ゲスト
(ka0000)
資産家パーティーと密売人
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/19 22:00
- 完成日
- 2015/10/29 01:35
このシナリオは1日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ここは同盟領、蒸気工業都市フマーレ近くの町。
「ふうん。役者の家系で顔だちも整ってるのに、もったいないことするのね」
喫茶店のテーブルで紅茶の香りを楽しんでいたアムが神妙な顔をしていた。
「その分石工として親方から才能があると言われましたから、ちょうどいいんじゃないですかね」
言葉を受けたメイスンがすまし顔で紅茶を飲む。
どうやら彼の家系は舞台役者らしい。彼は親と同じ道を拒んで家出同然で石工職人に弟子入りしたらしい。細かった体には筋肉が付き、今ではたくましくなっている。
閑話休題。
メイスンは親方から独立を認められた時、アムやモータルたちのいるベンド商会とともにコボルドの集団から襲撃を受け一緒に戦った。ちょうど、付近の村からコボルド退治を頼まれていたハンターの到着もありメイスンの親方が犠牲になりかけただけで無事に撃退していた。
その縁もあり今後の当てもなかったメイスン、ベンド商会と行動を共にすることにした。
「アムももったいないけど……」
モータルが横からくちばしを突っ込むと、アムはこれを睨んだ。彼女は実業家の娘である。
「才能あるのに籠の中っての、大っ嫌いなの」
三人とも覚醒者であり、能力はあるといえる。
「あんたこそ普通だったんなら、普通に生きてればよかったんじゃない?」
「……ゴブリンに村を襲われた時、唯一の家族の母親が避難用荷馬車から殺意を込めて突き落とされ亡くなったんだよ。場所の取り合いでね。で、ゴブリンを村から追い払ったのが盗賊の一団。俺はそいつらに助けられて連れて行かれた。でもその盗賊は別の村を襲ってね。何人か死んだんだよ」
アムの冷やかな言葉に力なく答えるモータル。
「もう、何を信じていいのやら……」
「……ごめん」
ばつ悪くアムが謝ったところで、ベンドがやって来た。アムの付き人、バモスも一緒だ。
「よっしゃ、調べついたで」
「この間のゴブリ……取り引きで教えてもらった情報ですね?」
とりなすようにメイスンが身を乗り出して聞く。
この間とは、コボルドに襲われた時の事。
メイスンは親方から最後の指導と称して遺跡の石組を見せてもらっていた。
ベンドたちといえば、密造酒などを穏健派ゴブリンたちに売り捌くため待ち合わせ場所に向かっているところだった。
コボルドとの戦闘後、ゴブリンたちとは無事に合流。大いに取引をしてほぼ持ち寄ったものを総取り替えという……いわばいつものお決まりのやり取りをした。毎回ベンドが大儲けしているのだが。
今回はそれとなくさらに吹っ掛け、地域の情報も入手していた。
「山中で地元住民じゃない奴らが道づくりをしとるのが危ないらしいっちゅうのじゃが……これ、鉱山開発らしくての。上手くいけば莫大な富を生むらしい。一枚かんどくで」
「……危ないんじゃないんですか?」
「危ないところにうまい話が……」
「誰かのために、危ない橋を渡る」
疑問に思ったメイスンの言葉にベンドが答え、横から力強くモータルが言い切った。アムはため息をついているが。
「とにかく、鉱山開発者の名はグリス・オム。鉱山に近い村の資産家や。これを山師のノーザン・ウエストが焚き付けたらしい。グリスは新規事業のためこっちの小高い丘に結構な豪邸を建てて、そこで取引先を集めてパーティーをするらしいで。……アム、これに新たな商会名で潜り込んでくれんか?」
さすがにワシは行けんし商会の名前も出せへん、とベンド。
「分かってるじゃない。この私に任せといて!」
アム、喜んで引き受ける。
こうしてアムを代表とする「アマリリス商会」として着飾り、パーティーに参加することになった。
「やることはたくさんの人と会って、『アマリリス商会』を覚えてもらうことよ。鉱山開発ならメイスンは石工の立場を生かして好感度を上げて。モータルは……ハンター並みの能力のある常在戦力をアピールして。後はハンターを雇ってとにかく手広く挨拶よ。『アマリリス商会』、一気にのし上がるわよ!」
アム、水を得た魚である。
というわけで、アマリリス商会の一員として夕方のオム邸屋外で催されるパーティーに出席し飲食歓談や社交ダンスなどして幅広く好感度を上げてもらえる人材、求ム。
ここは同盟領、蒸気工業都市フマーレ近くの町。
「ふうん。役者の家系で顔だちも整ってるのに、もったいないことするのね」
喫茶店のテーブルで紅茶の香りを楽しんでいたアムが神妙な顔をしていた。
「その分石工として親方から才能があると言われましたから、ちょうどいいんじゃないですかね」
言葉を受けたメイスンがすまし顔で紅茶を飲む。
どうやら彼の家系は舞台役者らしい。彼は親と同じ道を拒んで家出同然で石工職人に弟子入りしたらしい。細かった体には筋肉が付き、今ではたくましくなっている。
