ゲスト
(ka0000)
ありがちな奇跡・前
マスター:月宵

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/11/10 15:00
- 完成日
- 2015/11/18 06:38
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「やっぱりアタシも」
「そんな大怪我で、無理するなよ。ほら、皆いるんだ大丈夫だって」
「絶対生きて帰ってよ」
「ああ。じゃあ、行ってくる」
その会話が疾影士メティと、その弟闘狩人セクトとのこの時最後の会話になった。
●異変
話は重傷を負ったメティが、依頼である歪虚退治から帰って来ないことを不安に思い、ギルドへ調査を依頼したことから始まる。
場所はとある廃墟。メティとセクト、それから三名の仲間のハンター達。
あれから、三日は経過。ベッドから起き上がったメティは、人の制止も聞かず、重い足を引き摺りながらギルドから調査に来ていた調査員達の元へ向かった。
通信機からは、先程からノイズばかりでまともな返答はなかった。漸く無線が繋がったのは、それから数十分後のことだ。
一人のハンターが、漸く此方の様子が伝えられることに安堵する声が聴こえる。
そして、直ぐに伝えられる今までの様子。
『今は広間です。今までに三名の遺体を発見』
「そんな!!」
「お気持ちわかりますが、お静かに」
つい数日、共に笑顔で別れた仲間。メティのショックは余程のものであったのだろう。
『それから、妙なんです。ここまで大広間に至るまで、歪虚が全く無くて……反応も』
『な……なんだ』
『何、なに!?』
『グア゛っ』
「何があった!? 的確に頼む!」
『一人やられました! 歪虚、しかもづよ……』
『何なの! 傷が…どんどん』
『オイ!嘘だろ。報告書と全然違う何だよ、あの触手』
最初の通信ではまだ怒号や罵声にも、言葉に意味を見出だせた。しかし、雷が走るような轟音や、弓矢の風切り音、そして得物の音に粘着質な音が重なる度、通信は意味をなさなくなっていく。調査員達の顔が、静寂の中で青ざめていく。
そして……
『生き…の…ない……束』
(この声、セクト!)
『無理だ! 勝てない! 避難す―――』
ザアアアアァァァァ
無線の雨だけが、沈黙を蝕む。絶望的な何か、それを知ってしまったギルドからの調査員達は口を開けなかった。
が、何時までもこのままの状態を続けるわけにはいかない。
「絶望的かも知れないが、彼らの救出。そして、謎の歪虚の調査を新たに依頼しよう」
「アタシも同行させて下さい!」
何とか机に寄り掛かって立ち上がる姿に、ギルドの調査員は横に首を振った。
「残念ながら、貴方では」
「声が、セクトの声がしました。死体は三人なら、まだ弟が生きているの!」
その台詞にいいかけていた言葉を飲み込んだ。突然三人の仲間を失う。ハンターをやっていれば、当たり前のようにやってくる別れだ。が、当たり前だからと先ず慣れはしない。その中で、肉親が生存の可能を希望に持ったのだ。答えは……
「わかりました。同行の判断は、これから依頼するハンター達にしていただきます」
「そんな大怪我で、無理するなよ。ほら、皆いるんだ大丈夫だって」
「絶対生きて帰ってよ」
「ああ。じゃあ、行ってくる」
その会話が疾影士メティと、その弟闘狩人セクトとのこの時最後の会話になった。
●異変
話は重傷を負ったメティが、依頼である歪虚退治から帰って来ないことを不安に思い、ギルドへ調査を依頼したことから始まる。
場所はとある廃墟。メティとセクト、それから三名の仲間のハンター達。
あれから、三日は経過。ベッドから起き上がったメティは、人の制止も聞かず、重い足を引き摺りながらギルドから調査に来ていた調査員達の元へ向かった。
通信機からは、先程からノイズばかりでまともな返答はなかった。漸く無線が繋がったのは、それから数十分後のことだ。
一人のハンターが、漸く此方の様子が伝えられることに安堵する声が聴こえる。
そして、直ぐに伝えられる今までの様子。
『今は広間です。今までに三名の遺体を発見』
「そんな!!」
「お気持ちわかりますが、お静かに」
つい数日、共に笑顔で別れた仲間。メティのショックは余程のものであったのだろう。
『それから、妙なんです。ここまで大広間に至るまで、歪虚が全く無くて……反応も』
『な……なんだ』
『何、なに!?』
『グア゛っ』
「何があった!? 的確に頼む!」
『一人やられました! 歪虚、しかもづよ……』
『何なの! 傷が…どんどん』
『オイ!嘘だろ。報告書と全然違う何だよ、あの触手』
最初の通信ではまだ怒号や罵声にも、言葉に意味を見出だせた。しかし、雷が走るような轟音や、弓矢の風切り音、そして得物の音に粘着質な音が重なる度、通信は意味をなさなくなっていく。調査員達の顔が、静寂の中で青ざめていく。
そして……
『生き…の…ない……束』
(この声、セクト!)
