ゲスト
(ka0000)
独身ハンターと奇妙な依頼人
マスター:奈華里

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/10/22 09:00
- 完成日
- 2015/10/30 01:28
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「まだ見つからんか?」
ハンターオフィスの窓口を訪れたバンデラの表情は些か硬い。
何故なら以前請け負った依頼での親玉ともいえる歪虚の所在が未だ掴めていないからだ。自分が請け負った依頼には責任もある。とり逃したままでは次の仕事にも身が入らないし、出来ればきちんと片付けてから次に進みたい。中堅どころとなった今もその信条は変わらない。であるから他の依頼には目もくれず、その歪虚に関する情報のみを探し求める。
「死体を操る歪虚……いわば、ネクロマンサーですよね?」
馴染みの受付窓口が書類と睨めっこしつつ言葉する。
「そのようだな。しかも一度に数体を操る事が可能のようだ…私はこの目で見た」
きっかけは八百屋での奇妙な話から始まる。畑に死者である友人の姿を見たと言う証言のもと、翌日目撃した畑を確認すればその姿はなく、作物だけが踏み荒らされ一部作物が無くなっていたのだ。同様の事件はその村では数度起こる。目撃された人物については定かでないものが多かったが、それでも調査の末行きついたのは土葬の風習がある事からそれが実際の死体であり、埋葬された筈の墓石付近の土の様子からもゾンビ化したものだと推測された。
そして、張り込みの後ゾンビの所在は明らかになり、討伐へと潜伏している森へと向かったのであるが、そこで待っていたのは十数体の村人のゾンビとその後方にある怪しい人影――。
手にした杖状のものを掲げてはゾンビ達を操っていたようだが、その能力値は未だ不明である。ただ、人型をとっていた事から考えて、ある程度の知能と能力は持ち合わせていると考えられる。でなければ夜を見計らってソンビを操ったりはしないだろう。
始めはゾンビと化した村人達が土葬された墓地の教会の神父が挙動不審であったことからその死霊使いかと考えられていたが、話を聞くとそうではなくただ単に土から蘇る村人達に(情けない話ではあるが)怯え、それでいて依頼を出せば悪い噂が広がるのを恐れ見て見ぬ振りをしてしまっていたのだという。
「たっ助けてくれ!」
とそこでハンターオフィスの空気が一変した。
息も絶え絶えに飛び込んで来た男――髪は金髪で細身体型。
身体のあちこちにあけられたピアスが彼にチャラい印象を与える。
「どうしましたか?」
そんな彼を宥めながら手空きの窓口が事情を聞きに回る。
「ぁ…」
その時その若者とバンデラの視線が交差し、小さく漏れた声にバンデラは眉を顰める。
(どういう事だ?)
飛び込んで来た若者は明らかに彼を知っているようだったが、目が合うと同時に気まずそうに視線を逸らしたのだ。何処かで会っているのかと考えてみてもこれといった覚えがない。
一方若者はバンデラから視線を逸らすと、窓口に案内されながら気まずそうに椅子に座り事情を話し始める。
「全く何なんでしょうね~」
馴染みの窓口はそう言ったが、バンデラの耳にその言葉は届いていなかった。
そして翌日――。
「何、あの若者がか?」
「そうらしいです…変な歪虚に追われていると。しかもそいつは死霊使いだと言ってまして」
「ふむ…」
歪虚に追われているというのは些か信じがたい。けれど、そういう事がないとは言い切れない。
「して、何らかの思い当たる理由は?」
「それが心当たりがないと。一応、彼もハンターらしく疾影士で登録されており、今の所逃げ切っているようですがこのままは流石に彼にとってはきついとの事なので」
歪虚を相手にするのがハンターである筈だが、実力が伴わないのであれば仕方がない。理由はどうあれ、助けを求めているのであれば手を貸さない訳もいかない。
(相手があの死霊使いならばほっておく事もできんしな)
バンデラはそう思い、依頼を引き受ける事であの若者と対峙する。
だが、若者の方はといえば…。
やはりどこかバンデラを避けるように一礼し、落ち着かない様子を見せているのだった。
ハンターオフィスの窓口を訪れたバンデラの表情は些か硬い。
