ゲスト
(ka0000)
【闇光】雷と茨と仮面
マスター:朝臣あむ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/22 22:00
- 完成日
- 2015/10/30 05:16
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ひと時の休み、そして――
「もう無茶苦茶すぎる展開ッスね」
「基本、歪虚の存在自体が無茶ですし、何が起きても気になりませんわよ」
空中浮遊する夢幻城を臨みながらひと休みする一団があった。
「それでアホグラム。体調のほうは大丈夫ですの? 貴女、わたくしより壮絶にひ弱ですから少しくらいは心配して差し上げてもよろしくてよ?」
「よけーなお世話だっ! つーかゼナイド、おめーはぜってーわざと間違えてるだろ!」
「そうッスよ、ゼナイド様! 姉御は1グラムでも2グラムでもなく、タングラムッス!!」
「いっそのことミリグラムでタングラムで良いのではありませんの?」
「良くねーから……つーかジュリ。ややこしくなるから黙っててくれるですか?」
「はいッス!」
焚き火を囲んで妙に元気に話す一行は、帝国第十師団を率いるゼナイド(kz0052)とタングラム(kz0016)の一行だ。
彼女らは別々のルートで進軍していたが、夢幻城の動向を見て急遽合流を果たした。つまりこの休憩には状況報告と今後の展開を話し合う必要性があるのだが、どうにも女性ばかりだと脱線しがちになるらしい。
「そう言えば、剣豪と紫電の刀鬼が現れたらしいですが、どうでしたか?」
「出立前にオズワルド様から聞いていた通り、相変わらず強かったですわ。歪虚は衰えを知りませんのね」
「人間とは構造自体が違うですからね……」
タングラムはそう言うと、ゼナイドが持参したホットワインに口を付けた。
オルクスの方も似たようなものだ。それに加えて出現した謎の歪虚「テオフィルス」。
「アレだけでも厄介だってのにまた厄介事が増えたですね……」
タングラムの視線を追うように目を上げたゼナイド。彼女は僅かに思案すると、何てことはないように呟いた。
「父王様の行方ですけど、どうも刀鬼が絡んでそうですわよ」
「!」
「剣豪が言ってましたの。『刀鬼がそう言っていたのだ。我が倒したと』って」
「あのエセ歪虚……ッ」
夢幻城からタングラムを見たゼナイドは微かに苦笑すると、彼女の肩に手を添えて首を竦めた。
「あのぉ、1つ質問良いッスか?」
「何かしら?」
「紫電の刀鬼って……姉御やゼナイド様と知り合いなんッスか?」
剣豪や剣妃と面識があるのは何となくだが頷ける。だが刀鬼は如何なのだろう。
「刀鬼は革命戦争時、革命軍側について戦った歪虚ですわ」
「前皇帝が気まぐれに声を掛けて気まぐれに共闘……したようなしていないような事もあったですね」
懐かしそうに、けれど思い出したくなさそうに言葉を放った2人にジュリは目を瞬く。
「えっと、良い歪虚……なんスか?」
「それはありませんわ。歪虚は所詮歪虚。確かに刀鬼は変わり者ですけど、根底が若干ズレてるだけで人類側の脅威であることに変わりはありませんのよ」
どれだけ協力的で、どれだけ助けてくれても、歪虚だと言う事実は変わらない。
「それにしても懐かしいですわね」
「そーですねー、ベリーベリー懐かしいデ~ス♪」
「!?」「?!」
いつの間に襲来したのか、飛び上がって構えた2人の前に現れたのはフルヘルメットの歪虚――紫電の刀鬼(kz0136)だ。
「飛んで来たですか……相変わらずアホみたいに神出鬼没ですね」
雪原に足跡がないことから間違いないだろう。
溜息を吐くタングラムを他所に、刀鬼は中に浮かんだまま逆さになると、頭の後ろで手を組んで2人を見下ろした。
「昔話に花を咲かせるなら、ミーも混ぜてくださいデ~ス♪」
「誰が混ぜるかっ!」
アホか! アホなのか! そう叫ぶタングラムの横で、ゼナイドが思案する。
「昔話になるかわかりませんけど……スットコ歪虚。貴方に聞きたいことがあるのですけど、答えてくださいます?」
「ゼナちゃんとタグちゃんのquestionデスか? ん~、モノにもよるデスよ?」
「では問いますわ。父王様……前皇帝陛下の行方を教えなさい」
「ゼナイド……」
「別に貴女のためではありませんわ。わたくしも知りたいだけですの」
ゼナイドとタングラム。2人にとって前皇帝はとても大きな存在だ。
その彼が剣豪に本当に倒されたのなら、自分たちは彼を倒すしかない。けれどもし生きているのなら――
「ぶっぶー♪ 答えまセ~ン♪」
くるりと回ってお尻を叩く刀鬼に、タングラムが「ぐるぁああ!」と怒声を上げる。それを片手で制してゼナイドは前に出た。
「では力尽くで聞き出しますわ。貴方もそのつもりなのでしょう、スットコ歪虚?」
「ゼナちゃんとタグちゃんはミーのことをちゃんと呼んでくれないので嫌デース。But、今回に限りミーが満足したら教えてあげマ~ス♪」
元よりそのつもりで来たのだろう。
