ゲスト
(ka0000)
ホリデーDIY
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/11/15 19:00
- 完成日
- 2015/11/21 02:06
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここはジェオルジにあるハンターオフィス支部、のひとつ。
ジェオルジはのどかな農業地帯なので、持ち込まれる依頼数は多くない。従って職員の業務も少ない。主要な仕事は訪問者の応対ではなく、本部から送られてきた書類の整理をしたり、オフィスの掃除をしたり、敷地の草むしりをしたりすること――であった。ほんの少し前までは。
朝。
ジェオルジ支部に出勤してきた職員ジュアンは、玄関前に掘られていた大穴に気づかず片足を落ち込こませ、軽く足の筋を違えた。
呻きながらオフィスに入ると、先に来ていた同僚のマリーが二本足で歩くトイプードルに向け、癇癪を爆発させている。
「あんたまたやったのね! ちゃんとここの丸太で爪とぎしろって言ったでしょー!」
あのトイプードル、実はプードルではない。コボルドだ。
「わしししし! わししししし!」
ちょっと前さるハンターから、ここのオフィスで預かってくれないかと涙ながらに頼まれたのである。
行き場がない孤児とかいうならまだしも、コボルド。普段から人類を悩ませている敵対的亜人。どう考えてみても筋が違う話のような気がする。
しかし一応念のためということで本部の方に連絡してみたら、思いがけず『預かるくらいはいいんじゃない? 駄目だったら辺境あたりに連れて行って放せばいいんだし』的な返答があった。
それならまあ……と、引き取ってみたのである。
そうしたらこんなことになった。
仮にもコボルドを野放しにするわけにいかないから、夜間オフィスに締め切る形で置いているのだが、朝になるたび室内はこの通り。
「わししじゃないでしょ、どうして言うことが聞けないの! こんなにしちゃって……」
怒りに震えながらマリーが指さすのは、オフィスの壁。どこもここも引っ掻き傷だらけでバリバリ。
昨日張り替えたばかりだったのにと思いながら床に散乱した書類をまとめ、自分のデスクに腰掛けたジュアンは、尻餅をつき尾てい骨を打つ。
痛む箇所を摩りながら折れた椅子の脚を調べてみたら、齧られ鉛筆の細さになっていた。
「これ、誰が直すと思ってるのよ! え、誰が直すと思ってるのよ!」
「わし」
「なぜあたしを指さすっ! 直すのはあんたでしょう、さもなくばジュアンでしょう! 大体あんたには反省の色というものが――」
今日も一日大工仕事かとぼんやり考えるジュアンは、オフィス中央に聳えている神霊樹を見上げた。
数匹のパルムが樹から降りてきて、苦情を申し立てる。
『キノウヒトバンホエテタヨ』
『ウルサクテネムレナカッタ』
「……そうかい。ごめんよ」
彼にだって分かっている。コボルドをオフィスの中で飼うべきではないのだと。
しかし別個の小屋を造ってやるには手間と時間がいる。その手間と時間は、荒らされたオフィスの復元と敷地に掘られた穴の埋め戻しに費やされてしまうのだ。
どうしたらいいのかと途方に暮れるジュアン。
そこに、一人の男が入ってきた。
「ちーっす……おー、今日も派手にやってるなあ」
その姿を見たジュアンは、力無く言った。
「アレックス……もう僕はどうしたらいいのか分からないよ……やれるだけのことはやってると思うんだけど、コボルドはちっともなつかないし……連日修繕やらされて超過勤務だし……」
「まあまあ元気出せよ。そうだろうと思って応援連れてきてやったから」
「応援?」
首を傾げたジュアンは、アレックスに続き複数のハンターが、オフィスに入ってくるのを見る。
「皆、今日は依頼受けてないから、色々手伝ってやるってよ。ああ、もちろん俺も手伝うぜ」
マリーは彼の言葉を耳にし、コボルドの頬を引っ張っていた手を放した。
「まあ! 本当ですか、ありがとうございます!」
ジュアンはうれし涙を流しつつアレックスに抱き着く。
「あああありがとうアレックス~~君は最高の彼氏だよ~~」
……どうやらこの二人付き合っているらしい。
ジェオルジはのどかな農業地帯なので、持ち込まれる依頼数は多くない。従って職員の業務も少ない。主要な仕事は訪問者の応対ではなく、本部から送られてきた書類の整理をしたり、オフィスの掃除をしたり、敷地の草むしりをしたりすること――であった。ほんの少し前までは。
朝。
ジェオルジ支部に出勤してきた職員ジュアンは、玄関前に掘られていた大穴に気づかず片足を落ち込こませ、軽く足の筋を違えた。