何故なら以前請け負った依頼での親玉ともいえる歪虚の所在が未だ掴めていないからだ。自分が請け負った依頼には責任もある。とり逃したままでは次の仕事にも身が入らないし、出来ればきちんと片付けてから次に進みたい。中堅どころとなった今もその信条は変わらない。であるから他の依頼には目もくれず、その歪虚に関する情報のみを探し求める。
「死体を操る歪虚……いわば、ネクロマンサーですよね?」
馴染みの受付窓口が書類と睨めっこしつつ言葉する。
「そのようだな。しかも一度に数体を操る事が可能のようだ…私はこの目で見た」
きっかけは八百屋での奇妙な話から始まる。畑に死者である友人の姿を見たと言う証言のもと、翌日目撃した畑を確認すればその姿はなく、作物だけが踏み荒らされ一部作物が無くなっていたのだ。同様の事件はその村では数度起こる。目撃された人物については定かでないものが多かったが、それでも調査の末行きついたのは土葬の風習がある事からそれが実際の死体であり、埋葬された筈の墓石付近の土の様子からもゾンビ化したものだと推測された。
そして、張り込みの後ゾンビの所在は明らかになり、討伐へと潜伏している森へと向かったのであるが、そこで待っていたのは十数体の村人のゾンビとその後方にある怪しい人影――。
手にした杖状のものを掲げてはゾンビ達を操っていたようだが、その能力値は未だ不明である。ただ、人型をとっていた事から考えて、ある程度の知能と能力は持ち合わせていると考えられる。でなければ夜を見計らってソンビを操ったりはしないだろう。
始めはゾンビと化した村人達が土葬された墓地の教会の神父が挙動不審であったことからその死霊使いかと考えられていたが、話を聞くとそうではなくただ単に土から蘇る村人達に(情けない話ではあるが)怯え、それでいて依頼を出せば悪い噂が広がるのを恐れ見て見ぬ振りをしてしまっていたのだという。
「たっ助けてくれ!」
とそこでハンターオフィスの空気が一変した。
息も絶え絶えに飛び込んで来た男――髪は金髪で細身体型。
身体のあちこちにあけられたピアスが彼にチャラい印象を与える。
「どうしましたか?」
そんな彼を宥めながら手空きの窓口が事情を聞きに回る。
「ぁ…」
その時その若者とバンデラの視線が交差し、小さく漏れた声にバンデラは眉を顰める。
(どういう事だ?)
飛び込んで来た若者は明らかに彼を知っているようだったが、目が合うと同時に気まずそうに視線を逸らしたのだ。何処かで会っているのかと考えてみてもこれといった覚えがない。
一方若者はバンデラから視線を逸らすと、窓口に案内されながら気まずそうに椅子に座り事情を話し始める。
「全く何なんでしょうね~」
馴染みの窓口はそう言ったが、バンデラの耳にその言葉は届いていなかった。
そして翌日――。
「何、あの若者がか?」
「そうらしいです…変な歪虚に追われていると。しかもそいつは死霊使いだと言ってまして」
「ふむ…」
歪虚に追われているというのは些か信じがたい。けれど、そういう事がないとは言い切れない。
「して、何らかの思い当たる理由は?」
「それが心当たりがないと。一応、彼もハンターらしく疾影士で登録されており、今の所逃げ切っているようですがこのままは流石に彼にとってはきついとの事なので」
歪虚を相手にするのがハンターである筈だが、実力が伴わないのであれば仕方がない。理由はどうあれ、助けを求めているのであれば手を貸さない訳もいかない。
(相手があの死霊使いならばほっておく事もできんしな)
バンデラはそう思い、依頼を引き受ける事であの若者と対峙する。
だが、若者の方はといえば…。
やはりどこかバンデラを避けるように一礼し、落ち着かない様子を見せているのだった。
リプレイ本文
●夜行性
「え…マジかよ…」
バンデラから距離を取って他のハンターを待っていた依頼者はその姿にたじろいだ。それもその筈、その男の出で立ちはまさに不し…いや奇抜であり、道行く人も一歩下がってしまう程だ。
「拙者の事はお馬さん仮面とでも呼んで貰おうか」
馬の着ぐるみを着た中年のおっさんことアラン・スミシー(ka4573)が言う。得物がまた魔導ドリルとあって尚更怪しさを振り撒いている。
「えと、貴殿が歪虚に追われている依頼人だな。なんかひょろっこいな」
その後ろからひょこりと顔を出したのは今回の紅一点、特注の鎧で身を固めた聖導士ゲルト・フォン・B(ka3222)。決して高くない身長であるから、着ぐるみの陰に隠れてしまっていたらしい。
「あ、バンデラさん。お久し振りです…あの、大丈夫ですか?」
とバンデラの方には以前の依頼を共にした木ノ下 道也(ka0843)が彼を気遣って声をかけている。
