ゲスト
(ka0000)
【郷祭】失敗作から新商品を
マスター:龍河流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/07 22:00
- 完成日
- 2015/11/18 02:37
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その日、ハンターオフィスに作業着に土をつけたままの数人がやって来た。
「だから、この花をうまく活用してくれる人をね」
「とにかく知恵が回って、料理とか上手なのがいいかな」
「食用なのに、劇的に不味いんだ。これを加工する方法を知ってる人がいれば」
「単にお金を払ってくれる人でもいいけど」
「あ、それでもいい」
「うん、出資者募集」
「依頼を出しに来て、お金出せって、あんた方なんですかーっ!」
食用花を食べられるようにしてくれと、そんな不可思議なことを口走っている集団は、最後にはスポンサー探しを始めようとして、オフィスの係員に怒られている。
最初に彼らが何を頼みたかったのかは……
自由都市同盟にある農業振興地区ジェオルジには、領主のジェオルジ一族の直接管理する地域以外に複数の村がある。
その村々の長が顔を揃えて、地域の諸々を相談する村長会議は、すでに終了。ここからは郷祭とも呼ばれる、村長祭の始まりだ。
ジェオルジ各所でも、村の名物を楽しんだり、競馬が行われたりと、様々な催しが計画、実行されている。
そう、祭はこれからが本番。
だと言うのに、ジェオルジのど真ん中にて、一人黄昏れている人物がいた。
名前は、ルーベン・ジェオルジ。現領主のセストの父親にして、先代領主である。
過去に幾種類もの新種植物を発見、交配し、研究者としての実力は一流だ。
けれども、まだ少年期の息子に『自分が研究に没頭したいから』と領主の座を押し付けたことは、ジェオルジでは有名、同盟の評議会でも大抵知っている話のため、誰も人格者だとは思っていない。その通りなので、当人も気にしていない。
そんなルーベンが落ち込む理由は、研究がうまく行かなかったからだ。今回彼が手掛けていたのは、食用花の交配である。
「絶対に、完璧な出来だと思ったのに……」
食用花と言えば、おおむね料理の彩りに添えられ、主役にはなり難い。ルーベンの素早い資料入手によると、東方では食用花のおひたしなる副菜も存在するが、皆が日常的に食べるものではないらしい。
そもそも、食用とはいえ花。色や形、鮮度を保つのにも、いささか手間が掛かる食材だ。その割に食べて感動するほどの味ではないとなれば、流通量も限られる。
ならば、食用花だけで一品が成立し、老若男女が受け入れる味と香りになれば、ジェオルジの名物として販路が広げられる。ルーベンはこう思い立ち、交配を進めた結果、完成一歩手前の試作ではほぼ完璧なものが出来上がった。
味、甘い。
色、赤系と黄色系、その混合色の橙系ばかりだが、華やかで美しい。
香り、ふんわりと甘さを感じさせる。
形、見栄えも良い。
収穫量、残念ながら低い。
栽培、水やりに気を付ける以外は、難しくない。
この食用花だけで、デザートの一品になれると勢い込んだルーベンは、意気揚々と収穫量を上げるための交配を続け、ようやく満足がいく結果を導き出した。
しかし。
「どうして、こんなに渋いんだ!!」
何がどこでどう間違ったのか。
この郷祭でのお披露目を目指して栽培された食用花は、劇的に味が変化してしまっていた。
とにかく、渋い。渋柿という東方の果物をうっかり食べたことがある人なら、その記憶を悪い方に五倍くらい修正してもらえば、この花を口にせずとも味が分かるだろう。
加えて、色が落ちやすい。瑞々しさは保てるのだが、何故か色だけは収穫直後からすぐに薄まって来て、やがて白くなってしまう。形は保てても、真っ白では見栄えも良くない。
香りと形に変わりはないが、その印象で、かえって味の渋みが増して感じられるという意見まで出る始末。
まったく、どこで間違ったのか不明なままだ。
更に悪いことには、関係者の誰の不注意か、この不出来な新種の花粉が交配途中の苗の保管温室に運ばれて、過去の優良だった食用花も全部がこの激渋に変化してしまったのである。
それがなければ、ルーベンのこと。今年は無理でも、来年の春の祭りを目指して品種改良のやり直しに勤しんでいただろう。けれど、さすがの彼も、この失敗には気力を失ってしまっている。
研究途中で資金が付きて、勝手に他の実験農場の予算を持ち出し、妻で領主代行も務めるバルバラにぎっちり絞られた時より、十倍も落ち込んでいた。
「困ったね」
「うん、あの人があのままだと、お金が出ないもんね」
「この際、強壮剤でも何でもいいから薬効を見付けるか、加工方法を確立して、バルバラ様やセスト様に次の研究予算を貰えるようにしなきゃ」