閑話休題。
メイスンは親方から独立を認められた時、アムやモータルたちのいるベンド商会とともにコボルドの集団から襲撃を受け一緒に戦った。ちょうど、付近の村からコボルド退治を頼まれていたハンターの到着もありメイスンの親方が犠牲になりかけただけで無事に撃退していた。
その縁もあり今後の当てもなかったメイスン、ベンド商会と行動を共にすることにした。
「アムももったいないけど……」
モータルが横からくちばしを突っ込むと、アムはこれを睨んだ。彼女は実業家の娘である。
「才能あるのに籠の中っての、大っ嫌いなの」
三人とも覚醒者であり、能力はあるといえる。
「あんたこそ普通だったんなら、普通に生きてればよかったんじゃない?」
「……ゴブリンに村を襲われた時、唯一の家族の母親が避難用荷馬車から殺意を込めて突き落とされ亡くなったんだよ。場所の取り合いでね。で、ゴブリンを村から追い払ったのが盗賊の一団。俺はそいつらに助けられて連れて行かれた。でもその盗賊は別の村を襲ってね。何人か死んだんだよ」
アムの冷やかな言葉に力なく答えるモータル。
「もう、何を信じていいのやら……」
「……ごめん」
ばつ悪くアムが謝ったところで、ベンドがやって来た。アムの付き人、バモスも一緒だ。
「よっしゃ、調べついたで」
「この間のゴブリ……取り引きで教えてもらった情報ですね?」
とりなすようにメイスンが身を乗り出して聞く。
この間とは、コボルドに襲われた時の事。
メイスンは親方から最後の指導と称して遺跡の石組を見せてもらっていた。
ベンドたちといえば、密造酒などを穏健派ゴブリンたちに売り捌くため待ち合わせ場所に向かっているところだった。
コボルドとの戦闘後、ゴブリンたちとは無事に合流。大いに取引をしてほぼ持ち寄ったものを総取り替えという……いわばいつものお決まりのやり取りをした。毎回ベンドが大儲けしているのだが。
今回はそれとなくさらに吹っ掛け、地域の情報も入手していた。
「山中で地元住民じゃない奴らが道づくりをしとるのが危ないらしいっちゅうのじゃが……これ、鉱山開発らしくての。上手くいけば莫大な富を生むらしい。一枚かんどくで」
「……危ないんじゃないんですか?」
「危ないところにうまい話が……」
「誰かのために、危ない橋を渡る」
疑問に思ったメイスンの言葉にベンドが答え、横から力強くモータルが言い切った。アムはため息をついているが。
「とにかく、鉱山開発者の名はグリス・オム。鉱山に近い村の資産家や。これを山師のノーザン・ウエストが焚き付けたらしい。グリスは新規事業のためこっちの小高い丘に結構な豪邸を建てて、そこで取引先を集めてパーティーをするらしいで。……アム、これに新たな商会名で潜り込んでくれんか?」
さすがにワシは行けんし商会の名前も出せへん、とベンド。
「分かってるじゃない。この私に任せといて!」
アム、喜んで引き受ける。
こうしてアムを代表とする「アマリリス商会」として着飾り、パーティーに参加することになった。
「やることはたくさんの人と会って、『アマリリス商会』を覚えてもらうことよ。鉱山開発ならメイスンは石工の立場を生かして好感度を上げて。モータルは……ハンター並みの能力のある常在戦力をアピールして。後はハンターを雇ってとにかく手広く挨拶よ。『アマリリス商会』、一気にのし上がるわよ!」
アム、水を得た魚である。
というわけで、アマリリス商会の一員として夕方のオム邸屋外で催されるパーティーに出席し飲食歓談や社交ダンスなどして幅広く好感度を上げてもらえる人材、求ム。
リプレイ本文
●
「ふうっ」
アムがにぎわう庭の隅に用意された椅子にどさりと座り込みながら息を吐いた。
夕方から始まったグリス・オムの屋敷でのパーティーは始まったばかり。来場者たちは大いに歓談している。
半面、彼女らも輪に加わったが後回しにされた様子。
「何かきっかけが欲しいわね」
アム、唇をかむ。
「失礼しますわ」
ここでフリルをふんだんにあしらった、花のようなドレスを纏った娘が立った。
「私、エレンジア・アーヴァインと申します。実家が商家をしておりまして……」
エレンジア・アーヴァイン(ka5584)である。
「用意をお願いしたもの、ありますかしら?」
「この時期にアマリリスは咲いてないので造花を手配しました」
バモス、花がユリのように横に向いた小さな造花を手渡した。
「シンボルとして印象付けますわ。数があるだけ皆さんも活用くださいませ」
口先に花を近付けて微笑し、エレンジアは人の集まる中へと向かっていった。
「そう。印象は大切」
アムたちの見送る横に、そう言いながら立つ姿が。
先の華やかなドレスと違い、暗い青を基調とした怪しい雰囲気を漂わせるドレス姿の女性だ。
ルシェン・グライシス(ka5745)である。バモスからアマリリスの造花を受け取った。
「アマリリス商会として自信を持って提供できるものがあれば、ご納得させてみせるわよ?」
花に頬を寄せながら、にまり。
「おそらく、ここの業者の誰もがこの良さに気付かないと思うけど……」
アムの合図でバモスが取り出したのは、無骨な陶器に入った安酒だった。
