ゲスト
(ka0000)
ミザル、キカザル、ウゴカザル
マスター:四方鴉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2014/07/30 19:00
- 完成日
- 2014/08/10 15:42
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●山林の3雄
木々を打ち払い、山菜や薪といった資源を求めて数名の男が獣道を進んでいた。
既に何度もこの山に入った事はあるのだろう、彼らは青々とした木々を前に鉈を振り、小川を飛び越え、慣れた様子で奥へ奥へと踏み入り多くの植物を採取。
用意した篭一杯に様々な山の幸を収穫し、思わず頬をほころばせていた。
「今日は大量だな。いつもより手早く集まったし、少し休んで行くか?」
「いいな、それ。今から降りると暑い中進むハメになるし、川辺で涼んでいこうぜ」
言葉を交わし、先ほど飛び越えた小川の傍へ篭を下ろし各々が水を浴びて涼を楽しむ。
川自体は小さいものの、周囲に張り出した木々のおかげか日陰になっており、少ない水でも涼むには十分。
思い思いの方法で水を取り込み、木陰で風を受けつつ日が傾くのを待つだけだった彼らに突如、奇怪な叫びが聞こえた。
「キキ、キキャー!」
「ゲッゲッゲッ」
「グググググ、グギャルゥ!」
驚かせるような、嘲笑うような、威嚇するような。
3種の叫びが彼らの耳へと飛び込み、顔を見合わせ声のする方角を凝視する。
直後、茂みから飛び出してきたのは異様な姿をした3匹の猿であった。
1匹は見事な毛並み。通常の猿よりやや長いその体毛は、山林を進む間に汚れてしまう筈だがその毛は全身、汚れ一つ無く艶を帯び、美しい輝きを見せつけていた。
もう1匹は、こんな山林に似つかわしくない豪奢な衣服。猿がどうして衣服を着ているのか分からないが、何処かの貴族が着るような衣服を纏い、汚れ一つ付けずに佇んでいる。
そして、最後の1匹は普通の猿。ただし、全身がびしょ濡れで常にその体毛から水を滴り落としていたのだ。
「な、なんだぁ!? なんでこんな猿が!?」
「……すげぇ、毛並みが綺麗だなぁ」
「ちょ、どうし……あ、なんだ、あの服。俺も着て見たい、かな」
3匹の猿を前に、まずは衝撃が。
しかし、その直後に猿の毛並みに、そして豪奢な衣装に男の注意は引きつけられその場から動けない。
「お前ら、どうしたんだよ! しっかりし……うおあぁ!?」
目を奪われず、何とか仲間を正気に戻そうとした男。
だが、彼にはびしょ濡れの猿がその身体から数多の水滴を飛ばし、その水滴はまるで銃弾の如き威力で男を傷つける。
あまりの衝撃、その痛みに耐え切れず彼は目を奪われた男に倒れ掛かる形で衝突を。
「いでっ!? うっ、俺はいったい……って、どうしたんだよ、その怪我は!?」
「あの猿の水だ、水鉄砲なんてもんじゃねぇ、逃げるぞ!」
「おい、お前もしっかりしろっ」
ぶつかった衝撃から、目を奪われていた男は正気を取り戻し現状を理解。
別の男も仲間から殴られ、自分が何をしていたか理解は出来なかったものの危険である事は分かり、重傷を負った男を庇いつつの逃走劇を開始する。
後方から飛来する水滴が仲間を傷つけ、折角収穫した山菜なども回収は出来ないが命が大事、歩きなれた山である事が幸いし怪我は酷くなったものの全員揃って下山は出来た。
こうして、山に突如出現した雑魔の脅威によってその恵みを得る事が出来なくなった村々は対策を協議。
ハンター達に討伐を依頼する運びとなっていた。
●そこはイワザル、だろ!
「はいはーい、今日は3匹セットの猿退治、ちゃちゃっとやっつけちゃいましょー! ってことで説明しますよー」
集まったハンターを前に、受付嬢が今回の依頼内容を説明する。
今回はとある山に出没した猿雑魔退治が目的だが、少々厄介な能力があるようだ。
「猿は3匹、それぞれが特徴的な能力を持ってますよ!
まずはとーっても綺麗な毛並みを持ってる美しい猿、これはまさにミザル、と言えるでしょう!
次は貴族の人が着てるような豪華な衣服を着てる猿、これこそキカザル!
最後は、ずっとびしょ濡れ、しっとりしている猿ですね。まさにウゴカザル、と言うにピッタリです!」
「まてまてまてまて。色々とおかしいけど、ウゴカザルじゃなくてイワザル、じゃないのか、そこは?」
「え? 語呂の関係上、イワザルはリストラされたんですよ、きっとそうに決まってますって!