『無理だ! 勝てない! 避難す―――』
ザアアアアァァァァ
無線の雨だけが、沈黙を蝕む。絶望的な何か、それを知ってしまったギルドからの調査員達は口を開けなかった。
が、何時までもこのままの状態を続けるわけにはいかない。
「絶望的かも知れないが、彼らの救出。そして、謎の歪虚の調査を新たに依頼しよう」
「アタシも同行させて下さい!」
何とか机に寄り掛かって立ち上がる姿に、ギルドの調査員は横に首を振った。
「残念ながら、貴方では」
「声が、セクトの声がしました。死体は三人なら、まだ弟が生きているの!」
その台詞にいいかけていた言葉を飲み込んだ。突然三人の仲間を失う。ハンターをやっていれば、当たり前のようにやってくる別れだ。が、当たり前だからと先ず慣れはしない。その中で、肉親が生存の可能を希望に持ったのだ。答えは……
「わかりました。同行の判断は、これから依頼するハンター達にしていただきます」
リプレイ本文
ハンター達に依頼されたのは、廃城内部からの救助。及び、謎の歪虚調査の任。だが、実行前にハンター達には1つの用事が残っていた。
それはメティを同行させるか、否かと言う決断だ。
「足手まといになる。寝とけ。その弟の顔だけ教えてくれよ」
最初に雑に言い切ったのは、アーヴィン(ka3383)だ。そんな、とメティは机にもたれ掛かりながら、必死で訴える。整ったメティの顔立ちに、普段なら口説くのに、とどこか頭の片隅にアーヴィンは思う。
「アタシだって疾影士よ。いざとなったら逃げれます」
「ワシが弟なら、立つのにすらモノの助けがいる怪我の姉が敵の前に立たせるなど、思うだけでタマがひゅんとなるわ」
だから貴殿の養生を自分が弟の代わりに願おう。そう言うのは、ディヤー・A・バトロス(ka5743)だ。
(……少し羨ましいな)
視線を流すように、メティの様子を眺めたのはクロード・インベルク(ka1506)だった。彼は肉親との仲が芳しくない。そのためか、不謹慎ながら、これほどに大切にされているセクトが羨ましく思えたのだ。
「貴方が傷ついて、悲しむ人は誰?……そのことを、ちゃんと考えなさい」
気持ちはわからなくもない、こう付け加えた上で牡丹(ka4816)が言う。
「だからって、謎の歪虚のいる場所に、弟の声が聞こえたのよ!?」
そんな場所に弟を一人にしておけるか、メティはそう訴える。
その言葉にフルルカ(ka5839)が素直な心を伝える。わたしも得体の知れない敵はコワイ。けど、それ以上に不幸な結末は回避したい。
そして、自分はその手伝いをしたい。
「奇跡を信じて、待っていてはくれないか?」
長い沈黙。だが、納得してくれた様には見えない。これが一般人なら引き下がっただろう。
だが彼女は力ある、覚醒者だ。
「弟のために、確率の高いほうを選べよ」
その言葉は、最初に拒否をしたアーヴィンの台詞であった。愛馬ゴースロンを貸す。その代わりに、廃城から離れた場所での待機と言う条件だ。
「わかったわ」
そう言うことならば、とディヤーは逐一を伝えられる様にメティに魔導短伝話を渡した。そして、ディヤーは代わりにクアンタ(ka4214)から魔導短伝話を受け取った。少年にどこか既視感を覚えるクアンタは、覆面覆った顔を傾けて問う。
「あれ?どこかで……」
「会うたことはある、確かにな」
●歪虚
廃城。きっとそれはそれは、かなりのお貴族様がハバをきかせていたのであろう。誰かしらが合図を送り、そっと重厚な扉を開ける。
無駄に分厚く造られた両手開きのドアのその先はまたまた、無駄に広い大広間があった。
しかし、その権威をひけらかした過去も今は後の祭でしかない。
まだ中には入らない。ここが件の場所なら、奇襲を注意する為に不闇には入れないのだ。