ルシェン、ちょっと味見して眉を顰めた。
「確かに。でもこのくらいがやりやすいかしらね」
酒を受け取るとざわめきへと向かっていく。
「ボクにも一輪くれるかな?」
続けて墨城 緋景(ka5753)がやって来た。折り目正しい衣装をしっかり着込んでいる。
バモスから造花を受け取ると胸ポケットに刺した。
「酒の売り込みはボクもやってみよう。ほかに商品は?」
「ないわ。情報を仕入れて、何とか食い込む隙を探すの」
アムに聞くと首を振られた。よその業者と比較し、この時点で優位性があり赤字にならない取引商品は田舎村からこっそり仕入れている密造酒だけだ。
「それなら別の方法を探ってみる」
緋景、特に気にせず酒の小瓶を持って歓談する輪の中へと消えて行った。
●
それからしばらくして、パーティー序盤のざわめきが収まってきた。
「お初にお目にかかる」
苦戦して再び元の場所に戻ったアムたちの元に、新たな人影が。
振り返ると、バルーンスリープの肩を下げ肘で腕を曲げ恭しく礼をする女性がいた。
「クルセイダーのエメラルドだ。パーティーに慣れているというわけではないが、よろしく頼みたい」
エメラルド・シルフィユ(ka4678)だ。
「……」
アムたち、やや返答に困っている。というのも、エメラルドの格好が格好だから。
そこへ新たな人影。
「あ、サクラさん」
「こ、この格好は流石に……。で、ですが依頼のため頑張ります…」
モータルの声で皆がサクラ・エルフリード(ka2598)だと気付いた。いつもの鎧を着込んだ騎士姿ではなく、ルシェンと同じようなドレス「ナイトスカイ」を纏っている。
おや。
サクラ、妙に背中の方を気にしているぞ?
「……その、違和感があるんですが…」
「どれ?」
エメラルド、背後を見てやる。サクラの方は頬を染めてうつむきつつ、そわそわした視線を背後に流す。
「髪が背中をくすぐってるようで……」
「これだけ背中が開いたドレスだとそうだろう。……違和感があるなら、こういうのが普通だと思い込むのがいいだろう」
サクラに肌の露出が多い衣装を着ているときの心得を話すエメラルド。
「……」
ここで周りの視線に気付いたぞ?
「はっ。……わ、私のこの衣装は聖堂教会の信徒としてだなぁ」
エメラルドの衣装はビキニアーマーに申し訳程度にひらひらと布地があるだけの非常に肌の露出が多いドレスだった。
ここでどこからか、ととと……、と軽快な鼓の音が響いた。
会場の一角でビキニ水着のような踊り子衣装に身を包んだ女性が舞い始めたようだ。
「……」
アムたちの無言の視線は再びエメラルドに。
「べ、別に踊るわけではない!」
一同の無言の視線にそう答えるエメラルド。
「とにかく普通と思い込むことですね…」
サクラの方はエメラルドの教えを胸に諦めの境地。
この時。
「こ、こげんばり豪華な場所に、招いてもらって感謝ばい♪」
小柄な体で長い黒髪とふわふわ広がったエンジェルドレスを左右に振りつつ、七窪 小鈴(ka0811)がやって来た。とても嬉しそうで、動く姿からもそれが伝わってくるよう。
おや。
その動きが止まったぞ?
しかも周りを見て急に肩を落とし太めの眉がへにょ、と八の字になった。
「……べっぴんしゃんが多かねぇー。ウチ、浮いてなかやろか……」
そわ、ぱた、と自分の衣装を押さえたり髪に手を当て押さえたりする。
「大丈夫。小鈴さん、浮いてないよ」
言ったのは、後ろからついて来ていた天竜寺 詩(ka0396)。
「詩しゃん……感謝ばい。詩しゃんのおかげでウチ、落ち着いたとよ」
「わあ……」
小鈴の言葉に釣られ、モータルたちのため息が漏れた。
詩、視線を一身に浴びてはにかんだ。
「ほら、どうかな?」
期待に応えるように、髪をアップにしてさらした耳を指先で撫で、上目遣い。
着物を着て白粉を塗り、うなじを無防備にした姿で身をよじる。
「『桃割れ』っていうんだ。この髪型。……どう、モータル君。こんな格好久し振り♪」
「あ、うん。……とても素敵だよ、詩さん」
いつもと違う詩の淑やかな姿に、モータルはすっかりしどろもどろに。
この時、仲間からの合図があった。
●
時は若干遡る。
グリス・オムは会場の中心にいた。周りで多くの人が耳を傾けている。
「鉱山はフマーレに近いことが最大の優位点。工員の街を作ったが製鉄機能はありません。発掘に専念させることで回転率を上げていきます」
大柄なグリスの説明に、周りから非難の声が挙がった。
「それは少し乱暴では?」
「発掘も手間がかかりますが製鉄も大変な作業のはず。それをしないなんて……」
「しばし!」
横から小柄な男が出てきた。
「時代は今、鉄を求めています。CAMしかり、魔導トラックしかり。急速に機械化が進んでいます。それに対応するにはとにかく『出る』ことと、『素早く届ける』ことが肝要なんです」
山師のノーザン・ウエストである。
「製鉄を抜きにすることで、皆さんに莫大な富が回る余地を作っているとも言います。この鉱山は、皆さんとともにあるのです」
グリスの演説に、おおー、と歓声が上がり拍手がわいた。
おっと。エレンジア、ここにいた。
そして勝負を仕掛ける!