頭を空に向けて浮きなおした刀鬼は、腰に付けた数珠玉を引き千切ると宙に放った。
「来ますわよ!」
雪原に出現した全身タイツの歪虚。それを前に構えると、ゼナイドは自身のマテリアルを放ってハンマーを振り上げた。
「もう無茶苦茶すぎる展開ッスね」
「基本、歪虚の存在自体が無茶ですし、何が起きても気になりませんわよ」
空中浮遊する夢幻城を臨みながらひと休みする一団があった。
「それでアホグラム。体調のほうは大丈夫ですの? 貴女、わたくしより壮絶にひ弱ですから少しくらいは心配して差し上げてもよろしくてよ?」
「よけーなお世話だっ! つーかゼナイド、おめーはぜってーわざと間違えてるだろ!」
「そうッスよ、ゼナイド様! 姉御は1グラムでも2グラムでもなく、タングラムッス!!」
「いっそのことミリグラムでタングラムで良いのではありませんの?」
「良くねーから……つーかジュリ。ややこしくなるから黙っててくれるですか?」
「はいッス!」
焚き火を囲んで妙に元気に話す一行は、帝国第十師団を率いるゼナイド(kz0052)とタングラム(kz0016)の一行だ。
彼女らは別々のルートで進軍していたが、夢幻城の動向を見て急遽合流を果たした。つまりこの休憩には状況報告と今後の展開を話し合う必要性があるのだが、どうにも女性ばかりだと脱線しがちになるらしい。
「そう言えば、剣豪と紫電の刀鬼が現れたらしいですが、どうでしたか?」
「出立前にオズワルド様から聞いていた通り、相変わらず強かったですわ。歪虚は衰えを知りませんのね」
「人間とは構造自体が違うですからね……」
タングラムはそう言うと、ゼナイドが持参したホットワインに口を付けた。
オルクスの方も似たようなものだ。それに加えて出現した謎の歪虚「テオフィルス」。
「アレだけでも厄介だってのにまた厄介事が増えたですね……」
タングラムの視線を追うように目を上げたゼナイド。彼女は僅かに思案すると、何てことはないように呟いた。
「父王様の行方ですけど、どうも刀鬼が絡んでそうですわよ」
「!」
「剣豪が言ってましたの。『刀鬼がそう言っていたのだ。我が倒したと』って」
「あのエセ歪虚……ッ」
夢幻城からタングラムを見たゼナイドは微かに苦笑すると、彼女の肩に手を添えて首を竦めた。
「あのぉ、1つ質問良いッスか?」
「何かしら?」
「紫電の刀鬼って……姉御やゼナイド様と知り合いなんッスか?」
剣豪や剣妃と面識があるのは何となくだが頷ける。だが刀鬼は如何なのだろう。
「刀鬼は革命戦争時、革命軍側について戦った歪虚ですわ」
「前皇帝が気まぐれに声を掛けて気まぐれに共闘……したようなしていないような事もあったですね」
懐かしそうに、けれど思い出したくなさそうに言葉を放った2人にジュリは目を瞬く。
「えっと、良い歪虚……なんスか?」
「それはありませんわ。歪虚は所詮歪虚。確かに刀鬼は変わり者ですけど、根底が若干ズレてるだけで人類側の脅威であることに変わりはありませんのよ」
どれだけ協力的で、どれだけ助けてくれても、歪虚だと言う事実は変わらない。
「それにしても懐かしいですわね」
「そーですねー、ベリーベリー懐かしいデ~ス♪」
「!?」「?!」
いつの間に襲来したのか、飛び上がって構えた2人の前に現れたのはフルヘルメットの歪虚――紫電の刀鬼(kz0136)だ。
「飛んで来たですか……相変わらずアホみたいに神出鬼没ですね」
雪原に足跡がないことから間違いないだろう。
溜息を吐くタングラムを他所に、刀鬼は中に浮かんだまま逆さになると、頭の後ろで手を組んで2人を見下ろした。
「昔話に花を咲かせるなら、ミーも混ぜてくださいデ~ス♪」
「誰が混ぜるかっ!」
アホか! アホなのか! そう叫ぶタングラムの横で、ゼナイドが思案する。
「昔話になるかわかりませんけど……スットコ歪虚。貴方に聞きたいことがあるのですけど、答えてくださいます?」
「ゼナちゃんとタグちゃんのquestionデスか? ん~、モノにもよるデスよ?」
「では問いますわ。父王様……前皇帝陛下の行方を教えなさい」
「ゼナイド……」
「別に貴女のためではありませんわ。わたくしも知りたいだけですの」
ゼナイドとタングラム。2人にとって前皇帝はとても大きな存在だ。
その彼が剣豪に本当に倒されたのなら、自分たちは彼を倒すしかない。けれどもし生きているのなら――
「ぶっぶー♪ 答えまセ~ン♪」
くるりと回ってお尻を叩く刀鬼に、タングラムが「ぐるぁああ!」と怒声を上げる。それを片手で制してゼナイドは前に出た。
「では力尽くで聞き出しますわ。貴方もそのつもりなのでしょう、スットコ歪虚?」
「ゼナちゃんとタグちゃんはミーのことをちゃんと呼んでくれないので嫌デース。But、今回に限りミーが満足したら教えてあげマ~ス♪」
元よりそのつもりで来たのだろう。
頭を空に向けて浮きなおした刀鬼は、腰に付けた数珠玉を引き千切ると宙に放った。
「来ますわよ!」
雪原に出現した全身タイツの歪虚。それを前に構えると、ゼナイドは自身のマテリアルを放ってハンマーを振り上げた。
リプレイ本文
●いざ!
