ゲスト
(ka0000)
【郷祭】美味しいご飯は皆を幸せにする!
マスター:瑞木雫

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/10/31 22:00
- 完成日
- 2015/11/14 02:17
このシナリオは4日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ジェオルジの収穫祭は、絶対に盛り上げよう! ~フェリチタ村編~
実りの秋! 農耕推進地域のジェオルジにとって、それは待望していた季節だった。丹精を凝らして育てた農産物は、ジェオルジの大切な大切な宝物。だからこそ、村人達は収穫を楽しみにする。人と人とが助け合う希望の村――フェリチタも今年の豊作を喜び、無事の収穫を祝い、そして感謝していた。だがしかし……。
「今年の収穫祭はどうなるべなぁ……」
村人達は意気消沈して俯きがちだった。というのは、例年のように華やかに開催する事は出来ないかもしれないと不安になっているのだ。北方では歪虚の軍勢との激しい戦いが繰り広げられている。そんな最中に楽しくお祭りを開催するなんていけないんじゃないか、と心配の声が少なからず挙がっている状況だったから。
しかし、そんな村人達の不安を一瞬で吹き飛ばす人物がいた。
村長会議から一時帰って来たチェリチタ村の村長・アレッサンドロだ。
誠実な人柄で真面目で働き者、村人に慕われている良き長である。
「大丈夫。収穫祭はこれまでどおり開催する。―――いや、昨年以上に盛り上げていこうじゃないか!」
「ええ!? そりゃおら達にとっちゃあそうできりゃ嬉しいが……」
村人は心配するが、アレッサンドロは穏やかな微笑みを浮かべていた。
「ああ。今の情勢を考えると否定的になってしまう意見もよく分かる。僕たちは歪虚と戦う彼らに救われ、守られながら生きているからね。彼らが……彼らの仲間が血を流し戦ってくれている時にお祭りなんて、って。でも僕は、収穫祭が彼らへの最大の感謝を込められる、僕達にしか出来ないお祭りだと思ってるんだ!」
「……?」
アレッサンドロは言う。
僕らが日々真心を込めて美味しくできた食べ物を彼らに食べて貰いたい、と。
野菜も、果物も、穀類も、茶も、畜産物も。
生業とする皆が絶対美味しいって自信を持って言える素晴らしい宝は、きっと彼らを幸せにしてくれる筈。
美食は至福の味なり!
少々大袈裟に言ったアレッサンドロの眼差しはきらきらと輝いていた。
「僕らには戦う力は無いかもしれないけれど、美味しいご飯で彼らのお腹をいっぱいにすることはできるかもしれないだろ? 彼らにも、息抜きは必要だ。その息抜きする場所を、お祭りを、僕らがつくろうよ!」
少し遠巻きに離れて見ていたヴァレーリオ(kz0139)は盛大な溜息をついた。
視線の先には、さっきまで暗い顔していた村人達が今は活気に溢れ、収穫祭がんばるぞーと慌ただしく張り切っている姿。
(なんであんなんでどん底からやる気満々になっちまうかね……意味わかんねー)
まぁ自分には関係ねぇなー、とあくびをひとつ。
そんな折にゅっと現れた父親・アレッサンドロに肩をがしっと掴まれた。
「と、言う訳で、フェリチタの収穫祭のメインは仮設レストランだ。先生の補佐、頼んだよ」
「えっ」
●料理界の彗星、出番です!
「吾輩が監修兼料理長か。当然であるな!!」
淡く薄い水色の髪とぱっちりした紫瞳を持つ中性的な美少年は謙遜しなかった。
そればかりか高慢な態度で構えていた。
しかしその事をアレッサンドロ達は気にしていない。
「わーい! 宜しくお願いします、先生!」
「先生が料理長なら味は間違いないっぺー!」
「離せッ離せッ!! あいつの補佐なんて嫌だーーっ!!」
アレッサンドロと村人達は収穫祭のメインレストランは安泰だと心から喜んでおり、ヴァレーリオは今すぐ逃げることに必死。因みににっこりと微笑むアレッサンドロと村人に両腕を縛られ足をばたつかせ足掻いている状況である。
「こいつの傍に居ると碌なことがねえんだよぉ!」
「おい、ヴァレーリオ! 先生の前で失礼な事を言うんじゃないっ!」
「だってよぉ!!!」
この後も一生懸命意思を伝えた。だがしかしアレッサンドロ達に、その心からの悲鳴が届く事は無かった。
普段口調も荒く、反抗的な態度で、ひねくれてるヴァレーリオはこういう時全然信用して貰えないのだ。でも実は本当に碌なことが無い目にしか逢っていなかったりする――料理界の彗星、ギアン・アナスタージ(kz0165)に巻き込まれた時は。
「行くぞヴァレーリオ、これからが忙しくなるぞ!」
「うゎぁぁぁあ」
しかしギアンに強制連行されるヴァレーリオを救う者は誰も居なかった―――。
●ローリング食材!!!
ギアンは料理界の彗星の異名を持つ料理人だった。
その異名を聞いた事がある者は同盟だとそこそこ居るかもしれない。
時に繊細で時に豪快に。使う食材一つ一つを輝かせる才能があり、彼の料理を一口食べた者は感動を覚えることだろうと言われている。
特に彼の名を一躍広めたコンテストの開催地フェリチタでは、少々高慢だろうがなんだろうが、ギアンは英雄だ。しかしヴァレーリオにとっては違った。強烈なトラブルメーカーの一面を知っているからだった。
その日。
貴方達はヴァレーリオとギアンと、とある山にやって来ていた。
目的は収穫祭の為の食材調達。
主な食材はフェリチタ産のものを使う予定だが、山で採れる食材はこの山で採れたものを使いたいという拘りがあるらしい。
ヴァレーリオにお願いだからついて来てくれとせがまれ依頼を引き受けた貴方達は、一緒に山の幸を収穫していた。
そんな折の事である。
「ふぎゃ!」
突如イガ栗とさつまいもの大群がヴァレーリオの踵にぶつかって、大の字に倒れたところをごろごろと転がって轢いていった。
イガ栗の棘は地味に痛い。さつまいもも無遠慮にずっしり踏んでいく。そうやって何度も轢かれ、チーン。
貴方達は異変に気付いた。
あのイガ栗とさつまいもには見覚えがある。
艶やかな棘。甘そうな紫の色。
あれは自分達が籠の中に入れていた収穫物ではないのか!?
