺し続けるのか、奴らを殺しても何も変わらないし、たいした経験にもならないと幾度と無く言われ続けた)
ゴブリンの死骸から上がる煙をじっと見つめ、カインは心の中で独白する。
(僕が奴らを殺しても何も変わらないただの復讐だが、だけど僕が奴らを殺せば何も変わら無くて済む人がいる、だから僕はあらゆる手段を用いて奴らを殲滅する)
クルスの祈りの言葉が続く中、カインは変わらぬ意思を新たに誓う。
ハンター達、王国軍の兵士達。
彼らの思惑がどうあろうと、それをまるで気にとめることもなく、時はある一点を目指して進みだしていた。
そう。決戦の日はすぐそこだ。
「折角、この前のお礼してやろーと思ったのに、デルギンのヤツ、居ねー、です」
先日、デルギン達との一戦で大きな傷を負わされた八城雪(ka0146)が悔しそうに呟いた。
「流石に、二度も同じ失敗はしたくねーんで、一人で無闇に突っ込むのは、止めとく、です。危ねー所に飛び込むのも、好きなんだけど、デルギン居ねーなら、意味ねー、です」
重傷を負った原因は逃げようとするデルギンを追いかけ、配下のゴブリン達から魔導銃の集中砲火を浴びたためであった。今ではその傷も完全に癒え、愛用のルーサーンハンマーを振るうのになんら支障はない。
「ギリギリ感が好きっつっても、大将首もねーとこに、好き好んで飛びこまねー、です」
言葉通り、今回は仲間達と隊列を組んで正面から挑むつもりの雪である。彼女の側には他に七人のハンターがおり、さらにその背後ではグラズヘイム王国軍の兵士達がすでに戦闘態勢を取っていた。
「平地に大量のゴブリンか。投石紐があれば楽なんだが、アレなら適当に投げて当たれば殺せるから楽なんだが。まあいい、銃で我慢しよう」
幼少時に村をゴブリンやコボルドといった亜人に滅ぼされ、それ以来ゴブリン達に憎悪を燃やし続けているハンター、カイン・マッコール(ka5336)。
「選り好みはしない、今あるものを最大限の効率で使い奴らを鏖にするそれだけだ」
彼が手にしているのはリアルブルーで作られた騎兵用の短銃身ライフル、カービン「プフェールトKT9」だ。性能はゴブリン達が持つ魔導銃とほぼ互角である。
「敵さんの思惑は分からねーが、負けて良い戦いってのは無え」
明らかに消極的な敵の動きを見、ジャック・エルギン(ka1522)は呟いた。ゴブリン達は一定の距離を取り、射撃戦に持ち込む構えのようだ。武器も魔導銃の他に投げ槍、弓を身につけているのがわかる。
「剣を抜いちまったら、後は目の前の相手に集中しようぜ」
言葉通り剣を構え、敵を睨みつけるジャック。
ここではないどこかで、戦いの音が聞こえてくる。他の場所でも人間とゴブリンとの戦いがまた始まっているようだ。
(王国北部のゴブリン騒ぎは、もはや「騒ぎ」なんてレベルじゃない。亜人と人との戦争……。どうして、こんなことになったの……? とても悲しいけど、理由を見つけて解決するためには最後まで戦わなきゃならない。死んでいった人と、亜人のためにも)
紫の瞳に悲しみを滲ませ、戦場を見つめる青山 りりか(ka4415)。法具でもある聖剣「ラストホープ」を引き抜き、バックラーも構えた。
彼女の嘆きをよそに、ゴブリン達の矢と銃弾はハンター達と王国軍に襲い掛かってきた。
●
「わらわらと……うぜぇな」
冬樹 文太(ka0124)は悪態をつきながらも、友軍であるグラズヘイム王国兵に援護射撃を依頼する。自分は前衛が敵へと近づけるよう、射撃で援護する考えだ。
ジャックはハンター達の前衛に立ってカイトシールドをかざし、降り注ぐ矢と銃弾の雨から己と仲間達を守っている。
鵤(ka3319)もその隣でやはり盾を構え、矢弾を受けていた。
