• 闇光

【闇光】撤退戦救援要請

マスター:墨上古流人

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~2人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2015/11/12 19:00
完成日
2015/11/20 04:10

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 北狄浄化キャンプの某時刻
 ゴーグルのレンズ越しでは、カーテンでも垂らしたかのように、
 隙間なく、土と、石と、血や脂が降り注いでくる。
 鉄と泥の匂いが鼻に纏わり付き、つい脳裏を柔らかいベッドと暖かい食事が過ぎれば、
 羨望とのギャップに、精神的な活力が奪い去って行く。
 

 ―――容赦無い、現実。


 男は、崩壊した北伐作戦区域より撤収を始めていた。
 が、歪虚達の怒り――いや、憐みすら見られる余裕の猛撃は決壊したダムのように溢れ出で、
 撤収する軍は激しい攻撃を受けていた。

 男は既に何も感じない足を動かし続け、
 どうにか最前線を振り切り、重傷を受けずに下がってこれたが、
 何度も吹き飛ばされては立ち上がり、地図も無し、
 ここがどこなのか、あとどれぐらいで味方に合流できるのかもわからない。
 それでも、生きる為には、足を動かさなければならない。
 貪るように酸素を求める肺、血か汗かもわからないどろどろの肌、乳酸だらけのくたくたな脚、
 とうにボロボロの体をどうにか引っ張り、男は様々なものが混じった土の上を、ただ駆けて行くのだった。

 右足のブーツの紐が切れるまで歩いた頃、
 少し深めの樹林に潜りこむ事が出来た。
 ひとまずは―――男の脳裏に希望が過ぎる。危険もあろうが、木々に隠れて進んでいけば、
 とりあえずの危険は軽減出来るかも知れない。
 天の恵みとはこの事だ。少し進むと、放棄された魔導バイクを見つけた。
 エンジンを振るわせると、 銃の薬室に弾を装填してから、慎重に、男は木々の間を走っていった。

 力強い風を体に得た刹那、ぷつん、と糸が切れたように体中の力が抜けそうになる
 まだ、意識を失うわけにはいかない。エンジンの単調なリズムが眠気を誘うBGMとなり、
 このまま泥のように眠ってしまいたいが、右か、左か、上空か、
 いつ得体の知れない攻撃を受けるかは、まだわからない。
 戦地は、慎重に、確実に歩いてきた。仲間の姿を確認するまでは、絶対に安堵しない事にしていた。
 だが、体を休めるぐらいなら―――
 

 実際、2時間は経過しただろうか。
 男は、恐るべき集中力とタフネスで、一睡もしていなかった。
 既に森は抜け、見慣れた山の形に向かってアクセルを全開にしている。
 
 ふと、車輪がゴツゴツと何かを踏む音が増えてきたことに気づく。。
 仲間の装備か、それとも仲間そのものか……バイクとはいえ仮にも戦闘を想定されたもの。
 それぐらいでパンクするような作りではない事を知っていた。

 が、それは武器や防具でも、仲間でもなかった。

 ホイールに無数の白い固まりが食いこんでくる。
 否、それは僅かな光に照らされた、骨。
 幾つもの瘴気を得た骨が先ゆく道で無数に待ち構え、やがて人型を成す。
 敵は、下からやってきた。
 まだだ、まだここで死ぬわけにはいかない。
 ようやっと可能性のあるところまでたどり着いたのだ!
 男は、片手でサブマシンガンの銃口を目測で向け、慌てず、落ち着いて息を吸う。
 大仰に腕を上げて武器を構えたスケルトン達の細い体へ、
 弾が吸い込まれるように撃ちこまれる。
 進路上の敵を粗方片付けたら、最後のフルスロットルだ。
 バイクが動かなくなるまで走り、そして、少しは休めた足を、また動かすのだ。それから‥‥。
 
