ゲスト
(ka0000)
ハロウィン 殺戮の宴
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/21 22:00
- 完成日
- 2015/10/25 19:10
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「もうすぐですね。ハロウィンは」
「そうだ。それまでに事を進めなければならない。あくまで秘密裏にな」
ここはグラズヘイム王国、王都【イルダーナ】より南方の町。深夜の廃屋で二人の男が話し合う。
一人は身なりの整った若い紳士風。もう一人は三十路の職人風。偉そうに振る舞っていたのは職人の方である。
この町では毎年の十月末、ハロウィンイベントが開催されていた。
中央広場では様々な料理が無料で振る舞われる。お化けに扮して大通りを練り歩く仮装パレードも有名。この日のために一年がかりで衣装を用意する者もいるぐらい熱心であった。
「私がパレードを担当しよう。お前は広場だ。お互いの立場からいってそれが妥当だろうからな」
「わかりました。広場の地下には倉庫があります。一区画分を立ち入り禁止にすれば簡単です。それにしても……楽しみですね。町の奴らが羽目を外して浮かれているところで」
「そう。殺戮の宴が始まるのだからな」
「ああ、早く当日になって欲しいです」
二人が愉快そうに笑いだす。
職人と紳士は歪虚崇拝者だった。ハロウィンのお祭り騒ぎに乗じて事前に忍び込ませた歪虚や雑魔を開放。大事件を起こそうと画策していたのである。
「んっ?」
「どうかしました?」
職人が物音に気がつく。紳士が確認しようと隣室への扉を開けた。
「貴様!」
紳士が掲げたランタンが一人の青年を闇から浮かび上がらせる。
大きな荷物を抱えながらも青年はすばしっこい。職人が突きだしたナイフの刃が荷物に阻まれる。そうこうするうちに青年は窓から逃げていった。
「話しを聞かれましたかね?」
「おそらくな。だが大丈夫だろう。誰も信じやしないさ。ただここで落ちあうのはもう止めた方がよさそうだ」
歪虚崇拝者の二人は次に会う場所を決めてから解散するのだった。
(な、何だったんだ?)
青年テナシャは走り疲れて壁にもたれ掛かる。肩で息をしながら先程見聞きしたことを思いだす。
(もし奴らが話していたことが本当なら大変なんだが……)
これからどうしようかと考えていると脇腹が痛んだ。その付近を触ると手に血がべっとりとつく。荷物のおかげで浅かったが怪我をしていた。逃げるのに精一杯で今まで気づかなかった。
悩んだ末、テナシャは恋人ナタリーの家へと向かう。正確にいえば元恋人だ。
テナシャは町角での似顔絵描きでわずかな収入を得ているしがない画家志望である。それだけではとても生きていけないので恋人の家に転がり込んでいた。
そのナタリーに愛想を尽かされて追いだされたのが三日前。仕方なく雨露が凌げる廃屋で休んでいたところで先程の荒事に出くわしたのである。
「こんな夜更けにやってくるなんて。一体何の用? 残っているあんたの荷物は一つもないわ……どうしたの? その怪我は」
ナタリーはテナシャの怪我を知って家にあげた。治療の間にテナシャが事情を話す。
「それはまずいわね。さっきの大声でのやり取り、近所の人達に聞かれてしまっただろうし……」
ナタリーは賢かった。テナシャの話を信じた後は必要最低限の荷物と金目の物をまとめる。夜明けと同時に二人で家をでた。乗合馬車を乗り継いで、翌日の夕方には王都に辿り着く。
テナシャはナタリーの勧めで元いた町の官憲宛に歪虚崇拝者の計画について手紙を認める。しかし証拠に乏しいのでおそらくは信じてもらえない。そこでハンターズソサエティーに依頼することにした。
「こんな感じの二人なんです」
テナシャはハロウィン当日の町が危ないと支部職員に訴える。歪虚崇拝者二名の似顔絵も提出した。
「すまない。こんなことに巻き込んでしまって」
宿部屋に戻った後、テナシャは改めてナタリーに謝る。
「いいのよ。私も心機一転したかったからね。あの町に戻れないのなら王都で暮らすもの一興だし。そうしたら新しい仕事探さないと」
「俺も働くよ。だから……」
そういうとテナシャはナタリーに睨みつけられた。
「はぁ……。もしかして稼ぎがないから愛想尽かせて追いだしたと思っているの? 違うわ。絵を描くのやめるってあなたがいったからよ。そりゃお金は欲しいけどね。それよりも私はテナシャの新しい絵が観たいのよ」
二人は元の鞘に戻る。そして数日後、宿部屋にハンター一行が訪れるのだった。
「そうだ。それまでに事を進めなければならない。あくまで秘密裏にな」
ここはグラズヘイム王国、王都【イルダーナ】より南方の町。深夜の廃屋で二人の男が話し合う。
一人は身なりの整った若い紳士風。もう一人は三十路の職人風。偉そうに振る舞っていたのは職人の方である。
この町では毎年の十月末、ハロウィンイベントが開催されていた。
中央広場では様々な料理が無料で振る舞われる。お化けに扮して大通りを練り歩く仮装パレードも有名。この日のために一年がかりで衣装を用意する者もいるぐらい熱心であった。
「私がパレードを担当しよう。お前は広場だ。お互いの立場からいってそれが妥当だろうからな」
「わかりました。広場の地下には倉庫があります。一区画分を立ち入り禁止にすれば簡単です。それにしても……楽しみですね。町の奴らが羽目を外して浮かれているところで」
「そう。殺戮の宴が始まるのだからな」
「ああ、早く当日になって欲しいです」
二人が愉快そうに笑いだす。
職人と紳士は歪虚崇拝者だった。ハロウィンのお祭り騒ぎに乗じて事前に忍び込ませた歪虚や雑魔を開放。大事件を起こそうと画策していたのである。
「んっ?」
「どうかしました?」
職人が物音に気がつく。紳士が確認しようと隣室への扉を開けた。
「貴様!」
紳士が掲げたランタンが一人の青年を闇から浮かび上がらせる。
大きな荷物を抱えながらも青年はすばしっこい。職人が突きだしたナイフの刃が荷物に阻まれる。そうこうするうちに青年は窓から逃げていった。
「話しを聞かれましたかね?」
「おそらくな。だが大丈夫だろう。誰も信じやしないさ。ただここで落ちあうのはもう止めた方がよさそうだ」
歪虚崇拝者の二人は次に会う場所を決めてから解散するのだった。
(な、何だったんだ?)