呻きながらオフィスに入ると、先に来ていた同僚のマリーが二本足で歩くトイプードルに向け、癇癪を爆発させている。
「あんたまたやったのね! ちゃんとここの丸太で爪とぎしろって言ったでしょー!」
あのトイプードル、実はプードルではない。コボルドだ。
「わしししし! わししししし!」
ちょっと前さるハンターから、ここのオフィスで預かってくれないかと涙ながらに頼まれたのである。
行き場がない孤児とかいうならまだしも、コボルド。普段から人類を悩ませている敵対的亜人。どう考えてみても筋が違う話のような気がする。
しかし一応念のためということで本部の方に連絡してみたら、思いがけず『預かるくらいはいいんじゃない? 駄目だったら辺境あたりに連れて行って放せばいいんだし』的な返答があった。
それならまあ……と、引き取ってみたのである。
そうしたらこんなことになった。
仮にもコボルドを野放しにするわけにいかないから、夜間オフィスに締め切る形で置いているのだが、朝になるたび室内はこの通り。
「わししじゃないでしょ、どうして言うことが聞けないの! こんなにしちゃって……」
怒りに震えながらマリーが指さすのは、オフィスの壁。どこもここも引っ掻き傷だらけでバリバリ。
昨日張り替えたばかりだったのにと思いながら床に散乱した書類をまとめ、自分のデスクに腰掛けたジュアンは、尻餅をつき尾てい骨を打つ。
痛む箇所を摩りながら折れた椅子の脚を調べてみたら、齧られ鉛筆の細さになっていた。
「これ、誰が直すと思ってるのよ! え、誰が直すと思ってるのよ!」
「わし」
「なぜあたしを指さすっ! 直すのはあんたでしょう、さもなくばジュアンでしょう! 大体あんたには反省の色というものが――」
今日も一日大工仕事かとぼんやり考えるジュアンは、オフィス中央に聳えている神霊樹を見上げた。
数匹のパルムが樹から降りてきて、苦情を申し立てる。
『キノウヒトバンホエテタヨ』
『ウルサクテネムレナカッタ』
「……そうかい。ごめんよ」
彼にだって分かっている。コボルドをオフィスの中で飼うべきではないのだと。
しかし別個の小屋を造ってやるには手間と時間がいる。その手間と時間は、荒らされたオフィスの復元と敷地に掘られた穴の埋め戻しに費やされてしまうのだ。
どうしたらいいのかと途方に暮れるジュアン。
そこに、一人の男が入ってきた。
「ちーっす……おー、今日も派手にやってるなあ」
その姿を見たジュアンは、力無く言った。
「アレックス……もう僕はどうしたらいいのか分からないよ……やれるだけのことはやってると思うんだけど、コボルドはちっともなつかないし……連日修繕やらされて超過勤務だし……」
「まあまあ元気出せよ。そうだろうと思って応援連れてきてやったから」
「応援?」
首を傾げたジュアンは、アレックスに続き複数のハンターが、オフィスに入ってくるのを見る。
「皆、今日は依頼受けてないから、色々手伝ってやるってよ。ああ、もちろん俺も手伝うぜ」
マリーは彼の言葉を耳にし、コボルドの頬を引っ張っていた手を放した。
「まあ! 本当ですか、ありがとうございます!」
ジュアンはうれし涙を流しつつアレックスに抱き着く。
「あああありがとうアレックス~~君は最高の彼氏だよ~~」
……どうやらこの二人付き合っているらしい。
リプレイ本文
マリィア・バルデス(ka5848)はコボちゃんの姿を目にし、軽いカルチャーショックを受けた。
「この世界のコボルドってこんなに可愛いのね……敵性生物って聞いていたから緑の小鬼かと思ってたわ。童話って案外あてにならないわね」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は目をキラキラさせ、コボちゃんに急接近。
「わぁ、コボちゃんって言うから、4コマみたいなのを想像したけど、凄く可愛いのです。私達がバッチリお家を造ってあげるから、楽しみに待っててください。こんなに可愛いのにハゲたらかわいそうです」
コボちゃんは吠えた。しかしプードル顔でいくらすごんでも効果はいまいち。ルンルンは目尻を下げるばかり。
「見かけによらず照れ屋さんなのです」
コボちゃん本人にとってはすこぶる面白くない。
もっと面白くないことには、躾係のアルマ・アニムス(ka4901)がやってきた。
「コボちゃーん元気そうでよかったですよ~よーしよしよしよーしよしよし」
頬擦りされるコボちゃんの眉間に深く皺が寄る。
「やー、久しぶり。変わらないねー」
包帯姿の天竜寺 詩(ka0396)から頭を撫でられ、更に皺、深まる。
十野間 虚空(ka5683)はロニ・カルディス(ka0551)に小声で話しかけた。