「まぁ! そうなんですの! すごいですわ!」
男性ばかりの輪の外から、女性の声で褒め殺しに入った。エレンジアの前で輪を作る人たちは振り返り、道ができた。
そこをエレンジアが通り前に出る。
「私、エレンジア・アーヴァインと申します」
進み出ながら造花を目の高さに掲げた。
「アマリリス商会の者です。周りの皆さんとともに、とは素晴らしいお気持ちですわ。でも……辛い作業を日々なさる人たちはどうでしょう?」
現場はどうかの問いに、ぐ、と周りが詰まった。
ここには大きな枠組みで商いをする者しかいない。そういう場だ。
「娘さん、今は娘さんのような子供が……」
「実家が商家をしておりましてよ。それに今はアマリリス商会の一員」
子供は下がれと言外に言われるが、引かない。ここが勝負。
理由は現場たたき上げの若い鉱山技師、ハミル・タグが真剣な眼差しをしていたから。
しかし、彼女のために開けられた空間は閉じようとしていた。
その直前。
「エレンジア君、これを」
緋景が背後から近付き何かを渡した。
「これがアマリリス商会の商品。鉱山で働く人のために、ぜひご検討を……」
弾かれるまさにその瞬間、緋景から渡された小瓶のいくつかを持ち手を伸ばした。
すでに人波に挟まれて手の先は見えなかったが、確かに感じた。
ふっ、と軽くなったことを。
誰かがそれを受け取ってくれたのだ。
人の壁は完全に閉じ、外の弾かれた彼女の腕も出てきた。
伸ばした手に、酒の小瓶はない。
その頃、ルシェンは別の場所に。
「こちらが我が商会が自信を持って提供するものですわ、一杯だけでもご賞味頂けますか?」
談笑の輪に加わり、手にしていた無骨な陶器から酒を注いで回った。
すでにルシェン、会話に加わった時の愛想のよい微笑はない。色っぽさの中にある瞳は勝負師の視線である。
「ぶっ!」
「ぐっ!」
試飲した人が立て続けにむせた。ざわ、と周りの空気が変わる。
「何だ、この安酒は」
「それにしてもひどい。芳醇さも上品さもない。あるのは下品な酒臭さと刺激だけだ」
酷い言われようである。
が、ルシェン、ひるまない。
すでに「自信を持って」と言い切っている。引くわけにはいかない。
「それだけ、かしら?」
色っぽく胸を張って挑戦的に応じた。引く気はない。
「まあ、甘味がないぶん飲んだ後はさっぱりする。でもこの苦みはなぁ……」
「我々の集まるこういう場にそぐわない酒であることは間違いない」
「そう、それですわ」
得たり、とルシェンは声を張った。
「この場で美味しくいただいてもらうなら別の酒を用意しますわ。この酒は甘みなぞ必要のない、ひたすら作業に打ち込む男たちのための現場のお酒」
瞬間、黒い薔薇の花弁の様な形をしたマテリアルが身に纏うように現れた。
妖艶で、それでいて世の暗い部分を強調するように。
「なるほど、面白い。……確かにここの来る業者は気取った酒ばかりを持ってきたな」
どうやら現場を知る業者らがこの酒の価値に気付いた。
かなりリスクを背負った行動だったが、まずは見栄を張りたいだけの商人とは実務優先の面で違いを見せることに成功した。
●
ただ、まだ印象度が足りない。
三人は頑張ったが、それは一部に印象を残しただけの事。このままでは忘れ去られてしまう。
それを感じた緋景、どこかで、ととと……という太鼓の音を聞いた。
頃合いだ、と仲間を見た。
すでに準備はできているようだ。
「それじゃ注目~。アマリリスの様に美しく、たおやかでそんな綺麗な女性が居るよ」
ひときわ大きな声を上げた。
これを合図に、詩、小鈴、サクラ、エメラルドが庭の端から中央に出てきた。
「あまり人前でやるのは恥ずかしいので嫌なのですが…今はそうも言ってられませんし覚悟を決めます……」
サクラが控えめに言いつつ、ハープを爪弾いた。
場が期待に静まる。
皆に受け入れられた証拠だ。ほっとするサクラ。もう背中がすーすーするのも気にならない。笑われなかった安心感が背中を押す。
爪弾くモティーフに、前に出た詩の声が乗った。
♪
こちのお屋敷 祝いの宴 始まりの席
妖精、パルムが 舞い遊ぶ
♪
あるいは、リアルブルーのどこぞの地方の人が聴いたらピンと来たかもしれない。