地は転がる程の斜面ではなかった。
とすると何かの影響を受けていると推測でき、雑魔化した可能性があると思えた。
「あれはもしかすると……早くなんとかすれば美味しくなるかもしれぬ!!」
そう言って自分を置いて意気揚々と追いかけていくギアンを見つめながらヴァレーリオは心から想っていた。
(だから嫌だったんだよぉぉ……)
食材調達だと釣りに行けば波に攫われ溺れて、ギアンに遣いを頼まれ町に行けば変な事件に絡まれて―――
いつもいつも彼と居れば自分や他人だけが酷い目に遭ってしまう。
ヴァレーリオは悲しくなって、突っ伏したまま力尽きていた。
イガ栗ころころ。
さつまいもころころ。
緩やかに転がっていく大群は麓を目指す。
麓には人里があって、そこまで下りていってしまっては危険だ。
そうなる前になんとか対処する必要があるだろう。
それにうまくやると滅多に味わう事のできない美味の瞬間も待っているかもしれない――?
実りの秋! 農耕推進地域のジェオルジにとって、それは待望していた季節だった。丹精を凝らして育てた農産物は、ジェオルジの大切な大切な宝物。だからこそ、村人達は収穫を楽しみにする。人と人とが助け合う希望の村――フェリチタも今年の豊作を喜び、無事の収穫を祝い、そして感謝していた。だがしかし……。
「今年の収穫祭はどうなるべなぁ……」
村人達は意気消沈して俯きがちだった。というのは、例年のように華やかに開催する事は出来ないかもしれないと不安になっているのだ。北方では歪虚の軍勢との激しい戦いが繰り広げられている。そんな最中に楽しくお祭りを開催するなんていけないんじゃないか、と心配の声が少なからず挙がっている状況だったから。
しかし、そんな村人達の不安を一瞬で吹き飛ばす人物がいた。
村長会議から一時帰って来たチェリチタ村の村長・アレッサンドロだ。
誠実な人柄で真面目で働き者、村人に慕われている良き長である。
「大丈夫。収穫祭はこれまでどおり開催する。―――いや、昨年以上に盛り上げていこうじゃないか!」
「ええ!? そりゃおら達にとっちゃあそうできりゃ嬉しいが……」
村人は心配するが、アレッサンドロは穏やかな微笑みを浮かべていた。
「ああ。今の情勢を考えると否定的になってしまう意見もよく分かる。僕たちは歪虚と戦う彼らに救われ、守られながら生きているからね。彼らが……彼らの仲間が血を流し戦ってくれている時にお祭りなんて、って。でも僕は、収穫祭が彼らへの最大の感謝を込められる、僕達にしか出来ないお祭りだと思ってるんだ!」
「……?」
アレッサンドロは言う。
僕らが日々真心を込めて美味しくできた食べ物を彼らに食べて貰いたい、と。
野菜も、果物も、穀類も、茶も、畜産物も。
生業とする皆が絶対美味しいって自信を持って言える素晴らしい宝は、きっと彼らを幸せにしてくれる筈。
美食は至福の味なり!
少々大袈裟に言ったアレッサンドロの眼差しはきらきらと輝いていた。
「僕らには戦う力は無いかもしれないけれど、美味しいご飯で彼らのお腹をいっぱいにすることはできるかもしれないだろ? 彼らにも、息抜きは必要だ。その息抜きする場所を、お祭りを、僕らがつくろうよ!」
少し遠巻きに離れて見ていたヴァレーリオ(kz0139)は盛大な溜息をついた。
視線の先には、さっきまで暗い顔していた村人達が今は活気に溢れ、収穫祭がんばるぞーと慌ただしく張り切っている姿。
(なんであんなんでどん底からやる気満々になっちまうかね……意味わかんねー)
まぁ自分には関係ねぇなー、とあくびをひとつ。
そんな折にゅっと現れた父親・アレッサンドロに肩をがしっと掴まれた。
「と、言う訳で、フェリチタの収穫祭のメインは仮設レストランだ。先生の補佐、頼んだよ」
「えっ」
●料理界の彗星、出番です!
「吾輩が監修兼料理長か。当然であるな!!」
淡く薄い水色の髪とぱっちりした紫瞳を持つ中性的な美少年は謙遜しなかった。
そればかりか高慢な態度で構えていた。
しかしその事をアレッサンドロ達は気にしていない。
「わーい! 宜しくお願いします、先生!」
「先生が料理長なら味は間違いないっぺー!」
「離せッ離せッ!! あいつの補佐なんて嫌だーーっ!!」
アレッサンドロと村人達は収穫祭のメインレストランは安泰だと心から喜んでおり、ヴァレーリオは今すぐ逃げることに必死。因みににっこりと微笑むアレッサンドロと村人に両腕を縛られ足をばたつかせ足掻いている状況である。
「こいつの傍に居ると碌なことがねえんだよぉ!」
「おい、ヴァレーリオ! 先生の前で失礼な事を言うんじゃないっ!」
「だってよぉ!!!」
この後も一生懸命意思を伝えた。だがしかしアレッサンドロ達に、その心からの悲鳴が届く事は無かった。
普段口調も荒く、反抗的な態度で、ひねくれてるヴァレーリオはこういう時全然信用して貰えないのだ。でも実は本当に碌なことが無い目にしか逢っていなかったりする――料理界の彗星、ギアン・アナスタージ(kz0165)に巻き込まれた時は。
「行くぞヴァレーリオ、これからが忙しくなるぞ!」
「うゎぁぁぁあ」
しかしギアンに強制連行されるヴァレーリオを救う者は誰も居なかった―――。
●ローリング食材!!!
