ゲスト
(ka0000)
モンスタードール
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/10/25 19:00
- 完成日
- 2015/10/31 02:33
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
● 一週間前
10人の男の子達が墓地にいる。
昼でも人気のないこの場所は、最近彼らの集会場となっていた。
「持ってきたか」
「もちろん、今日は負けないぞ。装備を強化したんだ」
「ジョイ来てないね」
「ああ、あいつかーちゃんにモンスタードール取り上げられちゃったんだって」
モンスタードールというのは、30センチ大の人形だ。といって女の子がままごと遊びに使うようなものとは全く違う。顔に縫い目があったり頭に針が刺さっていたりへしゃげていたり……ノコギリだの大鋏だの金づちだのいった物騒な代物も持っている。
男の子たちは組になって、手持ちのそれを向かい合わせた。
「よーし、それ行けチャーリー! バラバラにしちゃえ!」
「行け、負けるなジャック! あいつの首をちょん切れ!」
けしかけられた人形たちの目が赤く光り、相手の人形に襲いかかる。
「いいぞ、行け、そこだ!」
「馬鹿、あーもうなんだよ! こんなに早くやられんなよ、もー!」
「まだ武器はあるぞ、最後まで諦めるな!」
たちまちボロボロになっていくモンスタードールたち。
でも大丈夫。散った部品を集めて箱に入れておけば、一晩で元に戻る。
どんな理屈でそうなっているのか、男の子たちは全く知らない。これを道端で売っていた行商人は『最新型のおもちゃ』であり『今日ここだけの特別販売品』である、ということだけしか言っていなかったので。
● 五日前
「『モンスタードール?』」
「はい。一部の子供の間ではやってるおもちゃだそうです。号令をかければ勝手に戦い合うとか。ここにある一体は、教育上よろしくないということで親が取り上げ、持ち込んできたもので……」
警察署長は部下から手渡された不気味な人形をしげしげ眺め、それが手にしている千枚通しを引っ張った。
「離れないね」
「はい、接着でもしてあるようで。自己修復というんですか、そんな能力もあるそうです」
「それはすごいね。どこの工房がこんなものを作ったんだ?」
「それが、どこを見ても印章がありませんで」
「ふーん……流通経路は?」
「それも定かではありませんでした。なんでも行商人が売っていたそうですが、該当者と思われる人物は、とうにこの町を引き払っておりまして」
「そうか。まあ……念のため、錬成工房に送って調べてもらうか。認可を得てない魔導商品は、問題が起きることが多いからね」
● 一昨日
夜の町を野良犬が歩いて行く。家と家との隙間、裏道の裏道を進んで行く。
その足が不意に止まった。
行く手の暗がりに無数の赤い光が見える。
犬はくんくん鼻をひくつかせた。
一体何だろう。人間でないのはもちろん、猫でもネズミでもなさそうだが――。
● 一昨日
飲み友達と飲み屋をハシゴしていた男は、足を止め振り向いた。
「え、何だ今のはよう。犬の声じゃねえか」
「だな。どっかで蹴っ飛ばされたかな――おいおい、お前どこに行くんだ」
「いや、気になってな。ちっと見に行ってみようや」
「物好きだね。どうでもいいじゃねえか、犬なんざ。女の悲鳴ならともかく」
ほろ酔い加減で裏通りの裏通りへと首を突っ込んだ彼らは、一気に酔いを冷ました。
そこには犬がバラバラにされていた。頭部、四肢、尾の離れた胴の部分は縦に割られ内蔵が飛び出している。頭部も耳や鼻が切り落とされ、目玉がえぐり出されている……。
● 一昨日
闇の中ひそひそと家路へ――箱の中へ戻って行く人形たちは思っていた。
生き物をバラバラにするのは案外簡単だ。
お互い同士で切り刻みあうのもつまらなくなってきた。
生き物は刻むと大声を上げいろんなものを撒き散らすのでおもしろい。
● 今日
署長は、送られてきた錬成工房からの回答書に目を見張った。
『鑑定を依頼された品についてですが、恐らくいずこかの地下工房で作られた商品かと思われます。ですので、正直相当な粗悪品です。マテリアル機関を稼働させる際生じる瘴気の分解装置さえ、つけられておりません。使用を続けていれば何らかの問題が起きる可能性があります。最悪歪虚化もしかねません。私共といたしましては、速やかに回収破棄することをお勧めいたします。』
彼の脳裏に浮かぶのは、今朝方部下が告げてきた野良犬の惨殺事件である。現場には血まみれの小さな足跡が、幾つも残っていたそうだが……。
「……まさかな……いや、しかし……」
● 今日
男の子たちは墓地に来ていた。
「今日こそ僕が勝つからな」
「へーん。どうせすぐ負けるさ。いつものことじゃん」
いつものように組になり、人形を向かい合わせる。号令をかける。
