ゲスト
(ka0000)
窮地な新人ハンター
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/31 15:00
- 完成日
- 2015/11/05 22:35
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ハンター支部
その日。グラズヘイム王国のとあるハンター支部に、ひとりの男性が飛び込んできた。
受付の女性が話を聞く。五十代半ばくらいで、口髭を生やした中年の男性は、自分を宿屋の主人だと言った。
「実は数日前からウチに宿泊してるお客さんの少女が、朝に出かけたきり戻ってこないんです」
現在は夕方近く。話を聞くと、少女とはいえ年齢は十六歳みたいだった。
「少女の名前はミント・ユリガン。頭はちょっと弱そうだけど、とてもいい子なんです」
宿屋の主人が力説する。
「そうなんですか。一般人の方ですか?」
「いいえ。当人は新人ハンターだと言ってました」
男性の回答に、受付の女性が目をパチクリさせる。
調べてみると、確かにハンターとして登録されていた。
ならば、余計に大丈夫なのではないか。
そう判断した受付女性は、改めて男性に依頼の必要性を尋ねた。
「おおいに必要なんですっ! 今回だって、怪しげな商人から怪しげな宝の地図を買ったって大喜びで……」
どうやら新人ハンターのミントは、怪しげな商人から購入した宝の地図を躊躇いなく信じたらしい。
「誰が考えても、偽物だとわかりそうなものですが……」
受付女性の言葉に、男性が同意する。
「私だってそう思います。でも瞳をキラキラさせるミントちゃんを見てたら、何も言えなくなってしまって……それに、彼女は本当にいい子なんです!」
男性の経営する宿屋は利用客が少なく、そろそろ店をたたもうか悩んでいたらしかった。
数少ない常連のミントがその話を聞き、この宿屋が大好きだから頑張ってと応援してきた。
気持ちはありがたかったが、無理なものはどうしようもない。
男は「お金がないから……」と、申し訳なく思いながらも言った。
するとミントは小さな胸を張って、こう言ったのである。
――お金なら私がなんとかする! 大丈夫よ。宝の地図を持ってるの。今回だって、そのお宝を探しに来たんだから!
ミントの言葉を伝えられた受付女性は、右手でこめかみを押さえた。
頭はちょっと弱そうだけど、とてもいい子――。
宿屋の主人の説明がたった今、受付女性の中でしっくりきたところだった。
「なんともなければそれでいいんです。他のハンターの方に、様子を見に行ってもらいたいんです。彼女が向かった洞窟には、スライムが住みついてるという話もあります。すぐに逃げ帰ってくると思っていたのですが、何時間も音沙汰がないと不安で不安で……」
●洞窟
「――え、えええぇぇぇ!?」
なんとも間の抜けた声が、とある洞窟内に響き渡った。
声の主はミント・ユリガン。駆け出しの新人ハンターである。
よくお世話になってる宿屋さんの窮地を救うんだ。
決意を抱き、ウキウキしながら早朝に洞窟へ入った直後、ミントは迷子になった。
お腹を減らしながら歩き回っていたミント。出入口を探していたはずなのに、何故か洞窟の最深部へ辿り着いた。
奥にある大きな宝箱を見て、テンションはマックス。罠があるかどうかも確認せずに突進した。
やっぱりあったとウキウキしながら宝箱を開け、そして先ほどの悲鳴を上げた。
中には金銀財宝ではなく、一匹のスライムがいただけだった。
「ど、どうして、スライムが宝箱の中に入ってるのよぉ。まさか……これがお宝なのっ!?」
売ったらいくらになるんだろう?
わかんないけど、とりあえずこれを持って帰ればいいのかな。
パニクリながらそんなことを考えていると、宝箱の奥からのそのそとスライムが這い出てきた。
スライムだけに、怒ってるのかどうかもわからない。
ただなんとなく、攻撃されそうな気配はあった。
これ、ちょっとやばいかもしれない。
直感でそう思ったミントは、急いで回れ右をした。
すると、そこにも一匹のスライムがいた。
瞬間移動でも使われたのかと、大慌てで再び宝箱のある方を確認する。
「宝箱の中から出てきたのも……いるわね。じゃあ、増えたの? どうして? どこから!?」
――ボタボタボタ。
慌てふためくミントの耳に、とてもとても嫌な音が届いてきた。
宝箱に向けた視線を戻すたび、来た道にいるスライムの数が増えていく。
ハっとして天井を見ると、大きな雨だれのように液体が降ってくる。
べちゃりと地面に激突したあと、もぞもぞと自身を整える。
粘ついた液体で構成されるスライムならではの気色悪さに、ミントは身震いする。
「スライムが天井から振ってくるなんて……はっ! そういえばお宝は!?」
スライムの入っていた宝箱を確認するも、中身は他に何もなかった。
のそのそと宝箱から出てくるスライムを見ながら、ミントは大きな声を上げる。
「だーまーさーれーたー! どこがお宝なのよぉ。宝箱に入ってるなら、せめて金色に光り輝いたりしてなさいよぉ」