いや、それだけではない。
歌詞は変わっているが、祝いめでたい華やかさは詩の異国情緒あふれるハレの衣装とともにしっかりとここの世界の人にも伝わっている。
「ほう」
証拠に、遠くでグリス氏が目を止め耳を澄ましている。
♪
奥のお山で 鉱脈掘れば 鉱脈掘れば
岩は鋼鉄 富がわく
♪
2番の歌声で会場から拍手が響いた。事業を前に縁起が良いと皆が頷く。
歌い終えた詩はその後、三味線を構えた。
「次は東洋の伝統楽器、三味線の演奏をします」
一転、津軽系の激しいばちさばき。
「ウチ、のってきたばい」
おっと。
小鈴がドレスの裾をひらめかせステップ・イン。そのまま激しいリズムに合わせ激しく踊る。見守る人の手拍子も曲に合わせて速くなる。小鈴の上げた顔は生き生きとして、後ろで束ねた黒い長髪が跳ねる。
ここに知るものはほぼいないが、小鈴が舞っているのは神楽舞の一種で、儀式舞。
実は小鈴、基本しか習っていない。
詩の三味線のリズムに導かれ、本能のままに踊っている。だからむしろ、形に合わそうと舞うより見る人の目を引いた。いわば、喜びの体現。
が、さすがに激しぎる。疲弊した小鈴が少しよろけた。
「いかん」
気付いたエメラルド、サクラを見た。
サクラ、頷き詩を見る。
「分かったよ」
詩のばちが緩やかに。
入れ替わりに緩やかなハープが響く。
「メインですが、何とか……」
不安を吹き払うようにサクラが爪弾く。
「よろしければ私と踊って頂けますか?」
ここ一番の場面で、エメラルドの良く通る声が渡った。
なんと、グリムを誘った!
「これは。……では、少しだけ」
気分が良かったのだろう。エメラルドの誘いを受けたグリム。ダンディズムあふれるリードでエメラルドと少し社交ダンスを踊るのだった。
庭に流れるサクラのハープ。
ほかの者もダンスに高じた。
●
時は経過し、宴は静かに終わりを迎えようとしていた。
「アマリリス商会をよろしくお願いします……って、どこを見ているんですか…」
男性たちに囲まれ背中をよじるサクラ。アマリリス印の名刺をたくさん配れたのは収穫だ。
「なあぁ! ……の、飲み物はまだあるけん、平気ばい。き、気遣い感謝とよ」
小鈴も男性客の背後からの奇襲……というか、好意を受けていたり。
「いや、素敵なダンスだったからねぎらいに、と」
「ウチお酒はいっちょん飲めんとよ。ジュースかお茶あるかや?」
小鈴、喜ぶ。
「これは失礼」
慌ててジュースを取りに行く男。
「……東方ゆー場所で、神楽舞の本探そうかな」
そんな呟きとともに見送る小鈴だった。
一方、うまく付き合う姿も。
「うん。お上手」
詩は扇を投げる遊びでもてなし中。もちろん着物姿のままで喜ばれている。
こちらはエメラルド。
「わ、私か? 聖堂教会の信徒だが……」
「ほう。神頼みしたいこともあるのだが」
どうやら物資運搬時に狼に襲われないか心配らしい。
「それは興味深いお話ですわ、よければお話し願えると嬉しいですわ」
エレンジアがやって来て詳しい話を聴くと、群れのテリトリーにあるらしい。
「可愛い子を見逃すなんて神が許しても私の欲望が許さなくてよ?」
ルシェンは別の場所で、どこかの商人に連れられたかわいい踊り子の手を取り妖しく微笑。暗がりに連れ込み少々いぢわるして「現地で謎の巨人が出る」という噂を聞き出した。
そして、緋影。
「ボク達はお酒一本で来たんだけどそっちの業界はよくわからないんだ。教えてくれる?」
妙に固まった一団に突っかかると、すでに異業種間での結束がありそうなことを感じた。
「ふぅん、なるほど」
宴の後、皆から話を聞いたアムは満足そうにしつつ考えを巡らすのだった。
「ふうっ」
アムがにぎわう庭の隅に用意された椅子にどさりと座り込みながら息を吐いた。
夕方から始まったグリス・オムの屋敷でのパーティーは始まったばかり。来場者たちは大いに歓談している。
半面、彼女らも輪に加わったが後回しにされた様子。
「何かきっかけが欲しいわね」
アム、唇をかむ。
「失礼しますわ」
ここでフリルをふんだんにあしらった、花のようなドレスを纏った娘が立った。
「私、エレンジア・アーヴァインと申します。実家が商家をしておりまして……」