「行け、アーサー!」
「やれ、腹斬丸!」
人形たちは目を赤く光らせた。そして――いつもと違ってじっと子供たちを見上げ――いっせいに飛びかかってきた。
10人の男の子達が墓地にいる。
昼でも人気のないこの場所は、最近彼らの集会場となっていた。
「持ってきたか」
「もちろん、今日は負けないぞ。装備を強化したんだ」
「ジョイ来てないね」
「ああ、あいつかーちゃんにモンスタードール取り上げられちゃったんだって」
モンスタードールというのは、30センチ大の人形だ。といって女の子がままごと遊びに使うようなものとは全く違う。顔に縫い目があったり頭に針が刺さっていたりへしゃげていたり……ノコギリだの大鋏だの金づちだのいった物騒な代物も持っている。
男の子たちは組になって、手持ちのそれを向かい合わせた。
「よーし、それ行けチャーリー! バラバラにしちゃえ!」
「行け、負けるなジャック! あいつの首をちょん切れ!」
けしかけられた人形たちの目が赤く光り、相手の人形に襲いかかる。
「いいぞ、行け、そこだ!」
「馬鹿、あーもうなんだよ! こんなに早くやられんなよ、もー!」
「まだ武器はあるぞ、最後まで諦めるな!」
たちまちボロボロになっていくモンスタードールたち。
でも大丈夫。散った部品を集めて箱に入れておけば、一晩で元に戻る。
どんな理屈でそうなっているのか、男の子たちは全く知らない。これを道端で売っていた行商人は『最新型のおもちゃ』であり『今日ここだけの特別販売品』である、ということだけしか言っていなかったので。
● 五日前
「『モンスタードール?』」
「はい。一部の子供の間ではやってるおもちゃだそうです。号令をかければ勝手に戦い合うとか。ここにある一体は、教育上よろしくないということで親が取り上げ、持ち込んできたもので……」
警察署長は部下から手渡された不気味な人形をしげしげ眺め、それが手にしている千枚通しを引っ張った。
「離れないね」
「はい、接着でもしてあるようで。自己修復というんですか、そんな能力もあるそうです」
「それはすごいね。どこの工房がこんなものを作ったんだ?」
「それが、どこを見ても印章がありませんで」
「ふーん……流通経路は?」
「それも定かではありませんでした。なんでも行商人が売っていたそうですが、該当者と思われる人物は、とうにこの町を引き払っておりまして」
「そうか。まあ……念のため、錬成工房に送って調べてもらうか。認可を得てない魔導商品は、問題が起きることが多いからね」
● 一昨日
夜の町を野良犬が歩いて行く。家と家との隙間、裏道の裏道を進んで行く。
その足が不意に止まった。
行く手の暗がりに無数の赤い光が見える。
犬はくんくん鼻をひくつかせた。
一体何だろう。人間でないのはもちろん、猫でもネズミでもなさそうだが――。
● 一昨日
飲み友達と飲み屋をハシゴしていた男は、足を止め振り向いた。
「え、何だ今のはよう。犬の声じゃねえか」
「だな。どっかで蹴っ飛ばされたかな――おいおい、お前どこに行くんだ」
「いや、気になってな。ちっと見に行ってみようや」
「物好きだね。どうでもいいじゃねえか、犬なんざ。女の悲鳴ならともかく」
ほろ酔い加減で裏通りの裏通りへと首を突っ込んだ彼らは、一気に酔いを冷ました。
そこには犬がバラバラにされていた。頭部、四肢、尾の離れた胴の部分は縦に割られ内蔵が飛び出している。頭部も耳や鼻が切り落とされ、目玉がえぐり出されている……。
● 一昨日
闇の中ひそひそと家路へ――箱の中へ戻って行く人形たちは思っていた。
生き物をバラバラにするのは案外簡単だ。
お互い同士で切り刻みあうのもつまらなくなってきた。
生き物は刻むと大声を上げいろんなものを撒き散らすのでおもしろい。
● 今日
署長は、送られてきた錬成工房からの回答書に目を見張った。
『鑑定を依頼された品についてですが、恐らくいずこかの地下工房で作られた商品かと思われます。ですので、正直相当な粗悪品です。マテリアル機関を稼働させる際生じる瘴気の分解装置さえ、つけられておりません。使用を続けていれば何らかの問題が起きる可能性があります。最悪歪虚化もしかねません。私共といたしましては、速やかに回収破棄することをお勧めいたします。』
彼の脳裏に浮かぶのは、今朝方部下が告げてきた野良犬の惨殺事件である。現場には血まみれの小さな足跡が、幾つも残っていたそうだが……。
「……まさかな……いや、しかし……」
● 今日
男の子たちは墓地に来ていた。
「今日こそ僕が勝つからな」
「へーん。どうせすぐ負けるさ。いつものことじゃん」
いつものように組になり、人形を向かい合わせる。号令をかける。
「行け、アーサー!」
「やれ、腹斬丸!」
人形たちは目を赤く光らせた。そして――いつもと違ってじっと子供たちを見上げ――いっせいに飛びかかってきた。
リプレイ本文