そして。
困った人の部下に当たる困った研究者達は、ルーベンの落ち込みなど放置して、新たな研究予算を得るために、不良品化した食用花の活用方法を見付ける依頼を出したのだった。
「だから、この花をうまく活用してくれる人をね」
「とにかく知恵が回って、料理とか上手なのがいいかな」
「食用なのに、劇的に不味いんだ。これを加工する方法を知ってる人がいれば」
「単にお金を払ってくれる人でもいいけど」
「あ、それでもいい」
「うん、出資者募集」
「依頼を出しに来て、お金出せって、あんた方なんですかーっ!」
食用花を食べられるようにしてくれと、そんな不可思議なことを口走っている集団は、最後にはスポンサー探しを始めようとして、オフィスの係員に怒られている。
最初に彼らが何を頼みたかったのかは……
自由都市同盟にある農業振興地区ジェオルジには、領主のジェオルジ一族の直接管理する地域以外に複数の村がある。
その村々の長が顔を揃えて、地域の諸々を相談する村長会議は、すでに終了。ここからは郷祭とも呼ばれる、村長祭の始まりだ。
ジェオルジ各所でも、村の名物を楽しんだり、競馬が行われたりと、様々な催しが計画、実行されている。
そう、祭はこれからが本番。
だと言うのに、ジェオルジのど真ん中にて、一人黄昏れている人物がいた。
名前は、ルーベン・ジェオルジ。現領主のセストの父親にして、先代領主である。
過去に幾種類もの新種植物を発見、交配し、研究者としての実力は一流だ。
けれども、まだ少年期の息子に『自分が研究に没頭したいから』と領主の座を押し付けたことは、ジェオルジでは有名、同盟の評議会でも大抵知っている話のため、誰も人格者だとは思っていない。その通りなので、当人も気にしていない。
そんなルーベンが落ち込む理由は、研究がうまく行かなかったからだ。今回彼が手掛けていたのは、食用花の交配である。
「絶対に、完璧な出来だと思ったのに……」
食用花と言えば、おおむね料理の彩りに添えられ、主役にはなり難い。ルーベンの素早い資料入手によると、東方では食用花のおひたしなる副菜も存在するが、皆が日常的に食べるものではないらしい。
そもそも、食用とはいえ花。色や形、鮮度を保つのにも、いささか手間が掛かる食材だ。その割に食べて感動するほどの味ではないとなれば、流通量も限られる。
ならば、食用花だけで一品が成立し、老若男女が受け入れる味と香りになれば、ジェオルジの名物として販路が広げられる。ルーベンはこう思い立ち、交配を進めた結果、完成一歩手前の試作ではほぼ完璧なものが出来上がった。
味、甘い。
色、赤系と黄色系、その混合色の橙系ばかりだが、華やかで美しい。
香り、ふんわりと甘さを感じさせる。
形、見栄えも良い。
収穫量、残念ながら低い。
栽培、水やりに気を付ける以外は、難しくない。
この食用花だけで、デザートの一品になれると勢い込んだルーベンは、意気揚々と収穫量を上げるための交配を続け、ようやく満足がいく結果を導き出した。
しかし。
「どうして、こんなに渋いんだ!!」
何がどこでどう間違ったのか。
この郷祭でのお披露目を目指して栽培された食用花は、劇的に味が変化してしまっていた。
とにかく、渋い。渋柿という東方の果物をうっかり食べたことがある人なら、その記憶を悪い方に五倍くらい修正してもらえば、この花を口にせずとも味が分かるだろう。
加えて、色が落ちやすい。瑞々しさは保てるのだが、何故か色だけは収穫直後からすぐに薄まって来て、やがて白くなってしまう。形は保てても、真っ白では見栄えも良くない。
香りと形に変わりはないが、その印象で、かえって味の渋みが増して感じられるという意見まで出る始末。
まったく、どこで間違ったのか不明なままだ。
更に悪いことには、関係者の誰の不注意か、この不出来な新種の花粉が交配途中の苗の保管温室に運ばれて、過去の優良だった食用花も全部がこの激渋に変化してしまったのである。
それがなければ、ルーベンのこと。今年は無理でも、来年の春の祭りを目指して品種改良のやり直しに勤しんでいただろう。けれど、さすがの彼も、この失敗には気力を失ってしまっている。
研究途中で資金が付きて、勝手に他の実験農場の予算を持ち出し、妻で領主代行も務めるバルバラにぎっちり絞られた時より、十倍も落ち込んでいた。
「困ったね」
「うん、あの人があのままだと、お金が出ないもんね」
「この際、強壮剤でも何でもいいから薬効を見付けるか、加工方法を確立して、バルバラ様やセスト様に次の研究予算を貰えるようにしなきゃ」
そして。
困った人の部下に当たる困った研究者達は、ルーベンの落ち込みなど放置して、新たな研究予算を得るために、不良品化した食用花の活用方法を見付ける依頼を出したのだった。
リプレイ本文
激渋。
