• 深棲

【深棲】漢と霧と新型胸当て

マスター:近藤豊

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/08/01 15:00
完成日
2014/08/07 00:33

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 馬鹿の行動は、突発的だ。
 必要な時でも、必要でない時も馬鹿は発作を起こしたように動き出す。その結果で引き起こされる斜め上な展開に、一般人は誰も付いてこられない。
 
 しかし、馬鹿を侮る無かれ。
 一度行動し始めた馬鹿は、途中で止まることを知らない。やめられない止まらないのユーキャンストップ。
 暴走機関車は、どこまでも走り出す。


 話は、数日前に遡る。
「おい、給仕」
「いえ、給仕ではありません。執事のキュジィです」
 お決まりの挨拶を交わしているのは、ドワーフ王のヨアキムと(kz0011)と執事のキュジィである。
 キュジィの顔はいつもの笑顔を湛えているが、心中は穏やかではなかった。
(また厄介事を持ち込んで来ましたか……)
「なんだ? また厄介事を持ち込んできたって思っているのか?」
 ヨアキムが覗き込むように視線を投げかける。馬鹿は不要な時に鋭くなる。
「いえ、そのような事は……。
 それより何のでしょうか?」
「この間頼んでいた例の胸当てだけどよ。まだ届かないのか?」
「ヨアキム様。商隊がリゼリオを出発したのは昨日です。地下城『ヴェドル』へ到着するには、もう数日必要です。それに、その質問は今日で七度目になります」
 遠足前にテンションがMAXとなった小学生のようなヨアキムに、キュジィはため息をついた。
 
 『新型の胸当てが手に入った』

 馴染みの同盟商人から噂を聞きつけたヨアキムは購入を即決。その後は注文書を眺めてニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべていた。きっと、新型胸当てを装備して歪虚を殴り飛ばす都合の良い妄想に浸っているのだろう。
「何度も説明していますが、商隊は冒険都市リゼリオを昨日出発しました。極彩色の街ヴァリオスを通過して、農耕地帯ジェオルジを抜けて、ようやく辺境地域まで辿り着くのです。ここへ到着するにはもう数日かかります」
 何度も繰り返した説明を再び口にするキュジィ。
 だが、テンションMAXのヨアキムに説明する事が無駄な行為と気付いていないようだ。
「そ、そうか……。で、胸当ては昼に届くのか?」
「届きません! 距離も相当ある上、途中の街で休憩する事もあるでしょう。それに最近沿岸部では雑魔が目撃されているという噂が……」
「それだっ!」
 キュジィへ振り返り大声を張り上げるヨアキム。
 キュジィの言葉の何に食いついたかは不明だが、ロクな展開が待っていない事だけは予想がつく。
「何かございましたか?」
「雑魔の奴がワシの胸当てを運ばせないように邪魔をしているに違いねぇ!
 くそっ! ワシが胸当てを手に入れて無敵になる事が余程危ねぇと判断したか。こうなりゃ、ワシが商隊を守ってやらなきゃならねぇ!
 キュジィ! 戦の準備だ! うぉぉぉぉ!」
 勝手に盛り上がって斜め上の行動を示し始める馬鹿の王様。じっとしていられないヨアキムは、戦の準備をするために自室へと走り去っていく。
「あ、ヨアキム様……。
 困った人ですね。念の為、商隊が襲われた際の救援依頼を出しておきましょう。……ん? あれは?」
 ヨアキムが居た場所に落ちていた一枚の書類。おそらく、ヨアキムが胸当てを発注した際の注文書だろう。
 皺苦茶で小汚い書類を拾い上げたキュジィは、徐に書類を広げてみる。