ギアンは料理界の彗星の異名を持つ料理人だった。
その異名を聞いた事がある者は同盟だとそこそこ居るかもしれない。
時に繊細で時に豪快に。使う食材一つ一つを輝かせる才能があり、彼の料理を一口食べた者は感動を覚えることだろうと言われている。
特に彼の名を一躍広めたコンテストの開催地フェリチタでは、少々高慢だろうがなんだろうが、ギアンは英雄だ。しかしヴァレーリオにとっては違った。強烈なトラブルメーカーの一面を知っているからだった。
その日。
貴方達はヴァレーリオとギアンと、とある山にやって来ていた。
目的は収穫祭の為の食材調達。
主な食材はフェリチタ産のものを使う予定だが、山で採れる食材はこの山で採れたものを使いたいという拘りがあるらしい。
ヴァレーリオにお願いだからついて来てくれとせがまれ依頼を引き受けた貴方達は、一緒に山の幸を収穫していた。
そんな折の事である。
「ふぎゃ!」
突如イガ栗とさつまいもの大群がヴァレーリオの踵にぶつかって、大の字に倒れたところをごろごろと転がって轢いていった。
イガ栗の棘は地味に痛い。さつまいもも無遠慮にずっしり踏んでいく。そうやって何度も轢かれ、チーン。
貴方達は異変に気付いた。
あのイガ栗とさつまいもには見覚えがある。
艶やかな棘。甘そうな紫の色。
あれは自分達が籠の中に入れていた収穫物ではないのか!?
地は転がる程の斜面ではなかった。
とすると何かの影響を受けていると推測でき、雑魔化した可能性があると思えた。
「あれはもしかすると……早くなんとかすれば美味しくなるかもしれぬ!!」
そう言って自分を置いて意気揚々と追いかけていくギアンを見つめながらヴァレーリオは心から想っていた。
(だから嫌だったんだよぉぉ……)
食材調達だと釣りに行けば波に攫われ溺れて、ギアンに遣いを頼まれ町に行けば変な事件に絡まれて―――
いつもいつも彼と居れば自分や他人だけが酷い目に遭ってしまう。
ヴァレーリオは悲しくなって、突っ伏したまま力尽きていた。
イガ栗ころころ。
さつまいもころころ。
緩やかに転がっていく大群は麓を目指す。
麓には人里があって、そこまで下りていってしまっては危険だ。
そうなる前になんとか対処する必要があるだろう。
それにうまくやると滅多に味わう事のできない美味の瞬間も待っているかもしれない――?
リプレイ本文
●
「ヴァレーリオさんなのーん!」
「おわっ!?」
出逢い頭早々、ミィナ・アレグトーリア(ka0317)が勢いよく飛びつくのをヴァレーリオが受け止めた。彼女が転ばないよう咄嗟に確り支え、赤くなりそうになったのを「なんだよ急に……!」と誤魔化しながら。するとミィナはほのぼのと微笑む。
「えへ、今回はちゃんと最初から一緒だから嬉しかったん♪」
「あ……あぁー?」
いつも通り荒っぽい返事をするが、内心は動揺していた。性格が捻くれているせいで素直に言葉を受け取るのが難しい。だが「よくわかんねぇ」と視線を下げつつ零す様子は満更でもなさそうだっただろう。
「ふぁ~……すっげぇ山だなぁ……流石有名な料理人さん、いいとこ知ってる」
藤堂研司(ka0569)が思わず感嘆の声を漏らしながら見渡していた。サバイバルで磨き上げた食を探す事に長けたその目には、この山がまるで食材の宝庫のように映っていた!
「よっし! 燃えてきた! 頑張るぞー!」
気合を入れて熱く燃え上がる研司。一方、その横ではヴァレーリオが死んだ魚のような目をしている。
その見事な程のテンションの違いぶりを目撃する鬼百合(ka3667)は、交互に顔を眺めてから首を傾げて。
「リオのにーさんは何でそんなテンション低ぃんでさ? 美味いもんいっぱい食べれるって聞いてオレわくわくですぜ!」
「先に言っておくぜ鬼百合。俺はこの後、酷い目に遭う」
そんな事を真顔で言われて「どういう事でさ!?」と衝撃を受ける鬼百合。予言が的中し、まさか本当にこの後、男が栗と薩摩芋に轢かれるとは思ってもいなかっただろう。
彼らの目的はジェオルジで有名なお祭り『郷祭』に向けての食材集め。
とにかく秋の味覚をたっぷり収穫する事である!
そして収穫後には、食材の味見を兼ねた調理をする事となっている。
「そんじゃま、軽く行きますかね」
龍崎・カズマ(ka0178)は、オーソドックスなものは大体あることが窺えると、保存食を基準に考え、落ちている実を中心に拾い集めていた。
栗、団栗、胡桃。
それらを後程、種別に燻製し、乾燥させて実の部分を取り出したら石臼にかけ、粉にする――
(まぁそれで栗粉、各種の団栗粉、胡桃粉の作成だな)
使い方としては小麦粉と大差なく、しかし栄養価は比較的高いものが完成するだろう。
クッキーを作るもよし、小麦粉に混ぜて活用するもよし。
どう調理するかを頭に置きながら、松の実なども得つつ、籠をいっぱいにしていた。
「好きな食材を取りに行く、と……俺は、むかごとアナグマ!」
「おぉ、狩猟ですか。お気を付けて」
以前依頼を共にした事もある仲のリステル=胤・エウゼン(ka3785)に「いってらっしゃい」と見送られ、「いってきまーす!」と出掛けた研司は燃えていた。
(むかごは、ヤマノイモの葉っぱを探せば……粒を揃えてでっかいの採る!)