この言葉では生温かった。しかし、適切な表現を考えるのは、とても難しい。
なぜならば。
「いかがで、え、大丈夫ですか?」
「甘いもので、少しは紛れるかもしれませんね」
「……ちょっと、早く吐き出しなさいな。人前でとか、考えなくていいわよ」
問題の食用花を、やはり一回くらい味見した方が良いだろうかと、いささか迷いながらも口に入れたロラン・ラコート(ka0363)は、口の中から鼻に抜けて、目の奥が痛んでくる錯覚を覚える渋みに血の気を引かせていたからだ。
この顔色の激変に、一緒に農場を訪れた女性ハンター二人が、手早く水や飴を用意した。もう一人の男性であるアルバート・P・グリーヴ(ka1310)は、なんとも物柔らかい語尾の言葉遣いで、ロランに花を吐いてしまえと勧めている。
そうは言われたが、予想以上の激渋味にうっかり飲み込んでしまったもので、ロランはティア・ユスティース(ka5635)が淹れてくれた紅茶に、明王院 穂香(ka5647)が差し出した蜂蜜をどばどば入れて飲んでみた。
それからおもむろに、一旦しまっておいた煙草を出して、火を点ける。
「駄目だ、味が全然わからない」
ちなみに、先にこの体験をしている農場の助手達によると、最低でも一時間は味覚が鈍くなる。実際、ロランの舌が元に戻ったのは一時間半ほど後のことだ。
しかし今回、この激渋食用花の商品化を検討するために集まった四人のハンターは、その程度の事ではひるまなかった。
「まずは加熱してみましょうか。それで少しでも渋みが抜けるなら、色々やり様があるじゃない?」
アルバートは、自分が日頃調香の際に使う知識が加工で何か役に立たないかと、まだ露地に出されている花の鉢を見やっている。
「アルコールに漬けて、渋みを抜くやり方がリアルブルーの日本にありましたから試してみたいですね」
穂香はさっそく腕まくりをして、使う花の摘み取りに入ろうとしている。
「そのアルコールに香りが移れば、そちらは香料に使えるかもしれませんよ」
ティアは加熱用にお湯を沸かしておくと、ロランと一緒になってお茶を飲もうとしている助手達を急き立て、準備に向かった。
「色と形は……いいんだがね」
まだ煙草の味が分からないながら、とりあえず二本吸って気持ちが落ち着いたロランも、細々した道具を揃えに動き出す。
問題の食用花の渋みは、砂糖の上塗り程度ではどうにもならない。これはロランの尊い犠牲で、明らかになっている。
「菫のように砂糖漬にしたら、見栄えもいいと思ったんだけどね」
味が多少アレでも、祝い事の菓子に乗せる飾りとして使えるかしらとアルバートは考えを巡らせていた。けれど、まかり間違って口に入れたら大変だ。
となれば、彼が思い付く渋抜きの方法は、まずアルコール漬け。これは穂香も試してみる価値ありと、推していた。なんでも彼女の故郷、リアルブルーの一地方にも、同じような渋抜きの方法があるそうだ。
更には、
「そのアルコールに香りが移ったら、それを香料に出来ませんか? 花とお酒の割合を、色々試してみて、香りの移り具合を確かめたいですね」
ティアは食用にこだわらず、香料の採取材料としての活用も挙げた。他に花の鮮度を保ちやすいことを利用して、花色は染料で足し、花束などに使えないかと案を出している。好きな色に出来るなら、結婚式の花束に花吹雪をはじめ、様々な展開が見込めるだろう。
これにはアルバートも、冬期の需要がありそうと表情を緩ませたが、穂香はいささか思案気だ。
「この花の商品化をして、それが商業ベースにのらないと、次の品種改良の資金がやりくりできない状態なのですよね?」
穂香に尋ねられた助手達は、こくこくと頷いた。彼らの資金の使い方にも問題がありそうだが、責任者のルーベンからしてろくでもない資金調達をやらかす御仁だ。最低一つは、すぐさま幾らかでも稼げる加工法を見付けないと、後々問題を起こすに決まっている。
つまり穂香は、作る商品は低額でもすぐ売り出せるものであることが望ましいと気付いたのである。
ちなみにそのろくでなし責任者は、アルバートに『お噂はかねがね』と挨拶されてご機嫌に開発苦労を語っていたのもつかの間、村長会議の後にもやまほど仕事があるのだと家族の元に引き戻されていた。
残った助手達を指揮して、まずはアルコール漬けを吹きかけるのから漬け込みまで幾つかの手法で実行し、蒸気の上がった蒸し器に花を放り込んだところで、作業室と化した台所のテーブルを囲んで、商品化を目指す具体的な検討会を始めかけていた。
そこに、ぽんと出された皿が一枚。上には、色とりどりの食用花に薄く衣が付けられて、からりと揚がったものがのっている。
「あら、天麩羅ですね」
「野草は炒めるか揚げるが、一番に浮かぶんでな。花なんでジャムも考えたが、まず加熱方法の一つとして…………誰かが味見してくれ」