「あんた、チュースケっていうハムスターを飼っているんだってな。体調を崩していると聞いたが、元気なのか?」
するとザレム・アズール(ka0878)も彼の噂を聞きつけて――バンデラと面識はないのだが動物好きでありその手の噂は耳に入っているらしい。
「ああ、大した事は…」
バンデラがそう言い現状を話す。
「ちょっ、なんなんだよ…」
そこで再び後退る依頼人。助けて欲しいとは言ったが、この顔触れには驚きを隠せない。
「よーくわっかンねェが、臭う、なァ…」
長身にしてはスレンダーであるが、よく見ればしっかりとした筋肉を持つその身体は厳しい場所で暮らしていたが故か。鬼の角と小麦色の肌が更に彼の存在感を強める。
「よォ、あんたの依頼を引き受けた万歳丸(ka5665)ってェんだ。宜しくたのまァ」
男はそう言うと、彼の隣りに腰を下ろす。二人が並ぶともはや大人と子供の様だった。そうでなくとも身体の装飾で若者臭さが抜けない依頼人だが、資料では成人しているらしい。
「早速でわリィが、てめェ、あっちの旦那のチュースケに餌やってねェか?」
「へ…?」
突然繰り出された質問に依頼人の眼が点になる。
「あぁ、確かに。俺も気になっていたんだ。あんた、バンデラさんの事知っているだろう? 噂で聞いたって素振りじゃないよな、となるとこの前バンデラさんが請け負った村の近くの出身か?」
いつの間にか近付いていたザレムも疑問をぶつける。
「えっ、あ…それは」
が依頼人は誤魔化す様に視線を皆から外して、
「そんなの関係ねぇだろ。あんたらは俺を守ればいいんだよっ!」
そう怒鳴ると拗ねてしまう。
「でも情報を頂けないと守るものも守れません。チュースケ君の事は本当に知らないんですか?」
今度は道也が穏やかに問う。
「知らねぇよ…そもそもなんだよ、そのチュースケって…鼠か?」
明らかに名前から推測したような言いよう――ここに嘘はないらしい。
「なァ、じゃああんた畑で何か手に入れてねェか?」
がこの質問には依頼人は僅かに肩を揺らす。
「はぁ、だっ誰が畑なんか行くかよ…俺はハンターだぜ。夜中にそんなとこ」
「では、何をしに出歩いていた?」
万歳丸の質問をバンデラがアシストする。
「そ、それは…」
今までの話から見えてくるのは依頼人の不審な行動だ。
彼を追ってくるという死霊使いの出現時間は夜だという。ならば依頼人は何らかの理由があって夜出歩いているという事になる。
(依頼人はきっと何か隠している…死霊使いの手下だったか、死霊使いとグルか…はたまた畑泥棒か墓荒しか…)
推測はまだ絞れる段階ではないが、それでもその辺だろうとアランは考える。
「あぁ~ったく、日差しが目に染みる。あんたもそう思わねー?」
そこへ最後の参加者が到着した。ドレッドを利かせた髪にじゃらじゃらとした装飾品。とがった耳にも数個の耳飾りが揺れ、いかにもワルな雰囲気のデルフィーノ(ka1548)である。
「……あ、そうです…ね。そう、そうなんだよ。俺は光に弱い体質だから夜しか出歩けねぇんだよ」
彼の言葉を受けて…依頼人はさっきより饒舌に話し出す。
「俺、特別な体質の持ち主だからさ。でも、家ばかりじゃ運動不足になるし…骨とか悪くなるじゃん。だから」
明らかな嘘――仕事の依頼時日傘の類を持ってはいなかったし、今も窓の日差しを避ける素振りは見せてはいない。しかし、このまま問い詰めてもこの依頼人は話そうとはしないだろう。皆はとりあえずそうなのかと納得してみせる。
そして夜を待つ事になり各々ちらばった時、意外にも依頼人からデルフィーノに声がかかる。
「あの、さっきはさんきゅーです」
その表情には別の者には見せていない親しみの念が篭っていた。
●囮
そして暫く他愛のない話を続けて、デルフィーノはある事を聞き出す事に成功する。
「あいつ、死霊使いに勧誘されてるんだと」
嘘か真か。さっき彼が皆の圧力から救った事が打ち解けるきっかけとなった。自分と似た様な趣味を持っていると外見から確信したらしく、距離を縮めるのにそれ程時間はかからなかったようだ。
「で、勧誘とは」
「話によれば出歩いていたら、家を襲おうとしているゾンビを見つけて…少し警戒して様子を見ていた時に目をつけられたと」
どこか気だるげに彼が報告する。
「後、装飾品についてもそれとなく注意して見てみたが、あれは安もんだ。俺の眼に狂いはねぇ。死霊使いがあいつの持ち物を狙っているって線は外してよさそうだぜ」
見た目に寄らず、目敏く観察していたか。
「ふむ、まあ理由はどうあれ…この状況。彼には悪いが囮になって貰うか」
