• 闇光

【闇光】スケルトン殲滅

マスター:馬車猪

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/10/22 22:00
完成日
2015/10/28 19:43

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●会議室
 ハンターズソサエティ本部の一室に、多数の3Dディスプレイが浮いていた。
 遠くから撮影したらしい、荒い画像のスケルトン。
 絵心のあるハンターが書いたと思われる、水彩画のスケルトン。
 拳を振るうスケルトン。
 錆びた剣を振るうスケルトン。
 鬼に潰され消えていくスケルトン。
 騎士に両断され転がるスケルトン。
 全てのディスプレイが別のスケルトンを映しているはずなのに、何故か似ている印象があった。
「摩耗具合に差はありますが元は同じですな」
 ロッソから招かれた医師が発言し。
「帝国の装備ではないな」
 ゾンネンシュトラールから出向してきた軍人が断言する。
「出来たてに見えるスケルトンを倒しても1度も骨が残らなかったんですよね? でしたら遺骨が歪虚化した個体ではないでしょう」
 職業柄遺体と歪虚に触れる経験があるクルセイダーが意見を述べる。
「レチ公……失礼。レチタティーヴォという歪虚が、戦場にいたスケルトンを指して暴食王のスケルトン軍団という表現を使ったらしい」
 戦場から戻ってきたばかりの王国騎士が、怒りの感情を抑え込んで情報を開示した。
「高位歪虚、推定歪虚王位階の歪虚か」
「歪虚スケルトンは量産品?」
「蓋然性はありますな」
 立場も出身国も違う人々が、己の知恵と知識を惜しみなく開示し推測を立て検討しまた別の推測を立て洗練させていく。
 1時間後に一応の結論が出た。
 出席者の顔色は、皆ひどく悪かった。
「次の作戦までにスケルトンを減らすしかない」
 それが出来なければ、際限なく生産されるスケルトンによって勝ち目が消えかねない。
「しかしあれだけの戦力が集まった北伐で倒しきれなかった相手ですよ?」
「帝国まで攻め寄せていない以上無限にスケルトンを生産出来るわけではないだろうが」
 それからどれだけ話し合っても、有効な策は1つも出なかった。

●オフィス
 ハンターオフィスの隅に3Dディスプレイが現れる。
 妙に大きい。通常の3倍以上の大きさだ。
「これは北伐の?」
 数人のハンターが足を止めた。
 映し出されているのは北の地図だ。
 これまでの戦闘結果や索敵結果が凄まじい密度に記載されている。
「ひでぇ数」
「えーと、スケルトンの数があれで動きがこうで」
「歪虚汚染の強度はどこに載ってる? ああうん、だったらなんとかいけるかな」
 元は地球の軍人だったり、リアルブルーとクリムゾンウェストの軍事知識を兼ね備えるだけでなく昇華させた人材が多数いるのがハンターだ。
 高度な議論が実にあっさり行われていた。
「多分この辺にスケルトンが……200以上?」
「馬かバイクに乗った少人数が突っ込んだら、いけるか?」
「うんまあ行けるかもだけどリスキーよね。時間がかかると強い歪虚が集まって来て逃げ切れなくなるし」
「俺、バイクも馬も持ってないからなぁ。あんたどうよ」
「スケルトンをまとめて潰せる火力がないわよ。歪虚汚染で命中半減した状態で当てなきゃなんないのよ?」
「報酬はいいんだけどねぇ」
 肩を落として去っていくハンター達。
 数人の職員が議論を聞いて、慌てて上司に連絡を入れる。
 数分後、ディスプレイがさらに拡張され、スケルトン間引き依頼として報酬以下各種の情報が追記されるのだった。

●目的地から南へ5キロメートル
 発砲音が軽快に響いた。
「当たらねー!」
 アサルトライフル装備のハンターが銃弾をばらまく。
 槍の間合いにまで近づいて来たスケルトンに命中し、倒れて薄れて消えていく。
 スケルトンは案外素早いので百発百中とはいかない。せいぜい命中率7割だ。
「当たれば倒せるんだからいいだろ。こっちなんて2発以上当てなきゃ倒せねーんだぞ」
 近くのスケルトンは仲間に任せ、ロングボウ装備のハンターが次々に矢を放つ。
 穴だらけで射撃は有効でないように見えるが、矢を放つのは常人離れしたハンターで矢を受けるのは特殊能力も持たない雑魔だ。7割程度は当たり、2発も当たったスケルトンは存在を保てず消えていく。
「うっし、錬成工房で強化した甲斐があったな。このままいけば防衛線維持成功でボー」
 ボーナスと言い終える前に新たな敵影に気づく。
「デュラハン!」
「魔伝で後方へ連絡! スケルトンの殲滅が済み次第撤退する。スキルを出し惜しみするな!」
 これまでの数倍の勢いで矢弾が放たれスケルトン隊1つが全滅する。
「逃げるんだよぉ!」
 馬がいななきバイクが吼えて、ハンター集団の1つが持ち場を離れ、歪虚の占領地が少し拡大した。
 このままでは次の作戦が始まる前に勝敗が決まる。
 人類は、今すぐにでも新たな手を打つ必要に迫られていた。