一人黙々と食用花を天麩羅にしていたロランが、最後は言葉を濁した。味を知っている彼らしたら、さあ食べろとはとても言えない。しかし、この時点でまだ味覚が麻痺したも同然の彼では、味見役は務まらないのだ。
「ふぅん、見栄えもいいし、美味しそうじゃない。いい腕してるのね」
一瞬しんとした後、アルバートが天麩羅をひょいと指で摘み上げた。塩が用意されていたが、それも付けずにぱくりと口に入れて……目をしばたたかせる。
「味、ないわ」
しゃくしゃくと丹念に噛んで、おもむろに発した一言がこれ。
固唾をのんで見守っていたティアと穂香が、こちらは箸やフォークを使って、天麩羅を口にする。どちらも力一杯頷くところと顔色から、ロランが見舞われた激渋地獄は味わわずに済んでいるのだろう。
「加熱すると、渋が抜けるのかしら?」
「油の作用かもしれません。蒸した方も確かめてみましょう」
女性二人は、熱々の蒸し器を素手でさらっと持ち上げて、これまた素手で蒸しあがった花を取り出している。助手達は、手伝おうにも蒸気から逃げ惑う始末。
「ちょっと二人とも、手は大丈夫なの?」
「「慣れてますから」」
アルバートが、慌てて乾いた布巾を差し出したが、二人ともその頃には作業をやり終えていた。慣れているのは本当で、白い手は熱せられた気配も残していない。
それはさておき。
結論は、加熱で渋が消える。
しかし、味は綺麗さっぱり消え失せる。色と香りも加熱時間が長くなると抜けてくる。形は加熱しすぎると崩れる。香りや形が綺麗に残る加熱時間は、地味に実験していくしかないだろう。
「煮崩れる頃には真っ白か。白いジャムって言うのは如何だ? あまりない色だから、珍しがられると思うが」
再びテーブル周りに腰を落ち着けて、ようやく味が戻ってきたロランが今度は珈琲を飲んでいる。煙草は花の香りと混ざるといけないので、しばしの禁煙中。
ティアがメモ用紙代わりの板に、白墨でジャムと書き付けていると、アルバートも一つあげた。
「味が抜けても香りが残る時間が分かれば、ハーブコーディアルもどきが作れるんじゃないかしら。要するに食用花のシロップね。味は加える柑橘系のものになるから、香りを上手に残さないといけないわ」
調整に時間がかかるかだろうが、加熱時間と果汁や甘味の割合が決まれば、後は誰でも作ることが出来る。香り高いシロップとして、需要も見込めるし、輸送も難しくない。この点はジャムも同様だ。
他にすでに漬け込み済みのアルコール漬け、花酒の数が、別の板に書かれて、壁に掛けてある。一定時間毎に開けては味と香りを確かめて、結果を書き込む一覧付きだ。
容器は幾つもあるので、これらは別に倉庫に仕舞われていた。流石にまだ確認の回数は少なく、結果も花の味見をした助手達が渋味に撃沈しているだけ。
そして。
「残念ながら、ちょっと厳しそうです。潰すとほんとに少しになってしまって、柿渋のように発酵させるのは大変かも」
穂香は未成熟の渋柿から作る防腐や防水作用がある液体と同じ加工が出来ないものかと、すでに収穫していた花を屋外で潰していた。これで出た汁と水を混ぜて、発酵させていくと防腐作用がある液体になるはずだが、花から作るには膨大な量が必要で、望む結果が出るか心許ない。とはいえ、とりあえず桶一つ分の量は作って、発酵待ちである。
その様子を説明してもらいながら、ハンター四人はまずジャムとシロップ作りに勤しむことにした。今のところ、これが一番失敗せずに済みそうで、どこにでも売り込みしやすい。その分、競合する商品も多いが、そこは食用花の加工品という部分を活かして、宣伝に使うしかなかろう。
そのためには、考えるべきことが幾つかあって。
「予想通りに、真っ白になったな。花は使えそうにないが、これでムースを作るのも悪くないか」
提案者なので、甘味だけとアルコールも追加して煮たものの二種類のジャムをかき回していたロランが、出来上がりに満足した様子で鍋を火から下ろした。味見をして、少し眉を寄せる。
隣で、こちらは材料を色々と変えたシロップの鍋四つの面倒を見ていたアルバートが、自分も味見したいとスプーンを差し出した。
「あら、蜂蜜と砂糖を入れたのよね。こっちは甘みが濃いけど、分量も違うの?」
「いや、同じだが」
シロップも味見をして、結論はやはり一部だけ甘みが強い。入れた甘味の量を上回る甘さで、くどく感じるほどだ。
加熱で味が抜いて砂糖漬けにした花と、花のジャムでゼリームースを作る。商品そのものもだが、これを高級菓子の材料に売ってはどうか。流通の手間も考慮し、胸の内でこう検討していたロランだが、ジャムが甘すぎるところに、何かが引っ掛かった。
シロップでも同様の状態になって、アルバートもお玉はしっかり動かしつつ、考え込んでいる。
おもむろに顔を見合わせて、それから自分が予想したことを相手に言おうかとしたところで、香料抽出用の花の収穫に出向いていたはずのティアが台所に駆け込んできた。後ろから、穂香が追いかけて来ているらしい足音もする。