 男の思考は、目の前に現れた骨のトンネル――それが大型スケルトンの肋骨と知ると、それ以上展開される事は無かった。





「ここが救援部隊の踏ん張りどころだ! いいか! 1人も残さず全員で帰るんだぞ!!」
 帝国第九師団救援部隊――フリデンルーエンのキャンプでは、今まで以上の喧噪が響き渡っていた。

「想定してた範囲内ではあるけど……実際には味わいたくなかった事態だね」
 師団長のユウ=クヴァールは、各救援拠点への対応指示や連絡待ちで動けず忙しなくという状況でいた。

「1人も残さず、ね……」
 開け放たれたテントから外を見て呟く副師団長のリベルト。
 既に何度目かの、既に動かない仲間が包されたコンテナが通って行くのを見て、歯痒い表情を浮かべていた。

「追加の物資の輸送を早く対応しておいたのはよかったね」
「おかげで拠点の物資は足りてるが……次は前線だ。迎えに行かなきゃならねぇ」
 地図上の駒を見てリベルトが言う。既に撤退を完了したキャンプや戦線もあるが、
 まだ前線の方では敵の猛攻に耐えている味方の情報が入っている。

「そうだね、暴食王に食べさせる訳にはいかない、皆大事な仲間だ。悪いけど宅配では魔導アーマーをお届けさせてもらうよ」
 ユウが新しく魔導アーマーの駒を用意し、卓上に置き、リベルトよりも早く外套を羽織る。

「……お前が行くのか?」
「うん。ミナちゃんも体張って前に出てたし……絶対成功させなきゃだし、それに……」
「いや、いい。それ以上何も言うな。あとは任せろ」
 真面目な顔をして司令用の椅子に座るリベルトを見て、ユウが少しだけきょとんとする。

「珍しいね? いつもだったら師団の頭がここに居なきゃ~とか言うのに」
「その頭を冷やしてくるにはちょうどいいだろ」
 リベルトも、わかっていた。
 このいつもへらりとした笑みを浮かべている男も、さすがに頭に来ているのだと。

「俺が師団長なら、同じことさせてもらったさ」
 さっさといけ、とでもいうように手で追い払われたユウは、
 いつも通りの顔を見せてから、テントから出て行った。
 

リプレイ本文


「さて、魔導アーマーの性能……試してみるとしようか」
 鈍く体を唸らす魔導アーマーを窘めるように、レイス(ka1541)が操縦桿を握る。
 元々車に手足を生やしたような機体、サスペンションなどあって無いようなもので、
 足を前に出すだけで、ダイレクトに震動が体に浸み込んでくる。

「全てをすくえる手など無いケレド、生きてイルなら迎えは必要ダシ、そうでナクテモ、チャンとお家に連れて帰ってあげナイとネ」
「そうだねー。でも、掴んでくれるかもしれないなら、僕は幾らでも伸ばせるだけ伸ばすつもりだよ」
 まるで森の木の枝に上っているかのように、
 魔導アーマーの肩で足をぶらぶらさせているのはアルヴィン = オールドリッチ(ka2378)だ。
 そのアーマーの操縦席では、師団長のユウがマニュアルを広げていた。

「デハ、お手数でナケレバ操縦お願いしても?」
「うん、今覚えたから大丈夫ー」
 へらっと笑い、きゃっきゃと独特の空間が出来るユウ機。
 それで正常な運転が出来るのだろうか……とでも思ったのだろうか。
 何かを言いたげな様子で雨月彩萌(ka3925)がユウの元へと近づいていた。
「東方の護符です。気休めになるかも分かりませんが、お守り代わりです。どうかひとつ、持っていてくださいクヴァール師団長」
「ふふーふ、実は僕モ」
「わ、いいの? ありがとー。じゃあ、必ず無事に返さないといけないねー」
 ひょい、と遠慮なく2人の差し出す護符を摘み上げるユウ。
 必ず返す――その時、今なお激戦の続く前線方面を一瞥したことを、アルヴィンも、彩萌も見逃さなかった。