署長から経緯の説明を受けたハンターたちは、事態が容易ならざるものであることを悟った。
ザレム・アズール(ka0878)は苦り切った顔で言う。
「そもそも手前で勝手に動く人形ってのは怪談の類じゃねえのか?」
1人1体使っていたと仮定すれば、歪虚となった人形は10体にのぼる。墓場であれば当然墓標が林立しているはずだ。小柄な人形にとって、それは格好の遮蔽物になる……。
(――開けた場所に誘い出せるよう仕掛けるか)
作戦の方向性を即座に決めたザレムは、連れてきた柴犬を抱き上げる。
「足になるもの持ってきてない奴、いるか? 1人なら俺の馬に乗せられるぞ」
ユーリ(ka5364)がすぐさま手を上げる。
「なら頼む。善は急げってな、かっ飛ばして行こうぜ」
ザレムのゴースロンは、人間2人と犬1匹を背に走りだす。
ノーマン・コモンズ(ka0251)は署長に確認を取った。地図を片手に。
「子供たちは北側の旧墓地敷地内にいる、ということでよろしいですか?」
「ああ、それで間違いないと思う。以前から、子供が勝手に出入りして困るという話は出ていたから」
それだけ聞くと彼もまた、馬に乗り駆け出す。
ルシェン・グライシス(ka5745)はバイクのグリップを回した。
「先に行ってますから!」
バイクは猛スピードで町角を曲がりたちまち見えなくなった。
ベアテ アスタフェイ(ka1375)は自転車のペダルを踏む。競輪選手並の勢いで。
「子供たち、無事でいてよっ!」
コルネリア・S(ka5302)も急いで馬に乗る。彼女は内心少々不安であった。乗馬の腕は並、馬も並。おまけに荷物がちと多い。
「大型盾に金属甲冑、かさばるくまんてぃーぬ。長距離というほどではないがキツイな」
といっても馬は馬。走りだせばそれなりに早い。
先発組を見送ったシルフィウム=クイーン=ハート(ka3981)は口を尖らせた。不機嫌そうなのは、足となるものをハンターオフィスから借りられなかったからである。
「お茶を飲む時間もないのかしら。忙しない事」
彼女と同じく後発組であるクロード・インベルク(ka1506)は、資料として提出された人形に、きつい視線を向けた。実に趣味の悪い代物だ、と。
「とんだ粗悪品だね。こんな物を売りつけるなんて、ちょっと許せないな。どんな商人が売ったのか興味もあるけど……まずは救出が先だね」
急がなければ。
とはいうもののその前に、調べるべきところ調べておいた方がいい。
「署長さん、墓地の地図などはありますか? 可能なら詳細の分かるようなものをお借りし――」
クロードの脇腹に衝撃が走った。シルフィウムが力いっぱいマジカルステッキで突いてきたのである。
「ちょっと、今は私が話すターンですわよ……身の程をわきまえなさい身の程を」
「え? あ、すいません……」
つい謝ってしまうクロード。
それほどシルフィウムの尊大さは、自然体だった。
●
ノーマンは人馬一体となって、なだらかな山の斜面を駆け登っていた。背後からルシェンのバイク音が聞こえてくる。
(……子供たちが遊び場所にしている一番古い区画は、北側でしたね……普段からお参りの人もあまり来ないとか……)
仕入れた情報を反芻していたその時、けたたましい悲鳴が行く手から聞こえてきた。
踵が馬の腹を強く蹴る。
速度を増した馬は墓地の柵を軽々と越え、子供たちと、子供たちを襲っている人形の間に躍り出る。
ノーマンはスローイングカードを投げ付けた。
人形は動きを止め、馬から飛び降り立ちはだかってきたものに、大鋏、ノコギリ、金づち、鉄パイプ等々の凶器を振りかざし、きしんだ笑い声を上げた。
凶器の幾つかに血が付いている。幾人もの子供が泣きわめいている。
「いたいよ、いたいー!」
「あしっ、あしいたいー!」
人形たちはノーマンに向かい、距離を詰めてきた。
自分に注意が向いているなら上々。そう思ったとき、鋭い痛みを覚えた。後方から近づいてきた人形がアイスピックで足の甲を突いたのだ。
振り向きざまセイバーでなぎ払い、離れさせる。返す刃で前方から近づいてきた人形を跳ね飛ばす。細切れにしてやりたい衝動は極力押さえた。仲間が来るまでは向こうに合わせなければならない。子供たちへの興味をそらさせるために。
ルシェンがバイクを乗り捨て駆け込んできた。
「皆、大丈夫ですか!」
ノーマンの後方で盾をかざし、痛がり泣いている子供らに言い聞かせる。
「ごめんなさいね、治してあげるから、見せてくれる?」
子供らは足を手で庇っていた。それをどけてみれば、血だらけである。大急ぎで傷口に手をかざし癒しの光を当てる。しかしなかなかそれに集中出来ない。人形たちは遊びを邪魔されたのが気に入らない様子で、飽く事なく攻撃してくるのだ。
「しっ! しっ! 向こうへ行きなさい!」
子供たちにこれ以上の危害が加えられないようガードしつつ、応援を待つ。
●
ベアテは自転車をこぎまくっていた。トランシーバを耳元に当てつつ。