「おっさんわざわざ守りに行ってやるほどお人好しじゃないもんでねぇ? そんなに守って欲しけりゃ、大人しく後ろを歩いてなさいよぉ」
ニヤニヤと人を小馬鹿にするような笑みを浮かべている鵤。
ハンター達の防壁を越え、いくつかの攻撃が彼らへと突き刺さる。魔導銃の威力はやはり侮れず、不運にも直撃を受けたハンターは痛みに顔をしかめた。
「前回の例もあるし、油断はできねえぜ」
仲間が受けた矢傷と銃創を癒すため、クルス(ka3922)はヒーリングスフィアを行使した。たちまち柔らかい光が彼から溢れ、仲間達を癒す。しかしそれを上書きせんとばかりに亜人達は遠距離攻撃を間断なく続けた。
りりかは彼らに対抗しようと前衛の仲間にプロテクションを順次使用していた。光がハンターを覆い、敵の攻撃を和らげる障壁となる。雪を狙って放たれたゴブリンの矢はりりかのスキルに威力を殺がれ、大した効果をあげることはなかった。
文太は敵の矢が降り注ぐ中、アサルトライフル「ヴォロンテAC47」を構えて狙いをつけ、トリガーを引いた。彼のスキルである遠射と制圧射撃の組み合わせによる無数の弾丸が敵の一帯を混乱させる。
それにあわせる形で鵤もデルタレイを見舞った。
宙に生まれた光の三角形の頂点から、それぞれ伸びた三条の光線が空を裂き、ゴブリン達へと襲い掛かる。亜人達が逃れる間も無くビームはその胴体を貫き、彼らの命を奪った。
「今や、行け!」
崩れた敵陣を見た文太が叫んだ。
敵の戦列が乱れた隙に、肉弾戦を主体とするハンター達が距離を詰める。
「ンー? デルギンの部隊が出てきたって聞いたんですケド。肝心の大将首が見当たりませんネー……残念。まあいいデス! この前逃がした鬱憤、彼の部下にぶつけときマス!」
クロード・N・シックス(ka4741)は烈光旋棍で飛来した矢を弾きながら首を傾げる。彼女は先日、デルギンの懐に飛び込むチャンスがありながらも、その首を挙げることが出来なかった。その時の借りをデルギンに返そうと思っていたのだが……いないのならば仕方ない。怒りのトンファーを他のゴブリンに向かって叩きつけるのみである。
「強そうなヤツは居ないみたいですネ? じゃ、skillは出し惜しみしないで使っちゃいましょうカ!」
クロードは他のゴブリンの中にも手練と呼べる猛者がいないことを見抜いた。気をつけるべき相手は魔導銃を持つゴブリンくらいであろう。
「お楽しみのParty timeデス! 大盤振舞と洒落込みますかネ!! Be right there!! ワタシの双旋棍は血に飢えてマス!! 今すぐブッ飛ばしてあげますヨ!!」
宣言通り瞬く間にゴブリンの集団に飛び込み、旋棍「光輝燦然」で華麗な一撃を見舞った。たまらず吹き飛ぶ亜人。
雪も矢を番えていたゴブリンへと己の武器を横に払い、衝撃波を放つ。予想もつかない一撃をまともに受け、仲間を巻き込んで転倒したゴブリン。
それを見て慌てて距離を取ろうとしていた魔導銃を持つ亜人を発見し、雪はルーサーンハンマーを手に駆け寄った。
「てめーらみてーのでも、デルギンの周りに、群れてウロウロされると、めんどー、です」
言葉と共に振りかぶり、勢いよく振り下ろす。それだけでゴブリンは魔導銃と共に叩き潰され、大地に横たわった。
雪が武器を振った後、無防備な瞬間を狙って槍を投げようとしたゴブリンがいたが、彼は突然悲鳴をあげてもんどりうった。亜人の足をカインが撃ったのだ。
「下手に殺すほうが労力を使う、まずは動けなくして頭数を減らすのが優先だ。それからゆっくりと殺せばいい」
言葉通り、彼の銃口はすぐに次のゴブリンへと向けられていた。
文太もフォールシュートで一箇所に固まっているゴブリンを狙う。しかしこのスキルは使用すると全弾を射出してしまうというシロモノだ。その間にゴブリンが距離を詰めてくると少々面倒なことになる。