苦情を言われたところで、スライムに人間の言語は理解できない。
不思議そうにするでもなく、ぬるぬるとミントとの距離を詰めようとする。
「はっ! もしかしてお宝は凄く美味しい食べ物で、スライムが先に食べちゃったんじゃ……? じゃ、じゃあ回収するためには倒すしかないの!?」
まともなハンターなら、そんなことがあるはずないとすぐにわかる。
しかし、ミント・ユリガン十六歳は本気だった。
彼女はいつでも本気だった。
こうなったらと思ってもみたが、敵は宝箱から出てきたスライムだけではない。天井から落ちてきて、ミントの背後をとったスライムたちまでにじり寄ってくる。
あまりにも不気味。
あまりにも気持ち悪すぎる光景だった。
「か、簡単に倒せると思わないでよね。新人でも私はハンターなんだから!」
威勢よく叫んだのはいいが、相手はスライム。非覚醒者のミントでは、一対一でも勝てる可能性は低い。
恐らく――負ける。
緊張で喉をカラカラにしながらも、ミントは腰からショートソードを抜いた。
●ハンター支部
結局、受付の女性は宿屋の主人の依頼を受理した。
一応緊急ということで、手の空いているハンターにお願いしてみる。
「様子を見る対象は新人ハンターのミント・ユリガンです。場所はこの町から徒歩で三十分程度の洞窟です。彼女が窮地に陥っていた場合は、救出も依頼内容に入ります。洞窟にはスライムの存在が確認されているようで、戦闘になる可能性が高いと思われます。向かう際は、しっかりとした準備をしてください。依頼主はこの町にある宿屋の主人です。依頼達成後は、宿屋までミント・ユリガンを送ってあげてください。それでは、よろしくお願いします」
受付の女性はそう言うと、説明を求めたハンターに深々と頭を下げた。
その日。グラズヘイム王国のとあるハンター支部に、ひとりの男性が飛び込んできた。
受付の女性が話を聞く。五十代半ばくらいで、口髭を生やした中年の男性は、自分を宿屋の主人だと言った。
「実は数日前からウチに宿泊してるお客さんの少女が、朝に出かけたきり戻ってこないんです」
現在は夕方近く。話を聞くと、少女とはいえ年齢は十六歳みたいだった。
「少女の名前はミント・ユリガン。頭はちょっと弱そうだけど、とてもいい子なんです」
宿屋の主人が力説する。
「そうなんですか。一般人の方ですか?」
「いいえ。当人は新人ハンターだと言ってました」
男性の回答に、受付の女性が目をパチクリさせる。
調べてみると、確かにハンターとして登録されていた。
ならば、余計に大丈夫なのではないか。
そう判断した受付女性は、改めて男性に依頼の必要性を尋ねた。
「おおいに必要なんですっ! 今回だって、怪しげな商人から怪しげな宝の地図を買ったって大喜びで……」
どうやら新人ハンターのミントは、怪しげな商人から購入した宝の地図を躊躇いなく信じたらしい。
「誰が考えても、偽物だとわかりそうなものですが……」
受付女性の言葉に、男性が同意する。
「私だってそう思います。でも瞳をキラキラさせるミントちゃんを見てたら、何も言えなくなってしまって……それに、彼女は本当にいい子なんです!」
男性の経営する宿屋は利用客が少なく、そろそろ店をたたもうか悩んでいたらしかった。
数少ない常連のミントがその話を聞き、この宿屋が大好きだから頑張ってと応援してきた。
気持ちはありがたかったが、無理なものはどうしようもない。
男は「お金がないから……」と、申し訳なく思いながらも言った。
するとミントは小さな胸を張って、こう言ったのである。
――お金なら私がなんとかする! 大丈夫よ。宝の地図を持ってるの。今回だって、そのお宝を探しに来たんだから!
ミントの言葉を伝えられた受付女性は、右手でこめかみを押さえた。
頭はちょっと弱そうだけど、とてもいい子――。
宿屋の主人の説明がたった今、受付女性の中でしっくりきたところだった。
「なんともなければそれでいいんです。他のハンターの方に、様子を見に行ってもらいたいんです。彼女が向かった洞窟には、スライムが住みついてるという話もあります。すぐに逃げ帰ってくると思っていたのですが、何時間も音沙汰がないと不安で不安で……」
●洞窟
「――え、えええぇぇぇ!?」
なんとも間の抜けた声が、とある洞窟内に響き渡った。
声の主はミント・ユリガン。駆け出しの新人ハンターである。
よくお世話になってる宿屋さんの窮地を救うんだ。
決意を抱き、ウキウキしながら早朝に洞窟へ入った直後、ミントは迷子になった。
お腹を減らしながら歩き回っていたミント。出入口を探していたはずなのに、何故か洞窟の最深部へ辿り着いた。
奥にある大きな宝箱を見て、テンションはマックス。罠があるかどうかも確認せずに突進した。
やっぱりあったとウキウキしながら宝箱を開け、そして先ほどの悲鳴を上げた。
中には金銀財宝ではなく、一匹のスライムがいただけだった。
「ど、どうして、スライムが宝箱の中に入ってるのよぉ。まさか……これがお宝なのっ!?」
売ったらいくらになるんだろう?