少し前ノーマンとルシェンから、墓地に着いたと連絡があった。そして今、ザレムとユーリから同様の連絡があった。
「先発隊が向かってくれてるけれど私も速く向かわないと」
先を急ぐ彼女の耳に、おーいと呼びかける声。
振り向けば、馬に乗るコルネリア。
足を回転させながらベアテは答える。併走してくる相手に向けて。
「あれっ、コルネリア!」
「ああ、やっぱりベアテさんですか! よかった、追いつけて! 自転車にまで置いて行かれたらどうしようって思ってました、私!」
●
ザレムとユーリの乗る馬が、墓地に馬蹄を轟かせる。
「墓場から出ろ! 狂った人形を退治しに来たんだ!」
叫びながらザレムは、距離が有る中人形に向け、デルタレイを放った。
光線が当たった人形の胸に真っ黒な穴が空く。それを見て幾らか警戒心を持っただろうか、ほかの人形たちは墓石の後ろに身を隠した。
ユーリはザレムより先に馬から飛び降りる。ルシェンの側に陣取る。
「ちょいと危ねェところだったな、大丈夫か? 人形よりすげェの見せてやっから、よく見とけよ」
努めて明るく呼びかけ、子供の人数を確認する。
子供は、ちゃんと10人揃っていた。続けて人形の数も数えようとしたが、こちらは難しかった。物陰に出たり入ったり動き回っているのだ。陰険な獣のように獲物の隙を狙いつつ。
胸に穴の空いた人形が立ち上がり睨んできた。赤く光る目に憎悪が浮かんでいる。
「どいつもこいつもひでえ御面相だなオイ……人形遊びはガキの遊びの定番だが、それも愛嬌のある人形ってのが前提なんだぜ? 作った奴はわかってねェな」
デルタレイを撃ちつつザレムも下馬し、ルシェンたちの反対側に陣取った。これで非戦闘員を中に円陣を組む形となる。
彼はおびえ切っている子供たちに発破をかけた。飛びかかる人形をシールドで弾き飛ばしながら。
「皆ここから出るんだ。大丈夫だ、俺たちがしっかり守るからな!」
とはいうものの移動は容易で無さそうだ。恐怖で竦んでいるのは勿論のこと、ほぼ全員が足になんらかの怪我を追っている。どうやら人形たちは、まず最初にそこを狙ってくるらしい。いち早く戦闘に入っているノーマンも、足袋のあちこちが赤く染まっている。
ルシェンが仲間へのプロテクションをかける傍ら治癒に当たっているが、人形が逃げ隠れしながらちょっかいをかけてくるので、なかなかそちらに集中出来ない。
「離れるなよ!」
ノーマンは子供を抱き抱え、なるべく一カ所に固まるようにさせた。守りやすいように。
そこへ、ベアテとコルネリアが駆け込んできた。
ベアテはルシェンの側に駆け寄り、子供への治療を手伝う。
「もう、大丈夫よ。びっくりしなかった? 泣かないで、いい子ね」
鎧に盾、ハンマー、プラス熊という重装備のコルネリアは、人形の前に立ちはだかった。
「さあ、お人形さん。どこからでもかかってきていいんですよ!」
彼女は対人形に対してのみ力を注ぐ所存である。両手が塞がった状態なので、子供を抱き抱えて保護したりするのは無理なのだ。
人形たちには知恵があった。彼女の鎧が刃を通さず、両手が塞がっていると見るや、外皮の柔らかそうなくまんてぃーぬを切りつけ、穴を空け、綿を引っ張り出し始める。
コルネリアは激怒した。
「何をするかあああっ!」
●
徒歩組のクロードとシルフィウムは、そのハンディを少しでも補うため、乗り物組と異なった道をとった。町をいったん出て、山伝いに墓地へ向かうのだ。
舗装もされていない小道だが時間は大幅に稼げた。上から下って墓地へ向かう形となるので、そこで起きている事柄がよく見える。
「お人形遊びにしても……あらまぁ、物騒な事ですわね」
物騒と言いつつシルフィウムは、ちっともそう思っていない顔付きだ。
クロードはざっと戦況を見確かめ、人形相手の攻撃に専念しようと決める。子供たちは全員一カ所にいる。ハンターもその周囲にいる。あれだけ守りを固めていれば、人形から新たな攻撃を受けるということはないはずだ。
「あの人形たちは、こちらの存在にまだ気づいていない。後ろから出て挟み撃ちにし――ようということでいいですよねシルフィウムさん?」
お伺いを立てられた女王様は、鼻高々。
「凡庸な策ですけれど、まあいいですわ。何しろ相手は木偶人形ですものね」
●
人形はハンターらに守られつつ後退して行く子供たちを追う。彼らには遊びを止める気など、全くなかった。
その行く手に突如、高い壁が生まれた。右にも、左にも。進路を塞がれる形。
「隠れんぼがお好きなのかしら? 小賢しいこと」
人形たちが振り向いた先にいたのは、マジカルステッキを口元に当てるシルフィウムがいた。
「嫌だわ。私、お人形遊びは卒業しましたの。それに、こんな品のないお人形なんていりませんわ」
別方向から飛び出したクロードが、シルフィウムの出現に気をとられた人形を、盾で叩き伏せた。ゴシャン、と重い陶器が割れるような音がした。