 そこには、

 『女性用下着』

 の文字がハッキリと書かれていた。


 馬鹿の暴走から数日後。
 ヨアキムは同盟商人の商隊護衛に就いていた。商隊からすれば突然現れたドワーフの一団が一方的に護衛を申し出て勝手に護衛を始めたのだ。おまけにちゃっかり商隊の飯まで食べてしまうのだから厄介な寄生虫に捕まってしまったようだ。
「兄貴、奴らは現れませんね」
「ふん。どうせ、ワシらに恐れを為して逃げ出したのだろう。ぶわっはっは!」
「そうっすよね。
 しかし、この霧は厄介ですね」
 ヨアキムの周囲には濃い霧が立ちこめていた。普段は美しい浅瀬と砂浜がある見晴らしの良い場所なのだが、今は濃い霧が全てを覆い尽くしている。10歩先ですら何も見えない状態で、商隊の者もこのような濃い霧は見たこと無いと言っていた。
「霧ぐらいでビビるんじゃねぇ!  漢なら、ドンっと構えて……」
「うわっ!化け物だっ!」
 ヨアキムの声に負けないぐらいの悲鳴が木霊する。声の主は商隊の人間だ。
「どうした?」
「出たっ! 霧の中で辺な風船みたいなのが沢山……」
 商隊の者は霧の中で何かを見たのだろう。
 そして、次第に周囲から聞こえ始める男女の悲鳴。
 ヨアキムは周囲を見回すが、霧の中を浮かぶ風船のような物体が見えるばかり。
 配下のドワーフともはぐれ、悲鳴はますます増えていく。
「くそっ! 霧のせいで何も見えねぇ!
 雑魔の野郎、汚い手を使いやがって!」

リプレイ本文

 ヨアキム(kz0011)は、いきり立っていた。
 周囲を覆い尽くす霧。
 シルエットとして浮かび上がる巨大なクラゲ。
 商隊の悲痛な叫びは徐々に増え始めている。
「兄貴、大丈夫ですかね?」
 不安になった部下が駆け寄ってきた。
「ビビるんじゃねぇ! こうなりゃ、前へ出て一気に叩き潰すしか……」
「くくっ、ドワーフ王ってぇのはアイツの言ってた通り愉快な王様らしい。
 面白ぇじゃねぇか。権力だなんだと振りかざしている糞野郎共より100倍は好感が持てるな」
 霧の中からマルク・D・デメテール(ka0219)が姿を現した。
「特に王自ら突撃するってぇいう単純思考嫌いじゃない。
 だが、敵を倒したいなら突撃は得策じゃねぇな」
 マルクはワークスマンキャップに手を添えて、そっと位置を整える。
「目的はあくまでも商隊を守り切る事。
 歪虚の殲滅じゃない――ってことを、肝に銘じておかないとね」
 同じく霧の中から赤い袴姿の柏部 狭綾(ka2697)が現れた。
 今回の任務はあくまでも商隊の護衛だ。
 救援に向かっている部隊が到着するまで商隊を守り切れば形成は一気に逆転できる。
「そうだな。奴らはワシの新型胸当てが狙いに違いねぇ。
 奴らがコイツを奪われねぇよう気を付けねぇといけねぇな!」
「あやねは子供だけど、かくせーしゃだから頑張るのよ。
 くらげさんから、しょうにんさんをまもるの」
 佐藤 絢音(ka0552)は、くまのぬいぐるみ『熊五郎』を抱きしめた。
「そうです。商人を助けてあげないといけません。
 ドワーフのみんなも一緒に戦ってくれるますよね?」
 絢音の案に三日月 壱(ka0244)も賛同する。
 この霧の中で逃げ惑う商人達は不安を抱いているに違いない。
 早急に救出して守ってやる為にも、ヨアキムとその配下の協力は不可欠だ。
「そうだな。ワシらも商人達を守って……」
「うわぁ、ドワーフ王ヨアキムって、あの勇敢なる戦王様っ!?」
 ヨアキムの姿を見かけたアニス(ka0306)が驚嘆している。
「ん? なんだおめぇ?」
「だ、大丈夫かなっ? ボクみたいな半人前の戦士が一緒に戦うなんて。
 でも、王様って何か思っていた姿と違う気がする。ちょっとがっかりしちゃったような……」
 近づけば酸っぱい臭いが漂うヨアキムを前にドギマギするアニス。
「ワシの戦いが見てぇんなら、ワシの横にいろ! 漢の生き様ってぇ奴を見せてやる!」
「は、はいっ!」
 アニスに敬われて舞い上がっているヨアキム。
 霧の中に浮かぶシルエットに向かって突撃し始める。
 その後を、アニスがついていく。
「ちょ、ちょっと! 
 行ってしまいましたわよ」
 狭綾は、半ば呆然としていた。
 ほんの数秒前まで突撃は危険だ、と教えたはずなのに忘れて霧の中へ突っ込んでいってしまった。
「くくっ、本当に愉快な王様だな」
 マルクの顔に笑みが溢れた。