(歪虚王が戦線に現れたことで、ここまで状況が動きますか――これを正常と認めたくはありません)
 一人でも多く、連れて帰り『わたし』の正常な日常を壊させる訳にはいかない。
 自分にあてがわれたアーマーの運転席に腰を沈め、彩萌は心で言葉を紡ぐ。

「コンテナの物資の固定OKですっ」
 彩萌の後ろでソフィア =リリィホルム(ka2383)がひょこっと顔を出す。
 そして自分のアーマーへ乗り込むと、握った操縦桿を左に倒したり、ペダルを徐々に踏んだりと操作に体を慣らしていく。
 鉄球使用時の重心の扱いや、ペダルを離すタイミング等、改善案を思考しだした。
 その改善案の試行錯誤に、ジュード・エアハート(ka0410)も加わってくる。
 彼は操縦担当ではないが、弓が安定するような台座の使い方や、アーマーがどう動いた時に自分はどう動くか等の予習をしていた。

「ガンガン前に出るんで、援護はお願いしますねっ」
「うん。俺の矢が届く範囲で、歪虚の好きにはさせないよ」
 自分の強みを生かして、一人でも多くの命を救えるように。
 戦場の重たい空気を振り払うように、ジュードは勢いをつけてアーマーから飛び降りていった。

 そしてまた、キャンプに幾つかの影が飛び込んできた。
 ボロボロの魔導トラックの後ろから、
 馬に乗ったゲルト・フォン・B(ka3222)とバイクを駆るアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が現れた。

「偵察に出たが……依然猛攻は激しいみたいだ」
 静かに体で息をするゴースロンに、宥めるようにそっと手を添えるのはエイル・メヌエット(ka2807)。
「誰も、死なせたりしない」
「もちろん。エイルも、皆も」
 いつもならふわりと微笑んでみせる優しいエイルも、今日は目に憂いと、その奥に強い決意を帯びていた。

 重症者をトラックから降ろす様を見て、手汗の滲む手でハンドルを握るアルト。
 とにかく手を伸ばすというユウの手、そして、彼女の手も、手の届く範囲全てを守れるように―――
 
「……これ以上、ボクの見ている前で一人でも死なせてたまるか」
 籠手越しに、その手に力を籠めて誓った。


 キャンプを飛び出した5機の魔導アーマーと戦馬とバイクは、
 15分程で既に敵の攻撃の中を潜り抜けていく羽目となった。

 偵察として先行していたゲルトは兜より防護の光を発し、骨の群れに囲まれる前に全身をマテリアルで固める。
 仲間に敵を見つけた合図としてホイッスルを鳴らすが、戦場の剣戟の中では遠くまで届かず、
(スケルトンに耳があるかは別として)敵を誘き寄せるのには充分という結果になってしまっていた。
 
「元よりコンテナに近づけるつもりはない、ここで屠る!」
 戦馬の勢いのまま突貫し、骨を踏み砕いていく。
 オートMURAMASAを器用に振るい、首から上を斬り飛ばしていった。

 ゲルトに向かい突き進んでくるのはバイクに乗ったアルト。
 馬に近づくスケルトンの群れに近づくと体重を倒してタイミングよくブレーキ。
 前輪を軸に後輪が地面を滑れば、スケルトンの群れをまるで羽毛に息をかけたかのように吹き飛ばしていった。

 だが骨とはいえ仮にも歪虚、体制こそ崩せど決定打となっていないものも何体かいるようだ。
 MURAMASAを抜き、カタカタと立ち上がろうとしてきた骨の列目がけて逆の手首を捻る。
 バイクの速度を乗せた刀は群れを薙ぎ払い、車軸を流した雨のように骨が辺りに降り注いだ。