「俺かて死にたくないしな、しっかり守ってくれや」
側を固める仲間に悪戯っぽく笑みを浮かべる文太。しかしすぐにまた真剣な表情になり、マテリアルを解き放つ。
彼の撃った銃弾がやがて雨となり、亜人の群れへと降り注いだ。スキルの範囲内にいたゴブリン達は悲鳴をあげる。
「道を、開けてもらうぜ!」
ジャックも前線へと飛び込み、刺突一穿で敵を刺し貫いていた。
ゴブリン達の反撃が彼へと命中するがジャックはひるまない。新たな敵へとバスタードソード「フォルティス」を手に挑みかかる。刃が一閃し、亜人は悲鳴と共に絶命した。
「クロード、生きてっかー!」
ゴブリンを難なく切り伏せ、友人に安否を問うジャック。クロードは元気な声で応えつつ、目の前の敵に得物を振るう。
しかしそんなクロードにゴブリン達がタイミングを合わせ、一斉に射撃をしかけた。いくつもの矢と銃弾が彼女を襲う。
幸い弾丸は彼女の体をかすめていくに過ぎなかったが、飛来した全ての矢は捌ききれず、二本の矢尻がクロードを抉る。痛みに歯を食いしばるクロード。逆に士気高揚し、槍を手に彼女に殺到するゴブリン達。
「そいつに近づくんじゃねぇ!!」
弾の装填を済ませた文太が激昂の叫びと共に銃のトリガーを引いた。今、彼の肌は蒼白になり、白目は黒く反転し、瞳は光を帯びていた。文太の感情の昂ぶりが、己の姿をこのように変えてしまうのだ。
彼の怒りの銃弾は一体のゴブリンを見事に撃ちぬいた。りりかも即座にクロードへとヒールを使用し、彼女の傷を癒す。仲間の援護を受けたクロードは残るゴブリンの攻撃をなんとか回避し、返す打撃でこれを沈めた。
●
戦線が動く中、りりかは倒れているゴブリンにまだ息があることに気付くと、その亜人をひっつかみ、首に剣を押し当てて囁いた。
「デルギンの主力部隊は? 貴方たちは何をしようとしてるの?」
ゴブリンは懇願の視線と共に言葉を吐き出す。しかし、それは彼らゴブリン達が使用する言語だった。このゴブリンは人語を解していないようだ。
「よそうぜ。時間が勿体ねえ」
彼女とゴブリンの間に入るように声をかけたのはクルスだ。
りりかも今は時間の無駄だと悟ったのか、手を離し、ゴブリンを解放してやや距離の離れてしまった仲間の後を追った。
クルスもほっとしているらしいゴブリンへと一瞬だけ視線を投げ、すぐにりりかと並行する。
クルスはゴブリン達相手といえど、殺生は好んでいなかった。今回、敵の動きがなにやら積極的でないということもある。可能なら生き残った亜人を殺さず捕虜にしてもらおうと、王国軍に頼んでみるつもりであった。
(別の戦場じゃ、味方になってくれた亜人もいる事だしよ。俺は聖導士だ。甘くって上等。死んだゴブリンにも、祈りくらいはまあ、いいんじゃね)
とはいえ、ゴブリン達の攻撃はまだ続いており、クルスも仲間へのバックアップを怠ることは一切なかった。
鵤は幾度目かになるデルタレイでゴブリンを屠り、カインは接近戦をしかけてきたゴブリンを盾で殴ってひるませ、ダガー「コルタール」で切り裂いてとどめをさした。淡々と武器についた血を拭うカイン。
グラズヘイム王国軍もゴブリン達へと弓による射撃を行い、少しずつ亜人の群れを打ち倒していく。最初こそ互角に思えたものの、蓋を開けてみるとあっさりとこの場での戦いは終わりを迎えた。
ハンター達、それにグラズヘイム王国軍、彼らの奮戦によりゴブリン達はやがて壊走した。クロードの見立て通り大した敵もおらず、ハンター達もそれほど大きな傷は負っていない。
未だ激昂状態にある文太は逃げていく敵の頭を目掛けて射撃を行う。対照的に、今回は深追いをするつもりがない雪が逃げていく敵をじっと見ていた。
「罠かなんかかと思ったけど、違うみてー、です。でも、なんかヤな感じ、です」