「これ、食べてみてください!」
ティアが差し出したのは、アルコール漬けにされていた食用花。とうとう色が抜けて、真っ白になってしまっていた。
が。
「あら……花弁の中よね」
「あぁ、中が甘いな」
アルコールの味も強いが、甘みも感じる。しかも、後から添加した甘みではなく、花弁の内側を噛んだ時に甘さが広がるのだ。
「花酒にしたのも、ちょっとずつ引き上げてきました。味見してみましょう」
穂香がお盆にずらりと、ほとんどが真っ白になった花を並べて持って来て、四人と助手達とで試食したところ。
「駄目、私は味が分からないわ。口の中全部が渋いって、辛すぎるわね」
「俺はまあ、少し分かる」
「色付きは駄目で、真っ白なら渋みだけが抜けたわけですね」
「香りはお酒と混じっていて、ちょっときついです。もう少し置くと変わるかしら」
食用花の渋みは、アルコールでも抜けることが判明した。真っ白になっていれば、今まで隠れていて分からなかったほのかな甘みが表れて、花だけで食べても悪くない。
ただし、漬けたばかりのためかアルコールと花の匂いがそれぞれ主張していて、鼻にはつんと来るが。これがいい香りに落ち着くかは、まだまだ確認が必要だろう。
でもロランは、自分が考えていたゼリームースに、この花なら使えると喜んでいる。透明のゼリー部分に白い花を入れて飾りに、その下の層は色付きのムースで花の白が引き立つようにすれば、より食用花の印象が強くなる。アルバートが考えていた砂糖漬けも、これならもちろん可能だ。
これは漬ける酒の種類でも変わるかもしれないと、ハンター四人に助手も総がかりで果物酒を付けるのに使う酒に片端から花を放り込み、冷暗所に寝かせる。中には、柑橘系や林檎など、時期の果物を追加したものも加えて、花酒の瓶だけで五十近くなった。
合わせて、すでに白くなっていた花を染める作業もやってみたが、残念ながらこちらは不調。染料によって、花の染まりに大きな差があり、様々な色を出したいというティアの希望には程遠かった。これには、ゼリームースに入れるなら、色は多彩にしたいと思うロランもがっかりだ。
「花の色が選べれば、ムースをジャムで白いものに出来て映えるし、売りにもなるんだが」
「残念ですね。あ、でも、この花だって色むらはあっても香りはいいのですから、ポプリにしてしまいましょう」
花弁一枚たりとも無駄にするものかという勢いで、ティアは色むら激しい花を集めだした。
「袋を作るなら、お手伝いします。それも、先々商品化出来るかもしれませんから」
食用花とはいえ、中には食用に使えない場合もある。そうしたものを集めて、ポプリなどに使えば無駄がないと、女性二人が試作品作りに邁進し始めたので、香料作りも男性二人の作業になった。
調香ならアルバートが得手にしているし、指示があればロランも困らない。二人とも、お裁縫よりはこちらの方が良いので、文句など言わなかった。アルバートなど、お土産に一つ貰って行こうとほくそ笑んでいる。
そうした訳で、薔薇の香料作りよろしく、精油を抽出してみたが……
「薄荷と同じね。採算、とれるかしら」
今の栽培規模だとよほど高値で流通させられないと、ちょっと厳しい経営になるだろうという量しか取れないことが判明した。香料としての香りは良いので、こちらは将来の展開としておくといいのかもしれない。
最終的には、
「真っ白な花ジャムと、まあ近隣なら花を天麩羅やフライにしてもらうのもいいだろうな」
「花酒は、二か月後くらいに味と香りを確かめたいわね。砂糖漬けは、今からでも売り出せるんじゃないかしら」
「お砂糖に漬けていないものを、大人向けに高級飲食店に卸してもいいと思います。そういう伝手はおありですか?」
「花渋は毎日混ぜてくださいね。透明の花渋が取れて、防腐や防水の効果があれば、色々なところに役立てられますから」
とにもかくにも、食用花の加工と仕込み中の諸々の世話をして、先々の資金調達方法に困らないように努めること。助手達にみっちりと言い聞かせた四人は、結果を確かめたいものを幾つか残して、依頼期間を終了せねばならなかった。
そして。
「そういえば、花の名前は決まったのか?」
ロランがふと思い出し、穂香もアルバートもティアも、いつまでも食用花ではいけないと助手達を振り返ったところ。
「皆さんの誰かが決めてくれるかなーって」
「「「「ねー」」」」
全然考えていない助手達に、
「「「人をあてにしない!」」」
思わず叫んでいた。
激渋ながらも渋抜き方法が見付かった食用花は、未だに名前なしのままである。
この言葉では生温かった。しかし、適切な表現を考えるのは、とても難しい。
なぜならば。
「いかがで、え、大丈夫ですか?」
「甘いもので、少しは紛れるかもしれませんね」