青年テナシャは走り疲れて壁にもたれ掛かる。肩で息をしながら先程見聞きしたことを思いだす。
(もし奴らが話していたことが本当なら大変なんだが……)
これからどうしようかと考えていると脇腹が痛んだ。その付近を触ると手に血がべっとりとつく。荷物のおかげで浅かったが怪我をしていた。逃げるのに精一杯で今まで気づかなかった。
悩んだ末、テナシャは恋人ナタリーの家へと向かう。正確にいえば元恋人だ。
テナシャは町角での似顔絵描きでわずかな収入を得ているしがない画家志望である。それだけではとても生きていけないので恋人の家に転がり込んでいた。
そのナタリーに愛想を尽かされて追いだされたのが三日前。仕方なく雨露が凌げる廃屋で休んでいたところで先程の荒事に出くわしたのである。
「こんな夜更けにやってくるなんて。一体何の用? 残っているあんたの荷物は一つもないわ……どうしたの? その怪我は」
ナタリーはテナシャの怪我を知って家にあげた。治療の間にテナシャが事情を話す。
「それはまずいわね。さっきの大声でのやり取り、近所の人達に聞かれてしまっただろうし……」
ナタリーは賢かった。テナシャの話を信じた後は必要最低限の荷物と金目の物をまとめる。夜明けと同時に二人で家をでた。乗合馬車を乗り継いで、翌日の夕方には王都に辿り着く。
テナシャはナタリーの勧めで元いた町の官憲宛に歪虚崇拝者の計画について手紙を認める。しかし証拠に乏しいのでおそらくは信じてもらえない。そこでハンターズソサエティーに依頼することにした。
「こんな感じの二人なんです」
テナシャはハロウィン当日の町が危ないと支部職員に訴える。歪虚崇拝者二名の似顔絵も提出した。
「すまない。こんなことに巻き込んでしまって」
宿部屋に戻った後、テナシャは改めてナタリーに謝る。
「いいのよ。私も心機一転したかったからね。あの町に戻れないのなら王都で暮らすもの一興だし。そうしたら新しい仕事探さないと」
「俺も働くよ。だから……」
そういうとテナシャはナタリーに睨みつけられた。
「はぁ……。もしかして稼ぎがないから愛想尽かせて追いだしたと思っているの? 違うわ。絵を描くのやめるってあなたがいったからよ。そりゃお金は欲しいけどね。それよりも私はテナシャの新しい絵が観たいのよ」
二人は元の鞘に戻る。そして数日後、宿部屋にハンター一行が訪れるのだった。
リプレイ本文
●
転移門を通り抜けるとそこはグラズヘイム王国。王都にやってきたハンター一行は依頼者が逗留する宿屋へと向かった。
「ハンターのみなさんですね」
「俺はコウ。よろしく」
扉をあけた青年テナシャの横をすり抜けるようにしてコウ(ka3233)は宿部屋に一歩を踏みだす。
「おめでとう。ツイてるわね貴方」
コウに続くイルミナ(ka5759)が振り返りながらテナシャを見上げる。
「ツイてる?」
「そうよ。聞いた話では、ギリギリで命を拾うし、恋人とも寄りを戻せるし、ハンターの助力は募れたし」
「いわれてみれば」
「これで後は私達が『当たり』かどうかってだけよね。脅しじゃないわよ? 私だって勝てるかどうかなんてわからないもの。精々祈っていて頂戴」
イルミナはぽんぽんとテナシャの腕を軽く叩いてからコウの元へ。
「ベッドに座っても構わないわよ」
室内にはテナシャの他にもう一人、ナタリーという女性がいた。
人数分の椅子はないので適当に座って話が始まる。
「町の中央広場の地下には十中八九、歪虚等が潜んでいるはずです。二人が話しているのを確かに――」
まずはテナシャの口から詳しい事情が語られた。
(ハロウィンを楽しみにしている親子も多いでしょうし……)
火艶 静 (ka5731)は彼の話を聞き漏らさぬよう耳をそばだてる。結局のところ危険人物二名の名前はまではわからなかった。ナタリーも知らない顔のようである。
「さすがは絵描きさんですね」
その代わり、テナシャは似顔絵を用意していた。似顔絵の束を受け取った火艶静が最初に眺める。一人は紳士風の格好、もう一人は某かの職人風だ。
「こいつらなのか。はぁ、やれやれ……パレードを狙うだなんて野暮なことをする奴も居たもんだな」
似顔絵を覗き込んだエリミネーター(ka5158)が掌で顔を覆いながらため息をつく。指先で頬を掻き、叩くように両膝の上へと両手をのせた。
「なぁに、心配しなさんなって! 大船に乗ったつもりでよ。どかァっとパレードの準備でもしてな!」
「は、はい!」
エリミネーターの迫力につい大声で返事をしてしまったテナシャだった。