「あれが紫電の刀鬼、ですか……何かと不可思議な立場で行動をする歪虚と聞いておりますが」
「見た感じ、不可思議なのは行動だけじゃなさそうだよね……雷神とか紫電とか」
「要するに見た目にも行動的にも不可思議、と言うことでしょうね」
どこか冷静に言葉を発したレイレリア・リナークシス(ka3872)とマコト・タツナミ(ka1030)。そんな2人に言葉を返してレオン(ka5108)が苦笑する。
東方での戦闘報告は聞いている。
なんでも敵対したり味方に回ったり、何かと奇抜な行動が目に付く歪虚、とか。
「まるでふってわいたような危機的状態だけど、これも何か意図があるのかな? まあだとしても、突然の事ではあるけどやることは1つ。犠牲者を出さないこと、そのためには守り迎撃するだけだね」
「そうですね。この場では全力でお相手させて頂きましょう」
レオンの言葉に頷くレイレリアを見てマコトが自分の手を見る。
「そうと決まれば勝負してみたいな」
「勝負、ですか?」
首を傾げたマリエル(ka0116)に頷く。
「うん、電力勝負! 稲妻の称号を持つ者としては気になるよね!」
風属性の絡繰刀「紫電」。この武器同様に雷撃を操るならば刀鬼にも耐性があるかもしれない。
マコトは武器を握り締めると刀鬼を見て雷神社に向き直った。
「でもまずはコッチ」
「ですね。できるだけ早く倒して刀鬼との戦闘に加わりましょう」
即席のカンジキで雪を踏み締めるレオンが武器を構える。その横で同じように武器を構えたレイレリアが目を細める。
「雪深いだけあって沈むのを完全に防ぐのは無理そうですね。でも何もないよりは楽に動けそうです」
「……サポートは、任せてくれ」
後ろから聞こえたオウカ・レンヴォルト(ka0301)の声に3人が頷く。
目標は雷神社の撃破。
「先制、行かせていただきます」
ワンドを振り上げたレイレリアが駆け出すと、間髪入れずにファイアーボールが放たれる。
雪と雷神社の真っ只中に落ちた炎。それが僅かに雷神社を掠めると、3人は勢い良く敵陣に飛び込んだ。
「……向こうも始まったみたいね」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は雷神社と激突する仲間を見て刀を抜くと、何かと縁のある刀鬼を見た。
自称が馬鹿みたいについているが過大評価でない事は確かだ。
「アイツの速さが異常なのは折り込み済み。気を引き締めないとタダじゃすまない……しかし意外だったのが、こいつが剣豪の部下だったなんてね……」
「チッ、奇妙な喋り方しやがって……オマケに全身タイツにフルメットとか俺様より目立ってんじゃねぇかクソがァ!」
「指摘するのはソコなのか……」
「当然だ!」
自信満々に主張するジャック・J・グリーヴ(ka1305)に肩を竦めてナハティガル・ハーレイ(ka0023)が白い息を吐く。
「……見渡す限り白銀の世界かよ。……寒い所は苦手なんだがなぁ……」
「無視すんなッ!」
「無視じゃないッスよ! 本当に寒いッス!」
ナハティガルに代わって応えたのはジュリだ。そんな彼女を見てジャックの眉が上がった。
「お? いつぞやの盗賊エルフじゃねぇか」
「お久ぶりッス、自称世界一カッコいい貴族様!」
どういう意味だ。そう問いかけようとしたが、聞こえた声に全員が飛躍する。
「飛べっ!」
後方から響いたオウカの声。彼は重体の身を押して叫ぶと苦しげに胸を押さえて膝を着いた。
「オウカさん!」
慌てて駆け寄るマリエルを片手で制すオウカを見てタングラムの眉が寄った。
「だから無理するなと言ってるのに……」
「貴女の知り合いと言う時点で無理ですわよ……それより、行けますの?」
タングラムに声を掛け、ゼナイドが支援に駆けつけたハンターを見る。
「当然だ! 仮面女と痴女エルフ、てめぇらにもこっちを相手してもらうからな!」
「痴女エルフってわたくしの事ですの!?」
「ジャック、あなたって人は……」
本番前に仲間を怒らせてどうする。そう頭を抱えそうになったタングラムに毛皮が被せられる。
「は? これは……」
「他意はねぇかんな! 勘違いすんじゃねぇぞ!」
「……ああ言うのをなんて言うんでしたかしら」
「ツンデレだろ?」
成程。頷いたゼナイドとナハティガルの元に雷撃が飛んでくる。
それを寸前の所で回避して、舞い上がった雪の間から刀鬼を見る。
「にしてもアンタ等知り合いだったとはな……随分奇妙な組み合わせじゃねえか」
「先代皇帝のお人柄ですわ」
「あー……前皇帝が気まぐれに声を掛けて気まぐれに共闘だったか……前皇帝ってのは随分といいかげ――ゲフンゲフンおおらかな性格だったんだな」
言葉途中で飛んで来た鋭い視線に言葉を濁す。だがナハティガルの言葉は大体のハンターが思っている事だろう。
「今度こそ無駄口はここまで」
「そ~ですよ~。ミーを無視して楽しそうにしないでクダサ~イ」
拗ねたように腰を振る刀鬼にユーリが長い息を吐く。