「……ちょっと、早く吐き出しなさいな。人前でとか、考えなくていいわよ」
問題の食用花を、やはり一回くらい味見した方が良いだろうかと、いささか迷いながらも口に入れたロラン・ラコート(ka0363)は、口の中から鼻に抜けて、目の奥が痛んでくる錯覚を覚える渋みに血の気を引かせていたからだ。
この顔色の激変に、一緒に農場を訪れた女性ハンター二人が、手早く水や飴を用意した。もう一人の男性であるアルバート・P・グリーヴ(ka1310)は、なんとも物柔らかい語尾の言葉遣いで、ロランに花を吐いてしまえと勧めている。
そうは言われたが、予想以上の激渋味にうっかり飲み込んでしまったもので、ロランはティア・ユスティース(ka5635)が淹れてくれた紅茶に、明王院 穂香(ka5647)が差し出した蜂蜜をどばどば入れて飲んでみた。
それからおもむろに、一旦しまっておいた煙草を出して、火を点ける。
「駄目だ、味が全然わからない」
ちなみに、先にこの体験をしている農場の助手達によると、最低でも一時間は味覚が鈍くなる。実際、ロランの舌が元に戻ったのは一時間半ほど後のことだ。
しかし今回、この激渋食用花の商品化を検討するために集まった四人のハンターは、その程度の事ではひるまなかった。
「まずは加熱してみましょうか。それで少しでも渋みが抜けるなら、色々やり様があるじゃない?」
アルバートは、自分が日頃調香の際に使う知識が加工で何か役に立たないかと、まだ露地に出されている花の鉢を見やっている。
「アルコールに漬けて、渋みを抜くやり方がリアルブルーの日本にありましたから試してみたいですね」
穂香はさっそく腕まくりをして、使う花の摘み取りに入ろうとしている。
「そのアルコールに香りが移れば、そちらは香料に使えるかもしれませんよ」
ティアは加熱用にお湯を沸かしておくと、ロランと一緒になってお茶を飲もうとしている助手達を急き立て、準備に向かった。
「色と形は……いいんだがね」
まだ煙草の味が分からないながら、とりあえず二本吸って気持ちが落ち着いたロランも、細々した道具を揃えに動き出す。
問題の食用花の渋みは、砂糖の上塗り程度ではどうにもならない。これはロランの尊い犠牲で、明らかになっている。
「菫のように砂糖漬にしたら、見栄えもいいと思ったんだけどね」
味が多少アレでも、祝い事の菓子に乗せる飾りとして使えるかしらとアルバートは考えを巡らせていた。けれど、まかり間違って口に入れたら大変だ。
となれば、彼が思い付く渋抜きの方法は、まずアルコール漬け。これは穂香も試してみる価値ありと、推していた。なんでも彼女の故郷、リアルブルーの一地方にも、同じような渋抜きの方法があるそうだ。
更には、
「そのアルコールに香りが移ったら、それを香料に出来ませんか? 花とお酒の割合を、色々試してみて、香りの移り具合を確かめたいですね」
ティアは食用にこだわらず、香料の採取材料としての活用も挙げた。他に花の鮮度を保ちやすいことを利用して、花色は染料で足し、花束などに使えないかと案を出している。好きな色に出来るなら、結婚式の花束に花吹雪をはじめ、様々な展開が見込めるだろう。
これにはアルバートも、冬期の需要がありそうと表情を緩ませたが、穂香はいささか思案気だ。
「この花の商品化をして、それが商業ベースにのらないと、次の品種改良の資金がやりくりできない状態なのですよね?」
穂香に尋ねられた助手達は、こくこくと頷いた。彼らの資金の使い方にも問題がありそうだが、責任者のルーベンからしてろくでもない資金調達をやらかす御仁だ。最低一つは、すぐさま幾らかでも稼げる加工法を見付けないと、後々問題を起こすに決まっている。
つまり穂香は、作る商品は低額でもすぐ売り出せるものであることが望ましいと気付いたのである。
ちなみにそのろくでなし責任者は、アルバートに『お噂はかねがね』と挨拶されてご機嫌に開発苦労を語っていたのもつかの間、村長会議の後にもやまほど仕事があるのだと家族の元に引き戻されていた。
残った助手達を指揮して、まずはアルコール漬けを吹きかけるのから漬け込みまで幾つかの手法で実行し、蒸気の上がった蒸し器に花を放り込んだところで、作業室と化した台所のテーブルを囲んで、商品化を目指す具体的な検討会を始めかけていた。
そこに、ぽんと出された皿が一枚。上には、色とりどりの食用花に薄く衣が付けられて、からりと揚がったものがのっている。
「あら、天麩羅ですね」
「野草は炒めるか揚げるが、一番に浮かぶんでな。花なんでジャムも考えたが、まず加熱方法の一つとして…………誰かが味見してくれ」
一人黙々と食用花を天麩羅にしていたロランが、最後は言葉を濁した。味を知っている彼らしたら、さあ食べろとはとても言えない。しかし、この時点でまだ味覚が麻痺したも同然の彼では、味見役は務まらないのだ。