こうしてテナシャとナタリーは知る限りの情報を一行に伝える。
「一人に二枚ずつ似顔絵も頂きましたし、お話もしっかり聞かせて頂きましたから、後はご自身の身の安全を図って下さい」
「実は俺も町へ同行しようかと思ってたんですが」
テナシャの申し出にミノル・ユスティース(ka5633)が首を横に振る。
「僕もテナシャさんは一緒に来ないほうがいいと思うな。きっと危ないよ」
「私もそう考えます。ナタリーさんとこちらでお待ちください」
瀬崎 琴音(ka2560)と夜桜 奏音(ka5754)も留まるように促す。
「大丈夫。必ずやり遂げて見せるから。だから、ここにいて」
アティ(ka2729)が更に一押しした。
腕を組んでしばらく目を瞑っていたテナシャが肩の力を抜く。説得を受け入れて王都で待つことにする。
「あのお願いが。テナシャを傷つけた分ぐらいは二人に仕返しをお願いします」
ナタリーが去り際の一行を呼び止める。ハンターの何名かが力強くわかったと言葉を返す。
現地には乗合馬車で向かう。一行が目的の町へ到着したのは翌日の深夜だった。
●
宿屋で一夜を過ごした一行は翌朝から聞き込みを開始する。ハロウィン当日は四日後に迫っていた。
瀬崎琴音は広場で二人を探す。
「この人ってどこにいるかな? 会いたいのだけど……」
「何で会いたいんだい?」
「仮装の出来がよくてね。市場の人に東方の生地の取り寄せをお願いしたら、直接交渉してって言われて。……こっちの人は、腕がいいからって薦められたんだ」
「そうだ。こっちの奴は――」
先に紳士風男の似顔絵をだして次に職人風男を見せる。詳細を求めつつ無理強いはしなかった。
アティ、コウ、イルミナも広場で聞き込みを行っていたがお互いに他人を装う。
「この人、知っていますか?」
アティが周囲の目を気にしつつ、町の女性に似顔絵を見せる。そのとき、彼女のすぐ近くを怪しい態度の男が通り過ぎた。
(あの男、横目で似顔絵を覗いたよな。わざわざゆっくり歩いて)
その様子をコウはみかけていた。
(お願いしますね)
アティも気づいていたが女性から新情報が聞けそうな雰囲気である。アイコンタクトでコウに任す。
(あいつを問い詰めたいんだ)
(わかったわ)
コウが秘密の合図でイルミナに協力を仰いだ。二人は裏道で男を挟み撃ちにして問い詰める。怪しい男の正体は職人風男の弟子だった。
(……流石に、こないな季節やと、アイスはなかったわぁ……)
瀬崎琴音が祠のような建造物の側で焼き栗を頬張る。
テナシャがいっていた地下への出入り口がここ。つまりこの扉奥の地下に歪虚等が潜んでいると考えられた。
鍵はしっかりと閉められている。活用している商家の情報も入手するのだった。
「すみません、今日町に来たばかりなんです。知り合いにこの人を頼るようにといわれたんですが、どこにいるか知りませんか?」
夜桜奏音は町で一番広い大通りで通行人に声をかけていた。
「あの――」
ミノルも同様である。単なる人探しとして深い理由を持たない素振りで道行く人を呼び止めた。
「これを落とされたのが、似顔絵の方なのです。ご存じなら教えて頂けませんか?」
火艶静は落とし物を届けたいといった理由で街角の商売人に訊ねる。
「あのばかでけぇお屋敷だな。姉ちゃん、ありがとよ!」
エリミネーターは林檎を買ったついでに売り子の娘から教えてもらう。
娘が指さした方角には大きな建物が見える。それは貴族風男が住んでいるらしい商家の屋敷。夜桜奏音、ミノル、火艶静も同様の情報を得ていた。
●
「な、何だ。お前達は!」
「投降しなさい。貴方に勝ち目はありませんよ」
瀬崎琴音、アティ、コウ、イルミナは裁縫職人『ガリガ』の仕事場である建物に踏み込んだ。
コウとイルミナが掴まえたガリガの弟子も連れてきてある。二人を白状させようとしたが中々埒があかない。だがアティは見逃さなかった。ガリガが時折窓の外を気にしているのを。
窓外に建っていた倉庫内をコウと瀬崎琴音が通風口から確認。南瓜お化け『ジャック』と骸骨のような雑魔を目の当たりにした。
それから約三十分経過。エリミネーター、ミノル、火艶静、夜桜奏音が紳士風男『マックス』を連れてくる。
「四人で商家を見張っていたら、のこのこと現れたのですよ」
ミノルが微笑むと同時にマックスはため息をつく。
ひとまず弟子は場から外される。ガリガの口は変わらず堅かったが、マックスはそれほどでもなかった。
広場の地下と裏の倉庫の二個所以外に潜伏場所があるかどうかが問題だ。マックスが吐露した雑魔の密輸方法によって大まかな数が判明。二個所で充分なことがわかる。