そして。
(アナグマは冬に備えて食いだめしてるはずだ!)
ただでさえ美味しいものが考えただけで生唾ものである!
その時、研司は良い事を思い付いた。
「あ、粘土も取っておこう!」
作りたい料理が浮かんだからこそ、粘土は欠かせない。これが決め手だ!
鬼百合はよいしょよいしょと難なく木登りし、栗を落としたり、林檎や梨を採ったりしていた。
此処の林檎は真っ赤で芳醇な香りが強く、梨は瑞々しそうな艶がある。
同じく果実を収穫していたリステルも、微笑みを浮かばせて。
「あぁ、これは熟していて美味しそうですね……」
山の恵みに感謝しつつ、二人は熟した果実を籠いっぱいにしていた。
「えっへへ、どんな料理になるか楽しみでさぁ!」
「そうですね、本当に」
楽しそうな笑顔を合わせあう二人。
そして果実の収穫が一段落した頃、リステルは茸を発見した。
「これは……若様がお好きな茸」
自然と幼馴染であり主である人を浮かべたリステルは、何処に居てもお兄さんのようで。(後で持ち帰れないか交渉してみましょう――)、と。
お土産に持ち帰るならば、幼馴染は喜んでくれるだろうか。
「おいしーものいっぱいなんじゃもん?」
泉(ka3737)はつぶらなおめめがきらきら。それに「ん!」とギアンが頷いて手渡されたのは籠だった。
「いっぱい収穫するのである!」
という訳で宜しくと頼まれた泉はせっせと一生懸命集めていた。籠にこんもりと溢れるほど。
「にゃうーっ♪ おいしそーなのいっぱいなんじゃもんっ♪ ヴァレーリオっ! みてみて! すごいんじゃもんっ♪」
「ッッ!」
ヴァレーリオは振り返ると突然変な顔をした。
元気いっぱいの無邪気な笑顔――
泉から溢れだす天真爛漫なキラキラしたオーラが、捻くれた不良系ヘタレの心には眩し過ぎていた。
「ピュア系にはかなわねえ!」
「にゃう?」
かなわないそうです!
そして。
「皆ただいまー!」
狩りに行っていた研司が合流する頃に、あの事件が勃発するのである。
●
「……何と……! 栗と薩摩芋が雑魔になるとは……急いで戻しませんと!」
リステルが言った。
見た所自分達にとってはあまり脅威ではないものの、この山の麓には人里があるのだ。
転がっていく雑魔を、仲間と共に追いかける。
「ヴァレーリオさん! 地面ぺろしてる場合じゃないのん! 人里のピンチなのん!」
ミィナも慌ててヴァレーリオを揺らして起こそうとするが、びくともしない。
「あれやっつけたらおいしーなるんじゃもん?」
一方泉は、雑魔になったばかりの食材はすぐに倒すとより美味しくなるのだと聞いてぱぁっと表情を輝かせる。
「ヴァレーリオ、ころんしてても美味しい物は食べれんのんじゃもん!」
そこで名案が浮かぶミィナ。
「……ご飯! 好きなものなんでも作るから頑張って!」
「う。うぅ……オムライス……」
男はぴくりと反応した。好感触である。
「じゃあ先に行ってるのん!」
ミィナがくたばっていた男に手渡したのは、ハリセン。そしてそのまま馬に乗って追いかけていくだろう。
待っていた泉は、頑張って起き上がったヴァレーリオを見てにっこりと微笑む。
「一緒におっかけっこするんじゃもんっ♪」
「うぅぅ……」
図体だけでかいヘタレな男の手をひっぱってあげる少女は、転がっていった栗やさつまいもを追いかける。
妖精のマカロンと柴犬のコロッケも楽しそうに飛んで、走って。
きっと傍から見ると、『泉と愉快な仲間達』な光景になっていたのだった――?
「うおお待て待てそっち行くな! なんか障害物…!」
どうしようと研司が見渡す最中に、バイクで先を走っていた鬼百合が「任せてくだせぇ!」と、土で出来た壁を生成する。更に馬に乗って追いついたミィナも協力し、雑魔達の進行を阻止。
「おお、アースウォール! すげぇ!」
見事に食い止めた二人の連携に感激する研司。
栗と薩摩芋は道を塞がれ、大渋滞が起きていた。
その流れで研司はリステルと共にテントを持って。
「ずおりゃぁぁぁぁ!!」
栗と薩摩芋にかぶせた。
そして。
「食材をあまり傷めないレベルって言ったら……これか」
カズマはその場にある砂を掴んで、広角投射。
テントはカバーの役目を果たしつつあまり傷付ける事無く、雑魔達を一気に倒した。
リステルも砂を掴んで協力を。
「い、いちお考えてるんで、大丈夫ですって!」
鬼百合は食材の負担にならないように、と、試しに直下の地面にライトニングボルトを使用してみる。しかし、対象ではない為雑魔を倒せた訳では無かったようだ。
今度はミィナが食材に直接ライトニングボルトをすると、雑魔だけを倒すことに成功。電撃だった為食材は無事だったのだ。
「うん! この調子!」
研司も協力して、あぶれた栗やさつまいもを気を付けて叩く。
「にいさーん、そっち行きましたぜ!」
軽く叩いて倒していた鬼百合がヴァレーリオにも声を掛ける。すると男は神妙な面持ちで淡々とハリセンで叩いていて、「あはは」と和やかに笑った。
「全部倒せたのん!」
良かったぁ、と安心するミィナ。栗も薩摩芋も消滅することなく、持ち帰る事ができそうである。
「おいしーいっぱい食べれるんじゃもん!」
わぁい♪ と喜ぶ泉。
更にギアンもちゃっかり浮かれ気味に。
「元雑魔の食材……一度調理してみたいと思っていたのである。こうしてはいられぬ、帰ろうか!」
そうして今日の収穫を全て大型荷台に乗せつつ、彼らはフェリチタ村まで。
●
「う……美味い……!」
フェリチタ村の調理場で、ギアンに衝撃が走った。
栗と薩摩芋が雑魔だった時にカズマが枯葉を被せ火をつけて焼いた分を貰って食べてみた所、想像以上に甘味が増していたことへ驚いていたのだ。この栗と芋、そして今日の収穫物を万遍なく使い、彼らは調理を開始する――。
鬼百合はヴァレーリオと一緒に皆のお手伝いをしていた。
切ったり、蒸した薩摩芋を潰したり。
「なんか楽しそうだなぁ、鬼百合」
「料理も魔術みてぇなもんですからねぇ、なんでも勉強でさぁ」
仲間の料理の腕を見て凄いなぁ、と思いながら、好奇心いっぱいな瞳で観察し、時に皆から教えて貰ったりもしながら――
潰した薩摩芋に衣をつけて。
「ギアンの先生! これ揚げてくだせぇ!」
「ん? これは――コロッケのようだな?」
「ええ。ねーさんがたまに作ってくれるんですけど、さつま芋で作っても美味しいんですぜ」
ギアンは薩摩芋のコロッケを作った事が無いらしく「そうなのか」と零すと、早速。
そうして油の中にコロッケを入れると、じゅわっと良い音が――。
狐色まで揚げて、衣はさくっと、中はほくほく甘いコロッケの完成!