わかんないけど、とりあえずこれを持って帰ればいいのかな。
パニクリながらそんなことを考えていると、宝箱の奥からのそのそとスライムが這い出てきた。
スライムだけに、怒ってるのかどうかもわからない。
ただなんとなく、攻撃されそうな気配はあった。
これ、ちょっとやばいかもしれない。
直感でそう思ったミントは、急いで回れ右をした。
すると、そこにも一匹のスライムがいた。
瞬間移動でも使われたのかと、大慌てで再び宝箱のある方を確認する。
「宝箱の中から出てきたのも……いるわね。じゃあ、増えたの? どうして? どこから!?」
――ボタボタボタ。
慌てふためくミントの耳に、とてもとても嫌な音が届いてきた。
宝箱に向けた視線を戻すたび、来た道にいるスライムの数が増えていく。
ハっとして天井を見ると、大きな雨だれのように液体が降ってくる。
べちゃりと地面に激突したあと、もぞもぞと自身を整える。
粘ついた液体で構成されるスライムならではの気色悪さに、ミントは身震いする。
「スライムが天井から振ってくるなんて……はっ! そういえばお宝は!?」
スライムの入っていた宝箱を確認するも、中身は他に何もなかった。
のそのそと宝箱から出てくるスライムを見ながら、ミントは大きな声を上げる。
「だーまーさーれーたー! どこがお宝なのよぉ。宝箱に入ってるなら、せめて金色に光り輝いたりしてなさいよぉ」
苦情を言われたところで、スライムに人間の言語は理解できない。
不思議そうにするでもなく、ぬるぬるとミントとの距離を詰めようとする。
「はっ! もしかしてお宝は凄く美味しい食べ物で、スライムが先に食べちゃったんじゃ……? じゃ、じゃあ回収するためには倒すしかないの!?」
まともなハンターなら、そんなことがあるはずないとすぐにわかる。
しかし、ミント・ユリガン十六歳は本気だった。
彼女はいつでも本気だった。
こうなったらと思ってもみたが、敵は宝箱から出てきたスライムだけではない。天井から落ちてきて、ミントの背後をとったスライムたちまでにじり寄ってくる。
あまりにも不気味。
あまりにも気持ち悪すぎる光景だった。
「か、簡単に倒せると思わないでよね。新人でも私はハンターなんだから!」
威勢よく叫んだのはいいが、相手はスライム。非覚醒者のミントでは、一対一でも勝てる可能性は低い。
恐らく――負ける。
緊張で喉をカラカラにしながらも、ミントは腰からショートソードを抜いた。
●ハンター支部
結局、受付の女性は宿屋の主人の依頼を受理した。
一応緊急ということで、手の空いているハンターにお願いしてみる。
「様子を見る対象は新人ハンターのミント・ユリガンです。場所はこの町から徒歩で三十分程度の洞窟です。彼女が窮地に陥っていた場合は、救出も依頼内容に入ります。洞窟にはスライムの存在が確認されているようで、戦闘になる可能性が高いと思われます。向かう際は、しっかりとした準備をしてください。依頼主はこの町にある宿屋の主人です。依頼達成後は、宿屋までミント・ユリガンを送ってあげてください。それでは、よろしくお願いします」
受付の女性はそう言うと、説明を求めたハンターに深々と頭を下げた。
リプレイ本文
●
洞窟へ入るとすぐ、ロニ・カルディス(ka0551)が、用意していた火のついた松明を何本か内部へ放り込んだ。灯りにするためだ。
奥までは照らしきれないものの、松明のおかげで足元を中心に明るくなった。影響の及ぶ範囲内にいれば、敵からの不意打ちは避けられる。
入口付近を松明で照らしたあと、持参してきたライトでハンターは奥を照らす。ルシェン・グライシス(ka5745)もそのうちのひとりだ。
「新人ハンターの子、無事に保護したい所ね」
可愛い子だったら、別の意味でも保護しないとね?
仲間の手前、口にこそしなかったものの、心の中では続きの台詞も呟いていた。
「新人か、新人は大事にしなきゃな、うん。なんとしても助けないと」
ミントを助けるために、スライムどもをぶっとばすとミリア・コーネリウス(ka1287)が気合を入れる。
同時にランプシェパードには灯りを、祝福の水稲には飲料水を入れていた。
出発前に聞いた話を思い出しながら、十野間 虚空(ka5683)が言う。
「話を聞くからに、性格の良い優しい子の様ですね。それだけに、浅慮な所があまりに残念に感じるのですが……」
「若さに任せた勢いだな……と、若造の俺が言っても仕方がないな」
虚空の言葉にロニが応じた。自虐的とまではいかないものの、かすかに上がった口角が苦笑いを作る。
「なんにせよ、スライムが住み着いてるらしい洞窟に、ろくに準備もせずに一人で向かったのであれば確かに危険ですからね。一人、心細い思いもしている事でしょうから、早々に救助してあげませんと」
そう言った虚空の側では、閏(ka5673)が真っ直ぐに洞窟の奥を見つめていた。視線の先には、ライトで照らされたスライムの不気味な姿がある。
「……新人ハンターさん、ですか……俺と同じですね。……化け物をこう、目の当たりにすると怖いですね……」
華蜂院 蜜希(ka5703)もミントの安全確保と救出を目的に、光源として選んだハンディライトで奥を観察している最中だった。
ミントが混乱しない様、どのように動くべきかなどの彼女への指示は仲間に任せるつもりだ。
同様に万歳丸(ka5665) も、スライムとミントの存在を肉眼で確認していた。