リプレイ本文

●命無き雪原へ
「そろそろよ」
 李 香月(ka3948)がちらりと前を見てつぶやいた。
 魔導二輪や馬を使う他の面々とは異なり、彼女が駆るのは何の変哲もない自転車だ。
 それでほとんど遅れることがないのだから、4頭の馬から仰ぎ見る視線を時折向けられるのも当然だ。
「では予定通りに」
 榊 兵庫(ka0010) が魔導バイクから槍を外して片手で構える。マテリアルが活性化し、古傷がくっきりと浮かび上がった。
 嘶きとエンジンの音が答えだった。
 8人が進路を変えて扇状に進むと、白い平面だった雪原から100を越える人型が立ち上がる。
「歪虚汚染地帯での戦闘とは厄介この上ないな」
 左手でハンドルを引き、戻す。
 緩い弧を描いて20近いスケルトンを回避、速度を落とさず南へ進み、60近いスケルトン部隊の前で速度を落とした。
「だが、ここで間引きをしておかないとジリ貧になるのも確かか」
 地獄の亡者の如き動きで、薄汚れた白い壁が兵庫に迫る。
 槍が紅い光で半円を描いた。
 7つの骸骨が殺害圏に捕らわれ、うち2体が伏せて躱すが残る5体が腰から上下に両断された。
 砕けた骨が消えていく。消えたときには増援が空間を埋め、生き残った2体と共に兵庫のもとへ殺到する。
「ただでさえいつ歪虚汚染に冒されるか分からないというのに」
 魔導二輪が急角度でターン。骨津波から十数メートルの距離をとる。
 スケルトンにとっては走れば追いつける距離だ。とはいえ追いつくためには全力で移動するしか無く、兵庫を囲むことはできても即座に攻撃する余裕はない。
「組織だった攻撃を掛けられては溜まらないから、な」
 再び紅い半月がうまれ、今度は8体中4体が切られて消えた。
 空いた空間を走り抜け距離をとる。骸骨体が変化のない動きで兵庫を狙い、兵庫は三度同じ技で砕いて距離をとり、よろけた。
「命無き人型よ。呪われた存在と手を切り静かな世界へ戻りなさい」
 穏やかであると同時に例外を許さない声が響く。
 白い光の爆発が雪の上を広がり、40体からなる骸骨隊の半数近くを消し飛ばした。
「感謝する」
 兵庫は進路上の骸骨1体を破壊しアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)を庇う位置へ移動する。
 骸骨約20の背後から、明らかに格の違う歪虚がこちらに向かって着るのが見えた。
「東の援護に向かいます」
 アデリシアの戦馬の馬蹄の音が離れて行く。
 兵庫は気合を入れて歪虚汚染を振り払い、骸骨隊との戦闘を再開した。