「ふっふっふ、霧の中へ隠れても名探偵の私の目から逃れる事はできません!」
 ヨアキムが突撃した先には、パイプを片手に余裕の笑みを浮かべる月詠クリス(ka0750)の姿があった。
「名探偵? なんだそりゃ? それも新型胸当ての一種か?」
「ちっちっち。
 名探偵は新型胸当てよりも有能。剣や盾にはできない頭脳労働という武器を持っているのです。おまけに事件の香りを嗅ぎつける嗅覚も忘れてはいけません」
 クリスの言葉を信じ切ったヨアキムが雄叫びのような声を上げる。
「うおおお! すげぇ!
 名探偵って奴はそんなすげぇ兵器なのか!」
「ウィ、ムッシュ。名探偵の優秀さをお見せしましょう。
 雑魔たち! あななたちが商隊の襲撃犯である証拠は上がっています!
 これが、動かぬ証拠です!」
 そう言ってクリスは地面に赤い血糊のついた鉄パイプを放り投げた。
 クリスはこの鉄パイプで雑魔が商人を襲撃した証拠と突き付けた。
「あれ? クラゲの雑魔なんだから鉄パイプなんて必要ないんじゃ……」
 アニスの素朴な疑問を打ち消すように、クリスは大きな声でクラゲを告発する。
「ええい! こうして物的証拠もある事ですし、心置きなく裁きを下すとしましょう!
 ……判決は死罪!」
 名探偵が裁判までやってのけてしまう辺り、クリスが普通の名探偵でない事は明白だ。
 しかし、このおかげで単純馬鹿のヨアキムに火が付いてしまった。
「後ろから犯人を襲撃したばかりか、証拠が上がっても無視を決め込む……くそっ! 許せねぇ! ワシがベットの上で組んず解れつ教育してやる!」
「さぁ、ドワーフの皆さん! 積み荷を襲う雑魔を倒すのです!」
 霧のシルエットに向けて指差すクリス。
 その傍らでアニスは小声で囁く。
(あ、クラゲが何処にいるのか王様は良く分かってないみたいなんだ)
(それなら抜かりはないわ)
 クリスはアニスへ答えた後、懐からLEDライトを取り出した。
「ドワーフの皆さん、敵はこちらです」
 霧の中へライトを当てるクリス。
 事前に敵の大まかな位置を掴んでいたようだ。
 浮かび上がったシルエットを目にしたヨアキムは、強く拳を握り走り出す。
「アニス、行くぞ! ぬおおおおお!」
「は、はい! 王様、ついて参ります」
 バルディッシュを片手にヨアキムの後をついていくアニス。
 クリスのおかげで敵の位置は分かったのだが、果たして――。


 一方、他のハンター達は視界不良の中で活動を開始していた。
「うおお! なんだ、この機械?
 小さいのに声が聞こえるぞ!?」
 三日月の渡したトランシーバーを手にしたドワーフが驚きの声を上げた。
 このトランシーバーを使い、三日月は手分けをして周囲を調査しようとしていた。しかし、当のドワーフはトランシーバーを見た事がない為、利用方法を説明していたのだ。
「このトランシーバーを使えば、遠い所にいても連絡を取る事ができます。これを使って……」
「おい、この中に誰かいるんじゃないか?」
「まぢか? もしかしてこの中に商人が隠れているのか?」
「なら、開けて助けてやらねぇと!」
 一人のドワーフがハンマーを片手にトランシーバーへ振り下ろそうとしている。
 慌てて三日月がドワーフの暴挙を止めに入る。
「ああ、この中には商人はいません! それより、早く周囲の捜索を!」
「そうか? じゃあ、始めるとするか」
 三日月は、ドワーフと捜索する事を後悔していた。


「皆さん、早くこちらへ!」
 馬車の近くにいた商人を狭綾が誘導する。
 散らばって個別に商人達が動けば護衛は難しくなる。
 そこで商人を一箇所に集めていたのだ。
「怪しい影!」
 狭綾は商人を守りながら鋭敏視覚を用いて霧の中を注意深く探っていた。
 遠い場所までは分からないが、他の人よりも早く怪しいシルエットに気付くはできる。
「ペンライトなの。あやねは両手がふさがるから、しょうにんさんが持って照らしてほしいの」
 傍らに居た商人に灯りのついたペンライトを持たせる絢音。
 光の放つ筒に興味を持った商人だったが、今は非常事態。ペンライトの詳しい扱いを
聞いている暇は無い。
「こ、こうか?」
 商人は絢音に促されるままに狭綾が示した場所を照らし出す。
 そこには宙に浮かぶクラゲのシルエットが映し出される。
「ひぇ! 居たっ!」
 恐れ戦く商人。
 反射的にあやねが商人を守るように前へ出る。
「いましたの。クラゲをさっさとやっつけるですの!」
「あのシルエットの濃さ……近くにいるようね。敵よりも先に攻撃を仕掛けるわよ」
 狭綾は、手にしていたコンポジットボウを放った。
 商人を守りながらクラゲを倒す為には、遠距離からの攻撃がベスト。そう考えた狭綾は、遠距離武器での攻撃に主軸を置いていた。
「くらげさんはこっちに来たら、めーっ! なの」
 絢音も魔導銃で狭綾の援護に入る。
 霧の中へ放たれる矢と弾丸。
 二人の攻撃は、シルエットの影を大きく揺らす。
「!!」
 照らし出すペンライトの光から逃れるように影は地面へ落下。
 触手が届く前にクラゲを倒す事ができたようだ。
「倒せましたの。思ったよりも余裕ですの」
「安心できないわよ。クラゲは残っているはずよね」
 周囲を警戒する狭綾。
 援軍が到着する前にどの程度商人を集められるか。
 狭綾は緊張の色を隠せない。