「ナタリーに頼まれたからな」
「俺様はこいつだ」
コウがガリガ、エリミネーターがマックスに悶絶の拳を食らわせた。死んでいないのを確かめた上できつく縛る。ガリガの弟子も同じようにしておく。
「戦う順番は裏の倉庫からでいいよね」
瀬崎琴音の意見は事前に相談済みだ。
「逃げだせそうな穴や通路がないか確認しておくか」
「賛成よ」
コウとイルミナが裏の倉庫の外壁を確かめる。倉庫は煉瓦造り。小さな採光窓や通風口はあったが、物資搬送用の鉄扉以外には見当たらない。その鉄扉にはしっかりと鍵が掛けられていた。
●
倉庫の鉄扉前で全員が覚醒を済ます。
ミノルが指を折ってカウント開始。すべての指が握られたところで夜桜奏音が解錠。その直後、エリミネーターとイルミナが鉄扉をわずかに開いた。
倉庫内に陽光が射し込んだのに合わせてミノル、アティ、コウ、火艶静が突入していく。
瀬崎琴音は青白い気を身体に漂わせながら『デルタレイ』を発動させる。彼女の前に浮かび上がった光の三角形の頂点から照射。三本の光条がそれぞれジャックのA・B・Cを貫いた。
アティのUDソードがジャックAの頭部を真っ二つに。瞬脚で一気に間合いを詰めたコウはジャックBの額にグイントクローによる三筋の爪痕を刻み込んだ。
火艶静が繰りだした刃は炎を吐こうとしていたジャックCの動きを止める。口の中の炎が膨れあがって頭部が破裂した。
仲間達が雑魔を抑えてくれたおかげでミノルは簡単に奥まで進める。仕込杖の刃を交わらせた相手は騎士のような姿をした鎧歪虚。守りの構えで強烈な一撃を耐えきった。
ミノルの背後を狙うジャックと骸骨雑魔に向けて、鉄扉付近の仲間達から援護が行われる。
矢が飛んでくる中、夜桜奏音が胡蝶符を打つと蝶に似た光弾が放たれた。骸骨雑魔の手首が砕かれると斧が床に落ちた。
エリミネーターが銃爪を絞る度に乾いた銃撃音が響き渡る。穴が空く度にジャックの頭部から光が漏れだす。止めに強弾を撃ち込んでバラバラに飛び散らせた。
イルミナは魔導銃「シェイド」を構えて様子を窺う。物陰から飛びだしてきたジャックが鎌を手にして迫った。イルミナの銃撃がそれを許さない。鎌の刃が彼女の喉元へ届く前に仕留めきる。
倉庫内の雑魔がすべて退治されて鎧歪虚のみが残った。
鎧歪虚が放った強烈な一撃でミノルが弾かれたが、コウが代わる。マルチステップで敵の懐に入り込み、自らを晒しながらも攻撃を避けていく。
その間にアティがヒールでミノルの傷を癒やす。
火艶静は『疾風剣』を発動。鎧歪虚との間合いを詰めて脇腹を貫き斬った。
エリミネーターの強弾が冑を弾きとばした。夜桜奏音が胡蝶符が乱れ、イルミナの銃弾も渠打ち付近に命中する。瀬崎琴音が放った光条が右胸を貫通すると剣を握っていた鎧歪虚の右腕が動かなくなった。
ミノルの強打が決まったとき、鎧歪虚の存在は終わりとなる。あっと言う間に崩れて床へと散らばるのだった。
●
日が暮れて広場に人がわずかになった頃、一行は地下へと潜る。出入り口の扉は内側から施錠。入ってすぐに用意されていたランタンを拝借して暗闇を照らす。狭くて長い階段を下りていった。
やがて闇の向こうに輝く二つの目と口が浮かび上がる。
「よう、怪物共はもうお祭り気分か? パレードはまだ先だぜ?」
瞬時にそれがジャックだと気づいたエリミネーターが喋りかけながら銃爪を絞る。イルミナの銃撃、さらに夜桜奏音の火炎符による炎で塵へと還した。
一瞬の炎による視認だったが床に至るまでの階段途中に敵は一体もいなかった。同時に今の戦いで敵にこちらの存在を気づかれたはずである。
全員が一気に階段を駆け下りていく。瀬崎琴音は床に足がついた瞬間、ジェットブーツで高く舞い上がった。
「おどろおどろしいなぁ」
梁の上からランタンで照らすと歪虚等が浮かび上がった。天井から垂れ下がる鈎にランタンを引っかけるとデルタレイを輝かせて三つの光条を敵に浴びせかける。
「なかなか力強いですね」
ジャックが振り下ろした鎌の刃をアティが愛剣で受け止めた。
「そちらはダメ、逃がさないわ」
アティから離れようとしたジャックの逃げ道をイルミナが銃撃で塞ぐ。
「ようっ!」
いつの間にかジャックの背後から迫っていたのがコウだ。ランアウトで死角に回り込んだのである。ジャックが気づいて炎を吐こうとしたがもう遅い。三本の爪を鳴かせながら頭部を深く抉り取ると散って消えていく。
「逃がしません」
夜桜奏音は火炎符にコンボカードを併用させた。炎に包まれた骸骨雑魔が顎をカタカタと鳴らしながら暴れる。離れた位置から様子を見ながら、もう一度炎の洗礼を浴びせかけて無に還した。