「……とにかく。退くつもりはないし、こいつには聞きたい事がある。ならやるべきことは決まってる」
ユーリは武器を構えなおして刀鬼を見る。
「次へと繋がる道を切り開く為に……この一撃を届かせるっ!」
――いざ! そう飛び出したユーリに続いて他の面々も踏み出す。
「フフフ~ン♪ さあ、ショータイムの始まりデース♪」
●雷神社戦
「光ってるトコはあからさまに怪しいけど……」
「いくよ!」
簡易のカンジキを確認するように雪を踏み締めてレオンが言う。
これに雷神社の中央で光る赤い玉を見ていたマコトが頷いた。
「うん、深く考えてる暇はないね。ここはとりあえず叩くのみ……全力の電撃鉄槌で行くよ!」
「レイレリア、支援頼むよ」
駆け出す2人にレイレリアがワンドを構える。
敵は弓2体に刀2体、鉤爪が1体という構成だ。定石通りに行くならばまずは弓だが、
「!?」
「っ、ここは雪原、ッ!」
先に動き出したはずの2人よりも早く間合いに飛び込んできた刀2体。
それぞれ刃を反して斬りつける動きに双方の足が止まる。
「雷神社も雪の意味がない? ――きゃっ!!」
「レイレリア!」
いつの間に接近したのか、レイレリアの間合いに飛び込んだ鉤爪が彼女の肌を裂く。
「ぅ、……離れてくださいっ! 魔術師だから接近戦は出来ない、なんて思わないでくださいよ!!」
間近で放った炎が雷神社の顔面で弾ける。この隙に雪を掻いて駆け出すと新たな技を紡いだ。
「オウカさん、レオン様とマコト様に支援をお願いします!」
「……効果があるかはわからない、が」
「送ることに意味があるのです」
こうしている間にも2人には刀と弓の攻撃が迫っている。
レイレリアの声に魔導拳銃を構えたオウカは、負傷で軸のブレる腕に手を添えると目を細めて照準を合わせた。
雪の上を自由に動き回る全身タイツ。その姿を目で追いながらチャンスを待つ。
「雷神社……まるで戦隊ものだ、な」
実際には何とかレンジャーは正義だが目の前の全身タイツは悪だ。
「……遠慮なく、打つ……!」
「――ナイス援護♪」
目の前で弾丸を受けて仰け反った雷神社に声を上げるマコト。
彼女は愛用のハンマーを握り締めると、痛む足を堪えて雪を踏み締めた。そして、
「雷撃勝負、せーのっ!!!」
渾身の力と雷撃を込めて叩き込んだハンマーから稲妻が走る。
パリィインッ!
目の前で弾けた核にマコトの口角が上がる。が、聞こえて来た声に彼女の足が動いた。
「これ以上、味方を攻撃させない!」
弓を射続ける敵と、刀を振るう敵。その双方に瞳を鋭くしてレオンの剣が唸る。
盾で刀を受け止め、空いた腹目掛けて刃を突き入れる。
「見えた」
裂けたタイツから見えた核。そこに狙いを定めて武器を構え直す。
しかし敵も簡単に攻撃させる気はないらしい。
「っ……面倒だ、な」
ちょこまか動く敵に苦戦するオウカ。そんな彼の視界に敵の背後へ回ったマコトが見えた。
「オウカ様、弓を攻撃してください」
「了解、だ」
弓を番えた敵目掛けて放った弾。それが着弾する直前、味方の動きに気付いたレオンが盾と剣で敵の刀を引き止めた。
ギチギチと金属の嫌な音が響く中、稲妻が敵の背後から昇る。
「この勝負、私の勝ちだね!」
ガキィインッ!
再び核の弾ける音がしてタイツが雪の上に転がる。
そうして新たに武器を構え直すと、レイレリアは弓を構える敵に向けて炎の矢を作り出した。
●刀鬼戦
駆け抜ける雷撃を避け、マリエルは抱えていた疑問を口にした。
「……貴方は、何をしに来たんですか。スットコ歪虚さん? もしかして、何かを教えに来てくれたんじゃないでしょうか?」
「ミーはユーたちのenemyデース。そう何度もclueをあげたりはしまセ~ン♪ そ・れ・と、ミーは紫電の刀鬼――ライジングソルジャーデス♪ OK?」
「ライジングソルジャーさん」
「イエース♪」
素直に頷いたマリエルに上機嫌な口笛が漏れる。
それを耳に、ユーリは冷静な目で刀鬼の放った雷撃の跡を見ていた。
「もしかして、雷は前にしか進めない?」
刀を振り下ろすたびに放たれる雷撃。その勢いは相当だが、雪に残る軌跡やこれまでの動きからそうではないかと判断する。
「つまり、前に飛ばさせてその間に攻めれば……」
「前に、か……だがどうやって?」
雪をものともせずに動き回る刀鬼。例え攻撃の癖がわかっても、動きを止めた上で打たせなければ意味がない。
だが逆に考えれば、それさえ出来れば攻撃の隙が出来るかもしれないのだ。
「もう終わりデスか~? ミーは物足りないデスよ~?」
「ったく、考える時間くらい与えろっての!」
遠慮なく放たれた攻撃を避けながら悪態を吐くナハティガルの前にジャックが立った。
「急にどうした?」
「ここは俺様に任せてもらおうか。おい、そこの洒落た歪虚。俺様の話を聞け」
「What? ミーで――ぬぁっ!? あ、危ないデスねー!」
聞けと言って問答無用で撃たれた弾丸を慌てて避ける。