「………あ」
部屋に蔓延する匂いに、エリー・ローウェル(ka2576)は悲鳴を殺す意味で口を覆った。
これが濃厚な赤ワインの香りであるワケはない。胃液を吐かせるほどの鉄さびのニオイだ。粘着質の正体はすぐに理解に至った。
「あまり見ない方がよろしいですわね」
メティのことに、どうでもよい、と心動かされなかった古川 舞踊(ka1777)にもそれは堪えたようだ。
ふんだんに叩き尽くされた肉塊。広がる赤は少なくとも二人以上で作られていると予測出来る。
「遺体の検死は無理のようじゃ」
防具も武器も血にまみれ破片になった惨状。ディヤーの台詞に、フルルカも小さく頷いた。これでは、クラスすらわからない。
大広間内部を隈無く目視していたクロードは正体に気付いた。天井に貼り付く赤紫の幾つもの触手の塊。大きさは4、5mはあるだろう。
触手は側面より2本。まるで両手のようで、その手には得物と思わしき槍と楯を携えている。
部屋には大きなシャンデリアが落ちていた。恐らく、二回目のハンター達は、これに隠れていた触手に、奇襲をくらったのだろう。現在は落下し、天井には剥き出しの歪虚がいる。
(一体のみかな、だとしたら本来の討伐対象はどこへ)
最初から二体だったのか、それとも新たに産まれたのだろうか。
悲観するように、エリーが小さく呟く。
「後悔を…しています。もしも、先発の部隊に私が同行していたら…何かを変えれたかもしれない」
「あーはいはい」
もうこの手の彼女の思い込みには慣れているのか、アーヴィンはきれいに流す。
事前調査はこんな所だろうか。いつまでも、扉の前で立ち止まるワケにもいかない。
こうしている間にも、刻一刻と救助を待つヒト達の生命は削られているかもしれないのだから。
「行きましょう」
最初に飛び出したのは、クロード達誘導部隊だ。部屋に入った途端、目の前を塞ぐ様に歪虚が落下する。
地響きも無く着地。青い隻眼を鈍く光らせ四つ足で動くその姿は、まるで首をもたぬ竜のようにすら見える。
「今です!」
それから数秒クアンタ達救出部隊が、真横を走り抜ける。ちちんぷいぷい、とフルルカがまじない。クアンタは、精霊の力を走り瓦礫を駆ける。
歪虚へ先陣をかけたのは、やや後方より来る牡丹であった。
精神を統一、触手を切り落とさんと風の赴くまま刃を閃かす。が、それは回避されてしまう。
彼女はこのまま不留一歩で着地後、移動する予定であった。
しかし、彼女の足の裏にあったのは、地面でなく歪虚の楯。
「うわぁ!」
予想外の一撃に、彼女の体は強く押し込まれて転倒した。
「やぁ!」
次に来たのは、光と闇を帯びる二太刀の刃はエリーのもの。胴らしき触手に漸くかする程度の傷を残した。
のも束の間だ。傷口から、新たな触手が覆い被さり、みるみるうちに傷口は完治していた。
「嘘、だろう」
驚きを素直に口に出すクロード。どうやら通信にあった『傷がみるみる』とはこの再生力のことであったのだろう。
「問題ありませんでしょう」
自分達の目的は、救出までの時間稼ぎなのだから。
一言と共に、舞踊のエレクトリックショックが放たれる。しかし、これもまた回避。思わず眉をひそめる。
歪虚も攻撃を受け続けるばかりではない。臨戦態勢の構えから長槍を一つ二つ。
エリーは双剣にて、これを受け止める。クロードが予め施した防性強化も手伝い、ほぼ無傷だ。
(早い! けど……これは本気?)
確かに衝撃は強い。だが、力が出しきれていないように彼女には感じた。そうまるで、攻撃を出し渋っているような……
「これならどうだ!」
「えいっ」
クロードのデルタレイと舞踊の光の剣が槍を持つ手をぶち切るように灼く。物理はダメでも、魔法ならいけるか!?