「こちらは任せてくださいね」
火艶静がミノルに一声かけてから疾風剣で骸骨雑魔の間合いを一気に詰める。その個体は他のと比べて二倍近くあった。
刃を突き立てながら技を出し惜しみせずに畳みかける。一度離れて電光石火で回り込みながら一撃。さらに剣心一如で背骨を砕いた。急所をやられた骸骨雑魔はバラバラに崩れる。
「お前の敵はこっちだ!」
声を荒らげるミノルはこちらでも鎧歪虚と対峙していた。しかし受けたときの衝撃が全く違う。目前の鎧歪虚の方が確実に強かった。残っていた守りの構えで刃に黒い炎を纏った一撃を凌ぎきる。アティのヒールに癒やされながらミノルは堪えた。
雑魔のすべてが片付いた頃、仲間が駆けつけてくれる。
もう技を温存する必要はない。闇の地下空間に炎、光の輝き、マズルフラッシュ、火花が躍った。
「あの人間共が裏切ったのかあっ!」
一度だけ鎧歪虚は喋った。
「今頃はパレードの仮装準備でもしてるじゃねェの」
軽口を叩くエリミネーターの強弾が鎧歪虚の盾に亀裂を入れる。
「狂信者を増やすのは止めてもらえませんかね。消えていくあなたにこんなとこいっても仕方ないのでしょうけれど」
ミノルが振り下ろした刀を鎧歪虚の盾は防ぎきれない。砕け散り、刃は勢いのまま肩口へと深く食い込んだ。床に両膝を落とすように倒れた鎧歪虚は砂のように崩れる。すぐに跡形もなく消えていくのだった。
●
歪虚退治を終えたハンター達は魔導伝話を借りて王都支部と連絡をとる。宿屋で待機している依頼人達に伝言を頼んだ。
二日後、テナシャとナタリーが町に戻る。
「よかった。本当に……」
「ハンターのみなさん、ありがとうございました」
テナシャとナタリーが瞳に涙を溜めながらハンター達に感謝した。そして今日はハロウィンの当日だ。
「トリック・オア・トリート!」
町のそこかしこから子供達の声が聞こえてくる。町の人々の半数以上がお化けに仮装していた。ナタリーの住処には昔使った衣装が残っている。せっかくなのでハンター達もお祭りに参加した。
「……コウ?」
「俺達もいこうぜ」
「え? ハロウィン? ………いいけど……」
コウとイルミナもお化けに扮装してパレードに加わる。南瓜の被り物で練り歩く。テナシャとナタリーは吸血鬼の格好だ。
楽しい一時はあっと言う間に過ぎ去る。
別れ際、エリミネーターがテナシャに手渡す。それは新しい絵の具だった。
「今回は災難だったな。こいつァ見舞い代わりって奴だ。受け取ってくんな」
「いいんですか! ありがとうございます。これでいい絵を描かせてもらいます」
「何かあったらまた連絡してくれや。さて、あとは二人の時間をゆっくり過ごしてくれ。あばよ!」
テナシャとナタリーはハンター達が乗り込んだ乗合馬車を見送る。
歪虚に関係した三名は一緒に連れて行く。王都の支部に預け、調べ終わった後は王国騎士団に引き渡されることだろう。
ハロウィン当日に町を徘徊したのは仮装のお化け。子供達の心の中に残ったのは楽しい思い出だけだった。
転移門を通り抜けるとそこはグラズヘイム王国。王都にやってきたハンター一行は依頼者が逗留する宿屋へと向かった。
「ハンターのみなさんですね」
「俺はコウ。よろしく」
扉をあけた青年テナシャの横をすり抜けるようにしてコウ(ka3233)は宿部屋に一歩を踏みだす。
「おめでとう。ツイてるわね貴方」
コウに続くイルミナ(ka5759)が振り返りながらテナシャを見上げる。
「ツイてる?」
「そうよ。聞いた話では、ギリギリで命を拾うし、恋人とも寄りを戻せるし、ハンターの助力は募れたし」
「いわれてみれば」
「これで後は私達が『当たり』かどうかってだけよね。脅しじゃないわよ? 私だって勝てるかどうかなんてわからないもの。精々祈っていて頂戴」
イルミナはぽんぽんとテナシャの腕を軽く叩いてからコウの元へ。
「ベッドに座っても構わないわよ」
室内にはテナシャの他にもう一人、ナタリーという女性がいた。
人数分の椅子はないので適当に座って話が始まる。
「町の中央広場の地下には十中八九、歪虚等が潜んでいるはずです。二人が話しているのを確かに――」
まずはテナシャの口から詳しい事情が語られた。
(ハロウィンを楽しみにしている親子も多いでしょうし……)
火艶 静 (ka5731)は彼の話を聞き漏らさぬよう耳をそばだてる。結局のところ危険人物二名の名前はまではわからなかった。ナタリーも知らない顔のようである。
「さすがは絵描きさんですね」