「ギアン、ギアン……これどーやるんじゃもん?」
「んー?」
先程一緒に餅粉を蒸した柔らかい餅を作り、くるんとして。
薩摩芋の皮を煮詰めて作った紫色で瞳を描いて、お餅で耳を作って、可愛らしいにゃんことうさぎを作ろうと奮闘している泉。
「やっぱりギアンが作った方が綺麗なにゃんこさんとウサギさんなんじゃもん……(しょも」
「だが君が作った猫や兎の方が良いのである」
「本当じゃもん?」
確かにギアンの猫や兎は綺麗に整っているが、泉の猫や兎の方が可愛らしさが溢れていた。
動物が大好きでいつも愛でている泉の感性が全面に出ているのだろう。
「美味しく出来たら皆にも食べてもらうんじゃもん♪」
泉が笑顔で言うと、ギアンは相変わらず不愛想で。だがほんの少し、微笑んでいた。
一方ガン見していたヴァレーリオは……
(あ、あのギアンと仲良くなってる……?!)
人付き合いの悪い男が認める人付き合いの悪い料理人を絆す程のもぐもぐ少女の天真爛漫さに、驚きを隠せないでいたのだった。
「栗の粉でパスタでも作るかね」
カズマは料理の下準備として作っていた栗粉を小麦粉に混ぜ、更に卵、塩を加えて、また混ぜ合わせていく。
(! 生地からパスタを作るのか……)
ギアンは気になるようで、カズマの調理を眺めていた。
練った生地を切り分け、茹でておきながら。
オイルに暫くセージやニンニクを投入すると、美味しそうな匂いが漂いだす。
香りづけであるそれらを取り出してから、パスタを絡ませて。
混ぜ合わせながら、食感の為の松の実を加える。
「これで完成、と」
カズマが大皿に盛り付けて、完成――。
「おぉぉ……!」
その見るからに美味しそうな本格パスタを見た皆は、釘付けになって夢中になり、思わず声が漏れていた。
「まずはむかごの油炒め!」
研司が油でさっと炒めているのは、酒の肴に良い逸品。
そして次に作るメインはというと――
下処理をしたアナグマの肉に切り込みを入れて、香辛料を擦り込んでいく。
腹に秋の味覚をたっぷり詰め込んだあと、縫合して、粘土でしっかりと包み込みながら焼く。
その時、絶品の鍋が出来るアナグマの肉汁が閉じ込められて、それが秋の味覚に染み込んでいき……完成!
「出来た、アナグマのむかご風包み焼き!」
豪快な男料理の逸品である!
「うまっっ!!」
「あっ。ヴァレーリオさん、つまみ食いは駄目なんよーっ」
ミィナが約束のオムライスを作ってくれている最中なのに、ついつい彼女が先程作っていたスイートポテトをつまみ食いをしてしまうヴァレーリオ。柚子の絞り汁を入れてほくほく感を残し、甘いのが苦手な人にも食べやすい味に感動中である。
リステルはというと、蒼世界出身の母から教わった料理を作っていた。
・薩摩芋と林檎の甘煮
・栗の渋皮煮
・鶏ささみと柿の胡麻和え
・茸と玄米のチーズリゾット
・栗と林檎のパウンドケーキ
・山葡萄ジュース(原液)
美味しそうなリアルブルー料理の数々。
リアルブルー料理と聞いて、興味を示したギアンがリステルに質問を重ねると、リステルは親切丁寧に回答する。
「……特に薩摩芋と林檎の甘煮や栗の渋皮煮は保存も効きます」
「ふむふむ……」
「鶏ささみと柿の胡麻和えは箸休めにもおつまみにも良くて――山葡萄ジュースは炭酸水で割っても良いし、蜂蜜を加えて甘味を増すのも有です」
「なるほどな……」
所謂おふくろの味、というのはずっと気になっていたもの。ギアンは熱心に聞き入っていた。
カズマが作ったやや栗の甘味があるパスタと、森の恵みのクッキー。
ミィナが作った甘さ控えめのスイートポテトと、オムライス。
研司が作ったアナグマのむかご風包み焼きと、むかごの油炒め。
鬼百合が作った薩摩芋のコロッケ。
泉が作った『お餅のにゃんこさんとうさぎさん』。
リステルが作ったおふくろの味のリアルブルー料理。
最後は皆で一緒に味見の時間。
どの逸品も美味しそうで、良い匂いがして。
食卓に並べば視覚だけでもう幸せ!