●デュラハン
 汚れた津波が四方八方から岩井崎 旭(ka0234)を襲った。
 巨大斧が迎え撃つが常の鋭さはない。
 最前列のスケルトンはほぼ吹き飛ぶが、2列目から3列目の骸骨はほぼ無傷。これでは突破することもできない。
「旭!」
 光が骸骨を浄化する。
 4列目以降がロニ・カルディス(ka0551)によって浄化されても2列目3列目が止まらない。
 ロニが奥歯を噛みしめ救出へ向かおうとし、骨津波が旭に触れる寸前に、手甲が骨を弾く音が無数に重なり1つの音として聞こえた。
「チッ、やっぱ汚染の影響けっこーでけーな」
 旭も軍馬シーザーも無事だった。
 歪虚汚染で動きが鈍ろうと、躱すか殴って弾いてしまえばよい。
 さすがに数が多すぎ何度か急所をかすめはしたが、彼にとってはこの程度かすり傷未満だ。
「来やがった」
 汚染から回復した一瞬を捉え巨大斧を一閃する。
 今度は半分以上が微塵となって消え、シーザーが楽々と包囲から抜け出す。
「全てとは言わないが、可能な限り削り落とさせてもらおうか」
 ロニが天に手を伸ばす。
 祈りを通じて力が集まる。負けじと負の気配がロニを襲い、しかしドワーフの生命力と抵抗力を突破できずに終わる。
「去れ、不浄の者共よ」
 数十の骨が砕け、雪原に円形の空白地帯が出来た。
「旭」
「分かってる」
 戦場到着前に打ち合わせは済ませている。
 旭は近くのスケルトンを蹂躙し、ロニは朗朗と歌い上げて負の生命活動を阻害し、西から迫るデュラハンと残存スケルトンの動きを鈍らせた。
「食いでのない骨ばっかだが、てめえは食いでがあってくれよ?」
 比率でいえば大人と子供ほどの体格差のあるデュラハンに正対し、一騎打ちが始まった。
 斧が鋭く振るわれる。
 デュレハンは悠々と盾で受けて大剣サイズの剣で突く。
 再びの歪虚汚染が旭の動きを乱す。
 斧によるカウンターは失敗し回避も防御もし損じて、けれど体をほんの少しだけ傾けることで最も装甲の厚い胸部で受ける。
「以前戦ったデュラハンは武器が核だったな。さあ、てめーの場合はどこだ?」
 普段より鈍い動きでの一閃。
 ロニのレクイエムにより激しく動きの鈍った歪虚は、盾を移動させる位置と機を間違え斧の直撃を受けた。
 拮抗はそこまでだった。
 旭のマテリアルが負のそれを押しのけ本来の動きを取り戻す。
 シーザーは常にスケルトンを躱して主を攻撃に専念させ、旭は斧の猛攻で歪虚の手足が落ちようが攻撃を止めず、デュラハンはついに核を砕かれ再生の余地無く破壊されたのだった。

●老兵と若武者
 発動機が猛々しく吼える。
 バイクの左右に粉砕された雪が散る。
 真正面から吹き付けるのは、真冬の高山並みの冷たさに魔界じみた無の気配。
 手をハンドルから離して足だけで平衡を保ち、和泉 澪(ka4070)は力むことなく日本刀を振り抜いた。
 古びた盾と骨がまとめて断たれて雪の上を転がっていく。
 澪に確認する余裕はない。
 斜め左後方から40以上のスケルトンが追ってきている。速度を落とせば囲まれ逃げることもできなくなってしまう。
「うじゃうじゃいますねー」
 左斜め前方から10と数体。
 体を少しだけ左に倒す。掬い上げるように下段から突く。
 骸骨の腰部が壊れ、しかし倒れながら澪に手を伸ばす。
「毎回一撃必殺とはいきませんか」
 バイク騎乗中のためランアウトも瞬脚も使えないが使う必要も無い。
 骨の腕を軽々と避けて、小集団を一周しスケルトンに交通渋滞を強いる。
 爆発に似た音が聞こえる。