追われているというなら、それが手っ取り早い。一応ハンターではあるのだから、その辺は覚悟して貰わねば。だが――、
「ちょ、おい、離せよっ、俺は依頼人だぞっ!」
戦闘に適した見晴らしのいい場所を選んで、彼らは依頼人を木に繋いで…さながら犬のようだ。
「まぁ、そのなんだ。これもお前の為だ」
そう言ってデルフィーノは彼を諫める。
「何かあっても俺が守る。それじゃあ不満か?」
ザレムも彼にそう告げて、辺りの準備に入る。見晴らしがいいとはいえ、用心するに越した事はない。以前交戦したのが森であったと聞いて、その近くに罠を張る事にする。持参された灯り類を依頼人の周りに仕込んで、そっと布を被せる。そして敵が現れるまでは各々茂みに隠れ、その時を待つ。
「くっそ…絶対訴えてやるからなっ!」
依頼人は始終ギャーギャー喚いていたが、一時間もすれば流石に疲れてきたのか周囲を警戒しつつも、時折こくりこくりとし始める。
「全く呑気なものだな」
ゲルトがその様子を呆れ眼で見つめる。
そんな折、案の定森の方から大地を蹴る複数の足音。
「なっ、人ではないのかっ!」
先行して飛び出してきたその影は思いの外小さい。前線に飛び出したゲルトが早速シャインを発動し、その場を照らす。
すると、そこにいたのは数匹のゾンビ犬――狼の血が強いのだろう。大型種であるが、崩れ落ちてゆく肉片が何とも気持ちのいいものではない。だが、アランはその姿を見ても動じない。
「相手が何であれ、我がドリルに勝るもの等ないっ! 吼えろっ、ドリルキャノン!」
己が身長の半分はあろうかというその得物を構えて、放たれたのは機導砲だ。
しかし的は小さく、いかに強力な攻撃とはいえ当たらねば意味がない。敵を見越していたゲルトは武器を構えたまま目を閉じる。
「死を司るオーディンよ、その元に集う醜きヴァルキリー、主の名のもとにワイルド・ハントと果てた者よ。お前達の友が来た…骨と肉の朽ちた死霊共を誘い消し去り給え」
彼女が言葉の終わりと共にきっと目を開く。するとどうだろうか。その言葉が力を成して、ゾンビ犬達の動きを阻害する。
「しめたっ、これでやりやすくなる」
依頼人の傍にいたザレムは大剣を振り被り、直進してくる一匹を豪快に撫で斬る。一方バンデラも無駄ない動きで射程に入った一匹を一撃の元に沈めている。
「はっ、動物は苦手でね」
その様子を見てデルフィーノは一歩先に駒を進める。
「死霊使いさんよぉ、早く顔を出してくれねぇとペット達がみんな逝かれちまうぜ」
ジェットブーツで犬達の間をすり抜け狙うは親玉。幸い、ゾンビ犬らは彼を追わず、依頼人を優先中。死霊使いのいる筈の草影に眼がやり、光を探す。
(あれか?)
それは杖の光…死霊使いの持つロッドの輝きだと判断した彼はそこへ向けてデルタレイを発動するが、
「うおっと!?」
彼が作り出した三角から伸びた光は杖によって弾かれて己が方向へと帰ってくる。
(シールドか?)
はじき返された光の刃を辛うじて避けて、彼は次の行動を思案する。
一方万歳丸はこっそりと敵側の茂みへと侵入していた。
(皆には悪いが、これも作戦だ)
勿論予め打ち合わせはしてある。敵が複数のゾンビを操るというならば、こちらもただ迎え撃つだけでは意味がない。だから司令塔を潰す任を提案し、彼は自らその役をかって出たのだ。
(とはいえ、やっぱァこういうのは、難しいなァ)
体躯のある身体は潜伏には不向きなのは重々承知だ。依頼人以外のハンターの存在を感知し、死霊使いもなかなか姿を現さない。
(どこだ、何処にいる?)
ソンビを操る為には余り離れていない筈。フードでロッドを持った人型の歪虚――黒いフードであれば闇夜にうまく紛れてしまっている可能性が高い。そこでそんな彼を援助する様動いたのは詰めていたデルフィーノ。
「あぁめんどくせぇ」
ガッとブーツで大地を踏みしめて、その場で立ち止まるやいなや死霊使いが潜伏していると思われる一帯にファイアスローワーを発動する。
その効果は絶大だった。マテリアルが手に集中し具現化した炎が前方扇状の一帯を焼き尽し、死霊使いの位置を焙り出す。
「貰ったぁ亜亜亜亜ッ!」
それで位置を確認した万歳丸は駆け込んで、まずは手のロッドを弾く。続いて敵の首元を掴んで投げの体勢。身体を綺麗に捌くと、思いの外軽く敵は宙を舞う。
「てめェに恨みはねェが、そのぐッ!?」
止めを刺そうとしたその時だった。死霊使いの抵抗…人型をしているとはいえ敵は歪虚で、顔がある場所に目鼻はなく、そこにあるのは只の混沌。その闇にぽっかりと開いた小さな穴からハンターらに向け放たれたのは奇怪な声。