ミザル、イワザル、キカザル、をどう組み換えても語呂は悪いですけど最後がウゴカザル、だと語呂いいじゃないですか」
「突っ込んだ俺が馬鹿だったよ……」
相手に対するネーミングにハンターが突っ込むも、受付嬢の返答に閉口。
脱力し、とりあえず敵の能力についての説明を促していた。
「はいはい、能力ですね! ミザル、キカザルはその容姿を武器にして、相対した相手を魅了しちゃいます。
目を奪われちゃったら、何か衝撃を受けない限りは見とれちゃって何もできなくなっちゃいますね。
ウゴカザルは、身体の水滴を飛ばして攻撃します。威力も高くて射程も長くて厄介ですし、中々に強敵ですね」
相手を魅了し、そして近接攻撃を仕掛ける2匹の猿と遠距離から銃弾の如く水滴を飛ばし、相手を傷つけ蹂躙する猿。
行動を封じつつ遠距離攻撃を仕掛けるという点で、ふざけた見た目とネーミングの割には強敵と言えるだろう。
「情報はこんな感じですね。出現位置は小川の近く、ある程度開けてる場所になってますけどちょっと入り込んだら木が邪魔で移動しにくくなっちゃいますし、射線は通りません。
まあ、射撃しにくいってのは相手も同じ条件ですし、あえて引く作戦もあるかと思いますが、皆さんにお任せです。
それじゃ、頑張ってきてくださいね」
そこまで伝え、彼女は纏めた資料をハンターに手渡し説明を終了。
山中に出現した雑魔退治へと、一行を送り出すのであった。
木々を打ち払い、山菜や薪といった資源を求めて数名の男が獣道を進んでいた。
既に何度もこの山に入った事はあるのだろう、彼らは青々とした木々を前に鉈を振り、小川を飛び越え、慣れた様子で奥へ奥へと踏み入り多くの植物を採取。
用意した篭一杯に様々な山の幸を収穫し、思わず頬をほころばせていた。
「今日は大量だな。いつもより手早く集まったし、少し休んで行くか?」
「いいな、それ。今から降りると暑い中進むハメになるし、川辺で涼んでいこうぜ」
言葉を交わし、先ほど飛び越えた小川の傍へ篭を下ろし各々が水を浴びて涼を楽しむ。
川自体は小さいものの、周囲に張り出した木々のおかげか日陰になっており、少ない水でも涼むには十分。
思い思いの方法で水を取り込み、木陰で風を受けつつ日が傾くのを待つだけだった彼らに突如、奇怪な叫びが聞こえた。
「キキ、キキャー!」
「ゲッゲッゲッ」
「グググググ、グギャルゥ!」
驚かせるような、嘲笑うような、威嚇するような。
3種の叫びが彼らの耳へと飛び込み、顔を見合わせ声のする方角を凝視する。
直後、茂みから飛び出してきたのは異様な姿をした3匹の猿であった。
1匹は見事な毛並み。通常の猿よりやや長いその体毛は、山林を進む間に汚れてしまう筈だがその毛は全身、汚れ一つ無く艶を帯び、美しい輝きを見せつけていた。
もう1匹は、こんな山林に似つかわしくない豪奢な衣服。猿がどうして衣服を着ているのか分からないが、何処かの貴族が着るような衣服を纏い、汚れ一つ付けずに佇んでいる。
そして、最後の1匹は普通の猿。ただし、全身がびしょ濡れで常にその体毛から水を滴り落としていたのだ。
「な、なんだぁ!? なんでこんな猿が!?」
「……すげぇ、毛並みが綺麗だなぁ」
「ちょ、どうし……あ、なんだ、あの服。俺も着て見たい、かな」
3匹の猿を前に、まずは衝撃が。
しかし、その直後に猿の毛並みに、そして豪奢な衣装に男の注意は引きつけられその場から動けない。
「お前ら、どうしたんだよ! しっかりし……うおあぁ!?」
目を奪われず、何とか仲間を正気に戻そうとした男。
だが、彼にはびしょ濡れの猿がその身体から数多の水滴を飛ばし、その水滴はまるで銃弾の如き威力で男を傷つける。
あまりの衝撃、その痛みに耐え切れず彼は目を奪われた男に倒れ掛かる形で衝突を。
「いでっ!? うっ、俺はいったい……って、どうしたんだよ、その怪我は!?」
「あの猿の水だ、水鉄砲なんてもんじゃねぇ、逃げるぞ!」
「おい、お前もしっかりしろっ」
ぶつかった衝撃から、目を奪われていた男は正気を取り戻し現状を理解。
別の男も仲間から殴られ、自分が何をしていたか理解は出来なかったものの危険である事は分かり、重傷を負った男を庇いつつの逃走劇を開始する。
後方から飛来する水滴が仲間を傷つけ、折角収穫した山菜なども回収は出来ないが命が大事、歩きなれた山である事が幸いし怪我は酷くなったものの全員揃って下山は出来た。
こうして、山に突如出現した雑魔の脅威によってその恵みを得る事が出来なくなった村々は対策を協議。
ハンター達に討伐を依頼する運びとなっていた。
●そこはイワザル、だろ!
「はいはーい、今日は3匹セットの猿退治、ちゃちゃっとやっつけちゃいましょー! ってことで説明しますよー」
集まったハンターを前に、受付嬢が今回の依頼内容を説明する。
今回はとある山に出没した猿雑魔退治が目的だが、少々厄介な能力があるようだ。
「猿は3匹、それぞれが特徴的な能力を持ってますよ!
まずはとーっても綺麗な毛並みを持ってる美しい猿、これはまさにミザル、と言えるでしょう!
次は貴族の人が着てるような豪華な衣服を着てる猿、これこそキカザル!
最後は、ずっとびしょ濡れ、しっとりしている猿ですね。まさにウゴカザル、と言うにピッタリです!」
「まてまてまてまて。色々とおかしいけど、ウゴカザルじゃなくてイワザル、じゃないのか、そこは?」
「え? 語呂の関係上、イワザルはリストラされたんですよ、きっとそうに決まってますって!