「……敵対的亜人を保護……ですか。人的被害が出ない範疇でなら、考慮の余地はあるのでしょうけど……この惨状ではそうも言ってられないようですね」
「まあ、望む望まざるに関わらず、ペットを飼うなら責任を持たないといけないな」
「コボルドはペット区分なんですか?」
「……俺に聞かないでくれ」
ミリア・コーネリウス(ka1287)はアルマの紹介を受け、コボちゃんに手を差し出す。
「コボちゃん、こちら僕の相棒のミリアです、仲良くしてくださいね」
「僕はミリア、よろしくね」
その手にコボちゃんは噛みついた。瞬間、彼女の左ストレートが炸裂する。
宙に飛んで行くコボルド。
遅まき過ぎるアルマの忠告。
「……あ、彼女僕より強いので」
虚空はKOされ伸びてしまったコボちゃんの身長、並びに手の長さを計りにかかる。
マリィアは尋ねた。
「何をしているの?」
「いえ、爪とぎのときどこまで手が届くのか、今のうちに大体のところを計測しておこうと。オフィスの壁で爪とぎをしてしまうなら、その範疇は取り換えの利く腰板にしておく方が、後々のメンテが楽ですからね」
「なるほど。いい案ね」
計測を終えたところでコボちゃんが、頭を振り振り起きてきた。
「わしいい……」
恨めしそうにミリアを睨むが、唸るのは控えている。上下関係を察する能力は高いようだ。
「やっぱり環境が変わるとストレスもたまるよね。私も枕が変わるとなかなか寝付けないし」
詩は荷物からマカロンを取り出し、高く掲げる。
「コボちゃ~ん。これいる?」
「わし! わししっ!」
ジャンプして餌に食いつこうとする相手をいなし、誘導。
「さ、コボちゃん、皆の邪魔にならないようこっちにいようね」
現在負傷中の身であり力仕事は出来ないけれど、小さなコボルド1匹の管理くらいなら、お茶の子さいさいだ。
● コボ小屋を造ろう1
ルンルンは草の上に手持ちの符を取り出し、並べる。
「東方では家建てる前にこうやって占ってたもの、ここはカードの力とルンルン忍法にお任せです」
こうして方角を定め水捌けがよく土台のしっかりしているところを選べば、以後家運は右肩上がり――だ、そうな。
「……ジュゲームリリカル、ルンルン忍法花占い! シャイな貴方はトイプードルです」
アルマとミリアは、コボ小屋の設計に取り掛かかっている。
「住むんだったら一生モノにしてやらないとな、気合入れて作るぞー。まず入り口はどうするかな。普通の犬小屋なら、カマボコ型だけど」
「うーん、それはあんまりよくないかも。そもそも穴蔵に住む生き物ですから、間口が広いと落ち着かないんですよ。そこは、なるべく狭い方がいいのではと。大人がギリギリ二人並べる程度に」
「じゃあ、横幅50cmくらいかな。高さも体格に合わせた方がいいよね?」
脇で議論を聞いていた虚空は、一つの提案を寄せる。
「夜間オフィス内に入れていた理由が、万一がないよう戸締まりがきく場所にということでしたから……一応扉はつけたほうがよいのでは? 外から閂等かけられるように」
アルマもミリアもそこを忘れていたらしい。両者ポンと手を打ち、新しい議題に取り掛かる。
「そうでした。じゃあ……観音開きと片戸開き、どっちがいいかな」
「引き戸という手もありますよ」
引き続いての議論は彼らに任せ、虚空は、オフィスの方へ戻って行く。そちらの作業を優先させたかったので。
● オフィスリフォーム1
「さて、まずは現状の把握からだな。」
ロニは、オフィス内の傷んでいる部分を総点検して回った。
「ふむ……ここはまだ使えそうだな。ならばこの部分だけを切りだしておけば良さそうだ。」
壁板の剥離は言うに及ばず、備品である机や椅子の痛みもひどい。カーテンや壁紙も破けたり汚れたり。これは大変そうだとマリィアは、こめかみを押さえた。
「軍隊ってところは生活面は基本何でも独りで出来るよう仕込まれるもの。だから大抵の事はそこそこやれる……って言いきりたいんだけど、ね」
マリーは被害の説明てがら、足を踏み鳴らしている。
「遊んでるんだかなんだか知らないけど、書類は破くし足跡はつけるしゴミ箱に鼻を突っ込んでひっくりかえすし、大体ね、あたしは、動物の世話をするためここにいるわけじゃないのよっ!」
彼女をこれ以上燃え上がらせないよう、虚空は、受け流す体で話をそらした。
「とりあえず、オフィス内がこのような状態では、緊急性を要する依頼が埋もれるなんて事も生じかねませんしね。早急に補修と今後の対策を取らないと――ひとまず傷のついている壁板を剥がしましょう」
「おーそりゃいいな。早速やろう」
合いの手を打ったアレックスが、、バールで壁板のクギを抜き始める。
マリィアはロニに、傷んだオフィス備品の搬出を協力してくれるよう求めた。