「ヴァレーリオさん、どんな?」
ミィナは口に合うかどうか……ドキドキしながら感想を待つ。と、くぅうぅ~と鳴る腹の音。
「……うぅ、作るのに夢中だったから、不可抗力なのん!」
そんなふうに恥ずかしがっているミィナを見た男は、「お前って天然だな」と言い、「あと凄ぇ料理うめえんだな。知らなかったわ」と何やら感心するように視線を合わさずぼそぼそと言った。
「そ、そだ! うちのお馬さん名前がまだ無いんよ、つけてあげてくれん?」
「俺が? フォルトゥナ、とか? これで決まりっつー訳じゃなくて、参考にする程度でっつーことで」
その名の理由は何となく、と答えたが。
命名に込めた決して言わない願いは――早く翔るその足が、ミィナを幸運に導いてくれますように。
「わ、わ、美味い……!!!」
どの料理も絶品で。
美味しくて。
全員が感動の渦の中。
鬼百合は感激して、えへへっと笑顔を綻ばせる。
孤高の天才だったギアンは人と一緒に食事をする事が久々だった。そして鬼百合の言葉が、気付かせてくれる。
「美味しいものをみんなで食べるの、幸せですねぃ!」
美味しいご飯は皆で食べるともっと幸せの味になる、と――。
「ヴァレーリオさんなのーん!」
「おわっ!?」
出逢い頭早々、ミィナ・アレグトーリア(ka0317)が勢いよく飛びつくのをヴァレーリオが受け止めた。彼女が転ばないよう咄嗟に確り支え、赤くなりそうになったのを「なんだよ急に……!」と誤魔化しながら。するとミィナはほのぼのと微笑む。
「えへ、今回はちゃんと最初から一緒だから嬉しかったん♪」
「あ……あぁー?」
いつも通り荒っぽい返事をするが、内心は動揺していた。性格が捻くれているせいで素直に言葉を受け取るのが難しい。だが「よくわかんねぇ」と視線を下げつつ零す様子は満更でもなさそうだっただろう。
「ふぁ~……すっげぇ山だなぁ……流石有名な料理人さん、いいとこ知ってる」
藤堂研司(ka0569)が思わず感嘆の声を漏らしながら見渡していた。サバイバルで磨き上げた食を探す事に長けたその目には、この山がまるで食材の宝庫のように映っていた!
「よっし! 燃えてきた! 頑張るぞー!」
気合を入れて熱く燃え上がる研司。一方、その横ではヴァレーリオが死んだ魚のような目をしている。
その見事な程のテンションの違いぶりを目撃する鬼百合(ka3667)は、交互に顔を眺めてから首を傾げて。
「リオのにーさんは何でそんなテンション低ぃんでさ? 美味いもんいっぱい食べれるって聞いてオレわくわくですぜ!」
「先に言っておくぜ鬼百合。俺はこの後、酷い目に遭う」
そんな事を真顔で言われて「どういう事でさ!?」と衝撃を受ける鬼百合。予言が的中し、まさか本当にこの後、男が栗と薩摩芋に轢かれるとは思ってもいなかっただろう。
彼らの目的はジェオルジで有名なお祭り『郷祭』に向けての食材集め。
とにかく秋の味覚をたっぷり収穫する事である!
そして収穫後には、食材の味見を兼ねた調理をする事となっている。
「そんじゃま、軽く行きますかね」
龍崎・カズマ(ka0178)は、オーソドックスなものは大体あることが窺えると、保存食を基準に考え、落ちている実を中心に拾い集めていた。
栗、団栗、胡桃。
それらを後程、種別に燻製し、乾燥させて実の部分を取り出したら石臼にかけ、粉にする――
(まぁそれで栗粉、各種の団栗粉、胡桃粉の作成だな)
使い方としては小麦粉と大差なく、しかし栄養価は比較的高いものが完成するだろう。
クッキーを作るもよし、小麦粉に混ぜて活用するもよし。
どう調理するかを頭に置きながら、松の実なども得つつ、籠をいっぱいにしていた。
「好きな食材を取りに行く、と……俺は、むかごとアナグマ!」
「おぉ、狩猟ですか。お気を付けて」
以前依頼を共にした事もある仲のリステル=胤・エウゼン(ka3785)に「いってらっしゃい」と見送られ、「いってきまーす!」と出掛けた研司は燃えていた。
(むかごは、ヤマノイモの葉っぱを探せば……粒を揃えてでっかいの採る!)
そして。
(アナグマは冬に備えて食いだめしてるはずだ!)
ただでさえ美味しいものが考えただけで生唾ものである!
その時、研司は良い事を思い付いた。
「あ、粘土も取っておこう!」
作りたい料理が浮かんだからこそ、粘土は欠かせない。これが決め手だ!
鬼百合はよいしょよいしょと難なく木登りし、栗を落としたり、林檎や梨を採ったりしていた。
此処の林檎は真っ赤で芳醇な香りが強く、梨は瑞々しそうな艶がある。
同じく果実を収穫していたリステルも、微笑みを浮かばせて。
「あぁ、これは熟していて美味しそうですね……」
山の恵みに感謝しつつ、二人は熟した果実を籠いっぱいにしていた。
「えっへへ、どんな料理になるか楽しみでさぁ!」
「そうですね、本当に」
楽しそうな笑顔を合わせあう二人。
そして果実の収穫が一段落した頃、リステルは茸を発見した。
「これは……若様がお好きな茸」
自然と幼馴染であり主である人を浮かべたリステルは、何処に居てもお兄さんのようで。(後で持ち帰れないか交渉してみましょう――)、と。
お土産に持ち帰るならば、幼馴染は喜んでくれるだろうか。
「おいしーものいっぱいなんじゃもん?」
泉(ka3737)はつぶらなおめめがきらきら。それに「ん!」とギアンが頷いて手渡されたのは籠だった。
「いっぱい収穫するのである!」
という訳で宜しくと頼まれた泉はせっせと一生懸命集めていた。籠にこんもりと溢れるほど。
「にゃうーっ♪ おいしそーなのいっぱいなんじゃもんっ♪ ヴァレーリオっ! みてみて! すごいんじゃもんっ♪」
「ッッ!」
ヴァレーリオは振り返ると突然変な顔をした。
元気いっぱいの無邪気な笑顔――
泉から溢れだす天真爛漫なキラキラしたオーラが、捻くれた不良系ヘタレの心には眩し過ぎていた。
「ピュア系にはかなわねえ!」
「にゃう?」
かなわないそうです!