その滑稽な姿に口角を上げ、ジャックは言った。
「刀鬼よ、てめぇは歪虚だがそんな洒落た格好した漢だよな? だったらお遊びじゃなくてよ、てめぇの全力で俺様にぶつかって来いよ」
「全力で、デスか?」
「俺様も漢だ、避ける様な無粋はしねぇ。てめぇの全力を俺様の全力で受け止めてやる。どうよ、てめぇの言う弱ぇ人間がこんな事言ってんだ。これでてめぇの全力受けてよ、立ち上がる事が出来りゃあ面白ぇだろ?」
確かに耐えたら面白い。だがもし耐えられなかったら、
「死にますよ」
タングラムの声にユーリやマリエル、そしてナハティガルの表情が変わった。
「そんな事をしなくても刀鬼の足止めくらい私が」
「そうです。私もお手伝いをして」
「うるせぇ! 俺様がやるつったらやるんだよ! てめぇも全力でいけんだ、ちったぁ満足出来んだろ……てワケで! かかって来いやァ!!」
拳銃を捨てて構えた盾。
雪に足を埋め込んで、衝撃に耐える準備は出来た。後は何処まで体が持つか、だ。
「完全にやる気ですね……仕方ないです。ジャックは私とゼナイドに任せると良いですよ」
コレのお礼もありますし。とタングラムは毛皮を示す。これにゼナイドも異論はないようだ。
「話のわかる仮面と痴女じゃねぇか」
クッと笑ったジャックだが、正直言って余裕などない。
そんな彼を見てナハティガルはユーリにだけ聞こえるように囁いた。
「……刀鬼が攻撃したのと同時に行くぞ」
「まさか本当に彼にやらせるつもりですか?!」
「――多分だが。普通に鎧部分を攻撃しても、やっこさんは倒せやしねぇ。あいつはデュラハン型の可能性が高い」
「デュラハン型……それって剣豪と同じ?」
「ああ。きっと何処かに弱点があるはずだ……デュラハン型には必ずある核が、な」
先の大戦で刀鬼の中身が空っぽである事が発覚している。
そこから見えるのは刀鬼の新たな攻略方法だ。それは彼の『核』を攻撃すると言うこと。
だが肝心の核が何処にあるのかは不明だ。そもそも本当にデュラハン型であるかもわからない。
「白黒つけるために利用させて貰う。俺は後ろから行くがあんたは如何する?」
「……わかりました。では私は側面から」
互いに頷き合い刀鬼を見た――その時だ。
刀鬼の振り下ろした刀から今まで見たこともないくらい大きな雷が放たれた。
雷は真っ直ぐにジャックへ向かい、彼の盾を、彼自身さえも呑み込んで行く。生存など不可能に近い。
だが、僅かにだが見える。
ゼナイドの盾と、タングラムに支えられるジャックの姿が。
「今だ!」
ナハティガルの合図でユーリが飛び出した。
攻撃を放った刀鬼の側面と背後はガラ空き。そこに渾身の一撃を放つ。
空気を読み、静寂を味方につけて振り薙いだ刃が刀鬼のわき腹を突く。
「当た――ッ、ぅあッ!!!」
刀鬼の着物が裂けた直後、ユーリの体が飛んだ。息を奪い、雪に叩きつけたのは刀鬼の足だ。
ナハティガルも間髪入れずに槍を握り締める。
ここで攻撃の手を緩めれば、ジャックの勇士は勿論、ユーリにも申し訳が立たない。
「てめぇの正体を見せろォ!」
振り向く機会を与えずに打ち込んだ衝撃波。
刀鬼の後頭部目掛けて放ったそれが、彼のヘルメットを叩く。と、被っていたヘルメットが舞った。
「Oh~?」
くるくると舞い上がったそれをキャッチする刀鬼。
その姿を見て、ナハティガルは「やっぱりな」と零す。
ヘルメットが消えた頭部は何もない。あるのは着物から立ち昇る紫電だけだ。
「ちょ~びっと傷が付いたデ~ス。修理しないとデスね~」
でもその前に。と言って、刀鬼はヘルメットを脇に抱えて首に手を突っ込んだ。
「げっ、気持ち悪いな」
合流直後に目にした光景にマコトが零す。
その声に笑い声を上げながら、刀鬼は刀の柄らしきものを取り出した。
「ユーたちにpresentデス。特別にミーのとっておきを見せまショー♪」
「とって、おき……?」
嫌な予感がした。だが身構える間もなくソレは来た。
「タングラム!」「わかってるですよ!」
咄嗟に負傷者の前に出たタングラムとゼナイド。そんな彼女らに続いて盾を構えたマリエルが前に出る。
そんな彼女たちの動きに見えない口角を上げ、刀鬼は柄に招いた紫電を放った。
●真実
刀鬼が放った紫電は、龍のようなうねりを持ってハンター達を呑み込んだ。
「ん~、少しやり過ぎマシタ~?」
「……うるさぃ……」
何処からともなく聞こえた反論。それに笑ってヘルメットを被ると、刀鬼は空に飛び上がった。
「ボスはキングをKillシテマセ~ン。ミーが逃がしちゃったデ~ス♪」
どういうこと。そう顔を上げたタングラムにヘルメットの向こうにある雷が揺れる。
「キングは生きてる。そいうことデ~ス」
「あれが紫電の刀鬼、ですか……何かと不可思議な立場で行動をする歪虚と聞いておりますが」
「見た感じ、不可思議なのは行動だけじゃなさそうだよね……雷神とか紫電とか」
「要するに見た目にも行動的にも不可思議、と言うことでしょうね」