 一瞬視線を向けると、ギガースアックスを振り下ろした姿勢のバルバロス(ka2119)を乗せ、馬がこちらに向かって走ってきているのが見えた。
 澪の無事を確認し、バルバロスがかすかにうなずく。
「バルバロスさん、一体ずつ確実に減らしていきましょう!」
 アクセルを踏み込む。
 彼女達に追いつく寸前だった40弱の骸骨隊を引きつけ、引き連れ、何重もの円を描きつつ端の骨を切り捨てていく。
 単純な思考しかできぬ骸骨では陣形をつくって迫ることもできず、狭い空間に密集し身動きがとれなくなりつつあった。
 バルバロスが無言で馬を進めるのと、密集した骸骨が自身の骨を投げスケルトン小集団が澪に突撃するのは同時だった。
「っ」
 澪の顔色が変わる。
 よりにもよってこのタイミングで汚染が体に染みこんでくる。
 動きから切れが失われる。バイクを操作するには十分だが飛来する骨と向かってくる骸骨を全て躱すには不十分だ。
 老ドワーフの喉から大地を揺るがす雄叫びが響いた。
 飛来する骨は無視。殺到するスケルトン隊へギガースアックスをぶち当てる。
 高すぎる威力に骨は一瞬も耐えられる、内側から爆発したかのように粉になって消えていく。
「ワシが引きつける。和泉は下がって後ろを見ろ」
 斜め後ろに下がりながら骸骨の群れを迎撃する。
 1発の威力は高くても1度に倒せるのは1体。動き易さを重視した皮装備ではスケルトンからの被ダメージを0にはできない。
「はいっ」
 気遣いとそれ以上の危機感に気づきく。澪は言うとおりに動き、北から接近するデュラハンを目視してしまった。
「デュラハン1!」
「どこを見ている。ワシはここだ!」
 雄々しく、激しく、けれど目の奥は冷静に。
 巨大武器を檜の棒の如く振るいながら、常に後退と変針を行い包囲から逃れデュラハンと骨を引きつける。
 本気を出して思いきり振る。
 活性化したマテリアルが太い骨と筋肉に行き渡り、巨大な斧に非常識な加速を与え、背後から襲ったつもりの亡霊騎士に叩きつけた。
 デュラハンの剣は防御に間に合いはしたが、重さと堅さと速度を兼ね備えた鉄塊を防ぐには到底足らない。
 剣が歪んで斧ごとぶつかり、胸甲を凹ませ内側を中破させた。
「っ」
 澪が骸骨を1体切り捨てる。
 残る数十が押し合いへし合いしながらバルバロスに向かい、彼は本気を出した直後で半分も防御できなかった。
 なのに、心底楽しげに笑う。
「心臓に悪い戦い方をしないで頂きたい」
 清らかな光がハンターとスケルトンを包んだ。
 見た目よりはるかに頑丈なはずの骨が砕けて消えていく。
 歪虚汚染のせいでロニの使った光の精度は落ちている。
 だが澪により密集を強いられバルバロスに誘導され手足が絡まるものすらいるスケルトン集団は、半分近くが回避に失敗して消えていく。
「この程度無理とは言わぬわ」
 口にたまった血を吐き捨てデュラハンを連打する。全身や口から血が流れてもおかまいなしだ。
「元気な老人はこれだから」
 祖父と子ほどの年の差がある男の背を見て、同じドワーフであるロニは大きなため息をついた。
 無論そうしている間も動きは止めない。
 気力を振り絞って汚染を一時的に退け、連射中のセイクリッドフラッシュの狙いを微修正。
 すると団子状になっていないスケルトン小集団まで一撃で半壊、2撃で残り1体まで激減する。
「援護する」
 レクイエムがデュラハンの動きを制限する。
 斧が鎧にめり込み刀が急所に突き刺さる。
 デュラハンが倒れスケルトンが再び動き出す前に、3人は全速力で戦場から離れていった。