「大工仕事なら、外の方がしやすいと思うのよ。今日は晴れてるし。中は中で壁の修復作業もある」
「そうだな。纏めておいた方が作業効率は上がる。マリー、ジュアン、分別を手伝ってくれ。必要なものかそうでないか、俺たちでは分からないものもあるからな」
「あ、はい」
頼もしげにアレックスを見ていたジュアンは、わたわたと作業にかかった。
マリーはまだぶつぶつ言っている。
「こんな田舎の片隅でくすぶるため森から出てきたのでは……いつかリアルブルーに行って愛しの推しメンくんと恋を……」
● コボ小屋を作ろう2
「コボちゃん、口から出してくれないと投げられないんだけどなー」
咥えたボールを取ろうとすると唸るコボルド。コボちゃんにこの遊びは高度過ぎたと認めた詩は、三味線を取り出した。
「コボちゃんは歌に興味があるかな?」
コボちゃんは何も答えない。ボールを口に入れたままなので。
「小さなコボルトやってきた~ 小さなオフィスにやってきた~ 洒落た帽子に素敵なジャケット可愛いリボンを巻き付けて~ 皆で作るよ小さなお家小さなコボルト暮らす家~♪」
コボちゃんは耳をぱたぱたさせた。リズムをとって短い尻尾が揺れている。
ところでアルマとミリアは小一時間に及ぶ議論の末、ようやくコボ小屋の設計図を完成させた。
「よし、完璧だ……!」
「とうとう出来ましたね……!」
感無量な様子の2人の背に寄りかかるようにし、設計図を眺めるルンルン。
コボ小屋は、正面からは藁葺き屋根の切り株、上からは鍵穴といった形をしている。藁葺きの屋根には煙突が突き出、丸い出入り口には戸と、毛皮の暖簾がついている。
「わあー。でっかい犬小屋みたいなのかと思ってたけど、全然違うんですねー。すごく本格的♪」
その言葉にアルマは鼻高々。
「ええ、なにしろ一生モノですからね! さあ、早速始めましょう!」
始めは基礎工事から。
ルンルンは魔導ドリルを取り出し、予定地となる地面に突き立て、掘削を始める。
「コボちゃんの為に、ドリルクルクルお家になぁれ♪」
アルマは彼女が粗削りして行く側から、余った土をスコップでかきだし、掘った地面の表面を平らに均して行く。
ミリアは小屋を支える支柱の作成。オフィスの敷地に積まれた材木を物色し、よさげなものをリボルビングソーで、所定の長さに切り揃えていく。
そこへロニが、修復不能となっている壁板や机の脚等を携えやってきた。
「どうだ、これも使わないか。細かく砕けば床や壁のクッション替わりになると思うぞ」
「お、いいねその案。じゃあそこに置いてってよ。オフィス修繕の進み具合は、どう?」
「順調だ。向こうのメドがついたら、俺もこっちを手伝おう」
● オフィスリフォーム2
壁板をすべて剥がしてみれば、幸いなことに、漆喰の元壁には、さほど痛みがきてなかった。
虚空は胸を撫で下ろす。
「よかった。この分ならすぐに補修出来るよ」
床に汚れ避けの新聞紙を敷き詰め、はたきで壁表面のススや埃を払い落とし、速乾性のパテでヒビや割れを丁寧に埋める。それが乾いてから再度板を張り戻し、更にその上へ厚めの腰板を設置して行く手筈。
「上部の張はネジ留めにしますね。少々見栄えは悪いですが、これなら爪とぎしてしまった部分だけ交換すればよくなりますよ」
感激のあまり涙ぐむジュアンとガッツポーズを取るマリー。
「わあ……ありがとうございます、もう何から何まで」
「最高ね! これでもうあの駄犬に悩まされなくてすむわ!」
マリィアはそんな彼らに話しかけた。
「で、壁紙のほうはどうするの? 今までの通りにして修繕ですませるか、それとも全面的に張り替えるか、どっち?」
「えっ、ぼ、僕の意見も要りますか?」
「そりゃそうよ。だってこれからここを使うのはジュアン達でしょう? ジュアン達の希望を通すのが1番よね?」
「そうですか。なら僕はこのま」
「もちろん全面張り替えをお願いするわ。前からこれはと思うの買っておいてあるのよ。いいわねジュアン?」
「……うん、まあ、いいよ」
このオフィスにおいて決定権はマリーにあるらしい。
鐘の音が聞こえた。早くもお昼になったようだ。
虚空が言う。
「キリもいい所だし、ちょっと休憩を挟みませんか?」
マリィアは大賛成である。
「それもそうね。じゃあ私、何か軽いものでも作るわ――ところでコボって何を食べるのかしら?」
● コボ小屋を作ろう3
穴の内側に沿い木槌で支柱を打ち込んでいくのは、ロニとミリア。
アルマは最初それを手伝おうとしたが、力仕事は我が身に余ると知り、下地板の打ち付けに専念するとした。ルンルンもクギ打ちに尽力。しかし何度も金づちの頭を滑らせている。
「……指打って痛いのです」