どこか冷静に言葉を発したレイレリア・リナークシス(ka3872)とマコト・タツナミ(ka1030)。そんな2人に言葉を返してレオン(ka5108)が苦笑する。
東方での戦闘報告は聞いている。
なんでも敵対したり味方に回ったり、何かと奇抜な行動が目に付く歪虚、とか。
「まるでふってわいたような危機的状態だけど、これも何か意図があるのかな? まあだとしても、突然の事ではあるけどやることは1つ。犠牲者を出さないこと、そのためには守り迎撃するだけだね」
「そうですね。この場では全力でお相手させて頂きましょう」
レオンの言葉に頷くレイレリアを見てマコトが自分の手を見る。
「そうと決まれば勝負してみたいな」
「勝負、ですか?」
首を傾げたマリエル(ka0116)に頷く。
「うん、電力勝負! 稲妻の称号を持つ者としては気になるよね!」
風属性の絡繰刀「紫電」。この武器同様に雷撃を操るならば刀鬼にも耐性があるかもしれない。
マコトは武器を握り締めると刀鬼を見て雷神社に向き直った。
「でもまずはコッチ」
「ですね。できるだけ早く倒して刀鬼との戦闘に加わりましょう」
即席のカンジキで雪を踏み締めるレオンが武器を構える。その横で同じように武器を構えたレイレリアが目を細める。
「雪深いだけあって沈むのを完全に防ぐのは無理そうですね。でも何もないよりは楽に動けそうです」
「……サポートは、任せてくれ」
後ろから聞こえたオウカ・レンヴォルト(ka0301)の声に3人が頷く。
目標は雷神社の撃破。
「先制、行かせていただきます」
ワンドを振り上げたレイレリアが駆け出すと、間髪入れずにファイアーボールが放たれる。
雪と雷神社の真っ只中に落ちた炎。それが僅かに雷神社を掠めると、3人は勢い良く敵陣に飛び込んだ。
「……向こうも始まったみたいね」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は雷神社と激突する仲間を見て刀を抜くと、何かと縁のある刀鬼を見た。
自称が馬鹿みたいについているが過大評価でない事は確かだ。
「アイツの速さが異常なのは折り込み済み。気を引き締めないとタダじゃすまない……しかし意外だったのが、こいつが剣豪の部下だったなんてね……」
「チッ、奇妙な喋り方しやがって……オマケに全身タイツにフルメットとか俺様より目立ってんじゃねぇかクソがァ!」
「指摘するのはソコなのか……」
「当然だ!」
自信満々に主張するジャック・J・グリーヴ(ka1305)に肩を竦めてナハティガル・ハーレイ(ka0023)が白い息を吐く。
「……見渡す限り白銀の世界かよ。……寒い所は苦手なんだがなぁ……」
「無視すんなッ!」
「無視じゃないッスよ! 本当に寒いッス!」
ナハティガルに代わって応えたのはジュリだ。そんな彼女を見てジャックの眉が上がった。
「お? いつぞやの盗賊エルフじゃねぇか」
「お久ぶりッス、自称世界一カッコいい貴族様!」
どういう意味だ。そう問いかけようとしたが、聞こえた声に全員が飛躍する。
「飛べっ!」
後方から響いたオウカの声。彼は重体の身を押して叫ぶと苦しげに胸を押さえて膝を着いた。
「オウカさん!」
慌てて駆け寄るマリエルを片手で制すオウカを見てタングラムの眉が寄った。
「だから無理するなと言ってるのに……」
「貴女の知り合いと言う時点で無理ですわよ……それより、行けますの?」
タングラムに声を掛け、ゼナイドが支援に駆けつけたハンターを見る。
「当然だ! 仮面女と痴女エルフ、てめぇらにもこっちを相手してもらうからな!」
「痴女エルフってわたくしの事ですの!?」
「ジャック、あなたって人は……」
本番前に仲間を怒らせてどうする。そう頭を抱えそうになったタングラムに毛皮が被せられる。
「は? これは……」
「他意はねぇかんな! 勘違いすんじゃねぇぞ!」
「……ああ言うのをなんて言うんでしたかしら」
「ツンデレだろ?」
成程。頷いたゼナイドとナハティガルの元に雷撃が飛んでくる。
それを寸前の所で回避して、舞い上がった雪の間から刀鬼を見る。
「にしてもアンタ等知り合いだったとはな……随分奇妙な組み合わせじゃねえか」
「先代皇帝のお人柄ですわ」
「あー……前皇帝が気まぐれに声を掛けて気まぐれに共闘だったか……前皇帝ってのは随分といいかげ――ゲフンゲフンおおらかな性格だったんだな」
言葉途中で飛んで来た鋭い視線に言葉を濁す。だがナハティガルの言葉は大体のハンターが思っている事だろう。
「今度こそ無駄口はここまで」
「そ~ですよ~。ミーを無視して楽しそうにしないでクダサ~イ」
拗ねたように腰を振る刀鬼にユーリが長い息を吐く。
「……とにかく。退くつもりはないし、こいつには聞きたい事がある。ならやるべきことは決まってる」
ユーリは武器を構えなおして刀鬼を見る。
「次へと繋がる道を切り開く為に……この一撃を届かせるっ!」