「――少しばかり、遠いな。手も足も届かねェ。けどよ、声は、届くだろ?」
「今から助けに行くぜ! すまねぇが、もうちょっと頑張ってくれ!」
蜜希が声を張り上げた。ミントに届いてるかどうかは微妙なところだ。スライムへの対処に必死で、聞こえてないかもしれない。
一刻も早い救助が必要と判断し、ロニがとりあえずの作戦を組み立てる。
「基本方針としては、スライムの一角に穴をあけて出口までの道を作り、ミントを脱出させることを第一目標とする。内部を確認した結果、ミントと出口の間にいる敵を集中攻撃してミントの脱出経路を確保したいと思う」
ミントを救出したいという思いは皆、同じ。
各自で己の役目を決め、早速行動に移る。手遅れにだけはするわけにいかない。
まずは万歳丸が、横に並ぶスライムたちと肉薄する距離まで一気に迫ろうとする。
「ミント!! 聞こえるか!! そいつはノロそうだ! 追い詰められねェように周りを見て、頭と足を使え!」
全力移動で駆けながら、万歳丸は大声で叫んだ。
「新人だろーがてめェはハンターだ。俺達がそこに行くまで気合見せろ!」
迫力ある声が空気を振動させ、ミントの耳孔に飛び込んでいく。
「も、もしかして助けが来たの!? そ、それなら戦うより逃げ回ろう! 頭と足、頭と足……!」
友人の万歳丸の後ろを、背中に隠れるようにして閏が追いかける。
初めての実戦と目の当たりにした異形の存在に、びくびくと泣きそうになっている。
それでもスライムに追いかけられるミントを見て、何とかしなければと閏は勇気を振り絞って符を用意する。
緊張と不安、それに恐怖で手が震える。その影響で、放った胡蝶符は敵から逸れてしまった。
「……ここで足手まといになったら、次も同じ事を繰り返してしまいますもんね……彼に笑われない様、俺も頑張らないと……」
頭に思い浮かべるのは、記憶に残る親友の姿。
今一度自分を奮い立たせ、閏は符を持つ手に力を込める。
――次は外しません。
閏の視線が、徐々に鋭さを増していった。
並ぶスライムの隙間を越えて一直線にミントの側を目指した蜜希だったが、途中で一匹に邪魔されてしまう。
それならばと、仲間が遠距離攻撃の射線を取れる様に考慮しつつ、その一匹に接近する。
「やってやるぜ!」
気合の咆哮を放ち、蜜希はスライムと対峙した。
右手に呪符、左手にハンディライトを携えた虚空は可能な限り奥まで照らし、ミントの姿と無事を確認する。
蜜希だけでなく、ロニも脱出までは敵を刺激せず、身を守ることに専念する様にミントへ伝えていた。
ハンターたちからの助言や指示を忠実に守り、若干騒がしくしながらもミントは円を描くように逃げ回り中だ。
「敵に囲まれている可能性も想定してはいましたが、状況はかなり逼迫してるといってもいいですね。一刻も早く助けてあげるためにも、私は照明役と後方支援を重点的に行います」
言った虚空のライトで、ミントを中心とした一帯が照らされる。暗い洞窟の中でも、おかげで視界はかなり良くなった。
さらに仲間をミントのもとへ行かせるためにも、奥への道を塞ぐスライムを胡蝶符で狙う。
ロニもまた、虚空と同じスライムを標的にする。
「時間もない。まずは正面から削り取るとしよう」
ロニが得物を振るたびに、影と見間違うかのような黒い塊がスライムへと飛来していく。
一気に敵を仕留めるため、ロニとタイミングを合わせて、ルシェンもシャドウブリットで同じスライムを攻撃した。
「ちょっとばかり邪魔なのよね、吹き飛びなさいっ!」
軟体で物理ダメージが通りにくいだけに、スライムには魔法攻撃が効果を発揮した。
スライムの一匹を倒したことで、ミントのところまでいくルートも出来上がった。
チャンスを窺っていたミリアが、待ってましたと言わんばかりに、敵の間をすり抜けるようにして突破する。
視界の先にはスライムに追いつかれ、今にも攻撃されそうになっているミントの姿。
――間に合うか?
全力で突き進むミリアは、躊躇いなくミントの前に出る。
スライムの攻撃をあえて回避せず、自らを盾にしてミントを守った。
防御無視のダメージを負っても悲鳴は上げず、背後のミントを大丈夫かと気遣う。
そこへ入口方面にいるロニからの指示が飛ぶ。
逃走経路が出来たのもあり、敵をかわして脱出するようミントに求めたのである。
「そこの新人クン。一旦ここはボクに任せて、あそこの仲間のところまで下がれ。スライムたちをぶっ飛ばすぞ」
ミリアの言葉もあって、ミントは洞窟の出入口方面にいるロニたちを目指して全力で走り出す。
ミリアがミントと一時的にでも合流したのを確認した蜜希は、狙っていたのが仲間に倒されたのもあり、他のスライムを標的にする。
移動無しの震撃を放つも、相手がスライムだけあって普段どおりの威力を発揮しきれない。
「ホントなら柔よく剛を制す……といきてぇ所だけど、相手がやらけぇならしゃあない。今回は軽減上等の殴り合いだな」
好戦的な笑みを浮かべ、蜜希は両側の敵が中央へ寄らないように戦闘を展開させていく。
ミントがこちらへやってくれば、すかさず護衛に回るつもりだった。
「しっかしまぁ……ここまで手応え無いのもやりづれぇな……大きなダメージを与えるのは仲間に期待だな。その分、ミントの安全確保を頑張るぜっ」
一方で万歳丸は退路を広めに確保するため、飛翔撃でスライムの一匹を横方向へと吹き飛ばしていた。
「――っし、背中は任せたぜッ!」