が、元通りなんて言葉を口にする短い時間で、槍は慈悲なく戻る。しかし、それだけでは済まなかった。槍と盾の触手が引っ込み、新たに杖のような物を持つ触手が出現する。
「くぅ!」
振りかぶる一投目。轟く音と走る雷が牡丹とエリーに襲いかかる。
通信の雷の音を、火傷と共に牡丹は知る。
そして、執拗に歪虚を観察していた彼女は、まだ攻撃が終わっていないことを知る。振りかぶる二投目、それは見覚えのある火炎球。
「こんな狭いとこで……避けて!」
爆風が、火炎が、大広間を渦巻いた。ハンター達は一斉に真横へと飛ぶ。舞踊、牡丹は避けきった。
エリーは手痛い火傷を負わされ、クロードに関しては……
「ぐぁ゛ぁぁぁっ」
「クロードさん!」
熱さに手元が狂い、盾で爆風をまともに受けきれなかった。舞踊が咄嗟に防御障壁をクロードの前に置くが、破片となり彼と共に吹っ飛ぶ。
まさに焼け石に水ながら、彼を壁は確かに護ってくれていた。
「一旦……離れる」
ジェットブーツを使用し、クロードは扉近くまで離脱した。
「こうなれば、動きを止める他手立てはありませんわ」
舞踊のデバイスより放たれた電撃が、一瞬ながら歪虚の動きを止めた。
「せいっ!」
牡丹の刃が歪虚の胴を貫いた。手応えはある。が、その感触を拭い去るかの如く回復していく。
(状態異常を持ち合わせてなかっただけ良かったかな)
この形だと、楯が無いためか今度こそ、不留一歩にてその場からの離脱を成功させた。
その間も彼女は一瞬として歪虚を見逃さない。大きな触手うねりを目にする。今度は、弓矢だ。
「また変わったよ! 気を付けて」
自らへと向く矢尻、軽い音と共に牡丹は身を翻し風が手伝い狙いを外す。しかし、もう一つの風切り音が鳴る。
「痛っ!?」
二本目の矢が、彼女の足をかする。そう、最初の矢は回避を促す囮だと、ピリッと足に残る痛みに牡丹は気付いた。
(明らかに足を狙っていた)
牽制に部位狙い。ただの触手の塊のようなデカブツが、ここまで高度なことが出来るだろうか。
(やっぱり……考えたくないけど、そうなの)
矢は更に穿たれる。引き絞られた一撃は、クロードの元へ。
「クロード危ない!」
その矢はエリーの決死の刺突により、どうにか弾かれたのだった……
●救出部隊
ハンター達を救出に向かった四人は、幾重にも重ねられた扉を開けて地下通路へ出た。
どこかで水滴が落ちる音が響く。もしもの時の脱出経路。そんな用途であったろうと、ギルド職員に聞かされていた。
真っ暗な石造りの通路を、フルルカの持参したLEDの光が照らしながら探索している。落とさないよう、紐を結んで慎重に。
事前にここにも歪虚がいないのはら知っていたが、念のためだ。
やがて、ハンター達は行き止まりの壁にもたれ掛かる三人の人影を発見した。
「もしかして、オレ達を助けに?」
「三人だけ、だな」
比較的軽傷の男が、恐る恐るアーヴィンの応えに頷いた。ここに、セクトの姿はない。
ディヤー、クアンタ、フルルカは他二人の様子を伺った。一人舞刀士、半身に及ぶ火傷。もう一人は、魔術師。腹部を穿つ刺し傷。特に刺し傷の魔術師は、裂けた服からは本来の色を忘れさせる程に真っ赤だ。二人とも呻くばかりで言葉を紡がない。
(傷口に感染の類いはないのう)
傷口に不審な点がないことに、最悪の事態にはならないとディヤーは少なからずホッとした。
「二人を運んで、逃げて下さい」
自分は歩けるので、地下通路の別の出口から逃走すると言う。舞刀士を肩に乗せながら、フルルカが聞く。
「そちらから二人を運べないのか?」
男は横に首を振った。その出口までは遠く、二人の体力が持たない可能性が高いのだと彼は説明する。
「それほどに、彼ら二人は……わかりました」
クアンタが、魔術師を背負う。首に回す力が徐々に弱まっているのを感じた。
ディヤーは伝話にてメティに連絡を入れた、セクトがいなかった事。生存者が別の場所に出るためそっちに行ってくれと伝える。
『りょ……しま…』
「くれぐれも無理するでないぞ」
通信はノイズ混じりながら、どうにか会話は出来たようだ。ディヤーは伝話を繋げたまま、懐に戻した。
「それでは、オレはこれで。また会いましょう!」
●
「くっ」