――いざ! そう飛び出したユーリに続いて他の面々も踏み出す。
「フフフ~ン♪ さあ、ショータイムの始まりデース♪」
●雷神社戦
「光ってるトコはあからさまに怪しいけど……」
「いくよ!」
簡易のカンジキを確認するように雪を踏み締めてレオンが言う。
これに雷神社の中央で光る赤い玉を見ていたマコトが頷いた。
「うん、深く考えてる暇はないね。ここはとりあえず叩くのみ……全力の電撃鉄槌で行くよ!」
「レイレリア、支援頼むよ」
駆け出す2人にレイレリアがワンドを構える。
敵は弓2体に刀2体、鉤爪が1体という構成だ。定石通りに行くならばまずは弓だが、
「!?」
「っ、ここは雪原、ッ!」
先に動き出したはずの2人よりも早く間合いに飛び込んできた刀2体。
それぞれ刃を反して斬りつける動きに双方の足が止まる。
「雷神社も雪の意味がない? ――きゃっ!!」
「レイレリア!」
いつの間に接近したのか、レイレリアの間合いに飛び込んだ鉤爪が彼女の肌を裂く。
「ぅ、……離れてくださいっ! 魔術師だから接近戦は出来ない、なんて思わないでくださいよ!!」
間近で放った炎が雷神社の顔面で弾ける。この隙に雪を掻いて駆け出すと新たな技を紡いだ。
「オウカさん、レオン様とマコト様に支援をお願いします!」
「……効果があるかはわからない、が」
「送ることに意味があるのです」
こうしている間にも2人には刀と弓の攻撃が迫っている。
レイレリアの声に魔導拳銃を構えたオウカは、負傷で軸のブレる腕に手を添えると目を細めて照準を合わせた。
雪の上を自由に動き回る全身タイツ。その姿を目で追いながらチャンスを待つ。
「雷神社……まるで戦隊ものだ、な」
実際には何とかレンジャーは正義だが目の前の全身タイツは悪だ。
「……遠慮なく、打つ……!」
「――ナイス援護♪」
目の前で弾丸を受けて仰け反った雷神社に声を上げるマコト。
彼女は愛用のハンマーを握り締めると、痛む足を堪えて雪を踏み締めた。そして、
「雷撃勝負、せーのっ!!!」
渾身の力と雷撃を込めて叩き込んだハンマーから稲妻が走る。
パリィインッ!
目の前で弾けた核にマコトの口角が上がる。が、聞こえて来た声に彼女の足が動いた。
「これ以上、味方を攻撃させない!」
弓を射続ける敵と、刀を振るう敵。その双方に瞳を鋭くしてレオンの剣が唸る。
盾で刀を受け止め、空いた腹目掛けて刃を突き入れる。
「見えた」
裂けたタイツから見えた核。そこに狙いを定めて武器を構え直す。
しかし敵も簡単に攻撃させる気はないらしい。
「っ……面倒だ、な」
ちょこまか動く敵に苦戦するオウカ。そんな彼の視界に敵の背後へ回ったマコトが見えた。
「オウカ様、弓を攻撃してください」
「了解、だ」
弓を番えた敵目掛けて放った弾。それが着弾する直前、味方の動きに気付いたレオンが盾と剣で敵の刀を引き止めた。
ギチギチと金属の嫌な音が響く中、稲妻が敵の背後から昇る。
「この勝負、私の勝ちだね!」
ガキィインッ!
再び核の弾ける音がしてタイツが雪の上に転がる。
そうして新たに武器を構え直すと、レイレリアは弓を構える敵に向けて炎の矢を作り出した。
●刀鬼戦
駆け抜ける雷撃を避け、マリエルは抱えていた疑問を口にした。
「……貴方は、何をしに来たんですか。スットコ歪虚さん? もしかして、何かを教えに来てくれたんじゃないでしょうか?」
「ミーはユーたちのenemyデース。そう何度もclueをあげたりはしまセ~ン♪ そ・れ・と、ミーは紫電の刀鬼――ライジングソルジャーデス♪ OK?」
「ライジングソルジャーさん」
「イエース♪」
素直に頷いたマリエルに上機嫌な口笛が漏れる。
それを耳に、ユーリは冷静な目で刀鬼の放った雷撃の跡を見ていた。
「もしかして、雷は前にしか進めない?」
刀を振り下ろすたびに放たれる雷撃。その勢いは相当だが、雪に残る軌跡やこれまでの動きからそうではないかと判断する。
「つまり、前に飛ばさせてその間に攻めれば……」
「前に、か……だがどうやって?」
雪をものともせずに動き回る刀鬼。例え攻撃の癖がわかっても、動きを止めた上で打たせなければ意味がない。
だが逆に考えれば、それさえ出来れば攻撃の隙が出来るかもしれないのだ。
「もう終わりデスか~? ミーは物足りないデスよ~?」
「ったく、考える時間くらい与えろっての!」
遠慮なく放たれた攻撃を避けながら悪態を吐くナハティガルの前にジャックが立った。
「急にどうした?」
「ここは俺様に任せてもらおうか。おい、そこの洒落た歪虚。俺様の話を聞け」
「What? ミーで――ぬぁっ!? あ、危ないデスねー!」
聞けと言って問答無用で撃たれた弾丸を慌てて避ける。
その滑稽な姿に口角を上げ、ジャックは言った。
「刀鬼よ、てめぇは歪虚だがそんな洒落た格好した漢だよな? だったらお遊びじゃなくてよ、てめぇの全力で俺様にぶつかって来いよ」
「全力で、デスか?」