その代わり、テナシャは似顔絵を用意していた。似顔絵の束を受け取った火艶静が最初に眺める。一人は紳士風の格好、もう一人は某かの職人風だ。
「こいつらなのか。はぁ、やれやれ……パレードを狙うだなんて野暮なことをする奴も居たもんだな」
似顔絵を覗き込んだエリミネーター(ka5158)が掌で顔を覆いながらため息をつく。指先で頬を掻き、叩くように両膝の上へと両手をのせた。
「なぁに、心配しなさんなって! 大船に乗ったつもりでよ。どかァっとパレードの準備でもしてな!」
「は、はい!」
エリミネーターの迫力につい大声で返事をしてしまったテナシャだった。
こうしてテナシャとナタリーは知る限りの情報を一行に伝える。
「一人に二枚ずつ似顔絵も頂きましたし、お話もしっかり聞かせて頂きましたから、後はご自身の身の安全を図って下さい」
「実は俺も町へ同行しようかと思ってたんですが」
テナシャの申し出にミノル・ユスティース(ka5633)が首を横に振る。
「僕もテナシャさんは一緒に来ないほうがいいと思うな。きっと危ないよ」
「私もそう考えます。ナタリーさんとこちらでお待ちください」
瀬崎 琴音(ka2560)と夜桜 奏音(ka5754)も留まるように促す。
「大丈夫。必ずやり遂げて見せるから。だから、ここにいて」
アティ(ka2729)が更に一押しした。
腕を組んでしばらく目を瞑っていたテナシャが肩の力を抜く。説得を受け入れて王都で待つことにする。
「あのお願いが。テナシャを傷つけた分ぐらいは二人に仕返しをお願いします」
ナタリーが去り際の一行を呼び止める。ハンターの何名かが力強くわかったと言葉を返す。
現地には乗合馬車で向かう。一行が目的の町へ到着したのは翌日の深夜だった。
●
宿屋で一夜を過ごした一行は翌朝から聞き込みを開始する。ハロウィン当日は四日後に迫っていた。
瀬崎琴音は広場で二人を探す。
「この人ってどこにいるかな? 会いたいのだけど……」
「何で会いたいんだい?」
「仮装の出来がよくてね。市場の人に東方の生地の取り寄せをお願いしたら、直接交渉してって言われて。……こっちの人は、腕がいいからって薦められたんだ」
「そうだ。こっちの奴は――」
先に紳士風男の似顔絵をだして次に職人風男を見せる。詳細を求めつつ無理強いはしなかった。
アティ、コウ、イルミナも広場で聞き込みを行っていたがお互いに他人を装う。
「この人、知っていますか?」
アティが周囲の目を気にしつつ、町の女性に似顔絵を見せる。そのとき、彼女のすぐ近くを怪しい態度の男が通り過ぎた。
(あの男、横目で似顔絵を覗いたよな。わざわざゆっくり歩いて)
その様子をコウはみかけていた。
(お願いしますね)
アティも気づいていたが女性から新情報が聞けそうな雰囲気である。アイコンタクトでコウに任す。
(あいつを問い詰めたいんだ)
(わかったわ)
コウが秘密の合図でイルミナに協力を仰いだ。二人は裏道で男を挟み撃ちにして問い詰める。怪しい男の正体は職人風男の弟子だった。
(……流石に、こないな季節やと、アイスはなかったわぁ……)
瀬崎琴音が祠のような建造物の側で焼き栗を頬張る。
テナシャがいっていた地下への出入り口がここ。つまりこの扉奥の地下に歪虚等が潜んでいると考えられた。
鍵はしっかりと閉められている。活用している商家の情報も入手するのだった。
「すみません、今日町に来たばかりなんです。知り合いにこの人を頼るようにといわれたんですが、どこにいるか知りませんか?」
夜桜奏音は町で一番広い大通りで通行人に声をかけていた。
「あの――」
ミノルも同様である。単なる人探しとして深い理由を持たない素振りで道行く人を呼び止めた。
「これを落とされたのが、似顔絵の方なのです。ご存じなら教えて頂けませんか?」
火艶静は落とし物を届けたいといった理由で街角の商売人に訊ねる。
「あのばかでけぇお屋敷だな。姉ちゃん、ありがとよ!」
エリミネーターは林檎を買ったついでに売り子の娘から教えてもらう。
娘が指さした方角には大きな建物が見える。それは貴族風男が住んでいるらしい商家の屋敷。夜桜奏音、ミノル、火艶静も同様の情報を得ていた。
●
「な、何だ。お前達は!」
「投降しなさい。貴方に勝ち目はありませんよ」
瀬崎琴音、アティ、コウ、イルミナは裁縫職人『ガリガ』の仕事場である建物に踏み込んだ。
コウとイルミナが掴まえたガリガの弟子も連れてきてある。二人を白状させようとしたが中々埒があかない。だがアティは見逃さなかった。ガリガが時折窓の外を気にしているのを。