ミザル、イワザル、キカザル、をどう組み換えても語呂は悪いですけど最後がウゴカザル、だと語呂いいじゃないですか」
「突っ込んだ俺が馬鹿だったよ……」
相手に対するネーミングにハンターが突っ込むも、受付嬢の返答に閉口。
脱力し、とりあえず敵の能力についての説明を促していた。
「はいはい、能力ですね! ミザル、キカザルはその容姿を武器にして、相対した相手を魅了しちゃいます。
目を奪われちゃったら、何か衝撃を受けない限りは見とれちゃって何もできなくなっちゃいますね。
ウゴカザルは、身体の水滴を飛ばして攻撃します。威力も高くて射程も長くて厄介ですし、中々に強敵ですね」
相手を魅了し、そして近接攻撃を仕掛ける2匹の猿と遠距離から銃弾の如く水滴を飛ばし、相手を傷つけ蹂躙する猿。
行動を封じつつ遠距離攻撃を仕掛けるという点で、ふざけた見た目とネーミングの割には強敵と言えるだろう。
「情報はこんな感じですね。出現位置は小川の近く、ある程度開けてる場所になってますけどちょっと入り込んだら木が邪魔で移動しにくくなっちゃいますし、射線は通りません。
まあ、射撃しにくいってのは相手も同じ条件ですし、あえて引く作戦もあるかと思いますが、皆さんにお任せです。
それじゃ、頑張ってきてくださいね」
そこまで伝え、彼女は纏めた資料をハンターに手渡し説明を終了。
山中に出現した雑魔退治へと、一行を送り出すのであった。
リプレイ本文
●山林の雄を討つ
木々を掻き分け、汗を拭いつつ8人のハンターは目的地を目指していた。
「ん~、面倒だね、魅了って」
「以前も似たような能力を持つ雑魔と戦ったが、やっぱり厄介な能力だよな」
小枝を押しのけゼル・アーガイア(ka0373)が呟けば、今回の敵が使う魅了の力、それを以前体験した事のあるヴァイス(ka0364)が続き肩をすくめる。
少々ふざけた外見の敵ではあるが、保有する能力は厄介そのもの、それを思っての感想である。
「なんてめんどくさい相手なんだろう……」
「それもありますが、お猿さんでは、いまいち可愛さに欠けますね」
「まあ、コミカルな相手だが相当厄介だ。気を抜かずにいくとするかね」
耳に聞こえるは小川のせせらぎ、敵との邂逅が近い事を感じつつ説明を受けた相手に対し面倒と率直な感想を述べたアレックス・マクラウド(ka0580)
彼女に続き、魅了されるならばもっと可愛い相手が良かった、なんて本音が出ているメトロノーム・ソングライト(ka1267)に対し、一応注意を促すクロード・オールドマン(ka0365)が言葉を続ける。
皆、相手の能力と見た目などに思う事があるのだろう、それは次の言葉でも示されていた。
「猿の世界にもリストラってあるのねー。イワザルだったら超硬い猿の石像でも持ってきてあげればいいのに」
「リストラされたイワザルはどこに行ったのかしら? 雑魔の世界もいろいろあって大変みたいね」
はぶられてしまった猿、イワザルを哀れみつつジュウベエことJyu=Bee(ka1681)が代案を言えば、受付嬢にリストラされたと存在すら許されないイワザル、雑魔も大変だなとしみじみ感じていた天川 麗美(ka1355)が言葉を続ける。
リストラとか悲劇は無かったはず、たまたまこんな編成だったのを受付嬢が面白おかしく言っているだけな気もするが、それにしては都合が良すぎる今回の編成故にそう思うのも仕方ない。
「人を魅了させるサルか……毛並みがいいらしいし、毛皮を取ればいい服が作れるかも、だけど雑魔じゃね」
そんな中アルメイダ(ka2440)が呟いたのは、能力ではなく相手の見た目。
毛皮を利用して衣服が出来れば、さぞ素晴らしいモノが出来るのだろうが相手は雑魔、倒れれば消滅が確定している。
それぞれが雑魔に感想を言いつつ進めば、木々の密度が下がり水音がより鮮明に聞こえてくる。
茂みの中から目を凝らし、水辺でうろつく3つの影、雑魔ミザル、キカザル、ウゴカザルをハンターは確認。
相手に気付かれぬよう気配を殺し、2班に分かれ接近、攻撃の機会を待つのであった。
●狙いは分断
二手に別れ、挟撃する形を取ったハンター達。
川での戦闘を避けるために、完全に挟み込む位置取りは出来ないものの雑魔が全員を視界に捉えることが出来なければそれで十分。
「さて、それでは始めましょうか」
疾風一閃、木々の合間より風の刃をメトロノームが放てばそれに合わせてゼルが構えた猟銃を発砲、キカザルの纏った豪奢な衣服が破れ、弾痕が刻まれる。
不意打ちに反応、その方向へキカザルの注意が向けば、逆を取った別働班も攻撃開始。
「魅了されないように対策はしてるんだけどさ、先手は取らせてもらうよ」
「やられるまえに、やれるだけの事はします!」
魔導銃を構えたアルメイダがミザルを狙撃、そして同時に着弾するのはアレックスが放った光弾。
身体にめり込む銃弾、しかしミザルはそのダメージを物ともせずに反転、光弾までもを真正面から受け止める。
着弾の際、光によってその毛皮をより美しく見せつけようとポーズを決めるミザルであったが、それを許さぬ麗美の銃撃。