ノーマンは、破壊衝動のスイッチを入れる。
哄笑が口から噴き出した。
「さあ、さあさあ皆殺しだ!」
セイバーを近くにいた人形の腹に突き刺し、下段から力いっぱい振り上げる。人形は腰から上真っ二つになった。が、すぐには倒れない。左右に分かれたそのままの姿で立っている。
ノーマンはそれを蹴り倒し、頭部を繰り返し踏みにじった。粉々になるまで。
シルフィウムは、ぶんぶんチェーンを振り回し当ててこようとする人形へ向け、さも嫌そうに眉を吊り上げた。
「ちょろちょろと目触りですわね」
マジックアローを放つ。
人形はさっと墓碑に身を引っ込め避けた。
眉の角度がさらにきつくなる。
「とても不快ですわ。えぇ、とてもとても不快ですわ」
斜め後方にある十字碑の上から、別の人形が飛び降りてきた。飛び降りざま手にしているノコギリで、シルフィウムを切りつけようとする。
直後頭部と腕が宙に舞った。振り向きざまのウィンドスラッシュで。
「あなた達はお茶会にはお呼びしませんわ。首を刎ねてさしあげましょう」
墓の後ろに隠れていた人形の頭部が、クロードのデルタレイによって射貫かれた。
コルネリアは盾を鈍器代わりにし、襲ってくる人形を次から次へ、手当たり次第殴りつけていく。
「おのれよくもくまんてぃーぬに傷を! その罪万死に値するわっ!」
人形がちょこまか逃げるので、時々攻撃が墓石に当たったりしているが、そこは不可抗力として目を瞑ろう。
ノーマンは壊れた人形を蹴り飛ばし別の人形にぶつけ、動きを封じた。セイバーを突き刺す。首をすっとばしてしまう。
シルフィウムは現段階において破壊された人形の数を、素早く勘定した。
(5つ……)
まだ動いているもの、もしくは破壊中の数は。
(1……)
人形は子供たちの数と同じく10体いるはず。とするとあと4体足りない。
●
ルシェンとベアテに率いられた子供たちは、一目散に墓地から離れていく。
ユーリ、ザレムは殿につき、追撃を防ぐ役に回った。
壁により遮られた後方からシルフィウムの声が届く。
「4体そっちに逃げてますわよ!」
それを聞いたザレムは、同行させている柴犬に呼びかける。
「シバ、お前の出番だ」
ベアテとルシェンは残っている力を、彼と、それからユーリへのプロテクションに振り向ける。
先を走っていた柴犬が急に立ち止まった。唇を裏返し首筋の毛を逆立て吠えまくる。
ザレムは息を吸い込んだ。落ち葉の降り積もった地面に剣を突き刺し、跳ね上げる。
跳ね上げた剣の先に、串刺しとなった1体の人形。
伏せ隠れていた3体の人形たちが、奇声を発し飛び出してくる。
ユーリは飛び出してきた人形の2体を斬った。目にも留まらぬ早さで、横一文字に。
切られてなお頭部にはめ込まれた目の光が失せていないのを確認し、止めを追加しておく。
「自動で動く人形って発想は悪くねェ、が……人を襲いだしたら仕舞いだな」
残る1体はバールの一撃をルシェンの盾に阻まれ、危害を加える事あたわず。再度襲いかかろうとしたところを、ザレムのデルタレイに撃たれ砕け散る。
●
「――というわけで、これは危ない人形だったんだよ。とにかくみんな、無事でよかった」
事情説明てがら子供たちを慰めるクロードの肩をぐいと押し、ノーマンは、血に染まった足袋を見せつけた。
「いいですか、素性のよく分からない人から物をもらったり買ったりするものじゃありません。こういう変な遊びをするより家の手伝いをしなさい」
真っ当な説教に男の子たちは、しょげてしまった。
ちょっとかわいそうに思ったザレムはフォローを入れる。クッキーを配ってやりながら。
「今度から他の遊びにしような。あ、でもハンターごっこは危ないから大きくなってからで」
コルネリアも、少し弁護してやる。くまんてぃーぬの傷口を縫ってやりながら。
「まあ、子供というのは変わったものが好きだから」
ユーリはがらくたと化した人形をためつすがめつ眺め回し、舌打ちをした。製作所の印、製造番号、ロゴ。すべてどこにも見当たらない。
「もう確信犯だな、これは……売り逃げする気満々じゃねえか」
ベアテはそのことに憤慨する。
「玩具は子供の夢で、子供を育てる物なのにそれが子供を傷つけるなんてあってはだめよ」
ルシェンは、それ以前の問題だと主張する。
「人形は人形らしく可愛くあるべきよ、醜くて狂ったのはいらないわ!」
シルフィウムは足元に落ちていた人形の頭を蹴飛ばした。
「粗悪品だとしても、厄介なものを出すのは感心しませんわ。さて……帰って、紅茶でも如何かしら?」
視線を向けられたクロードは、思わず自分を指差した。
「俺?」
「ええ、お前に言ってるんですの。ティータイムにお茶汲み要員は必須ですもの」
ザレム・アズール(ka0878)は苦り切った顔で言う。
「そもそも手前で勝手に動く人形ってのは怪談の類じゃねえのか?」