「ふぅん、見栄えもいいし、美味しそうじゃない。いい腕してるのね」
一瞬しんとした後、アルバートが天麩羅をひょいと指で摘み上げた。塩が用意されていたが、それも付けずにぱくりと口に入れて……目をしばたたかせる。
「味、ないわ」
しゃくしゃくと丹念に噛んで、おもむろに発した一言がこれ。
固唾をのんで見守っていたティアと穂香が、こちらは箸やフォークを使って、天麩羅を口にする。どちらも力一杯頷くところと顔色から、ロランが見舞われた激渋地獄は味わわずに済んでいるのだろう。
「加熱すると、渋が抜けるのかしら?」
「油の作用かもしれません。蒸した方も確かめてみましょう」
女性二人は、熱々の蒸し器を素手でさらっと持ち上げて、これまた素手で蒸しあがった花を取り出している。助手達は、手伝おうにも蒸気から逃げ惑う始末。
「ちょっと二人とも、手は大丈夫なの?」
「「慣れてますから」」
アルバートが、慌てて乾いた布巾を差し出したが、二人ともその頃には作業をやり終えていた。慣れているのは本当で、白い手は熱せられた気配も残していない。
それはさておき。
結論は、加熱で渋が消える。
しかし、味は綺麗さっぱり消え失せる。色と香りも加熱時間が長くなると抜けてくる。形は加熱しすぎると崩れる。香りや形が綺麗に残る加熱時間は、地味に実験していくしかないだろう。
「煮崩れる頃には真っ白か。白いジャムって言うのは如何だ? あまりない色だから、珍しがられると思うが」
再びテーブル周りに腰を落ち着けて、ようやく味が戻ってきたロランが今度は珈琲を飲んでいる。煙草は花の香りと混ざるといけないので、しばしの禁煙中。
ティアがメモ用紙代わりの板に、白墨でジャムと書き付けていると、アルバートも一つあげた。
「味が抜けても香りが残る時間が分かれば、ハーブコーディアルもどきが作れるんじゃないかしら。要するに食用花のシロップね。味は加える柑橘系のものになるから、香りを上手に残さないといけないわ」
調整に時間がかかるかだろうが、加熱時間と果汁や甘味の割合が決まれば、後は誰でも作ることが出来る。香り高いシロップとして、需要も見込めるし、輸送も難しくない。この点はジャムも同様だ。
他にすでに漬け込み済みのアルコール漬け、花酒の数が、別の板に書かれて、壁に掛けてある。一定時間毎に開けては味と香りを確かめて、結果を書き込む一覧付きだ。
容器は幾つもあるので、これらは別に倉庫に仕舞われていた。流石にまだ確認の回数は少なく、結果も花の味見をした助手達が渋味に撃沈しているだけ。
そして。
「残念ながら、ちょっと厳しそうです。潰すとほんとに少しになってしまって、柿渋のように発酵させるのは大変かも」
穂香は未成熟の渋柿から作る防腐や防水作用がある液体と同じ加工が出来ないものかと、すでに収穫していた花を屋外で潰していた。これで出た汁と水を混ぜて、発酵させていくと防腐作用がある液体になるはずだが、花から作るには膨大な量が必要で、望む結果が出るか心許ない。とはいえ、とりあえず桶一つ分の量は作って、発酵待ちである。
その様子を説明してもらいながら、ハンター四人はまずジャムとシロップ作りに勤しむことにした。今のところ、これが一番失敗せずに済みそうで、どこにでも売り込みしやすい。その分、競合する商品も多いが、そこは食用花の加工品という部分を活かして、宣伝に使うしかなかろう。
そのためには、考えるべきことが幾つかあって。
「予想通りに、真っ白になったな。花は使えそうにないが、これでムースを作るのも悪くないか」
提案者なので、甘味だけとアルコールも追加して煮たものの二種類のジャムをかき回していたロランが、出来上がりに満足した様子で鍋を火から下ろした。味見をして、少し眉を寄せる。
隣で、こちらは材料を色々と変えたシロップの鍋四つの面倒を見ていたアルバートが、自分も味見したいとスプーンを差し出した。
「あら、蜂蜜と砂糖を入れたのよね。こっちは甘みが濃いけど、分量も違うの?」
「いや、同じだが」
シロップも味見をして、結論はやはり一部だけ甘みが強い。入れた甘味の量を上回る甘さで、くどく感じるほどだ。
加熱で味が抜いて砂糖漬けにした花と、花のジャムでゼリームースを作る。商品そのものもだが、これを高級菓子の材料に売ってはどうか。流通の手間も考慮し、胸の内でこう検討していたロランだが、ジャムが甘すぎるところに、何かが引っ掛かった。
シロップでも同様の状態になって、アルバートもお玉はしっかり動かしつつ、考え込んでいる。
おもむろに顔を見合わせて、それから自分が予想したことを相手に言おうかとしたところで、香料抽出用の花の収穫に出向いていたはずのティアが台所に駆け込んできた。後ろから、穂香が追いかけて来ているらしい足音もする。
「これ、食べてみてください!」