そして。
「皆ただいまー!」
狩りに行っていた研司が合流する頃に、あの事件が勃発するのである。
●
「……何と……! 栗と薩摩芋が雑魔になるとは……急いで戻しませんと!」
リステルが言った。
見た所自分達にとってはあまり脅威ではないものの、この山の麓には人里があるのだ。
転がっていく雑魔を、仲間と共に追いかける。
「ヴァレーリオさん! 地面ぺろしてる場合じゃないのん! 人里のピンチなのん!」
ミィナも慌ててヴァレーリオを揺らして起こそうとするが、びくともしない。
「あれやっつけたらおいしーなるんじゃもん?」
一方泉は、雑魔になったばかりの食材はすぐに倒すとより美味しくなるのだと聞いてぱぁっと表情を輝かせる。
「ヴァレーリオ、ころんしてても美味しい物は食べれんのんじゃもん!」
そこで名案が浮かぶミィナ。
「……ご飯! 好きなものなんでも作るから頑張って!」
「う。うぅ……オムライス……」
男はぴくりと反応した。好感触である。
「じゃあ先に行ってるのん!」
ミィナがくたばっていた男に手渡したのは、ハリセン。そしてそのまま馬に乗って追いかけていくだろう。
待っていた泉は、頑張って起き上がったヴァレーリオを見てにっこりと微笑む。
「一緒におっかけっこするんじゃもんっ♪」
「うぅぅ……」
図体だけでかいヘタレな男の手をひっぱってあげる少女は、転がっていった栗やさつまいもを追いかける。
妖精のマカロンと柴犬のコロッケも楽しそうに飛んで、走って。
きっと傍から見ると、『泉と愉快な仲間達』な光景になっていたのだった――?
「うおお待て待てそっち行くな! なんか障害物…!」
どうしようと研司が見渡す最中に、バイクで先を走っていた鬼百合が「任せてくだせぇ!」と、土で出来た壁を生成する。更に馬に乗って追いついたミィナも協力し、雑魔達の進行を阻止。
「おお、アースウォール! すげぇ!」
見事に食い止めた二人の連携に感激する研司。
栗と薩摩芋は道を塞がれ、大渋滞が起きていた。
その流れで研司はリステルと共にテントを持って。
「ずおりゃぁぁぁぁ!!」
栗と薩摩芋にかぶせた。
そして。
「食材をあまり傷めないレベルって言ったら……これか」
カズマはその場にある砂を掴んで、広角投射。
テントはカバーの役目を果たしつつあまり傷付ける事無く、雑魔達を一気に倒した。
リステルも砂を掴んで協力を。
「い、いちお考えてるんで、大丈夫ですって!」
鬼百合は食材の負担にならないように、と、試しに直下の地面にライトニングボルトを使用してみる。しかし、対象ではない為雑魔を倒せた訳では無かったようだ。
今度はミィナが食材に直接ライトニングボルトをすると、雑魔だけを倒すことに成功。電撃だった為食材は無事だったのだ。
「うん! この調子!」
研司も協力して、あぶれた栗やさつまいもを気を付けて叩く。
「にいさーん、そっち行きましたぜ!」
軽く叩いて倒していた鬼百合がヴァレーリオにも声を掛ける。すると男は神妙な面持ちで淡々とハリセンで叩いていて、「あはは」と和やかに笑った。
「全部倒せたのん!」
良かったぁ、と安心するミィナ。栗も薩摩芋も消滅することなく、持ち帰る事ができそうである。
「おいしーいっぱい食べれるんじゃもん!」
わぁい♪ と喜ぶ泉。
更にギアンもちゃっかり浮かれ気味に。
「元雑魔の食材……一度調理してみたいと思っていたのである。こうしてはいられぬ、帰ろうか!」
そうして今日の収穫を全て大型荷台に乗せつつ、彼らはフェリチタ村まで。
●
「う……美味い……!」
フェリチタ村の調理場で、ギアンに衝撃が走った。
栗と薩摩芋が雑魔だった時にカズマが枯葉を被せ火をつけて焼いた分を貰って食べてみた所、想像以上に甘味が増していたことへ驚いていたのだ。この栗と芋、そして今日の収穫物を万遍なく使い、彼らは調理を開始する――。
鬼百合はヴァレーリオと一緒に皆のお手伝いをしていた。
切ったり、蒸した薩摩芋を潰したり。
「なんか楽しそうだなぁ、鬼百合」
「料理も魔術みてぇなもんですからねぇ、なんでも勉強でさぁ」
仲間の料理の腕を見て凄いなぁ、と思いながら、好奇心いっぱいな瞳で観察し、時に皆から教えて貰ったりもしながら――
潰した薩摩芋に衣をつけて。
「ギアンの先生! これ揚げてくだせぇ!」
「ん? これは――コロッケのようだな?」
「ええ。ねーさんがたまに作ってくれるんですけど、さつま芋で作っても美味しいんですぜ」
ギアンは薩摩芋のコロッケを作った事が無いらしく「そうなのか」と零すと、早速。
そうして油の中にコロッケを入れると、じゅわっと良い音が――。
狐色まで揚げて、衣はさくっと、中はほくほく甘いコロッケの完成!