「はい、見せ付けるのはちょっと早いですよ」
発砲音、そして妙な方向に曲がったミザルの首。
ハンター側に対し、やや横向きにポーズを決めたのが悪かったのだろう、こめかみ付近に運悪く銃弾が命中し、顔が真横に向く結果を迎えていたのだ。
美しい毛並みも、このポーズで台無しである、ってかすごく、キモイです。
しかし、このまま見せ付けるだけではまずいと流石に判断したのか、雑魔側も行動開始。
メトロノームやゼルの居た方向へはキカザルが、アルメイダ、アレックス、麗美が待ち受ける方向にミザルが前進するが、ミザルを止めるべく立ちはだかる影が木々の合間より躍り出る。
「おっとぉ、突っ込んできたわね。それじゃ、侍少女ジュウベエちゃんが化け猿退治を始めましょうか」
日本刀を鞘から抜刀、左手には小型円形の西洋盾を翳しジュウベエが前線を構築。
同刻、反対側ではヴァイスがキカザルの進路に立ち、クロードが常に援護可能な位置に立つ。
ならばとウゴカザルが援護射撃、ヴァイスを狙い水滴を射出しその体を傷つけキカザルを支援。
しかし、援護を行ったとはいえそれはあくまで単体攻撃、ハンターの狙いはミザル、キカザルをウゴカザルから遠ざける事にある。
こうして、ハンターの思惑通り戦況は動き、各個撃破を狙っての猛攻が始まろうとしていた。
●その美しさを打ち破れ
「………………」
最前線で立っていたのが災いしてかヴァイスが魅了、ただ無言でキカザルを見つめていた。
それは、惚れた人物に向けるようなものではなく手の届かない、はるか高嶺の花を見るかのような羨望の眼差しである。
豪奢な衣装を見せつけ、さらに魅了される相手を増やそうと振舞うキカザルだが、どうやらクロードはその魅力に抗う事に成功。
そして、初手に攻撃していたメトロノームやゼルは既に木々の合間に一時撤退、視界から消えることで魅了の力から逃れていたのだ。
「と、そろそろ戻りぃ」
キカザルを見つめるヴァイス、その後ろからクロードがアルケミスタクトで軽く一突き。
背部からの衝撃を受け、ハッと我に返ったヴァイスは攻撃の為に一気に前進。
「やってくれたな、この猿め」
肉薄しつつ大地を踏みしめ、全身に力を込める。
歯をむき出しに、挑発するようなキカザルに怒りを込めてグレートソードを力任せに横薙ぎすれば、衣装ごとその身体には深い傷が刻まれていた。
「よっと、それじゃ攻撃再開だ」
「そのご自慢の服、ボロボロにして差し上げます」
直後、攻撃に移るゼルとメトロノーム。
出来れば顔面、その目を撃ちぬこうと狙うゼルではあったが距離が遠いが故に狙いが逸れ、銃弾は胸部に命中。
着弾地点を押さえつつ、一歩後退したキカザルを襲うのはメトロノームの生み出す風の刃。
風にひらめく衣服の裾が切り刻まれ、細切れとなった布が虚空に舞うがキカザルの戦意は衰えず。
「キキキ、キャーッ!」
奇声を上げつつ反撃を。最も近い位置に居たヴァイスを狙い、力任せに殴りつけるキカザル。
防御の為に得物を翳すも一瞬遅れ、ヴァイスは胸部に鈍い痛みを感じていた。
ハンターは衣服を狙い、キカザルは最前線から格闘での撃破を狙う。
双方、再度の攻撃の最中ウゴカザルの放った水滴が前線のクロードを襲い、消耗を強いてはいたがその程度は想定の範囲内、最も警戒していたのはキカザルの魅了攻撃である。
「魅了くるで!」
警戒を促すクロードの叫び。
初手、次手と時計を見、相手の魅了がどの程度の間隔で発生させているか測っていたが故に出来たその行動。
その声に反応、ヴァイス、ゼル、メトロノームが心奪われぬよう気を持ち、魅了の力を振り払う。
しかし、相手を観察していた代償としてクロードが魅了されてしまっていた。
「猿ん癖にえぇセンスしちょるのぉ、可愛えぇのぉ」
ボーっと眺め、その衣服に目を奪われるが数度の攻撃にて各所が破損した以上、魅了の力も長くはない。
ヴァイスが剣を振りぬけば大きく破け、さらにはメトロノームの放つ風の刃が衣服を引き裂く。
「よし、服はなくなったからこれでただの敵、撃って倒すよ」
魅了の力を失えば茂みに逃れる意味は無い、そう判断したゼルが茂みから飛び出し猟銃を狙い定める。
相手の動き、それを見極め引き金を引く瞬間彼は自身のマテリアルを一気に開放、銃器に強力な力を付与し狙撃する。
衣服を破かれ、興奮していたキカザルは反応が遅れ右肩に命中、鮮血を撒き散らし肩を抑えるが攻撃はそれだけで終わりではない。
「と、ちと見とれてしもぉたわ」
キカザルの衣服が破け、魅了の力から解放されたクロード。
アルケミストタクトを介し、全身のマテリアルをその戦端に集中。
直後、杖の先端から放たれた光は呻き声を上げていたキカザルの胸部を貫きそれが致命の一撃に。
よろめき、まともな抵抗が出来なくなったその身体には、ゼルの銃弾、メトロノームの風の刃、そしてヴァイスの振り下ろしが控えている以上、助かる術は残されてはいなかった。
数度の攻撃、それらが飛来した後には敵の姿はそこになく。
キカザルは完全に消滅していた。
同刻、やや距離を置いた場所、ミザルとの戦いも激しさを増していた。
「……綺麗」
アレックス、魅了確認!