薙ぎ払うような槍の一撃。空振りなれど、鼓膜を震わせる一撃にエリーは肌をあわ立たせた。一つ間違えれば、舞ったのは瓦礫ではなく自分の首か。
「あと、どれ…くらいでしょう」
舞踊の障壁でここまで耐えてきたが、そろそろ弾切れのようだ。
何度、何度、と攻撃しても戻る触手。いつ戻ってくるかわからない、救出隊。時間にして一分も経っていないのに、一同の疲労はそれなりに溜まっていた。
また歪虚の姿が変わる。その形態は先程、クロードを焼いた魔術師だ。彼はあの爆発の激痛を思い出しながらも、息を殺してデリンジャーの銃口を向けた。
「待たせた!」
発砲音。それが歪虚を背後から穿てば、徐々に触手が凍りついていく。そこにはアーヴィンの姿があった。隣には、ヒトを背負ったクアンタとフルルカ。その背後より、ディヤーが顔を出した。
「撤退じゃ!」
少年の言葉と共に、歪虚の前に石壁が出現する。
「私たちも行きます!」
同時に戦闘を全て放棄、一気に扉まで走り出した。近場にいた順にクロード、アーヴィン、フルルカ、クアンタ、牡丹、エリー、舞踊、そして最後にディヤーが部屋を出る。
石壁はベニヤ板の様に軽々しく稲妻に砕かれ、その雷はディヤーに襲いかかる。
「このっ!」
「ディヤーさん!」
身体を浮かし落雷を避けると、振り向きざまにファイヤアローを投げつけた。はじめて聞く歪虚の大きな叫び声を耳にするディヤー。
メティネェ……さ……ン…
「なぬ!?」
歪虚のその声に驚き振り向くも、扉はクロードとアーヴィンの手で閉ざされていた。
●経緯
不思議なことに、広間を出ればあの歪虚は追ってくることはなかった。あれほどの力を持つ歪虚なら、廃城を破壊することも造作もないはずだろうに。疑問に思いながらも、ハンター達は廃城を脱出する。
重傷の二人に出来うる限りの手当てをしていくクアンタ。が、魔術師の呼吸はだんだんと、途絶え途絶えになっていた。
「しっかり! 皆さん、もうすぐ来ますよ」
クアンタが握りしめる魔術師の手から、力が入らなくなる事に、それを止めるように叫んだ。
微かに動いた唇から、ある言葉が紡がれた。
「……青い…目だけ」
手の平が落ちると、クアンタは瞳を瞑り未だ温もりが続く手を掌で覆う。
(青い目?)
死に際のその言葉だけは、何かとてつもない意味を持つように彼女の獣耳に残った。
まもなくして、馬に乗りながらメティと救出した男が自分達の前へ現れた。軽傷といっても、右手を骨折しているのだが。
「セクトは!?」
一言目がそれであった。ハンター達がその姿がなかった事を教えると、彼女は俯いた。一人のヒトの死亡を聞いてから、馬から降りた男はメティにこのような話をした。地下通路の出口に真新しい使った形跡があった。もしかすると、そこから逃げたのではないか、と。
「そんな……ならあの通信の声は幻……?」
どこかで答えを、理解していたのだろう。恐らく、通信を聞いたあの時からだろうか。しかし、ディヤーだけは、その台詞に妙な引っ掛かりを感じこう返した。
「思い出させてすまぬが、あの通信とはなんじゃ?」
「さっき、聴こえたんです貴方の伝話を通して」
メティ姉さん、と。
その言葉は、あの歪虚が放っていた言葉に間違いはなかった。
「……なんじゃと」
常に元気なはずの少年が、驚きに言葉を消失していた。
「私もいいかしら」
話半分に聞いていた牡丹が、メティへと質問する。彼女はもう一度、セクトの特徴を教えて貰った。
訝しみつつも、彼女は出発前に言った話を繰り返す。二十歳前半の男性。中肉中背の青い瞳、そして……
「槍使いの闘狩人よ」
「……そう」
平常心を保とう、動揺を見せないようにと牡丹は呼吸を押さえつける。
その言葉に、牡丹は気味の悪い確信のようなものを覚える。その予感は勘に近いものだが牡丹は最初から持っていた。
そう『謎の歪虚こそセクト』なのだと……
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/09 01:43:15 |
|
![]() |
相談卓 牡丹(ka4816) 人間(クリムゾンウェスト)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2015/11/10 03:19:51 |