「ック、これは!?」
鼓膜を震わす不快な声――それは人が発せられるものではなく、動物のそれに似ているか。その声は戦場に木霊し、後方の仲間達をも苦しめる。
「バンデラさんっ!」
新手のゾンビ犬と交戦している彼を依頼人の傍から援護していた道也が苦しそうに呟く。形勢は今や敵側に傾き、仲間達はそれを受け流すのがやっとのようなのだ。
(僕も、皆の力に…なりたいっ)
道也はそう思い、前方の敵目掛けて杖を振り、炎の矢を放つ。奇怪な音が響く中、その音をも切り裂くように放たれた矢は剣に食らいついていた犬を一瞬にして炎に包む。
「すまん、助かった」
バンデラから返された言葉に嬉しくなる道也。
「うわぁぁ!」
が喜んでいる場合ではない。依頼人は行動を制限されたまま、その場で滅法情けない悲鳴を上げている。
「ちょ、なんで俺ばっかこんなッ! たかが野菜だろ! あれ位、悪ガキだってやってるじゃねぇかよ!」
そして何やら不審な言葉を吐きつつ、裾を引っ張る一匹を振り払おうと喚く。
「全く使い物にならないのか…ハンターが聞いて呆れるっ!」
だがそんな彼に助け舟。回り込むよう形で駆け込んできたザレムが依頼人に接近していた一匹をぶった切る。
「あー、もう私は歌姫ではないのだがなっ」
そして、ゲルトは死霊使いに対抗するように再びToengesang(鎮魂歌)を展開した。
すると死霊使いの怪声は弱まり、侵食してくるような頭痛は僅かに緩和される。
「よっしゃあ、今しかねェなァ」
その一瞬を仲間達は誰一人として逃がさなかった。
杖に手を伸ばそうとしていた死霊使いにまずはデルフィーノのきつい一撃。さっきは当てそこなったが、今回は外さない。三角のエネルギー体から伸びた一本が敵の腕を貫通する。それでも念には念を入れるように追い打ちをかけたのはアランだ。
「喰らうがよいのだッ!」
彼はそう言って自慢のドリルから再び機導砲をぶっ放し、ゾンビ犬をも巻き込む形で杖自体を消し炭にする。
そして最後はやはりこの人――。
「今度こそ、その首頂くぜっ!」
全体重を拳に込めて、死霊使いをぶん殴る。その衝撃の強さに死霊使いの頭部が弾け飛び…その後時間はかからなかった。武器を壊され、腕と顔が削がれた歪虚に勝ち目はない。
「終わったな」
ふうと息を吐いて、ゲルトが言う。しかし肝心な事はまだ明かされていない。
「どうやらあの死霊使いがあんたに似ていたかもって線も消えたぜ」
死霊使いと交戦していたデルフィーノがバンデラに向けて言う。
「加えてあれの手下って線も違うようだな」
ゾンビが彼を狙っていた事からそれも消えた。すると後は――。
「もう、いい加減吐いちまったらどうだ? あんた、何かやったんだろ?」
薄々勘付いていたデルフィーノが言う。
「お上には言わない…という保証は出来ないが、多少は考慮しよう」
とこれはザレムだ。彼も依頼を受けた時点から怪しんでいた一人である。
「そう言えばさっき野菜がどうとか言ってましたよね? ご実家は農家さんで?」
「子供がどうとかも言っていたな」
道也とゲルトの言葉に依頼人は視線を逸らす。――がいくら頑張っても隠し通す事は出来ないようで。
●真相
「あら、貴方探してたのよ~また美味しいお野菜売りに来てね」
戻ってきたオフィスにて、彼を探していたという夫人の言葉。夜しか出歩かないと言っていたハンターの彼が野菜売りとはどういう事か。勿論彼の依頼履歴にその類のものはない。
「やはり貴殿が野菜を」
馬仮面が物凄い形相で問う。
「あ…ははは、悪気はなかったんだー!」
その圧力に耐えられず、依頼人はついに白状する。
「本当腹減ってて…初めは出来心で。そしたら偶然ゾンビに遭遇して…でも金は欲しくて…続けるうちに、歪虚に夢で勧誘されるわ変な事件発展するわ、終いにはあんたらも出て来るわで散々。もうしない。神に誓う。だから許してくれっ!」
矢継ぎ早にそう言って土下座する彼。バンデラへの挙動は事件調査中の彼を見かけていたからだという。
「自業自得か」
歪虚がどうして彼に興味を持ったのかは判らないが、極稀に堕落者に誘い込もうとする歪虚がいると聞く。
「大方、お前が盗みを諦めねェから面白い奴とでも思われたんだろうよ」
「が罪は罪だ。どう裁かれるかは判らんが、口添えはしておこう。但し、これからは真面目に働くんだぞ」
豪快に笑う万歳丸を余所にバンデラは彼にそう釘を刺し、事は一応の解決に至るのだった。