「触手を落としました! 倒すなら今です!」
 地を駆けるものを駆使してクラゲに接近した三日月。
 ダガーで触手を落として敵の武器を奪い去る事に成功。
 トランシーバーでドワーフ達へ合図を送る。
 ――しかし。
「んん? 何処にいるんだ?」
「こっちじゃないか」
「いや、あっちだ」
 トランシーバーを持たせていても、フラフラと移動するドワーフ達。
 近くにはいるはずだが、霧の中で三日月の姿を発見する事が困難なようだ。
「くくっ、苦戦しているようだな。
 ところでお前さん達、酒は好きかい?」
 マルクはブランデーを染み込ませたナイフをクラゲに撃ち込んだ。
 突き刺さるナイフ。
 同時にたっぷり染み込ませたブランデーが周囲へ漂い始める。
「おお! 酒だ! 酒の臭いだ!」
「こっちからするぞ!」
 酒好きなドワーフ達は、勤勉であっても酒に敏感。
 ブランデーの臭いを辿って走り寄ってくる。
「居たぞ! それ!」
 霧の中から姿を現したドワーフは、クラゲの胴体に剣撃を叩き込む。
 三日月の足下へ転がるクラゲ。
 何とか再び宙を舞おうとするが、その前に三日月のダガーが頭部へ深く突き立てられる。
「ドワーフが酒好きで助かったな。
 さっき、そっちに隠れている商人にブランデーを分けてやった。ドワーフなら商人を見つけられる」
 敵自体はそれ程強くないが、この霧が仲間との連携を難しくしている。
 三日月も連携の難しさを痛感する他なかった。
「せめてこの霧がなければ、もっとうまく戦えるのですが……」
「どうせ、この霧も雑魔の仕業だろう。
 ま、この霧程度にやられる程、ハンターは柔じゃないんだがな」
 マルクはブランデーが染み込んだナイフを片手に、索敵を再開する。


「わんわんっ!」
 アニスの柴犬が吠える。
 友人から譲り受けた柴犬はクラゲの姿を発見するのに役立っていた。
 さらにクリスがクラゲの姿をLEDライトで照らし出す。
「犯人はそこです!」
 柴犬とクリスの指示を頼りにクラゲを発見するアニス。
 手にしていたバルディッシュに力を込める。
「王様には及ばないけど……これが今のボクの全力だよ!」
 バルディッシュで強打を繰り出すアニス。
 クラゲを狙った場所へ吹き飛ばし、クラゲを強制的に移動させる。
「王様、クラゲがそっちに行きました!
「おう!」」
 アニスはヨアキムが戦い易いよう雑魔をヨアキムの方へ追い込んでいた。
 アニスがクラゲを発見し、ヨアキムがクラゲを確実に屠る。
 既に数体のクラゲをこの方法で倒す事に成功していた。
「てめぇら、卑怯な手ぇ使いやがって! ワシが根性叩き直してやらぁ!」
 地面に転がるクラゲに向かって、ヨアキムは拳を振り下ろした。
 渾身の一撃はクラゲの体を貫通して地面へ接触。
 同時に地面を大きく揺らす。
「アニス、次だ! 次を持ってこい!」
「はい! ……あっ!」
 周囲の空気が変わり始める。
 徐々に三人の間にあった霧が晴れ、お互いの姿が見え始める。
 その時、一人の商人が三人へ駆け寄ってくる。
「救援が……山岳猟団が、救援にきました!」
「山岳猟団? ってぇことは帝国の連中か!」
 救援が来た。
 これは商隊が救われた事を意味する。
 しかし、戦いが終わった訳ではない。
「王様、残りのクラゲを片付けながら散らばった商人を助けましょう」
「犯人は霧へ隠れる手段を失って丸見えです。絶対に逃がしません!」
「おう、お代わりはどんどんもってこい!」
 お互いの姿がはっきり見えた三人は、霧が晴れた後も活躍を続けた。