結局出てこなかったデルギン。あまり戦意も感じられなかったゴブリン達。
雪はしっくりこないという表情で呟いた。
●
「ひゅう、どーにか生き残ったか。見たとこ全員無事かね」
戦いが終わり、ジャックは組んでいた仲間のハンターの顔ぶれを見回して言った。幸い、ハンター達の中に欠ける者は一人もいない。
「一杯飲んで寝ちまいたいトコだが、どうせ次の出番も近いんだろーな」
装備品の血を拭い、損傷具合を確かめるジャック。今回のゴブリン達が本腰でなかったように見えていたのは彼も同様だった。
戦闘がひと段落した後、りりかは捕虜となったゴブリンの中で人語をかろうじて理解している者に今度こそ尋問したが、得られた答えはあまり芳しくなかった。
聞き出した話からりりかに分かったことは、彼らはただの捨て石に過ぎなかったのではないかということ……おそらく、本隊の戦力を温存させる為に。
亜人達がまだ挑んでくるというのなら、りりかもまた戦わなければならないのだろう。合戦前に、りりかが心の中で呟いたように。
「今回の戦いは単なる小競り合いって感じですネー。ということは、近々本命の決戦がありそうデス」
クロードも戦いを振り返って思う。決戦の際はきっと、デルギンとその直属の配下達も戦場に現れるだろう。
「小鬼風情が百鬼を名乗るなら……その行列を粉砕して差し上げないと、ですねえ? 草葉の陰の盟友に笑われたくないですから!」
クロードは握り拳と共に吠えた。
文太、鵤、カインらはゴブリン達の死体を一箇所に集め、燃やしていた。数が多いため、王国軍の兵士達の手も借りて。兵士達はハンター達の行動を訝しがった。
「……べぇつにぃ? 深い意味は無いっつーかぁ? ……ま、念のためよ。念のため」
協力を頼まれた王国兵がなぜそんなことをするのかと尋ねた際、鵤はこう答えた。煙に巻かれたような顔で兵士は首を捻る。
実際はゴブリンの死体がゾンビ化する可能性と、未だ未知数の茨の力を警戒してのことである。鵤は骨が燃え尽きずに残った場合も残らずそれを持ち帰り、一かけらも残さない腹積もりだ。
文太は紙巻煙草を一本くわえ、仲間の無事を喜びつつ静かに紫煙を吐き出していた。彼は気付いたように鵤に煙草を一本差し出す。銘柄は吸えればなんでもいいらしい鵤はそれを受け取って火をつける。
クルスは死んだ王国軍の兵士へと祈りを捧げ、それと同時にゴブリンの死者に対しても祈りの言葉を囁いていた。
その側に立っているのはカイン。
カインがゴブリンの死体を燃やすことを主張したのは、ただの衛生上の問題でしかなかったが……。
(なぜ亜人を殺し続けるのか、奴らを殺しても何も変わらないし、たいした経験にもならないと幾度と無く言われ続けた)
ゴブリンの死骸から上がる煙をじっと見つめ、カインは心の中で独白する。
(僕が奴らを殺しても何も変わらないただの復讐だが、だけど僕が奴らを殺せば何も変わら無くて済む人がいる、だから僕はあらゆる手段を用いて奴らを殲滅する)
クルスの祈りの言葉が続く中、カインは変わらぬ意思を新たに誓う。
ハンター達、王国軍の兵士達。
彼らの思惑がどうあろうと、それをまるで気にとめることもなく、時はある一点を目指して進みだしていた。
そう。決戦の日はすぐそこだ。
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相談用スレッド ジャック・エルギン(ka1522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/10/16 23:21:49 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/15 04:38:41 |