指を咥えて涙目の初心者にアルマは、アドバイスをしてやった。
「厚紙にクギを刺してから打つとやりやすいですよ。ある程度打ち込んだら、紙を引っ張って取ればいいんです」
「あ、そうなんですか。じゃあ早速やってみます」
下地板を打ちつけ終わったら、その間に細い枝を組んでいく。壁を塗りやすいようにするために。
べんべんという音が聞こえてきた。コボちゃんが三味線を抱えかき鳴らしている。三味線の所有者である詩の姿が見えないが、どこに行っているのだろうか。
「よし、後は塗りですね」
ロニの作った木屑とミリアの作った砂利と粘土を捏ね交ぜたものを、アルマは、壁板の上へ塗り付けて行く。コテ使いも鮮やかに。
そこへ、鐘の音が聞こえてきた。棟木を組んでいたミリアが、ぱっと顔を上げる。
「おっ、昼だ。昼ごはん食べよう昼ごはん! 弁当なら大量に持ってきた!」
汗をふき地面に降り、荷物から手持ちのバラエティーランチを取り出す。
匂いに誘われコボちゃんが寄ってきた。
「コボちゃんも食うか?」
弁当に鼻を突っ込もうとするコボちゃん、アルマにさっとそれを取り上げられる。
「コボちゃん、食べる前に手を洗わないといけません」
そこにマリィアと詩が、サンドイッチを持ってやってきた。一緒に作っていたらしい。
「皆さん、よかったらこれもどうぞ」
「お疲れさまー。ちょうどいいから、揃って外で食べよー」
コボちゃんはそちらに突進していく。
そして両者からさっと避けられ、草の上にすっころぶ。
● ランチ
ツナ缶に鼻を突っ込んでぺろぺろやっているコボちゃん。
ハンターたちはジュアンたちとともに、屋外で軽食を取る。
完成間近なコボ小屋を眺めてマリーが言う。
「もう完成したの……しかしこれ、ここまで立派にする必要ある?」
アルマが口をとがらせ答える。
「だって、自分で住めない物を作らないですよ。ねぇ?」
同意を求められたミリアは、大きく首を縦に振った。
「当たり前だろ何言ってんだ。大体これまだ完成してないぞ。屋根も葺いてないし暖炉の取り付けも終わってないし」
詩は隣で紅茶を飲んでいるアレックスに、気になっていたところを尋ねる。
「そういえばジュアンさんと付き合ってるんだよね?」
「おー、そうだけど」
「今はどっちが攻め受けなの?」
「んー……その時々だよなあ?」
アレックスの言葉に、ジュアンは顔を赤くする。
「えー、やだなもう、何言ってるんだよ人前で」
どうやら揃ってリバーシブル体質のようだ。
そういえば何故男同士は薔薇なのか、などと考えつつ詩は、何げない質問をマリーにぶつけた。
「そういえば、マリーさんにも付き合ってる人いないの?」
マリーの手の中にあったサンドイッチがグチャッと潰れた。隣にいたルンルンは思わずビクッとしてしまう。
してはいけない質問だったのだと悟り、急いでマリィアに水を向ける詩。
「ええ、と、オフィスの修理は終わった?」
「え? ええ、大体は終わったわ。残るのは壁紙と、カーテンの付替えかしらね。ここって冬の暖房器具は何があるのかしら? そっちもやらない? 私ストーブの修繕とか得意よ? これから寒くなるし?」
話しかけられても微動だにしないマリー。
ロニと虚空はあえて地雷を踏みたくなかったので、無言を通し食べることに集中する。
● 劇的アフター
後日。
ジェオルジにある小さなオフィスを訪れた近隣住人は、思わず目をこすった。
この間来たときはなかったメルヘンな家が、オフィスの横に建っている。
トイプードルがその屋根に座り、空き缶にゴムを引っかけたものをかき鳴らしている。
「ううわし、ううわし」
オフィスに入ってみたら壁の一面が、リアルブルーの少年アイドルグループポスターで埋まっていた。
「ええと……ここはオフィスですよね?」
「はい、そうなんです」
情け無さそうなジュアンとは逆に、マリーは、満足仕切った体で笑みを浮かべているのであった。
「この世界のコボルドってこんなに可愛いのね……敵性生物って聞いていたから緑の小鬼かと思ってたわ。童話って案外あてにならないわね」
ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は目をキラキラさせ、コボちゃんに急接近。
「わぁ、コボちゃんって言うから、4コマみたいなのを想像したけど、凄く可愛いのです。私達がバッチリお家を造ってあげるから、楽しみに待っててください。こんなに可愛いのにハゲたらかわいそうです」
コボちゃんは吠えた。しかしプードル顔でいくらすごんでも効果はいまいち。ルンルンは目尻を下げるばかり。
「見かけによらず照れ屋さんなのです」
コボちゃん本人にとってはすこぶる面白くない。