窓外に建っていた倉庫内をコウと瀬崎琴音が通風口から確認。南瓜お化け『ジャック』と骸骨のような雑魔を目の当たりにした。
それから約三十分経過。エリミネーター、ミノル、火艶静、夜桜奏音が紳士風男『マックス』を連れてくる。
「四人で商家を見張っていたら、のこのこと現れたのですよ」
ミノルが微笑むと同時にマックスはため息をつく。
ひとまず弟子は場から外される。ガリガの口は変わらず堅かったが、マックスはそれほどでもなかった。
広場の地下と裏の倉庫の二個所以外に潜伏場所があるかどうかが問題だ。マックスが吐露した雑魔の密輸方法によって大まかな数が判明。二個所で充分なことがわかる。
「ナタリーに頼まれたからな」
「俺様はこいつだ」
コウがガリガ、エリミネーターがマックスに悶絶の拳を食らわせた。死んでいないのを確かめた上できつく縛る。ガリガの弟子も同じようにしておく。
「戦う順番は裏の倉庫からでいいよね」
瀬崎琴音の意見は事前に相談済みだ。
「逃げだせそうな穴や通路がないか確認しておくか」
「賛成よ」
コウとイルミナが裏の倉庫の外壁を確かめる。倉庫は煉瓦造り。小さな採光窓や通風口はあったが、物資搬送用の鉄扉以外には見当たらない。その鉄扉にはしっかりと鍵が掛けられていた。
●
倉庫の鉄扉前で全員が覚醒を済ます。
ミノルが指を折ってカウント開始。すべての指が握られたところで夜桜奏音が解錠。その直後、エリミネーターとイルミナが鉄扉をわずかに開いた。
倉庫内に陽光が射し込んだのに合わせてミノル、アティ、コウ、火艶静が突入していく。
瀬崎琴音は青白い気を身体に漂わせながら『デルタレイ』を発動させる。彼女の前に浮かび上がった光の三角形の頂点から照射。三本の光条がそれぞれジャックのA・B・Cを貫いた。
アティのUDソードがジャックAの頭部を真っ二つに。瞬脚で一気に間合いを詰めたコウはジャックBの額にグイントクローによる三筋の爪痕を刻み込んだ。
火艶静が繰りだした刃は炎を吐こうとしていたジャックCの動きを止める。口の中の炎が膨れあがって頭部が破裂した。
仲間達が雑魔を抑えてくれたおかげでミノルは簡単に奥まで進める。仕込杖の刃を交わらせた相手は騎士のような姿をした鎧歪虚。守りの構えで強烈な一撃を耐えきった。
ミノルの背後を狙うジャックと骸骨雑魔に向けて、鉄扉付近の仲間達から援護が行われる。
矢が飛んでくる中、夜桜奏音が胡蝶符を打つと蝶に似た光弾が放たれた。骸骨雑魔の手首が砕かれると斧が床に落ちた。
エリミネーターが銃爪を絞る度に乾いた銃撃音が響き渡る。穴が空く度にジャックの頭部から光が漏れだす。止めに強弾を撃ち込んでバラバラに飛び散らせた。
イルミナは魔導銃「シェイド」を構えて様子を窺う。物陰から飛びだしてきたジャックが鎌を手にして迫った。イルミナの銃撃がそれを許さない。鎌の刃が彼女の喉元へ届く前に仕留めきる。
倉庫内の雑魔がすべて退治されて鎧歪虚のみが残った。
鎧歪虚が放った強烈な一撃でミノルが弾かれたが、コウが代わる。マルチステップで敵の懐に入り込み、自らを晒しながらも攻撃を避けていく。
その間にアティがヒールでミノルの傷を癒やす。
火艶静は『疾風剣』を発動。鎧歪虚との間合いを詰めて脇腹を貫き斬った。
エリミネーターの強弾が冑を弾きとばした。夜桜奏音が胡蝶符が乱れ、イルミナの銃弾も渠打ち付近に命中する。瀬崎琴音が放った光条が右胸を貫通すると剣を握っていた鎧歪虚の右腕が動かなくなった。
ミノルの強打が決まったとき、鎧歪虚の存在は終わりとなる。あっと言う間に崩れて床へと散らばるのだった。
●
日が暮れて広場に人がわずかになった頃、一行は地下へと潜る。出入り口の扉は内側から施錠。入ってすぐに用意されていたランタンを拝借して暗闇を照らす。狭くて長い階段を下りていった。
やがて闇の向こうに輝く二つの目と口が浮かび上がる。
「よう、怪物共はもうお祭り気分か? パレードはまだ先だぜ?」
瞬時にそれがジャックだと気づいたエリミネーターが喋りかけながら銃爪を絞る。イルミナの銃撃、さらに夜桜奏音の火炎符による炎で塵へと還した。
一瞬の炎による視認だったが床に至るまでの階段途中に敵は一体もいなかった。同時に今の戦いで敵にこちらの存在を気づかれたはずである。
全員が一気に階段を駆け下りていく。瀬崎琴音は床に足がついた瞬間、ジェットブーツで高く舞い上がった。
「おどろおどろしいなぁ」