「ギアン、ギアン……これどーやるんじゃもん?」
「んー?」
先程一緒に餅粉を蒸した柔らかい餅を作り、くるんとして。
薩摩芋の皮を煮詰めて作った紫色で瞳を描いて、お餅で耳を作って、可愛らしいにゃんことうさぎを作ろうと奮闘している泉。
「やっぱりギアンが作った方が綺麗なにゃんこさんとウサギさんなんじゃもん……(しょも」
「だが君が作った猫や兎の方が良いのである」
「本当じゃもん?」
確かにギアンの猫や兎は綺麗に整っているが、泉の猫や兎の方が可愛らしさが溢れていた。
動物が大好きでいつも愛でている泉の感性が全面に出ているのだろう。
「美味しく出来たら皆にも食べてもらうんじゃもん♪」
泉が笑顔で言うと、ギアンは相変わらず不愛想で。だがほんの少し、微笑んでいた。
一方ガン見していたヴァレーリオは……
(あ、あのギアンと仲良くなってる……?!)
人付き合いの悪い男が認める人付き合いの悪い料理人を絆す程のもぐもぐ少女の天真爛漫さに、驚きを隠せないでいたのだった。
「栗の粉でパスタでも作るかね」
カズマは料理の下準備として作っていた栗粉を小麦粉に混ぜ、更に卵、塩を加えて、また混ぜ合わせていく。
(! 生地からパスタを作るのか……)
ギアンは気になるようで、カズマの調理を眺めていた。
練った生地を切り分け、茹でておきながら。
オイルに暫くセージやニンニクを投入すると、美味しそうな匂いが漂いだす。
香りづけであるそれらを取り出してから、パスタを絡ませて。
混ぜ合わせながら、食感の為の松の実を加える。
「これで完成、と」
カズマが大皿に盛り付けて、完成――。
「おぉぉ……!」
その見るからに美味しそうな本格パスタを見た皆は、釘付けになって夢中になり、思わず声が漏れていた。
「まずはむかごの油炒め!」
研司が油でさっと炒めているのは、酒の肴に良い逸品。
そして次に作るメインはというと――
下処理をしたアナグマの肉に切り込みを入れて、香辛料を擦り込んでいく。
腹に秋の味覚をたっぷり詰め込んだあと、縫合して、粘土でしっかりと包み込みながら焼く。
その時、絶品の鍋が出来るアナグマの肉汁が閉じ込められて、それが秋の味覚に染み込んでいき……完成!
「出来た、アナグマのむかご風包み焼き!」
豪快な男料理の逸品である!
「うまっっ!!」
「あっ。ヴァレーリオさん、つまみ食いは駄目なんよーっ」
ミィナが約束のオムライスを作ってくれている最中なのに、ついつい彼女が先程作っていたスイートポテトをつまみ食いをしてしまうヴァレーリオ。柚子の絞り汁を入れてほくほく感を残し、甘いのが苦手な人にも食べやすい味に感動中である。
リステルはというと、蒼世界出身の母から教わった料理を作っていた。
・薩摩芋と林檎の甘煮
・栗の渋皮煮
・鶏ささみと柿の胡麻和え
・茸と玄米のチーズリゾット
・栗と林檎のパウンドケーキ
・山葡萄ジュース(原液)
美味しそうなリアルブルー料理の数々。
リアルブルー料理と聞いて、興味を示したギアンがリステルに質問を重ねると、リステルは親切丁寧に回答する。
「……特に薩摩芋と林檎の甘煮や栗の渋皮煮は保存も効きます」
「ふむふむ……」
「鶏ささみと柿の胡麻和えは箸休めにもおつまみにも良くて――山葡萄ジュースは炭酸水で割っても良いし、蜂蜜を加えて甘味を増すのも有です」
「なるほどな……」
所謂おふくろの味、というのはずっと気になっていたもの。ギアンは熱心に聞き入っていた。
カズマが作ったやや栗の甘味があるパスタと、森の恵みのクッキー。
ミィナが作った甘さ控えめのスイートポテトと、オムライス。
研司が作ったアナグマのむかご風包み焼きと、むかごの油炒め。
鬼百合が作った薩摩芋のコロッケ。
泉が作った『お餅のにゃんこさんとうさぎさん』。
リステルが作ったおふくろの味のリアルブルー料理。
最後は皆で一緒に味見の時間。
どの逸品も美味しそうで、良い匂いがして。
食卓に並べば視覚だけでもう幸せ!
「ヴァレーリオさん、どんな?」
ミィナは口に合うかどうか……ドキドキしながら感想を待つ。と、くぅうぅ~と鳴る腹の音。
「……うぅ、作るのに夢中だったから、不可抗力なのん!」
そんなふうに恥ずかしがっているミィナを見た男は、「お前って天然だな」と言い、「あと凄ぇ料理うめえんだな。知らなかったわ」と何やら感心するように視線を合わさずぼそぼそと言った。
「そ、そだ! うちのお馬さん名前がまだ無いんよ、つけてあげてくれん?」
「俺が? フォルトゥナ、とか? これで決まりっつー訳じゃなくて、参考にする程度でっつーことで」
その名の理由は何となく、と答えたが。
命名に込めた決して言わない願いは――早く翔るその足が、ミィナを幸運に導いてくれますように。
「わ、わ、美味い……!!!」
どの料理も絶品で。
美味しくて。
全員が感動の渦の中。
鬼百合は感激して、えへへっと笑顔を綻ばせる。
孤高の天才だったギアンは人と一緒に食事をする事が久々だった。そして鬼百合の言葉が、気付かせてくれる。
「美味しいものをみんなで食べるの、幸せですねぃ!」
美味しいご飯は皆で食べるともっと幸せの味になる、と――。
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秋の味覚のご相談! 藤堂研司(ka0569) 人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/10/31 11:43:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/10/30 18:47:42 |