●雪原からの生還者
「何時も通り敵を倒し、何時も通り家に帰る。ただそれだけの事さ」
 歪虚汚染の影響下でも、Holmes(ka3813) の余裕は全く崩れない。
 Holmesとは対照的に、恨み辛みを全身にみなぎらせデュラハンが踏み出す。
 2倍弱の身長差、10倍近くの体重差を活かし、大型全身金属鎧が少女を押し潰そうと盾を押し出した。
 汚染で鈍った動きでは回避も受けも難しい。
「痛い痛い」
 Holmesは微笑みながらからかいの声を投げ、歪虚の体当たりでずれた兜の位置を直した。
「こんなに激しく責めるなんて、君は特殊な趣味の持ち主かい?」
 マテリアルが形作る獣耳と尻尾が、どう見ても馬鹿にした動きを見せていた。
 デュラハンの兜の奥の目が光る。
 力のこもった、しかし狙いの甘い突きがHolmesを襲う。
「やれやれ。訓練し始めの小童より拙い腕じゃないか」
 大鎌の頑丈な柄部分で受ける。
 受けた衝撃を活かして大きく旋回。三連刃の部分で近くのいたスケルトンを串刺し止めを刺す。
 その横1メートルの雪原に、砕けた骨と青龍偃月刀が突き刺さる。
「依頼者が正気か確認したいわね」
 体を倒して繰り出される拳を回避。
 触れる寸前まで距離を詰めて、躱しようのない一撃を繰り出す。
 命中箇所の背骨が半分ほど削れ、しかし倒れはせずに香月を蹴ろうとする。
 香月は斜め左右からの拳を地功拳で避け、蹴りは大刀で受けてそのまま斬りつける。
 スケルトンが薄れて消えていくとき、こちらに向かい馬を走らせる、アデリシアの姿が見えた。
「誘き寄せる」
 香月は大刀を捨てフィストガードを装着する。
「好戦的だね。付き合おう」
 ドワーフの、少なくとも外見少女は移動を止めてデュラハンを迎え撃つ。
 さすがに躱しきれずダメージが重なっていく。強力な自己治癒で回復するが、守るばかりでは長くはもたない。
「……今」
 清浄な光が、背後からスケルトンの群れを照らした。
 光に反する属性の骨では耐えることが出来ず、焦げ、砕け、汚れた砂となり雪に紛れ消えていく。
 焦げても耐えたスケルトンが複数、香月を攻める前に香月の拳を浴びる。
 圧倒的に速い。威力のみは青龍偃月刀に劣るものの回避が極めて困難で、傷ついた骸骨に止めを刺すには十分だ。
「力を試せる異世界に転移して」
 ジャブに近い2連撃のうち1つが、頭蓋に大穴を開け全身を崩壊させる。
「人生のほとんど、武術に捧げてきたなら」
 上半身を下げる。未だ戦力を残したスケルトン隊の集中攻撃を回避。
「その力は人のために使いたい、けど」
 姿勢を戻して左右の拳で正面の肋骨を打つ。乾いた音を立てて衝撃が伝わり、背骨が砕けて全体が砕けた。
「無茶ふりしすぎでしょう、この依頼」
 バランスを崩さず斜め後ろへすり足で移動。
 デュラハンの背後に回り込んで、今度は装甲を打ち抜ける刀で思い切り刺した。
「こちらでは珍しくもないさ。李君、東に17メートル!」
 特に疑問も抱かず李が移動を再開。放棄し埋もれていた自転車を回収し、倒れる直前の体を酷使し撤退を開始した。
 入れ替わりに現れたのはアデリシアだ。
 生き残りのスケルトンとの位置を測り、自身の体調を計り汚染が体から消えた瞬間切り札を使う。
 雪原を光の暴風に覆われた。
 歪虚の中でも特に闇に偏った死に損ない、その典型例のスケルトンが光に焼かれて燃えている。
「脆いのだけが救いではあるな……耐久力まであれば泥沼になるところだった」
 骨が踊る。無音なのに苦痛と悲嘆が伝わってくるようだ。
 息を整え癒しの技を発動。デュラハンを食い止めるHolmesが完治した。
 体に染みこむ虚無の気配を感じながら、アデリシアは冷静な目で戦場を見渡した。
 戦場西側の骨は全滅。味方は半数が退却を始めている。骨はともかくデュラハンが手強く、手傷を負ったりスキルを使い果たしたりで退却せざるを得なくなったのだ。
 ただ1人ロニが暴れ回ってはいるが、あと少し、スケルトンの粗方滅ぼしたところで弾切れ撤退になるはずだ。
 最後の札を使う。
 手応えは素晴らしく、人生で数回出来れば幸運という強さの光が鎧の魔を襲う。
 鎧の表面が焦げ、関節部や兜の隙間から煙が漏れる。しかしデュラハンの動きは鈍らず負の生命力もほとんど変わらない。スケルトンよりはずかに防護が分厚く、頑丈だからだ。
「聖導士殿、状況は!?」
 Holmesが叫ぶ。
 アデリシアのような対部隊攻撃手段は持たないが、デュラハンのような硬くて重い相手は彼女にとり容易い相手だ。が、先程からマテリアルあるいは精霊が激烈な警鐘を鳴らしている。
「複数方向から推定歪虚兵のデュラハンが接近中だ。……潮時だな」
 2人同時に反転する。
 歪虚の一撃が背中を抉ろうと気にもせず、進路を南へ向けた。

 8人は人類領域に戻るとすぐ医療機関に送られた。
 戦果はスケルトン330中300弱、および通常サイズのデュラハン3体。
 この戦果が今後にどういう影響を与えるかは、次の歪虚の動きで明らかになる。

依頼結果

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MVP一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディスka0551

重体一覧

  • 狂戦士
    バルバロスka2119

参加者一覧

  • 亜竜殺し
    榊 兵庫(ka0010
    人間(蒼)|26才|男性|闘狩人
  • 戦地を駆ける鳥人間
    岩井崎 旭(ka0234
    人間(蒼)|20才|男性|霊闘士
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 狂戦士
    バルバロス(ka2119
    ドワーフ|75才|男性|霊闘士
  • 唯一つ、その名を
    Holmes(ka3813
    ドワーフ|8才|女性|霊闘士
  • ピットファイター
    李 香月(ka3948
    人間(蒼)|20才|女性|疾影士
  • Centuria
    和泉 澪(ka4070
    人間(蒼)|19才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
榊 兵庫(ka0010
人間(リアルブルー)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/10/21 21:24:56
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/10/20 19:36:46