エレンジア・アーヴァイン(ka5584)である。
「用意をお願いしたもの、ありますかしら?」
「この時期にアマリリスは咲いてないので造花を手配しました」
バモス、花がユリのように横に向いた小さな造花を手渡した。
「シンボルとして印象付けますわ。数があるだけ皆さんも活用くださいませ」
口先に花を近付けて微笑し、エレンジアは人の集まる中へと向かっていった。
「そう。印象は大切」
アムたちの見送る横に、そう言いながら立つ姿が。
先の華やかなドレスと違い、暗い青を基調とした怪しい雰囲気を漂わせるドレス姿の女性だ。
ルシェン・グライシス(ka5745)である。バモスからアマリリスの造花を受け取った。
「アマリリス商会として自信を持って提供できるものがあれば、ご納得させてみせるわよ?」
花に頬を寄せながら、にまり。
「おそらく、ここの業者の誰もがこの良さに気付かないと思うけど……」
アムの合図でバモスが取り出したのは、無骨な陶器に入った安酒だった。
ルシェン、ちょっと味見して眉を顰めた。
「確かに。でもこのくらいがやりやすいかしらね」
酒を受け取るとざわめきへと向かっていく。
「ボクにも一輪くれるかな?」
続けて墨城 緋景(ka5753)がやって来た。折り目正しい衣装をしっかり着込んでいる。
バモスから造花を受け取ると胸ポケットに刺した。
「酒の売り込みはボクもやってみよう。ほかに商品は?」
「ないわ。情報を仕入れて、何とか食い込む隙を探すの」
アムに聞くと首を振られた。よその業者と比較し、この時点で優位性があり赤字にならない取引商品は田舎村からこっそり仕入れている密造酒だけだ。
「それなら別の方法を探ってみる」
緋景、特に気にせず酒の小瓶を持って歓談する輪の中へと消えて行った。
●
それからしばらくして、パーティー序盤のざわめきが収まってきた。
「お初にお目にかかる」
苦戦して再び元の場所に戻ったアムたちの元に、新たな人影が。
振り返ると、バルーンスリープの肩を下げ肘で腕を曲げ恭しく礼をする女性がいた。
「クルセイダーのエメラルドだ。パーティーに慣れているというわけではないが、よろしく頼みたい」
エメラルド・シルフィユ(ka4678)だ。
「……」
アムたち、やや返答に困っている。というのも、エメラルドの格好が格好だから。
そこへ新たな人影。
「あ、サクラさん」
「こ、この格好は流石に……。で、ですが依頼のため頑張ります…」
モータルの声で皆がサクラ・エルフリード(ka2598)だと気付いた。いつもの鎧を着込んだ騎士姿ではなく、ルシェンと同じようなドレス「ナイトスカイ」を纏っている。
おや。
サクラ、妙に背中の方を気にしているぞ?
「……その、違和感があるんですが…」
「どれ?」
エメラルド、背後を見てやる。サクラの方は頬を染めてうつむきつつ、そわそわした視線を背後に流す。
「髪が背中をくすぐってるようで……」
「これだけ背中が開いたドレスだとそうだろう。……違和感があるなら、こういうのが普通だと思い込むのがいいだろう」
サクラに肌の露出が多い衣装を着ているときの心得を話すエメラルド。
「……」
ここで周りの視線に気付いたぞ?
「はっ。……わ、私のこの衣装は聖堂教会の信徒としてだなぁ」
エメラルドの衣装はビキニアーマーに申し訳程度にひらひらと布地があるだけの非常に肌の露出が多いドレスだった。
ここでどこからか、ととと……、と軽快な鼓の音が響いた。
会場の一角でビキニ水着のような踊り子衣装に身を包んだ女性が舞い始めたようだ。
「……」
アムたちの無言の視線は再びエメラルドに。
「べ、別に踊るわけではない!」
一同の無言の視線にそう答えるエメラルド。
「とにかく普通と思い込むことですね…」
サクラの方はエメラルドの教えを胸に諦めの境地。
この時。
「こ、こげんばり豪華な場所に、招いてもらって感謝ばい♪」
小柄な体で長い黒髪とふわふわ広がったエンジェルドレスを左右に振りつつ、七窪 小鈴(ka0811)がやって来た。とても嬉しそうで、動く姿からもそれが伝わってくるよう。
おや。
その動きが止まったぞ?