 地下城『ヴェドル』へ到着した後、今回の縁もあってドワーフは山岳猟団と共闘関係を結んだ。元々帝国の一員であった山岳猟団と手を結ぶ事はドワーフにとって悪い話ではない。
 そして、問題の新型胸当てなのだが――。

「くくっ、本当に愉快な王様だ。せいぜい大切に扱えよ」
 事前に新型胸当ての正体を察していたマルクは、面白がって事態を見守っていた。
 新型胸当ては、単なる女性用下着。
 ハンターに事実を知らせたキュジィは、半ば呆れ顔だ。
「おんなのこの下着をおとこのひとがつけるとへんたいさんなの。
 どわーふの王様はへんたいさんなの?」
 熊五郎を抱きしめながら、首を傾げる絢音。
 その指摘は間違っていない。女性用下着を着用してなくても、ヨアキムは変態だ。
「さあ、ドワーフ王ヨアキム!
 今こそ、伝説の防具を装備した姿を、民に見せながら凱旋するのです!」
 事態を楽しもうとしているのか、クリスはヨアキムを下着姿で徘徊させようとしている。
 それを三日月が押し止める。
「だ、ダメです! それは男が装備するものじゃないです」
(一体誰が得するんだっつーの。ゴツい男の下着姿なんてよぉ……)
 心の中で叫ぶ三日月。
 まさにその通りなのだが、現実は残酷だ。
「おう、お前ぇら! ご苦労だったな!」
 ハンターを労う為にヨアキムがやってきた。
 ハンター達の目には、限界まで引き延ばされたブラジャーが目に入る。
 ヨアキムの筋肉を隠す事ができず、ブラジャーから悲鳴が聞こえるようだ。
「王様……」
 冷ややかな目で見つめるアニス。
 しかし、そんな視線を気にするヨアキムではない。
「ぶわっはっは! この布っ切れが敵の攻撃をバッチリガードするってぇんだから不思議……」
 そう言いながらアニスの頭を撫でようとするヨアキム。
 だが、腕を上げた瞬間にブラジャーのヒモが外れる。

 ――ブチブチッ!

 断末魔が響き、引き裂かれたブラジャーは地面へと落下する。
 ハンター達が頑張って守った新型胸当ては、馬鹿の行動によって無残な姿に変わってしまった。
「新型胸当てよりもワシの大胸筋の方が強かったようだな。
 そこらの女子よりも胸には自信があるぞ。巨乳好きならワシの大胸筋を好きなだけ揉み拉くが良い。ぶわっはっは!」
 馬鹿は何処まで行っても前向きだ。
 しかし、その背後に覚醒した狭綾の姿があった。
「……何? ブラジャー壊す事で、わたしより胸が大きいって言いたいの?
 馬鹿にするんじゃないわよ!」
 狭綾のハリセンがヨアキムの右側頭部を捉える。
 派手な破裂音を響かせて吹き飛ばされるヨアキム。
 痛みに振るえて立ち上がるヨアキムの口から、いつもの叫びが木霊する。
「き、き、気持ちいいーーー!!!」

依頼結果

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MVP一覧

  • 孤高の憧憬
    マルク・D・デメテールka0219
  • 対触手モニター『谷』
    柏部 狭綾ka2697

重体一覧

参加者一覧

  • 孤高の憧憬
    マルク・D・デメテール(ka0219
    人間(紅)|20才|男性|疾影士
  • あざといショタあざとい
    三日月 壱(ka0244
    人間(蒼)|14才|男性|霊闘士
  • お転婆ドワーフ
    アニス(ka0306
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人

  • 佐藤 絢音(ka0552
    人間(蒼)|10才|女性|機導師
  • めい探偵
    月詠クリス(ka0750
    人間(蒼)|16才|女性|機導師
  • 対触手モニター『谷』
    柏部 狭綾(ka2697
    人間(蒼)|17才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
三日月 壱(ka0244
人間(リアルブルー)|14才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2014/08/01 02:48:53
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/07/30 12:49:18