もっと面白くないことには、躾係のアルマ・アニムス(ka4901)がやってきた。
「コボちゃーん元気そうでよかったですよ~よーしよしよしよーしよしよし」
頬擦りされるコボちゃんの眉間に深く皺が寄る。
「やー、久しぶり。変わらないねー」
包帯姿の天竜寺 詩(ka0396)から頭を撫でられ、更に皺、深まる。
十野間 虚空(ka5683)はロニ・カルディス(ka0551)に小声で話しかけた。
「……敵対的亜人を保護……ですか。人的被害が出ない範疇でなら、考慮の余地はあるのでしょうけど……この惨状ではそうも言ってられないようですね」
「まあ、望む望まざるに関わらず、ペットを飼うなら責任を持たないといけないな」
「コボルドはペット区分なんですか?」
「……俺に聞かないでくれ」
ミリア・コーネリウス(ka1287)はアルマの紹介を受け、コボちゃんに手を差し出す。
「コボちゃん、こちら僕の相棒のミリアです、仲良くしてくださいね」
「僕はミリア、よろしくね」
その手にコボちゃんは噛みついた。瞬間、彼女の左ストレートが炸裂する。
宙に飛んで行くコボルド。
遅まき過ぎるアルマの忠告。
「……あ、彼女僕より強いので」
虚空はKOされ伸びてしまったコボちゃんの身長、並びに手の長さを計りにかかる。
マリィアは尋ねた。
「何をしているの?」
「いえ、爪とぎのときどこまで手が届くのか、今のうちに大体のところを計測しておこうと。オフィスの壁で爪とぎをしてしまうなら、その範疇は取り換えの利く腰板にしておく方が、後々のメンテが楽ですからね」
「なるほど。いい案ね」
計測を終えたところでコボちゃんが、頭を振り振り起きてきた。
「わしいい……」
恨めしそうにミリアを睨むが、唸るのは控えている。上下関係を察する能力は高いようだ。
「やっぱり環境が変わるとストレスもたまるよね。私も枕が変わるとなかなか寝付けないし」
詩は荷物からマカロンを取り出し、高く掲げる。
「コボちゃ~ん。これいる?」
「わし! わししっ!」
ジャンプして餌に食いつこうとする相手をいなし、誘導。
「さ、コボちゃん、皆の邪魔にならないようこっちにいようね」
現在負傷中の身であり力仕事は出来ないけれど、小さなコボルド1匹の管理くらいなら、お茶の子さいさいだ。
● コボ小屋を造ろう1
ルンルンは草の上に手持ちの符を取り出し、並べる。
「東方では家建てる前にこうやって占ってたもの、ここはカードの力とルンルン忍法にお任せです」
こうして方角を定め水捌けがよく土台のしっかりしているところを選べば、以後家運は右肩上がり――だ、そうな。
「……ジュゲームリリカル、ルンルン忍法花占い! シャイな貴方はトイプードルです」
アルマとミリアは、コボ小屋の設計に取り掛かかっている。
「住むんだったら一生モノにしてやらないとな、気合入れて作るぞー。まず入り口はどうするかな。普通の犬小屋なら、カマボコ型だけど」
「うーん、それはあんまりよくないかも。そもそも穴蔵に住む生き物ですから、間口が広いと落ち着かないんですよ。そこは、なるべく狭い方がいいのではと。大人がギリギリ二人並べる程度に」
「じゃあ、横幅50cmくらいかな。高さも体格に合わせた方がいいよね?」
脇で議論を聞いていた虚空は、一つの提案を寄せる。
「夜間オフィス内に入れていた理由が、万一がないよう戸締まりがきく場所にということでしたから……一応扉はつけたほうがよいのでは? 外から閂等かけられるように」
アルマもミリアもそこを忘れていたらしい。両者ポンと手を打ち、新しい議題に取り掛かる。
「そうでした。じゃあ……観音開きと片戸開き、どっちがいいかな」
「引き戸という手もありますよ」
引き続いての議論は彼らに任せ、虚空は、オフィスの方へ戻って行く。そちらの作業を優先させたかったので。
● オフィスリフォーム1
「さて、まずは現状の把握からだな。」
ロニは、オフィス内の傷んでいる部分を総点検して回った。
「ふむ……ここはまだ使えそうだな。ならばこの部分だけを切りだしておけば良さそうだ。」
壁板の剥離は言うに及ばず、備品である机や椅子の痛みもひどい。カーテンや壁紙も破けたり汚れたり。これは大変そうだとマリィアは、こめかみを押さえた。
「軍隊ってところは生活面は基本何でも独りで出来るよう仕込まれるもの。だから大抵の事はそこそこやれる……って言いきりたいんだけど、ね」
マリーは被害の説明てがら、足を踏み鳴らしている。
「遊んでるんだかなんだか知らないけど、書類は破くし足跡はつけるしゴミ箱に鼻を突っ込んでひっくりかえすし、大体ね、あたしは、動物の世話をするためここにいるわけじゃないのよっ!」