「ハナっから飛ばすねぇ……」
 マテリアルエンジンの駆動音、戦場の音、ソフィアの粗野な言葉を聞くものはいない。
 ダンッ、と勢いよくアクセルを踏みつけ、勇敢な2人へと駆けつける。
 盾を横に構えブルドーザーのように突進し、仕上げに思いきり掬い上げる。
 ソフィア機へ迫る敵の群れにを見ると、後方でジュードが忙しなく手元のレバーを操る。
 コクピット前に魔導アーマーの爪を持ってくると、弓を支えるように固定――
 数撃つ制圧射撃も幾分楽になり、ソフィアに近づける骨はほとんどいなくなった。

 戦闘の勢いで小石が飛び、モニターに弾かれる。
 だがそんなものに構う暇もなく、エイルは次々と弾きだされる情報に目を通していた。
 計器とレーダー、そして肉眼で警戒を続けるが、事あるごとにビープ音が短く響く。
 
「駄目……この辺にはいないわ」
 熱源反応無し、モニターの無慈悲なメッセージに溜息をつくエイル。

『ならばここに用は無い……道を開くぞ、気をつけろ』
 レイスの通信に動きを合わせるハンター達。
 斜線を確保、暴れるモニター内のレティクルをどうにか押さえつけ―――トリガー。
 モニターの中で、真っ直ぐに伸びる鉄球と吹き飛ぶ間もなく砕け散るスケルトンを確認する。
 
「やあ、キレイに道ガ開けたネ」
「今のうちに通っちゃうよ、揺れるからねー」
 コンテナを引いていたユウ機と彩萌機が、先を行くハンター達に追随する。

「……! 危ない!」
 ユウ機の後を行く彩萌が、モニターから鳴るアラート音と同時に、
 アクセルを踏んでいた右足を魔導アーマーの縁に勢いよく乗せる。
 体を乗り出し、エンジンブレーキに逆らわないよう照準を固定―――
 フリューゲルから放たれた弾丸は、土から這い上がってきたスケルトンの体を粉砕した。

「ゲッちゃんには借りてばっかりだなー」
『反応し辛いので、出来れば正常な呼び名でお願いします』
 くつくつと笑うアルヴィンも、まるでステッキを振るうように銃を操り、群がる骨を排除していく。 
 
「アルちゃん、バイクはしっかり留めてある?」
「チョットやソットじゃ外れナイヨ」
「じゃあチョットやソットな事するね」
 床を踏み抜くようにブレーキをかけると同時に、ちぎれんばかりに操縦桿を捻るユウ。
 アーマーの回転で勢いよくコンテナをぶん回し、カーテンのような土煙を辺りに撒きあげる。

 視界が晴れた後には、
(スケルトンに目があるかは別として)ハンター達の姿は既に見えなくなっていた。


 進みながら、躱しながら、切り開きながらを持続させるというのは、
 常に集中力が途絶えず心身ともに困憊するものだった。

「ソロソロ通信が途絶エタとイウ場所ダネ」
 バイクに乗り換えたアルヴィンがジュード、ソフィアと共に要救助者の捜索を行う。
 だが、川の流れに逆らうように敵の侵攻の中を進んでいくためすぐに囲まれてしまう。
 班同士ですらあまり離れる事は出来ていなかった。

 エイルも笛を吹いて到着を知らせようとしたが、
 また敵を集めるだけになる事と、笛よりも銃声やアーマーみたいな僕らの音の方が目立つよ、というユウの進言で思い留めた。
 
「お願い、無事でいて……」
 モニターを熱源探知モードに切り替えて忙しなく機体を動かして周囲を見る。
 
≪今度は僕が祈る番だ――≫

「――! 少し先に熱源反応……!」
 不思議な後押しの後、エイルが示した先では、周囲よりも乱戦の規模が激しい様子が見て取れる。
 未だ肉眼で捉えるには小さいが、人の声も聞こえてくる。