1人1体使っていたと仮定すれば、歪虚となった人形は10体にのぼる。墓場であれば当然墓標が林立しているはずだ。小柄な人形にとって、それは格好の遮蔽物になる……。
(――開けた場所に誘い出せるよう仕掛けるか)
作戦の方向性を即座に決めたザレムは、連れてきた柴犬を抱き上げる。
「足になるもの持ってきてない奴、いるか? 1人なら俺の馬に乗せられるぞ」
ユーリ(ka5364)がすぐさま手を上げる。
「なら頼む。善は急げってな、かっ飛ばして行こうぜ」
ザレムのゴースロンは、人間2人と犬1匹を背に走りだす。
ノーマン・コモンズ(ka0251)は署長に確認を取った。地図を片手に。
「子供たちは北側の旧墓地敷地内にいる、ということでよろしいですか?」
「ああ、それで間違いないと思う。以前から、子供が勝手に出入りして困るという話は出ていたから」
それだけ聞くと彼もまた、馬に乗り駆け出す。
ルシェン・グライシス(ka5745)はバイクのグリップを回した。
「先に行ってますから!」
バイクは猛スピードで町角を曲がりたちまち見えなくなった。
ベアテ アスタフェイ(ka1375)は自転車のペダルを踏む。競輪選手並の勢いで。
「子供たち、無事でいてよっ!」
コルネリア・S(ka5302)も急いで馬に乗る。彼女は内心少々不安であった。乗馬の腕は並、馬も並。おまけに荷物がちと多い。
「大型盾に金属甲冑、かさばるくまんてぃーぬ。長距離というほどではないがキツイな」
といっても馬は馬。走りだせばそれなりに早い。
先発組を見送ったシルフィウム=クイーン=ハート(ka3981)は口を尖らせた。不機嫌そうなのは、足となるものをハンターオフィスから借りられなかったからである。
「お茶を飲む時間もないのかしら。忙しない事」
彼女と同じく後発組であるクロード・インベルク(ka1506)は、資料として提出された人形に、きつい視線を向けた。実に趣味の悪い代物だ、と。
「とんだ粗悪品だね。こんな物を売りつけるなんて、ちょっと許せないな。どんな商人が売ったのか興味もあるけど……まずは救出が先だね」
急がなければ。
とはいうもののその前に、調べるべきところ調べておいた方がいい。
「署長さん、墓地の地図などはありますか? 可能なら詳細の分かるようなものをお借りし――」
クロードの脇腹に衝撃が走った。シルフィウムが力いっぱいマジカルステッキで突いてきたのである。
「ちょっと、今は私が話すターンですわよ……身の程をわきまえなさい身の程を」
「え? あ、すいません……」
つい謝ってしまうクロード。
それほどシルフィウムの尊大さは、自然体だった。
●
ノーマンは人馬一体となって、なだらかな山の斜面を駆け登っていた。背後からルシェンのバイク音が聞こえてくる。
(……子供たちが遊び場所にしている一番古い区画は、北側でしたね……普段からお参りの人もあまり来ないとか……)
仕入れた情報を反芻していたその時、けたたましい悲鳴が行く手から聞こえてきた。
踵が馬の腹を強く蹴る。
速度を増した馬は墓地の柵を軽々と越え、子供たちと、子供たちを襲っている人形の間に躍り出る。
ノーマンはスローイングカードを投げ付けた。
人形は動きを止め、馬から飛び降り立ちはだかってきたものに、大鋏、ノコギリ、金づち、鉄パイプ等々の凶器を振りかざし、きしんだ笑い声を上げた。
凶器の幾つかに血が付いている。幾人もの子供が泣きわめいている。
「いたいよ、いたいー!」
「あしっ、あしいたいー!」
人形たちはノーマンに向かい、距離を詰めてきた。
自分に注意が向いているなら上々。そう思ったとき、鋭い痛みを覚えた。後方から近づいてきた人形がアイスピックで足の甲を突いたのだ。
振り向きざまセイバーでなぎ払い、離れさせる。返す刃で前方から近づいてきた人形を跳ね飛ばす。細切れにしてやりたい衝動は極力押さえた。仲間が来るまでは向こうに合わせなければならない。子供たちへの興味をそらさせるために。
ルシェンがバイクを乗り捨て駆け込んできた。
「皆、大丈夫ですか!」
ノーマンの後方で盾をかざし、痛がり泣いている子供らに言い聞かせる。
「ごめんなさいね、治してあげるから、見せてくれる?」
子供らは足を手で庇っていた。それをどけてみれば、血だらけである。大急ぎで傷口に手をかざし癒しの光を当てる。しかしなかなかそれに集中出来ない。人形たちは遊びを邪魔されたのが気に入らない様子で、飽く事なく攻撃してくるのだ。
「しっ! しっ! 向こうへ行きなさい!」
子供たちにこれ以上の危害が加えられないようガードしつつ、応援を待つ。
●
ベアテは自転車をこぎまくっていた。トランシーバを耳元に当てつつ。
少し前ノーマンとルシェンから、墓地に着いたと連絡があった。そして今、ザレムとユーリから同様の連絡があった。
「先発隊が向かってくれてるけれど私も速く向かわないと」
先を急ぐ彼女の耳に、おーいと呼びかける声。
振り向けば、馬に乗るコルネリア。