彼女をこれ以上燃え上がらせないよう、虚空は、受け流す体で話をそらした。
「とりあえず、オフィス内がこのような状態では、緊急性を要する依頼が埋もれるなんて事も生じかねませんしね。早急に補修と今後の対策を取らないと――ひとまず傷のついている壁板を剥がしましょう」
「おーそりゃいいな。早速やろう」
合いの手を打ったアレックスが、、バールで壁板のクギを抜き始める。
マリィアはロニに、傷んだオフィス備品の搬出を協力してくれるよう求めた。
「大工仕事なら、外の方がしやすいと思うのよ。今日は晴れてるし。中は中で壁の修復作業もある」
「そうだな。纏めておいた方が作業効率は上がる。マリー、ジュアン、分別を手伝ってくれ。必要なものかそうでないか、俺たちでは分からないものもあるからな」
「あ、はい」
頼もしげにアレックスを見ていたジュアンは、わたわたと作業にかかった。
マリーはまだぶつぶつ言っている。
「こんな田舎の片隅でくすぶるため森から出てきたのでは……いつかリアルブルーに行って愛しの推しメンくんと恋を……」
● コボ小屋を作ろう2
「コボちゃん、口から出してくれないと投げられないんだけどなー」
咥えたボールを取ろうとすると唸るコボルド。コボちゃんにこの遊びは高度過ぎたと認めた詩は、三味線を取り出した。
「コボちゃんは歌に興味があるかな?」
コボちゃんは何も答えない。ボールを口に入れたままなので。
「小さなコボルトやってきた~ 小さなオフィスにやってきた~ 洒落た帽子に素敵なジャケット可愛いリボンを巻き付けて~ 皆で作るよ小さなお家小さなコボルト暮らす家~♪」
コボちゃんは耳をぱたぱたさせた。リズムをとって短い尻尾が揺れている。
ところでアルマとミリアは小一時間に及ぶ議論の末、ようやくコボ小屋の設計図を完成させた。
「よし、完璧だ……!」
「とうとう出来ましたね……!」
感無量な様子の2人の背に寄りかかるようにし、設計図を眺めるルンルン。
コボ小屋は、正面からは藁葺き屋根の切り株、上からは鍵穴といった形をしている。藁葺きの屋根には煙突が突き出、丸い出入り口には戸と、毛皮の暖簾がついている。
「わあー。でっかい犬小屋みたいなのかと思ってたけど、全然違うんですねー。すごく本格的♪」
その言葉にアルマは鼻高々。
「ええ、なにしろ一生モノですからね! さあ、早速始めましょう!」
始めは基礎工事から。
ルンルンは魔導ドリルを取り出し、予定地となる地面に突き立て、掘削を始める。
「コボちゃんの為に、ドリルクルクルお家になぁれ♪」
アルマは彼女が粗削りして行く側から、余った土をスコップでかきだし、掘った地面の表面を平らに均して行く。
ミリアは小屋を支える支柱の作成。オフィスの敷地に積まれた材木を物色し、よさげなものをリボルビングソーで、所定の長さに切り揃えていく。
そこへロニが、修復不能となっている壁板や机の脚等を携えやってきた。
「どうだ、これも使わないか。細かく砕けば床や壁のクッション替わりになると思うぞ」
「お、いいねその案。じゃあそこに置いてってよ。オフィス修繕の進み具合は、どう?」
「順調だ。向こうのメドがついたら、俺もこっちを手伝おう」
● オフィスリフォーム2
壁板をすべて剥がしてみれば、幸いなことに、漆喰の元壁には、さほど痛みがきてなかった。
虚空は胸を撫で下ろす。
「よかった。この分ならすぐに補修出来るよ」
床に汚れ避けの新聞紙を敷き詰め、はたきで壁表面のススや埃を払い落とし、速乾性のパテでヒビや割れを丁寧に埋める。それが乾いてから再度板を張り戻し、更にその上へ厚めの腰板を設置して行く手筈。
「上部の張はネジ留めにしますね。少々見栄えは悪いですが、これなら爪とぎしてしまった部分だけ交換すればよくなりますよ」
感激のあまり涙ぐむジュアンとガッツポーズを取るマリー。
「わあ……ありがとうございます、もう何から何まで」
「最高ね! これでもうあの駄犬に悩まされなくてすむわ!」
マリィアはそんな彼らに話しかけた。
「で、壁紙のほうはどうするの? 今までの通りにして修繕ですませるか、それとも全面的に張り替えるか、どっち?」
「えっ、ぼ、僕の意見も要りますか?」
「そりゃそうよ。だってこれからここを使うのはジュアン達でしょう? ジュアン達の希望を通すのが1番よね?」
「そうですか。なら僕はこのま」
「もちろん全面張り替えをお願いするわ。前からこれはと思うの買っておいてあるのよ。いいわねジュアン?」
「……うん、まあ、いいよ」
このオフィスにおいて決定権はマリーにあるらしい。
鐘の音が聞こえた。早くもお昼になったようだ。
虚空が言う。
「キリもいい所だし、ちょっと休憩を挟みませんか?」