相手は猿雑魔、しかし彼女は頬を紅潮させ、まるで恋する乙女の如き表情で見つめていたのだ!
女である事を捨てたはず、そんな少女がふと見せる乙女の素顔、ポイント高いですねぇ~
「ちょっと痛いわよーー。正気に戻れーー!」
乙女ってたアレックス、それを現実に引き戻すのは魅了を凌いだジュウベエ。
手にした盾で軽く叩けば、ぽーっとしていたアレックスは魅了状態から解放され、慌てて頭を振って落ち着きを取り戻す。
「お猿さんだから、これは気になるんじゃないかしら?」
そんな2人を後ろにし、麗美が取り出したのは巨大なバナナ、もといバナナ型をした浮き輪である。
猿ならバナナ、それに興味が惹かれるのではと思い投げつけてみるが、ミザルは慌てて飛び退き回避する。
バナナという物体よりも、巨大な何か、という点が隙を生む、本来意図した目潰しとしての効果は出なかったものの、一瞬の隙を作る事には成功していたのだ、結果オーライであろう。
「おっと、これ以上近づくと射線が通っちゃうかな」
魔導銃を構えつつ後退、マテリアルを充填させ光の弾丸を放つアルメイダ。
バナナボートを避けた際、無駄に隙を晒したミザルは反応できず直撃し、左肩が焦げ上がる。
「くっ、よくもやってくれたね!」
続けて動くはアレックス、魅了されて女らしい顔をした事がよほど恥かしかったのか、それを隠すよう声を荒げて攻撃を。
日本刀の柄から生み出された光弾はミザルの腹部に命中するがこの程度では倒れない。
「さーて、その綺麗な毛並みを汚しちゃいましょう!」
通常攻撃、それに対し強いのならば魅了の力を奪ってやろう。
そう狙い行動を仕掛けたジュウベエ、手にした瓶には牛乳が入っておりそれを頭からぶっかけてやろう、という算段。
ぶちまけられた白い液体、これで相手の魅力も激減……となればよかったが、ミザルの毛並みは下手な汚れを物ともしない見事な毛、ぶちまけられた牛乳を弾き、その美しさを保っていたのだ。
勝ち誇るかの様にポーズを決めたミザル、正直言ってとってもウザイ。
イラッとしたジュウベエ、飛び掛ってきたミザルの攻撃を翳した盾でガッシリ受け止めダメージを大きく減らし、次の一手に備えていた。
「キキャー!」
ガードされた、許せない。
怒りを露に叫ぶミザル、この姿を見ろといわんばかりに胸を張る。
「くっ、見事な毛づやにクルリンと整った毛の形。間近でみて分かるが、まさかここまでの物だなんて……」
「あらあら、素適な毛並みね。これでふかふかの毛布が作れるかしら?」
まずい、距離が近かったジュウベエと麗美が魅了された!
自分の髪の毛より手入れされてる、というか見事な毛に目を奪われたジュウベエ、がくりとうなだれ無防備に。
そして、麗美は毛布にピッタリー、なんて思ってその場に立ち尽くすオブジェになりかけてはいたが、瞬間何かが彼女の頭を過ぎっていた。
それは、誰かが麗美を案じる思いの力。
大切な友を思うその心、それが麗美の魅了を打ち払う機会を与えていたのだ。
「……あれっ? わたし何してたんだっけ?」
敵を見て、目を奪われて……これでは耄碌したジジ……あんまり好きじゃないタイプの人と同じじゃないか、いけないけないと自我を取り戻した麗美。
周囲を見渡し、ジュウベエが無防備にうなだれてるのを確認、これは危険と判断するが彼女が動くより早く、後方から飛来した石がジュウベエに命中していた。
「あたっ!? あれっ、私まで魅了されてたっての!?」
頭に命中、その衝撃で我を取り戻したジュウベエ。
石の軌跡を目で追えば、投げた張本人は最後尾、距離を置いて戦いを続けていたアルメイダ。
手ごろな石を幾つか拾い、距離が離れた相手でも衝撃を与える準備をしていた彼女の手により、前線の瓦解は未然に防がれていたのである。
こうなれば、最早ミザルも各個撃破の的。
「このジュウベエちゃん達を倒すには。毛が3本ほど足りなかったようね」
一歩踏み込み、抜刀一閃。
銃弾やらでボロボロになっていたミザルはジュウベエの攻撃、それに耐え切れずその姿を散らしていたのだ。
そして、戦いは最後に残ったウゴカザル、それを8人がかりでのフルボッコへ。
「前衛もいない、動かない後衛の悲しい末路です」
「『ウゴカザル』なら攻撃モーションも禁止ってカンジぃ?」
「俺もスナイパー名乗ってるしさ、射撃の奴には負けられない!」
ウゴカザル、必死で水滴を飛ばすも複数方向の攻撃を全然凌げずボロボロに。
とても良い笑顔でメトロノームの、そしてちょっと素がでた麗美が魔法と銃弾でガリガリ削り、しっかり狙ったゼルの狙撃が脳天直撃。
こうして、魅了攻撃を主体とした雑魔の群れは予想より苦戦せず、わりとサックリ駆除に成功するのであった。
●
「あれっ? こんなもの?」
「いや、この程度で済んでよかったよ……」
予想よりアッサリ撃破、拍子抜けしたアレックスに対し魅了は強敵と組むとより危険、この程度の相手だったから良かったとヴァイスが返していた。
「あの美しい毛並み……やっぱり毛皮にしたかったねぇ」
「お、取らぬ猿の皮算用ってやつか、クカカ」
戦いで目を奪われなかったが、艶やかな毛並みには心惹かれていたアルメイダ、そして彼女をからかうようにクロードが言葉をかける。
「お猿さんは可愛くないです。猫さんの方がずっと可愛いのです」
そんな中、猿より猫だとメトロノームが断言、世間一般も猿派より猫派が多いはずっ!