「え…マジかよ…」
バンデラから距離を取って他のハンターを待っていた依頼者はその姿にたじろいだ。それもその筈、その男の出で立ちはまさに不し…いや奇抜であり、道行く人も一歩下がってしまう程だ。
「拙者の事はお馬さん仮面とでも呼んで貰おうか」
馬の着ぐるみを着た中年のおっさんことアラン・スミシー(ka4573)が言う。得物がまた魔導ドリルとあって尚更怪しさを振り撒いている。
「えと、貴殿が歪虚に追われている依頼人だな。なんかひょろっこいな」
その後ろからひょこりと顔を出したのは今回の紅一点、特注の鎧で身を固めた聖導士ゲルト・フォン・B(ka3222)。決して高くない身長であるから、着ぐるみの陰に隠れてしまっていたらしい。
「あ、バンデラさん。お久し振りです…あの、大丈夫ですか?」
とバンデラの方には以前の依頼を共にした木ノ下 道也(ka0843)が彼を気遣って声をかけている。
「あんた、チュースケっていうハムスターを飼っているんだってな。体調を崩していると聞いたが、元気なのか?」
するとザレム・アズール(ka0878)も彼の噂を聞きつけて――バンデラと面識はないのだが動物好きでありその手の噂は耳に入っているらしい。
「ああ、大した事は…」
バンデラがそう言い現状を話す。
「ちょっ、なんなんだよ…」
そこで再び後退る依頼人。助けて欲しいとは言ったが、この顔触れには驚きを隠せない。
「よーくわっかンねェが、臭う、なァ…」
長身にしてはスレンダーであるが、よく見ればしっかりとした筋肉を持つその身体は厳しい場所で暮らしていたが故か。鬼の角と小麦色の肌が更に彼の存在感を強める。
「よォ、あんたの依頼を引き受けた万歳丸(ka5665)ってェんだ。宜しくたのまァ」
男はそう言うと、彼の隣りに腰を下ろす。二人が並ぶともはや大人と子供の様だった。そうでなくとも身体の装飾で若者臭さが抜けない依頼人だが、資料では成人しているらしい。
「早速でわリィが、てめェ、あっちの旦那のチュースケに餌やってねェか?」
「へ…?」
突然繰り出された質問に依頼人の眼が点になる。
「あぁ、確かに。俺も気になっていたんだ。あんた、バンデラさんの事知っているだろう? 噂で聞いたって素振りじゃないよな、となるとこの前バンデラさんが請け負った村の近くの出身か?」
いつの間にか近付いていたザレムも疑問をぶつける。
「えっ、あ…それは」
が依頼人は誤魔化す様に視線を皆から外して、
「そんなの関係ねぇだろ。あんたらは俺を守ればいいんだよっ!」
そう怒鳴ると拗ねてしまう。
「でも情報を頂けないと守るものも守れません。チュースケ君の事は本当に知らないんですか?」
今度は道也が穏やかに問う。
「知らねぇよ…そもそもなんだよ、そのチュースケって…鼠か?」
明らかに名前から推測したような言いよう――ここに嘘はないらしい。
「なァ、じゃああんた畑で何か手に入れてねェか?」
がこの質問には依頼人は僅かに肩を揺らす。
「はぁ、だっ誰が畑なんか行くかよ…俺はハンターだぜ。夜中にそんなとこ」
「では、何をしに出歩いていた?」
万歳丸の質問をバンデラがアシストする。
「そ、それは…」
今までの話から見えてくるのは依頼人の不審な行動だ。
彼を追ってくるという死霊使いの出現時間は夜だという。ならば依頼人は何らかの理由があって夜出歩いているという事になる。
(依頼人はきっと何か隠している…死霊使いの手下だったか、死霊使いとグルか…はたまた畑泥棒か墓荒しか…)
推測はまだ絞れる段階ではないが、それでもその辺だろうとアランは考える。
「あぁ~ったく、日差しが目に染みる。あんたもそう思わねー?」
そこへ最後の参加者が到着した。ドレッドを利かせた髪にじゃらじゃらとした装飾品。とがった耳にも数個の耳飾りが揺れ、いかにもワルな雰囲気のデルフィーノ(ka1548)である。
「……あ、そうです…ね。そう、そうなんだよ。俺は光に弱い体質だから夜しか出歩けねぇんだよ」
彼の言葉を受けて…依頼人はさっきより饒舌に話し出す。
「俺、特別な体質の持ち主だからさ。でも、家ばかりじゃ運動不足になるし…骨とか悪くなるじゃん。だから」
明らかな嘘――仕事の依頼時日傘の類を持ってはいなかったし、今も窓の日差しを避ける素振りは見せてはいない。しかし、このまま問い詰めてもこの依頼人は話そうとはしないだろう。皆はとりあえずそうなのかと納得してみせる。
そして夜を待つ事になり各々ちらばった時、意外にも依頼人からデルフィーノに声がかかる。