マリィアは大賛成である。
「それもそうね。じゃあ私、何か軽いものでも作るわ――ところでコボって何を食べるのかしら?」
● コボ小屋を作ろう3
穴の内側に沿い木槌で支柱を打ち込んでいくのは、ロニとミリア。
アルマは最初それを手伝おうとしたが、力仕事は我が身に余ると知り、下地板の打ち付けに専念するとした。ルンルンもクギ打ちに尽力。しかし何度も金づちの頭を滑らせている。
「……指打って痛いのです」
指を咥えて涙目の初心者にアルマは、アドバイスをしてやった。
「厚紙にクギを刺してから打つとやりやすいですよ。ある程度打ち込んだら、紙を引っ張って取ればいいんです」
「あ、そうなんですか。じゃあ早速やってみます」
下地板を打ちつけ終わったら、その間に細い枝を組んでいく。壁を塗りやすいようにするために。
べんべんという音が聞こえてきた。コボちゃんが三味線を抱えかき鳴らしている。三味線の所有者である詩の姿が見えないが、どこに行っているのだろうか。
「よし、後は塗りですね」
ロニの作った木屑とミリアの作った砂利と粘土を捏ね交ぜたものを、アルマは、壁板の上へ塗り付けて行く。コテ使いも鮮やかに。
そこへ、鐘の音が聞こえてきた。棟木を組んでいたミリアが、ぱっと顔を上げる。
「おっ、昼だ。昼ごはん食べよう昼ごはん! 弁当なら大量に持ってきた!」
汗をふき地面に降り、荷物から手持ちのバラエティーランチを取り出す。
匂いに誘われコボちゃんが寄ってきた。
「コボちゃんも食うか?」
弁当に鼻を突っ込もうとするコボちゃん、アルマにさっとそれを取り上げられる。
「コボちゃん、食べる前に手を洗わないといけません」
そこにマリィアと詩が、サンドイッチを持ってやってきた。一緒に作っていたらしい。
「皆さん、よかったらこれもどうぞ」
「お疲れさまー。ちょうどいいから、揃って外で食べよー」
コボちゃんはそちらに突進していく。
そして両者からさっと避けられ、草の上にすっころぶ。
● ランチ
ツナ缶に鼻を突っ込んでぺろぺろやっているコボちゃん。
ハンターたちはジュアンたちとともに、屋外で軽食を取る。
完成間近なコボ小屋を眺めてマリーが言う。
「もう完成したの……しかしこれ、ここまで立派にする必要ある?」
アルマが口をとがらせ答える。
「だって、自分で住めない物を作らないですよ。ねぇ?」
同意を求められたミリアは、大きく首を縦に振った。
「当たり前だろ何言ってんだ。大体これまだ完成してないぞ。屋根も葺いてないし暖炉の取り付けも終わってないし」
詩は隣で紅茶を飲んでいるアレックスに、気になっていたところを尋ねる。
「そういえばジュアンさんと付き合ってるんだよね?」
「おー、そうだけど」
「今はどっちが攻め受けなの?」
「んー……その時々だよなあ?」
アレックスの言葉に、ジュアンは顔を赤くする。
「えー、やだなもう、何言ってるんだよ人前で」
どうやら揃ってリバーシブル体質のようだ。
そういえば何故男同士は薔薇なのか、などと考えつつ詩は、何げない質問をマリーにぶつけた。
「そういえば、マリーさんにも付き合ってる人いないの?」
マリーの手の中にあったサンドイッチがグチャッと潰れた。隣にいたルンルンは思わずビクッとしてしまう。
してはいけない質問だったのだと悟り、急いでマリィアに水を向ける詩。
「ええ、と、オフィスの修理は終わった?」
「え? ええ、大体は終わったわ。残るのは壁紙と、カーテンの付替えかしらね。ここって冬の暖房器具は何があるのかしら? そっちもやらない? 私ストーブの修繕とか得意よ? これから寒くなるし?」
話しかけられても微動だにしないマリー。
ロニと虚空はあえて地雷を踏みたくなかったので、無言を通し食べることに集中する。
● 劇的アフター
後日。
ジェオルジにある小さなオフィスを訪れた近隣住人は、思わず目をこすった。
この間来たときはなかったメルヘンな家が、オフィスの横に建っている。
トイプードルがその屋根に座り、空き缶にゴムを引っかけたものをかき鳴らしている。
「ううわし、ううわし」
オフィスに入ってみたら壁の一面が、リアルブルーの少年アイドルグループポスターで埋まっていた。
「ええと……ここはオフィスですよね?」
「はい、そうなんです」
情け無さそうなジュアンとは逆に、マリーは、満足仕切った体で笑みを浮かべているのであった。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/11/15 12:47:47 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/11/15 13:23:56 |