それぞれが色々な思いを抱く中、山中の戦いは完全に終了、ハンター達は下山の途に着くのであった……
木々を掻き分け、汗を拭いつつ8人のハンターは目的地を目指していた。
「ん~、面倒だね、魅了って」
「以前も似たような能力を持つ雑魔と戦ったが、やっぱり厄介な能力だよな」
小枝を押しのけゼル・アーガイア(ka0373)が呟けば、今回の敵が使う魅了の力、それを以前体験した事のあるヴァイス(ka0364)が続き肩をすくめる。
少々ふざけた外見の敵ではあるが、保有する能力は厄介そのもの、それを思っての感想である。
「なんてめんどくさい相手なんだろう……」
「それもありますが、お猿さんでは、いまいち可愛さに欠けますね」
「まあ、コミカルな相手だが相当厄介だ。気を抜かずにいくとするかね」
耳に聞こえるは小川のせせらぎ、敵との邂逅が近い事を感じつつ説明を受けた相手に対し面倒と率直な感想を述べたアレックス・マクラウド(ka0580)
彼女に続き、魅了されるならばもっと可愛い相手が良かった、なんて本音が出ているメトロノーム・ソングライト(ka1267)に対し、一応注意を促すクロード・オールドマン(ka0365)が言葉を続ける。
皆、相手の能力と見た目などに思う事があるのだろう、それは次の言葉でも示されていた。
「猿の世界にもリストラってあるのねー。イワザルだったら超硬い猿の石像でも持ってきてあげればいいのに」
「リストラされたイワザルはどこに行ったのかしら? 雑魔の世界もいろいろあって大変みたいね」
はぶられてしまった猿、イワザルを哀れみつつジュウベエことJyu=Bee(ka1681)が代案を言えば、受付嬢にリストラされたと存在すら許されないイワザル、雑魔も大変だなとしみじみ感じていた天川 麗美(ka1355)が言葉を続ける。
リストラとか悲劇は無かったはず、たまたまこんな編成だったのを受付嬢が面白おかしく言っているだけな気もするが、それにしては都合が良すぎる今回の編成故にそう思うのも仕方ない。
「人を魅了させるサルか……毛並みがいいらしいし、毛皮を取ればいい服が作れるかも、だけど雑魔じゃね」
そんな中アルメイダ(ka2440)が呟いたのは、能力ではなく相手の見た目。
毛皮を利用して衣服が出来れば、さぞ素晴らしいモノが出来るのだろうが相手は雑魔、倒れれば消滅が確定している。
それぞれが雑魔に感想を言いつつ進めば、木々の密度が下がり水音がより鮮明に聞こえてくる。
茂みの中から目を凝らし、水辺でうろつく3つの影、雑魔ミザル、キカザル、ウゴカザルをハンターは確認。
相手に気付かれぬよう気配を殺し、2班に分かれ接近、攻撃の機会を待つのであった。
●狙いは分断
二手に別れ、挟撃する形を取ったハンター達。
川での戦闘を避けるために、完全に挟み込む位置取りは出来ないものの雑魔が全員を視界に捉えることが出来なければそれで十分。
「さて、それでは始めましょうか」
疾風一閃、木々の合間より風の刃をメトロノームが放てばそれに合わせてゼルが構えた猟銃を発砲、キカザルの纏った豪奢な衣服が破れ、弾痕が刻まれる。
不意打ちに反応、その方向へキカザルの注意が向けば、逆を取った別働班も攻撃開始。
「魅了されないように対策はしてるんだけどさ、先手は取らせてもらうよ」
「やられるまえに、やれるだけの事はします!」
魔導銃を構えたアルメイダがミザルを狙撃、そして同時に着弾するのはアレックスが放った光弾。
身体にめり込む銃弾、しかしミザルはそのダメージを物ともせずに反転、光弾までもを真正面から受け止める。
着弾の際、光によってその毛皮をより美しく見せつけようとポーズを決めるミザルであったが、それを許さぬ麗美の銃撃。
「はい、見せ付けるのはちょっと早いですよ」
発砲音、そして妙な方向に曲がったミザルの首。
ハンター側に対し、やや横向きにポーズを決めたのが悪かったのだろう、こめかみ付近に運悪く銃弾が命中し、顔が真横に向く結果を迎えていたのだ。
美しい毛並みも、このポーズで台無しである、ってかすごく、キモイです。
しかし、このまま見せ付けるだけではまずいと流石に判断したのか、雑魔側も行動開始。
メトロノームやゼルの居た方向へはキカザルが、アルメイダ、アレックス、麗美が待ち受ける方向にミザルが前進するが、ミザルを止めるべく立ちはだかる影が木々の合間より躍り出る。
「おっとぉ、突っ込んできたわね。それじゃ、侍少女ジュウベエちゃんが化け猿退治を始めましょうか」