 通信で共有しようと一度モニターから目を離すと、目の前には矢。
 事態を把握した時には、既に間に合わず

≪この人を死なせてはいけない、それだけの意味がある―――≫
 
 割り込むように響いたような気がした祈りの力、ハッとして体を屈める。
 正確にエイルの眉間を狙っていた矢は、背中の操縦席に鋭く突き立っていた。

 20数名のぼろぼろの味方達へ、先に近づいたのはアルトだ。
 フルスロットルで手前に出てきた小さな岩に向かい、前輪を上げる。
 敢えて目立つように、敵と味方の頭上をバイクで飛び越してゆく。

「応援がすぐそこまで来ているぞ! もう無理はしなくていい!」
 地響きと共に着地、猛々しくオートMURAMASAを起動して、敵の群れへとバイクで飛び掛かっていった。

 スケルトンはまるで波のように生存者へ押し寄せていた。
 馬で敢えて群れの中心に飛び込むゲルト。
 敵はカタカタと音を立て襲い掛かるが、覆い尽くすように、凛とゲルトの歌声が響く。
 戦場で紡がれた鎮魂歌は、穢れた敵の進軍を留めていった。

「骨は土に還る、それで正常です」
 生存者を囲むように味方が合流する。魔導アーマーの盾とアーマーそのもので敵との間に立ちはだかり、
 光の障壁を重ねていく。
 その隙にユウがコンテナを開こうとした瞬間、両刃斧を振るうひとまわり大きなスケルトンが接近した。

「―――ちょっと静かにしててね」
 すっ、と懐から手斧を取り出すと、次の瞬間には目にも留まらぬ勢いで振り下ろされた。
 まるで隕石が如き勢いで繰り出された手斧の一撃は、鎧に身を包んだ大きめのスケルトンですら、一瞬で破砕してしまった。

 ユウとアルヴィンがヒールを唱えていく傍ら、アルトとゲルトが孤立していた生存者を回収し、
 彩萌もコンテナの中へと生存者を誘導する。
 他の者は、敵の相手で手一杯だったが、
 レイスが盾とアーマーで進路を絞って対応できるようにする。

「これ以上やると僕らが消費しちゃうね……とりあえずみんなコンテナに乗せてこの場を離れよう」
 ユウが指示した矢先、撤退方向の地面から骨が躍り出てくる。
 それは今までのような一体一体ではない。複数の骨のパーツが次々と現れると、
 それはひとつの大きな、絵画の悪魔がそのまま骨になったような姿となった。

≪天と地と、一切を巡るものの加護を≫
 
 咄嗟に動けたのは、ジュードだった。
「させない……俺の矢が届く範囲なら、誰よりも疾く――!」
 怯まず矢をつがえると、鋭い冷気を帯びた矢で大型の頭部を狙う。
 一瞬、咆哮のような衝撃波がその場にいる者全員の体を奥底から揺さぶったが、
 ジュードの青霜がそれを不発に終わらせた。

「――ここから先は通行止めだ。来るならば相応の覚悟をしてもらおうか」
 アーマーを再起動し大型の前に出るレイス。

≪連中の仲間入りしないよう気をつけるんだぜェ≫

 盾を前に向けたまま、急ぎ槍を握るレイス。
 エイルが近寄り、光の翼を展開すると、
 レイスのアーマーに地面から蟻のようにたかりだした骨達が、その光の前に次々と打ち払われていった。
 大型の力を込めた手に、操縦桿を取られそうになるレイス。
 機体を乱暴に揺らされ、視界がぶれるが、とにかく手を離さず、バランスを取ろうと試みる。 
 そこへエイルが大型の腕に横から接近し、盾で衝突し腕をそらすした。

 その隙に大型の股下へとアーマーで滑りこみ、刺し込むように霊槍を突きあげると、
 大型の骨盤を穿ち天高く槍が放たれていった。

 コンテナへの収容に努めていた彩萌が大型を確認すると銃を光らせ光の三角形を浮かべる。
「わたしの役目を果たします。この場と要救助者は、必ず守り抜く。その為、異常を撃ち抜きます!」
 苦し紛れにコンテナへと向けられた大型の手刀は、
 彩萌の光の砲火により、手首から吹き飛んでいった。