閏を信頼する万歳丸は、当たり前のように背中を任せ、退路の維持に集中する。
期待に応えるべく、閏は敵の射程内へ入らないよう気を付けて立ち回る。
「わかりました。任せてください」
胡蝶符を投げ、着実に閏はスライムへダメージを与えていく。
ルシェンも万歳丸や閏たちと同じく、ミントの退避ルート確保に励む。攻撃ではなく、防御をメインにして動き回る。
「あなた達の相手はこちらよ? 黙って付き合いなさいな!」
人間の言語はわからなくとも、スライムたちはルシェンの動きに惑わされる。
複数のスライムの注意を惹き、まとまるように誘導する。そうすれば味方の範囲攻撃で、一網打尽にできるはずだ。
行動中に防御無視のダメージを多少負ってしまったが、それでもルシェンは両足の動きを止めなかった。
各ハンターがスライムを引きつけてくれているおかげで、ミントは比較的安全にスライムの包囲網から脱出できた。安心するのはまだ早いと理解していても、安堵せずにはいられない。
奥にいたスライムがミントを追いすがろうとしたが、ミリアが立ち塞がって妨害する。一対一の状況になったところで突撃魂を駆使して、スライムとの戦闘を続行する。
ミントの救出が第一目的ではあるが、ミリアは基本的に撤退は考えておらず、スライムを全滅させてやろうと思っていた。
攻撃を行いながら少しずつ前進し、ライトの照射範囲が広がるようにしていた虚空のおかげもあり、ミントはやっとの思いでハンターのいる場所まで到達。ハンターたちの背中側に隠しておき、ひとまずの安全を確保する。
「今後の憂いを断つ事ができるのであれば、スライムの殲滅をしておきたいわね」
「このまま残しておいても仕方あるまい。掃討戦へ移行するぞ」
ルシェンの言葉にロニが同意し、残っているスライムを片づけにかかる。
ルシェンの誘導でまとまっていたスライムたちに、セイクリッドフラッシュでロニが攻撃する。
大きなダメージを与えたところを、虚空が火炎符で撃退した。
「これでまた一匹減りましたね。あともう少しです。頑張りましょう」
蜜希はミントの前に立ち、向かってくるスライムを震撃で倒す。
ミントを守るためには、一匹たりとも後ろへ行かせるわけにはいかない。気迫が伝わってくるかのような一撃だった。
万歳丸と、その背中を守る形の閏も奮闘する。連携のとれた攻撃で、きっちりとスライムにだけダメージを負わせていく。
ロニとルシェンの魔法攻撃で着実に弱らせ、他のハンターがとどめを刺す。
リズミカルさすら漂うようなコンビネーションにより、大きな被害を出さずに周辺のスライムを撃退できた。
残りは奥にいる一匹だけとなり、万歳丸や閏が助太刀しようとするも、その頃にはミリアも何度目かの突撃魂でスライムとの戦闘を制したところだった。
●
念のために虚空が先頭に立って、洞窟内を調査する。
「宝の地図ゥ?」
声を上げたのは万歳丸だ。ミントに洞窟へ来たいきさつを改めて聞き、反射的に口からこぼれてしまった。
「いやそりゃァおまえ……もうちょいこの辺探そうぜ……」
そう言った万歳丸に、ミントだけでなく他のハンターの視線も注がれる。
すると万歳丸は、無くてもそんなもんだろと笑った。
「夢見ていこうじゃねェか。楽しまねェと損だしな。アンタならさっきの気合がありゃァ、十分だろ」
ミントの背中を叩いて言いながらも、万歳丸はひとつの疑問を覚えていた。
丁寧に罠があったっつーのがなァーんか気になるが……どっかに人の手が入った所でもないかね?
注意深く観察してみるが、そうした場所は見当たらなかった。
他のスライムも発見できなかったことから、一行はミントを連れて洞窟から出ることにした。
「ミントさん、よく頑張りましたね。……とても、お強いです」
ミントに飲み物を手渡しながら、閏が言った。
「お恥ずかしい話、俺なんてずっと泣きそうになってましたから」
閏だけでなく、ミリアやルシェンもミントを気遣う。
ルシェンがミネラルウォーターをミントへ渡したあと、ミリアもバラエティランチと水筒を差し出した。
「ずいぶん長い間潜ってたんだってな? 補給品持ってきたぞー」
言いながら、バンバンとミントの肩を叩く。
「とりあえず今回のスライム退治おつかれさん。宿屋に帰ろうか。旦那さんたち喜ぶぞ」
全員で洞窟を出て、久しぶりに太陽の光を浴びる。
「全員無事に洞窟を出られたな。滞りなく救出もできて、何よりだ」
右手で太陽の光から両目を守りながら、ロニが言った。
依頼を出した宿屋へ全員で向かう道中、閏がミントにおにぎりを見せる。
「あ、これ、おにぎりです。宜しかったら後で食べてくださいね……お腹空いていたらですが」
最後に付け加えたひと言のあと、閏はくすっと笑った。
「あれだけの目にあったら、しばらくは食欲がないかもしれませんね。何はともあれ、依頼者の方にミントさんの無事な姿を見せてあげましょう」
虚空もまた、微笑みながらその台詞を口にした。
●
ミントを連れて宿屋に戻ると、お礼がしたいという店主に宿屋内で手料理を振る舞われた。
堪能したあと、この機会にと蜜希が口を開いた。
「宿屋を助けようとして、逆に助けられてたら相手に心配かけるだけだぜ?」
ぶっきらぼうな感じだが、蜜希がミントの身を案じてるのは十分にわかった。
蜜希の忠告に、ルシェンもすぐ同意する。
「お世話になってるお礼がしたいなら、怪しげな商人から変なものを入手するのはやめておきなさい」
ルシェンの言う変なものが、宝の地図なのは明らかだ。