「あの、さっきはさんきゅーです」
その表情には別の者には見せていない親しみの念が篭っていた。
●囮
そして暫く他愛のない話を続けて、デルフィーノはある事を聞き出す事に成功する。
「あいつ、死霊使いに勧誘されてるんだと」
嘘か真か。さっき彼が皆の圧力から救った事が打ち解けるきっかけとなった。自分と似た様な趣味を持っていると外見から確信したらしく、距離を縮めるのにそれ程時間はかからなかったようだ。
「で、勧誘とは」
「話によれば出歩いていたら、家を襲おうとしているゾンビを見つけて…少し警戒して様子を見ていた時に目をつけられたと」
どこか気だるげに彼が報告する。
「後、装飾品についてもそれとなく注意して見てみたが、あれは安もんだ。俺の眼に狂いはねぇ。死霊使いがあいつの持ち物を狙っているって線は外してよさそうだぜ」
見た目に寄らず、目敏く観察していたか。
「ふむ、まあ理由はどうあれ…この状況。彼には悪いが囮になって貰うか」
追われているというなら、それが手っ取り早い。一応ハンターではあるのだから、その辺は覚悟して貰わねば。だが――、
「ちょ、おい、離せよっ、俺は依頼人だぞっ!」
戦闘に適した見晴らしのいい場所を選んで、彼らは依頼人を木に繋いで…さながら犬のようだ。
「まぁ、そのなんだ。これもお前の為だ」
そう言ってデルフィーノは彼を諫める。
「何かあっても俺が守る。それじゃあ不満か?」
ザレムも彼にそう告げて、辺りの準備に入る。見晴らしがいいとはいえ、用心するに越した事はない。以前交戦したのが森であったと聞いて、その近くに罠を張る事にする。持参された灯り類を依頼人の周りに仕込んで、そっと布を被せる。そして敵が現れるまでは各々茂みに隠れ、その時を待つ。
「くっそ…絶対訴えてやるからなっ!」
依頼人は始終ギャーギャー喚いていたが、一時間もすれば流石に疲れてきたのか周囲を警戒しつつも、時折こくりこくりとし始める。
「全く呑気なものだな」
ゲルトがその様子を呆れ眼で見つめる。
そんな折、案の定森の方から大地を蹴る複数の足音。
「なっ、人ではないのかっ!」
先行して飛び出してきたその影は思いの外小さい。前線に飛び出したゲルトが早速シャインを発動し、その場を照らす。
すると、そこにいたのは数匹のゾンビ犬――狼の血が強いのだろう。大型種であるが、崩れ落ちてゆく肉片が何とも気持ちのいいものではない。だが、アランはその姿を見ても動じない。
「相手が何であれ、我がドリルに勝るもの等ないっ! 吼えろっ、ドリルキャノン!」
己が身長の半分はあろうかというその得物を構えて、放たれたのは機導砲だ。
しかし的は小さく、いかに強力な攻撃とはいえ当たらねば意味がない。敵を見越していたゲルトは武器を構えたまま目を閉じる。
「死を司るオーディンよ、その元に集う醜きヴァルキリー、主の名のもとにワイルド・ハントと果てた者よ。お前達の友が来た…骨と肉の朽ちた死霊共を誘い消し去り給え」
彼女が言葉の終わりと共にきっと目を開く。するとどうだろうか。その言葉が力を成して、ゾンビ犬達の動きを阻害する。
「しめたっ、これでやりやすくなる」
依頼人の傍にいたザレムは大剣を振り被り、直進してくる一匹を豪快に撫で斬る。一方バンデラも無駄ない動きで射程に入った一匹を一撃の元に沈めている。
「はっ、動物は苦手でね」
その様子を見てデルフィーノは一歩先に駒を進める。
「死霊使いさんよぉ、早く顔を出してくれねぇとペット達がみんな逝かれちまうぜ」
ジェットブーツで犬達の間をすり抜け狙うは親玉。幸い、ゾンビ犬らは彼を追わず、依頼人を優先中。死霊使いのいる筈の草影に眼がやり、光を探す。
(あれか?)
それは杖の光…死霊使いの持つロッドの輝きだと判断した彼はそこへ向けてデルタレイを発動するが、
「うおっと!?」
彼が作り出した三角から伸びた光は杖によって弾かれて己が方向へと帰ってくる。
(シールドか?)
はじき返された光の刃を辛うじて避けて、彼は次の行動を思案する。
一方万歳丸はこっそりと敵側の茂みへと侵入していた。
(皆には悪いが、これも作戦だ)
勿論予め打ち合わせはしてある。敵が複数のゾンビを操るというならば、こちらもただ迎え撃つだけでは意味がない。だから司令塔を潰す任を提案し、彼は自らその役をかって出たのだ。
(とはいえ、やっぱァこういうのは、難しいなァ)
体躯のある身体は潜伏には不向きなのは重々承知だ。依頼人以外のハンターの存在を感知し、死霊使いもなかなか姿を現さない。
(どこだ、何処にいる?)