梁の上からランタンで照らすと歪虚等が浮かび上がった。天井から垂れ下がる鈎にランタンを引っかけるとデルタレイを輝かせて三つの光条を敵に浴びせかける。
「なかなか力強いですね」
ジャックが振り下ろした鎌の刃をアティが愛剣で受け止めた。
「そちらはダメ、逃がさないわ」
アティから離れようとしたジャックの逃げ道をイルミナが銃撃で塞ぐ。
「ようっ!」
いつの間にかジャックの背後から迫っていたのがコウだ。ランアウトで死角に回り込んだのである。ジャックが気づいて炎を吐こうとしたがもう遅い。三本の爪を鳴かせながら頭部を深く抉り取ると散って消えていく。
「逃がしません」
夜桜奏音は火炎符にコンボカードを併用させた。炎に包まれた骸骨雑魔が顎をカタカタと鳴らしながら暴れる。離れた位置から様子を見ながら、もう一度炎の洗礼を浴びせかけて無に還した。
「こちらは任せてくださいね」
火艶静がミノルに一声かけてから疾風剣で骸骨雑魔の間合いを一気に詰める。その個体は他のと比べて二倍近くあった。
刃を突き立てながら技を出し惜しみせずに畳みかける。一度離れて電光石火で回り込みながら一撃。さらに剣心一如で背骨を砕いた。急所をやられた骸骨雑魔はバラバラに崩れる。
「お前の敵はこっちだ!」
声を荒らげるミノルはこちらでも鎧歪虚と対峙していた。しかし受けたときの衝撃が全く違う。目前の鎧歪虚の方が確実に強かった。残っていた守りの構えで刃に黒い炎を纏った一撃を凌ぎきる。アティのヒールに癒やされながらミノルは堪えた。
雑魔のすべてが片付いた頃、仲間が駆けつけてくれる。
もう技を温存する必要はない。闇の地下空間に炎、光の輝き、マズルフラッシュ、火花が躍った。
「あの人間共が裏切ったのかあっ!」
一度だけ鎧歪虚は喋った。
「今頃はパレードの仮装準備でもしてるじゃねェの」
軽口を叩くエリミネーターの強弾が鎧歪虚の盾に亀裂を入れる。
「狂信者を増やすのは止めてもらえませんかね。消えていくあなたにこんなとこいっても仕方ないのでしょうけれど」
ミノルが振り下ろした刀を鎧歪虚の盾は防ぎきれない。砕け散り、刃は勢いのまま肩口へと深く食い込んだ。床に両膝を落とすように倒れた鎧歪虚は砂のように崩れる。すぐに跡形もなく消えていくのだった。
●
歪虚退治を終えたハンター達は魔導伝話を借りて王都支部と連絡をとる。宿屋で待機している依頼人達に伝言を頼んだ。
二日後、テナシャとナタリーが町に戻る。
「よかった。本当に……」
「ハンターのみなさん、ありがとうございました」
テナシャとナタリーが瞳に涙を溜めながらハンター達に感謝した。そして今日はハロウィンの当日だ。
「トリック・オア・トリート!」
町のそこかしこから子供達の声が聞こえてくる。町の人々の半数以上がお化けに仮装していた。ナタリーの住処には昔使った衣装が残っている。せっかくなのでハンター達もお祭りに参加した。
「……コウ?」
「俺達もいこうぜ」
「え? ハロウィン? ………いいけど……」
コウとイルミナもお化けに扮装してパレードに加わる。南瓜の被り物で練り歩く。テナシャとナタリーは吸血鬼の格好だ。
楽しい一時はあっと言う間に過ぎ去る。
別れ際、エリミネーターがテナシャに手渡す。それは新しい絵の具だった。
「今回は災難だったな。こいつァ見舞い代わりって奴だ。受け取ってくんな」
「いいんですか! ありがとうございます。これでいい絵を描かせてもらいます」
「何かあったらまた連絡してくれや。さて、あとは二人の時間をゆっくり過ごしてくれ。あばよ!」
テナシャとナタリーはハンター達が乗り込んだ乗合馬車を見送る。
歪虚に関係した三名は一緒に連れて行く。王都の支部に預け、調べ終わった後は王国騎士団に引き渡されることだろう。
ハロウィン当日に町を徘徊したのは仮装のお化け。子供達の心の中に残ったのは楽しい思い出だけだった。
依頼結果
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MVP一覧
- ゲルタの彼氏?
ミノル・ユスティース(ka5633)
重体一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ミノル・ユスティース(ka5633) 人間(クリムゾンウェスト)|25才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/10/21 19:44:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/19 22:13:54 |