しかも周りを見て急に肩を落とし太めの眉がへにょ、と八の字になった。
「……べっぴんしゃんが多かねぇー。ウチ、浮いてなかやろか……」
そわ、ぱた、と自分の衣装を押さえたり髪に手を当て押さえたりする。
「大丈夫。小鈴さん、浮いてないよ」
言ったのは、後ろからついて来ていた天竜寺 詩(ka0396)。
「詩しゃん……感謝ばい。詩しゃんのおかげでウチ、落ち着いたとよ」
「わあ……」
小鈴の言葉に釣られ、モータルたちのため息が漏れた。
詩、視線を一身に浴びてはにかんだ。
「ほら、どうかな?」
期待に応えるように、髪をアップにしてさらした耳を指先で撫で、上目遣い。
着物を着て白粉を塗り、うなじを無防備にした姿で身をよじる。
「『桃割れ』っていうんだ。この髪型。……どう、モータル君。こんな格好久し振り♪」
「あ、うん。……とても素敵だよ、詩さん」
いつもと違う詩の淑やかな姿に、モータルはすっかりしどろもどろに。
この時、仲間からの合図があった。
●
時は若干遡る。
グリス・オムは会場の中心にいた。周りで多くの人が耳を傾けている。
「鉱山はフマーレに近いことが最大の優位点。工員の街を作ったが製鉄機能はありません。発掘に専念させることで回転率を上げていきます」
大柄なグリスの説明に、周りから非難の声が挙がった。
「それは少し乱暴では?」
「発掘も手間がかかりますが製鉄も大変な作業のはず。それをしないなんて……」
「しばし!」
横から小柄な男が出てきた。
「時代は今、鉄を求めています。CAMしかり、魔導トラックしかり。急速に機械化が進んでいます。それに対応するにはとにかく『出る』ことと、『素早く届ける』ことが肝要なんです」
山師のノーザン・ウエストである。
「製鉄を抜きにすることで、皆さんに莫大な富が回る余地を作っているとも言います。この鉱山は、皆さんとともにあるのです」
グリスの演説に、おおー、と歓声が上がり拍手がわいた。
おっと。エレンジア、ここにいた。
そして勝負を仕掛ける!
「まぁ! そうなんですの! すごいですわ!」
男性ばかりの輪の外から、女性の声で褒め殺しに入った。エレンジアの前で輪を作る人たちは振り返り、道ができた。
そこをエレンジアが通り前に出る。
「私、エレンジア・アーヴァインと申します」
進み出ながら造花を目の高さに掲げた。
「アマリリス商会の者です。周りの皆さんとともに、とは素晴らしいお気持ちですわ。でも……辛い作業を日々なさる人たちはどうでしょう?」
現場はどうかの問いに、ぐ、と周りが詰まった。
ここには大きな枠組みで商いをする者しかいない。そういう場だ。
「娘さん、今は娘さんのような子供が……」
「実家が商家をしておりましてよ。それに今はアマリリス商会の一員」
子供は下がれと言外に言われるが、引かない。ここが勝負。
理由は現場たたき上げの若い鉱山技師、ハミル・タグが真剣な眼差しをしていたから。
しかし、彼女のために開けられた空間は閉じようとしていた。
その直前。
「エレンジア君、これを」
緋景が背後から近付き何かを渡した。
「これがアマリリス商会の商品。鉱山で働く人のために、ぜひご検討を……」
弾かれるまさにその瞬間、緋景から渡された小瓶のいくつかを持ち手を伸ばした。
すでに人波に挟まれて手の先は見えなかったが、確かに感じた。
ふっ、と軽くなったことを。
誰かがそれを受け取ってくれたのだ。
人の壁は完全に閉じ、外の弾かれた彼女の腕も出てきた。
伸ばした手に、酒の小瓶はない。
その頃、ルシェンは別の場所に。
「こちらが我が商会が自信を持って提供するものですわ、一杯だけでもご賞味頂けますか?」
談笑の輪に加わり、手にしていた無骨な陶器から酒を注いで回った。
すでにルシェン、会話に加わった時の愛想のよい微笑はない。色っぽさの中にある瞳は勝負師の視線である。
「ぶっ!」
「ぐっ!」
試飲した人が立て続けにむせた。ざわ、と周りの空気が変わる。
「何だ、この安酒は」
「それにしてもひどい。芳醇さも上品さもない。あるのは下品な酒臭さと刺激だけだ」
酷い言われようである。
が、ルシェン、ひるまない。
すでに「自信を持って」と言い切っている。引くわけにはいかない。
「それだけ、かしら?」
色っぽく胸を張って挑戦的に応じた。引く気はない。
「まあ、甘味がないぶん飲んだ後はさっぱりする。でもこの苦みはなぁ……」
「我々の集まるこういう場にそぐわない酒であることは間違いない」
「そう、それですわ」
得たり、とルシェンは声を張った。
「この場で美味しくいただいてもらうなら別の酒を用意しますわ。この酒は甘みなぞ必要のない、ひたすら作業に打ち込む男たちのための現場のお酒」
瞬間、黒い薔薇の花弁の様な形をしたマテリアルが身に纏うように現れた。
妖艶で、それでいて世の暗い部分を強調するように。
「なるほど、面白い。……確かにここの来る業者は気取った酒ばかりを持ってきたな」
どうやら現場を知る業者らがこの酒の価値に気付いた。
かなりリスクを背負った行動だったが、まずは見栄を張りたいだけの商人とは実務優先の面で違いを見せることに成功した。
●
ただ、まだ印象度が足りない。