さすがに懲りてるかと思いきや、ミントは拳を握り締めて「大丈夫です、次こそは」なんて言ったりする。
呆れてため息をつく者もいる中、それならとルシェンは口を開いた。
「もしよかったら私を誘いなさい。こちらの条件を飲めば無償で手伝ってあげるわ」
舌なめずりをするルシェンを前に、元気よく返事をしようとしていたミントの動きが止まる。
笑顔にぎこちなさが混じり、少しずつルシェンから距離をとろうとする。
そんなミントに、今度は蜜希が話しかける。
「なぁミント、一攫千金じゃなくても、何か出来ないか考えてみようぜ? 大好きな宿屋の為に……な」
にこっとする蜜希に、うんうんと何度も頷いたのは宿屋の店主だった。
「う~ん……じゃあ、お客さんを連れてくるお手伝いとか、かな」
説得が通じたと、ハンターのみならず店主までもが笑顔になる。
だが、話はここで終わらなかった。
「そうだ。お客さんなら、人間じゃなくてもいいよね。例えば、コボルドとか!」
名案だとばかりに顔を輝かせるミントとは対照的に、今にも泣きそうな店主がやめてくれと悲鳴を上げた。
「一生懸命なのは伝わるのですが……やはり、残念なのですね」
呟く虚空の隣で、ロニが軽く肩をすくめる。
「こればかりは、もうどうしようもないな」
その後、ハンターたちはひと晩かけてミントを説得したのだった。
洞窟へ入るとすぐ、ロニ・カルディス(ka0551)が、用意していた火のついた松明を何本か内部へ放り込んだ。灯りにするためだ。
奥までは照らしきれないものの、松明のおかげで足元を中心に明るくなった。影響の及ぶ範囲内にいれば、敵からの不意打ちは避けられる。
入口付近を松明で照らしたあと、持参してきたライトでハンターは奥を照らす。ルシェン・グライシス(ka5745)もそのうちのひとりだ。
「新人ハンターの子、無事に保護したい所ね」
可愛い子だったら、別の意味でも保護しないとね?
仲間の手前、口にこそしなかったものの、心の中では続きの台詞も呟いていた。
「新人か、新人は大事にしなきゃな、うん。なんとしても助けないと」
ミントを助けるために、スライムどもをぶっとばすとミリア・コーネリウス(ka1287)が気合を入れる。
同時にランプシェパードには灯りを、祝福の水稲には飲料水を入れていた。
出発前に聞いた話を思い出しながら、十野間 虚空(ka5683)が言う。
「話を聞くからに、性格の良い優しい子の様ですね。それだけに、浅慮な所があまりに残念に感じるのですが……」
「若さに任せた勢いだな……と、若造の俺が言っても仕方がないな」
虚空の言葉にロニが応じた。自虐的とまではいかないものの、かすかに上がった口角が苦笑いを作る。
「なんにせよ、スライムが住み着いてるらしい洞窟に、ろくに準備もせずに一人で向かったのであれば確かに危険ですからね。一人、心細い思いもしている事でしょうから、早々に救助してあげませんと」
そう言った虚空の側では、閏(ka5673)が真っ直ぐに洞窟の奥を見つめていた。視線の先には、ライトで照らされたスライムの不気味な姿がある。
「……新人ハンターさん、ですか……俺と同じですね。……化け物をこう、目の当たりにすると怖いですね……」
華蜂院 蜜希(ka5703)もミントの安全確保と救出を目的に、光源として選んだハンディライトで奥を観察している最中だった。
ミントが混乱しない様、どのように動くべきかなどの彼女への指示は仲間に任せるつもりだ。
同様に万歳丸(ka5665) も、スライムとミントの存在を肉眼で確認していた。
「――少しばかり、遠いな。手も足も届かねェ。けどよ、声は、届くだろ?」
「今から助けに行くぜ! すまねぇが、もうちょっと頑張ってくれ!」
蜜希が声を張り上げた。ミントに届いてるかどうかは微妙なところだ。スライムへの対処に必死で、聞こえてないかもしれない。
一刻も早い救助が必要と判断し、ロニがとりあえずの作戦を組み立てる。
「基本方針としては、スライムの一角に穴をあけて出口までの道を作り、ミントを脱出させることを第一目標とする。内部を確認した結果、ミントと出口の間にいる敵を集中攻撃してミントの脱出経路を確保したいと思う」
ミントを救出したいという思いは皆、同じ。
各自で己の役目を決め、早速行動に移る。手遅れにだけはするわけにいかない。
まずは万歳丸が、横に並ぶスライムたちと肉薄する距離まで一気に迫ろうとする。
「ミント!! 聞こえるか!! そいつはノロそうだ! 追い詰められねェように周りを見て、頭と足を使え!」
全力移動で駆けながら、万歳丸は大声で叫んだ。
「新人だろーがてめェはハンターだ。俺達がそこに行くまで気合見せろ!」
迫力ある声が空気を振動させ、ミントの耳孔に飛び込んでいく。
「も、もしかして助けが来たの!? そ、それなら戦うより逃げ回ろう! 頭と足、頭と足……!」
友人の万歳丸の後ろを、背中に隠れるようにして閏が追いかける。
初めての実戦と目の当たりにした異形の存在に、びくびくと泣きそうになっている。
それでもスライムに追いかけられるミントを見て、何とかしなければと閏は勇気を振り絞って符を用意する。
緊張と不安、それに恐怖で手が震える。その影響で、放った胡蝶符は敵から逸れてしまった。
「……ここで足手まといになったら、次も同じ事を繰り返してしまいますもんね……彼に笑われない様、俺も頑張らないと……」