 怒りの咆哮と共に、味方の遺体を運んでいたアルヴィンに大型の足が迫る。
 地面を蹴るように迫ったつま先を、盾で横へと受け流す。
 足が片方浮いた隙に、ソフィアが遠心力をかけて鉄球を振りぬく。
 軸足に当たる瞬間、超重練成。巨大な鉄球に足を砕かれ、大型は背中から地面へと倒れた。
 急ぎ手を地面につけるが、操縦桿をねじ切るように捻り、大型の手を魔導アーマーごと押さえつける。
 
「ぶっとべオラァ!!」
 その隙に、鉄球ではなくオートMURAMASAへ超重練成をかけるソフィア。
 稲妻のような音で駆動するMURAMASAは、大型の首を荒々しく砕き尽くした。
 
 アルトが最後の一人を収容し、その手でコンテナを二つとも閉じる。
 撤退準備を開始し、殿の為にレイスとゲルトがひと区切りのの余波らしき敵と奮戦していた。
 
 馬上にてゲルトが剣を振りおろすが、盾に止められてしまう。
 だがその剣に向けて甲冑の踵を落とす。
 重心を乗せた追撃に、骨を膝から地面に崩れ落ちた。
 
 回復は受けていた、殿の援護も行っていた、
 が、あと一歩継戦が及ばなかった。
 物量に物を言わせて押し寄せた骨が、馬ごとゲルトを押し倒す。
 飛び掛かる骨に盾を構えるが、別の骨に弾かれてしまい、
 スケルトンの槍が地面と縫い付けるようにゲルトの腹部へと刺さってしまった。

「自分が死んででも……大きな助けにならないと……向こうが危ないか……ら……」
 槍の冷たさと、血、内臓の熱さ、激しい痛みに意識を持っていかれそうになるが、剣だけは敵へと向ける。
 アルトが駆けつけ、打ち払うように刀を抜き骨を飛ばすとゲルトの前に立つ。
 ジュードの矢が骨達の頭部を団子のように串刺し、駆けつけたアルヴィンも鞭で馬に集っていた骨を散らしていった。

「別の味方が合流して、皆の撤退とこの場の引継ぎを行うから、皆も今のうちに下がろう。ここまで出来れば、後は何とかしてみせるよ」
 エイルが呻くゲルトに応急処置を施す横で、救急用具を持ってきたユウが指示を出す。

 次の敵が来るまではそう時間が無いかもしれない、次は耐えられないかもしれない。
 だが、要救助者から死者を出す事はなく、ある者はここには居ない仲間のマテリアルの加護の支えもあり、
 彼らは撤退準備を終える事が出来た。

依頼結果

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MVP一覧

重体一覧

  • ビキニアーマーマイスター
    ゲルト・フォン・Bka3222

参加者一覧

  • 空を引き裂く射手
    ジュード・エアハート(ka0410
    人間(紅)|18才|男性|猟撃士
  • 愛しい女性と共に
    レイス(ka1541
    人間(紅)|21才|男性|疾影士
  • 嗤ウ観察者
    アルヴィン = オールドリッチ(ka2378
    エルフ|26才|男性|聖導士
  • 大工房
    ソフィア =リリィホルム(ka2383
    ドワーフ|14才|女性|機導師
  • 愛にすべてを
    エイル・メヌエット(ka2807
    人間(紅)|23才|女性|聖導士
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • ビキニアーマーマイスター
    ゲルト・フォン・B(ka3222
    人間(紅)|19才|女性|聖導士
  • エメラルドの祈り
    雨月彩萌(ka3925
    人間(蒼)|20才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/11/08 14:23:32
アイコン 師団長さんに質問
エイル・メヌエット(ka2807
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/11/10 23:17:51
アイコン 仲間を迎えに【相談卓】
エイル・メヌエット(ka2807
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/11/12 12:08:57