三人は頑張ったが、それは一部に印象を残しただけの事。このままでは忘れ去られてしまう。
それを感じた緋景、どこかで、ととと……という太鼓の音を聞いた。
頃合いだ、と仲間を見た。
すでに準備はできているようだ。
「それじゃ注目~。アマリリスの様に美しく、たおやかでそんな綺麗な女性が居るよ」
ひときわ大きな声を上げた。
これを合図に、詩、小鈴、サクラ、エメラルドが庭の端から中央に出てきた。
「あまり人前でやるのは恥ずかしいので嫌なのですが…今はそうも言ってられませんし覚悟を決めます……」
サクラが控えめに言いつつ、ハープを爪弾いた。
場が期待に静まる。
皆に受け入れられた証拠だ。ほっとするサクラ。もう背中がすーすーするのも気にならない。笑われなかった安心感が背中を押す。
爪弾くモティーフに、前に出た詩の声が乗った。
♪
こちのお屋敷 祝いの宴 始まりの席
妖精、パルムが 舞い遊ぶ
♪
あるいは、リアルブルーのどこぞの地方の人が聴いたらピンと来たかもしれない。
いや、それだけではない。
歌詞は変わっているが、祝いめでたい華やかさは詩の異国情緒あふれるハレの衣装とともにしっかりとここの世界の人にも伝わっている。
「ほう」
証拠に、遠くでグリス氏が目を止め耳を澄ましている。
♪
奥のお山で 鉱脈掘れば 鉱脈掘れば
岩は鋼鉄 富がわく
♪
2番の歌声で会場から拍手が響いた。事業を前に縁起が良いと皆が頷く。
歌い終えた詩はその後、三味線を構えた。
「次は東洋の伝統楽器、三味線の演奏をします」
一転、津軽系の激しいばちさばき。
「ウチ、のってきたばい」
おっと。
小鈴がドレスの裾をひらめかせステップ・イン。そのまま激しいリズムに合わせ激しく踊る。見守る人の手拍子も曲に合わせて速くなる。小鈴の上げた顔は生き生きとして、後ろで束ねた黒い長髪が跳ねる。
ここに知るものはほぼいないが、小鈴が舞っているのは神楽舞の一種で、儀式舞。
実は小鈴、基本しか習っていない。
詩の三味線のリズムに導かれ、本能のままに踊っている。だからむしろ、形に合わそうと舞うより見る人の目を引いた。いわば、喜びの体現。
が、さすがに激しぎる。疲弊した小鈴が少しよろけた。
「いかん」
気付いたエメラルド、サクラを見た。
サクラ、頷き詩を見る。
「分かったよ」
詩のばちが緩やかに。
入れ替わりに緩やかなハープが響く。
「メインですが、何とか……」
不安を吹き払うようにサクラが爪弾く。
「よろしければ私と踊って頂けますか?」
ここ一番の場面で、エメラルドの良く通る声が渡った。
なんと、グリムを誘った!
「これは。……では、少しだけ」
気分が良かったのだろう。エメラルドの誘いを受けたグリム。ダンディズムあふれるリードでエメラルドと少し社交ダンスを踊るのだった。
庭に流れるサクラのハープ。
ほかの者もダンスに高じた。
●
時は経過し、宴は静かに終わりを迎えようとしていた。
「アマリリス商会をよろしくお願いします……って、どこを見ているんですか…」
男性たちに囲まれ背中をよじるサクラ。アマリリス印の名刺をたくさん配れたのは収穫だ。
「なあぁ! ……の、飲み物はまだあるけん、平気ばい。き、気遣い感謝とよ」
小鈴も男性客の背後からの奇襲……というか、好意を受けていたり。
「いや、素敵なダンスだったからねぎらいに、と」
「ウチお酒はいっちょん飲めんとよ。ジュースかお茶あるかや?」
小鈴、喜ぶ。
「これは失礼」
慌ててジュースを取りに行く男。
「……東方ゆー場所で、神楽舞の本探そうかな」
そんな呟きとともに見送る小鈴だった。
一方、うまく付き合う姿も。
「うん。お上手」
詩は扇を投げる遊びでもてなし中。もちろん着物姿のままで喜ばれている。
こちらはエメラルド。
「わ、私か? 聖堂教会の信徒だが……」
「ほう。神頼みしたいこともあるのだが」
どうやら物資運搬時に狼に襲われないか心配らしい。
「それは興味深いお話ですわ、よければお話し願えると嬉しいですわ」
エレンジアがやって来て詳しい話を聴くと、群れのテリトリーにあるらしい。
「可愛い子を見逃すなんて神が許しても私の欲望が許さなくてよ?」
ルシェンは別の場所で、どこかの商人に連れられたかわいい踊り子の手を取り妖しく微笑。暗がりに連れ込み少々いぢわるして「現地で謎の巨人が出る」という噂を聞き出した。
そして、緋影。
「ボク達はお酒一本で来たんだけどそっちの業界はよくわからないんだ。教えてくれる?」
妙に固まった一団に突っかかると、すでに異業種間での結束がありそうなことを感じた。
「ふぅん、なるほど」
宴の後、皆から話を聞いたアムは満足そうにしつつ考えを巡らすのだった。
依頼結果
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ルシェン・グライシス(ka5745)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/17 19:48:43 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/10/20 03:27:58 |