頭に思い浮かべるのは、記憶に残る親友の姿。
今一度自分を奮い立たせ、閏は符を持つ手に力を込める。
――次は外しません。
閏の視線が、徐々に鋭さを増していった。
並ぶスライムの隙間を越えて一直線にミントの側を目指した蜜希だったが、途中で一匹に邪魔されてしまう。
それならばと、仲間が遠距離攻撃の射線を取れる様に考慮しつつ、その一匹に接近する。
「やってやるぜ!」
気合の咆哮を放ち、蜜希はスライムと対峙した。
右手に呪符、左手にハンディライトを携えた虚空は可能な限り奥まで照らし、ミントの姿と無事を確認する。
蜜希だけでなく、ロニも脱出までは敵を刺激せず、身を守ることに専念する様にミントへ伝えていた。
ハンターたちからの助言や指示を忠実に守り、若干騒がしくしながらもミントは円を描くように逃げ回り中だ。
「敵に囲まれている可能性も想定してはいましたが、状況はかなり逼迫してるといってもいいですね。一刻も早く助けてあげるためにも、私は照明役と後方支援を重点的に行います」
言った虚空のライトで、ミントを中心とした一帯が照らされる。暗い洞窟の中でも、おかげで視界はかなり良くなった。
さらに仲間をミントのもとへ行かせるためにも、奥への道を塞ぐスライムを胡蝶符で狙う。
ロニもまた、虚空と同じスライムを標的にする。
「時間もない。まずは正面から削り取るとしよう」
ロニが得物を振るたびに、影と見間違うかのような黒い塊がスライムへと飛来していく。
一気に敵を仕留めるため、ロニとタイミングを合わせて、ルシェンもシャドウブリットで同じスライムを攻撃した。
「ちょっとばかり邪魔なのよね、吹き飛びなさいっ!」
軟体で物理ダメージが通りにくいだけに、スライムには魔法攻撃が効果を発揮した。
スライムの一匹を倒したことで、ミントのところまでいくルートも出来上がった。
チャンスを窺っていたミリアが、待ってましたと言わんばかりに、敵の間をすり抜けるようにして突破する。
視界の先にはスライムに追いつかれ、今にも攻撃されそうになっているミントの姿。
――間に合うか?
全力で突き進むミリアは、躊躇いなくミントの前に出る。
スライムの攻撃をあえて回避せず、自らを盾にしてミントを守った。
防御無視のダメージを負っても悲鳴は上げず、背後のミントを大丈夫かと気遣う。
そこへ入口方面にいるロニからの指示が飛ぶ。
逃走経路が出来たのもあり、敵をかわして脱出するようミントに求めたのである。
「そこの新人クン。一旦ここはボクに任せて、あそこの仲間のところまで下がれ。スライムたちをぶっ飛ばすぞ」
ミリアの言葉もあって、ミントは洞窟の出入口方面にいるロニたちを目指して全力で走り出す。
ミリアがミントと一時的にでも合流したのを確認した蜜希は、狙っていたのが仲間に倒されたのもあり、他のスライムを標的にする。
移動無しの震撃を放つも、相手がスライムだけあって普段どおりの威力を発揮しきれない。
「ホントなら柔よく剛を制す……といきてぇ所だけど、相手がやらけぇならしゃあない。今回は軽減上等の殴り合いだな」
好戦的な笑みを浮かべ、蜜希は両側の敵が中央へ寄らないように戦闘を展開させていく。
ミントがこちらへやってくれば、すかさず護衛に回るつもりだった。
「しっかしまぁ……ここまで手応え無いのもやりづれぇな……大きなダメージを与えるのは仲間に期待だな。その分、ミントの安全確保を頑張るぜっ」
一方で万歳丸は退路を広めに確保するため、飛翔撃でスライムの一匹を横方向へと吹き飛ばしていた。
「――っし、背中は任せたぜッ!」
閏を信頼する万歳丸は、当たり前のように背中を任せ、退路の維持に集中する。
期待に応えるべく、閏は敵の射程内へ入らないよう気を付けて立ち回る。
「わかりました。任せてください」
胡蝶符を投げ、着実に閏はスライムへダメージを与えていく。
ルシェンも万歳丸や閏たちと同じく、ミントの退避ルート確保に励む。攻撃ではなく、防御をメインにして動き回る。
「あなた達の相手はこちらよ? 黙って付き合いなさいな!」
人間の言語はわからなくとも、スライムたちはルシェンの動きに惑わされる。
複数のスライムの注意を惹き、まとまるように誘導する。そうすれば味方の範囲攻撃で、一網打尽にできるはずだ。
行動中に防御無視のダメージを多少負ってしまったが、それでもルシェンは両足の動きを止めなかった。
各ハンターがスライムを引きつけてくれているおかげで、ミントは比較的安全にスライムの包囲網から脱出できた。安心するのはまだ早いと理解していても、安堵せずにはいられない。
奥にいたスライムがミントを追いすがろうとしたが、ミリアが立ち塞がって妨害する。一対一の状況になったところで突撃魂を駆使して、スライムとの戦闘を続行する。
ミントの救出が第一目的ではあるが、ミリアは基本的に撤退は考えておらず、スライムを全滅させてやろうと思っていた。
攻撃を行いながら少しずつ前進し、ライトの照射範囲が広がるようにしていた虚空のおかげもあり、ミントはやっとの思いでハンターのいる場所まで到達。ハンターたちの背中側に隠しておき、ひとまずの安全を確保する。
「今後の憂いを断つ事ができるのであれば、スライムの殲滅をしておきたいわね」
「このまま残しておいても仕方あるまい。掃討戦へ移行するぞ」
ルシェンの言葉にロニが同意し、残っているスライムを片づけにかかる。
ルシェンの誘導でまとまっていたスライムたちに、セイクリッドフラッシュでロニが攻撃する。