日本刀を鞘から抜刀、左手には小型円形の西洋盾を翳しジュウベエが前線を構築。
同刻、反対側ではヴァイスがキカザルの進路に立ち、クロードが常に援護可能な位置に立つ。
ならばとウゴカザルが援護射撃、ヴァイスを狙い水滴を射出しその体を傷つけキカザルを支援。
しかし、援護を行ったとはいえそれはあくまで単体攻撃、ハンターの狙いはミザル、キカザルをウゴカザルから遠ざける事にある。
こうして、ハンターの思惑通り戦況は動き、各個撃破を狙っての猛攻が始まろうとしていた。
●その美しさを打ち破れ
「………………」
最前線で立っていたのが災いしてかヴァイスが魅了、ただ無言でキカザルを見つめていた。
それは、惚れた人物に向けるようなものではなく手の届かない、はるか高嶺の花を見るかのような羨望の眼差しである。
豪奢な衣装を見せつけ、さらに魅了される相手を増やそうと振舞うキカザルだが、どうやらクロードはその魅力に抗う事に成功。
そして、初手に攻撃していたメトロノームやゼルは既に木々の合間に一時撤退、視界から消えることで魅了の力から逃れていたのだ。
「と、そろそろ戻りぃ」
キカザルを見つめるヴァイス、その後ろからクロードがアルケミスタクトで軽く一突き。
背部からの衝撃を受け、ハッと我に返ったヴァイスは攻撃の為に一気に前進。
「やってくれたな、この猿め」
肉薄しつつ大地を踏みしめ、全身に力を込める。
歯をむき出しに、挑発するようなキカザルに怒りを込めてグレートソードを力任せに横薙ぎすれば、衣装ごとその身体には深い傷が刻まれていた。
「よっと、それじゃ攻撃再開だ」
「そのご自慢の服、ボロボロにして差し上げます」
直後、攻撃に移るゼルとメトロノーム。
出来れば顔面、その目を撃ちぬこうと狙うゼルではあったが距離が遠いが故に狙いが逸れ、銃弾は胸部に命中。
着弾地点を押さえつつ、一歩後退したキカザルを襲うのはメトロノームの生み出す風の刃。
風にひらめく衣服の裾が切り刻まれ、細切れとなった布が虚空に舞うがキカザルの戦意は衰えず。
「キキキ、キャーッ!」
奇声を上げつつ反撃を。最も近い位置に居たヴァイスを狙い、力任せに殴りつけるキカザル。
防御の為に得物を翳すも一瞬遅れ、ヴァイスは胸部に鈍い痛みを感じていた。
ハンターは衣服を狙い、キカザルは最前線から格闘での撃破を狙う。
双方、再度の攻撃の最中ウゴカザルの放った水滴が前線のクロードを襲い、消耗を強いてはいたがその程度は想定の範囲内、最も警戒していたのはキカザルの魅了攻撃である。
「魅了くるで!」
警戒を促すクロードの叫び。
初手、次手と時計を見、相手の魅了がどの程度の間隔で発生させているか測っていたが故に出来たその行動。
その声に反応、ヴァイス、ゼル、メトロノームが心奪われぬよう気を持ち、魅了の力を振り払う。
しかし、相手を観察していた代償としてクロードが魅了されてしまっていた。
「猿ん癖にえぇセンスしちょるのぉ、可愛えぇのぉ」
ボーっと眺め、その衣服に目を奪われるが数度の攻撃にて各所が破損した以上、魅了の力も長くはない。
ヴァイスが剣を振りぬけば大きく破け、さらにはメトロノームの放つ風の刃が衣服を引き裂く。
「よし、服はなくなったからこれでただの敵、撃って倒すよ」
魅了の力を失えば茂みに逃れる意味は無い、そう判断したゼルが茂みから飛び出し猟銃を狙い定める。
相手の動き、それを見極め引き金を引く瞬間彼は自身のマテリアルを一気に開放、銃器に強力な力を付与し狙撃する。
衣服を破かれ、興奮していたキカザルは反応が遅れ右肩に命中、鮮血を撒き散らし肩を抑えるが攻撃はそれだけで終わりではない。
「と、ちと見とれてしもぉたわ」
キカザルの衣服が破け、魅了の力から解放されたクロード。
アルケミストタクトを介し、全身のマテリアルをその戦端に集中。
直後、杖の先端から放たれた光は呻き声を上げていたキカザルの胸部を貫きそれが致命の一撃に。
よろめき、まともな抵抗が出来なくなったその身体には、ゼルの銃弾、メトロノームの風の刃、そしてヴァイスの振り下ろしが控えている以上、助かる術は残されてはいなかった。
数度の攻撃、それらが飛来した後には敵の姿はそこになく。
キカザルは完全に消滅していた。
同刻、やや距離を置いた場所、ミザルとの戦いも激しさを増していた。
「……綺麗」
アレックス、魅了確認!
相手は猿雑魔、しかし彼女は頬を紅潮させ、まるで恋する乙女の如き表情で見つめていたのだ!