ソンビを操る為には余り離れていない筈。フードでロッドを持った人型の歪虚――黒いフードであれば闇夜にうまく紛れてしまっている可能性が高い。そこでそんな彼を援助する様動いたのは詰めていたデルフィーノ。
「あぁめんどくせぇ」
ガッとブーツで大地を踏みしめて、その場で立ち止まるやいなや死霊使いが潜伏していると思われる一帯にファイアスローワーを発動する。
その効果は絶大だった。マテリアルが手に集中し具現化した炎が前方扇状の一帯を焼き尽し、死霊使いの位置を焙り出す。
「貰ったぁ亜亜亜亜ッ!」
それで位置を確認した万歳丸は駆け込んで、まずは手のロッドを弾く。続いて敵の首元を掴んで投げの体勢。身体を綺麗に捌くと、思いの外軽く敵は宙を舞う。
「てめェに恨みはねェが、そのぐッ!?」
止めを刺そうとしたその時だった。死霊使いの抵抗…人型をしているとはいえ敵は歪虚で、顔がある場所に目鼻はなく、そこにあるのは只の混沌。その闇にぽっかりと開いた小さな穴からハンターらに向け放たれたのは奇怪な声。
「ック、これは!?」
鼓膜を震わす不快な声――それは人が発せられるものではなく、動物のそれに似ているか。その声は戦場に木霊し、後方の仲間達をも苦しめる。
「バンデラさんっ!」
新手のゾンビ犬と交戦している彼を依頼人の傍から援護していた道也が苦しそうに呟く。形勢は今や敵側に傾き、仲間達はそれを受け流すのがやっとのようなのだ。
(僕も、皆の力に…なりたいっ)
道也はそう思い、前方の敵目掛けて杖を振り、炎の矢を放つ。奇怪な音が響く中、その音をも切り裂くように放たれた矢は剣に食らいついていた犬を一瞬にして炎に包む。
「すまん、助かった」
バンデラから返された言葉に嬉しくなる道也。
「うわぁぁ!」
が喜んでいる場合ではない。依頼人は行動を制限されたまま、その場で滅法情けない悲鳴を上げている。
「ちょ、なんで俺ばっかこんなッ! たかが野菜だろ! あれ位、悪ガキだってやってるじゃねぇかよ!」
そして何やら不審な言葉を吐きつつ、裾を引っ張る一匹を振り払おうと喚く。
「全く使い物にならないのか…ハンターが聞いて呆れるっ!」
だがそんな彼に助け舟。回り込むよう形で駆け込んできたザレムが依頼人に接近していた一匹をぶった切る。
「あー、もう私は歌姫ではないのだがなっ」
そして、ゲルトは死霊使いに対抗するように再びToengesang(鎮魂歌)を展開した。
すると死霊使いの怪声は弱まり、侵食してくるような頭痛は僅かに緩和される。
「よっしゃあ、今しかねェなァ」
その一瞬を仲間達は誰一人として逃がさなかった。
杖に手を伸ばそうとしていた死霊使いにまずはデルフィーノのきつい一撃。さっきは当てそこなったが、今回は外さない。三角のエネルギー体から伸びた一本が敵の腕を貫通する。それでも念には念を入れるように追い打ちをかけたのはアランだ。
「喰らうがよいのだッ!」
彼はそう言って自慢のドリルから再び機導砲をぶっ放し、ゾンビ犬をも巻き込む形で杖自体を消し炭にする。
そして最後はやはりこの人――。
「今度こそ、その首頂くぜっ!」
全体重を拳に込めて、死霊使いをぶん殴る。その衝撃の強さに死霊使いの頭部が弾け飛び…その後時間はかからなかった。武器を壊され、腕と顔が削がれた歪虚に勝ち目はない。
「終わったな」
ふうと息を吐いて、ゲルトが言う。しかし肝心な事はまだ明かされていない。
「どうやらあの死霊使いがあんたに似ていたかもって線も消えたぜ」
死霊使いと交戦していたデルフィーノがバンデラに向けて言う。
「加えてあれの手下って線も違うようだな」
ゾンビが彼を狙っていた事からそれも消えた。すると後は――。
「もう、いい加減吐いちまったらどうだ? あんた、何かやったんだろ?」
薄々勘付いていたデルフィーノが言う。
「お上には言わない…という保証は出来ないが、多少は考慮しよう」
とこれはザレムだ。彼も依頼を受けた時点から怪しんでいた一人である。
「そう言えばさっき野菜がどうとか言ってましたよね? ご実家は農家さんで?」
「子供がどうとかも言っていたな」
道也とゲルトの言葉に依頼人は視線を逸らす。――がいくら頑張っても隠し通す事は出来ないようで。
●真相
「あら、貴方探してたのよ~また美味しいお野菜売りに来てね」
戻ってきたオフィスにて、彼を探していたという夫人の言葉。夜しか出歩かないと言っていたハンターの彼が野菜売りとはどういう事か。勿論彼の依頼履歴にその類のものはない。
「やはり貴殿が野菜を」
馬仮面が物凄い形相で問う。
「あ…ははは、悪気はなかったんだー!」
その圧力に耐えられず、依頼人はついに白状する。
「本当腹減ってて…初めは出来心で。そしたら偶然ゾンビに遭遇して…でも金は欲しくて…続けるうちに、歪虚に夢で勧誘されるわ変な事件発展するわ、終いにはあんたらも出て来るわで散々。もうしない。神に誓う。だから許してくれっ!」
矢継ぎ早にそう言って土下座する彼。バンデラへの挙動は事件調査中の彼を見かけていたからだという。
「自業自得か」
歪虚がどうして彼に興味を持ったのかは判らないが、極稀に堕落者に誘い込もうとする歪虚がいると聞く。
「大方、お前が盗みを諦めねェから面白い奴とでも思われたんだろうよ」
「が罪は罪だ。どう裁かれるかは判らんが、口添えはしておこう。但し、これからは真面目に働くんだぞ」
豪快に笑う万歳丸を余所にバンデラは彼にそう釘を刺し、事は一応の解決に至るのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/21 03:44:01 |
|
![]() |
依頼人を吊し上げ隊(違) 万歳丸(ka5665) 鬼|17才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2015/10/22 07:27:27 |