大きなダメージを与えたところを、虚空が火炎符で撃退した。
「これでまた一匹減りましたね。あともう少しです。頑張りましょう」
蜜希はミントの前に立ち、向かってくるスライムを震撃で倒す。
ミントを守るためには、一匹たりとも後ろへ行かせるわけにはいかない。気迫が伝わってくるかのような一撃だった。
万歳丸と、その背中を守る形の閏も奮闘する。連携のとれた攻撃で、きっちりとスライムにだけダメージを負わせていく。
ロニとルシェンの魔法攻撃で着実に弱らせ、他のハンターがとどめを刺す。
リズミカルさすら漂うようなコンビネーションにより、大きな被害を出さずに周辺のスライムを撃退できた。
残りは奥にいる一匹だけとなり、万歳丸や閏が助太刀しようとするも、その頃にはミリアも何度目かの突撃魂でスライムとの戦闘を制したところだった。
●
念のために虚空が先頭に立って、洞窟内を調査する。
「宝の地図ゥ?」
声を上げたのは万歳丸だ。ミントに洞窟へ来たいきさつを改めて聞き、反射的に口からこぼれてしまった。
「いやそりゃァおまえ……もうちょいこの辺探そうぜ……」
そう言った万歳丸に、ミントだけでなく他のハンターの視線も注がれる。
すると万歳丸は、無くてもそんなもんだろと笑った。
「夢見ていこうじゃねェか。楽しまねェと損だしな。アンタならさっきの気合がありゃァ、十分だろ」
ミントの背中を叩いて言いながらも、万歳丸はひとつの疑問を覚えていた。
丁寧に罠があったっつーのがなァーんか気になるが……どっかに人の手が入った所でもないかね?
注意深く観察してみるが、そうした場所は見当たらなかった。
他のスライムも発見できなかったことから、一行はミントを連れて洞窟から出ることにした。
「ミントさん、よく頑張りましたね。……とても、お強いです」
ミントに飲み物を手渡しながら、閏が言った。
「お恥ずかしい話、俺なんてずっと泣きそうになってましたから」
閏だけでなく、ミリアやルシェンもミントを気遣う。
ルシェンがミネラルウォーターをミントへ渡したあと、ミリアもバラエティランチと水筒を差し出した。
「ずいぶん長い間潜ってたんだってな? 補給品持ってきたぞー」
言いながら、バンバンとミントの肩を叩く。
「とりあえず今回のスライム退治おつかれさん。宿屋に帰ろうか。旦那さんたち喜ぶぞ」
全員で洞窟を出て、久しぶりに太陽の光を浴びる。
「全員無事に洞窟を出られたな。滞りなく救出もできて、何よりだ」
右手で太陽の光から両目を守りながら、ロニが言った。
依頼を出した宿屋へ全員で向かう道中、閏がミントにおにぎりを見せる。
「あ、これ、おにぎりです。宜しかったら後で食べてくださいね……お腹空いていたらですが」
最後に付け加えたひと言のあと、閏はくすっと笑った。
「あれだけの目にあったら、しばらくは食欲がないかもしれませんね。何はともあれ、依頼者の方にミントさんの無事な姿を見せてあげましょう」
虚空もまた、微笑みながらその台詞を口にした。
●
ミントを連れて宿屋に戻ると、お礼がしたいという店主に宿屋内で手料理を振る舞われた。
堪能したあと、この機会にと蜜希が口を開いた。
「宿屋を助けようとして、逆に助けられてたら相手に心配かけるだけだぜ?」
ぶっきらぼうな感じだが、蜜希がミントの身を案じてるのは十分にわかった。
蜜希の忠告に、ルシェンもすぐ同意する。
「お世話になってるお礼がしたいなら、怪しげな商人から変なものを入手するのはやめておきなさい」
ルシェンの言う変なものが、宝の地図なのは明らかだ。
さすがに懲りてるかと思いきや、ミントは拳を握り締めて「大丈夫です、次こそは」なんて言ったりする。
呆れてため息をつく者もいる中、それならとルシェンは口を開いた。
「もしよかったら私を誘いなさい。こちらの条件を飲めば無償で手伝ってあげるわ」
舌なめずりをするルシェンを前に、元気よく返事をしようとしていたミントの動きが止まる。
笑顔にぎこちなさが混じり、少しずつルシェンから距離をとろうとする。
そんなミントに、今度は蜜希が話しかける。
「なぁミント、一攫千金じゃなくても、何か出来ないか考えてみようぜ? 大好きな宿屋の為に……な」
にこっとする蜜希に、うんうんと何度も頷いたのは宿屋の店主だった。
「う~ん……じゃあ、お客さんを連れてくるお手伝いとか、かな」
説得が通じたと、ハンターのみならず店主までもが笑顔になる。
だが、話はここで終わらなかった。
「そうだ。お客さんなら、人間じゃなくてもいいよね。例えば、コボルドとか!」
名案だとばかりに顔を輝かせるミントとは対照的に、今にも泣きそうな店主がやめてくれと悲鳴を上げた。
「一生懸命なのは伝わるのですが……やはり、残念なのですね」
呟く虚空の隣で、ロニが軽く肩をすくめる。
「こればかりは、もうどうしようもないな」
その後、ハンターたちはひと晩かけてミントを説得したのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/27 11:53:16 |
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スライムと新人ハンターと私達 万歳丸(ka5665) 鬼|17才|男性|格闘士(マスターアームズ) |
最終発言 2015/10/31 00:08:52 |