女である事を捨てたはず、そんな少女がふと見せる乙女の素顔、ポイント高いですねぇ~
「ちょっと痛いわよーー。正気に戻れーー!」
乙女ってたアレックス、それを現実に引き戻すのは魅了を凌いだジュウベエ。
手にした盾で軽く叩けば、ぽーっとしていたアレックスは魅了状態から解放され、慌てて頭を振って落ち着きを取り戻す。
「お猿さんだから、これは気になるんじゃないかしら?」
そんな2人を後ろにし、麗美が取り出したのは巨大なバナナ、もといバナナ型をした浮き輪である。
猿ならバナナ、それに興味が惹かれるのではと思い投げつけてみるが、ミザルは慌てて飛び退き回避する。
バナナという物体よりも、巨大な何か、という点が隙を生む、本来意図した目潰しとしての効果は出なかったものの、一瞬の隙を作る事には成功していたのだ、結果オーライであろう。
「おっと、これ以上近づくと射線が通っちゃうかな」
魔導銃を構えつつ後退、マテリアルを充填させ光の弾丸を放つアルメイダ。
バナナボートを避けた際、無駄に隙を晒したミザルは反応できず直撃し、左肩が焦げ上がる。
「くっ、よくもやってくれたね!」
続けて動くはアレックス、魅了されて女らしい顔をした事がよほど恥かしかったのか、それを隠すよう声を荒げて攻撃を。
日本刀の柄から生み出された光弾はミザルの腹部に命中するがこの程度では倒れない。
「さーて、その綺麗な毛並みを汚しちゃいましょう!」
通常攻撃、それに対し強いのならば魅了の力を奪ってやろう。
そう狙い行動を仕掛けたジュウベエ、手にした瓶には牛乳が入っておりそれを頭からぶっかけてやろう、という算段。
ぶちまけられた白い液体、これで相手の魅力も激減……となればよかったが、ミザルの毛並みは下手な汚れを物ともしない見事な毛、ぶちまけられた牛乳を弾き、その美しさを保っていたのだ。
勝ち誇るかの様にポーズを決めたミザル、正直言ってとってもウザイ。
イラッとしたジュウベエ、飛び掛ってきたミザルの攻撃を翳した盾でガッシリ受け止めダメージを大きく減らし、次の一手に備えていた。
「キキャー!」
ガードされた、許せない。
怒りを露に叫ぶミザル、この姿を見ろといわんばかりに胸を張る。
「くっ、見事な毛づやにクルリンと整った毛の形。間近でみて分かるが、まさかここまでの物だなんて……」
「あらあら、素適な毛並みね。これでふかふかの毛布が作れるかしら?」
まずい、距離が近かったジュウベエと麗美が魅了された!
自分の髪の毛より手入れされてる、というか見事な毛に目を奪われたジュウベエ、がくりとうなだれ無防備に。
そして、麗美は毛布にピッタリー、なんて思ってその場に立ち尽くすオブジェになりかけてはいたが、瞬間何かが彼女の頭を過ぎっていた。
それは、誰かが麗美を案じる思いの力。
大切な友を思うその心、それが麗美の魅了を打ち払う機会を与えていたのだ。
「……あれっ? わたし何してたんだっけ?」
敵を見て、目を奪われて……これでは耄碌したジジ……あんまり好きじゃないタイプの人と同じじゃないか、いけないけないと自我を取り戻した麗美。
周囲を見渡し、ジュウベエが無防備にうなだれてるのを確認、これは危険と判断するが彼女が動くより早く、後方から飛来した石がジュウベエに命中していた。
「あたっ!? あれっ、私まで魅了されてたっての!?」
頭に命中、その衝撃で我を取り戻したジュウベエ。
石の軌跡を目で追えば、投げた張本人は最後尾、距離を置いて戦いを続けていたアルメイダ。
手ごろな石を幾つか拾い、距離が離れた相手でも衝撃を与える準備をしていた彼女の手により、前線の瓦解は未然に防がれていたのである。
こうなれば、最早ミザルも各個撃破の的。
「このジュウベエちゃん達を倒すには。毛が3本ほど足りなかったようね」
一歩踏み込み、抜刀一閃。
銃弾やらでボロボロになっていたミザルはジュウベエの攻撃、それに耐え切れずその姿を散らしていたのだ。
そして、戦いは最後に残ったウゴカザル、それを8人がかりでのフルボッコへ。
「前衛もいない、動かない後衛の悲しい末路です」
「『ウゴカザル』なら攻撃モーションも禁止ってカンジぃ?」
「俺もスナイパー名乗ってるしさ、射撃の奴には負けられない!」
ウゴカザル、必死で水滴を飛ばすも複数方向の攻撃を全然凌げずボロボロに。
とても良い笑顔でメトロノームの、そしてちょっと素がでた麗美が魔法と銃弾でガリガリ削り、しっかり狙ったゼルの狙撃が脳天直撃。
こうして、魅了攻撃を主体とした雑魔の群れは予想より苦戦せず、わりとサックリ駆除に成功するのであった。
●
「あれっ? こんなもの?」
「いや、この程度で済んでよかったよ……」
予想よりアッサリ撃破、拍子抜けしたアレックスに対し魅了は強敵と組むとより危険、この程度の相手だったから良かったとヴァイスが返していた。
「あの美しい毛並み……やっぱり毛皮にしたかったねぇ」
「お、取らぬ猿の皮算用ってやつか、クカカ」
戦いで目を奪われなかったが、艶やかな毛並みには心惹かれていたアルメイダ、そして彼女をからかうようにクロードが言葉をかける。
「お猿さんは可愛くないです。猫さんの方がずっと可愛いのです」
そんな中、猿より猫だとメトロノームが断言、世間一般も猿派より猫派が多いはずっ!
それぞれが色々な思いを抱く中、山中の戦いは完全に終了、ハンター達は下山の途に着くのであった……
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼相談用 アルメイダ(ka2440) エルフ|12才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/07/30 18:16:34 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/29 20:07:00 |