ティアが差し出したのは、アルコール漬けにされていた食用花。とうとう色が抜けて、真っ白になってしまっていた。
が。
「あら……花弁の中よね」
「あぁ、中が甘いな」
アルコールの味も強いが、甘みも感じる。しかも、後から添加した甘みではなく、花弁の内側を噛んだ時に甘さが広がるのだ。
「花酒にしたのも、ちょっとずつ引き上げてきました。味見してみましょう」
穂香がお盆にずらりと、ほとんどが真っ白になった花を並べて持って来て、四人と助手達とで試食したところ。
「駄目、私は味が分からないわ。口の中全部が渋いって、辛すぎるわね」
「俺はまあ、少し分かる」
「色付きは駄目で、真っ白なら渋みだけが抜けたわけですね」
「香りはお酒と混じっていて、ちょっときついです。もう少し置くと変わるかしら」
食用花の渋みは、アルコールでも抜けることが判明した。真っ白になっていれば、今まで隠れていて分からなかったほのかな甘みが表れて、花だけで食べても悪くない。
ただし、漬けたばかりのためかアルコールと花の匂いがそれぞれ主張していて、鼻にはつんと来るが。これがいい香りに落ち着くかは、まだまだ確認が必要だろう。
でもロランは、自分が考えていたゼリームースに、この花なら使えると喜んでいる。透明のゼリー部分に白い花を入れて飾りに、その下の層は色付きのムースで花の白が引き立つようにすれば、より食用花の印象が強くなる。アルバートが考えていた砂糖漬けも、これならもちろん可能だ。
これは漬ける酒の種類でも変わるかもしれないと、ハンター四人に助手も総がかりで果物酒を付けるのに使う酒に片端から花を放り込み、冷暗所に寝かせる。中には、柑橘系や林檎など、時期の果物を追加したものも加えて、花酒の瓶だけで五十近くなった。
合わせて、すでに白くなっていた花を染める作業もやってみたが、残念ながらこちらは不調。染料によって、花の染まりに大きな差があり、様々な色を出したいというティアの希望には程遠かった。これには、ゼリームースに入れるなら、色は多彩にしたいと思うロランもがっかりだ。
「花の色が選べれば、ムースをジャムで白いものに出来て映えるし、売りにもなるんだが」
「残念ですね。あ、でも、この花だって色むらはあっても香りはいいのですから、ポプリにしてしまいましょう」
花弁一枚たりとも無駄にするものかという勢いで、ティアは色むら激しい花を集めだした。
「袋を作るなら、お手伝いします。それも、先々商品化出来るかもしれませんから」
食用花とはいえ、中には食用に使えない場合もある。そうしたものを集めて、ポプリなどに使えば無駄がないと、女性二人が試作品作りに邁進し始めたので、香料作りも男性二人の作業になった。
調香ならアルバートが得手にしているし、指示があればロランも困らない。二人とも、お裁縫よりはこちらの方が良いので、文句など言わなかった。アルバートなど、お土産に一つ貰って行こうとほくそ笑んでいる。
そうした訳で、薔薇の香料作りよろしく、精油を抽出してみたが……
「薄荷と同じね。採算、とれるかしら」
今の栽培規模だとよほど高値で流通させられないと、ちょっと厳しい経営になるだろうという量しか取れないことが判明した。香料としての香りは良いので、こちらは将来の展開としておくといいのかもしれない。
最終的には、
「真っ白な花ジャムと、まあ近隣なら花を天麩羅やフライにしてもらうのもいいだろうな」
「花酒は、二か月後くらいに味と香りを確かめたいわね。砂糖漬けは、今からでも売り出せるんじゃないかしら」
「お砂糖に漬けていないものを、大人向けに高級飲食店に卸してもいいと思います。そういう伝手はおありですか?」
「花渋は毎日混ぜてくださいね。透明の花渋が取れて、防腐や防水の効果があれば、色々なところに役立てられますから」
とにもかくにも、食用花の加工と仕込み中の諸々の世話をして、先々の資金調達方法に困らないように努めること。助手達にみっちりと言い聞かせた四人は、結果を確かめたいものを幾つか残して、依頼期間を終了せねばならなかった。
そして。
「そういえば、花の名前は決まったのか?」
ロランがふと思い出し、穂香もアルバートもティアも、いつまでも食用花ではいけないと助手達を振り返ったところ。
「皆さんの誰かが決めてくれるかなーって」
「「「「ねー」」」」
全然考えていない助手達に、
「「「人をあてにしない!」」」
思わず叫んでいた。
激渋ながらも渋抜き方法が見付かった食用花は、未だに名前なしのままである。
依頼結果
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面白かった! | 5人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/07 20:32:32 |