足を回転させながらベアテは答える。併走してくる相手に向けて。
「あれっ、コルネリア!」
「ああ、やっぱりベアテさんですか! よかった、追いつけて! 自転車にまで置いて行かれたらどうしようって思ってました、私!」
●
ザレムとユーリの乗る馬が、墓地に馬蹄を轟かせる。
「墓場から出ろ! 狂った人形を退治しに来たんだ!」
叫びながらザレムは、距離が有る中人形に向け、デルタレイを放った。
光線が当たった人形の胸に真っ黒な穴が空く。それを見て幾らか警戒心を持っただろうか、ほかの人形たちは墓石の後ろに身を隠した。
ユーリはザレムより先に馬から飛び降りる。ルシェンの側に陣取る。
「ちょいと危ねェところだったな、大丈夫か? 人形よりすげェの見せてやっから、よく見とけよ」
努めて明るく呼びかけ、子供の人数を確認する。
子供は、ちゃんと10人揃っていた。続けて人形の数も数えようとしたが、こちらは難しかった。物陰に出たり入ったり動き回っているのだ。陰険な獣のように獲物の隙を狙いつつ。
胸に穴の空いた人形が立ち上がり睨んできた。赤く光る目に憎悪が浮かんでいる。
「どいつもこいつもひでえ御面相だなオイ……人形遊びはガキの遊びの定番だが、それも愛嬌のある人形ってのが前提なんだぜ? 作った奴はわかってねェな」
デルタレイを撃ちつつザレムも下馬し、ルシェンたちの反対側に陣取った。これで非戦闘員を中に円陣を組む形となる。
彼はおびえ切っている子供たちに発破をかけた。飛びかかる人形をシールドで弾き飛ばしながら。
「皆ここから出るんだ。大丈夫だ、俺たちがしっかり守るからな!」
とはいうものの移動は容易で無さそうだ。恐怖で竦んでいるのは勿論のこと、ほぼ全員が足になんらかの怪我を追っている。どうやら人形たちは、まず最初にそこを狙ってくるらしい。いち早く戦闘に入っているノーマンも、足袋のあちこちが赤く染まっている。
ルシェンが仲間へのプロテクションをかける傍ら治癒に当たっているが、人形が逃げ隠れしながらちょっかいをかけてくるので、なかなかそちらに集中出来ない。
「離れるなよ!」
ノーマンは子供を抱き抱え、なるべく一カ所に固まるようにさせた。守りやすいように。
そこへ、ベアテとコルネリアが駆け込んできた。
ベアテはルシェンの側に駆け寄り、子供への治療を手伝う。
「もう、大丈夫よ。びっくりしなかった? 泣かないで、いい子ね」
鎧に盾、ハンマー、プラス熊という重装備のコルネリアは、人形の前に立ちはだかった。
「さあ、お人形さん。どこからでもかかってきていいんですよ!」
彼女は対人形に対してのみ力を注ぐ所存である。両手が塞がった状態なので、子供を抱き抱えて保護したりするのは無理なのだ。
人形たちには知恵があった。彼女の鎧が刃を通さず、両手が塞がっていると見るや、外皮の柔らかそうなくまんてぃーぬを切りつけ、穴を空け、綿を引っ張り出し始める。
コルネリアは激怒した。
「何をするかあああっ!」
●
徒歩組のクロードとシルフィウムは、そのハンディを少しでも補うため、乗り物組と異なった道をとった。町をいったん出て、山伝いに墓地へ向かうのだ。
舗装もされていない小道だが時間は大幅に稼げた。上から下って墓地へ向かう形となるので、そこで起きている事柄がよく見える。
「お人形遊びにしても……あらまぁ、物騒な事ですわね」
物騒と言いつつシルフィウムは、ちっともそう思っていない顔付きだ。
クロードはざっと戦況を見確かめ、人形相手の攻撃に専念しようと決める。子供たちは全員一カ所にいる。ハンターもその周囲にいる。あれだけ守りを固めていれば、人形から新たな攻撃を受けるということはないはずだ。
「あの人形たちは、こちらの存在にまだ気づいていない。後ろから出て挟み撃ちにし――ようということでいいですよねシルフィウムさん?」
お伺いを立てられた女王様は、鼻高々。
「凡庸な策ですけれど、まあいいですわ。何しろ相手は木偶人形ですものね」
●
人形はハンターらに守られつつ後退して行く子供たちを追う。彼らには遊びを止める気など、全くなかった。
その行く手に突如、高い壁が生まれた。右にも、左にも。進路を塞がれる形。
「隠れんぼがお好きなのかしら? 小賢しいこと」
人形たちが振り向いた先にいたのは、マジカルステッキを口元に当てるシルフィウムがいた。
「嫌だわ。私、お人形遊びは卒業しましたの。それに、こんな品のないお人形なんていりませんわ」
別方向から飛び出したクロードが、シルフィウムの出現に気をとられた人形を、盾で叩き伏せた。ゴシャン、と重い陶器が割れるような音がした。
ノーマンは、破壊衝動のスイッチを入れる。
哄笑が口から噴き出した。
「さあ、さあさあ皆殺しだ!」
セイバーを近くにいた人形の腹に突き刺し、下段から力いっぱい振り上げる。人形は腰から上真っ二つになった。が、すぐには倒れない。左右に分かれたそのままの姿で立っている。