「俺様も漢だ、避ける様な無粋はしねぇ。てめぇの全力を俺様の全力で受け止めてやる。どうよ、てめぇの言う弱ぇ人間がこんな事言ってんだ。これでてめぇの全力受けてよ、立ち上がる事が出来りゃあ面白ぇだろ?」
確かに耐えたら面白い。だがもし耐えられなかったら、
「死にますよ」
タングラムの声にユーリやマリエル、そしてナハティガルの表情が変わった。
「そんな事をしなくても刀鬼の足止めくらい私が」
「そうです。私もお手伝いをして」
「うるせぇ! 俺様がやるつったらやるんだよ! てめぇも全力でいけんだ、ちったぁ満足出来んだろ……てワケで! かかって来いやァ!!」
拳銃を捨てて構えた盾。
雪に足を埋め込んで、衝撃に耐える準備は出来た。後は何処まで体が持つか、だ。
「完全にやる気ですね……仕方ないです。ジャックは私とゼナイドに任せると良いですよ」
コレのお礼もありますし。とタングラムは毛皮を示す。これにゼナイドも異論はないようだ。
「話のわかる仮面と痴女じゃねぇか」
クッと笑ったジャックだが、正直言って余裕などない。
そんな彼を見てナハティガルはユーリにだけ聞こえるように囁いた。
「……刀鬼が攻撃したのと同時に行くぞ」
「まさか本当に彼にやらせるつもりですか?!」
「――多分だが。普通に鎧部分を攻撃しても、やっこさんは倒せやしねぇ。あいつはデュラハン型の可能性が高い」
「デュラハン型……それって剣豪と同じ?」
「ああ。きっと何処かに弱点があるはずだ……デュラハン型には必ずある核が、な」
先の大戦で刀鬼の中身が空っぽである事が発覚している。
そこから見えるのは刀鬼の新たな攻略方法だ。それは彼の『核』を攻撃すると言うこと。
だが肝心の核が何処にあるのかは不明だ。そもそも本当にデュラハン型であるかもわからない。
「白黒つけるために利用させて貰う。俺は後ろから行くがあんたは如何する?」
「……わかりました。では私は側面から」
互いに頷き合い刀鬼を見た――その時だ。
刀鬼の振り下ろした刀から今まで見たこともないくらい大きな雷が放たれた。
雷は真っ直ぐにジャックへ向かい、彼の盾を、彼自身さえも呑み込んで行く。生存など不可能に近い。
だが、僅かにだが見える。
ゼナイドの盾と、タングラムに支えられるジャックの姿が。
「今だ!」
ナハティガルの合図でユーリが飛び出した。
攻撃を放った刀鬼の側面と背後はガラ空き。そこに渾身の一撃を放つ。
空気を読み、静寂を味方につけて振り薙いだ刃が刀鬼のわき腹を突く。
「当た――ッ、ぅあッ!!!」
刀鬼の着物が裂けた直後、ユーリの体が飛んだ。息を奪い、雪に叩きつけたのは刀鬼の足だ。
ナハティガルも間髪入れずに槍を握り締める。
ここで攻撃の手を緩めれば、ジャックの勇士は勿論、ユーリにも申し訳が立たない。
「てめぇの正体を見せろォ!」
振り向く機会を与えずに打ち込んだ衝撃波。
刀鬼の後頭部目掛けて放ったそれが、彼のヘルメットを叩く。と、被っていたヘルメットが舞った。
「Oh~?」
くるくると舞い上がったそれをキャッチする刀鬼。
その姿を見て、ナハティガルは「やっぱりな」と零す。
ヘルメットが消えた頭部は何もない。あるのは着物から立ち昇る紫電だけだ。
「ちょ~びっと傷が付いたデ~ス。修理しないとデスね~」
でもその前に。と言って、刀鬼はヘルメットを脇に抱えて首に手を突っ込んだ。
「げっ、気持ち悪いな」
合流直後に目にした光景にマコトが零す。
その声に笑い声を上げながら、刀鬼は刀の柄らしきものを取り出した。
「ユーたちにpresentデス。特別にミーのとっておきを見せまショー♪」
「とって、おき……?」
嫌な予感がした。だが身構える間もなくソレは来た。
「タングラム!」「わかってるですよ!」
咄嗟に負傷者の前に出たタングラムとゼナイド。そんな彼女らに続いて盾を構えたマリエルが前に出る。
そんな彼女たちの動きに見えない口角を上げ、刀鬼は柄に招いた紫電を放った。
●真実
刀鬼が放った紫電は、龍のようなうねりを持ってハンター達を呑み込んだ。
「ん~、少しやり過ぎマシタ~?」
「……うるさぃ……」
何処からともなく聞こえた反論。それに笑ってヘルメットを被ると、刀鬼は空に飛び上がった。
「ボスはキングをKillシテマセ~ン。ミーが逃がしちゃったデ~ス♪」
どういうこと。そう顔を上げたタングラムにヘルメットの向こうにある雷が揺れる。
「キングは生きてる。そいうことデ~ス」
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 レイレリア・リナークシス(ka3872) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/10/22 20:58:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/19 14:20:52 |