ノーマンはそれを蹴り倒し、頭部を繰り返し踏みにじった。粉々になるまで。
シルフィウムは、ぶんぶんチェーンを振り回し当ててこようとする人形へ向け、さも嫌そうに眉を吊り上げた。
「ちょろちょろと目触りですわね」
マジックアローを放つ。
人形はさっと墓碑に身を引っ込め避けた。
眉の角度がさらにきつくなる。
「とても不快ですわ。えぇ、とてもとても不快ですわ」
斜め後方にある十字碑の上から、別の人形が飛び降りてきた。飛び降りざま手にしているノコギリで、シルフィウムを切りつけようとする。
直後頭部と腕が宙に舞った。振り向きざまのウィンドスラッシュで。
「あなた達はお茶会にはお呼びしませんわ。首を刎ねてさしあげましょう」
墓の後ろに隠れていた人形の頭部が、クロードのデルタレイによって射貫かれた。
コルネリアは盾を鈍器代わりにし、襲ってくる人形を次から次へ、手当たり次第殴りつけていく。
「おのれよくもくまんてぃーぬに傷を! その罪万死に値するわっ!」
人形がちょこまか逃げるので、時々攻撃が墓石に当たったりしているが、そこは不可抗力として目を瞑ろう。
ノーマンは壊れた人形を蹴り飛ばし別の人形にぶつけ、動きを封じた。セイバーを突き刺す。首をすっとばしてしまう。
シルフィウムは現段階において破壊された人形の数を、素早く勘定した。
(5つ……)
まだ動いているもの、もしくは破壊中の数は。
(1……)
人形は子供たちの数と同じく10体いるはず。とするとあと4体足りない。
●
ルシェンとベアテに率いられた子供たちは、一目散に墓地から離れていく。
ユーリ、ザレムは殿につき、追撃を防ぐ役に回った。
壁により遮られた後方からシルフィウムの声が届く。
「4体そっちに逃げてますわよ!」
それを聞いたザレムは、同行させている柴犬に呼びかける。
「シバ、お前の出番だ」
ベアテとルシェンは残っている力を、彼と、それからユーリへのプロテクションに振り向ける。
先を走っていた柴犬が急に立ち止まった。唇を裏返し首筋の毛を逆立て吠えまくる。
ザレムは息を吸い込んだ。落ち葉の降り積もった地面に剣を突き刺し、跳ね上げる。
跳ね上げた剣の先に、串刺しとなった1体の人形。
伏せ隠れていた3体の人形たちが、奇声を発し飛び出してくる。
ユーリは飛び出してきた人形の2体を斬った。目にも留まらぬ早さで、横一文字に。
切られてなお頭部にはめ込まれた目の光が失せていないのを確認し、止めを追加しておく。
「自動で動く人形って発想は悪くねェ、が……人を襲いだしたら仕舞いだな」
残る1体はバールの一撃をルシェンの盾に阻まれ、危害を加える事あたわず。再度襲いかかろうとしたところを、ザレムのデルタレイに撃たれ砕け散る。
●
「――というわけで、これは危ない人形だったんだよ。とにかくみんな、無事でよかった」
事情説明てがら子供たちを慰めるクロードの肩をぐいと押し、ノーマンは、血に染まった足袋を見せつけた。
「いいですか、素性のよく分からない人から物をもらったり買ったりするものじゃありません。こういう変な遊びをするより家の手伝いをしなさい」
真っ当な説教に男の子たちは、しょげてしまった。
ちょっとかわいそうに思ったザレムはフォローを入れる。クッキーを配ってやりながら。
「今度から他の遊びにしような。あ、でもハンターごっこは危ないから大きくなってからで」
コルネリアも、少し弁護してやる。くまんてぃーぬの傷口を縫ってやりながら。
「まあ、子供というのは変わったものが好きだから」
ユーリはがらくたと化した人形をためつすがめつ眺め回し、舌打ちをした。製作所の印、製造番号、ロゴ。すべてどこにも見当たらない。
「もう確信犯だな、これは……売り逃げする気満々じゃねえか」
ベアテはそのことに憤慨する。
「玩具は子供の夢で、子供を育てる物なのにそれが子供を傷つけるなんてあってはだめよ」
ルシェンは、それ以前の問題だと主張する。
「人形は人形らしく可愛くあるべきよ、醜くて狂ったのはいらないわ!」
シルフィウムは足元に落ちていた人形の頭を蹴飛ばした。
「粗悪品だとしても、厄介なものを出すのは感心しませんわ。さて……帰って、紅茶でも如何かしら?」
視線を向けられたクロードは、思わず自分を指差した。
「俺?」
「ええ、お前に言ってるんですの。ティータイムにお茶汲み要員は必須ですもの」
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/23 06:31:01 |
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相談卓 ユーリ(ka5364) 人間(クリムゾンウェスト)|24才|男性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/10/25 10:33:02 |